(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169718
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】IL-4Rアンタゴニストを投与することによりアレルギーを予防又は処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20221101BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20221101BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221101BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20221101BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20221101BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20221101BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20221101BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20221101BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221101BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20221101BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221101BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20221101BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P37/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P17/04
A61P11/06
A61P11/02
A61P1/04
A61K45/06
A61P29/00
A61K38/21
C12N15/13
C07K16/24
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022134609
(22)【出願日】2022-08-26
(62)【分割の表示】P 2019511889の分割
【原出願日】2017-08-31
(31)【優先権主張番号】62/382,501
(32)【優先日】2016-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/425,726
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】515337475
【氏名又は名称】サノフィ・バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・ディー・ハミルトン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・エヌ・スワンソン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アレルギーを予防又は処置するための方法を提供する。また、それを必要とする被験体においてアレルゲンに対する感受性を減少させるための方法も提供する。
【解決手段】特定の実施態様において、被験体は、アトピー性皮膚炎、ぜん息、アレルギー性鼻炎、及び好酸球性食道炎からなる群より選択される疾患又は障害を有する。本発明の方法は、抗IL-4R抗体のようなインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを含む医薬組成物をそれを必要とする被験体に投与することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)上昇したレベルの血清アレルゲン特異的IgEを有する被験体を選択すること;及び(b)治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストをそれを必要とする被験体に投与することを含む、被験体においてアレルギーを予防又は処置するための方法。
【請求項2】
イムノアッセイにより決定して、処置の前又は処置の時点で血清アレルゲン特異的IgEのレベルが≧0.35kU/mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アレルギーを予防又は処置することが、IL-4Rアンタゴニストの投与の際に被験体における血清アレルゲン特異的IgEレベルをベースラインから少なくとも20%減少させることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
被験体は、IL-4Rアンタゴニストの投与後に血清アレルゲン特異的IgEのベースラインからの少なくとも50%の減少を示す、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストをそれを必要とする被験体に投与することを含む、アレルギー反応に対する感受性を予防するか又は減少させるための方法。
【請求項6】
アレルギー反応は、アレルゲンに特異的な血清IgE(アレルゲン特異的IgE)の上昇したレベルにより誘発される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アレルギー反応に対する感受性を予防するか又は減少させることが、IL-4Rアンタゴニストの投与後に血清アレルゲン特異的IgEのレベルをベースラインから少なくとも20%減少させることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アレルギー反応に対する感受性を予防するか又は減少させることは、IL-4Rアンタゴニストの投与後に血清アレルゲン特異的IgEのレベルをベースラインから少なくとも50%減少させることを含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項9】
治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストをそれを必要とする被験体に投与することを含む、被験体における血清アレルゲン特異的IgEレベルを減少させるための方法。
【請求項10】
血清アレルゲン特異的IgEレベルは、投与後にベースラインから少なくとも20%減少する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
血清アレルゲン特異的IgEレベルは、投与後にベースラインから少なくとも50%減少する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
アレルゲンは、ハンノキ、アルテルナリア・テナース、ギョウギシバ、シダレカンバ、ネコ皮屑、クラドスポリウム、ゴキブリ(チャバネ)、コナヒョウヒダニ(コダニ類)、ヤケヒョウヒダニ、イヌ皮屑、ニレ、ヒメモロコシ、ホワイトオーク、ブタクサ、マグワート・セージ、オオアワガエリ(アワガエリ属)、アメリカトネリコ、カンジダ・アルビカンス、マラセチア菌、ピチロスポルム・オルビクラーレ、カビ、ブドウ球菌エンテロトキシンA、及びブドウ球菌エンテロトキシンBからなる群より選択される供給源由来である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rαに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
IL-4Rアンタゴニストは約75mg~約600mgの用量で投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
IL-4Rアンタゴニストは約300mgの用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
IL-4Rアンタゴニストは約200mgの用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
IL-4Rアンタゴニストは、初期用量、その後の1又はそれ以上の二次用量として投与され、ここで各二次用量は、直前の用量の1~4週間後に投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
初期用量はIL-4Rアンタゴニスト約75mg~約600mgを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
各二次用量はIL-4Rアンタゴニスト約75mg~約600mgを含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
初期用量はIL-4Rアンタゴニスト約600mgを含み、そして各二次用量はIL-4Rアンタゴニスト約300mgを含む、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
初期用量はIL-4Rアンタゴニスト約400mgを含み、そして各二次用量はIL-4Rアンタゴニスト約200mgを含む、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
各二次用量は直前の用量の1週間後に投与される、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
各二次用量は直前の用量の2週間後に投与される、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
被験体は、アトピー性皮膚炎、ぜん息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、及び好酸球性食道炎からなる群より選択される疾患又は障害を有する、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
IL-4Rアンタゴニストは被験体に皮下投与される、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
第二の治療剤が、IL-4Rアンタゴニストの前、IL-4Rアンタゴニストの後又はIL-4Rアンタゴニストと同時に被験体に投与される、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
第二の治療剤は、抗ヒスタミン薬、全身的免疫療法、コルチコステロイド、長時間作用性β2アゴニスト、腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤、インターロイキン1(IL-1)阻
害剤、IL-5阻害剤、IL-8阻害剤、IgE阻害剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、及びインターフェロン-ガンマ(IFNγ)からなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rαに特異的に結合し、かつIL-4及び/又はIL-13の1型又は2型IL-4受容体との相互作用を防止する、抗体又はその抗原結合フラグメントである、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
抗IL-4Rα抗体は、IL-4及びIL-13の1型及び2型IL-4受容体の両方との相互作用を防止する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
抗IL-4Rα抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)及び配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
抗IL-4Rα抗体は、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)及び3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含み、ここでHCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含み;そしてLCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項32】
重鎖可変領域(HCVR)は配列番号1のアミノ酸配列を含み、そして軽鎖可変領域(LCVR)は配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
抗IL-4Rα抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項30~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
IL-4Rアンタゴニストはデュピルマブ又はその生物学的同等物である、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
上昇したレベルの血清アレルゲン特異的IgEを有する被験体におけるアレルギーの予防又は処置におけるインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストの使用。
【請求項36】
上昇したレベルの血清アレルゲン特異的IgEを有する被験体におけるアレルギーの予防又は処置のための薬剤の製造におけるインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストの使用。
【請求項37】
上昇したレベルの血清アレルゲン特異的IgEを有する被験体におけるアレルギーの予防又は処置のための医薬組成物であって、ここで該組成物は、治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを含む、上記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列の記述
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、かつ参照によりその全体として本明細書に加入される配列表を含む。2017年8月18日に作成された上記ASCIIコピーはSequenceList_28PCT.txtと名付けられ、サイズは11,043バイトである。
