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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169729
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20221101BHJP
   F21V 14/04 20060101ALI20221101BHJP
   F21W 102/14 20180101ALN20221101BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20221101BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20221101BHJP
【FI】
B60Q1/14 A
F21V14/04
F21W102:14
F21Y115:10
F21Y115:30
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135644
(22)【出願日】2022-08-29
(62)【分割の表示】P 2019548213の分割
【原出願日】2018-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2017199342
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017203955
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017211805
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017228053
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】川端 直樹
(72)【発明者】
【氏名】村上 健太郎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】駆動部の長寿命化を図ることができ、かつ、運転者に与える違和感や不快感を低減できる車両用灯具を提供する
【解決手段】車両用灯具18は、第1光源28と、駆動部36と、駆動部36に駆動されて周期運動を繰り返すことにより第1光源28の出射ビームを走査する反射体38と、を含む第1灯具ユニット24と、第1灯具ユニット24を制御する灯具制御部20と、を備える。灯具制御部20は、第1灯具ユニット24によりビームを照射するよう照射指示を受けた後にビームの照射を停止するよう停止指示を受けた場合でも、第1の時間T1が経過するまで駆動部36の駆動を指示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方に配光パターンを形成する灯具ユニットと、
前記配光パターンが、前方車両に適応させた非照射領域であって、照度が所定値以下である非照射領域を有するように前記灯具ユニットを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記配光パターンの照射領域が、非照射領域との境界近傍に、非照射領域側ほど照度が低くなる遷移領域であって、非照射領域側の端部における照度が前記所定値となる遷移領域を有し、自車両と前方車両との車間距離が短いほど当該遷移領域における照度変化が緩やかとなるように、前記灯具ユニットを制御することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記制御部は、前方車両が対向車であり、当該対向車に対応する非照射領域の左右両側に照射領域を形成する場合、2つの照射領域のうちの自車線から遠い側の照射領域の遷移領域における照度変化が、自車線に近い側の照射領域の遷移領域における照度変化よりも緩やかとなるように、前記灯具ユニットを制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記制御部は、前方車両に対応する非照射領域の左右両側に照射領域を形成する場合、(i)前方車両が前方車両から見て左カーブを走行している場合、2つの照射領域のうちの自車両から見て左側の照射領域の遷移領域における照度変化が、自車両から見て右側の照射領域の照射遷移領域における照度変化よりも緩やかとなるように、前記灯具ユニットを制御し、(ii)前方車両が前方車両から見て右カーブを走行している場合、2つの照射領域のうちの自車両から見て右側の照射領域の遷移領域における照度変化が、自車両から見て左側の照射領域の遷移領域における照度変化よりも緩やかとなるように、前記灯具ユニットを制御することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記灯具ユニットは、光源と、周期運動を繰り返すことにより当該光源の出射ビームを走査する反射体と、を含み、
前記制御部は、1走査期間中の一部の時間区間において前記光源の輝度を所定値以下とさせることにより、当該時間区間に対応する領域に非照射領域を形成させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記光源は1以上の発光ユニットを含み、
前記制御部は、前記1以上の発光ユニットのうちの少なくとも1つの発光ユニットの1走査期間内における点灯期間を周期的に変化させることにより、非照射領域と照射領域との間の照度変化を調整することを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記光源は複数の発光ユニットを含み、
前記制御部は、点灯させる発光ユニットの個数を変化させることにより、非照射領域と照射領域との間の照度変化を調整することを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記灯具ユニットは、ハイビーム領域を照射する灯具ユニットであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項8】
光源と、
周期運動を繰り返すことにより前記光源の出射ビームを走査する光学系と、
前記光源の点消灯を制御して所定の配光パターンを形成する制御部と、を備え、
前記制御部は、
1走査期間中の一部の時間区間において前記光源の輝度を所定値以下とすることにより、前記配光パターンのうち、当該時間区間に対応する領域に非照射領域を形成し、
非照射領域を照射領域に切り替える場合、非照射領域の車幅方向における一端から他端に向かって徐々に非照射領域を照射領域に切り替えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項9】
前記制御部は、非照射領域を照射領域に切り替える場合、非照射領域の車幅方向における両端のうち、前記配光パターンの中央部に近い側の端部から遠い端部に向かって徐々に非照射領域を照射領域に切り替えることを特徴とする請求項8に記載の車両用灯具。
【請求項10】
前記制御部は、非照射領域の大きさによらず、一定時間で非照射領域の全体を照射領域に切り替えることを特徴とする請求項8または9に記載の車両用灯具。
【請求項11】
前記一定時間は、100~1000msecであることを特徴とする請求項10に記載の車両用灯具。
【請求項12】
非照射領域が前記配光パターンの中央部を含む場合、
前記制御部は、中央部までとそれ以降とで異なる速度で非照射領域を照射領域に切り替えることを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項13】
中央部までを照射領域に切り替える速度である第1速度は、中央部以降を照射領域に切り替える速度である第2速度よりも大きいことを特徴とする請求項12に記載の車両用灯具。
【請求項14】
前記光学系の周期運動の周期は2~10msecの範囲にあり、
前記制御部は、前記光学系の周期運動の周期ごとに、非照射領域を小さくすることを特徴とする請求項8から13のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項15】
第1発光ユニットと、第2発光ユニットと、周期運動を繰り返すことにより前記第1発光ユニットおよび前記第2発光ユニットそれぞれの出射ビームを走査する光学系と、を含む灯具ユニットと、
前記周期運動と同期させて、前記第1発光ユニットおよび前記第2発光ユニットそれぞれの1走査期間内における点灯期間を個別に設定することにより、前記第1発光ユニットおよび前記第2発光ユニットそれぞれに基づく走査ビームが合成された配光パターンを形成する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1発光ユニットおよび前記第2発光ユニットのうちの少なくとも一方の発光ユニットの1走査期間内における点灯期間を変更させることにより、配光パターンの照度分布を変化させることを特徴とする車両用灯具。
【請求項16】
前記制御部は、前記第1発光ユニットおよび前記第2発光ユニットのうちの一方の発光ユニットを消灯させることにより、合成配光パターンの照度を調整することを特徴とする請求項15に記載の車両用灯具。
【請求項17】
前記制御部は、繰り返し走査するうちの所定の割合で、前記第1発光ユニットおよび前記第2発光ユニットのうちの少なくとも一方の発光ユニットを1走査期間中消灯させることにより、合成配光パターンの照度を調整することを特徴とする請求項15または16に記載の車両用灯具。
【請求項18】
前記灯具ユニットは、ハイビーム領域を照射する灯具ユニットであることを特徴とする請求項15から17のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項19】
本車両用灯具は前照灯として用いられ、
前記制御部は、車両前方の道路形状に応じて前記配光パターンの照度のピーク位置が移動するように、前記第1発光ユニットおよび前記第2発光ユニットのうちの少なくとも一方の発光ユニットの1走査期間内における点灯期間を変更させることを特徴とする請求項15から18のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、一般にロービームとハイビームとを切りかえることが可能である。ロービームは、近方を所定の照度で照明するものであって、対向車や先行車にグレアを与えないよう配光規定が定められており、主に市街地を走行する場合に用いられる。一方、ハイビームは、前方の広範囲および遠方を比較的高い照度で照明するものであり、主に対向車や先行車が少ない道路を高速走行する場合に用いられる。したがって、ハイビームはロービームと比較してより運転者による視認性に優れているが、車両前方に存在する車両の運転者や歩行者にグレアを与えてしまうという問題がある。
【0003】
近年、車両の周囲の状態にもとづいて、ハイビームの配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)技術が提案されている。ADB技術は、車両の前方の先行車、対向車や歩行者の有無を検出し、車両あるいは歩行者に対応する領域を減光するなどして、車両あるいは歩行者に与えるグレアを低減するものである。
【0004】
ADB機能を実現する方式として、アクチュエータを制御するシャッター方式、ロータリー方式、LEDアレイ方式などが提案されている。シャッター方式やロータリー方式は、消灯領域(遮光領域)の幅を連続的に変化させることが可能であるが、消灯領域の数が1個に制限される。LEDアレイ方式は、消灯領域を複数個、設定することが可能であるが、消灯領域の幅が、LEDチップの照射幅に制約されるため、離散的となる。
【0005】
本出願人は、これらの問題点を解決可能なADB方式として、スキャン方式を提案している(特許文献1参照)。スキャン方式では、駆動部に駆動されて周期運動を繰り返す反射体に光源からの光を入射し、反射体がその周期運動における位置に応じた角度で入射光を反射して反射光を車両前方で走査しつつ、光源の点消灯あるいは光量を、反射体の周期運動における位置に応じて変化させることで、車両前方に、所望の配光パターンを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-088283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(1)スキャン方式の車両用灯具では、駆動部ひいては反射体の動作が安定する前に光源を点灯すると、ちらつきが発生しうるため、動作が安定するのを待ってから光源を点灯する。そのため、駆動部の寿命を考慮して、光源の非点灯時は駆動部を停止させることとすると、光源を点灯する度に駆動部の動作が安定するのを待つことになる。この場合、期待されるタイミングで光源が点灯しないため、運転者に違和感や不快感を与えうる。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、駆動部の長寿命化を図ることができ、かつ、運転者に与える違和感や不快感を低減できる車両用灯具を提供することにある。
