(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169741
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】フッ素フリーの撥油コーティング、その製造方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20221101BHJP
C08L 25/06 20060101ALI20221101BHJP
C08L 31/00 20060101ALI20221101BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20221101BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20221101BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20221101BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20221101BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20221101BHJP
C08L 81/06 20060101ALI20221101BHJP
C08L 75/02 20060101ALI20221101BHJP
C08L 57/00 20060101ALI20221101BHJP
C08L 29/00 20060101ALI20221101BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C08L83/04
C08L25/06
C08L31/00
C08L33/06
C08L67/00
C08L75/04
C08L77/00
C08L79/08
C08L81/06
C08L75/02
C08L57/00
C08L29/00
C08K3/36
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022136432
(22)【出願日】2022-08-30
(62)【分割の表示】P 2019556823の分割
【原出願日】2018-04-17
(31)【優先権主張番号】62/486,245
(32)【優先日】2017-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510243539
【氏名又は名称】コーネル ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チー,グゥングゥン
(72)【発明者】
【氏名】ジャネリス,エマニュエル,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ジンツー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポリマーベースの疎油性コーティングを提供する。
【解決手段】1以上のポリジメチルシロキサン樹脂層を含む、フッ素フリーで、疎油性の層を提供する。前記層は、基材の表面の一部又は全てに配置できる。前記基材は、ファブリック、ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガ、及び同等のものである。前記層を製造する方法及び使用する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のPDMS樹脂を含む層であって、各PDMS樹脂が、以下のi)及び/又はii)を含み
i)1以上のポリ(ジメチルシロキサン)、各ポリ(ジメチルシロキサン)は、1以上のポリ(ジメチルシロキサン)部分を含む、及び
任意で、前記ポリ(ジメチルシロキサン)は、独立して、以下の構造を有するペンダント基を1以上含む:
式中、Rは、前記ポリ(ジメチルシロキサン)の中でそれぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'は、-O-SiOR’基の中でそれぞれ独立して、アルキル基から選択される;
ii)1以上のポリマーであって、各ポリマーは、
1以上の骨格であって、直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)、炭化水素ポリマー、ポリアクリレートポリマー、ポリ(メタクリレート)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(アリルエーテル)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、及びそれらの組み合わせから選択される骨格から選択されるもの、及び任意で、
以下の構造を有する少なくとも1つのペンダント基を含み:
式中、Rは、それぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'基は、-アルキル基である
ここで、前記層は、基材の外表面の一部又は全てに配置される層である。
【請求項2】
前記1以上のポリ(ジメチルシロキサン)が、直線状のポリ(ジメチルシロキサン)部分、分岐状のポリ(ジメチルシロキサン)部分、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の層。
【請求項3】
前記1以上のポリ(ジメチルシロキサン)が以下のものであり、
式中、R
2は、それぞれ独立して、H、炭素数1~40の炭化水素基、又は-O-SiOR’基から選択され、R’基は、アルキル基であり;nは0~400であり、mは1~50,000である、請求項1に記載の層。
【請求項4】
前記1以上のポリ(ジメチルシロキサン)又は直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)の少なくとも1つが、1以上の架橋性基を有する、請求項1に記載の層。
【請求項5】
前記架橋性基が、アクリレート、メタクリレート、アリル、ビニル、チオール、ヒドロキシル、シラノール、カルボン酸、アルデヒド、アミン、イソシアネート、アジド、アルキン、エポキシ、ハライド、水素、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項4に記載の層。
【請求項6】
前記ペンダント状分岐PDMSが、1以上のトリス(トリアルキルシロキシ)シリルビニル化合物及びトリメトキシシランビニル化合物の重合によって形成され、ここで前記アルキル部分が、それぞれ独立して、C1~C40アルキル部分である、請求項1に記載の層。
【請求項7】
前記アルキル部分が、それぞれ独立して、C1~C30、C1~C10アルキル部分、又はC1~C5アルキル部分である、請求項6に記載の層。
【請求項8】
前記ペンダント基が、以下のものから選択され、
及び任意で、前記ペンダント基が、連結基によって、前記ポリ(ジメチルシロキサン)樹脂又は骨格に共有結合している、請求項1に記載の層。
【請求項9】
前記1以上のポリ(ジメチルシロキサン)部分、又は前記直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)骨格のR2OSi繰り返し単位の数が、0~400である、請求項1に記載の層。
【請求項10】
前記ポリ(ジメチルシロキサン)が、以下の構造を有している、請求項1に記載の層
式中、nは0~600であり、mは0~3であり、Xは架橋性基であり、以下のものを含むが、これらに限定されない:アクリレート、メタクリレート、アリル、ビニル、チオール、ヒドロキシル、シラノール、カルボン酸、アルデヒド、アミン、イソシアネート、アジド、アルキン、エポキシ、ハライド、水素、及びそれらの組み合わせ。
【請求項11】
前記層が硬化された層である、請求項1に記載の層。
【請求項12】
前記層がさらに、PDMS樹脂の2つのポリマー鎖の間に、少なくとも1つの架橋を有するか(ここで、PDMS樹脂の前記2つのポリマー鎖は同じであっても、異なっていてもよい)、及び/又は、PDMS樹脂のポリマー鎖と基材との間に、少なくとも1つの架橋を有する(ここで、PDMS樹脂の前記ポリマー鎖は同じであっても、異なっていてもよい)、請求項1に記載の層。
【請求項13】
前記層がさらに、以下のものから選択される1以上の架橋部分、及びそれらの組み合わせを含み:
式中、R
3は、炭素数1~40の炭化水素基であり、nは0~600である、請求項1に記載の層。
【請求項14】
前記層が、さらに複数のナノ粒子を含む、請求項1に記載の層。
【請求項15】
前記複数のナノ粒子が、シリカナノ粒子からなる群より選択される、請求項14に記載の層。
【請求項16】
前記ナノ粒子の重量パーセンテージが、前記層の総重量に対して1~98wt%である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記層の厚みが、10nm~300ミクロンである、請求項1に記載の層。
【請求項18】
前記基材が、ファブリック、 ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガ、及び同等のものである、請求項1に記載の層。
【請求項19】
前記ファブリックが、綿、PET、綿/PETのブレンド、ナイロン、ポリエステル、スパンデックス、絹、ウール、ビスコース、セルロース繊維、アクリル、ポリプロピレン、それらのブレンド、レザー、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項18に記載の層。
【請求項20】
前記基材が、ファブリックの外表面の一部に配置された超親水性層を有するファブリックである、請求項1に記載の層。
【請求項21】
前記層が、22mJ/m2以下の表面張力を有する、請求項1に記載の層。
【請求項22】
22mJ/m2以下の表面張力を有する層と、超親水性層とが、ファブリックの反対側に配置されている、請求項1に記載の層。
【請求項23】
前記基材及び/又は層がフッ素フリーである、請求項1に記載の層。
【請求項24】
基材の外表面の一部又は全てに配置された請求項1に記載の層を形成する方法であって、
前記基材の外表面の一部又は全てを、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)樹脂又は複合ナノ流体でコーティングすること;及び
前記PDMS樹脂コーティング又は前記複合ナノ流体から形成されたコーティングの温度にて、前記コーティングを硬化し加熱すること
を含み、この際、請求項1に記載の層が、前記基材の外表面の一部又は全てに形成される、方法。
【請求項25】
前記PDMS樹脂が、以下の(i)及び/又は(ii)を含む:
i)1以上のポリ(ジメチルシロキサン)部分を含む1以上のポリ(ジメチルシロキサン)樹脂、
ここで、任意で、前記ポリ(ジメチルシロキサン)樹脂は、以下の構造を有するペンダント基を1以上含む:
式中、Rは、前記ポリ(ジメチルシロキサン)の中でそれぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'は、-O-SiOR’基の中でそれぞれ独立して、アルキル基から選択される;
ii)1以上のポリマーであって、
直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)、炭化水素ポリマー、ポリアクリレートポリマー、ポリ(メタクリレート)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(アリルエーテル)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、及びそれらの組み合わせから選択される骨格、及び、
以下の構造を有する少なくとも1つのペンダント基を含み、
式中、Rは、それぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'基は、アルキル基である、請求項24に記載の層。
【請求項26】
前記複合ナノ流体が、PDMS樹脂、1以上のナノ粒子、及び任意で、溶媒、クロロホルム、テトラヒドロフラン、及びそれらの組み合わせを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記基材が、ファブリック、 ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガ、及び同等のものである、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記基材が、その上に配置された複数のナノ粒子を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記基材がフッ素フリーである、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記コーティングが、スプレーコーティング、ディップコーティング、フローティング・ナイフコーティング、ダイレクトロールコーティング、パディング、カレンダーコーティング、フォームコーティング、又はそれらの組み合わせである、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
さらに、基材の前処理を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記前処理が、化学的処理、物理的処理、プライマー処理、又はそれらの組み合わせである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記前処理が、前記基材の外表面の一部又は全てを、非金属酸化物、金属酸化物、又はそれらの組み合わせでコーティングすることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
さらに、前記基材をシリカナノ粒子と接触させることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
前記コーティングと硬化が1~20回繰り返される、請求項24に記載の方法。
【請求項36】
さらに、前記層にさらなる表面粗さを施すことを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項37】
さらなる表面粗さが、ナノファブリケーション、エレクトロスピニング、フォースドスピニング、押出、機械的スタンピング、摩耗、エッチング、又はそれらの組み合わせによって、前記層に施される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
基材の外表面の一部又は全てに配置された、ポリ(ジメチルシロキサン)を含む層を形成する方法であって、
ジメチルシロキサン前駆体の重合を開始できる複数の官能基を有する基材を、反応混合物と接触させることを含み、この反応混合物は、1以上のジメチルシロキサン前駆体、及び
(i)1以上のラジカル開始剤;又は
(ii)1以上の金属触媒及び1以上のアミンを含む1以上の活性化剤を含み、
この際、基材の表面に配置されたポリ(ジメチルシロキサン)層を含む層が形成される、方法。
【請求項39】
