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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169734
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】医薬溶液、調製方法及び治療的使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4015 20060101AFI20221101BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221101BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20221101BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A61K31/4015
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/12
A61P25/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135872
(22)【出願日】2022-08-29
(62)【分割の表示】P 2020074977の分割
【原出願日】2009-03-02
(31)【優先権主張番号】08003915.9
(32)【優先日】2008-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェンケル、エリック
(72)【発明者】
【氏名】プーラン、クレア
(72)【発明者】
【氏名】ドデレ、ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】ファナラ、ドメニコ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】癲癇の治療に有効なブリバラセタムの水性溶液中でのエピマー化、アミド加水分解および酸化を防止する方法を提供する。
【解決手段】ブリバラセタム((2S)-2-[(4R)-2-オキソ-4-プロピルピロリジン-1-イル]ブタンアミド)の水性溶液中のエピマー化、アミド加水分解および酸化を防止する方法であって、前記水性溶液のpH値を4.5~6.5の間に調整することを特徴とする、方法である。前記水性溶液が注射溶液である場合、10mg/mLのブリバラセタム、9mg/mLの塩化ナトリウム、及び酢酸ナトリウム緩衝液を含むことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表される、(2S)-2-[(4R)-2-オキソ-4-プロピルピロリジン-1-イル]ブタンアミド
【化1】

の水性溶液中のエピマー化、アミド加水分解および酸化を防止する方法であって、前記水性溶液のpH値を4.5~6.5の間に調整することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記水性溶液のpH値を5.0~6.0の間に調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性溶液が注射溶液であり、前記ブリバラセタムの量が、1ml当たり0.01mg~200mgの範囲にある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記注射溶液は、10mg/mLのブリバラセタム、9mg/mLの塩化ナトリウム、及び酢酸ナトリウム緩衝液を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記注射溶液のpH値を5.5±0.2に調整する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水性溶液が経口溶液であり、前記ブリバラセタムの量が、1ml当たり0.01mg~100mgの範囲にある、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-オキソ-1-ピロリジン誘導体の安定な液体製剤、この調製方法及びこの治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
公開番号WO01/62726の国際特許出願は、2-オキソ-1-ピロリジン誘導体及びこれらの調製方法を開示している。これは、特に、国際一般名ブリバラセタムで知られる化合物、(2S)-2-[(4R)-2-オキソ-4-プロプル-ピロリジン-1-イル]ブタンアミドを開示している。