【0009】
(2)本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、運転者の快適性を高めることができる車両用灯具の提供にある。
【0010】
(3)スキャン方式の車両用灯具では、光源の輝度を1走査内の時間区間ごとに任意の輝度に切り替え可能であれば、すなわち光源に供給する駆動電流を1走査内の時間区間ごとに任意の電流値に切り替え可能であれば、配光パターンの照度分布を任意の照度分布に切り替えることができる。しかしながら、発光ユニットに供給する駆動電流を1走査内の時間区間ごとに任意の電流値に切り替えられるようにするには、DA変換に対応したマイコンを利用するか、電流制御分解能分のマイコンポート出力と周辺部品が必要となり、コストの増大を招きうる。
【0011】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、比較的低コストでありながら、配光パターンの照度分布を切り替えられる車両用灯具の提供にある。
【0012】
(4)本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、さまざまな状況において、適切な配光を形成可能な車両用灯具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明のある態様の車両用灯具は、光源と、駆動部と、当該駆動部に駆動されて周期運動を繰り返すことにより当該光源の出射ビームを走査する反射体と、を含む灯具ユニットと、灯具ユニットを制御する制御部と、を備える。制御部は、灯具ユニットの照射指示を受けた後に灯具ユニットの停止指示を受けた場合でも、第1の時間が経過するまで駆動部の駆動を指示する。
【0014】
本発明の別の態様もまた、車両用灯具である。この車両用灯具は、第1の照射領域を照射可能な第1灯具ユニットと、第2の照射領域を照射可能な第2灯具ユニットと、第1灯具ユニットおよび第2灯具ユニットを制御する制御部と、を備える。第1灯具ユニットは、光源と、駆動部と、当該駆動部に駆動されて周期運動を繰り返すことにより当該光源の出射ビームを走査する反射体と、を含む。制御部は、第1灯具ユニットの照射指示を受けた後に第1灯具ユニットの停止指示を受けた場合でも、第1の時間が経過するまで駆動部の駆動を指示し、第2灯具ユニットが照射しているときは、第1灯具ユニットの照射指示にかかわらず、駆動部の駆動を指示する。
【0015】
本発明のさらに別の態様もまた、車両用灯具である。この車両用灯具は、第1の照射領域を照射可能な第1灯具ユニットと、第2の照射領域を照射可能な第2灯具ユニットと、第1灯具ユニットおよび第2灯具ユニットを制御する制御部と、を備える。第1灯具ユニットは、光源と、駆動部と、当該駆動部に駆動されて周期運動を繰り返すことにより当該光源の出射ビームを走査する反射体と、を含む。制御部は、第1灯具ユニットおよび第2灯具ユニットの照射指示を受けた後に第1灯具ユニットおよび第2灯具ユニットの停止指示を受けた場合でも、第1の時間が経過するまで駆動部の駆動を指示する。
【0016】
(2)本発明の別の態様の車両用灯具は、光源と、周期運動を繰り返すことにより光源の出射ビームを走査する光学系と、光源の点消灯を制御して所定の配光パターンを形成する制御部と、を備える。制御部は、1走査期間中の一部の時間区間において光源の輝度を所定値以下とすることにより、配光パターンのうち、当該時間区間に対応する領域に非照射領域を形成し、非照射領域を照射領域に切り替える場合、非照射領域の車幅方向における一端から他端に向かって徐々に非照射領域を照射領域に切り替える。
【0017】
(3)本発明のさらに別の態様の車両用灯具は、第1発光ユニットと、第2発光ユニットと、周期運動を繰り返すことにより第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットそれぞれの出射ビームを走査する光学系と、を含む灯具ユニットと、周期運動と同期させて、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットそれぞれの1走査期間内における点灯期間を個別に設定することにより、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットそれぞれに基づく走査ビームが合成された配光パターンを形成する制御部と、を備える。制御部は、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットのうちの少なくとも一方の発光ユニットの1走査期間内における点灯期間を変更させることにより、配光パターンの照度分布を変化させる。
【0018】
(4)本発明のさらに別の態様の車両用灯具は、車両前方に配光パターンを形成する灯具ユニットと、配光パターンが、前方車両に適応させた非照射領域であって、照度が所定値以下である非照射領域を有するように灯具ユニットを制御する制御部と、を備える。制御部は、配光パターンの照射領域が、非照射領域との境界近傍に、非照射領域側ほど照度が低くなる遷移領域であって、非照射領域側の端部における照度が所定値となる遷移領域を有し、自車両と前方車両との車間距離が短いほど当該遷移領域における照度変化が緩やかとなるように、灯具ユニットを制御する。
【0019】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、駆動部の長寿命化を図ることができ、かつ、運転者に与える違和感や不快感を低減できる。また本発明の別の態様によれば、運転者の快適性を高めることができる。また本発明のさらに別の態様によれば、比較的低コストでありながら、配光パターンの照度分布を切り替えられる車両用灯具を提供できる。また、本発明のさらに別の態様によれば、さまざまな状況において、適切な配光を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施の形態に係る車両用灯具を備える車両灯具システムの構成を示す模式図である。
図2】照射指示と停止指示とが、第1灯具ユニット24および第2灯具ユニット26に対して実質的に同時に、比較的頻繁に繰り返される場合の動作を示す図である。
図3】第1灯具ユニットに対する照射指示および停止指示と、第2灯具ユニットに対する照射指示および停止指示とが独立してなされる場合の動作を示す図である。
図4】変形例に係る車両灯具システムにおいて、第1灯具ユニットに対する照射指示および停止指示と、第2灯具ユニットに対する照射指示および停止指示とが独立してなされる場合の動作を示す図である。
図5】第2の実施の形態に係る車両用灯具を備える車両灯具システムの構成を示す模式図である。
図6図5の灯具ユニットの斜視図である。
図7図7(a)~(c)は、配光パターンの形成を説明する図である。
図8図8(a)、(b)は、非照射領域(消灯領域)の形成を説明する図である。
図9図9(a)~(c)は、非照射領域から照射領域への切り替えについて説明するための図である。
図10図10(a)~(c)は、非照射領域から照射領域への切り替えについて説明するための図である。
図11】第3の実施の形態に係る車両用灯具を備える車両灯具システムの構成を示す模式図である。
図12図12(a)、(b)は、第1灯具ユニットによる配光パターンの形成を説明する図である。
図13図13(a)~(c)は、配光パターンの照度分布の切り替えの一例を説明する図である。
図14図14(a)~(c)は、配光パターンの照度分布の切り替えの別の例を説明する図である。
図15図15(a)~(c)は、配光パターンの照度分布の切り替えのさらに別の例を説明する図である。
図16図16(a)、(b)は、配光パターンの照度分布の切り替えの別の例を説明する図である。
図17図17(a)、(b)はそれぞれ、発光ユニットの点消灯状態の一例を示すタイムチャートである。
図18図18(a)、(b)は、発光ユニットによるスキャン領域の照度を水平方向で変化させる場合について説明する図である。
図19】第4の実施の形態に係る車両用灯具を備える車両灯具システムの構成を示す模式図である。
図20図20(a)、(b)は、第1灯具ユニットによる配光パターンの形成を説明する図である。
図21図21(a)、(b)は、前方車両に適応させた非照射領域を有する配光パターンの照度分布を示す図である。
図22図22(a)、(b)は、照度変化の調整方法の一例を説明する図である。
図23図23(a)、(b)は、照度変化の調整方法の別の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る車両用灯具18を備える車両灯具システム100の構成を示す模式図である。車両灯具システム100は、カメラ10、車速センサ11、照度センサ12、車両制御部16および車両用灯具18を備える。
【0024】
カメラ10は、車両前方の画像を撮影する。車速センサ11は、車輪の回転速度を検出することで車速を検出する。照度センサ12は、車両の周囲の照度を検出する。
【0025】
車両制御部16は、車両を統合的に制御する。本実施の形態の車両制御部16は、ADB(Adaptive Driving Beam)制御を実行可能に構成される。ADB制御は、例えば不図示のライトスイッチからADB制御の実行指示がなされた場合に実行される。車両制御部16は、カメラ10および/または車速センサ11が検出した情報に基づいて自車あるいは前方車両の状況を検出し、検出した状況に基づいて、ハイビーム用配光領域の少なくとも一部を照射する第1灯具ユニット(後述)により配光パターンを形成するか否か、すなわち第1灯具ユニットにビームを照射させるか否か、および配光パターンを形成する場合にはどのような形状の配光パターンを形成するかを判断する。車両制御部16は、決定した配光パターンが形成されるように車両用灯具18に指示する。
【0026】
また車両制御部16は、オートライト制御を実行可能に構成される。オートライト制御は、例えば不図示のライトスイッチからオートライト制御の実行指示がなされた場合に実行される。車両制御部16は、照度センサ12により検出される車両周囲の照度が所定の閾値以下になると、すなわち車両の周囲が暗くなると、車両用灯具18に、各灯具ユニットがビームを照射するよう指示する。また車両制御部16は、照度センサ12により検出される車両周囲の照度が閾値よりも高くなると、すなわち車両の周囲が明るくなると、車両用灯具18に、各灯具ユニットによるビームの照射を停止するよう指示する。
【0027】
車両用灯具18は、灯具制御部20、点灯回路22、第1灯具ユニット24および第2灯具ユニット26を備える。車両用灯具18は、第1灯具ユニット24によるスキャン配光と、第2灯具ユニット26による非スキャン配光の重ね合わせにより、配光パターンを形成する。
【0028】
第1灯具ユニット24は、ハイビーム用配光領域の少なくとも一部を含む第1の照射領域を照射可能に構成される。第1灯具ユニット24は、第1光源28と、スキャン光学系30と、第1投影光学系32と、を含む。第1光源28は、少なくともひとつの発光ユニット34を含む。発光ユニット34は、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザ)などの半導体光源を含む。
【0029】
スキャン光学系30は、駆動部36および反射体38を含む。駆動部36は、本実施の形態ではモータであり、例えばブラシレスDCモータである。反射体38は、本実施の形態では、リフレクタ、特に回転リフレクタである。反射体38は、駆動部36のロータに取り付けられており、回転運動を行なう。反射体38は、回転運動を繰り返すことにより、第1光源28の出射ビームBMを横方向に走査する。スキャン光学系30の出射ビームを、走査ビームBMSCANと称する。スキャン光学系30の走査周波数は、ちらつきを防止するために、60Hz以上、例えば200Hz程度に設定される。
【0030】
第1投影光学系32は、スキャン光学系30により走査された走査ビームBMSCANを灯具前方の仮想鉛直スクリーン1に投影して第1配光パターンPTNを形成する。ある時刻において走査ビームBMSCANが照射する領域を照射領域2と称する。照射領域2が仮想鉛直スクリーン1上を横方向に移動することにより、第1配光パターンPTNが形成される。
【0031】
第1投影光学系32は、反射光学系、透過光学系、またはそれらの組み合わせで構成することができる。なお、第1光源28の出射ビームの拡散角、出射角などを適切に設計することにより、第1投影光学系32を省略することも可能である。