前記基材が、ファブリック、 ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガ、及び同等のものである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記基材が、その上に配置された複数のナノ粒子を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記基材がフッ素フリーである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
さらに、基材の前処理を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記前処理が、化学的処理、物理的処理、プライマー処理、又はそれらの組み合わせである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記前処理が、前記基材の外表面の一部又は全てを、非金属酸化物、金属酸化物、又はそれらの組み合わせでコーティングすることを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
さらに、前記基材(ポリ(ジメチルシロキサン)層を有していてもよい)を、シリカナノ粒子と接触させることを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記接触が1~20回繰り返される、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
さらに、前記層にさらなる表面粗さを施すことを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
さらなる表面粗さが、ナノファブリケーション、エレクトロスピニング、フォースドスピニング、押出、機械的スタンピング、摩耗、エッチング、又はそれらの組み合わせによって、前記層に施される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
請求項1に記載の層を1つ以上含む、製造品。
【請求項50】
前記製造品が、布地、衣類、食品包装、眼鏡、ディスプレイ、スキャナ、飛行機コーティング、スポーツ用品、建築材料、窓、風防ガラス、耐食性コーティング、防氷コーティング、冷却器、又はライトである、請求項49に記載の製造品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2017年4月17日に出願された米国仮出願第62/486,245号に基づく優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に包含される。
【技術分野】
【0002】
本開示は一般に、ポリマーベースの疎油性コーティングに関する。より具体的には、本開示は、ポリ(ジメチル)シロキサン(PDMS)樹脂ベースの疎油性コーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
繊維産業は、それらの製品およびサプライチェーンから全ての有害な化学物質を除去すべきという強い圧力下にある。その化学物質のリストにはフッ素含有化合物が多い。パーフッ素化物質およびポリフッ素化物質は、水および油の両方に対する耐性のために、多くの工業用途および消費者製品(カーペット、衣料品、および室内装飾品など)において極めて魅力的である。ポリフッ素系化合物は分解に対して耐性があり、環境中に残存する。それらは生物蓄積し、いくつかは、少なくとも実験動物において健康への有害な影響に関連している。
【0004】
同じレベルの性能および耐久性を維持しながら、フッ素系化合物の代替物を見出すことは、容易なことではない。撥油性コーティングはいくつかの消費者製品および産業用途、例えば、抗湿潤および自己洗浄に有用である。超疎水性コーティングには多くの例があるが、高疎油性コーティングへの進展は限定されている。多くの超疎水性コーティングは、親油性であることが判明している。さらに、超疎水性状態とは対照的に、疎油性は、油の種類に依存して大きく異なりうる。特定の油に対する超疎油性表面(接触角>150°)は、より低い表面張力を有する別の油に対して親油性であり得る。
【0005】
疎油性コーティングの設計における課題は、材料における根本的な制限から生じる。炭化水素油の典型的な表面張力は20~36mN/mの範囲であるので、ヤングの式によれば、平滑な撥油性基材の表面張力は20mN/m2未満でなければならない。具体的にはオリーブ油の表面エネルギーは~32mN/mであり、それらのタイプに応じて、植物油の表面エネルギーは典型的には30smN/mほどの低いものである。AATCC(登録商標)疎油性標準試験(等級1)で使用された最初の油である鉱油は、31.5mN/mの表面エネルギーを有する。低い表面エネルギーの要求は、最も一般的に使用される材料が本質的に疎油性ではないことを示唆する。疎油性のためのこの前提条件を満たすことができるフッ素化材料はごくわずかである。実際、今日までに開発されたいわゆる超疎油性コーティングは全て、豊富な-CF2基および-CF3基を有するフッ素系化合物を使用する(例えば、PTFE、パーフルオロシランおよびパーフルオロポリマー)。固有表面張力の材料の限界を考慮すると、従前に開発された高疎油性コーティングは本質的に全て、低表面エネルギーフッ素化材料に基づいている。
【0006】
超疎水性材料の開発に続いて、適切な表面粗さを導入して疎油性を高めることができる。例えば、疎油性表面を調製するために凹状構造が提案されている。
【0007】
【0008】
これらの凹状構造の使用は、基材の表面張力要求を低下させたが、凹状構造の製造(典型的には化学エッチングとともにリソグラフィを行う)は、特に可撓性基材にとって、困難かつ高価になる傾向がある。実用的な産業用途に関して、従前に開発された高疎油性コーティングは本質的に全て、極めて低い表面エネルギーを有するフッ素化材料に依然として基づいている。
【0009】
フッ素化されていない材料を使用する疎油性コーティングの開発に向けて、非常に限定された努力がなされてきた。一般的なPDMSは約22~24mN/mの表面エネルギーを有する。従って、PDMS仕上げは、表面エネルギーが十分に低くないので、一般的には効率的な疎油性コーティングを提供しない。さらに、基材の性質が異なるために、PDMS仕上げは、接着性、均一性、および機械的特性の点で問題となる可能性がある。
【0010】
マイクロ流体シリコーンオイルエマルジョンテンプレーティングにより、自立型のオムニフォビック(omniphobic)膜を調製した。この膜は、凹状構造と呼ぶことができる狭い開口部を有する均一なハニカム状の微小空洞を有する。この膜は、表面改質のためのフルオロカーボン、及び複雑なリソグラフィー製造を使用することなく撥油性および可撓性を示した。しかしながら、微小空洞(マイクロキャビティ)膜は、摩耗に対する耐久性が限られているという問題がある。狭い空洞開口部の薄い最上層は容易に摩滅し、その凹状構造の損失のために、膜は疎油性が低くなるか、又は親油性にさえなる(膜は依然として超疎水性であり得るものの)。明確な微小空洞構造を生成するために、比較的均一で平坦な基材上での入念な溶媒蒸発を、エマルジョンテンプレート中に使用した。これは、毛管効果の結果としての不均一な溶媒蒸発のために、粗い基材(例えば、室内装飾布)に対してより難しい。より重要なことに、微小空洞の典型的なサイズは数十ミクロンの範囲であり、これは、多くの一般的な繊維の直径と同様であるか、又はそれよりも大きく、織物仕上げ用途へのマイクロ流体エマルジョンテンプレーティングを制限する(処理スケーラビリティは言うまでもなく)。潜在的な解決策は、基材上の追加型撥油性フィルムとして膜を使用することである。しかしながら、そのような疎油性表面の手触りおよび外観は損なわれる可能性がある。
【発明の概要】
【0011】
上記に基づき、同じレベルの性能および耐久性を維持しながら、テキスタイルおよび他の産業で使用されるフッ素系化合物の代替物を見出すための、継続的かつ満たされていない必要性が存在する。
【0012】
本開示は、基材(例えば、ファブリック、ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガ(ブリック)など)の表面の一部又は全て(例えば、外表面の一部又は全て)に配置された、22mJ/m2以下(例えば、22mJ/m2未満)の表面張力を有する層を提供する。本開示は、前記層を作る方法及び前記層の使用も提供する。
【0013】
一側面において、本開示は、基材の表面の一部又は全て(例えば、外表面の一部又は全て)に配置された、22mJ/m2以下(例えば、22mJ/m2未満)の表面張力を有する層(例えば、分子的に粗い層)を提供する。層(単数又は複数)は、フッ素フリーの単層又はフッ素フリーの複数の層であってもよい(例えば、実質的にフッ素フリーの単層又は実質的にフッ素フリーの複数の層)。層は、複数の個別の層を含んでもよい。
【0014】
層は、1又は複数のPDMS樹脂を含んでもよい。例えば、樹脂は、複数のPDMS部分を含む。例えば、PDMS樹脂は、架橋性基を含み、この架橋性基には、アクリレート、メタクリレート、アリル、ビニル、チオール、ヒドロキシル、シラノール、カルボン酸、アルデヒド、アミン、イソシアネート、アジド、アルキン、エポキシ、ハライド、水素、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。前記架橋性基は、1又は複数の化学結合(例えば、共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、又はそれらの組み合わせ)を経て、前記基材と相互作用可能である(例えば、前記基材に共有結合的に及び/又は非共有結合的に結合される)。ある例では、PDMS樹脂には、ペンダント状分岐PDMS樹脂及び直線状PDMS樹脂が含まれる。
【0015】
層は、基材の表面の一部又は全て(例えば、表面の全て、又は外表面の全て)に配置されることができる。基材は、多様な大きさと形状を有し得る。基材は、多様な組成を有し得る。基材は、ファブリック、 ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなどであってもよい。基材がファブリックである一例では、前記ファブリックは、生来あるいは改質されて、超親水性、親水性、疎水性又は超疎水性を有するファブリックである。
【0016】
一側面において、本開示は、本明細書に開示の層を製造する方法を提供する。前記方法は、基材上にPDMS樹脂をコーティングすることを基礎とする。
【0017】
様々な例において、基材(例えば、本明細書に記載の基材、例えば、ファブリック、ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなど)の外表面の一部又は全て(例えば、外表面全て)に配置された、22mJ/m2以下の表面張力を有する層(例えば、分子的に粗い層)(例えば、22mJ/m2未満の表面張力を有する硬化PDMS樹脂を含む層)を形成する方法は、
基材(例えば、ファブリック)を用意すること;
前記基材(例えば、ファブリック)の表面の一部又は全て(例えば、外表面の一部又は全て)を、PDMS樹脂(例えば、ペンダント状分岐PDMS樹脂又は直線状PDMS樹脂)(例えば、本明細書に開示のPDMS樹脂)でコーティングすること(例えば、ディップコーティング又はスプレーコーティングによって);
前記PDMS樹脂コーティングを硬化(例えば、熱硬化)させることを含み、
この際、22mJ/m2以下の(例えば、22mJ/m2未満の)表面張力を有する層(例えば、分子的に粗い層)が、前記基材(例えば、ファブリック)の表面の一部又は全て(例えば、外表面の一部又は全て)上に形成される。
【0018】
一側面において、本開示は、製造品を提供する。前記製造品は、本明細書に開示の1又は複数の層、及び/又は本明細書に開示の方法によって製造される1又は複数の層を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示の本質及び目的をより十分に理解するために、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明が参照されるべきである。
【0020】
図1は、(a)繊維構造、(b)T構造、及び(c)他の一般的な凹状(リエントラント)構造の略図を示す。
【0021】
図2は、ペンダント状分岐PDMS樹脂の合成図を示し、図中、Xは-O-SiOX’基から選択され、X’は、-O-SiOX’基の中でそれぞれ独立して、アルキル基(例えば、メチル基)から選択される。
【0022】
図3は、直線状PDMS樹脂の合成図を示す。PDMSの繰り返し単位(R
2OSi)の数は、0あるいは1以上であってもよい。様々な例において、繰り返し単位の数nは、10~400であり(例えば、nは50である)、及び/又は、mの値は1以上(例えば、1~50,000、1~25,000、又は1~10,000)である。
【0023】
図4は、ディップコーティング(上)及びスプレーコーティング(下)による、複合ナノ流体を使用した、1-及び2面疎油性コーティングの付着を示す。
【0024】
図5は、ディップ-パッド-ドライ-キュア処理を使用した、ナノ流体改質疎油性綿ファブリックのSEM画像を示し、a)は初期の疎油性ファブリック、b)は30回の洗濯洗浄後の疎油性ファブリックである。
【0025】
図6は、初期の綿ファブリック(左)と、ナノ流体改質疎油性綿ファブリック(右)の油染み耐性の比較を示す。一滴の植物油(明確にするため、オイルレッドO染料で着色)を、両方のファブリックに付着させた。
【0026】
図7は、分岐ペンダント状PDMS樹脂の一例を示す。PDMS樹脂は、PDMS骨格(主鎖)を有するPDMSポリマーを含む。PDMSポリマーは、多官能性前駆体(例えば、少なくとも2つのアクリレート基を有する二官能性前駆体)を使用して形成できる。PDMS樹脂は、無色であってもよい。
【0027】
図8は、PDMS樹脂の一例を示す。前記PDMS樹脂は、分岐ペンダント状PDMS樹脂の一例である。前記PDMS樹脂は、PDMSの骨格とPDMSの枝を有するPDMSポリマーを含む。前記PDMSポリマーは、多官能性前駆体(例えば、少なくとも3つのビニル基を有する前駆体)を使用して形成することができる。
【0028】
図9は、graft-from法による疎油性コーティング基材の合成を示す。
【0029】
図10は、ファブリックサンプルのSEM画像を示す:(a)は初期のファブリック、(b)は表面開始原子移動ラジカル重合(graft-from atom-transfer radical poly/merization)により製造された疎油性ファブリック。
【0030】
図11は、様々な材質からなる疎油性ファブリックの写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
特許請求される主題が、特定の例及び/又は実施形態に関して記載されるが、本明細書に記載される利点および特徴の全てを提供しない実施形態を含む他の実施形態もまた、本明細書に開示の範囲内である。本明細書に開示の範囲から逸脱することなく、さまざまな構造的、論理的、および処理的ステップが行われてもよい。
【0032】
値の範囲が本明細書に開示される。これらの範囲は、下限値と上限値とを設定している。特に明記しない限り、範囲は、最小値(下限値又は上限値のいずれか)の大きさまでの全ての値、および記載された範囲の値の間の範囲を含む。