【化1】
【0003】
公開番号WO2005/121082の国際特許出願は、2-オキソ-1-ピロリジン誘導体の調製方法を記載し、特に、国際一般名セレトラセタムで知られる、(2S)-2-[(4S)-4-(2,2-ジフルオロビニル)-2-オキソ-ピロリジン-1-イル]ブタンアミドの調製方法を開示している。
【化2】
【0004】
2-オキソ-1-ピロリジン誘導体は、したがって、特に製薬業界で有用である。
【0005】
ブリバラセタムは、癲癇の治療に有効である。ブリバラセタムは、二次性全般化した又はしていない、難治性の部分発作起始のある患者の治療にも、また有効である。治療確認第3相試験では、ブリバラセタムの有効性及び安全性が、成人患者(16~65歳)の補助療法において1日当たり5~100mgの用量で試験される。ブリバラセタムには、また、進行性ミオクローヌス癲癇及び症候性ミオクローヌスの治療における適応もある。
【0006】
セレトラセタムは、癲癇の治療に有効である。
【0007】
現在まで、ブリバラセタム及びセレトラセタムは、固体組成物(フィルムコート錠、顆粒剤)に製剤化されてきた。
【0008】
しかし、経口溶液は、子供への投与及び一部の成人患者への投与にも特に望ましいと思われる。注射溶液は、癲癇クリーゼの場合に有利に使用されることがある。
【0009】
その上、経口剤形の投与は、簡単で低コストの投与を提供するので、多くの医薬品にとって好ましい投与経路である。しかし、子供又は高齢者などの一部の患者には、錠剤又はカプセル剤などの固体製剤を嚥下することが要求される場合に、問題があり得る。そのような訳で、液体経口製剤の開発は患者の服薬遵守の向上をもたらすので、したがって望ましい。
【0010】
しかし、貯蔵安定性試験は、2-オキソ-1-ピロリジン誘導体の水性溶液が、部分的に不安定であることを示している。これらの試験の間、塩基性又は酸性加水分解により溶液中に分解生成物が形成され、実際には、エピマー化及び/又はアミド加水分解ばかりではなく、酸化もまた起こり、ヒドロキシアミド及びヒドロキシ酸の不純物が検出された。
【0011】
ここで、驚くべきことに、pH値が4.5~6.5の間では、これらの分解生成物が形成されないことが分かった。事実、分解の速度は、通常の条件(室温)において、薬液のpH値が4.5~6.5の間である場合、最も緩慢である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、pH値が4.5~6.5の間にある、医薬化合物の安定溶液であって、医薬化合物が、式(I)
【化3】

[式中、
は、C1~10アルキル又はC2~6アルケニルであり;
は、C1~10アルキル又はC2~6アルケニルであり;
Xは、-CONR、-COOH、-COOR又は-CNであり、
は、C1~10アルキルであり;
は、水素又はC1~10アルキルであり;
は、水素又はC1~10アルキルである]
の2-オキソ-1-ピロリジン誘導体である上記溶液に関する。
【0013】
好ましくは、本発明の溶液は、pH値が5.0~6.0の間にある。最良の結果は、pH値が約5.5で得られる。
【0014】
「安定」とは、通常の貯蔵条件(室温)において、安定性が最適であることを意味する。
【0015】
本明細書で使用する用語「アルキル」は、直鎖(非分枝)状、分枝状若しくは環状の部分、又はこれらの組合せを有する、飽和した一価の炭化水素基を表す基である。好ましいアルキルは、1~10個の炭素を含む。より好ましいアルキルは、1~4個の炭素を含む。任意選択で、アルキル基を、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、エステル、アシル、シアノ、アシルオキシ、酸、アミド又はアミノ基から成る群から独立して選択される、1~5個の置換基で置換されていてもよい。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、トリフルオロメチル及びトリフルオロエチルである。
【0016】
本明細書で使用する用語「アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を有する、非置換の又は置換された、分枝、非分枝若しくは環状の炭化水素基、或いはこれらの組合せを表す。好ましいアルケニルは、2~6個の炭素を含む。より好ましいアルケニルは、2~4個の炭素を含む。「アルケニル」部分は、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、エステル、アシル、シアノ、アシルオキシ、カルボン酸、アミド又はアミノ基から成る群から独立して選択される、1~5個の置換基で任意選択で置換されていてもよい。