【0032】
第2灯具ユニット26は、ロービーム用配光領域である第2の照射領域を照射可能に構成される。第2灯具ユニット26は、第2光源40と、第2投影光学系42と、を含む。第2光源40は、少なくともひとつの発光ユニット44を含む。発光ユニット44は、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザ)などの半導体光源を含む。
【0033】
第2投影光学系42は、第2光源40の出射ビームBMを仮想鉛直スクリーン1に投影して、概ね第1配光パターンPTNの鉛直下方に第2パターンPTNする。第2投影光学系42は、反射光学系、透過光学系、またはそれらの組み合わせで構成することができる。
【0034】
点灯回路22は、第1光源28および第2光源40のそれぞれの点灯と消灯とを切り替え可能に構成されている。
【0035】
灯具制御部20は、点灯回路22を制御して、第1灯具ユニット24の第1光源28を点消灯させる。例えば灯具制御部20は、スキャン光学系30の走査運動と同期して、照射領域2の照度を時間に応じて変化させることが可能である。例えば1走査期間中のある時間区間において第1光源28の輝度をゼロとすると、その時間区間に対応する領域を遮光することができる。反対に1走査期間中のある時間区間において第1光源28の輝度を高めることにより、その時間区間に対応する領域をスポット的に照射することができる。第1光源28の輝度は、発光ユニット34に供給する駆動電流量に応じて制御してもよいし、点灯している発光ユニット34の個数に応じて制御してもよいし、それらの組み合わせによって制御してもよい。
【0036】
また灯具制御部20は、点灯回路22を制御して、スキャン光学系30の走査運動とは無関係に、第2光源40に一定の駆動電流を供給し、その輝度を一定に保つ。
【0037】
また灯具制御部20は、駆動部36の回転数ひいては反射体38の回転数を制御する。灯具制御部20は、第1灯具ユニット24により照射されるビームのちらつきを抑止するために、駆動部36の回転数が目標値に安定化されている状態で、第1光源28を点灯させる。具体的に灯具制御部20は、第1灯具ユニット24によりビームを照射するよう照射指示を受けたときに駆動部36の回転数が目標値に安定化されていれば、すなわち回転数が目標値に到達していれば、即時に第1光源28を点灯させ、照射指示を受けたときに駆動部36の回転数が目標値に安定化されていなければ、すなわち回転数が目標値に到達していなければ(例えば回転数がゼロであれば)、駆動部36に駆動を指示して駆動部36の回転数を上げさせ、駆動部36の回転数が目標値に安定化されるまで待ってから第1光源28を点灯させる。
【0038】
また灯具制御部20は、第2灯具ユニット26がビームを照射しているときは、第1灯具ユニット24に対する照射指示にかかわらず、駆動部36が目標値の回転数すなわち第1光源28の点灯時の回転数で回転するよう駆動を指示する。この場合、灯具制御部20は、目標値の回転数よりも低い回転数(例えば目標値の1/2倍の回転数)で回転し続けるよう駆動部36に駆動を指示してもよい。
【0039】
また灯具制御部20は、第1灯具ユニット24によるビームの照射を停止するよう停止指示を受けると、即時に第1光源28を消灯させるが、短くとも停止指示を受けてから第1の時間(例えば10秒)が経過するまでは、目標値の回転数すなわち第1光源28の点灯時の回転数で回転し続けるよう駆動部36に駆動を指示する。この場合、灯具制御部20は、目標値の回転数よりも低い回転数(例えば目標値の1/2倍の回転数)で回転し続けるよう駆動部36に駆動を指示してもよい。また灯具制御部20は、例えば第1の時間Tが経過するときに駆動部36の回転数が実質的にゼロになるように、駆動部36の回転数が徐変低下するよう駆動部36に駆動を指示してもよい。
【0040】
以上のように構成された車両灯具システム100の動作を説明する。
【0041】
図2は、照射指示と停止指示とが、第1灯具ユニット24および第2灯具ユニット26に対して実質的に同時に、比較的頻繁に繰り返される場合の動作を示す。例えば図2の動作は、オートライト制御時の動作、具体的には、昼間にオートライト制御の実行指示がなされている状態で、比較的短いトンネルが連続する区間を走行する場合、あるいは日陰と日向とが交互に繰り返す区間を走行する場合の動作に該当する。また例えば、図2の動作は、パッシング時の動作に該当する。
【0042】
図2では、時刻t1、t3、t5、t7に第1灯具ユニット24および第2灯具ユニット26に対して照射指示がなされ、時刻t2、t4、t6に第1灯具ユニット24および第2灯具ユニット26に対して停止指示がなされている。
【0043】
図示のように、停止指示がなされても、駆動部36は、短くとも第1の時間Tが経過するまでは目標値の回転数で回転する。時刻t2、t4に第1灯具ユニット24に対して停止指示がなされているが、時刻t3、t5に、すなわち停止指示を受けてから第1の時間Tが経過するまでに第1灯具ユニット24に対する照射指示がなされているため、第1の時間Tの経過後も、駆動部36は目標値の回転数で駆動し続けている。一方、時刻t6に第1灯具ユニット24に対する停止指示がなされ、その停止指示から第1の時間Tが経過するまでに第1灯具ユニット24に対する照射指示がなされていないため、時刻t6から第1の時間Tの経過後に、駆動部36は駆動を停止している。
【0044】
また図示のように、照射指示がなされた場合、駆動部36の回転数が目標値に到達している状態で第1光源28が点灯される。時刻t1、t7に第1灯具ユニット24に対する照射指示がなされているが、駆動部36の回転数が実質的にゼロであるため、駆動部36の回転数が目標値に到達するのを待ってから第1光源28および第2光源40が点灯している。なお第2光源40は、駆動部36の回転数が目標値に到達するのを待たずに点灯してもよい。一方、時刻t3、t5には、停止指示から第1の時間Tが経過する前に第1灯具ユニット24に対する照射指示がなされているため、すなわち駆動部36が目標値の回転数で回転し続けているときに第1灯具ユニット24に対する照射指示がなされているため、第1光源28は即時で点灯している。
【0045】
図3は、第1灯具ユニット24に対する照射指示および停止指示と、第2灯具ユニット26に対する照射指示および停止指示とが独立してなされる場合の動作を示す。例えば図3の動作は、ADB制御時の動作や、手動で第1灯具ユニットおよび第2灯具ユニットをそれぞれ操作した場合の動作に該当する。
【0046】
図3では、時刻t4、t7、t9に第1灯具ユニット24に対する照射指示がなされ、時刻t6、t8、t11に第1灯具ユニット24に対する停止指示がなされ、時刻t1、t3、t10に第2灯具ユニット26に対する照射指示がなされ、時刻t2、t5に第2灯具ユニット26に対する停止指示がなされている。
【0047】
図示のように、第2灯具ユニット26がビームを照射しているときは、第1灯具ユニット24に対する照射指示にかかわらず、駆動部36は目標値の回転数で回転する。例えば、時刻t1~t2、時刻t3~t4は、第2灯具ユニット26がビームを照射しているため、第1灯具ユニット24に対する照射指示を受けていないにもかかわらず、駆動部36は目標値の回転数で回転している。
【0048】
以上説明した本実施の形態に係る車両用灯具18によると、基本的には、第1灯具ユニット24がビームを照射していないときは、駆動部36は駆動を停止する。これにより、駆動部36の長寿命化が図られる。加えて、車両用灯具18によると、第1灯具ユニット24に対する停止指示を受けた場合、即時に駆動部36を停止させずに、少なくとも第1の時間が経過するまでは、駆動部36の回転を維持する。これにより、第1灯具ユニット24に対する照射指示と停止指示とが比較的頻繁に繰り返される場合は駆動部36は回転が維持したままとなり、照射指示の度に駆動部36の回転数が目標値に到達するのを待つことは少なくなる。つまり、運転者に違和感や不快感を与えるのを抑止できる。
このように、本実施の形態に係る車両用灯具18によると、駆動部36の長寿命化を図ることができ、かつ、運転者に与える違和感や不快感を低減できる。
【0049】
第2灯具ユニット26がビームを照射している場合、例えば夜間やトンネル内など、暗い中を車両が走行している可能性が高い。そのため、第1灯具ユニット24に対する照射指示がなされる可能性も高い。これに対し、本実施の形態に係る車両用灯具18によると、第2灯具ユニット26がビームを照射しているときは、第1灯具ユニット24に対する照射指示によらず、駆動部36は目標値の回転数で回転する。したがって、第1灯具ユニット24に対する照射指示がなされた場合に、第1灯具ユニット24は即時にビームを照射でき、運転者に与える違和感や不快感を低減できる。
【0050】
以上、本発明の一側面について、第1の実施の形態をもとに説明した。続いて第1の実施の形態に関連する変形例を説明する。
【0051】
(第1変形例)
第1の実施の形態では、スキャン光学系30は、駆動部36がモータであり、反射体38がリフレクタ、特に回転リフレクタである場合について説明したが、これに限られない。スキャン光学系30は、駆動部36が反射体38を駆動し、反射体38が駆動部36に駆動されて周期運動を繰り返すことにより光源の出射ビームを走査するよう構成されていればよい。
【0052】
例えば、スキャン光学系30は、駆動部36がモータであり、反射体38が反射面に平行な軸を中心に揺動可能なミラーであってもよい。
【0053】
また例えば、スキャン光学系30はMEMS(Micro Electro Mechanical System)であってもよく、具体的には駆動部36がアクチュエータである共振器であり、反射体38がMEMSミラーであってもよい。この場合、第1の実施の形態の回転数を共振周波数と読み替えればよい。共振器ひいてはMEMSミラーの共振運動が安定する前に光源を点灯するとちらつきが発生しうるため、共振運動が安定するのを待ってから光源を点灯させる必要があり、共振器の寿命を考慮して光源の非点灯時は共振器を停止させることとすると、光源を点灯する度に共振器の共振運動が安定するのを待つことになる。つまり、駆動部36がモータである場合と同様の課題が生じうる。したがって、第1の実施の形態の技術思想を本変形例に適用すれば、駆動部36である共振器の長寿命化を図ることができ、かつ、運転者に与える違和感や不快感を低減できる。
【0054】
(第2変形例)
第1の実施の形態および上述の変形例では、灯具制御部20は、第2灯具ユニット26がビームを照射しているときは第1灯具ユニット24の駆動部36を駆動させる場合について説明したが、これに限られない。
【0055】
図4は、変形例に係る車両灯具システムにおいて、第1灯具ユニット24に対する照射指示および停止指示と、第2灯具ユニット26に対する照射指示および停止指示とが独立してなされる場合の動作を示す。図4図3に対応する。
【0056】
本変形例では、灯具制御部20は、第2灯具ユニット26がビームを照射しているか否にかかわらず、第1灯具ユニット24に対する照射指示にのみ基づいて、第1灯具ユニット24の駆動部36を駆動させる。したがって、本変形例では、時刻t1~t2、時刻3~t4では、第2灯具ユニット26がビームを照射しているが、第1灯具ユニット24に対する照射指示がなされていないため、駆動部36は停止している。一方、本変形例では、第1灯具ユニット24および第2灯具ユニット26が両方ともビームを照射している状態において第1灯具ユニットのみが停止指示を受けた場合、灯具制御部20は、第1の時間Tよりも長い第2の時間Tが経過するまでは、駆動部36が目標値の回転数で駆動し続けるよう指示する。そして、灯具制御部20は、第2の時間Tが経過するまでに第1灯具ユニット24の照射指示があれば、当然に駆動部36を目標値の回転数でそのまま駆動させ、第2の時間Tが経過するまでに第1灯具ユニット24の照射指示がなければ、駆動部の駆動を停止させる。なお、灯具制御部20は、停止指示を受けてから第2の時間Tが経過するまでは、目標値の回転数よりも低い回転数(例えば目標値の1/2倍の回転数)で回転し続けるよう駆動部36に駆動を指示してもよいし、例えば第2の時間Tが経過するときに駆動部36の回転数が実質的にゼロになるように、駆動部36の回転数が徐変低下するよう駆動部36に駆動を指示してもよい。
【0057】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態に係る車両用灯具18を備える車両灯具システム100の構成を示す模式図である。車両灯具システム100は、カメラ10、車速センサ11、車両制御部16および車両用灯具18を備える。
【0058】
カメラ10は、車両前方の画像を撮影する。車速センサ11は、車輪の回転速度を検出することで車速を検出する。