【0002】
発明の分野
本発明は、アレルギー及びアレルギー状態の予防及び/又は処置に関する。より詳細には、本発明は、それを必要とする患者におけるインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストの投与に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
アレルギー及びアレルギー疾患は、時間とともに消散する生命を脅かすことはない反応からアナフィラキシーのような生命を脅かす影響までの範囲に及ぶ結果を伴う深刻な医学的状態である。アレルギー反応は、特定の食品、昆虫毒、植物由来物質(例えば、花粉)、化学物質、薬物/薬剤、及び動物の皮屑のような様々な産物への接触又は曝露から生じ得る。アレルギーの病態生理学は、免疫グロブリンE(IgE)媒介感作、免疫系及び環境因子間の複雑な相互作用により影響を受ける。アレルギーの現在の処置選択肢としては、回避、薬理的な症状の処置及びアレルゲン特異的免疫療法(SIT)を使用した予防が挙げられる。残念ながら、これらの現在の処置方針は、しばしば不適切であるか、高価であるが、実用的でないか又は重大なリスクを含む。例えば、アレルゲンの回避は常に可能というわけではなく、患者及び介護者の生活の質にネガティブな影響を与え得る。他方で、免疫療法アプローチは、感受性の個体へのアレルゲンの計画的な投与を含み、従って本質的に望まれない重篤なアレルギー反応又はアナフィラキシーのリスクを伴う。従って、アレルギー又はアレルギー反応を予防又は処置し、かつアレルギー反応を発生するリスクを減少させる新規な治療アプローチに対する満たされない必要性が当該分野において存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
本発明の特定の局面によれば、被験体においてアレルギーを予防又は処置するための方法が提供される。被験体においてアレルギー反応に対する感受性を減少させるか又はアレルゲン感作を低減する方法も含まれる。特定の実施態様において、本発明は、被験体において血清アレルゲン特異的IgEレベルを減少させる方法を提供する。本発明の方法は、治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを含む医薬組成物をそれを必要とする被験体に投与することを含む。特定の実施態様において、医薬組成物は75~600mgの用量で皮下投与される。
【0005】
特定の実施態様において、本発明はアレルギーを予防又は処置するための方法を提供し、ここでアレルギーを予防又は処置することは、アレルゲン特異的IgEのレベルを減少させることを含む。特定の実施態様において、それを必要とする被験体は、IL-4Rアンタゴニストの投与の際にアレルゲン特異的IgEの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%の減少を示す。特定の
実施態様において、アレルギー反応又はアレルギー反応に対する被験体に感受性は、アレルゲン感作により誘発される。特定の実施態様において、本発明は、アレルゲン感作を減少させるか又は抑止するための方法を提供する。
【0006】
特定の実施態様において、被験体は、以下の供給源の1つ又はそれ以上由来のアレルゲンに対して感作され、これらとしては、限定されないが、ハンノキ(Alder Grey)、アルテルナリア・テナース(Alternaria Tenuis)、ギョウギシバ(Bermuda Grass)、シダレカンバ(Silver Birch)、ネコ皮屑、クラドスポリウム、ゴキブリ(チャバネ)、コナヒョウヒダニ(コダニ類(mite))、ヤケヒョウヒダニ、イヌ皮屑、ニレ、ヒメモロコシ(Johnson Grass)、ホワイトオーク(White Oak)、ブタクサ(Ragweed Short)、マグワート・セージ(Mugwort Sage)、オオアワガエリ(アワガエリ属(Phleum))、アメリカトネリコ(White Ash)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、マラセチア菌(Malasezzia furfur)、ピチロスポルム・オルビクラーレ(Pityrosporum orbiculare)、カビ、ブドウ球菌エンテロトキシンA、又はブドウ球菌エンテロトキシンBが挙げられる。特定の実施態様において、被験体は、乳製品、魚、甲殻類、落花生、ナッツ類(tree nuts)、果実(例えば、メロン)、卵、小麦、及び大豆からなる群より選択される食品由来のアレルゲンに感作される。
【0007】
特定の実施態様によれば、本発明は、被験体においてアレルギーを処置若しくは予防するため、又はアレルギー反応に対する感受性を減少させるための方法を提供し、ここで該方法は、初期用量としてIL-4Rアンタゴニスト約50mg~約600mg、続いて1又はそれ以上の二次用量を被験体に連続して投与することを含む。特定の実施態様において、初期用量及び1つ又はそれ以上の二次用量は、それぞれIL-4Rアンタゴニスト約75mg~約300mgを含む。特定の実施態様において、IL-4Rアンタゴニストは、初期用量400mg又は600mg、続いて1つ又はそれ以上の二次用量で投与され、ここで各二次用量は200mg又は300mgを含む。本発明のこの局面によれば、医薬組成物は、例えば、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、又は4週間に1回の投薬頻度で被験体に投与され得る。一実施態様において、IL-4Rアンタゴニストは、初期用量400mg、続いて1つ又はそれ以上の二次用量で投与され、ここで各二次用量は200mgを含み、そして週に1回投与される。
【0008】
特定の実施態様において、本発明は、被験体においてアレルギーを処置若しくは予防するため、又はアレルギー反応に対する感受性を減少させるための方法を提供し、ここで被験体は、アトピー性皮膚炎、ぜん息、アレルギー性鼻炎、好酸球性食道炎、及び食物アレルギーからなる群より選択される疾患又は障害を有する。一実施態様において、被験体は中程度から重症のアトピー性皮膚炎を有する。
【0009】
本発明の方法の状況において使用され得る例となるIL-4Rアンタゴニストとしては、例えば、IL-4R若しくはそのリガンド(IL-4及び/又はIL-13)の小分子化学阻害剤、又はIL-4R若しくはそのリガンドを標的とする生物学的薬剤が挙げられる。特定の実施態様によれば、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rα鎖に結合してIL-4、IL-13、又はIL-4及びIL-13の両方によるシグナル伝達を遮断する抗原結合タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合フラグメント)である。一実施態様において、IL-4Rに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1/2の重鎖可変領域(HCVR)/軽鎖可変領域(LCVR)配列対において相補性決定領域(CDR)を含む。特定の実施態様において、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR(HCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を有するHCDR2、配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR3、配列番
号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR(LCDR1)、配列番号7のアミノ酸配列を有するLCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む。本発明の方法の状況において使用され得る1つのこのような種類の抗原結合タンパク質は、デュピルマブのような抗IL-4Rα抗体である。
【0010】
いくつかの実施態様において、医薬組成物は被験体に皮下投与又は静脈内投与される。
【0011】
特定の実施態様において、医薬組成物は、第二の治療剤の前、第二の治療剤の後、又は第二の治療剤と同時に患者に投与される。いくつかの実施態様において、第二の治療剤は、別のIL-4R阻害剤、IgE阻害剤、コルチコステロイド(例えば、外用コルチコステロイド又は全身性コルチコステロイド)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、抗ヒスタミン薬、全身性免疫療法、及びIFNγからなる群より選択される。
【0012】
特定の実施態様において、本発明は、患者においてアレルギー又はアレルゲン感作を処置するか又は減少させるか又は予防するための薬剤の製造における本発明のIL-4Rアンタゴニストの使用を提供する。
【0013】
本発明の一実施態様は、以下の詳細な説明を検討することから明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施例1に記載される試験における湿疹面積重症度指数(EASI)スコアのベースラインから16週までの最小二乗(LS)平均パーセント変化を示す。*P<0.0001対プラセボ;qw、週に1回、SE、標準誤差。
【
図2】
図2は、実施例1に記載される試験におけるベースラインから16週までのそう痒数値評価スケール(NRS)スコアの週ごとのピークのLS平均パーセント変化を示す。*P<0.01対プラセボ;LS、最小二乗。
【
図3】
図3は、実施例2に記載される試験におけるベースラインから16週までの血清胸腺および活性化制御ケモカイン(TARC)レベルを示す。**P<0.001対プラセボ;DPL、デュピルマブ;PBO、プラセボ;qw、週に1回;SE、標準誤差。
【
図4】
図4は、実施例2に記載される試験におけるベースラインから16週までの血清肺及び活性化制御ケモカイン(PARC)レベルを示す。***P<0.0001対プラセボ;DPL、デュピルマブ;PBO、プラセボ;qw、週に1回;SE、標準誤差。
【
図5】
図5は、実施例2に記載される試験におけるベースラインから16週までの血清ペリオスチンレベルを示す。*P<0.01対プラセボ;DPL、デュピルマブ;PBO、プラセボ;qw、週に1回;SE、標準誤差。
【
図6】
図6は、実施例2に記載される試験におけるベースラインから16週までの血清総IgEレベルを示す。***P<0.0001対プラセボ;DPL、デュピルマブ;PBO、プラセボ;qw、週に1回;SE、標準誤差。
【
図7】
図7は、実施例2に記載される16週の処置の後の血清中の多様なアレルゲンについて特異的なIgEをデュピルマブが抑制することを示す。
【
図8】
図8は、実施例2に記載されるように、プラセボ、4週ごとに(q4w)デュピルマブ100mg又はデュピルマブ 300mg q4wの16週の処置後の血清中の多様なアレルゲンについて特異的なIgEの抑制を示す。*P<0.05、**P<0.01、§P<0.001、¶P<0.0001対プラセボ。D.farinae、コナヒョウヒダニ;D.pteronyssinus、ヤケヒョウヒダニ;M.furfur、マラセチア菌;P.orbiculare;ピチロスポルム・オルビクラーレ;S.enterotoxin A/B、ブドウ球菌エンテロトキシンA/B。四分位範囲:Q1、下位四分位(lowest quartile);Q3、上位四分位(upper quartile)。
【
図9】
図9は、実施例2に記載されるように、2週ごとに(q2w)デュピルマブ200mg、300mg q2w、又は週1回(qw)300mgの16週の処置後の血清中の多様なアレルゲンについて特異的なIgEの抑制を示す。*P<0.05、**P<0.01、§P<0.001、¶P<0.0001対プラセボ。D.farinae、コナヒョウヒダニ;D.pteronyssinus、ヤケヒョウヒダニ;M.furfur、マラセチア菌;P.orbiculare;ピチロスポルム・オルビクラーレ;S.enterotoxin A/B、ブドウ球菌エンテロトキシンA/B。四分位範囲:Q1、下位四分位(lowest quartile);Q3、上位四分位(upper quartile)。
【
図10】
図10は、実施例3の試験におけるアトピー性皮膚炎を有する患者の病変皮膚における黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)存在量を示す。
【
図11】
図11は、実施例3における試験におけるアトピー性皮膚炎を有する患者の非病変皮膚における黄色ブドウ球菌(S.aureus)存在量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本発明を記載する前に、当然のことながら、この発明は、方法及び実験条件は変わり得るので、記載される特定の方法及び実験条件に限定されない。また当然のことながら、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書において使用される専門用語は、特定の実施態様を記載する目的のためのみのものであり、限定することを意図されない。
【0016】
別に定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、この発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。特定の記載される数値を参照して使用される場合、本明細書で使用される用語「約」は、その値が記載される値から1%以下だけ異なり得ることを意味する。例えば、本明細書で使用される表現「約100」は99及び101並びにその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0017】
本明細書に記載される方法及び材料と類似しているか又は等価ないずれの方法及び材料も本発明の実施において使用することができるが、好ましい方法及び材料がここで記載される。本明細書において言及される全ての刊行物は、参照によりその全体として記載するように本明細書に加入される。
【0018】