【0033】
本開示は、基材(例えば、ファブリック、ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなど)の表面の一部又は全て(例えば、外表面の一部又は全て)に配置された、22mJ/m2以下(例えば、22mJ/m2未満)の表面張力を有する層を提供する。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「部分(moiety)」は、分子の一部(部分構造)又は官能基を指す。例えば、部分は、前駆体又はPDMS樹脂の一部(部分構造)又は官能基である。様々な例において、「部分」は別の化学種(例えば、基)に共有結合され得る1つの末端、又は他の化学種に共有結合され得る複数(例えば、2つ)の末端を有する化学実体を指す。部分の例には以下のものが含まれるが、これらに限定されない:
部分は基と称され得る。
【0035】
本明細書中で使用される場合、別段の指示がない限り、用語「脂肪族」は飽和しているか、又は任意に、1つ以上の不飽和度を含む、分岐又は非分岐の炭化水素部分/基を指す。不飽和度を有する部分には、アルケニル基/部分、アルキニル基/部分、および環式脂肪族基/部分が含まれるが、これらに限定されない。例えば、脂肪族基は、C1~C40(例えば、C1~C30、C1~C12、C1~C10、又はC1~C5)(全ての整数の炭素数およびそれらの間の炭素数の範囲を含む)の脂肪族基/部分(例えば、アルキル基)であってもよい。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基等が含まれるが、これらに限定されない。脂肪族基/部分は、置換されていなくてもよく、又は1つ以上の置換基で置換されていてもよい。置換基の例としては例えば、ハロゲン(-F、-Cl、-Br、および-I)、追加の脂肪族基(例えば、アルケン、アルキン)、アリール基、アルコキシド、カルボキシレート、カルボン酸、エーテル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基など、およびこれらの組合せなどの様々な置換基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
様々な例において、本開示は、低表面エネルギー材料と工学的表面粗さとを組み合わせた層を提供する。表面粗さは、例えば、ベースポリマーの分子構造を活用することによって、又はスタンピングによって設計することができる。分子粗さの例としては、分岐又は剛性セグメントを含コポリマーの使用、コポリマーの自己集合、ポリマーブレンドのマイクロ相分離、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。PDMSのパターン化は、マイクロ接触印刷(microcontact printing)、およびソフトリソグラフィのために開発された技術を利用することによって達成することができる。
【0037】
一側面において、本開示は、基材の外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)に配置された、22mJ/m2以下(例えば、22mJ/m2未満)の表面張力を有する層(例えば、分子的に粗い層)を提供する。層(単数又は複数)は、フッ素フリーの単層又はフッ素フリーの複数の層であってもよい(例えば、実質的にフッ素フリーの単層又は実質的にフッ素フリーの複数の層)。層は、複数の個別の層を含んでもよい。ある例では、層は、基材表面の一部又は全てに配置される。
【0038】
ある例では、ファブリック、 ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなどは、その外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)に配置された、22mJ/m2以下(例えば、22mJ/m2未満)の表面張力を有するフッ素フリーの層(例えば、分子的に粗い層)を有する。
【0039】
層の表面張力は、22、21、20、19、又は18mJ/m2未満である。例えば、層は12~22mJ/m2、12~20mJ/m2、又は12~18mJ/m2の表面張力を有する。
【0040】
層は、様々な厚みを有し得る。様々な例において、層の厚みは数ナノメートルから、数百ミクロンである。種々の他の例では、層の厚みは、10nm~300ミクロン、又は50nm~100ミクロンである。
【0041】
層は、1又は複数のPDMS樹脂を含んでもよい。例えば、樹脂は、複数のPDMS部分を含んでもよい。例えば、PDMS樹脂は、架橋性基を含み、この架橋性基には、1つ以上のアクリレート、メタクリレート、アリル、ビニル、チオール、ヒドロキシル、シラノール、カルボン酸、アルデヒド、アミン、イソシアネート、アジド、アルキン、エポキシ、ハライド、水素、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。前記架橋性基は、1又は複数の化学結合(例えば、共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、又はそれらの組み合わせ)を経て、前記基材と相互作用可能である(例えば、前記基材に共有結合的に及び/又は非共有結合的に結合される)。ある例では、PDMS樹脂には、ペンダント状分岐PDMS樹脂及び直線状PDMS樹脂が含まれる。
【0042】
PDMS樹脂として、様々なPDMSポリマー及び/又はPDMSコポリマー(例えば、ランダムコポリマー)が挙げられる。PDMS樹脂は、1又は複数のポリマー鎖を含んでもよい。前記ポリマー鎖は様々な構造を有していてもよい。樹脂は、PDMSポリマー及び/又はPDMSコポリマーの組み合わせを含んでもよい。様々な例において、PDMS樹脂は、1又は複数のポリ(ジメチルシロキサン)を含み、各ポリ(ジメチルシロキサン)は、1又は複数のポリ(ジメチルシロキサン)部分を含んでいる(例えば、単数又は複数の、直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)部分)。前記部分(単数又は複数)は、例えば基(単数又は複数)などの末端部分(単数又は複数)であってもよい。場合によっては、前記ポリ(ジメチルシロキサン)(単数又は複数)は、独立して、以下の構造を有する1又は複数のペンダント基を含む。
式中、Rは、前記ポリ(ジメチルシロキサン)(単数又は複数)の中でそれぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'は、-O-SiOR’基の中でそれぞれ独立して、アルキル基(例えば、メチル基)から選択される。様々な例において、PDMS樹脂は、1又は複数のポリマーを含み、各ポリマーは1又は複数の骨格を含んでおり、これは、直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)、炭化水素ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなど)、ポリアクリレートポリマー、ポリ(メタクリレート)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(アリルエーテル)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、及びそれらの組み合わせから選択される骨格から選択される。場合によっては、少なくとも1つのペンダント基は、以下の構造を有している:
Rは、それぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'基はアルキル基であり、前記層は、基材の外表面の一部又は全てに配置されている。前記連結基は、アルキル、アリール基、シリル部分など及びそれらの組み合わせを含む基(例えば、-CH
2-基、-CH
2CH
2-基、-CH
2CH
2CH
2-基
-Si(CH
3)
2O-、-CH
2O-基、-CH
2CH
3O-基、-CH
2N-基、-CH
2SO
2-基;ここでnは0~40(その間の全ての整数値と範囲を含む))であってもよい。連結基の例は、本明細書に記載される。
【0043】
前記PDMS樹脂は、140g/mol以上(例えば、400g/mol以上、又は600g/mol以上)の分子量を有するポリマーを含むことができる。望ましい層の厚みを達成するためには、ポリマーの分子量が、140g/molより大きい(例えば、400g/mol、600g/mol、1000g/mol、3000g/mol、又は4000g/molを超える)ことが望ましいかもしれない。ある例において、分子量は10,000g/mol以下である。
【0044】
PDMS樹脂は、ペンダント状分枝PDMS樹脂であり得る。ペンダント状分枝PDMS樹脂は、複数の脂肪族部分及び/又は脂肪族基(例えば、アルカンジイル/アルケンジイル部分及び/又はアルカンジイル/アルケンジイル基)および複数のペンダント基(例えば、PDMSペンダント基)を含む骨格を有することができる。一例では、ペンダント状分岐PDMS樹脂は、1つ以上の脂肪族部分及び/又は脂肪族基(例えば、アルカンジイル/アルケンジイル部分及び/又はアルカンジイル/アルケンジイル基)を含む1つ以上のアルキルシリル化合物(これは前駆体(例えば、モノマー)と呼ぶことができる)の重合によって形成される樹脂である。例えば、ペンダント状分岐PDMS樹脂は、ペンダント形成前駆体(例えば、トリス(トリアルキルシロキシ)シリルアルキルアクリレートなど)、および基材と架橋し得る1つ以上の架橋前駆体(例えば、アルキルアクリルオキシアルキルトリアルコキシシランなど)の重合によって形成される樹脂である。架橋前駆体は例えば、1つ以上のヒドロキシル、シラノール、エポキシ、カルボキシル、アルデヒド、アミノ、又はイソシアネート架橋性基、又はそれらの組み合わせを有するコモノマーであり得る。個々の脂肪族部分及び/又は脂肪族基(例えば、アルカンジイル/アルケンジイル部分及び/又はアルカンジイル/アルケンジイル基)はそれぞれ独立して、C
1からC
40(例えば、C
1~C
30、C
1~C
10、又はC
1~C
5)(及びその間の全ての整数の炭素および範囲を含む)の数の炭素を含む任意の分子リンケージ(例えば、部分/基)であってよい。一例では、ペンダント状分岐PDMS樹脂は、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレートとビニルトリメトキシシランとの重合によって形成される樹脂である。例えば、
図2を参照のこと。アルキルアクリルオキシアルキルトリアルコキシシランに対するトリス(トリアルキルシロキシ)シリルアルキルアクリレート(例えば、ビニルトリメトキシシランに対するトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート)のモル比は、一般に1より高い。一例では、前記比は3~20である。
【0045】
架橋性部分の例には、以下のもの、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
式中、R
3は、炭素数1~40(その間の全ての整数値の炭素及び範囲を含む)の炭化水素であり(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、フェニル、ジフェニル、ナフチルなど)、nは0~600(その間の全ての値及び範囲を含む)であり、Xは架橋性基であり、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:アクリレート、メタクリレート、アリル、ビニル、チオール、ヒドロキシル、シラノール、カルボン酸、アルデヒド、アミン、イソシアネート、アジド、アルキン、エポキシ、ハライド、水素、及びそれらの組み合わせ。様々な例において、前記架橋性部分は、1又は複数の架橋性基が反応すると(例えば、異なるポリマー鎖、同じポリマー鎖、基材又はそれらの組み合わせの架橋性基と反応すると)、架橋部分となる。
【0046】
PDMS樹脂は直線状PDMS樹脂であってもよい。直線状PDMS樹脂は、複数のPDMS脂肪族部分及び/又は脂肪族基(例えば、アルカンジイル/アルケンジイル部分及び/又はアルカンジイル/アルケンジイル基)、および場合により、複数のペンダント基(例えば、PDMSペンダント基)を含む骨格を有することができる。例えば、PDMS樹脂は、基材への結合基を有する直線状PDMS樹脂(例えば、反応性官能基末端(例えば、アミン末端)PDMS、フェノール(例えば、ビスフェノールA)、およびパラホルムアルデヒドの重合によって形成された樹脂;シラノール、エポキシ、カルボキシル、アルデヒド、イソシアネート、チオール、ビニル、水素およびヒドロキシル基で末端化されたPDMS)である。例えば、
図3参照。反応性官能基末端PDMS、及び/又は、シラノール、エポキシ、カルボキシル、アルデヒド、イソシアネート、チオール、ビニル、水素およびヒドロキシル基、又はこれらの組み合わせで末端化されたPDMSの、脂肪族部分及び/又は脂肪族基(例えば、アルカンジイル/アルケンジイル部分及び/又はアルカンジイル/アルケンジイル基)はそれぞれ独立して、C
1からC
40までの数の炭素(例えば、C
1~C
30、C
1~C
10、又はC
1~C
5)を含む任意の分子リンケージであり得る。様々な例において、PDMSポリマーの繰り返し単位(例えば、R
2OSi-)(例えば、C
2H
6OSi又は
図3のn)の数は0以上である。様々な例において、繰り返し単位の数は0~400、及びその間の繰り返し単位の全ての整数および範囲を含む。様々な例において、PDMSポリマー中の繰り返し単位の数(例えば、
図3のm)は、少なくとも1である。様々な例において、PDMSポリマー中の繰り返し単位の数(例えば、
図3中のm)は、1~50,000、1~25,000、又は1~10,000である。様々な例において、PDMSポリマー中の繰り返し単位の数(例えば、
図3のm)は、5~50,000、5~25,000、又は5~10,000である。様々な例において、mは2,000である。様々な例において、nは0~400であり得る。様々な例において、nは50である。
【0047】
任意のフェノール類を使用することができる。適切なフェノール類の例として、1以上のベンゼン環に結合した少なくとも2つのヒドロキシル基及び1以上の単鎖(例えば、C1~C5、又はC1~C4)アルキル基を含むフェノール類、又は1以上の芳香族環に直接結合したヒロドキシル基を有するもの(例えば、ヒドロキシル化されたC5~C16の芳香族基/部分、例えば、ヒドロキシル化ナフタレン、ヒドロキシル化ピレン、ヒドロキシル化アントラセンなど)が挙げられるが、これらに限定されない。一例において、前記フェノールは、ビスフェノールAである。
【0048】
フィルムは、ナノ粒子(例えば、シリカナノ粒子)を含むことができる。前記ナノ粒子は、多官能性ナノ粒子であってもよい。「多官能性ナノ粒子」は、PDMS樹脂及びトリメチルシロキシル基との適合性を改善し、表面エネルギーを減少させるために、2種以上の官能基が、ナノ粒子上に固定(例えば、ナノ粒子上のシラノール基)されているものを意味する。前記シリカナノ粒子及び樹脂及び/又は基材は、これらのナノ粒子の表面官能基に由来する共有結合及び/又は水素結合を有していてもよい。