【0059】
車両制御部16は、車両を統合的に制御する。本実施の形態の車両制御部16は、ADB(Adaptive Driving Beam)制御を実行可能に構成される。ADB制御は、例えば不図示のライトスイッチからADB制御の実行指示がなされた場合に実行される。車両制御部16は、カメラ10および/または車速センサ11が検出した情報(走行情報)に基づいて、車両前方に形成すべき配光パターンを指示する配光指令を生成する。例えば車両制御部16は、走行情報に基づいて、先行車両や対向車両、歩行者等を検出し、それらが検出された領域を非照射領域に設定した配光指令を生成する。非照射領域は、光が照射されない領域、あるいはグレアを与えない程度の低い照度の光が照射される領域をいう。また車両制御部16は、先行車両や対向車両、歩行者等を検出しなくなると、それらが検出されなくなった領域を、照射領域に設定(変更)した配光指令を生成する。
【0060】
車両用灯具18は、灯具制御部20、点灯回路22、第1灯具ユニット24を備える。第1灯具ユニット24は、ハイビーム領域の少なくとも一部を含む領域を照射可能に構成される。第1灯具ユニット24は、第1光源28と、スキャン光学系30と、第1投影光学系32と、を含む。第1光源28は、少なくともひとつの発光ユニット34を含む。発光ユニット34は、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザ)などの半導体光源を含む。
【0061】
スキャン光学系30は、モータ36および反射体としてのリフレクタ38を含む。モータ36は、例えばブラシレスDCモータである。リフレクタ38は、モータ36のロータに取り付けられており、回転運動を行なう。リフレクタ38は、回転運動を繰り返すことにより、第1光源28の出射ビームBMを横方向に走査する。スキャン光学系30の出射ビームを、走査ビームBMSCANと称する。スキャン光学系30の走査周期は、ちらつきを防止するために、2~10msecの範囲に設定される。
【0062】
第1投影光学系32は、スキャン光学系30により走査された走査ビームBMSCANを灯具前方の仮想鉛直スクリーン1に投影して第1配光パターンPTNを形成する。ある時刻において走査ビームBMSCANが照射する領域を照射領域2と称する。照射領域2が仮想鉛直スクリーン1上を横方向に移動することにより、第1配光パターンPTNが形成される。
【0063】
第1投影光学系32は、反射光学系、透過光学系、またはそれらの組み合わせで構成することができる。なお、第1光源28の出射ビームBMの拡散角、出射角などを適切に設計することにより、第1投影光学系32を省略することも可能である。
【0064】
点灯回路22は、第1光源28の点灯と消灯とを切り替え可能に構成されている。
【0065】
灯具制御部20は、車両制御部16からの配光指令に基づいて点灯回路22を制御して、第1灯具ユニット24の第1光源28を点消灯させる。例えば灯具制御部20は、スキャン光学系30の走査運動と同期して、照射領域2の照度を時間に応じて変化させることが可能である。例えば1走査期間中のある時間区間において第1光源28の輝度を所定値以下(例えばゼロ)とすると、その時間区間に対応する領域を非照射領域(消灯領域)とすることができる。反対に1走査期間中のある時間区間において第1光源28の輝度を高めることにより、その時間区間に対応する領域をスポット的に照射することができる。第1光源28の輝度は、発光ユニット34に供給する駆動電流量に応じて制御してもよいし、点灯している発光ユニット34の個数に応じて制御してもよいし、それらの組み合わせによって制御してもよい。
【0066】
また灯具制御部20は、モータ36の回転数ひいてはリフレクタ38の回転数を制御する。灯具制御部20は、第1灯具ユニット24により照射されるビームのちらつきを抑止するために、モータ36の回転数が規定値に安定化されている状態で、第1光源28を点灯させる。具体的に灯具制御部20は、第1灯具ユニット24によりビームを照射するよう照射指示を受けたときにモータ36の回転数が規定値に安定化されていれば、すなわち回転数が規定値に到達していれば、即時に第1光源28を点灯させ、照射指示を受けたときにモータ36の回転数が規定値に安定化されていなければ、すなわち回転数が規定値に到達していなければ(例えば回転数がゼロであれば)、モータ36に駆動を指示してモータ36の回転数を上げさせ、モータ36の回転数が規定値に安定化されるまで待ってから第1光源28を点灯させる。
【0067】
続いて車両用灯具18のさらに具体的な構成例を説明する。図6は、第1灯具ユニット24の斜視図である。
【0068】
上述のように第1光源28は複数の発光ユニット34を含む。複数の発光ユニット34は、コネクタ114を介して点灯回路22(図6では不図示)と接続される。ひとつの発光ユニット34は、輝度および点消灯の制御の最小単位を構成している。ひとつの発光ユニット34は、ひとつのLEDチップ(LDチップ)であってもよいし、直列および/または並列に接続された複数のLEDチップ(LDチップ)を含んでもよい。
【0069】
リフレクタ38は、本実施の形態では、2枚のブレード38aを有しており、モータ36の1回転で、走査ビームBMSCANは2回、走査される。したがって走査周波数は、モータ36の回転数の2倍となる。なおブレード38aの枚数は特に限定されない。
【0070】
ある時刻tにおいて第1光源28の出射ビームBMは、リフレクタ38の位置(ロータの回転角)に応じた角度で反射され、そのときの反射光すなわち走査ビームBMSCANは、車両前方の仮想鉛直スクリーン1上に、ひとつの照射領域2を形成する。図6では説明の簡素化のため、照射領域2を矩形で示すが、照射領域2は矩形とは限らない。
【0071】
別の時刻tにおいてリフレクタ38の位置が変化すると、反射角が変化し、そのときの反射光すなわち走査ビームBMSCAN’は、照射領域2’を形成する。さらに別の時刻tにおいてリフレクタ38の位置が変化すると反射角が変化し、そのときの反射光すなわち走査ビームBMSCAN”は、照射領域2”を形成する。
【0072】
スキャン光学系30を高速に回転させることにより、照射領域2が仮想鉛直スクリーン1上を走査し、これにより車両前方に第1配光パターンPTNが形成される。
【0073】
以上が車両用灯具18の構成である。続いて車両用灯具18の動作を説明する。図7(a)~(c)は、第1配光パターンPTNの形成を説明する図である。
【0074】
図7(a)には、第1光源28における複数の発光ユニット34のレイアウトが示される。本実施の形態では、第1光源28はU字型に配置された9個の発光ユニット34_1~34_9を備える。
【0075】
図7(b)は、リフレクタ38が所定の位置にあるときに、各発光ユニット34の出射光が仮想鉛直スクリーン1上に形成する照射スポットを示す図である。
【0076】
発光ユニット34が形成する照射スポットを集光スポットScと称する。Scは、i番目(1≦i≦9)の発光ユニット34_iが形成する集光スポットを表す。図7(b)の複数の集光スポットSc~Scの集合が、図6の照射領域2に相当する。
【0077】
図7(c)には、リフレクタ38を回転させたときに、各集光スポットScが通過する領域(スキャン領域と称する)SRが示される。SRは、i番目の集光スポットScが通過する領域を示す。スキャン領域SR~SRの集合が、第1配光パターンPTNに相当する。
【0078】
図8(a)、(b)は、非照射領域(消灯領域)の形成を説明する図である。図8(a)は、見やすいように、複数のスキャン領域SR~SRをずらして並べた図である。図8(b)は、複数の発光ユニット34の点消灯状態を示すタイムチャートである。スキャン領域SRのうち、ハッチングを付した範囲は照射領域200を示し、ハッチングを付していない範囲は非照射領域202を示す。Tsは、走査周期を示す。
【0079】
Sc~Scは或る時刻における集光スポットの位置を示す。集光スポットScは図中、左から右に走査するものとする。ある時刻tに、集光スポットScの左端LEがスキャン領域SRiの左端に位置しているものとする。
【0080】
灯具制御部20は、集光スポットScが非照射領域202を通過する期間、その集光スポットScに対応する発光ユニット34の輝度を所定値以下(例えばゼロ)にする。具体的には灯具制御部20は、集光スポットScの右端REが非照射領域202に達するタイミングtに発光ユニット34の輝度を所定値以下にし、集光スポットScの左端LEが非照射領域202の右端に達するタイミングtに発光ユニット34の輝度を所定値よりも高くする。この制御により、非照射領域202を形成できる。
【0081】
続いて、非照射領域202から照射領域200への切り替えについて説明する。
図9(a)~(c)は、非照射領域202から照射領域200への切り替えについて説明するための図である。図9(a)~(c)では、1つの非照射領域202を、この例では非照射領域202a、202bの2つの非照射領域のうちの一方の非照射領域である非照射領域202aを照射領域200に切り替える場合を示している。図9(a)は、非照射領域202aから照射領域200への切り替えを開始したときの第1配光パターンPTNを示し、図9(b)は、非照射領域202aから照射領域200への切り替え途中の第1配光パターンPTNを示し、図9(c)は、非照射領域202aから照射領域200への切り替えが終了した状態の第1配光パターンPTNを示す。
【0082】
灯具制御部20は、非照射領域202を照射領域200に切り替える場合、非照射領域202の車幅方向における両端(右端および左端)のうち、第1配光パターンPTNの中央部C(自車両の真正面)に近い側の端部から遠い側の端部に向かって徐々に非照射領域202を照射領域200に切り替える。具体的には灯具制御部20は、走査ごとに徐々に非照射領域202を小さくする、すなわち走査ごとに集光スポットScに対応する発光ユニット34の輝度を所定値以下にするタイミングtを徐々に遅くして所定値以下にする期間を徐々に短くする。
【0083】
灯具制御部20は、非照射領域202の大きさすなわち車幅方向における幅によらず、一定の切替時間で、非照射領域202の全体を照射領域200に切り替える。この切替時間は、例えば100~1000msecの範囲に設定される。
【0084】
また、灯具制御部20は、非照射領域202が照射領域200に切り替わる速度(以下、切替速度と称する)がその切り替え途中で変化しないように、言い換えると、1回の走査ごとに小さくなる非照射領域202の大きさが切り替え途中で変化しないように、非照射領域202を照射領域200に切り替える。この場合、非照射領域202の角度範囲をθ、走査周期をTs、切替時間をTcとすると、非照射領域202は(Tc/Ts)回の走査で照射領域200に切り替えられ、1回の走査あたりθ×(Ts/Tc)ずつ非照射領域202が小さくなる(すなわち照射領域200に切り替わる)。
【0085】
図10(a)~(c)もまた、非照射領域202から照射領域200への切り替えについて説明するための図である。図10(a)~(c)では、複数の非照射領域202、この例では非照射領域202a、202b、202cの3つの非照射領域を実質的に同時に照射領域200に切り替える場合を示している。図10(a)~(c)はそれぞれ、図9(a)~(c)に対応する。
【0086】
灯具制御部20は、複数の非照射領域202を照射領域200に切り替える場合であっても、1つの非照射領域202を照射領域200に切り替える場合と同様にして各非照射領域202を照射領域200に切り替える。具体的には灯具制御部20は、各非照射領域202について、車幅方向における両端のうち、第1配光パターンPTNの中央部Cに近い側の端部から遠い側の端部に向かって徐々に照射領域200に切り替える。図10(a)の例では、非照射領域202a、202bは、いずれも右端が中央部Cに近いため、右端から左端に向かって徐々に照射領域200に切り替えられる。一方、非照射領域202cは、左端が中央部Cに近いため、非照射領域202a、202bとは異なり、左端から右端に向かって徐々に照射領域200に切り替えられる。また、灯具制御部20は、各非照射領域202を、大きさすなわち車幅方向における幅によらず、一定の切替時間で、各非照射領域202の全体を照射領域200に切り替える。したがって、例えば各非照射領域202の大きさが互いに異なっていても、同じ切替時間で照射領域200に切り替えられる。
【0087】