特定の局面によれば、本発明は、被験体においてアレルギーを予防又は処置するための方法を含み、ここで該方法は、治療有効量のIL-4Rアンタゴニストをそれを必要とする被験体に投与することを含む。本明細書で使用される用語「処置する」、「処置すること」、又は同様のものは、被験体においてアレルギー症状を軽減すること、一時的若しくは永続的のいずれかでアレルギー症状の原因を排除すること、又はアレルギー症状の出現を予防するか若しくは遅らせることを意味する。本明細書で使用される用語「予防する」、「予防すること」又は同様のものは、アレルギー、アレルギー反応又はアレルギー状態の発症を予防することを指す。本明細書で使用されるこの用語はまた、アレルゲン感作を減少させるか又は抑止してアレルギー反応を予防することも含む。いくつかの実施態様において、この用語は、本発明の方法により提供されるIL-4Rアンタゴニストの投与の際に、血清アレルゲン特異的IgEのレベルをベースラインと比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%減少させることを指す。
【0019】
本発明は、IL-4Rアンタゴニストを含む治療組成物をそれを必要とする被験体に投与することを含む方法を含む。本明細書で使用される表現「それを必要とする被験体」は、アレルギー若しくはアトピーの1つ若しくはそれ以上の症状若しくは徴候を示し、かつ/又はアレルゲンに対するアレルギーと診断されたことがあるヒト又は非ヒト動物を意味する。特定の実施態様において、用語「それを必要とする被験体」は、アレルギー又はアレルゲンに対するアレルギー応答を発生する増加したリスクを有する被験体を含む。特定の実施態様において、この用語は、1つ又はそれ以上のアレルゲンに対するアレルゲン感作を示す被験体を含む。特定の実施態様において、本発明の方法は、1つ又はそれ以上の血清バイオマーカーの上昇したレベルを示す被験体を処置するために使用され得。これらの血清バイオマーカーとしては、限定されないが、総IgE、アレルゲン特異的IgE、胸腺および活性化制御ケモカイン(TARC)、肺及び活性化制御ケモカイン(PARC)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、及びペリオスチンが挙げられる。例えば、本発明の方法は、上昇したレベルのアレルゲン特異的IgEを有する患者にIL-4Rアンタゴニストを投与することを含む。用語「被験体」及び「患者」は、本明細書において交換可能に使用されている。
【0020】
本明細書で使用される用語「アレルギー応答」、「アレルギー反応」、「アレルギー症状」などは、じん麻疹(urticaria)(例えば、じん麻疹(hives))、血管浮腫、鼻炎、ぜん息、嘔吐、くしゃみ、鼻水、副鼻腔炎症、涙目、喘鳴、気管支けいれん、減少した最大呼気流量(PEF)、胃腸障害、潮紅、腫れた唇、腫れた舌、減少した血圧、アナフィラキシー、及び器官機能障害/不全からなる群より選択される1つ又はそれ以上の徴候又は症状を含む。「アレルギー応答」、「アレルギー反応」、「アレルギー症状」などはまた、例えば、増加したIgE産生及び/又は増加したアレルゲン特異的免疫グロブリン産生のような免疫学的応答及び反応を含む。
【0021】
本明細書で使用される用語「アレルゲン」は、感受性の個体においてアレルギー応答を刺激することができるいずれかの物質、化学物質、粒子又は組成物を含む。アレルゲンは、例えば、乳製品(例えば、牛乳)、卵、セロリ、ゴマ、小麦、大豆、魚、甲殻類、糖類(例えば、アルファ-ガラクトースのような肉上に存在する糖類)、落花生、その他のマメ科植物(例えば、マメ類、エンドウ、大豆など)、及びナッツ類のような食品内に含有され得るか又は食品から誘導され得る。あるいは、アレルゲンは、例えば、粉塵(例えば、イエダニを含有する)、花粉、昆虫毒液(例えば、蜂、カリバチ、蚊、アカヒアリなどの毒液)、カビ、動物毛皮、動物皮屑、羊毛、ラテックス、金属(例えば、ニッケル)、家庭用洗浄剤、洗剤、薬物(medication)、化粧品(例えば、香水など)、薬物(drugs)(例えば、ペニシリン、スルホンアミド類、サリチレートなど)、治療用モノクローナル抗体(例えば、セツキシマブ)、ブタクサ、イネ科植物及びカバノキのような非食品内に含有され得るか又は非食品から誘導され得る。例となる花粉アレルゲンとしては、例えば、カバノキ花粉、ヒマラヤスギ花粉、オーク花粉、ハンノキ花粉、シデ花粉、トチノキ花粉、ヤナギ花粉、ポプラ花粉、プラタナス(plantanus)花粉、シナノキ花粉、オリーブ(olea)花粉、アシェ・ジュニパー(Ashe juniper)花粉、及びアルストニア・スコラリス(Alstonia scholaris)花粉のような樹木花粉が挙げられる。アレルゲンの他の例は本明細書の他所に見られ得る。用語「アレルゲン」及び「抗原」は開示を通して交換可能に使用される。
【0022】
特定の局面によれば、本発明は、被験体においてアレルギー反応に対する感受性を減少させる方法を提供し、該方法は、治療有効量のIL-4Rアンタゴニストをそれを必要とする被験体に投与することを含む。特定の実施態様において、用語「それを必要とする被験体」は、アレルギー反応に対して感受性であるか又はアレルゲンに対するアレルギー反応を発症する増加した危険性を有する被験体を含む。特定の実施態様において、被験体は、アレルゲンに対する感作に起因して該アレルゲンに対してアレルギー又はアレルギー応
答を発症する増加したリスクを有し得る。例えば、この用語は、1つ又はそれ以上のアレルゲンに対して特異的な血清IgEの増加したレベルをを示す(「アレルゲン感作」)被験体を含む。本発明の文脈において、用語「それを必要とする被験体」はまた、アトピー性皮膚炎、ぜん息、アレルギー性鼻炎、好酸球性食道炎、及び食物アレルギーからなる群より選択される疾患又は障害を有する被験体を含む。用語「被験体」はまた、アレルギー応答を発症する増加した危険性を有し得る上昇したレベルの血清総IgE及び血清アレルゲン特異的IgE、又は血清ケモカイン(例えば、CCL17又はCCL27)を有する被験体を含む。本発明は、感受性の被験体においてアレルギー又はアレルギー応答を発症する危険性を減少させるための方法を提供する。
【0023】
特定の局面によれば、本発明は、被験体において血清アレルゲン特異的IgEのレベルを減少させる方法を提供し、該方法は、治療有効量のIL-4Rアンタゴニストを投与することを含む。特定の実施態様において、血清アレルゲン特異的IgEレベルは、IL-4Rアンタゴニストの投与後にベースラインと比較して少なくとも10%、20%、30%、40%又は50%減少する。
【0024】
アレルゲン特異的IgE又は総IgEのような血清バイオマーカーを検出及び/又は定量するための方法は当該分野で公知であり;このようなバイオマーカーを測定するためのキットは様々な商業的供給源から入手可能であり;そしてこのようなバイオマーカーの測定を提供する様々な市販の診断検査提供サービスも同様である。
【0025】
例えば、PhadiatopTMは、アレルギー感作のスクリーニングのために導入された血清特異的又は抗原特異的IgEアッセイ試験の市販の変形である(Merrett et al 1987, Allergy 17:409-416)。この試験は、一般的な吸入アレルギーを引き起こす関連するアレルゲンの混合物に対する血清特異的IgEについての同時試験を提供する。この試験により、得られた蛍光応答に依存して陽性又は陰性のいずれかの定性的結果が得られる。患者サンプルが参照よりも高いか又は参照と等しい蛍光応答を生じる場合、陽性試験結果が示される。より低い蛍光応答を有する患者サンプルは、陰性試験結果を示す。本発明は、陽性試験結果を示す被験体を選択すること、及び該被験体に治療有効量のIL-4Rアンタゴニストを投与することを含む方法を含む。
【0026】
本発明はまた、被験体が、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の投与が有益であるだろう適切な被験体であるかどうかを決定するための方法を含む。例えば、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を投与される前に、アレルゲン感作を表すレベルの血清バイオマーカー(例えば、アレルゲン特異的IgE)を個体が示す場合、その結果その個体は、本発明の医薬組成物(抗IL-4R抗体を含む組成物)の投与が有益であるだろう適切な患者として同定される。
【0027】
本発明の特定の局面によれば、アレルギーを予防又は処置するための方法が提供され、該方法は:(a)処置の前又は処置の時点でアレルギー感作を表す、少なくとも1つのアレルゲンに対して特異的なIgEのレベルを示す被験体を選択すること;及び(b)治療有効量のIL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を該被験体に投与することを含む。特定の実施態様において、患者は、アレルゲン特異的IgEのレベルが上昇しているかどうかを決定することにより選択される。アレルゲン特異的IgEのレベルは、当該分野で公知のバイオマーカーについて患者からサンプルを得ることにより決定又は定量される。特定の他の実施態様において、患者は、患者からアレルゲン特異的IgEの上昇したレベルに関連する情報を得ることにより選択される。本発明のこの局面の特定の実施態様において、被験体はIgE又はTARC又はペリオスチンの上昇したレベルに基づいて選択される。
【0028】
当業者には当然のことながら、血清バイオマーカーの増加又は減少は、(i)IL-4Rアンタゴニストの投与後の規定された時点に被験体において測定されたバイオマーカーのレベルを、(ii)IL-4Rアンタゴニストの投与前の患者において測定されたバイオマーカーのレベル(すなわち、「ベースライン測定」)と比較することにより決定することができる。バイオマーカが測定される規定された時点は、IL-4Rアンタゴニストの投与の例えば約4時間、8時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、15日、20日、35日、40日、50日、55日、60日、65日、70日、75日、80日、85日、100日、150日、又はそれ以上後であり得る。
【0029】
本発明のある特定の実施態様によれば、被験体は、IL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)を含む医薬組成物の投与後に1つ又はそれ以上のアレルゲンに対して特異的な血清IgEのレベルの減少を示し得る。例えば、抗hIL-4R抗体(例えば、デュピルマブ)約75、150、200又は300mgを含む医薬組成物の1つ又はそれ以上の用量の投与の約8日、15日、22日、25日、29日、36日、43日、50日、57日、64日、71日、85日、又は112日後に、被験体は、本発明に従って、アレルゲン特異的IgEのベースラインからの約1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又はそれ以上の減少を示し得る(ここで、「ベースライン」は最初の投与の直前の被験体におけるアレルゲン特異的IgEのレベルと定義される)。
【0030】
インターロイキン-4受容体アンタゴニスト
本発明の方法は、インターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを含む治療組成物をそれを必要とする被験体に投与することを含む。本明細書で使用される「IL-4Rアンタゴニスト」(本明細書では「IL-4R阻害剤」、「IL-4Rαアンタゴニスト」、「IL-4R遮断薬」、「IL-4Rα遮断薬」などとも呼ばれる)は、IL-4Rα又はIL-4Rリガンドに結合するか又は相互作用し、そして1型及び/又は2型IL-4受容体の正常な生物学的シグナル伝達機能を阻害するか又は減衰させるいずれかの薬剤である。ヒトIL-4Rαは配列番号11のアミノ酸配列を有する。1型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖及びγc鎖を含む二量体受容体である。2型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖及びIL-13Rα1鎖を含む二量体受容体である。1型IL-4受容体はIL-4と相互作用し、そしてIL-4により刺激されるが、2型IL-4受容体は、IL-4及びIL-13の両方と相互作用し、そして刺激される。従って、本発明の方法において使用され得るIL-4Rアンタゴニストは、IL-4媒介シグナル伝達、IL-13媒介シグナル伝達、又はIL-4媒介及びIL-13媒介シグナル伝達の両方を遮断することにより機能し得る。従って、本発明のIL-4Rアンタゴニストは、IL-4及び/又はIL-13の1型又は2型受容体との相互作用を防止する。
【0031】
IL-4Rアンタゴニストのカテゴリーの非限定的な例としては、小分子IL-4R阻害剤、抗IL-4Rアプタマー、ペプチドベースのIL-4R阻害剤(例えば、「ペプチボディ」分子)、「レセプターボディ(receptor-bodies)」(例えば、IL-4R成分のリガンド結合ドメインを含む操作された分子)、及びヒトIL-4Rαに特異的に結合する抗体又は抗体の抗原結合フラグメントが挙げられる。本明細書で使用されるIL-4Rアンタゴニストはまた、IL-4及び/又はIL-13に特異的に結合する抗原結合タンパク質を含む。
【0032】
抗IL-4Rα抗体及びその抗原結合フラグメント
本発明の特定の例となる実施態様によれば、IL-4Rアンタゴニストは抗IL-4R
α抗体又はその抗原結合フラグメントである。本明細書で使用される用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、ジスルフィド結合により相互接続された2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、さらにはその多量体(例えば、IgM)を含む。典型的な抗体において、各重鎖は重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略さ
れる)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2及びCH
3を含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略される)及び軽鎖
定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン(CL1)を含む。VH及びVL領域は、