【0049】
ナノ粒子は、金属、炭素、金属酸化物、又は半金属酸化物(例えばシリカ)ナノ粒子であり得る。ナノ粒子は低表面エネルギー基(例えば、トリメチルシロキシル、メチル、t-ブチル、ベンゾキサジン、PDMS基など)で表面官能化することができる。ナノ粒子は様々な形態を有することができる。様々な例では、ナノ粒子は、球形、ナノプレート、ナノチューブ、ナノロッド、ナノワイヤ、そのようなナノ粒子によって生成された階層構造、又はそれらの組合せである。一例において、層は複数のシリカナノ粒子(例えば、Ludox HSシリカ、又は他の市販のコロイド状シリカ粒子)を含む。ナノ粒子は様々な量で存在し得る。様々な例において、ナノ粒子は、層の総重量に基づいて、0~95重量%(その間の全ての整数値の重量%および範囲を含む)で層中に存在する。一例では、ナノ粒子は層中に20~40重量%存在する。シリカナノ粒子と、樹脂又はファイバー/繊維との間の相互作用は、ナノ粒子の表面官能基が関与する共有結合及び/又は水素結合の形であってもよい。
【0050】
層は、基材の外表面の一部又は全て(又は外表面の全て)に配置されることができる。基材は、多様な大きさと形状を有し得る。基材は、多様な組成を有し得る。基材の材料の例として、ファブリック、 ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
基材は、生来あるいは改質されて、超親水性、親水性、疎水性又は超疎水性を有するファブリックであってもよい。ファブリックは、綿、PET (ポリエチレンテレフタレート)、ブレンド(例えば、綿/PETのブレンドなど)、ナイロン、ポリエステル、スパンデックス、絹、ウール、ビスコース、セルロース繊維(例えば、TENCEL(登録商標))、アクリル、ポリプロピレン、又はそれらのブレンドであってもよい。ファブリックは、レザーであってもよい。ファブリックは、織り構造(例えば、平織、あや織、繻子織など)、編み構造(例えば、シングルジャージ、ダブルジャージ、ピケ、メッシュなど)、又は不織構造(例えば、フェルト、繊維マット、メンブラン、フィルム、レザー、紙など)を有していてもよい。
【0052】
基材は、1つ以上の凹状(リエントラント)構造を含んでもよい。凹状構造の非限定的な例としては、繊維構造(例えば、
図1aに示されるような繊維構造の非限定的な例)、T字型構造(例えば、
図1bに示されるような繊維構造の非限定的な例)、および、例えば台形、マッチ棒様、土柱(hoodoo)様/逆オパールおよびマッシュルーム様構造などの派生的構造が挙げられる(例えば、派生的構造の非限定的な例が
図1cに示される)。基材は2つ以上の異なる(例えば、1以上の特性に関して異なる;例えば、1又は複数の寸法、1又は複数のタイプの凹状構造など)凹状構造を含んでもよい。これらの構造を有する基材上に配置された層の疎油性挙動は、例えば
図1に示されるように、毛管長さ、オーバーハングの半径R、微細構造間隔D、および局所テクスチャ角度(local texture angle)Ψによって決定することができ、繊維構造と比較して、T字型構造は、これらのパラメータを同時に最大化することを可能にするので、高い撥油性を有し得る。一例では、基材は凹状構造を全く含まない。
【0053】
層はファブリックに配置されることができ、このファブリックは、ファブリック外表面の一部に配置された超親水性層を有する。超親水性層の非限定的な例は、米国特許出願第14/122,535号(Wang等、“Antifouling Ultrafiltration and RO/FO /Membranes”)に記載されており、その中の超親水性層及び、超親水性層の製造方法に関する開示は、参照により本明細書中に包含される。一例において、本明細書に開示の層と超親水性層は、ファブリックの反対側に配置される。
【0054】
超親水性層は、複数の超親水性ナノ粒子を含むことができる。親水性ナノ粒子は、アルキルシロキサン-リンカー基で表面機能化(官能化)されたシリカナノ粒子である。様々な例において、超親水性層は、30度、25度、20度、15度、10度、又は5度未満の接触角を有する表面を有する。超親水性層は、当該分野で既知の方法によって作られたナノ粒子から形成することができる。
【0055】
層は疎油性である。層は疎脂性であり、疎油性であってもよい。層は、疎脂性、疎油性および疎水性であってもよい。「疎油性」は、油からはじかれているように見える分子の物理的特性を指す。層の疎油性又は撥油性は、AATCC(登録商標)試験法118-2013によって評価することができる。様々な例では、層は1つ又は複数のオイル(例えば、AATCC(登録商標)試験方法118-2013に記載されている1つ又は複数のオイル)について、AATCC(登録商標)試験方法118-2013をパスする。疎脂性(lipophobicity)は、ときにリポフォビア(lipophobia)とも呼ばれるが、「脂肪拒絶」、文字通り「脂肪への恐れ」を意味する化合物の化学的性質である。疎脂性化合物は脂質又は他の非極性溶媒に溶解しない化合物であり、例えば、水は疎脂性である。
【0056】
一側面において、本開示は、本明細書に開示の層を製造する方法を提供する。様々な例において、前記方法は、基材上にPDMS樹脂をコーティングすることを基礎とし、これはgraft-to法とも呼ばれる。様々な他の例において、in situ重合によって形成されたPDMS樹脂は、graft-from法とも呼ばれる。
【0057】
様々な例において、基材(例えば、本明細書に記載の基材、例えば、ファブリック、ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなど)の外表面の一部又は全て(例えば、外表面全て)に配置された、22mJ/m2以下の表面張力を有する層(例えば、分子的に粗い層)(例えば、22mJ/m2未満の硬化PDMS樹脂を含む層)を形成する方法は、
基材(例えば、ファブリック)を用意すること;
前記基材(例えば、ファブリック)の表面の一部又は全て(例えば、外表面の一部又は全て)を、PDMS樹脂(例えば、ペンダント状分岐PDMS樹脂又は直線状PDMS樹脂)(例えば、本明細書に開示のPDMS樹脂)でコーティングすること(例えば、ディップコーティング又はスプレーコーティングによって);
前記PDMS樹脂コーティングを硬化(例えば、熱硬化)させることを含み、
この際、22mJ/m2以下の(例えば、22mJ/m2未満の)表面張力を有する層(例えば、分子的に粗い層)が、前記基材(例えば、ファブリック)の表面の一部又は全て(例えば、外表面の一部又は全て)に形成される。
【0058】
硬化の結果として、層の1以上のポリマー鎖の間及び/又は1以上のポリマー鎖と前記基材との間の架橋(例えば、1以上の共有結合の形成)が生じ得る。架橋は、架橋部分を形成し得る(例えば、1以上の架橋性部分の反応から)。
【0059】
様々なコーティング方法が使用できる。コーティング方法の例として、スプレーコーティング、ディップコーティング、フローティング・ナイフコーティング、ダイレクトロールコーティング、パディング、カレンダーコーティング、フォームコーティング、及びペインティングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
PDMS樹脂は、ナノ粒子、PDMS樹脂、及び任意で溶媒の混合物であってもよい(例えば、前記混合物を含む)。そのような樹脂は、「複合ナノ流体」と称されてもよい。様々な例において、基材は、複合ナノ流体でコーティングされる。前記ナノ粒子は、層の表面粗さを増加させると考えられる。さらに、前記ナノ粒子は、層の機械的耐久性と強度を増加させ得る(例えば、ファブリックの外表面の少なくとも1部又は全て(例えば、外表面の全て)に配置された層を有するファブリック)。
【0061】
層(単数又は複数)は、in situ重合によって形成することができる。例えば、層は、基材(例えば、基材上に配置された1以上の基)から開始される重合を経て成長する。例えば、重合はラジカル重合である。様々な例において、ラジカル重合は、例えば原子移動ラジカル重合(ATRP)などのリビング重合である。
【0062】
in situ重合の一例は、メチルシロキサン前駆体の重合を開始できる複数の官能基を有する基材(例えば、その表面に配置された、1以上の以下に示す基、及び同様のもの、又はその組み合わせを含むもの)を、
反応混合物と接触させることを含み、この反応混合物は、1以上のメチルシロキサン前駆体、及び以下の(i)又は(ii)を含み、この際、基材の表面に配置された開始剤層及び/又はポリ(ジメチルシロキサン)層を含む層が形成される。
(i)1以上のラジカル開始剤(例えば、
のようなハロゲン化物開始剤;例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなアゾラジカル開始剤;例えば、過酸化ベンゾイルのような過酸化物;例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシルのようなアルコキシアミン;例えば、シアノメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]トリチオカーボネートのような連鎖移動剤など、又はそれらの組み合わせ);
(ii)1以上の金属触媒(例えば、Cu(I), Cu(II), Fe(II), Fe(III), Co(II)など、及びそれらの組み合わせ)及び1以上のアミン(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、N,N-ビス(2-ピリジルメチル)アミン、トリス[2-アミノエチル]アミン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、2,2'-ビピリジン、4,4'-ジ(5-ノニル)-2,2'-ビピリジン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N-プロピル(2-ピリジル)メタンイミン、2,2':6',2''-テルピリジン、4,4',4''-トリス(5-ノニル)- 2,2':6',2''-テルピリジン、N,N,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N-ビス(2-ピリジルメチル)オクチルアミン、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリス[(2-ピリジル)メチル]アミン、1,4,8,11-テトラアザ-1,4,8,11-テトラメチルシクロテトラデカン、N,N,N',N'-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミンなど、それらの組み合わせ)を含む1以上の活性化剤。
【0063】
基材は、コーティングの前に前処理されてもよい。一例では、ナノ粒子が、基材の外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)に配置され及び/又は成長する。様々な例において、方法は、本明細書に開示の層を形成する前に、ファブリックの外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)に複数のナノ粒子を含む層を形成することを含む。様々な例において、前記形成は、ファブリックの外表面の一部又は全てを、シリカゾル(例えば、一以上のテトラアルコキシシランを加水分解する(例えば、アルコール/水溶液中で)(例えば、アルカリ性条件下で)ことによって形成されるシリカゾル)でコーティングすること(例えば、ディップコーティング又はスプレーコーティングによって)、及び、コーティングされた布帛を乾燥することを含む。テトラアルコキシシランの組み合わせを使用することもできる。テトラアルコキシシランの例として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロピルオルトシリケート、テトラブチルオルトシリケート、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。シリカゾルは、ケイ酸ナトリウムを酸性化することによっても形成できる。
【0064】
一例では、基材の前処理を含む方法は、さらに、乾燥したファブリックと、シリカナノ粒子(例えば、シリカナノ粒子の懸濁液)を接触させることを含む。
【0065】
基材は使用前にクリーニングされてもよい。一例では、基材(例えば、ファブリック、又は複数のナノ粒子がその上に配置されたファブリック)は、シリカゾルによるコーティング前に、クリーニングされる(例えば、プラズマ洗浄、酸化、例えば水及び/又は他の溶媒(例えば、有機溶媒など)のような溶媒を用いてすすぐ)。
【0066】
コーティングと硬化は、所望の回数繰り返すことができる。所望の厚みを有する層を得るために、コーティングと硬化を繰り返すことが望ましい。様々な例において、コーティングと硬化は、1~20回(その間の全ての整数の繰り返しを含む)繰り返される。
【0067】
様々な例において、方法は、さらに、フィルム上にさらなる(追加的な)表面粗さを形成することを含む。表面粗さは、例えば、ナノファブリケーション、エレクトロスピニング、フォースドスピニング(forced spinning)、押出、機械的スタンピング、摩耗、エッチング、又はそれらの組み合わせによって形成できる。
【0068】
一側面において、本開示は製造品を提供する。前記製造品は、本明細書に開示の層を1つ以上、及び/又は本明細書に開示の方法によって作られた層を1つ以上含む。
【0069】
製造品の例としては、例えば、布地、シャツ、ジャケット、ズボン、帽子、タイ、コート、靴等のような衣類(例えば、子供用衣類、大人用衣類、産業用作業衣類等のような衣類)、食品包装、眼鏡、ディスプレイ(例えば、タッチスクリーン)、スキャナ(例えば、指紋スキャナ)、飛行機コーティング、スポーツ用品(例えば、テント、ユニフォーム等)、建築材料(例えば、窓)、風防ガラスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
製造品は、様々な産業で使用できる。産業の例には、航空宇宙、自動車、建築・建造、食品加工、エレクトロニクスが含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
本明細書に開示された様々な実施形態および例に記載された方法のステップは、本明細書に開示の方法を実行するのに十分である。したがって、様々な例において、方法は、本質的に、本明細書で開示される方法のステップの組合せからなる。様々な他の例において、方法は、そのようなステップのみからなる。
【0072】
以下の陳述は、本明細書に開示の層(例えば、22mJ/m
2以下の表面張力(例えば、12~22mJ/m
2)を有する分子的に粗い層)、本明細書に開示の方法(例えば、本明細書に開示の層を製造する方法)、及び本明細書に開示の製造品(例えば、本明細書に開示の層を1つ以上含む製造品)の実施形態及び/又は例を提供する。
陳述1.
基材の外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)に配置された、22mJ/m
2(例えば、12~22mJ/m
2)以下の表面張力を有する本明細書に開示の層(例えば、分子的に粗い層)。
陳述2.