以上説明した本実施の形態に係る車両用灯具18によると、非照射領域202が照射領域200に切り替えられる場合、その非照射領域202の車幅方向における両端のうち、第1配光パターンPTNの中央部Cに近い側の端部から遠い側の端部に向かって徐々に非照射領域202が照射領域200に切り替えられる。これにより、先行車が左折または右折したことにより自車両の前方からいなくなり、あるいは対向車が自車両とすれ違うことにより自車両の前方からいなくなり、非照射領域202を照射領域200に切り替えることになった場合に、先行車や対向車がいなくなる方向に向かって非照射領域202が照射領域200に切り替えられていくため、例えばそれとは反対の方向に向かって非照射領域202が照射領域200に切り替えられていく場合や、非照射領域202の車幅方向における両端部から非照射領域202の中央に向かって照射領域200に切り替えられていく場合と比べ、運転者に与える違和感を抑止でき、運転者の安全性、快適性を高めることができる。
【0088】
また、本実施の形態に係る車両用灯具18によると、非照射領域202の大きさによらず、一定の切替時間で非照射領域202の全体が照射領域200に切り替えられる。ここで、非照射領域202の大きさによって切替時間が変わると、車両制御部16は非照射領域202から照射領域200への切り替えが終了したか否か判断できず、次の指示を出すことができない。これに対し、本実施の形態に係る車両用灯具18によると、上述のよう
に一定の切替時間で切り替えられるため、このような問題は生じない。
【0089】
また、本実施の形態に係る車両用灯具18によると、非照射領域202が照射領域200に切り替えられる切替時間は、100~1000msecの範囲に設定される。切替時間がこの範囲にあれば、車両前方の明るさの急激な変化が抑制され、運転者の安全性、快適性を高めることができる。
【0090】
以上、本発明の一側面について、第2の実施の形態をもとに説明した。続いて第2の実施の形態に関連する変形例を説明する。
【0091】
(第1変形例)
第2の実施の形態では、灯具制御部20は、非照射領域202を照射領域200に切り替える場合、非照射領域202の車幅方向における両端のうち、第1配光パターンPTNの中央部Cに近い側の端部から遠い側の端部に向かって徐々に非照射領域202を照射領域200に切り替える場合を説明したが、これに限られない。灯具制御部20は、非照射領域202を照射領域200に切り替える場合、非照射領域202の車幅方向における両端のうち、第1配光パターンPTNの中央部Cから遠い側の端部から近い側の端部に向かって徐々に非照射領域202を照射領域200に切り替えてもよい。つまり、灯具制御部20は、非照射領域202を照射領域200に切り替える場合、非照射領域202の車幅方向における一端から他端に向かって、すなわち左から右に向かってあるいは右から左に向かって、徐々に非照射領域202を照射領域200に切り替えればよい。この場合、さまざまな状況において、運転者の安全性、快適性を高めることが可能となる。
【0092】
(第2変形例)
第2の実施の形態では、非照射領域202から照射領域200への切り替え途中に切替速度が変化しない場合について説明したが、これに限られず、非照射領域202から照射領域200への切り替え途中にその切替速度が変化してもよい。
【0093】
例えば、図10(a)における非照射領域202bのように非照射領域202が第1配光パターンPTNの中央部Cを含む場合、中央部Cまでを照射領域200に切り替える速度である第1速度と、中央部C以降を照射領域200に切り替える速度である第2速度とが異なっていてもよい。一例としては、第1速度が第2速度よりも大きくてもよい。つまり、中央部Cまでは比較的大きい速度で非照射領域202を照射領域200に切り替え、中央部C以降は比較的小さい速度で非照射領域202を照射領域200に切り替えてもよい。一方、図10(a)における非照射領域202a、202cのように非照射領域202が第1配光パターンPTNの中央部Cを含まない場合は、非照射領域202から照射領域200への切り替え途中にその切替速度を変化させなくてもよい。本変形例によると、運転中に一番みたい領域である第1配光パターンPTNの中央部Cすなわち道路の真ん中を比較的早く照射できるため、運転者の安全性、快適性が向上する。
【0094】
(第3の実施の形態)
図11は、第3の実施の形態に係る車両用灯具18を備える車両灯具システム100の構成を示す模式図である。車両灯具システム100は、カメラ10と、舵角センサ13と、天候検出部14と、車両制御部16と、車両用灯具18と、を備える。
【0095】
カメラ10は、車両前方の画像を撮影する。舵角センサ13は、ステアリングホイールの舵角を検出する。
【0096】
天候検出部14は、車両周囲の現在の天候を検出する。具体的には天候検出部14は、少なくとも、車両周囲の現在の天候が通常の天候(例えば晴れまたは曇り)であるか、または車両周囲の現在の天候が悪天候(例えば雨、雪、または霧)であるかを検出する。
【0097】
例えば天候検出部14は、車両周囲の天候を検出する天候センサ(例えば雨滴センサまたは霧センサ)を備え、天候センサの検出結果から車両周囲の現在の天候を検出してもよい。また例えば天候検出部14は、車両周囲の現在の天候に応じて手動または自動で操作される機器(例えばワイパ)の操作状態(例えばワイパのオンオフ)を検出するよう構成され、その検出結果から車両周囲の現在の天候を検出してもよい。また例えば天候検出部14は、車両周囲の現在の天候を表す情報を外部から受信するよう構成され、受信した情報から車両周囲の現在の天候を検出してもよい。
【0098】
車両制御部16は、車両を統合的に制御する。車両制御部16は、カメラ10、舵角センサ13および天候検出部14の少なくとも1つからの情報に基づいて、車両前方に形成すべき配光パターンとその照度分布を指示する配光指令を生成する。車両制御部16は、これら以外の情報、例えば車速などを、配光パターンに反映させてもよい。
【0099】
車両用灯具18は、灯具制御部20と、点灯回路22と、ハイビーム領域を照射する第1灯具ユニット24と、ロービーム領域を照射する第2灯具ユニット26と、を備える。
【0100】
第1灯具ユニット24は、スキャン方式の灯具ユニットであり、第1光源28と、スキャン光学系30と、第1投影光学系32と、を含む。第1光源28は、複数の発光ユニット34を含む。発光ユニット34は、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザ)などの半導体光源を含む。
【0101】
スキャン光学系30は、駆動部36と、反射体38と、を含む。駆動部36は、本実施の形態ではモータであり、例えばブラシレスDCモータである。反射体38は、本実施の形態では、リフレクタ、特に回転リフレクタである。反射体38は、駆動部36のロータに取り付けられており、回転運動を行なう。反射体38は、回転運動を繰り返すことにより、第1光源28の出射ビームBMを横方向に走査する。スキャン光学系30の出射ビームを、走査ビームBMSCANと称する。スキャン光学系30の走査周波数は、ちらつきを防止するために、60Hz以上、例えば200Hz程度に設定される。
【0102】
第1投影光学系32は、スキャン光学系30により走査された走査ビームBMSCANを灯具前方の仮想鉛直スクリーン1に投影して第1配光パターンPTNを形成する。ある時刻において走査ビームBMSCANが照射する領域を照射領域2と称する。照射領域2が仮想鉛直スクリーン1上を横方向に移動することにより、第1配光パターンPTNが形成される。
【0103】
第1投影光学系32は、反射光学系、透過光学系、またはそれらの組み合わせで構成することができる。なお、第1光源28の出射ビームBMの拡散角、出射角などを適切に設計することにより、第1投影光学系32を省略することも可能である。
【0104】
第2灯具ユニット26は、第2光源40と、第2投影光学系42と、を含む。第2光源40は、少なくともひとつの発光ユニット44を含む。発光ユニット44は、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザ)などの半導体光源を含む。
【0105】
第2投影光学系42は、第2光源40の出射ビームBMを仮想鉛直スクリーン1に投影して、概ね第1配光パターンPTNの鉛直下方に第2配光パターンPTNを形成する。第2投影光学系42は、反射光学系、透過光学系、またはそれらの組み合わせで構成することができる。
【0106】
点灯回路22は、第1光源28および/または第2光源40に、灯具制御部20からの指示に応じた駆動電流を供給する。
【0107】
灯具制御部20は、車両制御部16からの配光指令に基づいて点灯回路22を制御して、第1灯具ユニット24の第1光源28を点消灯させる。例えば灯具制御部20は、1走査期間中のある時間区間において第1光源28の輝度をゼロとすると、その時間区間に対応する領域を遮光することができる。
【0108】
また灯具制御部20は、駆動部36の回転数ひいては反射体38の回転数を制御する。灯具制御部20は、第1灯具ユニット24により照射されるビームのちらつきを抑止するために、駆動部36の回転数が規定値に安定化されている状態で、第1光源28を点灯させる。具体的には灯具制御部20は、第1灯具ユニット24によりビームを照射するよう照射指示を受けたときに駆動部36の回転数が規定値に安定化されていれば、すなわち回転数が規定値に到達していれば、即時に第1光源28を点灯させ、照射指示を受けたときに駆動部36の回転数が規定値に安定化されていなければ、すなわち回転数が規定値に到達していなければ(例えば回転数がゼロであれば)、駆動部36に駆動を指示して駆動部36の回転数を上げさせ、駆動部36の回転数が規定値に安定化されるまで待ってから第1光源28を点灯させる。
【0109】
また灯具制御部20は、車両制御部16からの配光指令に基づいて点灯回路22を制御して、スキャン光学系30の走査運動とは無関係に、第2光源40に一定の駆動電流を供給し、その輝度を一定に保つ。
【0110】
第1灯具ユニット24をさらに具体的に説明する。第1灯具ユニット24は、第2の実施の形態の第1灯具ユニット24と基本的に同じであるため、図6を参照する。
【0111】
上述のように第1光源28は複数の発光ユニット34を含む。複数の発光ユニット34は、コネクタ114を介して点灯回路22(図6では不図示)と接続される。ひとつの発光ユニット34は、輝度および点消灯の制御の最小単位を構成している。ひとつの発光ユニット34は、ひとつのLEDチップ(LDチップ)であってもよいし、直列および/または並列に接続された複数のLEDチップ(LDチップ)を含んでもよい。
【0112】
反射体38は、本実施の形態では、2枚のブレード38aを有しており、駆動部36の1回転で、走査ビームBMSCANは2回、走査される。したがって走査周波数は、駆動部36の回転数の2倍となる。なおブレード38aの枚数は特に限定されない。
【0113】
ある時刻tにおいて第1光源28の出射ビームBMは、反射体38の位置(ロータの回転角)に応じた角度で反射され、そのときの反射光すなわち走査ビームBMSCANは、車両前方の仮想鉛直スクリーン1上に、ひとつの照射領域2を形成する。図6では説明の簡素化のため、照射領域2を矩形で示すが、照射領域2は矩形とは限らない。
【0114】
別の時刻tにおいて反射体38の位置が変化すると、反射角が変化し、そのときの反射光すなわち走査ビームBMSCAN’は、照射領域2’を形成する。さらに別の時刻tにおいて反射体38の位置が変化すると反射角が変化し、そのときの反射光すなわち走査ビームBMSCAN”は、照射領域2”を形成する。
【0115】
スキャン光学系30を高速に回転させることにより、照射領域2が仮想鉛直スクリーン1上を走査し、これにより車両前方に第1配光パターンPTNが形成される。
【0116】
図7(a)~(c)を参照して、発光ユニット34をさらに具体的に説明する。
【0117】
本実施の形態では、同じ高さを照射する発光ユニット34は、同一量の駆動電流が供給されるように同一チャンネルに分類される。具体的には、以下の通りに分類される。
第1チャンネル:発光ユニット34_1、34_2
第2チャンネル:発光ユニット34_3
第3チャンネル:発光ユニット34_4、34_5
第4チャンネル:発光ユニット34_6、34_7
第5チャンネル:発光ユニット34_8、34_9
【0118】
灯具制御部20は、各発光ユニット34を個別に点消灯させることができ、特に1走査期間中における点灯期間を反射体38の周期運動に同期させて個別に設定できる。変形例としては灯具制御部20は、グループ単位(例えばチャンネル単位)で発光ユニット34を点消灯させ、グループ単位で1走査期間中における点灯期間を設定してもよい。
【0119】
また本実施の形態では、点灯状態において各発光ユニット34に供給される駆動電流は、少なくとも1走査期間中は変化しない(すなわち一定)ものとする。すなわち、点灯状態における発光ユニット34の輝度は、少なくとも1走査期間中は変化しないものとする。この場合、各スキャン領域SRの照度は、水平方向で実質的に一様となる。