より保存されたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が組み入れられた相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本発明の異なる実施態様において、抗IL-4R抗体(又はその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一でもよく、又は天然若しくは人工的に改変されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ又はそれ以上のCDRの対照(side-by-side)分析に基づく。
【0033】
本明細書で使用される用語「抗体」はまた、完全抗体分子の抗原結合フラグメントを含む。本明細書で使用される用語抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などは、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、天然に存在するか、酵素的に得ることができるか、合成又は遺伝子的に操作されたポリペプチド又は糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、完全抗体分子から、タンパク質溶解消化又は抗体可変ドメイン及び場合により定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を含む組み換え遺伝子操作技術のようないずれかの適切な標準的技術を使用して誘導され得る。このようなDNAは、公知であり、かつ/又は、例えば、商業的供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、又は合成することができる。DNAは配列決定され得、そして化学的操作されるか又は分子生物学技術を使用することにより、例えば、1つもしくはそれ以上の可変及び/もしくは定常ドメインを適切な構成に配置し得るか、又はコドンを導入するか、システイン残基を作製するか、アミノ酸を修飾、付加もしくは欠失するなどし得る。
【0034】
抗原結合フラグメントの非限定的な例としては:(i)Fabフラグメント;(ii)
F(ab’)2フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;及び(vii)抗体の超可変領域を模倣したアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDR3ペプチドのような単離された相補性決定領域(CDR))、又は拘束性FR3-CDR3-FR4ペプチドが挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR-グラフト化抗体、二重特異性抗体(diabodies)、三重特異性抗体(triabodies)、四重特異性抗体(tetrabodies)、ミニボディ(minibodies)、ナノボディ(nanobodies)(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(small modular
immunopharmaceuticals)(SMIP)、及びサメ可変IgNARドメインのような他の操作された分子もまた、本明細書で使用される表現「抗原結合フラグメント」内に包含される。
【0035】
抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインはいずれのサイズ又はアミノ酸組成のものでもよく、そして一般的には少なくとも1つのCDRを含み、これは1つ又はそれ以上のフレームワーク配列に隣接するかインフレームである。VLドメインと関連するVHドメインを有する抗原結合フラグメントにおいて、VH及びVLドメインは、互いに対していずれかの適切な配置に位置し得る。例えば、可変領域は二量体であり得、そしてVH-VH、VH-VL又はVL-VL二量体であり得
る。あるいは、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体VH又はVLドメインを含有し得る。
【0036】
特定の実施態様において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合で連結された少なくとも1つの可変ドメインを含有し得る。本発明の抗体の抗原結合フラグメント内に見られ得る可変及び定常ドメインの非限定的な例となる構成としては:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;及び(xiv)VL-CLが挙げられる。上で列挙された例となる任意の構成を含めて可変及び定常ドメインのいずれかの構成において、可変及び定常ドメインは、互いに直接連結されていても、完全又は部分的ヒンジ又はリンカー領域により連結されていてもよい。ヒンジ領域は、少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60又はそれ以上)のアミノ酸からなるものであり得、これは単一のポリペプチド分子中の隣接する可変及び/又は定常ドメイン間の可動性又は半可動性の連結を生じる。さらに、本発明の抗体の抗原結合フラグメントは、互いに非共有結合している、及び/又は1つもしくはそれ以上の単量体VHもしくはVLドメインとの(例えば、ジスルフィド結合により)、上に列挙された可変及び定常ドメイン構成のいずれかのホモ二量体又はヘテロ二量体(又は他の多量体)を含み得る。
【0037】
本明細書で使用される用語「抗体」は多選択性(例えば、二重特異性)抗体も含む。多選択性抗体又は抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、ここで各可変ドメインは、別の抗原、又は同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。いずれの多選択性抗体形式も、当該分野で利用可能な慣用の技術を使用して本発明の抗体又は抗体の抗原結合フラグメントの状況における使用のために適合され得る。例えば、本発明は、免疫グロブリンの一方のアームがIL-4Rα又はそのフラグメントに特異的であり、かつ免疫グロブリンの他方のアームは第二の治療剤に対して特異的か、又は治療部分に結合されている二重特異性抗体の使用を含む方法を含む。本発明の状況において使用され得る例となる二重特異性形式としては、限定することなく、例えば、scFvベース又は二重特異性抗体の二重特異性形式、IgG-scFv融合物、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、ノブ・イントゥ・ホールズ、共通軽鎖(例えば、ノブ・イントゥ・ホールとの共通軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、及びMab2二重特異性形式(
例えば、前述の形式の総説については、Klein et al.2012、mAbs 4:6、1-11、及びそこで引用される参考文献を参照のこと)。二重特異性抗体はまた、ペプチド/核酸結合体化を使用して構築することができ、例えば、ここでオルソゴナルな化学反応性を有する非天然アミノ酸は部位特異的抗体-オリゴヌクレオチド結合体を生成するために使用され、次いでこれが自己集合して規定された組成、原子価及び配置を有する多量体複合体となる。(例えば、Kazane et al.、J.Am.Chem.Soc.[Epub:2012年12月4日]を参照のこと)。
【0038】
本発明の方法において使用される抗体はヒト抗体であり得る。本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列から誘導された可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことを意図される。本発明のヒト抗体は、例えばCDR、及び特にCDR3において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされていないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発により又はインビボでの体細胞変異により導入される変異)。しかし、本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖系列から誘導されたCDR配
列がヒトフレームワーク配列上にグラフト化されている抗体を含むことは意図されない。
【0039】
本発明の方法において使用される抗体は組み換えヒト抗体であり得る。本明細書で使用される用語「組み換えヒト抗体」は、宿主細胞にトランスフェクトさらた組み換え発現ベクターを使用して発現された抗体(以下にさらに記載される)、組み換え体コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(以下にさらに記載される)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al.(1992) Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照のこと)、又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含むいずれかの他の手段により製造、発現、生成又は単離された抗体のような、組み換え手段により製造、発現、生成又は単離された全てのヒト抗体を含むことを意図される。このような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域及び定常領域を有する。しかし、特定の実施態様では、このような組み換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発(又は、ヒトIg配列についてトランスジェニックな動物が使用される場合、インビボ体細胞変異誘発)を受け、従って組み換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来しかつそれらに関連するが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しないかもしれない。
【0040】
特定の実施態様によれば、本発明の方法において使用される抗体はIL-4Rαに特異的に結合する。用語「特異的に結合する」又は同様のものは、抗体又はその抗原結合フラグメントが、生理条件下で比較的安定な複合体を抗原と形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを決定するための方法は当該分野で周知であり、これらとしては、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴等が挙げられる。例えば、本発明の状況において使用されるIL-4Rαに「特異的に結合する」抗体は、表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定して、約1000nM未満、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.25nM未満、約0.1nM未満、又は約0.05nM未満のKDでIL-4Rα又はその部分
に結合する抗体を含む。しかし、ヒトIL-4Rαに特異的に結合する単離された抗体は、他の(非ヒト)種由来のIL-4Rα分子のような他の抗原に対して交差反応性を有し得る。
【0041】
本発明の特定の例となる実施態様によれば、IL-4Rアンタゴニストは、米国特許第7,608,693号に示される抗IL-4R抗体のアミノ酸配列のいずれかを含む、重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、及び/又は相補性決定領域(CDR)を含む抗IL-4Rα抗体、又はその抗原結合フラグメントである。特定の例となる実施態様において、本発明の方法の状況において使用され得る抗IL-4Rα抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)及び配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。特定の実施態様によれば、抗IL-4Rα抗体又はその抗原結合フラグメントは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)及び3つのLCDR(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含み、ここでHCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含み;そしてLCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、抗IL-4R抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1を含むHCVR及び配列番号2を含むLCVRを含む。特定の例となる実施態様によれば、本発明の方法は、配列番号3-4-
5-6-7-8のHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列を含む抗IL-4R抗体(当該分野で「デュピルマブ」として知られる)、又はその生物学的同等物の使用を含む。特定の実施態様において、本発明の方法は抗IL-4R抗体の使用を含み、ここで抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施態様において、抗IL-4R抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む例となる抗体は、デュピルマブとして知られる完全ヒト抗IL-4R抗体である。特定の例となる実施態様によれば、本発明の方法はデュピルマブ又はその生物学的同等物の使用を含む。本明細書で使用される用語「生物学的同等物」は、単回用量又は複数回用量のいずれかで同様の実験条件下で同じモル用量で投与された場合に、その吸収の速度及び/又は程度がデュピルマブと有意な差異を示さない薬学的同等物又は薬学的代替物である抗IL-4R抗体又はIL-4R結合タンパク質又はそのフラグメントを指す。本発明の文脈において、この用語は、それらの安全性、純度及び/又は効力においてデュピルマブと臨床的に有意な差異を有していないIL-4Rに結合する抗原結合タンパク質を指す。
【0042】
本発明の方法の状況において使用することができる他の抗IL-4Rα抗体としては、例えば、AMG317(Corren et al.、2010、Am J Respir Crit Care Med.、181(8):788-796)、若しくはMEDI 9314と呼ばれ、当該分野で知られる抗体、又は米国特許第7,186,809号、米国特許第7,605,237号、米国特許第7,638,606号、米国特許第8,092,804号、米国特許第8,679,487号、若しくは米国特許第8,877,189号に示される抗IL-4Rα抗体のいずれかが挙げられる。