【0017】
本明細書で使用する用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素の原子を表す。
【0018】
本明細書で使用する用語「ヒドロキシ」は、式、-OHの基を表す。
【0019】
本明細書で使用する用語「アルコキシ」は、式、-ORの基を表し、式中Rは、上記で定義したC1~4のアルキルである。
【0020】
本明細書で使用する用語「アシル」は、式、RCO-の基を表し、式中Rは、上記で定義したC1~4のアルキルを表す。
【0021】
本明細書で使用する用語「エステル」は、式、-COORの基を表し、式中Rは、上記で定義したC1~4のアルキルを表す。
【0022】
本明細書で使用する用語「シアノ」は、式、-CNの基を表す。
【0023】
本明細書で使用する用語、「アシルオキシ」は、式、-O-CORの基を表し、式中Rは、上記で定義したC1~4のアルキル又はアリール基である。
【0024】
本明細書で使用する用語「アリール」は、芳香族炭化水素から1個の水素を取り除くことで誘導される有機基、例えばフェニルを表す。
【0025】
本明細書で使用する用語「カルボン酸」は、式、-COOHの基を表す。
【0026】
本明細書で使用する用語「アミノ基」は、式、-NH、NHR又はNRの基を表し、式中R及びRは、本明細書中の上記で定義したアルキル基を表す。
【0027】
本明細書で使用する用語「アミド」は、式、-CO-NH、-CO-NHR又は-CO-NRの基を指し、式中R及びRは、本明細書中の上記で定義したアルキル基である。
【0028】
本明細書で使用する用語「スルホン酸基」は、式、-O-SO-Rの基を表し、式中Rは、本明細書中の上記で定義したアルキル又はアリールである。好ましいスルホン酸基は、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸基又はトリフルオロメタンスルホン酸である。
【0029】
本発明の第1の態様による一実施形態では、Rは、C1~4アルキル又はC2~4アルケニルである。本発明の第1の態様による別の実施形態では、Rは、n-プロピル又は2,2-ジフルオロビニルである。
【0030】
本発明の第1の態様による一実施形態では、Rは、C1~4アルキルである。本発明の第1の態様による別の実施形態では、Rは、エチルである。
【0031】
本発明の第1の態様による一実施形態では、Xは、-CONR、-COOH又は-COORであり、式中、Rは、C1~4アルキルである。本発明の第1の態様による別の実施形態では、Xは、-CONRである。
【0032】
本発明の第1の態様による一実施形態では、Xは、-CONR又は-COORであり、式中、Rは、C1~4アルキルである。本発明の第1の態様による別の実施形態では、Xは、COORであり、式中、Rは、C1~4アルキルである。
【0033】
本発明の第1の態様による一実施形態では、Xは、-CONR又は-COORであり、式中Rは、C1~4アルキルである。本発明の第1の態様による別の実施形態では、XはCOORであり、式中、Rは、C1~4アルキルである。
【0034】
特別な実施形態では、Rは、メチルである。
【0035】
本発明の第1の態様による一実施形態では、Rは、水素又はC1~4アルキルである。本発明の第1の態様による別の実施形態では、Rは、水素である。
【0036】
本発明の第1の態様による一実施形態では、Rは、水素又はC1~4アルキルである。本発明の第1の態様による別の実施形態では、Rは、水素である。
【0037】
好ましくは、Rは、n-プロピル又は2,2-ジフルオロビニルであり;Rは、エチルであり;Xは、-CONHである。
【0038】
特に、本発明は、注射溶液又は経口溶液に関する。注射溶液の場合、溶液のpH値は、好ましくは5.5±0.2である。経口溶液の場合、液剤のpH値は、好ましくは5.5±0.2である。
【0039】
注射溶液中の医薬化合物の重量表示による量は、一般に1ml当たり0.01mg~200mg、好ましくは、1ml当たり0.1mg~50mg、より好ましくは、1ml当たり1mg~30mgの範囲にある。
【0040】
経口溶液中の医薬組成物の重量表示による量は、一般に1ml当たり0.01mg~100mg、好ましくは、1ml当たり0.1mg~50mg、より好ましくは、1ml当たり1mg~20mgの範囲にある。
【0041】