【0120】
図12(a)、(b)は、第1灯具ユニット24による配光パターンの形成を説明する図である。ここでは、最下段の発光ユニット34_1~34_5が形成するH線近傍の配光パターンの形成を説明する。図12(a)は、複数の発光ユニット34それぞれによるスキャン領域SR~SRを、見やすいようにずらして並べた図である。図12(b)は、複数の発光ユニット34それぞれの点消灯状態を示すタイムチャートである。Tsは走査周期を表す。
【0121】
Sc~Scは、ある時刻における集光スポットの位置を示す。集光スポットScは図中、左から右に走査するものとする。
【0122】
灯具制御部20は、発光ユニット34_1~発光ユニット34_5のそれぞれについて、集光スポットScの左端LEがスキャン領域SRとすべき領域の左端に達するタイミングtに発光ユニット34_iを点灯し、集光スポットScの右端REがスキャン領域SRとすべき領域の右端に達するタイミングtに発光ユニット34_iを消灯する。この制御により、スキャン領域SR~SRの集合に相当する配光パターンを、ひいては配光指令に対応する配光パターンを形成できる。
【0123】
続いて配光パターンの照度分布の切り替えについて説明する。
図13(a)~(c)は、配光パターンの照度分布の切り替えの一例を説明する図である。ここでは、最下段の発光ユニット34_1~34_5が形成するH線近傍の配光パターンの照度分布の切り替えの一例を説明する。
【0124】
図13(a)の上側には、ある1走査における最下段の発光ユニット34_1~34_5によるスキャン領域SR~SRが示され、図13(a)の下側には、その1走査において最下段の発光ユニット34_1~34_5が形成するH線近傍の配光パターンの水平方向の照度分布が示される。
【0125】
図13(b)は、図13(a)よりも後、例えば図13(a)の次の1走査における最下段の発光ユニット34_1~34_5によるスキャン領域SR~SRが示され、図13(b)の下側には、その1走査において最下段の発光ユニット34_1~34_5が形成するH線近傍の配光パターンの水平方向の照度分布が示される。
【0126】
図13(c)は、図13(b)よりも後、例えば図13(b)の次の1走査における最下段の発光ユニット34_1~34_5によるスキャン領域SR~SRが示され、図13(c)の下側には、その1走査において最下段の発光ユニット34_1~34_5が形成するH線近傍の配光パターンの水平方向の照度分布が示される。
【0127】
この例では灯具制御部20は、発光ユニット34_1~34_4それぞれの1走査期間内における点灯期間を、図13(b)の走査では図13(a)の走査よりも長くし、図13(c)の走査では図13(b)の走査よりも長くする。具体的には灯具制御部20は、発光ユニット34_1~34_4のそれぞれを、図13(b)の走査では、図13(a)の走査よりも早いタイミングで点灯し、かつ、図13(a)の走査よりも遅いタイミングで消灯し、図13(c)の走査では、図13(b)の走査よりも早いタイミングで点灯し、かつ、図13(b)の走査よりも遅いタイミングで消灯する。
【0128】
この制御により、図示のように、図13(b)の走査におけるスキャン領域SR~SR図13(a)の走査におけるスキャン領域SR~SRよりも左右両側に広がり、図13(c)の走査におけるスキャン領域SR~SR図13(b)の走査におけるスキャン領域SR~SRよりも左右両側に広がる。そして図示のように、水平方向における照度変化が比較的急である照度分布から、水平方向における照度変化が比較的緩やかな照度分布に切り替わる。
【0129】
図14(a)~(c)は、配光パターンの照度分布の切り替えの別の例を説明する図である。図14(a)~(c)はそれぞれ、図12(a)~(c)に対応する。
【0130】
この例では灯具制御部20は、発光ユニット34_1~34_4のそれぞれを、図14(b)の走査では、図14(a)の走査よりも早いタイミングで点灯し、かつ、図14(a)の走査よりも早いタイミングで消灯し、図14(c)の走査では、図14(b)の走査よりも早いタイミングで点灯し、かつ、図14(b)の走査よりも早いタイミングで消灯している。また灯具制御部20は、発光ユニット34_5を、図14(b)の走査では図14(a)の走査よりも早いタイミングで消灯し、図14(c)の走査では図14(b)の走査よりも早いタイミングで消灯している。
【0131】
この制御により、図示のように、各スキャン領域SRの水平方向における中央位置Cが、図14(b)の走査では図14(a)の走査よりも左側に位置し、図14(c)の走査では図14(b)の走査よりも左側に位置している。そして図示のように、配光パターンの照度のピーク位置Pが左に向かって移動するよう照度分布が切り替わる。
【0132】
なお、灯具制御部20はもちろん、各スキャン領域SRの水平方向における中央位置Cが走査が進むにつれてより右側に位置するように各発光ユニット34_iを制御すれば、配光パターンの照度のピーク位置Pが右側に向かって移動するよう照度分布を切り替えることができる。
【0133】
灯具制御部20は、車両前方の道路形状に応じて配光パターンの照度のピーク位置Pが移動するように、各発光ユニット34の1走査期間内における点灯期間を変更させてもよい。具体的には灯具制御部20は、配光パターンの照度のピーク位置Pを、直進時は正面に移動させ、左カーブ時は左に移動させ、右カーブ時は右に移動させてもよい。この場合、車両制御部16が、カメラ10や舵角センサ13からの情報に基づいてカーブを検出し、カーブに応じた照度分布を指示する配光指令を生成する。灯具制御部20は、その配光指令に基づいて各発光ユニット34_iを制御する。
【0134】
車両前方の道路形状に応じて配光パターンの照度のピーク位置を移動させることにより、進行方向を明るく照射することが可能となる。
【0135】
なお、ここでは最下段のすべての発光ユニットの1走査期間内における点灯期間を変更させることにより、照度のピーク位置Pを移動させる場合を説明したが、これに限られず、少なくとも1つの発光ユニットの1走査期間内における点灯期間を変更させることにより、照度のピーク位置Pを移動させてもよい。
【0136】
図15(a)~(c)は、配光パターンの照度分布の切り替えのさらに別の例を説明する図である。図15(a)~(c)はそれぞれ、図12(a)~(c)に対応する。
【0137】
この例では灯具制御部20は、図15(a)の走査では最下段のすべての発光ユニット34を、1走査期間中の少なくとも一部の時間区間は点灯させ、図15(b)の走査では、発光ユニット34_2、34_3を1走査期間中ずっと消灯させ、図14(c)の走査では、発光ユニット34_1~34_3を1走査期間中ずっと消灯さる。
【0138】
このように、ある走査では少なくとも一部の時間区間は点灯させていた発光ユニット34のうちの少なくとも1つを、その次の走査では1走査期間中ずっと消灯させることにより、図示のように、照度のピークが比較的高く、かつ、水平方向における照度変化が比較的急な照度分布から、照度のピークが比較的低く、かつ、水平方向における照度変化が比較的緩やかな照度分布に切り替えることができる。
【0139】
また逆に、灯具制御部20は、ある走査では1走査期間中ずっと消灯させていた発光ユニット34のうちの少なくとも1つを、その次の走査では少なくとも一部の時間区間は点灯させることにより、照度のピークが比較的低く、かつ、水平方向における照度変化が比較的緩やかな照度分布から、照度のピークが比較的高く、かつ、水平方向における照度変化が比較的急な照度分布に切り替えることができる。例えば図14(c)、図14(b)、図14(a)の順で発光ユニット34を点灯させることにより、照度分布を切り替えることができる。
【0140】
いずれにしろ、灯具制御部20は、少なくとも1つの発光ユニットを1走査期間中ずっと消灯させることにより、照度分布を切り替えることができる。
【0141】
図16(a)、(b)は、配光パターンの照度分布の切り替えの別の例を説明する図である。図16(a)、(b)はそれぞれ、図12(a)、(c)に対応する。
【0142】
この例では灯具制御部20は、図16(a)の走査では、すべての発光ユニットを車両正面に対応する時間区間は点灯させ、図16(b)の走査では、発光ユニット34_1~34_4を、車両正面に対応する時間区間は消灯し、その両側の時間区間は点灯させている。
【0143】
この制御により、図示のように、車両正面にピークがある照度分布から、車両正面が減光された照度分布に切り替えられる。
【0144】
灯具制御部20は、車両周囲の現在の天候が悪天候である場合に、図16(b)のような車両正面を減光させた照度分布に切り替えてもよい。悪天候下では雨粒や霧粒によって照明光が乱反射され、反射した光の一部または大半が運転者のほうに戻るため、車両正面に視界不良が生じうる。車両正面の減光により、このような光幕グレアを低減し、車両前方の視認性を向上することができる。この場合、車両制御部16が、天候検出部14からの情報に基づいて車両周囲の現在の天候を検出し、天候に応じた照度分布を指示する配光指令を生成する。例えば通常の天候であれば車両正面にピークがある照度分布を指示する配光指令を生成し、悪天候であれば車両正面が減光された照度分布を指示する配光指令を生成する。灯具制御部20は、その配光指令に基づいて各発光ユニット34_iを制御する。
【0145】
以上説明した本実施の形態に係る車両用灯具18によると、少なくとも1つの発光ユニットの1走査期間内における点灯期間を変更させることにより、点灯状態における各発光ユニット34の輝度はそのままに、すなわち点灯状態において各発光ユニット34に供給する駆動電流量を変化させることなく、配光パターンの照度分布を変化させることができる。つまり、配光パターンの照度分布を変化させることができる車両用灯具を、DA変換に対応したマイコン等を利用することなく、比較的低コストに実現できる。
【0146】
以上、本発明の一側面について、第3の実施の形態をもとに説明した。続いて第3の実施の形態に関連する変形例を説明する。
【0147】
(第1変形例)
スキャン方式の灯具ユニットである第1灯具ユニット24の発光ユニット34の照射位置は、反射体38の周期運動に伴って移動する。そのため、発光ユニット34の点消灯を高速に繰り返すPWM調光により発光ユニット34の輝度を制御すると、光が照射されない領域が生じうる。このため、発光ユニット34に供給する電流値を変化させるDC調光により発光ユニット34の輝度を制御するのが一般的である。DC調光では、発光ユニット34ごとに輝度を制御できるようにするには、発光ユニット34に供給する電流値を発光ユニット34ごとに制御できるようにする必要がある。これには、発光ユニット34ごとにコンバータを分けることが必要となり、コストの増大を招きうる。
【0148】
そこで本変形例では、繰り返し走査するうちの所定の割合で、発光ユニット34を1走査期間中ずっと消灯させることにより、その発光ユニット34を調光する。
【0149】
発光ユニット34_1を例に説明する。図17(a)、(b)はそれぞれ、発光ユニット34_1の点消灯状態の一例を示すタイムチャートである。図17(a)の例では、灯具制御部20は、2回に1回、すなわち繰り返し走査するうちの50%の割合で、発光ユニット34_1を1走査期間中ずっと消灯させている。これにより、同じ電流量の駆動電流を供給して発光ユニット34_1を毎走査点灯させる場合の50%の照度を実現できる。
【0150】
図17(b)の例では、灯具制御部20は、4回に1回、すなわち繰り返し走査するうちの25%の割合で、発光ユニット34_1を1走査期間中ずっと消灯させている。これにより、同じ電流値を供給して発光ユニット34_1を毎走査点灯させる場合の75%の照度を実現できる。
【0151】
少なくとも一部の発光ユニット34をこのようにして調光すれば、発光ユニット34ごとにコンバータを設ける必要がなくなる、すなわちコンバータの数を減らせるため、コストの増大を抑えることができる。
【0152】
(第2変形例)
第3の実施の形態では、発光ユニット34によるスキャン領域の照度が水平方向で実質的に一様である場合について説明したが、これに限られない。図18(a)、(b)は、発光ユニットによるスキャン領域の照度を水平方向で変化させる場合について説明する図である。図18(a)は、発光ユニット34_5によるスキャン領域SRを示す。図18(b)は、発光ユニット34_5の点消灯状態の一例を示すタイムチャートである。
【0153】