【0043】
本発明の方法の状況において使用される抗IL-4Rα抗体はpH依存性結合特徴を有し得る。例えば、本発明の方法における使用のための抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して酸性pHでIL-4Rαへの減少した結合を示し得る。あるいは、本発明の抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して酸性pHでその抗原への増強された結合を示し得る。表現「酸性pH」は、約6.2未満のpH値、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、又はそれ以下を含む。本明細書で使用される表現「中性pH」は約7.0~約7.4のpHを意味する。表現「中性pH」は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、及び7.4のpH値を含む。
【0044】
特定の例において、「中性pHと比較して酸性pHでIL-4Rαへの減少した結合」は、酸性pHでのIL-4Rαへの抗体結合のKD値 対 中性pHでのIL-4Rαへ
の抗体結合のKD値(又は逆もまた同様)の比で表される。例えば、抗体又はその抗原結
合フラグメントは、抗体又はその抗原結合が約3.0又はそれ以上の酸性/中性KD比を
示す場合に、本発明の目的のために「中性pHと比較して酸性pHでIL-4Rαへの減少した結合」を示すとみなされ得る。特定の例となる実施態様において、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントについての酸性/中性KD比は、約3.0、3.5、4.0、4
.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0、又はそれ以上であり得る。
【0045】
pH依存性結合特徴を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して酸性pHでの特定の抗原に対する減少した(又は増強された)結合について抗体集団をスクリーニングすることにより得られ得る。さらに、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの改変により、pH
依存性特徴を有する抗体が得られ得る。例えば、抗原結合ドメイン(例えばCDR内)の1つ又はそれ以上のアミノ酸をヒスチジン残基で置換することにより、中性pHと比較して酸性pHで減少した抗原結合を有する抗体が得られ得る。本明細書で使用される表現「酸性pH」は6.0又はそれ以下のpHを意味する。
【0046】
医薬組成物
本発明は、IL-4Rアンタゴニストを患者に投与することを含む方法を含み、ここでIL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)は医薬組成物内に含有される。本発明の医薬組成物は、適切な担体、賦形剤、及び適切な輸送、送達、忍容性などをもたらす他の薬剤とともに製剤化される。多数の適切な製剤が、全ての薬剤師に知られる処方集において見られ得る:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PA。これらの製剤としては、例えば、散剤、ペースト剤、軟膏、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、脂質(カチオン性又はアニオン性)含有小胞(例えば、LIPOFECTINTM)、DNA結合体、無水吸収ペースト、水中油及び油中水乳剤、carbowax乳剤(emulsions carbowax)(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固形ゲル、及びcarbowaxを含有する半固形混合物が挙げられる。Powell
et al.「Compendium of excipients for parenteral formulations」 PDA (1998) J Pharm
Sci Technol 52:238-311も参照のこと。
【0047】
本発明の方法に従って患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢及びサイズ、症状、状態、投与経路などに依存して変わり得る。用量は典型的には体重又は体表面積に従って計算される。状態の重症度に依存して、処置の頻度及び器官は調整され得る。抗IL-4R抗体を含む医薬組成物を投与するための有効投薬量及びスケジュールは経験的に決定され得る;例えば、患者の進行を定期的な評価によりモニタリングすることができ、そして用量はそれに従って調整され得る。さらに、投薬量の種間スケーリングは、当該分野で周知の方法を使用して行われ得る(例えば、Mordenti et al.、1991、Pharmaceut.Res.8:1351)。抗IL4R抗体の特定の例となる用量、及び本発明の状況において使用することができるそれを含む投与レジメンは本明細書の他所に開示される。
【0048】
様々な送達系が公知であり、そして本発明の医薬組成物を投与するするために使用することができる、例えば、リポソームでのカプセル化、マイクロパーティクル、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現することができる組み換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wu et al.、1987、J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照のこと)。投与方法としては、限定されないが、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路が挙げられる。組成物は、いずれかの都合の良い経路、例えば注入又はボーラス注射により、上皮又は粘膜裏層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を通した吸収により投与され得、そして他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。
【0049】
本発明の医薬組成物は、標準的な針及びシリンジを用いて皮下又は静脈内送達され得る。さらに、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスは、本発明の医薬組成物の送達において容易に有用性を有する。このようなペン型送達デバイスは、再使用可能か又は使い捨てであり得る。再使用可能ペン型送達デバイスは、一般的に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物が全て投与されてカートリッジが空になると、空のカートリッジを容易に廃棄することができ、そして医薬組成物を含有する新しいカートリッジと交換される。その後ペン型送達デバイスは再使用され得る。使い捨てペン型送達デバイスには交換可能カートリッジはない。むしろ、使い捨てペン型
送達デバイスは、デバイス内のリザーバ中に保持された医薬組成物を予め充填された状態である。リザーバから医薬組成物が空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0050】
多数の再使用可能ペン型及び自動注射器送達デバイスが本発明の医薬組成物の皮下送達において有用性を有する。例としては、限定されないが、少数の例を挙げると、AUTOPENTM(Owen Mumford、Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONICTMペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25TMペン、HUMALOGTMペン、HUMALIN 70/30TMペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPENTM I、II及びIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIORTM (Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BDTMペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPENTM、OPTIPEN PROTM、OPTIPEN STARLETTM、及びOPTICLIKTM (Sanofi-Aventis、Frankfurt、Germany)が挙げられる。本発明の医薬組成物の皮下送達において有用性を有する使い捨て可能ペン型送達デバイスの例としては、限定されないが、少数の例を挙げると、SOLOSTARTMペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPENTM(Novo Nordisk)、及びKWIKPENTM(Eli Lilly)、SURECLICKTM自動注射器(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLETTM(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey、L.P.)、並びにHUMIRATMペン(Abbott Labs、Abbott Park IL)が挙げられる。
【0051】
特定の状況において、医薬組成物は制御放出系で送達され得る。一実施態様において、ポンプが使用され得る(Langer、supra;Sefton、1987、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照のこと)。別の実施態様において、ポリマー材料が使用され得る;Medical Applications of Controlled Release、Langer and Wise (eds.)、1974、CRC Pres.、Boca Raton、Floridaを参照のこと。さらに別の実施態様において、制御放出系を組成物の標的の近傍に置くことができ、従って全身用量のほんの一部しか必要としない(例えば、Goodson、1984、in Medical Applications of Controlled Release、supra、vol.2、pp.115-138を参照のこと)。他の制御放出系はLanger、1990、Science 249:1527-1533による総説において考察される。
【0052】
注射可能製剤は、静脈内、皮下、皮内、及び筋内注射、点滴などのための投薬形態を含み得る。これらの注射可能製剤は、公知の方法により製造され得る。例えば、注射可能製剤は、例えば、上記の抗体又はその塩を、従来に注射に使用される滅菌水性媒体又は油性媒体中に溶解、懸濁化又は乳化させることにより製造され得る。注射のための水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコース及び他の補助剤を含有する等張液などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などのような適切な可溶化剤と組み合わせて使用され得る。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが使用され、これらは安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどのような可溶化剤と組み合わせて使用され得る。このようにして製造された注射剤は適切なアンプルに充填され得る。
【0053】
有利には、上記の経口又は非経口用途のための医薬組成物は、活性成分の用量に合うように適合された単位用量で製造されて投薬形態となる。このような単位用量の投薬形態としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが挙げられる。
【0054】
本発明の状況において使用され得る抗IL-4R抗体を含む例となる医薬組成物は、例えば、米国特許第8,945,559号に開示される。
【0055】
投薬量
本発明の方法に従って被験体に投与されるIL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)の量は、一般的に、治療有効量である。本明細書で使用される句「治療有効量」は:(a)アレルギーの予防;(b)アレルギー反応の処置又は重症度の減少;(c)血清アレルゲン特異的IgEのレベルの減少;(d)アレルゲン感作の減少;及び/又は(e)アレルギー反応に対する感受性の減少の1つ又はそれ以上を生じるIL-4Rアンタゴニストの量を意味する。
【0056】
抗IL-4R抗体の場合、治療有効量は、抗IL-4R抗体 約0.05mg~約600mg、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、又は約600mgであり得る。特定の実施態様において、抗IL-4R抗体75mg、100mg、150mg、200mg、又は300mgが被験体に投与される。
【0057】
個々の用量内に含有されるIL-4Rアンタゴニストの量は、患者の体重1キログラムあたりの抗体のミリグラムであらわされ得る(すなわち、mg/kg)。例えば、IL-4Rアンタゴニストは、約0.0001~約10mg/患者体重kgの用量で患者に投与され得る。
【0058】
組み合わせ治療
特定の実施態様によれば、本発明の方法は、1つまたはそれ以上のさらなる治療剤をIL-4Rアンタゴニストと組み合わせて被験体に投与することを含む。本明細書で使用される表現「と組み合わせて」は、さらなる治療剤が、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の前、後又は医薬組成物と同時に投与されることを意味する。用語「と組み合わせて」はまた、IL-4Rアンタゴニスト及び第二の治療剤の逐次的又は同時の投与を含む。
【0059】