通常、溶液は、水性又はアルコール性である。本発明の好ましい実施形態では、溶液は、水溶液である。すなわち、水が溶媒として使用され、経口水溶液用の精製水、及び注射溶液形のための注射用パイロジェンフリーの水であるのが好ましい。
【0042】
溶液は、直接、静脈内、筋内又は非経口的に投与することができ、又は注入溶液若しくは注入液へ追加する濃縮水として設計することができる。
【0043】
pH値を調整するための物質は、生理的緩衝液である。組成物のpHは、緩衝系により維持される。緩衝系は、リン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸又はクエン酸などの酸と、塩基との適当な量の混合物、特に水酸化ナトリウム又はリン酸水素二ナトリウムを含む。理想的には、緩衝液は、中性、弱酸性又は弱塩基性の飲料で希釈する際に、目標とするpH範囲内にとどめる十分な能力がある。
【0044】
緩衝液の例は、酢酸、リン酸及びクエン酸である。最良の結果は、酢酸及びクエン酸で得られる。
【0045】
防腐剤及び製剤化剤などの薬学的に許容される添加剤を、溶液に加えてもよい。防腐剤は、製造又は使用中に意図せずに導入される微生物を殺すため、又は増殖を抑制するために、製剤中に含まれ、それ故必須成分である。製剤のために適当な防腐剤の選択は、pH、他の成分との適合性、投与経路、用量及び製剤の投与頻度、成分と容器又は栓との分配係数、汚染の程度及びタイプ、所要の濃度、及び抗菌作用の速度によって決まる。
【0046】
本発明は、また安定な溶液の製造方法にも関し、そこでは、医薬化合物の溶液は、pH値が4.5~6.5の間に調整される。
【0047】
本発明によれば、溶液は、また、注射形態用に塩化ナトリウム又は酢酸ナトリウム、及び経口形態用に甘味剤、香味剤、嗜好物質を含有してもよい。さらに、甘味及び味覚の一般的な知覚が改善した。
【0048】
薬学的に許容される甘味剤は、サッカリン、サッカリンナトリウム又はサッカリンカルシウム、アスパルテーム、アセサルフェームカリウム、シクラミン酸ナトリウム、アリターム、ジヒドロカルコン甘味剤、モネリン、ステビオシド又はスクラロース(4,1’,6’-トリクロロ-4,1’,6’-トリデオキシガラクトスクロース)、好ましくは、サッカリン、サッカリンナトリウム又はサッカリンカルシウムなどの、好ましくは少なくとも1つの強力甘味剤を含み、任意選択で、ソルビトール、マンニトール、フルクトース、スクロース、マルトース、イソマルト、グルコース、水素化グルコースシロップ、キシリトール、カラメル又は蜂蜜などのバルク甘味剤を含む。
【0049】
強力甘味剤は、都合良く低濃度で使用される。例えば、サッカリンナトリウムの場合、濃度は、最終製剤の全体積を基準にして、0.01%から0.1%(w/v)の範囲であってもよく、好ましくは約0.05%(w/v)である。
【0050】
ソルビトールなどのバルク甘味剤は、約10%から約35%(w/v、重量/体積)、好ましくは約15%から30%(w/v)の範囲、より好ましくは約25%(w/v)のより多量で、効果的に使用することができる。
【0051】
ソルビトールをバルク甘味剤として使用する場合、好ましくは、ソルビトールを70%(w/w)含有する水溶液として使用する。
【0052】
低用量の製剤中の苦みのある成分を隠すことができる薬学的に許容される香味剤は、好ましくは、チェリー、ラズベリー、クロフサスグリ、イチゴフレーバー、キャラメルチョコレートフレーバー、ミントクールフレーバー、ファンタジーフレーバーなどの果実風味の香味剤、及び同様の薬学的に許容される強い香味剤である。各々の香味剤は、0.05%から1%(w/v)の範囲の濃度で、最終組成物中に存在し得る。
【0053】
前記強い香味剤の組合せは、有利に用いられる。好ましくは、香味剤は、製剤の酸性状態の下で、味覚及び色の変化又は消失を受けないものが使用される。
【0054】
好ましくは、注射溶液は、塩化ナトリウムを含有する。
【0055】
溶液を調製するためには、水の必要量の80%を準備し、医薬化合物及び他の添加剤を撹拌により溶解する。溶解が完了したら、pHを確認し、必要であれば、所望のpH、好ましくは約5.5(+/-0.5)に調整する。この溶液を、水を用いて最終体積に合わせる。
【0056】
注射形態では、このようにして得られた溶液は、従来の病原体を透過させないフィルターを通す濾過により滅菌化し、次に、注射液製剤に適当な滅菌した容器(アンプル又はバイアル)に分注する。調製の方法で使用する水は、無菌且つパイロジェンフリーである。
【0057】
経口溶液は、適当なフィルターで濾過し、経口投与のための適当な容器に分注する。
【0058】