本変形例では灯具制御部20は、発光ユニット34_5を、スキャン領域SRのうちの領域SR_1に対応する時間区間は発光ユニット34_5を毎走査点灯させ、領域SR_2に対応する時間区間は3回に2回、すなわち繰り返し走査するうちの約67%の割合で点灯させ、領域SR_3に対応する時間区間は3回に1回、すなわち繰り返し走査するうちの約33%の割合で点灯させる。どの時間区間も同じ駆動電流量を供給すれば、領域SR_2の照度は領域SR_1の約67%の照度となり、領域SR_3の照度は領域SR_1の約33%の照度となる。つまり、駆動電流量を変化させることなく、スキャン領域の照度を水平方で変化させることができる。
【0154】
(第3変形例)
第3の実施の形態では、同じ高さを照射する3つの第1チャンネル~第3チャンネルの駆動電流が等しく、それらに分類される発光ユニット34の輝度が等しい場合について説明したが、これに限られない。例えば3つのチャンネルの駆動電流が異なっていてもよい。
【0155】
(第4変形例)
第3の実施の形態では、スキャン光学系30は、駆動部36がモータであり、反射体38がリフレクタ、特に回転リフレクタである場合について説明したが、これに限られない。スキャン光学系30は、駆動部36が反射体38を駆動し、反射体38が駆動部36に駆動されて周期運動を繰り返すことにより光源の出射ビームを走査するよう構成されていればよい。
【0156】
例えば、スキャン光学系30は、駆動部36がモータであり、反射体38が反射面に平行な軸を中心に揺動可能なミラーであってもよい。
【0157】
また例えば、スキャン光学系30はMEMS(Micro Electro Mechanical System)であってもよく、具体的には駆動部36がアクチュエータである共振器であり、反射体38がMEMSミラーであってもよい。この場合、第3の実施の形態の回転数を共振周波数と読み替えればよい。
【0158】
(第4の実施の形態)
図19は、第4の実施の形態に係る車両用灯具18を備える車両灯具システム100の構成を示す模式図である。車両灯具システム100は、カメラ10と、車速センサ11と、車両制御部16と、車両用灯具18と、を備える。
【0159】
カメラ10は、車両前方の画像を撮影する。車速センサ11は、車輪の回転速度を検出することで車速を検出する。
【0160】
車両制御部16は、車両を統合的に制御する。本実施の形態の車両制御部16は、ADB(Adaptive Driving Beam)制御を実行可能に構成される。ADB制御は、例えば不図示のライトスイッチからADB制御の実行指示がなされた場合に実行される。車両制御部16は、カメラ10および/または車速センサ11が検出した情報(走行情報)に基づいて、車両前方に形成すべき配光パターンを指示する配光指令を生成する。例えば車両制御部16は、走行情報に基づいて、先行車両や対向車両、歩行者等を検出し、それらが検出された領域を非照射領域に設定した配光指令を生成する。非照射領域は、照度が、グレアを与えない限界の照度(以下、「許容限界照度」と呼ぶ)以下となる領域をいう。
【0161】
車両用灯具18は、灯具制御部20と、点灯回路22と、ハイビーム領域を照射する第1灯具ユニット24と、ロービーム領域を照射する第2灯具ユニット26と、を備える。
【0162】
第1灯具ユニット24は、スキャン方式の灯具ユニットであり、第1光源28と、スキャン光学系30と、第1投影光学系32と、を含む。第1光源28は、少なくとも1つの発光ユニット34を含む。以下では、第1光源28は複数の発光ユニット34を含むものとする。発光ユニット34は、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザ)などの半導体光源を含む。
【0163】
スキャン光学系30は、駆動部36と、反射体38と、を含む。駆動部36は、本実施の形態ではモータであり、例えばブラシレスDCモータである。反射体38は、本実施の形態では、リフレクタ、特に回転リフレクタである。反射体38は、駆動部36のロータに取り付けられており、回転運動を行なう。反射体38は、回転運動を繰り返すことにより、第1光源28の出射ビームBMを横方向に走査する。スキャン光学系30の出射ビームを、走査ビームBMSCANと称する。スキャン光学系30の走査周波数は、ちらつきを防止するために、60Hz以上、例えば200Hz程度に設定される。
【0164】
第1投影光学系32は、スキャン光学系30により走査された走査ビームBMSCANを灯具前方の仮想鉛直スクリーン1に投影して第1配光パターンPTNを形成する。ある時刻において走査ビームBMSCANが照射する領域を照射領域2と称する。照射領域2が仮想鉛直スクリーン1上を横方向に移動することにより、第1配光パターンPTNが形成される。
【0165】
第1投影光学系32は、反射光学系、透過光学系、またはそれらの組み合わせで構成することができる。なお、第1光源28の出射ビームBMの拡散角、出射角などを適切に設計することにより、第1投影光学系32を省略することも可能である。
【0166】
第2灯具ユニット26は、第2光源40と、第2投影光学系42と、を含む。第2光源40は、少なくともひとつの発光ユニット44を含む。発光ユニット44は、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザ)などの半導体光源を含む。
【0167】
第2投影光学系42は、第2光源40の出射ビームBMを仮想鉛直スクリーン1に投影して、概ね第1配光パターンPTNの鉛直下方に第2配光パターンPTNを形成する。第2投影光学系42は、反射光学系、透過光学系、またはそれらの組み合わせで構成することができる。
【0168】
点灯回路22は、第1光源28および/または第2光源40に、灯具制御部20からの指示に応じた駆動電流を供給する。
【0169】
灯具制御部20は、車両制御部16からの配光指令に基づいて点灯回路22を制御して、第1灯具ユニット24の第1光源28を点消灯させる。例えば灯具制御部20は、スキャン光学系30の走査運動と同期して、照射領域2の照度を時間に応じて変化させることが可能である。例えば1走査期間中のある時間区間において第1光源28の輝度を許容限界照度以下(例えばゼロ)とすると、その時間区間に対応する領域を非照射領域(消灯領域)とすることができる。反対に1走査期間中のある時間区間において第1光源28の輝度を高めることにより、その時間区間に対応する領域をスポット的に照射することができる。
【0170】
また灯具制御部20は、駆動部36の回転数ひいては反射体38の回転数を制御する。灯具制御部20は、第1灯具ユニット24により照射されるビームのちらつきを抑止するために、駆動部36の回転数が規定値に安定化されている状態で、第1光源28を点灯させる。具体的には灯具制御部20は、第1灯具ユニット24によりビームを照射するよう照射指示を受けたときに駆動部36の回転数が規定値に安定化されていれば、すなわち回転数が規定値に到達していれば、即時に第1光源28を点灯させ、照射指示を受けたときに駆動部36の回転数が規定値に安定化されていなければ、すなわち回転数が規定値に到達していなければ(例えば回転数がゼロであれば)、駆動部36に駆動を指示して駆動部36の回転数を上げさせ、駆動部36の回転数が規定値に安定化されるまで待ってから第1光源28を点灯させる。
【0171】
また灯具制御部20は、車両制御部16からの配光指令に基づいて点灯回路22を制御して、スキャン光学系30の走査運動とは無関係に、第2光源40に一定の駆動電流を供給し、その輝度を一定に保つ。
【0172】
また第1灯具ユニット24には、図6を参照して説明された第3の実施の形態の第1灯具ユニット24についての説明が当てはまる。
【0173】
また発光ユニット34には、図7(a)~(c)を参照して説明された第3の実施の形態の発光ユニット34についての説明が当てはまる。
【0174】
図20(a)、(b)は、第1灯具ユニット24による配光パターンの形成を説明する図である。ここでは、最下段の発光ユニット34_1~34_5が形成するH線近傍の配光パターンにおける非照射領域(消灯領域)の形成を説明する。図20(a)は、複数の発光ユニット34それぞれによるスキャン領域SR~SRを、見やすいようにずらして並べた図である。スキャン領域SRのうち、ハッチングを付した範囲は照射領域200を示し、ハッチングを付していない範囲は非照射領域202を示す。図20(b)は、複数の発光ユニット34それぞれの点消灯状態を示すタイムチャートである。Tsは走査周期を表す。
【0175】
Sc~Scは、ある時刻における集光スポットの位置を示す。集光スポットScは図中、左から右に走査するものとする。
【0176】
灯具制御部20は、発光ユニット34_1~発光ユニット34_5のそれぞれについて、集光スポットScの左端LEがスキャン領域SRとすべき領域の左端に達するタイミングtに発光ユニット34_iを点灯し、集光スポットScの右端REが非照射領域202に達するタイミングtに発光ユニット34_iの輝度を許容限界照度以下にし、集光スポットScの左端LEが非照射領域202の右端に達するタイミングtに発光ユニット34_iの輝度を許容限界照度値よりも高くする。この制御により、スキャン領域SR~SRの集合に相当する配光パターンを、ひいては配光指令に対応する配光パターンを形成できる。
【0177】
続いて前方車両に適応させた非照射領域202を有する配光パターンの照度分布について説明する。
図21(a)、(b)は、前方車両に適応させた非照射領域202を有する配光パターンの照度分布を示す。ここでは、最下段の発光ユニット34_1~34_5が形成するH線近傍の配光パターンの照度分布を示す。図21(a)は、自車両と前方車両との距離が比較的長い(すなわち前方車両までが遠い)場合を示し、図21(b)は、自車両と前方車両との距離が比較的短い(すなわち前方車両までが近い)場合を示す。
【0178】
照射領域200と非照射領域202との境界で照度が急激に変化すると運転者に違和感を与える。灯具制御部20は、この違和感を低減するために、照射領域200と非照射領域202との境界近傍では、照度が徐変するように第1灯具ユニット24を制御する。以下、照射領域200のうち、違和感を低減するために非照射領域202に近いほど照度が低くなるよう徐変させた非照射領域202との境界近傍(すなわち非照射領域202側の端部側)の部分を「照射遷移領域200a」と呼ぶ。また、非照射領域のうち、照射領域200から遠いほど照度が低くなるよう徐変させた照射領域200との境界近傍(すなわち照射領域200側の端部側)の部分を「非照射遷移領域202a」と呼ぶ。照射遷移領域200aの非照射領域202側の端部および非照射遷移領域202aの照射領域200側の端部、すなわち照射遷移領域200aと非照射遷移領域202aの境界では、照度は許容限界照度となる。また、本実施の形態では、非照射遷移領域202aの照射領域200とは反対側の端部での照度がゼロになるように、照射領域200から遠いほど照度が低くなるよう徐変させている。
【0179】
灯具制御部20は、前方車両が自車両に対して左右に相対移動すると、車両制御部16からの配光指令に基づいて、前方車両の相対移動に追従して非照射領域202を移動させた配光パターンを形成するように第1灯具ユニット24を制御する。
【0180】
ここで、前方車両の角度位置、すなわち自車両の進行方向に対して前方車両が存在する角度位置の単位時間当たりの変化量は、前方車両が実際に左右に移動した距離が同じであっても、自車両と前方車両との車間距離が短いほど大きくなる。したがって、灯具制御部20は、車両制御部16からの配光指令に基づいて、自車両と前方車両との車間距離が近いほど、角度範囲に余裕を持った非照射領域202を設定する。これにより、前方車両が自車両に対して左右に相対移動した場合に、前方車両の運転車にグレアを与えるのを抑止できる。
【0181】
しかしながら、前方車両が自車両に対して左右に速く相対移動した場合、カメラ10や車速センサ11の検出能力、車両制御部16や灯具制御部20の演算能力、各装置間の通信能力等の制約から、前方車両の相対移動に非照射領域202を追従できず、前方車両が非照射領域202から外れて照射領域200に進入しうる。自車両と前方車両との車間距離が短いほど、前方車両はより大きく非照射領域202から外れる虞がある。この場合、前方車両の運転者にグレアを与えてしまう。
【0182】
そこで灯具制御部20は、自車両と前方車両との車間距離が短いほど、各遷移領域における水平方向の照度変化が緩やかとなるように、別の言い方をすると各遷移領域の角度範囲が広くなるように、第1灯具ユニット24を制御する。これにより、自車両と前方車両との車間距離が短い場合、前方車両が比較的大きく非照射領域202から外れて照射領域200に進入しても、前方車両の運転車に与えるグレアを抑えることができる。また、照射領域200の非照射遷移領域202aの角度範囲が比較的広くなる。上述したように、自車両と前方車両との車間距離が短い場合は角度範囲に余裕を持った非照射領域202を設定するため、前方車両近傍は一般に暗くなる傾向にある。これに対し、本実施の形態では、グレアを与えない低輝度の光ではあるが、すくなからず光が照射されるため、前方車両近傍が暗くなりすぎるのが抑止される。一方、自車両と前方車両との車間距離が長い場合、他の照射領域200の部分に比べて暗い照射遷移領域200aの角度範囲が狭くなるため、照射領域200の非照射領域202側を、比較的明るくできる。