1以上のPDMS樹脂を含む層(例えば、基材上に配置された層)であって、各PDMS樹脂が、以下の(i)及び/又は(ii)を含む:
i)1以上のポリ(ジメチルシロキサン)、各ポリ(ジメチルシロキサン)は、1以上のポリ(ジメチルシロキサン)部分(例えば、直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)部分(単数又は複数))を含む、及び
任意で、前記ポリ(ジメチルシロキサン)(単数又は複数)は、独立して、以下の構造を有するペンダント基を1以上含む:
ここで、連結基は、アルキル、アリール基、シリル部分など及びそれらの組み合わせを含む基(例えば、-CH
2-基、-CH
2CH
2-基、-CH
2CH
2CH
2-基
-Si(CH
3)
2O-、-CH
2O-基、-CH
2CH
3O-基、-CH
2N-基、-CH
2SO
2-基;ここでnは0~40(その間の全ての整数値と範囲を含む))であってもよく、Rは、前記ポリ(ジメチルシロキサン)(単数又は複数)の中でそれぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'は、-O-SiOR’基(単数又は複数)の中でそれぞれ独立して、アルキル基(例えば、メチル基)から選択される;
ii)1以上のポリマーであって、各ポリマーは、直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)、炭化水素ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなど)、ポリアクリレートポリマー、ポリ(メタクリレート)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(アリルエーテル)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、及びそれらの組み合わせから選択される骨格から選択される1以上の骨格、及び任意で、
以下の構造を有する少なくとも1つのペンダント基を含み:
前記連結基は、アルキル、アリール基、シリル部分など及びそれらの組み合わせを含む基(例えば、-CH
2-基、-CH
2CH
2-基、-CH
2CH
2CH
2-基
-Si(CH
3)
2O-、-CH
2O-基、-CH
2CH
3O-基、-CH
2N-基、-CH
2SO
2-基;ここでnは0~40(その間の全ての整数値と範囲を含む))であってもよく、Rは、それぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'基は、-アルキル基である
この際、前記層は、基材の表面の一部又は全てに配置される。
陳述3.
前記1以上のポリ(ジメチルシロキサン)が、直線状のポリ(ジメチルシロキサン)部分(単数又は複数)、分岐状のポリ(ジメチルシロキサン)部分(単数又は複数) 、又はそれらの組み合わせを含む、陳述2の層。
陳述4.
前述の陳述のいずれか1つの層であって、前記PDMS樹脂が、直線状PDMS樹脂である(例えば、基材への結合基を有するPDMS樹脂)(例えば、アミン末端PDMS、ベンゼン環に結合したヒロドキシル基及び単鎖(<C
5)アルキル基を有するフェノール、又は芳香環に直接ヒロドキシル基が結合したフェノール(例えば、ビスフェノールA)、及びパラホルムアルデヒドの重合によって形成された樹脂;シラノール、エポキシ、カルボキシル、アルデヒド、イソシアネート、チオール、ビニル、水素およびヒドロキシル基、又はそれらの組み合わせで末端化されたPDMS)。例えば、
図3参照。例えば、前記アミン末端PDMS前駆体、又は、シラノール、エポキシ、カルボキシル、アルデヒド、イソシアネート、チオール、ビニル、水素、ヒドロキシル基、又はそれらの組み合わせで末端化されたPDMSのアルキル部分は、それぞれ独立して、C
1からC
40(その間の全ての整数値の炭素及び範囲を含む)(例えば、C
1~C
30、C
1~C
10、又はC
1~C
5)である。
陳述5.
陳述2~4のいずれか1つの層であって、前記1以上のポリ(ジメチルシロキサン)が以下のものであり、
式中、R
2は、それぞれ独立して、H、炭素数1~40の炭化水素基、又は-O-SiOR’基から選択され、ここで、R’基は、アルキル基であり(例えば、C
1~C
40、C
1~C
30、C
1~C
10、又はC
1~C
5);nは0~400であり、mは1~50,000である。
陳述6.
前記1以上のポリ(ジメチルシロキサン)又は直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)の少なくとも1つが、1以上の架橋性基を有する、陳述2~5のいずれか1つの層。
陳述7.
前記架橋性基が、アクリレート、メタクリレート、アリル、ビニル、チオール、ヒドロキシル、シラノール、カルボン酸、アルデヒド、アミン、イソシアネート、アジド、アルキン、エポキシ、ハライド、水素、及びそれらの組み合わせから選択される、陳述2~6のいずれか1つの層。
陳述8.
陳述2~7のいずれか1つの層であって、ペンダント状分岐PDMSが、1以上のトリス(トリアルキルシロキシ)シリルビニル化合物(例えば、トリス(トリアルキルシロキシ)シリルアルキルアクリレート、例えば、トリス(トリアルキルシロキシ)シリル メタクリレートなどのような)及びトリメトキシシランビニル化合物(例えば、アルキルアクリルオキシアルコキシトリメトキシシランなど)の重合によって形成され、ここで前記アルキル部分(例えば、アルキル部分(単数又は複数)及び/又はアルキル基(単数又は複数))は、それぞれ独立して、C
1~C
40アルキル部分である。例えば、
図2参照。
陳述9.
これらの前駆体から生じる前記PDMS樹脂又は前記PDMS樹脂中の部分を製造するために使用されるトリス(トリアルキルシロキシ)シリルアルキルアクリレートとビニルシランのモル比(例えば、ビニルトリメトキシシランに対するトリス(トリメチルシロキシル)シリルプロピルメタクリレートのモル比)が、1より大きい(例えば、3~20)、陳述2~8のいずれか1つの層。
陳述10.
前記アルキル部分が、それぞれ独立して、C
1~C
30、C
1~C
10アルキル部分、又はC
1~C
5アルキル部分である、陳述2~9のいずれか1つの層。
陳述11.
前記ペンダント基が、以下のものから選択され、
及び任意で、前記ペンダント基が、連結基によって、前記ポリ(ジメチルシロキサン)樹脂又は骨格に共有結合している、陳述2~10のいずれか1つの層。
陳述12
陳述2~11のいずれか1つの層であって、前記ポリ(ジメチルシロキサン)が、以下の構造を有しており、
式中、nは0~600であり、mは0~3であり、Xは架橋性基であって、架橋性基としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:アクリレート、メタクリレート、アリル、ビニル、チオール、ヒドロキシル、シラノール、カルボン酸、アルデヒド、アミン、イソシアネート、アジド、アルキン、エポキシ、ハライド、水素、及びそれらの組み合わせ。
陳述13.
前記1以上のポリ(ジメチルシロキサン)部分、又は前記直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)(単数又は複数)骨格のR
2OSi(例えば、C
2H
6OSi)繰り返し単位の数が、0~400である、陳述2~12のいずれか1つの層。
陳述14.
前記PDMSの前記繰り返し単位(例えば、C
2H
6OSi)の数が2より大きく、好ましくは10~400である、陳述2~13のいずれか1つの層。graft-to法(例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング、エマルション/フォームコーティングなど)以外に、graft-from法(例えば、
図9に示すように)によって前記コーティングを基材に適用できる。開始剤は、可逆的不活性化ラジカル生成剤、例えば、1以上の有機ハロゲン化部分を含む化合物(例えばハロゲン化アルキル)など、又は1以上のアルコキシアミン部分、又は適切な連鎖移動剤、例えば、1以上のチオカルボニルチオ部分などであってもよい。モノマーは、1以上の脂肪族部分及び/又は脂肪族基を含む1以上のアルキルシリル化合物であってもよい。
陳述15.
前記層が硬化されている、陳述2~14のいずれか1つの層。
陳述16.
陳述2~15のいずれか1つの層であって、前記層がさらに、PDMS樹脂の2つのポリマー鎖の間(PDMS樹脂の同じポリマー鎖であっても、異なるポリマー鎖であってもよい)に、少なくとも1つの架橋(例えば、2より多くの、5より多くの、10より多くの架橋、又は25より多くの架橋)を有する、及び/又はPDMS樹脂のポリマー鎖(PDMS樹脂の同じポリマー鎖であっても、異なるポリマー鎖であってもよい)と基材との間に、少なくとも1つの架橋(例えば、2より多くの、5より多くの、10より多くの架橋、又は25より多くの架橋)を有する。
陳述17.
陳述2~16のいずれか1つの層であって、前記層がさらに、以下のものから選択される1以上の架橋部分を含み:
式中、R
3は、炭素数1~40(その間の全ての整数値の炭素及び範囲を含む)の炭化水素基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、フェニル、ビフェニル、ナフチルなど)であり、nは0~600(その間の全ての値及び範囲を含む)である。
陳述18.
前記層が、本明細書に開示されたナノ粒子(例えば、Ludox HSシリカ、及び他の市販のコロイド状シリカ粒子などのシリカナノ粒子)を複数含む、陳述2~17のいずれか1つの層。
陳述19.
前記複数のナノ粒子が、シリカナノ粒子からなる群より選択される、陳述18の層。
陳述20.
前記ナノ粒子の重量パーセンテージが、前記層の総重量に対して、1~98wt%(例えば、1~95wt%又は1~50wt%)である、陳述18又は19に記載の層。
陳述21.
前記ナノ粒子の重量パーセンテージが、0~95wt%、好ましくは20~40wt%である、陳述18~20のいずれか1つに記載の層。
陳述22.
前記基材が、本明細書に開示された基材である、前述の陳述のいずれか1つに記載の層。
陳述23.
前記層の厚みが、10nm~300ミクロン(例えば、50nm~100ミクロン)である、前述の陳述のいずれか1つに記載の層。
陳述24.
前記基材が、ファブリック、 ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなどである、前述の陳述のいずれか1つに記載の層。
陳述25.
前記ファブリックが、綿、PET、綿/PETのブレンド、ナイロン、ポリエステル、スパンデックス、絹、ウール、ビスコース、セルロース繊維、アクリル、ポリプロピレン、又はそれらのブレンド(例えば、ファブリックを形成できる2種以上の糸のブレンドであって、これらには、ファブリック材料としての、綿、PET、綿/PETのブレンド、ナイロン、ポリエステル、スパンデックス、絹、ウール、ビスコース、セルロース繊維、アクリル、ポリプロピレン糸が含まれる)、レザー、及びそれらの組み合わせから選択される、陳述24に記載の層。
陳述26.
前記基材が、ファブリック外表面の一部に配置された超親水性層を有するファブリックである、陳述25に記載の層。
陳述27.
前記層が、22mJ/m
2以下の表面張力を有する、陳述2~26のいずれか1つに記載の層。
陳述28.
22mJ/m
2以下の表面張力を有する層と超親水性層とが、布帛の反対側に配置されている、陳述2~27のいずれか1つに記載の層。
陳述29.
前記基材及び/又は層が、フッ素フリーである、前述の陳述のいずれか1つに記載の層。
陳述30.
前記層が、1つ以上のオイル(例えば、AATCC(登録商標)試験方法118-2013に記載されている1つ以上のオイル)について、AATCC(登録商標)試験方法118-2013をパスする、前述の陳述のいずれか1つに記載の層。
陳述31.
基材(例えば、ファブリック)の外表面の一部又は全て(例えば、外表面全て)に配置された、本明細書に開示の層(例えば、分子的に粗い層)(例えば、22mJ/m
2未満の表面張力を有する層)(例えば、硬化PDMS樹脂を含む層)を形成する方法であって、
基材(例えば、ファブリック)を用意すること;
前記基材の外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)を、PDMS樹脂(例えば、ペンダント状分岐PDMS樹脂又は直線状PDMS樹脂)(例えば、本明細書に開示のPDMS樹脂、例えば、陳述4~13のいずれか1つに記載のPDMS樹脂など)又は複合ナノ流体でコーティングすること(例えば、スプレーコーティング、ディップコーティング、フローティング・ナイフコーティング、ダイレクトロールコーティング、パディング、カレンダーコーティング、又はフォームコーティングによって);
前記PDMS樹脂コーティング又は前記複合ナノ流体から形成されたコーティングを硬化(例えば、熱硬化)させること
を含み、この際、本明細書に開示の層(例えば、分子的に粗い層)(例えば、22mJ/m
2未満の表面張力を有する層)が、前記基材の外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)に形成される。
陳述32.