本発明は、また、治療的適用のための薬剤の製造に向けた、安定溶液の使用にも関する。
【0059】
本発明は、また、疾患の治療のための安定溶液の使用にも関する。
【0060】
本発明は、また、患者を治療する方法にも関し、この方法には、そのような患者に安定溶液の治療有効量を投与することが含まれる。
【0061】
本発明は、また、pH値が4.5~6.5の間にある安定溶液を含む医薬組成物にも関する。
【0062】
本発明は、また、pH値が4.5~6.5の間にある安定なブリバラセタム溶液を含む液体医薬製剤にも関し、この製剤は、0.2%(重量表示による)未満の不純物(不純物には分解生成物が含まれる)しか含有しない。
【0063】
本発明は、また、pH値が4.5~6.5の間にある安定なセレトラセタム溶液を含む液体医薬製剤にも関し、この製剤は、0.2%(重量表示による)未満の不純物(不純物には分解生成物が含まれる)しか含有しない。
【0064】
本発明の経口溶液は、子供、又は錠剤での投与が実現可能ではない成人患者の投与に、特に有用である。
【0065】
本発明の別の利点は、注射溶液は、緊急事態又はクリーゼの場合において、又は経口摂取を介する任意の製剤の投与が実現不可能である患者に対して、迅速な介入を可能にするという事実に存在する。ブリバラセタム及びセレトラセタムのこれらの特徴により、これらの製剤は、液体形態で投与することが理想的となり、水中で非常に難溶性である、同じ適応のある他の大多数の薬物と対照をなしている。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下の例で本発明を説明するが、その範囲は限定しない。
【0067】
(例1)ブリバラセタム溶液(20mg/ml)の1.5ml密封ガラスバイアル中の1ml溶液
【0068】
異なるpHで溶液を調製する(固有pH(緩衝液で処理しない)、及びpH4.5、5.0、5.5、6.0)。このpHは、所望のpHを得るために、適当な緩衝液(この例では、50mMクエン酸による)を用いて調節する。
【0069】
溶液は、1.5mlの密封ガラスバイアルに分注する。
【0070】
安定性試験は、25℃、40℃、60℃及び80℃で行う。
【0071】
個々の溶液のpHは、試験の開始時、2週間後、4週間後及び10週間後に測定する。ブリバラセタム溶液中の分解生成物の量は、個々の溶液中で計量する。
【0072】
結果を、以下の表1、2及び3にまとめる。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
これらの結果は、ブリバラセタム溶液が、pH4.5~6.5の範囲で安定であることを示している。これらの結果は、pH範囲が5.0~6.0の溶液で、分解速度が最も低いことを明白に示している。
【0077】
(例2)セレトラセタム溶液(10mg/ml)の1.5ml密封ガラスバイアル中の1ml溶液
【0078】
異なるpHで溶液を調製する((固有pH(緩衝液で処理しない)、及びpH4.5、5.0、5.5、6.0)。このpHは、所望のpHを得るために、適当な緩衝液(この例では、50mM酢酸塩による)を用いて調節する。
【0079】
溶液は、1.5mlの密封ガラスバイアルに分注する。
【0080】
安定性試験は、25℃、40℃、60℃及び80℃で行う。
【0081】
個々の溶液のpHは、試験の開始時、2週間後、4週間後及び10週間後に測定する。セレトラセタム溶液中の分解生成物の量は、個々の溶液中で計量する。
【0082】
結果を、以下の表にまとめる。
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
これらの結果は、セレトラセタム溶液が、pH4.5~6.5の範囲で安定であることを示している。これらの結果は、pH範囲が5.0~6.0の溶液で、分解速度が最も低いことを明白に示している。
【0087】
(例3):ブリバラセタム注射溶液(50mg/ml)のバイアル
【0088】
溶液の組成は以下の通りである。
【表7】
【0089】
ブリバラセタム、塩化ナトリウム及び酢酸ナトリウムは、注射用水の量の80%に溶解する。
【0090】
このpHは、0.1N酢酸溶液を用いて5.5に調整する。
【0091】
所要の体積は、注射用水を用いて最終的に合わせる。
【0092】
溶液は、プレフィルターで濾過後、0.22μmフィルターで濾過する。
【0093】
6mlのガラスバイアルを充填する。
【0094】
密封したアンプル又は密閉したバイアルを、蒸気滅菌(オートクレーブ、20分間、121℃)により滅菌する。
【0095】