【0183】
続いて、照度変化を調整する方法を説明する。
図22(a)、(b)は、照度変化の調整方法の一例を説明する図である。図22(a)は、ある1走査における最下段の発光ユニット34_1~34_5によるスキャン領域SR1~SR5を示す。図22(b)は、図22(a)の1走査において最下段の発光ユニット34_1~34_5が形成するH線近傍の配光パターンの水平方向の照度分布を示す。
【0184】
この例では、点灯させる発光ユニット34の個数を変化させることで、水平方向の照度変化を調整する。点灯させる発光ユニット34の個数をより短い期間で変化させれば照度変化は急になり、より長い期間で変化させれば照度変化は緩やかになる。
【0185】
図23(a)、(b)は、照度変化の調整方法の別の例を説明する図である。ここでは、発光ユニット34_5を例に説明する。図23(a)は、発光ユニット34_5によるスキャン領域SR5を示す。図23(b)は、発光ユニット34_5の点消灯状態の一例を示すタイムチャートである。
【0186】
灯具制御部20は、スキャン領域SR5のうちの領域SR5_1および領域SR5_6に対応する時間区間は発光ユニット34_5を毎走査点灯させ、領域SR5_2および領域SR5_5に対応する時間区間は3回に2回、すなわち繰り返し走査するうちの約67%の割合で点灯させ、領域SR5_3および領域SR5_4に対応する時間区間は3回に1回、すなわち繰り返し走査するうちの約33%の割合で点灯させる。どの時間区間も同じ駆動電流量を供給する場合、領域SR5_2、領域SR5_5の照度は領域SR5_1の約67%の照度となり、領域SR5_3、領域SR5_4の照度は領域SR5_1の約33%の照度となる。領域SR5_6の照度は領域SR5_1の照度と同じになる。領域SR5_2および領域SR5_3や領域SR5_4および領域SR5_5の角度範囲がより狭くなるよう発光ユニット34_5の点消灯を制御すると水平方向の照度変化は急になり、より大きくなるよう発光ユニット34_5の点消灯を制御すると水平方向の照度変化は緩やかになる。
【0187】
少なくとも1つの発光ユニット34をこのようにして調光することで、水平方向の照度変化を調整できる。
【0188】
また、少なくとも1つの発光ユニット34について、1走査期間内においてその発光ユニット34に供給する電流値を変化させることで、水平方向の照度変化を調整することもできる。この場合、1走査期間内において、より短い期間で電流値を変化させれば照度変化は急になり、より長い期間で電流値を変化させれば照度変化は緩やかになる。
【0189】
以上、本発明の一側面について、第4の実施の形態をもとに説明した。続いて第4の実施の形態に関連する変形例を説明する。
【0190】
(第1変形例)
第4の実施の形態では特に言及しなかったが、前方車両が先行車であるか対向車であるか、あるいは前方車両が直進走行中であるかカーブ走行中であるかによって、水平方向の照度変化を調整してもよい。以下、具体的に説明する。
【0191】
(前方車両が対向車で直進走行中である場合)
この場合、左側通行の交通環境下では、自車両と対向車とが近づくにつれて対向車は自車両に対して相対的に右に移動していく。つまり、対向車が非照射領域202から右側に外れる虞がある。そこで灯具制御部20は、対向車に対応させた非照射領域202の左右両側の照射領域200のうちの右側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化が、左側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化よりもさらに緩やかとなるように、第1灯具ユニット24を制御する。これにより、対向車が自車両に対して右に速く相対移動し、仮に対向車が非照射領域202から外れた場合でも、対向車の運転車に与えるグレアを抑えることができる。
【0192】
右側通行の交通環境下では、自車両と対向車とが近づくにつれて対向車は自車両に対して相対的に左に移動していく。この場合、灯具制御部20は、対向車に対応させた非照射領域202の左右両側の照射領域200のうちの左側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化が、右側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化よりもさらに緩やかとなるように、第1灯具ユニット24を制御する。これにより、対向車が自車両に対して左に速く相対移動し、仮に対向車が非照射領域202から外れた場合でも、対向車の運転車に与えるグレアを抑えることができる。
【0193】
つまり、灯具制御部20は、対向車に対応する非照射領域202の左右両側の2つの照射領域200のうちの自車線から遠い側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化が、自車線に近い側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化よりも緩やかとなるように、第1灯具ユニット24を制御する。
【0194】
(前方車両が先行車でカーブ走行中である場合)
この場合、左カーブ走行中は、左側通行の交通環境下であるか右側通行の交通環境下であるかによらず、先行車は自車両に対して左に移動する。つまり、先行車が非照射領域202から左側に外れる虞がある。そこで灯具制御部20は、先行車に対応させた非照射領域202の左右両側の照射領域200のうちの左側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化が、右側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化よりもさらに緩やかとなるように、第1灯具ユニット24を制御する。これにより、先行車が左カーブ走行中に非照射領域202から外れた場合でも、先行車の運転車に与えるグレアを抑えることができる。
【0195】
右カーブ走行中は、左側通行の交通環境下であるか右側通行の交通環境下であるかによらず、先行車は自車両に対して右に移動する。つまり、先行車が非照射領域202から右側に外れる虞がある。この場合、灯具制御部20は、先行車に対応させた非照射領域202の左右両側の照射領域200のうちの右側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化が、左側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化よりもさらに緩やかとなるように、第1灯具ユニット24を制御する。これにより、先行車が右カーブ走行中に非照射領域202から外れた場合でも、先行車の運転車に与えるグレアを抑えることができる。
【0196】
(前方車両が対向車でカーブ走行している場合)
この場合、対向車が対向車から見て右カーブ(自車両から見ると左カーブ)走行中は、左側通行の交通環境下であるか右側通行の交通環境下であるかによらず、対向車は自車両に対して(自車両から見て)右に移動する。つまり、対向車が非照射領域202から右側に外れる虞がある。そこで灯具制御部20は、対向車に対応させた非照射領域202の左右両側の照射領域200のうちの右側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化が、左側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化よりもさらに緩やかとなるように、第1灯具ユニット24を制御する。これにより、対向車が対向車から見て右カーブ走行中に非照射領域202から外れた場合でも、対向車の運転車に与えるグレアを抑えることができる。
【0197】
対向車が対向車から見て左カーブ(自車両から見ると右カーブ)走行中は、左側通行の交通環境下であるか右側通行の交通環境下であるかによらず、対向車は自車両に対して(自車両から見て)左に移動する。つまり、前方車両が非照射領域202から左側に外れる虞がある。そこで灯具制御部20は、対向車に対応させた非照射領域202の左右両側の照射領域200のうちの左側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化が、右側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化よりもさらに緩やかとなるように、第1灯具ユニット24を制御する。これにより、対向車が対向車から見て左カーブ走行中に非照射領域202から外れた場合でも、対向車の運転車に与えるグレアを抑えることができる。
【0198】
前方車両がカーブ走行中である場合についてまとめると、前方車両が先行車であるか対向車両であるかによらず、また、左側通行の交通環境下であるか右側通行の交通環境下であるかによらず、前方車両が前方車両から見て左カーブを走行している場合は、前方車両に対応させた非照射領域202の左右両側の照射領域200のうちの自車両から見て左側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化が、自車両から見て右側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化よりもさらに緩やかとなるように、第1灯具ユニット24を制御する。一方、前方車両が前方車両から見て右カーブを走行している場合は、前方車両に対応させた非照射領域202の左右両側の照射領域200のうちの自車両から見て右側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化が、自車両から見て左側の照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化よりもさらに緩やかとなるように、第1灯具ユニット24を制御する。
【0199】
(第2変形例)
第4の実施の形態では、前方車両に対応させた非照射領域202の非照射遷移領域202aでは、照射領域200とは反対側の端部での照度がゼロになるように、照射領域200から遠いほど照度が低くなるよう徐変させる場合について説明したが、これに限られない。非照射領域202の照度は、許容限界照度以下となればよい。したがって例えば、非照射領域202における照度を許容限界照度で一定にしてもよい。つまり、非照射領域202が非照射遷移領域202aを有さず、照射領域200だけが遷移領域を有してもよい。そして、照射領域200の照射遷移領域200aにおける照度変化が、自車両と前方車両との車間距離が短いほど緩やかとなるように、第1灯具ユニット24が制御されればよい。
【0200】
(第3変形例)
第4の実施の形態では、スキャン光学系30は、駆動部36がモータであり、反射体38がリフレクタ、特に回転リフレクタである場合について説明したが、これに限られない。スキャン光学系30は、駆動部36が反射体38を駆動し、反射体38が駆動部36に駆動されて周期運動を繰り返すことにより光源の出射ビームを走査するよう構成されていればよい。
【0201】
例えば、スキャン光学系30は、駆動部36がモータであり、反射体38が反射面に平行な軸を中心に揺動可能なミラーであってもよい。
【0202】
また例えば、スキャン光学系30はMEMS(Micro Electro Mechanical System)であってもよく、具体的には駆動部36がアクチュエータである共振器であり、反射体38がMEMSミラーであってもよい。この場合、第4の実施の形態の回転数を共振周波数と読み替えればよい。
【0203】
以上、実施の形態に係る車両用灯具の構成と動作について説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0204】
18 車両用灯具、 20 灯具制御部、 24 第1灯具ユニット、 26 第2灯具ユニット、 28 第1光源、 30 スキャン光学系、 34 発光ユニット、 36 駆動部、 38 反射体、 40 第2光源、 100 車両灯具システム。
【産業上の利用可能性】
【0205】
本発明は、車両用灯具に利用できる。
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
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図9
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