例えば、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の「前」に投与される場合、さらなる治療剤は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の投与の約72時間、約60時間、約48時間、約36時間、約24時間、約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、約30分、約15分又は約10分前に投与され得る。IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の「後」に投与される場合、さらなる治
療剤は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の投与の約10分、約15分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間又は約72時間後に投与され得る。IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物と「同時」に又は共に投与は、さらなる治療剤が、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の投与の5分未満内に(前、後、又は同時)別々の投薬形態で被験体に投与されるか、又はさらなる治療剤及びIL-4Rアンタゴニストの両方を含む単一の組み合わせた投薬製剤として被験体に投与されることを意味する。
【0060】
さらなる治療剤は、例えば、別のIL-4Rアンタゴニスト、IL-1アンタゴニスト(例えば、US 6,927,044に示されるようなIL-1アンタゴニストを含む)、IL-6アンタゴニスト、IL-6Rアンタゴニスト(例えば、US 7,582,298に示されるような抗IL-6R抗体を含む)、IL-13アンタゴニスト、腫瘍壊死因子(TNF)アンタゴニスト、IL-8アンタゴニスト、IL-9アンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、IL-5アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、CD48アンタゴニスト、IL-31アンタゴニスト(例えば、US7,531,637に示されるものを含む)、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)アンタゴニスト(例えば、US
2011/027468に示されるものを含む)、インターフェロン-ガンマ(IFNγ)抗生物質、外用コルチコステロイド薬、タクロリムス、ピメクロリムス、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、クロモグリク酸ナトリウム、プロテイナーゼ阻害剤、全身性コルチコステロイド薬、全身性免疫療法、抗ヒスタミン薬、又はそれらの組み合わせであり得る。特定の実施態様において、抗IL4Rアンタゴニストを含む医薬組成物は、紫外(UV)光療法のような非医薬治療と併せて被験体に投与される。
【0061】
投与レジメン
本発明は、週に約4回、週に2回、週に1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、5週ごとに1回、6週ごとに1回、8週ごとに1回、12週ごとに1回の頻度で、又は治療応答が達成される限りより少ない頻度で、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を被験体に投与することを含む方法を含む。抗IL-4R抗体を含む医薬組成物の投与を含む特定の実施態様において、週に1回約75mg、150mg、200mg、又は300mgの量での用量投薬を使用することができる。
【0062】
本発明の特定の実施態様によれば、IL-4Rアンタゴニストの複数用量は、規定された時間経過にわたって被験体に投与され得る。本発明のこの局面に従う方法は、被験体にIL-4Rアンタゴニストの複数用量を逐次的に投与することを含む。本明細書で使用される「逐次的に投与すること」は、IL-4Rアンタゴニストの各用量が、異なる時点に、例えば所定の間隔(例えば、数時間、数日、週数間又は数ヶ月)だけ離れた異なる日に投与されることを意味する。本発明は、患者にIL-4Rアンタゴニストの単回初期用量、続いてIL-4Rアンタゴニストの1又はそれ以上の二次用量、そして場合により、続いてIL-4Rアンタゴニストの1又はそれ以上の三次用量を逐次的に投与することを含む方法を含む。
【0063】
用語「初期用量」、「二次用量」、及び「三次用量」は、IL-4Rアンタゴニストの投与の時間的順序を指す。したがって、「初期用量」は処置レジメンの初めに投与される用量であり(「ベースライン用量」とも呼ばれる);「二次用量」は初期用量の後に投与される用量であり;そして「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。初期、二次、及び三次用量は、全て同じ量のIL-4Rアンタゴニストを含有していてもよいが、一般に投与頻度に関して互いに異なり得る。しかし、特定の実施態様において、初期、二次及び/又は三次用量中に含有されるIL-4Rアンタゴニストの量は、処置の経過の間互いに異なる(例えば、必要に応じて上下に調整される)。特定の実施態様において
、1又はそれ以上(例えば、1、2、3、4、又は5)の用量が、「ローディング用量」として処置レジメンの初めに投与され、続いてその後の用量がより少ない頻度で投与される(例えば、「維持量」)。例えば、IL-4Rアンタゴニストは、約400mg又は約600mgのローディング用量、続いて約75mg~約300mgの1又はそれ以上の維持量でAD患者に投与され得る。一実施態様において、初期用量及び1又はそれ以上の二次用量は、それぞれIL-4Rアンタゴニスト50mg~600mg、例えばIL-4Rアンタゴニスト100mg~400mg、例えば、IL-4Rアンタゴニスト100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg又は500mgを含む。いくつかの実施態様において、初期用量及び1又はそれ以上の二次用量は、それぞれ同じ量のIL-4Rアンタゴニストを含有する。他の実施態様において、初期用量は第一の量のIL-4Rアンタゴニストを含み、そして1又はそれ以上の二次用量は、それぞれ第二の量のIL-4Rアンタゴニストを含む。例えば、IL-4Rアンタゴニストの第一の量は、IL-4Rアンタゴニストの第二の量の1.5x、2x、2.5x、3x、3.5x、4x又は5x若しくはそれ以上であり得る。
【0064】
本発明の1つの例となる実施態様において、各二次及び/又は三次用量は、直前の用量の1~14(例えば、1、11/2、2、21/2、3、31/2、4、41/2、5、51/2、6、61/2、7、71/2、8、81/2、9、91/2、10、101/2、11、111/2、12、121/2、13、131/2、14、141/2、又はそれ以上)週間後に投与される。本明細書で使用される句「直前の用量」は、複数回投与の順序で、介在する投与がなくその順序ですぐ次の用量の投与の前に患者に投与されるIL-4Rアンタゴニストの用量を意味する。
【0065】
本発明のこの局面に従う方法は、IL-4Rアンタゴニストのいずれかの数の二次及び/又は三次用量を患者に投与することを含み得る。例えば、特定の実施態様において、単回二次用量のみが患者に投与される。他の実施態様において、2又はそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上)の二次用量が患者に投与される。同様に、特定の実施態様において、単回三次用量のみが患者に投与される。他の実施態様において、2又はそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上)の三次用量が患者に投与される。
【0066】
複数の二次用量を含む実施態様において、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各二次用量は、直前の用量の1~2週間後に患者に投与され得る。同様に、複数の三次用量を含む実施態様において、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各三次用量は、直前の用量の2~4週間後に患者に投与され得る。あるいは、二次及び/又は三次用量が患者に投与される頻度は、処置レジメンの過程で変化し得る。投与頻度はまた、臨床試験後に個々の患者の必要性に依存して医師により処置の間に調整され得る。
【実施例0067】
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物を製造し使用する方法の完全な開示及び記載を当業者に提供するように示されるものであり、本発明者らが彼らの発明とみなす範囲を限定することは意図されない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確実にするために努力がなされたが、いくらかの実験誤差及び偏差が占めるはずである。特に示されていなければ、部数は質量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、室温は約25℃であり、そして圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【0068】
実施例1:中程度から重度のADを有する成人患者におけるデュピルマブの有効性を調べる臨床試験
試験設計及び目的
これは中程度から重度のADを有する成人患者に連続16週間毎週投与されたデュピルマブの安全性、有効性、バイオマーカープロフィール、機能的濃度及び免疫原性を評価するための32週無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群試験である。デュピルマブは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号1/2を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列対;並びに配列番号3~8を含む重鎖及び軽鎖CDR配列を含む完全ヒト抗IL-4R抗体である。
【0069】
適格患者を皮下(SC)デュピルマブ又はSCプラセボを投与されるように1;1の比で無作為に選んだ。無作為化を疾患重症度(中程度対重度AD)により階層化した。インフォームドコンセントを提供した後、患者をスクリーニング時に試験適格性について評価した。適格基準を満たした患者は、1日目/ベースライン評価、無作為化を受け、そしてローディング用量(試験薬400mg SC)、その後週に1回試験薬(200mg SC)を1週から15週まで受けた。この期間の間に、患者は週1回の評価を受け、大部分は臨床来診によるものであったが、一部は電話による接触によるものであった。患者の選択及び能力に依存して、患者及び/又は介護人は、最初の5回の処置来診(来診2、3、4、5及び6)時に試験薬の注射に関して試験施設で訓練を受け、その後来診7、9、11、13及び15では病院の外で試験薬を投与され、これは電話による接触のみを必要とした。安全性、検査及び臨床効果評価を特定の臨床来診時に行った。処置期間来診の終了は試験薬の最後の投薬の16週後であり、このときに主要評価項目を評価した。経過観察来診は18週~32週目まで2週ごとであった。試験来診の終了は32週目であった。
【0070】
ADについてのレスキュー処置(薬物療法及び/又は光線療法)を必要な場合に患者に施した。レスキュー処置を必要とした患者は試験処置を中止したが、試験評価のスケジュールには従い続けた。有効性測定(例えば、IGA、EASIなど)をいずれかのレスキュー処置を施す前に得た。
【0071】
臨床化学及び血液学、薬物濃度及び抗薬物抗体についてのサンプルを、試験の間の様々な時点で集めた。さらに、DNA解析のための1サンプル及びRNA解析のための複数のサンプルを集めた。
【0072】
患者の割り当ての際に特定の処置群になる傾向を避けるため、かつアウトカムに影響を与え得るベースライン変数に関して処置群間の系統的差異を最少にするために、処置割り当てを無作為に割り当てた。二重盲検設計は、治験責任医師又は患者が処置割り当てを知ることにより生じる臨床評価及び患者報告アウトカムにおけるいずれの可能性のあるバイアスも最少にするよう意図された。プラセボアームは、試験処置のいずれかの明白な効果の信頼できる参照を提供した。デュピルマブアームに割り当てられた患者は、1日目の400mgローディング用量の後、週に1回(qw)200mgを投与される。試験処置は、機能的デュピルマブの全身濃度を安定させるように16週間投与された。処置の後、デュピルマブクリアランスが試験来診の終了前に実質的に完了する(血漿濃度が定量下限より下)ことを確実にするために、全ての患者は16週間追跡された(すなわち、約5半減期)。
【0073】
試験の主要目的は、中程度から重度のADを有する成人患者において、プラセボと比較してデュピルマブの有効性を評価することであった。
【0074】
試験の副次的目的は:中程度から重度のADを有する成人患者において、(1)プラセボと比較してデュピルマブの安全性を評価すること;(2)デュピルマブの濃度を評価すること;及び(3)デュピルマブに対する潜在的抗薬物抗体応答をプラセボと比較して評価することであった。
【0075】
診査目的は:(1)表皮過形成に対するデュピルマブの効果を評価すること;(2)バイオマーカーに対するデュピルマブの薬力学(PD)効果を経時的に評価すること;及び(3)EASI応答に対する胸腺および活性化制御サイトカイン(thymus and
activation-regulated cytokine)(TARC)の予測値を評価することであった。
【0076】
標的集団は、外用薬適用で適切に制御されなかったか又は外用処置が勧められない(例えば、副作用又は安全性リスクのため)場合の中程度から重度のADを有する成人を含んでいた。適格患者を皮下(SC)デュピルマブ又はSCプラセボを投与するために1:1比で無作為化した。無作為化を疾患重症度(中程度対重度AD)により階層化した。患者は1日目に試験薬のローディング用量(400mg SC)を投与され、続いて1週から15週まで試験薬(200mg SC)の注射を週に1回受ける。患者は、-7日目から8日目まで外用皮膚軟化薬を塗布する必要があった。安全性、検査及び臨床効果評価を特定の臨床来診時に行った。臨床化学及び血液学、薬物濃度及び抗薬物抗体についてのサンプルを試験の間をとおして様々な時点で集めた。さらに、DNA解析のために1サンプル及びRNA解析のために複数のサンプルを集めた。処置期間来診の終了は16週目、試験薬の最後の投薬の1週後であり、このとき主要評価項目を評価した。経過観察来診は18週から32週まで2週ごとであった。試験来診の終了は32週目であった。
【0077】