基材の外表面の一部又は全てに配置された、本明細書に開示の層を形成する方法であって、
前記基材の外表面の一部又は全てを、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)樹脂又は複合ナノ流体でコーティングすること;及び
前記PDMS樹脂コーティング又は前記複合ナノ流体から形成されたコーティングの温度にて、前記コーティングを加熱して硬化させること(例えば、前記コーティングを、-30℃~200℃の温度、例えば20~160℃などの温度で、例えば1秒~2週間維持する)
を含み、この際、本明細書に開示の層が、前記基材の外表面の一部又は全てに形成される。
陳述33.
陳述31又は32に記載の方法であって、
前記PDMS樹脂が、以下の(i)及び/又は(ii)を含む:
i)1以上のポリ(ジメチルシロキサン)部分(例えば、直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)部分(単数又は複数))を含む1以上のポリ(ジメチルシロキサン)樹脂、
ここで、任意で、前記ポリ(ジメチルシロキサン)樹脂は、以下の構造を有するペンダント基を1以上含む:
Rは、前記ポリ(ジメチルシロキサン)(単数又は複数)の中でそれぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'は、-O-SiOR’基(単数又は複数)の中でそれぞれ独立して、アルキル基(例えば、メチル基)から選択される;
ii)1以上のポリマーであって、
直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)、炭化水素ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなど)、ポリアクリレートポリマー、ポリ(メタクリレート)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(アリルエーテル)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、及びそれらの組み合わせから選択される骨格、及び、
以下の構造を有する少なくとも1つのペンダント基を含み、
式中、Rは、それぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'基は、アルキル基である。
陳述34.
前記複合ナノ流体が、PDMS樹脂、1以上のナノ粒子、及び任意で、溶媒(例えば、トルエン、キシレン、炭素数4~16の炭化水素(例えば、ヘキサンなど)、クロロホルム、テトラヒドロフラン、及びそれらの組み合わせ)を含む、陳述31~33のいずれか1つに記載の方法。
陳述35.
前記基材が、本明細書に開示された基材である、陳述31~34のいずれか1つに記載の方法。
陳述36.
前記基材が、ファブリック、 ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなどである、陳述31~35のいずれか1つに記載の方法。
陳述37.
前記基材が、ファブリックの外表面の全て又は少なくとも一部に配置された超親水性層を有する(例えば、本明細書に開示の層(例えば、22mJ/m
2以下の表面張力を有する層)が形成された面とは反対側のファブリックの面に配置された超親水性層を有する)ファブリックである、陳述31~36のいずれか1つに記載の方法。
陳述38.
前記基材がフッ素フリーである、陳述31~37のいずれか1つに記載の方法。
陳述39.
陳述31~38のいずれか1つに記載の方法であって、前記形成が、基材の外表面の一部又は全てを、シリカゾル(例えば、一以上のテトラアルコキシシランを加水分解する(例えば、アルコール/水溶液中で)(例えば、アルカリ性条件下で)ことによって形成されるシリカゾル)でコーティングすること(例えば、ディップコーティング又はスプレーコーティングによって)、及び、コーティングされたファブリックを乾燥することを含む。テトラアルコキシシランの例として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロピルオルトシリケート、テトラブチルオルトシリケート、及びそれらの組み合わせが挙げられる。前記シリカゾルは、ケイ酸ナトリウムを酸性化することによって、形成することもできる。
陳述40.
前記コーティングが、スプレーコーティング、ディップコーティング、フローティング・ナイフコーティング、ダイレクトロールコーティング、パディング、カレンダーコーティング、フォームコーティング、又はそれらの組み合わせである、陳述39に記載の方法。
陳述41.
さらに、乾燥した基材を、ナノ粒子(例えば、シリカナノ粒子、例えば、シリカナノ粒子の懸濁液など)と接触させることを含む、陳述31~40のいずれか1つに記載の方法。
陳述42.さらに、前記基材を前処理することを含む、陳述31~41のいずれか1つに記載の方法。
陳述43.
本明細書に開示の層(例えば、22mJ/m
2未満の表面張力を有する層)を形成する前に、前記基材の外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)に、層を形成することを含む、陳述31~42のいずれか1つに記載の方法。
陳述44.
前記前処理が、化学的処理(例えば、プラズマ処理、溶剤洗浄、酸化処理、加水分解処理など、及びそれらの組み合わせ)、物理的処理(例えば、研磨処理など)、プライマー処理(例えば、1以上のゾルゲル前駆体と、エポキシドプライマーとを含むゾルのようなプライマーを用いる:これは、アクリレート基、メタクリレート基、アリル基、ビニル基、チオール基、ヒドロキシル基、シラノール基、カルボン酸基、カルボキシレート基、アルデヒド基、アミン基、イソシアネート基、アジド基、エポキシ基、ハロゲン化物基、水素基など、及びそれらの組み合わせの1つ以上を含む)、又はそれらの組み合わせである、陳述31~43のいずれか1つに記載の方法。
陳述45.
前記前処理が、基材の外表面の一部又は全てを、非金属酸化物(例えば、酸化ケイ素など)、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅など、及びそれらの組み合わせ)、又はそれらの組み合わせのゾルで、コーティングすることを含む(例えば層は、非金属酸化物、金属酸化物、又はそれらの組み合わせを含んでいる)、陳述31~44のいずれか1つに記載の方法。例えば、コーティングされた基材(例えば、シリカゾルコーティング基材など)は、1又は複数の官能基を含み、官能基として、例えば、アクリレート基、メタクリレート基、アリル基、ビニル基、チオール基、ヒドロキシル基、シラノール基、カルボン酸基、カルボキシレート基、アルデヒド基、アミン基、イソシアネート基、アジド基、アルキン基、エポキシ基、ハロゲン化物基、水素基、及びそれらの組み合わせなどが挙げられ、これは、コーティング基材と層の間の架橋密度を高めうる。
陳述46.
前記基材を、シリカゾルでコーティングする前にクリーニングする(例えば、プラズマ洗浄)、陳述31~45のいずれか1つに記載の方法。
陳述47.
前記基材が、そこに配置された複数のナノ粒子を有する、陳述31~46のいずれか1つに記載の方法。
陳述48.
さらに、前記基材(例えば、乾燥された及び/又は硬化された層を有していてもよい)をシリカナノ粒子と接触させることを含む、陳述31~47のいずれか1つに記載の方法。前記ナノ粒子(例えば、シリカナノ粒子など)の一部又は全ては、基材に共有結合していてもよく、他のナノ粒子と結合及び/又は凝集していてもよく、又はそれらの組み合わせでもよい。様々な例において、前記ナノ粒子の一部又は全ては、凹状構造を形成する。
陳述49.
前記コーティングと硬化(例えば、陳述8~16のいずれかに記載のコーティング及び硬化)が、所望の回数(例えば1~20回)繰り返される、陳述31~48のいずれか1つに記載の方法。
陳述50.
さらに、前記層にさらなる表面粗さを施すことを含む(例えば、ナノファブリケーション、エレクトロスピニング、フォースドスピニング、押出、機械的スタンピング、摩耗、エッチング、又はそれらの組み合わせによって)、陳述31~49のいずれか1つに記載の方法。
陳述51.
基材の外表面の一部又は全てに配置された、ポリ(ジメチルシロキサン)を含む層(例えば、本明細書に開示の層)を形成する方法(例えば、in situ法)であって、
ジメチルシロキサン前駆体の重合を開始できる複数の官能基を有する基材(例えば、その表面に配置された、1以上の以下に示す基など、又はその組み合わせを含む)を、
反応混合物と接触させることを含み、この反応混合物は、1以上のジメチルシロキサン前駆体、及び以下の(i)又は(ii)を含み、この際、基材の表面に配置されたポリ(ジメチルシロキサン)層を含む層が形成される
(i)1以上のラジカル開始剤(例えば、
のようなハロゲン化物開始剤;例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなアゾラジカル開始剤;例えば、過酸化ベンゾイルのような過酸化物;例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシルのようなアルコキシアミン;例えば、シアノメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]トリチオカーボネートのような連鎖移動剤など、又はそれらの組み合わせ);
(ii)1以上の金属触媒(例えば、Cu(I), Cu(II), Fe(II), Fe(III), Co(II)など、及びそれらの組み合わせ)及び1以上のアミン(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、N,N-ビス(2-ピリジルメチル)アミン、トリス[2-アミノエチル]アミン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、2,2'-ビピリジン、4,4'-ジ(5-ノニル)-2,2'-ビピリジン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N-プロピル(2-ピリジル)メタンイミン、2,2':6',2''-テルピリジン、4,4',4''-トリス(5-ノニル)- 2,2':6',2''-テルピリジン、N,N,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N-ビス(2-ピリジルメチル)オクチルアミン、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリス[(2-ピリジル)メチル]アミン、1,4,8,11-テトラアザ-1,4,8,11-テトラメチルシクロテトラデカン、N,N,N',N'-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミンなど、それらの組み合わせ)を含む1以上の活性化剤。
陳述52.
前記基材が、ファブリック、 ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなどである、陳述51に記載の方法。
陳述53.
前記基材が、その上に配置された複数のナノ粒子を有する、陳述51又は52に記載の方法。
陳述54.
前記基材がフッ素フリーである、陳述51~53のいずれか1つに記載の方法。
陳述55.
さらに、基材の前処理を含む、陳述51~54のいずれか1つに記載の方法。
陳述56.
前記前処理が、化学的処理(例えば、プラズマ処理、溶剤洗浄、酸化処理、加水分解処理など、及びそれらの組み合わせ)、物理的処理(例えば、研磨処理など)、プライマー処理(例えば、1以上のゾルゲル前駆体とエポキシドプライマーとを含むゾルのようなプライマーを用いる;これは、アクリレート基、メタクリレート基、アリル基、ビニル基、チオール基、ヒドロキシル基、シラノール基、カルボン酸基、カルボキシレート基、アルデヒド基、アミン基、イソシアネート基、アジド基、アルキン基、エポキシ基、ハロゲン化物基、水素基など、及びそれらの組み合わせの1つ以上を含む)、又はそれらの組み合わせである、陳述51~55のいずれか1つに記載の方法。
陳述57.
前記前処理が、基材の外表面の一部又は全てを、非金属酸化物(例えば、酸化ケイ素など)、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅など、及びそれらの組み合わせ)、又はそれらの組み合わせのゾルで、コーティングすることを含む(例えば層は、非金属酸化物、金属酸化物、又はそれらの組み合わせを含んでいる)、陳述51~56のいずれか1つに記載の方法。例えば、コーティングされた基材(例えば、シリカゾルコーティング基材など)は、1又は複数の官能基を含み、官能基として、例えば、アクリレート基、メタクリレート基、アリル基、ビニル基、チオール基、ヒドロキシル基、シラノール基、カルボン酸基、カルボキシレート基、アルデヒド基、アミン基、イソシアネート基、アジド基、アルキン基、エポキシ基、ハロゲン化物基、水素基、及びそれらの組み合わせなどが挙げられ、これは、コーティング基材と層の間の架橋密度を高めうる。
陳述58.
さらに、前記基材(ポリ(ジメチルシロキサン)層を有していてもよい)を、シリカナノ粒子と接触させることを含む、陳述51~57のいずれか1つに記載の方法。
前記ナノ粒子(例えば、シリカナノ粒子など)の一部又は全ては、基材に共有結合していてもよく、他のナノ粒子と結合及び/又は凝集していてもよく、又はそれらの組み合わせでもよい。様々な例において、前記ナノ粒子の一部又は全ては、凹状構造を形成する。
陳述59.
前記接触を1~20回繰り返す、陳述51~58のいずれか1つに記載の方法。
陳述60.
さらに、前記層にさらなる表面粗さを施こすことを含む、陳述51~59のいずれか1つに記載の方法。
陳述61.
さらなる表面粗さを、ナノファブリケーション、エレクトロスピニング、フォースドスピニング、押出、機械的スタンピング、摩耗、エッチング、又はそれらの組み合わせによって、層に施す、陳述51~60のいずれか1つに記載の方法。
陳述62.
本明細書に開示の層を1つ以上含む製造品。例えば、陳述31~61のいずれか1つに記載の方法によって形成された1つ以上の層。
陳述63.
本明細書に開示された基材の外表面の一部又は全て(例えば、外表面全て)に配置された、本明細書に開示の層(例えば、分子的に粗い層)(例えば、22mJ/m
2未満の表面張力を有する層)(例えば、陳述1~30のいずれか1つに記載の層、又は陳述31~61のいずれか1つに記載の方法によって製造された層)を有する1以上のファブリックを含む製造品。
陳述64.