ブリバラセタムの注射溶液は調製が容易で、余分な添加剤を含有しない。
【0096】
(例4)ブリバラセタム経口溶液(1mg/ml)
【0097】
この溶液の組成は、以下の通りである。
【表8】
【0098】
ステンレスタンクに90%のグリセロールを移し、メチルパラベンを加える。溶解は、すばやく撹拌しながら加熱することにより達成する。
【0099】
別のタンクに精製水を移し、クエン酸ナトリウム、クエン酸を溶解する。
【0100】
ブリバラセタムを、完全に溶解するまで撹拌しながら加える。
【0101】
両方の溶液を混合する。
【0102】
最終体積まで水を加え、調製物を均質化する。
【0103】
pHを、pH計で調節する(pH=5.6±0.3)。
【0104】
調製物を、40μmカートリッジ式フィルターで濾過する。
【0105】
(例5)セレトラセタム静脈内投与用溶液(100mg/ml)のバイアル
【0106】
この溶液の組成は、以下の通りである。
【表9】
【0107】
セレトラセタム、塩化ナトリウム及び酢酸ナトリウムは、注射用水の量の80%に溶解する。
【0108】
pHを、注射用の0.1N酢酸を用いて5.5に調整する。
【0109】
所要の体積は、注射用水を用いて最終的に合わせる。
【0110】
密封したアンプル又は密閉したバイアルは、蒸気滅菌(オートクレーブ、30分間、121℃)により滅菌する。
【0111】
(例6)ブリバラセタム経口溶液(10mg/ml)
【0112】
この溶液の組成は、以下の通りである。
【表10】
【0113】
経口溶液は、例4に記載の通り調製する。
【0114】
pHは、pH計で調節する(pH=5.4±0.2)。
【0115】
この経口溶液は、安定である。その上、これは官能的に許容される経口水溶液である。
【0116】
(例7)ブリバラセタム経口溶液(1mg/ml)
【0117】
この溶液の組成は、以下の通りである。
【表11】
【0118】
経口溶液は、例4に記載の通り調製する。
【0119】
pHは、pH計で調節する(pH=5.5±0.2)。
【0120】
この経口溶液は、安定である。
【0121】
(例8):LBS結合分析
【0122】
[LBSは、レベチラセタム結合部位(Levetiracetam Binding Site)を意味する(参照:M.Noyerら、Eur.J.Pharmacol.、286(1995)137~146頁)]
【0123】
化合物の阻害定数(K)は、様々な濃度の非標識試験物質と平衡にある放射性リガンドの、単一濃度の結合を測定することによる、競合結合実験において決定する。放射性リガンドの特異結合を50%阻害する試験物質濃度は、IC50とよばれる。平衡解離定数Kiは、IC50に比例し、Cheng及びPrusoffの式(Cheng Y.ら、Biochem.Pharmacol、1972、22、3099~3108頁)を用いて計算する。
【0124】
濃度範囲は、通常、可変刻み(0.3~0.5log)で6log単位を網羅する。アッセイは1連又は2連で行い、各々のK測定は試験物質の2つの異なるサンプルで行う。
【0125】
200~250gの雄のSprague-Dawleyラット由来の大脳皮質を、20mmol/lのトリスHCl(pH7.4)、250mmol/lのスクロース(緩衝液A)中で、Potter Sホモジナイザー(1,000rpmで10ストローク;Braun、Germany)を用いて、均質化した(全ての操作は、4℃で行う)。ホモジネートは、30,000gで15分間遠心分離する。得られた粗製の膜ペレットを50mmol/lのトリスHCl(pH7.4)(緩衝液B)に再懸濁させ、37℃で15分間インキュベートし、30,000xgで15分間遠心分離し、同じ緩衝液で2回洗浄する。最終ペレットを、15~25mg/ml範囲のタンパク質濃度で、緩衝液Aに再懸濁させ、液体窒素中で保存する。
【0126】
膜(タンパク質の150~200μg/分析)を、2mmol/lのMgCl、1~2×10-9mol/lの[H]-2-[4-(3-アジドフェニル)-2-オキソ-1-ピロリジニル]ブタンアミド、及び次第に濃度を増加させた試験物質を含有する、50mmol/lのトリスHCl緩衝液(pH7.4)の0.5ml中で、4℃で120分間インキュベートする。非特異的結合(NSB)は、本質的に全ての受容体に結合する基準物質のある濃度(例えば、10-3mol/lのレベチラセタム)の存在下で観察された残存結合として、定義する。膜に結合した及び膜から遊離した放射性リガンドは、非特異的結合を減少させるため、0.1%のポリエチレンイミン及び10-3mol/lのレベチラセタムに予め浸漬したガラス繊維フィルター(WhatmanGF/C又はGF/B; VEL、Belgiumと同等)を通した急速濾過により分離する。