試験における主要評価項目は、ベースラインから16週までのEASIスコアのパーセンテージ変化であった。副次的評価項目は:(1)16週目にIGA 0(クリア)又は1(ほとんどクリア)を達成した患者の比率;(2)16週目に≧2のIGAスコア減少を達成した患者の比率;(3)そう痒スコア(NRS及び4ポイント分類スケール)におけるベースラインからの絶対及びパーセント変化;(4)ベースラインから16週までのEASIスコアの絶対変化;(5)ベースラインから16週目までのSCORADスコアの絶対及びパーセント変化;(6)16週目にEASI-50、EASI-75及びEASI-90(EASIスコアにおけるベースラインからの50、75及び90%減少)を達成した患者の比率;(7)16週目にSCORAD-50、SCORAD-75及びSCORAD-90(SCORADスコアにおけるベースラインからの50、75及び90%減少)を達成した患者の比率;(8)POEMスコアにおけるベースラインからの絶対及びパーセント変化;(9)GISSコンポーネント(紅斑、浸潤/集団、表皮剥離、及び苔癬化)のベースラインからの変化;(10)GISS累積スコアのベースラインからの変化;(11)ベースラインから32週までのTEAEの発生率;並びに(12)ベースラインから32週までの期間にわたるデュピルマブ血清濃度を含んでいた。
【0078】
探索評価項目は:(1)病変皮膚における有意に減少した上皮過形成からなる組織学的応答を有し、かつ上皮厚さのベースラインからの≧40%減少及び/又は免疫組織化学によるK16発現の逆転として定義される患者の比率;(2)ベースラインから16週までのTARCの変化;(3)ベースラインから16週までのIgEの変化;(4)16週までのアレルゲン特異的IgEの変化;並びに(5)EASI応答に対するベースラインTARC及びIgEの相関を含む。
【0079】
患者選択
標的集団は、外用薬適用で適切に制御されなかったか又は局所処置が他の点で不適切である(例えば、副作用又は安全性リスクのため)中程度から重度のADを有する成人を含んでいた。
【0080】
組入基準: 患者は試験への組入れに適格であるために以下の基準を満たさなければならなかった:(1)男性又は女性、18歳又はそれ以上;(2)スクリーニング来診の前少なくとも3年間存在していた慢性AD;(3)スクリーニング来診時にEASIスコア
≧12、かつベースライン来診時≧16;(4)スクリーニング来診及びベースライン来診時にIGAスコア≧3(0~4 IGAスケールで);(5)スクリーニング来診及びベースライン来診時に≧10%BSAのAD関与;(6)外用薬適用を用いた外来処置に対する不適切な応答の文書化された最近の病歴(スクリーニング来診の前6ヶ月以内)を有するか、又は局所処置がその他の点で不適切であった(例えば、重大な副作用又は安全性リスクのため)患者[この治験実施計画書の目的のために、不適切な応答は、中程度から高い効力の外用コルチコステロイド薬(適切な場合、±外用カルシニューリン阻害剤)を用いた処置にもかかわらず寛解又は低い疾患活動度状態(例えば、IGA 0=クリア~2=軽度)の達成及び/又は維持の失敗を表した]。集中処置に対する応答の不適切性を評価するために、局所処置を、毎日少なくとも28日間又は製品処方情報により推奨される最大期間(例えば、超強力(super-potent)外用コルチコステロイド薬について14日間)のいずれか短い期間の間適用した。集中的な毎日の処置の後に、より低い集中的維持スケジュール(すなわち、週に2日)での局所薬物適用にもかかわらず低い疾患活動性状態を維持することができなかったことに基づいて応答の不適切性を決定した。治験責任医師又は患者を処置する医師により評価されて、潜在的処置利益を上回る重大な副作用又は安全性リスク(例えば、過敏症反応、重大な皮膚萎縮、全身性効果など、又はその切迫)。許容しうる文書は、外用コルチコステロイド薬及び/若しくは外用カルシニューリン阻害剤の処方、並びに処置アウトカム、患者を処置する医師とのやりとりに基づく治験責任医師の文書、又は他の形式の書類が利用可能でない事象における患者により提供された病歴(例えば、患者が過去6ヶ月間ADの医師に面会していなかった)を記録した同時チャート記録を含んでいた];(7)患者はベースライン来診の前少なくとも7日間、1日に2回安定用量の局所皮膚軟化剤(保湿剤)を塗布されていなければならない;(8)全ての臨床来診及び試験関連手順に協力的であり、かつ従うことができる;(9)試験関連質問票を理解しかつ全項目に記入することができる;及び(10)署名したインフォームドコンセントを提出する。
【0081】
除外基準: 以下は試験の除外基準であった:(1)デュピルマブを用いた臨床試験に事前参加;(2)ベースライン来診の前8週以内又は5半減期以内(既知の場合)のいずれか長い方の治験薬を用いた処置;(3)ベースライン来診前4週間以内に以下の処置、又は、治験責任医師の意見で、試験処置の最初の4週間の間に - 全身性コルチコステロイド薬、免疫抑制剤/免疫調節薬(例えば、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、IFNγ、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤、アザチオプリン又はメトトレキサート)、又はADのための光線療法のような処置を必要とするであろう状態;(4)ベースライン来診の前1週間以内に外用コルチコステロイド薬、タクロリムス及び/又はピメクロリムスを用いた処置;(5)以下のような生物製剤を用いた処置:リツキシマブを含むがこれに限定されない任意の細胞枯渇性薬剤:ベースライン来診の前6ヶ月以内、又はリンパ球及びCD 19+リンパ球数が正常に戻るまでのいずれか長い方;インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴル、アバタセプト、エタネルセプト、アナキンラ:いずれかの適応症のためにベースライン来診の前16週以内、又は皮膚適応症のために5年以内に、他の生物製剤:ベースラインの前5半減期(既知の場合)以内又は16週以内のいずれか長い方;(6)スクリーニング期間の間に処方保湿剤又はセラミド、ヒアルロン酸、尿素、又はフィラグリンのような添加剤を含有する保湿剤を用いたADの処置の開始(スクリーニング来診前に開始された場合、患者はこのような保湿剤の安定用量を使用し続けることができた);(7)ベースライン来診前4週以内に日焼け室/日焼け店の定期的使用(週に2回より多い訪問);(8)試験処置の間にいずれかの禁止された薬物及び手技の計画された又は予定された使用;(9)ベースライン来診前12週以内に(弱毒)生ワクチンを用いた処置;(10)、スクリーニング来診前4週以内に全身性抗生物質、抗ウイルス薬、抗寄生虫薬、抗原虫薬、若しくは抗真菌薬を用いた処置を必要とする慢性若しくは急性の感染症、又はスクリーニング来診前1週以内に表在性皮膚感染症;(11)感染の回復にもかかわらず、浸潤性日和見感染症(例えば、結核、ヒ
ストプラスマ症、リステリア症、コクシジオイデス症、ニューモシスチス症、アスペルギルス症)の病歴を含む既知又は疑われる免疫抑制、又はその他では異常な頻度の感染症再発、又は免疫不全(immune-compromised)状態を示唆する長期の感染症;(12)スクリーニング来診時にヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の既知の病歴又はHIV血清陽性;(13)スクリーニング来診時に陽性又は未定のB型肝炎表面抗原(HBsAg)、B型肝炎コア抗体(HBcAb)、又はC型肝炎抗体;(14)スクリーニング来診時に正常の上限の3倍より高い(>3 xULN)上昇したトランスアミナーゼ(ALT及び/又はAST);(15)ベースライン来診前12ヶ月以内に、処置された腟トリコモナス症意外の臨床的な内部寄生虫感染の病歴;(16)試験評価を妨げ得る皮膚併存疾患の存在;(17)完全に処置された子宮頸部の早期の非浸潤癌(in situ carcinoma)、及び完全に処置されそして回復した非転移性扁平上皮癌又は皮膚の基底細胞癌を除く、ベースライン来診の前5年以内に悪性腫瘍の病歴;(18)非悪性リンパ増殖性障害の病歴;(19)その後の医学的評価(例えば、便検査、血液検査など)が寄生虫感染/寄生の可能性を排除していなければ、寄生虫曝露に一致する環境である(例えば、長期滞在、農村又はスラム地域、流水の欠如、未調理、生焼け、又はその他の汚染している可能性のある食物の消費、保因者及び媒介動物などとの密接な接触)内部寄生虫感染に特有の地域内の居住又はそのような地域への最近の旅行のような寄生虫感染の高いリスク;(20)スクリーニング来診の前2年以内にアルコール又は薬物乱用の病歴;(21)試験への患者の参加に不利な影響を及ぼすであろう重篤な併発疾患。例としては、限定されないが、短い平均余命を有する患者、制御されない糖尿病(HbA1c≧9%)を有する患者、心臓血管状態を有する患者(例えば、ニューヨーク心臓協会心機能分類に従うステージIII又はIVの心不全)、重篤な腎臓状態(例えば、透析を受けている患者) 肝胆道状態(例えば、チャイルド・ピュー分類B又はC)、神経学的状態(例えば、脱髄性疾患)、活動性重度自己免疫疾患(例えば、ループス、炎症性腸疾患、関節リウマチなど)、他の重度の内分泌学的、胃腸、代謝、肺又はリンパ性疾患;(22)新しくかつ/若しくは十分に理解されていない疾患を示唆するか、この臨床試験への彼/彼女の参加の結果として試験患者に不当なリスクを提示し得るか、患者の参加を不確かにし得るか、又は試験評価を妨げる、スクリーニング時に関連する検査異常性を含むいずれかの他の医学的又は心理学的状態。これは、局所麻酔に対する過敏性、出血障害、抗凝固剤を用いた処置又は生検手順を不適切にし得る他の状態が挙げられる;(23)この試験への患者の参加の間に計画された大手術;(24)妊娠若しくは授乳している女性又は試験の間に妊娠するか若しくは母乳で育てることを計画している女性;並びに(25)生殖能がありかつ性的に活発な場合に適切な受胎調節を使用することを嫌がる女性。
【0082】
試験処置
患者は1日目に400mgデュピルマブの皮下ローディング用量を投与され、続いて1週から15週まで週に1回(qw)200mgを投与された。プラセボの患者は、1日目にローディング用量、続いて週に1回プラセボの皮下用量を1週から15週まで投与された。患者は-7日目から8日目まで局所皮膚軟化薬を1日に2回塗布することが必要であった。
【0083】
手順及び評価
この集団におけるデュピルマブの有効性を、AD疾患重症度スコア、生活の質(QOL)質問票、そう痒評価、及び患者報告アウトカムにより評価した。AD重症度スコアは、湿疹面積及び重症度指標(EASI)、治験責任医師の全体的評価(IGA)、そう痒数値化スケール(NRS)、体表面積(BSA)、5-Dそう痒、アトピー性皮膚炎スコアリング(SCORing Atopic Dermatitis)(SCORAD)、患者向け湿疹評価スコア(POEM)、及び全般症状スコア(GISS)のようなAD関連臨床パラメーターを含み、これらは米国特許出願公開第US2014/0072583号(参照により本明細書にその全体として加入される)に記載される。生活の質(QOL)
質問票は、US2014/0072583(参照によりその全体として加入される)に記載される、患者による疾患状態の全般的評価、皮膚疾患の生活の質評価(Dermatology Life Quality Index)(DLQI)、POEM、EQ-5D、かゆみQoL、及び病院不安およびうつ尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale)(HADS)を含んでいた。皮膚バリア機能試験、AD領域の写真、及び探索性マイクロバイオーム分析のための皮膚拭き取り検体サンプルも集めた。この集団におけるデュピルマブの安全性を、TEAE、詳細病歴、徹底的な身体検査、バイタルサイン、心電図(ECG)、及び臨床検査試験を評価することにより評価した。併用する薬物適用及び手技を、インフォームドコンセントから試験の終了までの期間集めた。盲検安全性データを継続して検討した。予め決められた時点に血液サンプルを薬物濃度及び抗デュピルマブ抗体レベルのために集めた。研究サンプル及び探索性バイオマーカー分析のためのサンプルを集めた。皮膚生検サンプルもまた探索性バイオマーカー分析のために集めた。
【0084】
統計解析
一次及び二次連続型変数を、処置及び無作為化階層(中程度対重度)、並びに関連する評価項目ベースライン値を共変量として用いる共分散(ANCOVA)モデルの解析を使用して解析した。有効性データを、レスキュー薬物適用が使用された後又は患者が試験を中止した後の欠測に対して設定した。次いで、全ての欠測値を、最終観察繰越(last
observation carried forward)(LOCF)法を使用して補完した。EASI及びそう痒NRSを、LOCFアプローチから誘導された、ベースラインから16週までの最小二乗(LS)平均(標準誤差[SE])パーセント変化として報告した。
【0085】
結果
患者配置及びベースライン特徴:54人の患者を、プラセボ(n=27)又はデュピルマブ200mg qw(n=27)に無作為に選んだ。ベースライン人口動態及び臨床特徴は、処置群間でバランスが取れていた(表1)。75%より多くの患者は、抗ヒスタミン薬、外用コルチコステロイド薬(効力によりI、II及びIII群)、及び閉塞性気道疾患のための薬物を含む以前の薬物適用を使用したことがあった。プラセボでのより高い比率の患者がデュピルマブの患者よりコルチコステロイド薬を使用していた。
【0086】
【0087】
有効性:デュピルマブ処置は、プラセボ(SE)と比較してベースラインから16週までEASIスコアを有意に改善した(減少した):-75.2%(8.15)対-5.8%(8.16);P<0.0001(
図1)。毎週のピークそう痒NRSもまた、プラセボ(SE)と比較してデュピルマブ処置でベースラインから16週まで有意に減少した:-51.5%(10.2)対-6.3%(10.0);P=0.0027(
図2)。プラセボ群[1/27(3.7%)]と比較してより高い比率のデュピルマブ群患者[14/27 (51.9%)]が、16週までに≧2ポイントのIGAの減少を達成した。どの患者も達成しなかったプラセボ群と比較して、デュピルマブ群患者の37%が0(クリア)又は1(ほとんどクリア)を週ごとに(by week)達成した。16週までに彼らのEASIスコアの減少を達成した患者の比率は、EASI-50(21/27[77.8%]デュピルマブ 対 6/27[22.2%]プラセボ、p<0.0001)、EASI-75(18/27[66.7%]デュピルマブ 対 4/27[14.8%]プラセボ、p=0.0001)、及びEASI-90(9/27[33.3%]デュピルマブ