前記製造品が、本明細書に記載された製品である、陳述62又は63に記載の製造品。
陳述65
前記製造品が、布地、衣類、食品包装、眼鏡、ディスプレイ、スキャナ、飛行機コーティング、スポーツ用品、建築材料、窓、風防ガラス、耐食性コーティング、防氷コーティング、又は冷却器(例えば、蒸気、例えば水蒸気などを冷却するためのコンデンサ)、ライト(例えば、交通信号灯、ヘッドライト、ランプなど)である、陳述62~64のいずれか1つに記載の製造品。
【0073】
以下の実施例は、本開示を説明するために提示される。それらは、いかなる方法による限定も意図していない。
[実施例1]
【0074】
この実施例は、本開示のフィルムについて記載する。
【0075】
手法と結果:
我々は、分子的に粗いPDMS表面をベースとするフッ素フリーの疎油性コーティングを記載する。いくつかの設計において、前記表面粗さは、ナノ粒子の添加によって達成される。最大でグレード3までの疎油性表面(AATCC(登録商標)118に基づく)をもたらす、18mN/m以下の表面エネルギーが示された。前記コーティングは十分に頑強であり、洗濯/すすぎの繰り返しサイクル(30サイクル)及び、様々な有機溶媒(例えば、アセトン、エタノールなど)による処理に耐える。
【0076】
PDMS樹脂の合成
【0077】
2種類の異なるPDMS系樹脂を合成した:
【0078】
ペンダント状分岐PDMS樹脂(
図2に図式的に示される):
トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルアクリレート(10mmol)、ビニルトリメトキシシラン(1mmol)及びアゾビスイソブチロニトリル(0.1mmol)を、室温にて、ドライキシレン(20mL)中に溶解し、窒素で5分間パージした。このモノマー溶液をその後65℃まで加熱し、24時間その温度で維持した。
【0079】
直線状PDMS樹脂(
図3):
アミン末端化PDMS(10mmol)、ビスフェノールA (10mmol) 及びパラホルムアルデヒド(40mmol) を、500mLの丸底フラスコ中で、150mLのクロロホルムに溶解した。この混合物を6時間還流下で加熱し、澄んだ淡黄色の溶液を得た。真空下で溶媒を除去した後、粘性の残渣をジクロロメタンに溶解し、飽和NaHCO
3水溶液と蒸留水で5回洗浄した。洗浄溶液を真空下で乾燥した後、粘性の淡黄色の液体生成物が得られた。
【0080】
布帛の前処理
【0081】
1cm×1cmの綿ファブリック又はPETファブリックを、エタノールで洗浄し、オーブンにて80℃・10分間乾燥した。それとは別に、水酸化アンモニウム(2.75mL)の存在下で、エタノール/水溶液(75mL、80%v/v)中で、テトラエトキシシラン(10mmol)をアルカリ加水分解することによって、シリカゾルを調製した。ファブリックをプラズマ洗浄し、その後、前記ゾルに5分間浸漬し、室温で乾燥した。この処理を3回繰り返した。最終的に、前記ファブリックを、Ludox HSシリカの懸濁液(~5wt.%)に浸し、その後オーブンにて80℃で一晩乾燥した。
【0082】
フッ素フリーの疎油性ファブリックの製造
【0083】
上述のように合成したPDMS樹脂を使用して、室温でディップコーティング又はスプレーコーティングすることによって(
図4)、フッ素フリーの疎油性コーティングの薄層を、前記前処理済みのファブリックに形成した。前記綿ファブリックを3回コーティングし、その後オーブンにて100℃で一晩乾燥した。
200℃で1時間硬化させたこと以外は同じ方法により、疎油性のPETファブリックを調製した。
[実施例2]
【0084】
この実施例は、本開示のフィルムについて記載する。
【0085】
図7は、分岐ペンダント状PDMS樹脂の一例を示す。前記PDMS樹脂は、PDMS骨格を有するPDMSポリマーを含む。PDMSポリマーは、多官能性前駆体(例えば、少なくとも2つのアクリレート基を有する二官能性前駆体)を使用して形成することができる。前記PDMS樹脂は無色であってもよい。
【0086】
図8は、PDMS樹脂の一例を示す。前記PDMS樹脂は、分岐ペンダント状PDMS樹脂の一例である。前記PDMS樹脂は、PDMSの骨格とPDMSの枝を有するPDMSポリマーを含む。前記PDMSポリマーは、多官能性前駆体(例えば、少なくとも3つのビニル基を有する前駆体)を使用して形成することができる。
[実施例3]
【0087】
この実施例は、本開示の層を形成する方法を提供する。
【0088】
graft-to法(例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング、エマルション/フォームコーティングなど)以外に、graft-from法(例えば、
図9に示すように)によって前記コーティングを基材に適用できる。開始剤は、可逆的不活性化ラジカル生成剤、例えば、1以上の有機ハロゲン化部分を含む化合物(例えばハロゲン化アルキル)など、又は1以上のアルコキシアミン部分、又は適切な連鎖移動剤、例えば、1以上のチオカルボニルチオ部分などであってもよい。モノマーは、1以上の脂肪族部分及び/又は脂肪族基を含む1以上のアルキルシリル化合物であってもよい。ハロゲン化アルキルは、重合の開示に効果的であった。
【0089】
表面開始原子移動ラジカル重合(ATRP)による疎油性コーティング方法
【0090】
合成の一例:
クリーニングしたファブリック試料(~1.0×1.0インチ)を、まず水とアセトンですすぎ、窒素中で乾燥した。乾燥したファブリックを、2-ブロモ-2-メチルプロピオニルブロミド(2mmol)、トリメチルアミン(1mmol)及び触媒量の4-ジメチルアミノピリジンを含む30mLのテトラヒドロフラン(THF)の溶液に、室温で24時間浸し、続いてTHFとエタノールですすいだ。ATRP開始剤で機能化(官能化)した前記ファブリックを、その後、アルキルシリルモノマー、CuBr、及びN,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミンを含むDMF(CuBr/PMDETAのモル比は0.5-1)溶液に、24時間浸した。得られたコーティングファブリックを、その後THFで洗浄し、乾燥して、疎油性コーティングを有するファブリックを製造した。
【0091】
初期及び疎油性のファブリックのSEM画像を
図10に示す。ファブリック表面上の均一なコーティング層が観察された。様々な材質からなる疎油性ファブリックの写真が
図11で確認できる。
【0092】
本開示は、特定の実施例を参照して示され、記載されてきたが、本開示の精神及び範囲を逸脱することなく、形態及び詳細に関する様々な変更が可能であることが当業者によって理解される。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎油性ファブリックであって、
ファブリックと、当該ファブリックの1以上の外表面の一部又はすべてに配置された1以上の疎油性コーティング層とを含み、ここで、
前記1以上の疎油性コーティングは、1以上のポリマーを含み、各ポリマーは、1以上の骨格、及び、複数のペンダント基を含むものであり、
前記1以上の骨格は、直線状ポリ(ジメチルシロキサン)、分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)、炭化水素ポリマー、ポリアクリレート、ポリ(メタクリレート)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(アリルエーテル)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、又はそれらの任意の組み合わせから選択され、
前記複数のペンダント基は、少なくとも1つの骨格に共有結合されており、各ペンダント基は、以下の構造から選択されるものである:
疎油性ファブリック。
【請求項2】
少なくとも1つのペンダント基が、連結基Lを介して少なくとも1つの骨格に共有結合されている、請求項1に記載の疎油性ファブリック。
【請求項3】
前記連結基Lが、それぞれ独立して、アルキレン、アリーレン、シリル部分、又はそれらの任意の組み合わせを含む基である、請求項2に記載の疎油性ファブリック。
【請求項4】
前記連結基Lが、それぞれ独立して、-CH
2-基、-CH
2CH
2-基、-CH
2CH
2CH
2-基、
-Si(CH
3)
2O-基、-CH
2O-基、-CH
2CH
3O-基、-CH
2N-基、又は-CH
2SO
2-基(ここでnはそれぞれ独立して0~40である)から選択される、請求項2に記載の疎油性ファブリック。
【請求項5】
前記ファブリックが、織り構造又は不織構造を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の疎油性ファブリック。
【請求項6】
前記ファブリックが、綿、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエステル、スパンデックス、絹、ウール、ビスコース、セルロース繊維、アクリル、ポリプロピレン、レザー、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の疎油性ファブリック。
【請求項7】
前記1以上の疎油性コーティング層が、前記1以上のポリマーの間に少なくとも1つの架橋部分を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の疎油性ファブリック。
【請求項8】
前記1以上の疎油性コーティング層が、前記1以上のポリマーと前記ファブリックとの間に少なくとも1つの架橋部分を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の疎油性ファブリック。
【請求項9】
前記少なくとも1つの架橋部分が、以下のものから選択され:
式中、R
3は、炭素原子数1~40の炭化水素基であり、nは0~600である、請求項7又は8に記載の疎油性ファブリック。
【請求項10】
前記骨格が、炭化水素ポリマー、ポリアクリレート、ポリ(メタクリレート)、又はそれらの任意の組み合わせから選択され、
前記ペンダント基が以下の構造を有する:
、請求項1~9のいずれか1項に記載の疎油性ファブリック。
【請求項11】
前記1以上の疎油性コーティング層が、さらに複数のナノ粒子を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の疎油性ファブリック。
【請求項12】
前記ファブリックが、ファブリックの片面の一部又はすべてに配置された疎油性コーティング層と、
その反対側のファブリック面の一部又はすべてに配置された、接触角30度未満の超親水性層と
を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の疎油性ファブリック。
【請求項13】
1以上のファブリックを含む製品であって、前記ファブリックは、ファブリックの1以上の外表面の一部又はすべてに配置された層を有しており、前記層は1以上のポリマーを含み、各ポリマーは、1以上の骨格、及び、複数のペンダント基を含むものであり、
前記1以上の骨格は、直線状ポリ(ジメチルシロキサン)、分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)、炭化水素ポリマー、ポリアクリレート、ポリ(メタクリレート)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(アリルエーテル)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、又はそれらの任意の組み合わせから選択され、
前記複数のペンダント基は、少なくとも1つの骨格に共有結合されており、各ペンダント基は、以下の構造から選択されるものである:
製品。
【請求項14】
疎油性ファブリックを製造する方法であって、
樹脂又は複合ナノ流体で、ファブリックの外表面の一部又はすべてをコーティングすること;ここで、前記複合ナノ流体は、樹脂、ナノ粒子、及び任意で溶媒を含むものであり、
前記樹脂は、1以上のポリマーを含み、各ポリマーは、1以上の骨格、及び、複数のペンダント基を含むものであり、
前記1以上の骨格は、直線状ポリ(ジメチルシロキサン)、分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)、炭化水素ポリマー、ポリアクリレート、ポリ(メタクリレート)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(アリルエーテル)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、又はそれらの任意の組み合わせから選択され、
前記複数のペンダント基は、少なくとも1つの骨格に共有結合されており、各ペンダント基は、以下の構造から選択されるものである:
-30℃~200℃の温度で硬化して、ファブリックの外表面の一部又はすべてに疎油性コーティング層を形成すること;
を含む、疎油性ファブリックの製造方法。
【請求項15】
少なくとも1つのペンダント基が、連結基Lを介して少なくとも1つの骨格に共有結合されており、連結基Lが、それぞれ独立して、アルキレン、アリーレン、シリル部分、又はそれらの任意の組み合わせを含む基である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つのペンダント基が、連結基Lを介して少なくとも1つの骨格に共有結合されており、連結基Lが、それぞれ独立して、-CH
2-基、-CH
2CH
2-基、-CH
2CH
2CH
2-基、
-Si(CH
3)
2O-基、-CH
2O-基、-CH
2CH
3O-基、-CH
2N-基、又は-CH
2SO
2-基(ここでnはそれぞれ独立して0~40である)から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ファブリックが、綿、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエステル、スパンデックス、絹、ウール、ビスコース、セルロース繊維、アクリル、ポリプロピレン、レザー、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記骨格が、炭化水素ポリマー、ポリアクリレート、ポリ(メタクリレート)、又はそれらの任意の組み合わせから選択され、