サンプル及びフィルターを、50mmol/lトリスHCl(pH7.4)緩衝液の少なくとも6mlで洗浄する。全体の濾過手順は、試料1つ当たり10秒を超えない。フィルター上に捕捉された放射能は、β-カウンター(Tri-Carb 1900又はTopCount 9206、Camberra Packard、Belgium、又は任意の他の同等なカウンター)において、液体シンチレーションによりカウントする。データ分析は、数種の結合モデルを記述する式のセットを用いるコンピュータ化非線形曲線適合法により行い、質量の法則に従い独立の非相互作用性受容体の集団を推定する。
【0127】
本発明による化合物、特にブリバラセタム及びセレトラセタムは、pKi値が6.0以上の値を示した。
【0128】
(例9)音感受性マウスの動物モデル
【0129】
本試験の目的は、反射性発作を有する遺伝的動物モデルである、音感受性マウスにおける化合物の抗痙攣効力を評価することにある。原発性全身癲癇のこのモデルでは、発作は、電気的又は化学的刺激なしに惹起され、発作型は、ヒトで起こる発作に対するこれらの臨床的現象学が、少なくとも一部同じである(Loscher W.&Schmidt D.、Epilepsy Res.(1998)、2、145~181頁、Buchhalter J.R.、Epilepsia(1993)、34、S31~S41)。
【0130】
Acoustic Physiology(Paris)研究所のLehmann博士によって最初に選択され、1978年以来、UCB Pharmaセクターの飼畜ユニットで繁殖させた、DBA系統に由来する雄又は雌の遺伝的な音感受性マウス(14~28g;N=10)を使用する。実験デザインは、数種の群から成り、1つの群には、ビヒクルの対照を与え、他の群は、試験化合物の異なる用量を与えた。化合物は、聴原発作の導入前60分に腹腔内に投与する。投与した用量範囲は対数関数的に連続しており、一般に1.0×10-5mol/kg~1.0×10-3mol/kgの間にあるが、必要な場合、より低用量又は高用量を試験する。
【0131】
試験するために、1ケージ当たり1匹のマウスで、動物を防音室内の小さなケージに入れる。30秒の適応期間後に、各ケージ上部に配置した拡声器を介して、音刺激(90dB、10~20kHz)を30秒間送る。この合間時にマウスを観察し、発作の機能活動の3相、すなわち、ワイルドランニング(wild running)、慢性及び強直性痙攣の存在を記録する。ワイルドランニング、慢性及び強直性痙攣を防いだマウスの割合をそれぞれ計算する。
【0132】
活性化合物に対して、ED50値、すなわち、対照群に対して50%の防御を生じた用量を、発作の機能活動の3相各々に対して防御したマウスの割合に関するプロビット解析(SAS/STAT(登録商標)ソフトウェア、バージョン6.09、PROBIT方法)を使用して、95%の信頼限界と共に計算した。
【0133】
本発明による化合物、特にブリバラセタム及びセレトラセタムは、ED50値が1.0E-04以下の値を示した。
【0134】
(例10):ブリバラセタムの静脈内投与製剤の生物学的利用能及び安全性
【0135】
ブリバラセタムは、シナプス小胞タンパク質SV2Aに対して高い親和性がある、抗癲癇薬である。
【0136】
24匹の健康な対象(12匹の雌、12匹の雄)において3元クロスオーバー試験を行う第1段階では、15分間の静脈内注入及びIVボーラスとして投与したブリバラセタム10mgに対する、ブリバラセタム10mg経口錠の単回投与の生物学的利用能を比較する。第2段階では、情報を得るため、6匹の対象(3匹の雌、3匹の雄)の4連続群で単回用量漸増試験(25mg、50mg、100mg及び150mg)を急速なIVボーラスとして行い、これらの投与レジメンにおけるブリバラセタムの薬物動態を評価し、用量の比例性を探索する。
【0137】
15分間のIV注入又はIVボーラスのどちらか一方を経由して投与したブリバラセタム10mgは、単回投与したブリバラセタムの10mg経口錠と生物学的に同等である(Cmax及びAUC両方の公比の90%信頼区間は、80~125%の生物学的同等性範囲内に、完全に含まれていた)。
【0138】
IV注入又はIVボーラスとして投与したブリバラセタム(25mgから150mgまで)は、安全で認容性が良好である。IV注入又はIVボーラス後のブリバラセタムの薬物動態学的パラメータは、同様であった。用量範囲(25~150mg)において、曝露の程度は投与量に比例する。