対 0/27[0%]プラセボ、p=0.0011)を有する患者の比率により裏付けられるように、プラセボ群よりもデュピルマブ群において一貫して高かった。ベースラインから16週までのSCORADスコアのLS平均(±SE)パーセンテージ変化は、絶対平均SCORADの変化と一致していた(-54.8±5.40%デュピルマブ 対 -8.2±5.41%、p<0.0001)。16週までに50%SCORAD減少(SCORAD-50)を達成した患者の比率は、プラセボ群よりもデュピルマブ群においてより高いことが観察された(15/27[55.6%]デュピルマブ 対 2/27[7.4%]プラセボ、p=0.0002)。デュピルマブ群は、ベースラインから16週までに-69.0±12.61%のBSA関与のベースラインからのLS平均(±SE)パーセンテージ減少を示したが、一方でプラセボ群は13.6±12.61%の増加を示した。
【0088】
安全性:デュピルマブは安全でかつ十分に忍容性であり、そして許容しうる安全性プロフィールを有していた。デュピルマブ群における23/27人(85.2%)の患者及びプラセボ群における24/27人(88.9%)の患者は少なくとも1のTEAEを有していた。深刻なTEAEがプラセボ群において3/27人(11.1%)の患者において報告され、そしてデュピルマブ群では全く報告されなかった。大部分のTEAEは軽度又は中程度の重症度であった。一般的なTEAE(医薬品規制用語集(Medical Dictionary for Regulatory Activities)[MedDRA]基本語による)は、上咽頭炎(デュピルマブ:3/27人[11.1%]の患者;プラセボ:5/27人の[18.5%]患者)、上気道感染症(それぞれ4/27[14.8%]及び4/27[14.8%])、ウイルス性上気道感染症(それぞれ3/27[11.1%]及び2/27[7.4%])及び注射部位反応(MedDRA高位グループ語;それぞれ5/27[18.5%]及び1/27[3.7%])を含んでいた。
【0089】
実施例2:バイオマーカー分析
A.試験A
試験「A」において、血清バイオマーカーを、中程度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)を有する被験体を含む臨床試験からのサンプルにおいて測定した。ADを有する被験体に、デュピルマブ(200mg)又はプラセボのいずれかの週に1回の用量を16回投与した;デュピルマブの患者は1日目に400mgのローディング用量を投与された。胸腺および活性化制御ケモカイン(TARC)、肺及び活性化制御ケモカイン(PARC)、ペリオスチン、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、好酸球、総IgE、及び抗原特異的IgEのようなAD関連血清バイオマーカーは、米国特許出願公開第US2014/0072583号(参照によりその全体として加入される)。
【0090】
血清バイオマーカーをスクリーニングと32週との間の様々な時点で測定し、これは:血清TARC(ヒトCCL17/TARC Quantikine ELISAキット;R&D Systems、Minneapolis、MN、USA)及びペリオスチン(ヒトペリオスチン/OSF-2 DuoSet 15プレート;R&D Systems)を含んでいた。血清中の総IgE及びアレルゲン特異的IgEをImmunoCapアッセイ(ImmunoCAPR蛍光酵素イムノアッセイ;Thermo Scientific、Uppsala、Sweden)により測定した。アレルゲンIgEパネルを、その地域の一般的な空中アレルゲン(aeroallergens)について黄色ブドウ球菌(S.aureus)エンテロトキシンA及びB IgEと一緒に確立した。アレルゲン特異的IgEについて、定量下限は0.10kU/Lであり;レベル≧0.35kU/Lをアレルゲン感作の証拠とみなした。
【0091】
探索的変数(Exploratory variables)、血清バイオマーカーTARC、PARC、ペリオスチン及び総IgEをベースラインからの平均(SE)パーセント変化としてプロットした;抗原特異的IgE存在量をベースラインからのパーセント変化中央値(四分位範囲[IQR])として報告した。データをレスキュー薬物適用後の欠測に対して設定した。変数は多重度について調整されず、従って名目p値が示される。
【0092】
【0093】
表2は両方の処置群におけるベースラインバイオマーカースコアを示す。血清TARC、PARC及びペリオスチンにおける急速かつ有意な減少(
図3~5)がプラセボと比較してデュピルマブ処置で観察された。血清総IgEレベルは、処置期間の間徐々に減少し、プラセボと比較してデュピルマブ群において16週目に有意な減少を示した(
図6)。
【0094】
1週目から試験の終了(32週)までのベースラインからの抗原特異的IgE平均及び中央値の減少は、試験した全てのアレルゲンパネルに対して誘発されたIgEについて顕著であり、これは、ハンノキ、アルテルナリア・テナース、ギョウギシバ、シダレカンバ、ネコ皮屑、クラドスポリウム、ゴキブリ(チャバネ)、コナヒョウヒダニ(コダニ類)、イヌ皮屑、ニレ、ヒメモロコシ、ホワイトオーク、ブタクサ、マグワート・セージ、オオアワガエリ(アワガエリ属)、アメリカトネリコ、ブドウ球菌エンテロトキシンA、又はブドウ球菌エンテロトキシンBがを含んでいた。デュピルマブは、プラセボと比較して広範囲の血清アレルゲン特異的IgEを有意に抑制した(
図7;ベースラインから16週までのベースライン中央値(IQR)及びパーセント変化中央値(IQR))。
【0095】
B.試験B
「試験B」において、血清バイオマーカーを、中程度から重度のADを有する被験体を含む臨床試験からのサンプルにおいて測定した。ADを有する被験体を、週に1回皮下プラセボを用いた16週の処置;又は4週ごとに(q4w)デュピルマブ100mg、30
0 mg q4w、2週ごとに(q2w)200mg、300 mg q2w、若しくは週に1回(qw)300mgを投与されるように1:1:1:1:1:1の比で無作為に選んだ。300mg用量群の患者にローディング用量600mgを投与したが、200及び100mg用量群には1日目に400mgを投与した。16週の処置期間の後に、16週の安全性経過観察が続いた(合計32週の試験期間)。胸腺および活性化制御ケモカイン(TARC)、肺及び活性化制御ケモカイン(PARC)、ペリオスチン、乳酸デヒドロゲナーゼ、好酸球、総IgE、及び抗原特異的IgEのようなAD関連血清バイオマーカーは、米国特許出願公開第US2014/0072583号(参照によりその全体として加入される)に記載される。
【0096】
スクリーニングと32週との間の様々な時点で測定された血清バイオマーカーは:TARCの血清レベル(ヒトCCL17/TARC Quantikine ELISAキット;R&D Systems、Minneapolis、MN、USA);血清ペリオスチン(ヒトペリオスチン/OSF-2 DuoSet 15プレート;R&D Systems);LDH(Rocheモジュラー及びCobasアナライザー(Roche Diagnostics、Indianapolis、IN、USA);白血球百分率数(differential cell count)の一部として決定された好酸球数;並びに血清中の総IgE及び抗原特異的IgE(ImmunoCapアッセイにより測定された(ImmunoCAPR蛍光酵素イムノアッセイ;Thermo Scientific、Phadia AB、Uppsala、Sweden)を含んでいた。
【0097】
アレルゲン特異的IgEについては、定量下限LLQ)は0.10 kU/Lであり;レベル≧0.35kU/Lはアレルゲン感作の証拠とみなされた。
【0098】
血清バイオマーカーTARC、ペリオスチン及びLDHの平均パーセント変化、並びに総IgE及びアレルゲン特異的IgEの中央値パーセント変化を、ベースライン値を共変量として用いた共分散解析を使用してプラセボに対してデュピルマブ投薬レジメンの各々について16週目に比較した。
【0099】
プラセボに対してデュピルマブでのベースラインから16週までの減少が、黄色ブドウ球菌(S.aureus)エンテロトキシンに対して特異的なものを含めて血清中の多数の抗原特異的IgEにおいて観察された(
図8及び9)。
【0100】
実施例3:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)皮膚コロニー形成
皮膚微生物コロニー形成分析を、デュピルマブの臨床試験に参加した被験体から採取したサンプルで行った。中程度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)を有する被験体に、週に1回デュピルマブ(200mg)又はプラセボのいずれか用量を16回投与した;デュピルマブの患者に1日目にローディング用量400mgを投与した。黄色ブドウ球菌コロニー形成及び感染を、スクリーニングと32週との間にAD病変及び非病変皮膚で決定した。皮膚拭き取り検体(予めTris-EDTA緩衝液で湿らせた)を、前処理した皮膚領域(約10cm x 10cm)から集め、そして黄色ブドウ球菌の存在について試験した。拭き取り検体中に含有される細菌細胞をリンスし、そして総ゲノムDNAを精製した。総細菌ゲノムDNAからの黄色ブドウ球菌特異的femA DNAの存在量を、定量的実時間PCR(qPCR)を使用して決定した。黄色ブドウ球菌の相対的コロニー形成単位(rCFU)を、既知のCFUの黄色ブドウ球菌からのゲノムDNAを用いて生成された標準曲線を使用して決定した。黄色ブドウ球菌存在量をベースラインからのパーセント変化中央値(四分位範囲[IQR])として報告した。データをレスキュー薬物適用後の欠測に設定した。変数は多重度について調整されず、従って名目p値が示される。
【0101】
デュピルマブはAD病変皮膚において黄色ブドウ球菌を有意に減少させ(プラセボと比較したベースラインから16週までの%変化中央値[P=0.0125;表3])、そしてベースラインからの全体的減少が、プラセボと比較して黄色有働球菌存在量中央値で16週目に観察された(
図10)。
【0102】
【0103】
非病変AD皮膚において、デュピルマブ群は、プラセボと比較して黄色ブドウ球菌存在量において数値的により大きな減少(ベースラインから16週までの%変化中央値[表3;P=0.9865])、及びプラセボと比較したベースラインから16週までの全体的減少中央値(
図11)を示した。
【0104】
実施例4:デュピルマブは併存する通年性アレルギー性鼻炎(PAR)を有する非管理持続性ぜん息患者においてPARの症状を改善する
抗インターロイキン(IL)-4受容体-αモノクローナル抗体であるデュピルマブは、2型炎症の鍵となるドライバーであるIL-4及びIL-13シグナル伝達を阻害する。ピボタルフェーズ2b試験(NCT01854047)において、デュピルマブは、1秒間の強制呼気量を改善し、重度のぜん息増悪を減少させ、生活の質を改善し、そして中程度から高用量の吸入コルチコステロイド薬及び長時間作用性β2-アゴニスト(ICS
+LABA)の使用にもかかわらず制御されない持続性のぜん息を有する患者において全体的に十分忍容性であった。この事後解析は、ぜん息の一般的な併存症である通年性アレルギー性鼻炎(PAR)を有する患者における副鼻腔アウトカム試験(Sino-Nasal Outcome Test)(SNOT-22)総スコアさらにはアレルギー性鼻炎に典型的に関連する個々の項目(鼻閉、鼻水、くしゃみ、及び後鼻漏)に対するデュピルマブの効果を調べる。PARは、試験参加時の多年生抗原(アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、ネコ皮屑、コナヒョウヒダニ(D.farinae)、ヤケヒョウヒダニ(D.pteronyssinus)、イヌ皮屑、チャバネゴキブリ、又はトウヨウゴキブリ)に対する特異的IgE≧0.35Ku/Lの存在により定義された。可能な交絡効果のために、併存する鼻ポリープを有する患者は解析から除外された。フェーズ3(NCT02414854)において現在研究中のデュピルマブレジメン2週ごとに[q2w]200又は300mgのいずれかを投与された治療企図集団についてデータが報告された。評価項目は、SNOT-22総スコア、さらには個々の項目、後鼻漏、鼻閉、鼻水、及びくしゃみのベースラインからの24週までの変化であった。デュピルマブ(200又は300mg q2w)又はプラセボを投与された392人の患者のうち、241人(61%)がPARを有していた。PAR患者において、デュピルマブ300mg q2wは、プラセボと比較して上で定義されるようにSN
OT-22総スコア(LS平均差異-5.98[95% CI、-10.45~-1.51]、P=0.009対プラセボ)及び全ての4つのアレルギー性鼻炎関連症状に対して有意な改善を示した(鼻閉:-0.60 [95% CI、-0.96~-0.25];鼻水:-0.67[95%CI、-1.04~-0.31];くしゃみ:-0.55[95% CI、-0.89~-0.21];及び後鼻漏:-0.49[95%CI、-0.83~-0.16];全てのP<0.01対プラセボ);デュピルマブ200mg q2wは、数値的であるが統計的に有意ではない減少を、SNOT-22総スコア(-1.82[95%CI、-6.46~2.83]、P=0.443)、さらには4つのアレルギー性鼻炎関連症状において示した。プラセボと比較した差異は非PAR患者においてSNOT-22総スコア及び4つのアレルギー関連症状において観察されなかった。結論として、デュピルマブ300mg q2wは、制御されない持続性ぜん息及び併存PARを有する患者において副鼻腔症状を有意に改善する。
【0105】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施態様により範囲を限定されるべきではない。実際に、本明細書に記載されるものに加えて本発明の改変が、前述の記載及び添付の図面から当業者に明らかとなるだろう。このような改変は添付の特許請求の範囲の範囲内であることを意図される。
(a)上昇したレベルの血清アレルゲン特異的IgEを有する被験体を選択すること;及び(b)治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストをそれを必要とする被験体に投与することを含む、被験体においてアレルギーを予防又は処置するための方法。