前記ペンダント基が以下の構造を有する:
、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ファブリックの外表面の一部又はすべてに配置された1以上のコーティング層を形成する方法であって、
ファブリックを用意すること;
前記樹脂を硬化させて、ファブリックの外表面の一部又はすべてにコーティング層を形成すること;
樹脂又は複合ナノ流体で、ファブリックの外表面の一部又はすべてをコーティングすること;ここで、前記複合ナノ流体は、樹脂、ナノ粒子、及び任意で溶媒を含むものであり、
前記樹脂は、1以上のポリマーを含み、各ポリマーは、1以上の骨格、及び、複数のペンダント基を含むものであり、
前記1以上の骨格は、直線状ポリ(ジメチルシロキサン)、分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)、炭化水素ポリマー、ポリアクリレート、ポリ(メタクリレート)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(アリルエーテル)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、又はそれらの任意の組み合わせから選択され、
前記複数のペンダント基は、少なくとも1つの骨格に共有結合されており、各ペンダント基は、以下の構造から選択されるものである:
方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2017年4月17日に出願された米国仮出願第62/486,245号に基づく優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に包含される。
【技術分野】
【0002】
本開示は一般に、ポリマーベースの疎油性コーティングに関する。より具体的には、本開示は、樹脂ベースの疎油性コーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
繊維産業は、それらの製品およびサプライチェーンから全ての有害な化学物質を除去すべきという強い圧力下にある。その化学物質のリストにはフッ素含有化合物が多い。パーフッ素化物質およびポリフッ素化物質は、水および油の両方に対する耐性のために、多くの工業用途および消費者製品(カーペット、衣料品、および室内装飾品など)において極めて魅力的である。ポリフッ素系化合物は分解に対して耐性があり、環境中に残存する。それらは生物蓄積し、いくつかは、少なくとも実験動物において健康への有害な影響に関連している。
【0004】
同じレベルの性能および耐久性を維持しながら、フッ素系化合物の代替物を見出すことは、容易なことではない。撥油性コーティングはいくつかの消費者製品および産業用途、例えば、抗湿潤および自己洗浄に有用である。超疎水性コーティングには多くの例があるが、高疎油性コーティングへの進展は限定されている。多くの超疎水性コーティングは、親油性であることが判明している。さらに、超疎水性状態とは対照的に、疎油性は、油の種類に依存して大きく異なりうる。特定の油に対する超疎油性表面(接触角>150°)は、より低い表面張力を有する別の油に対して親油性であり得る。
【0005】
疎油性コーティングの設計における課題は、材料における根本的な制限から生じる。炭化水素油の典型的な表面張力は20~36mN/mの範囲であるので、ヤングの式によれば、平滑な撥油性基材の表面張力は20mN/m2未満でなければならない。具体的にはオリーブ油の表面エネルギーは~32mN/mであり、それらのタイプに応じて、植物油の表面エネルギーは典型的には30smN/mほどの低いものである。AATCC(登録商標)疎油性標準試験(等級1)で使用された最初の油である鉱油は、31.5mN/mの表面エネルギーを有する。低い表面エネルギーの要求は、最も一般的に使用される材料が本質的に疎油性ではないことを示唆する。疎油性のためのこの前提条件を満たすことができるフッ素化材料はごくわずかである。実際、今日までに開発されたいわゆる超疎油性コーティングは全て、豊富な-CF2基および-CF3基を有するフッ素系化合物を使用する(例えば、PTFE、パーフルオロシランおよびパーフルオロポリマー)。固有表面張力の材料の限界を考慮すると、従前に開発された高疎油性コーティングは本質的に全て、低表面エネルギーフッ素化材料に基づいている。
【0006】
超疎水性材料の開発に続いて、適切な表面粗さを導入して疎油性を高めることができる。例えば、疎油性表面を調製するために凹状構造が提案されている。
【0007】
【0008】
これらの凹状構造の使用は、基材の表面張力要求を低下させたが、凹状構造の製造(典型的には化学エッチングとともにリソグラフィを行う)は、特に可撓性基材にとって、困難かつ高価になる傾向がある。実用的な産業用途に関して、従前に開発された高疎油性コーティングは本質的に全て、極めて低い表面エネルギーを有するフッ素化材料に依然として基づいている。
【0009】
フッ素化されていない材料を使用する疎油性コーティングの開発に向けて、非常に限定された努力がなされてきた。一般的なPDMSは約22~24mN/mの表面エネルギーを有する。従って、PDMS仕上げは、表面エネルギーが十分に低くないので、一般的には効率的な疎油性コーティングを提供しない。さらに、基材の性質が異なるために、PDMS仕上げは、接着性、均一性、および機械的特性の点で問題となる可能性がある。
【0010】
マイクロ流体シリコーンオイルエマルジョンテンプレーティングにより、自立型のオムニフォビック(omniphobic)膜を調製した。この膜は、凹状構造と呼ぶことができる狭い開口部を有する均一なハニカム状の微小空洞を有する。この膜は、表面改質のためのフルオロカーボン、及び複雑なリソグラフィー製造を使用することなく撥油性および可撓性を示した。しかしながら、微小空洞(マイクロキャビティ)膜は、摩耗に対する耐久性が限られているという問題がある。狭い空洞開口部の薄い最上層は容易に摩滅し、その凹状構造の損失のために、膜は疎油性が低くなるか、又は親油性にさえなる(膜は依然として超疎水性であり得るものの)。明確な微小空洞構造を生成するために、比較的均一で平坦な基材上での入念な溶媒蒸発を、エマルジョンテンプレート中に使用した。これは、毛管効果の結果としての不均一な溶媒蒸発のために、粗い基材(例えば、室内装飾布)に対してより難しい。より重要なことに、微小空洞の典型的なサイズは数十ミクロンの範囲であり、これは、多くの一般的な繊維の直径と同様であるか、又はそれよりも大きく、織物仕上げ用途へのマイクロ流体エマルジョンテンプレーティングを制限する(処理スケーラビリティは言うまでもなく)。潜在的な解決策は、基材上の追加型撥油性フィルムとして膜を使用することである。しかしながら、そのような疎油性表面の手触りおよび外観は損なわれる可能性がある。
【発明の概要】
【0011】
上記に基づき、同じレベルの性能および耐久性を維持しながら、テキスタイルおよび他の産業で使用されるフッ素系化合物の代替物を見出すための、継続的かつ満たされていない必要性が存在する。
【0012】
本開示は、基材(例えば、ファブリック、ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガ(ブリック)など)の表面の一部又は全て(例えば、外表面の一部又は全て)に配置された、22mJ/m2以下(例えば、22mJ/m2未満)の表面張力を有する層を提供する。本開示は、前記層を作る方法及び前記層の使用も提供する。
【0013】
一側面において、本開示は、基材の表面の一部又は全て(例えば、外表面の一部又は全て)に配置された、22mJ/m2以下(例えば、22mJ/m2未満)の表面張力を有する層(例えば、分子的に粗い層)を提供する。層(単数又は複数)は、フッ素フリーの単層又はフッ素フリーの複数の層であってもよい(例えば、実質的にフッ素フリーの単層又は実質的にフッ素フリーの複数の層)。層は、複数の個別の層を含んでもよい。
【0014】
層は、1又は複数の樹脂を含んでもよい。例えば、樹脂は、複数のPDMS部分を含む。例えば、樹脂は、架橋性基を含み、この架橋性基には、アクリレート、メタクリレート、アリル、ビニル、チオール、ヒドロキシル、シラノール、カルボン酸、アルデヒド、アミン、イソシアネート、アジド、アルキン、エポキシ、ハライド、水素、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。前記架橋性基は、1又は複数の化学結合(例えば、共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、又はそれらの組み合わせ)を経て、前記基材と相互作用可能である(例えば、前記基材に共有結合的に及び/又は非共有結合的に結合される)。ある例では、PDMS樹脂には、ペンダント状分岐PDMS樹脂及び直線状PDMS樹脂が含まれる。
【0015】
層は、基材の表面の一部又は全て(例えば、表面の全て、又は外表面の全て)に配置されることができる。基材は、多様な大きさと形状を有し得る。基材は、多様な組成を有し得る。基材は、ファブリック、 ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなどであってもよい。基材がファブリックである一例では、前記ファブリックは、生来あるいは改質されて、超親水性、親水性、疎水性又は超疎水性を有するファブリックである。
【0016】
一側面において、本開示は、本明細書に開示の層を製造する方法を提供する。前記方法は、基材上に樹脂をコーティングすることを基礎とする。
【0017】
様々な例において、基材(例えば、本明細書に記載の基材、例えば、ファブリック、ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなど)の外表面の一部又は全て(例えば、外表面全て)に配置された、22mJ/m2以下の表面張力を有する層(例えば、分子的に粗い層)(例えば、22mJ/m2未満の表面張力を有する硬化樹脂を含む層)を形成する方法は、
基材(例えば、ファブリック)を用意すること;
前記基材(例えば、ファブリック)の表面の一部又は全て(例えば、外表面の一部又は全て)を、樹脂(例えば、ペンダント状分岐樹脂又は直線状樹脂)(例えば、本明細書に開示の樹脂)でコーティングすること(例えば、ディップコーティング又はスプレーコーティングによって);
前記樹脂コーティングを硬化(例えば、熱硬化)させることを含み、
この際、22mJ/m2以下の(例えば、22mJ/m2未満の)表面張力を有する層(例えば、分子的に粗い層)が、前記基材(例えば、ファブリック)の表面の一部又は全て(例えば、外表面の一部又は全て)上に形成される。
【0018】
一側面において、本開示は、製造品を提供する。前記製造品は、本明細書に開示の1又は複数の層、及び/又は本明細書に開示の方法によって製造される1又は複数の層を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示の本質及び目的をより十分に理解するために、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明が参照されるべきである。
【0020】
図1は、(a)繊維構造、(b)T構造、及び(c)他の一般的な凹状(リエントラント)構造の略図を示す。
【0021】
【0022】
図3は、直線状
樹脂の合成図を示す。
繰り返し単位(R
2
SiO)の数は、0あるいは1以上であってもよい。様々な例において、繰り返し単位の数nは、10~400であり(例えば、nは50である)、及び/又は、mの値は1以上(例えば、1~50,000、1~25,000、又は1~10,000)である。
【0023】
図4は、ディップコーティング(上)及びスプレーコーティング(下)による、複合ナノ流体を使用した、1-及び2面疎油性コーティングの付着を示す。
【0024】
図5は、ディップ-パッド-ドライ-キュア処理を使用した、ナノ流体改質疎油性綿ファブリックのSEM画像を示し、a)は初期の疎油性ファブリック、b)は30回の洗濯洗浄後の疎油性ファブリックである。
【0025】
図6は、初期の綿ファブリック(左)と、ナノ流体改質疎油性綿ファブリック(右)の油染み耐性の比較を示す。一滴の植物油(明確にするため、オイルレッドO染料で着色)を、両方のファブリックに付着させた。
【0026】
図7は、分岐ペンダント状PDMS樹脂の一例を示す。PDMS樹脂は、PDMS骨格(主鎖)を有するPDMSポリマーを含む。PDMSポリマーは、多官能性前駆体(例えば、少なくとも2つのアクリレート基を有する二官能性前駆体)を使用して形成できる。PDMS樹脂は、無色であってもよい。
【0027】
図8は、PDMS樹脂の一例を示す。前記PDMS樹脂は、分岐ペンダント状PDMS樹脂の一例である。前記PDMS樹脂は、PDMSの骨格と
シロキサン結合を含む枝を有するPDMSポリマーを含む。前記PDMSポリマーは、多官能性前駆体(例えば、少なくとも3つのビニル基を有する前駆体)を使用して形成することができる。
【0028】
図9は、graft-from法による疎油性コーティング基材の合成を示す。
【0029】
図10は、ファブリックサンプルのSEM画像を示す:(a)は初期のファブリック、(b)は表面開始原子移動ラジカル重合(graft-from atom-transfer radical poly/merization)により製造された疎油性ファブリック。
【0030】
図11は、様々な材質からなる疎油性ファブリックの写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
特許請求される主題が、特定の例及び/又は実施形態に関して記載されるが、本明細書に記載される利点および特徴の全てを提供しない実施形態を含む他の実施形態もまた、本明細書に開示の範囲内である。本明細書に開示の範囲から逸脱することなく、さまざまな構造的、論理的、および処理的ステップが行われてもよい。
【0032】
値の範囲が本明細書に開示される。これらの範囲は、下限値と上限値とを設定している。特に明記しない限り、範囲は、最小値(下限値又は上限値のいずれか)の大きさまでの全ての値、および記載された範囲の値の間の範囲を含む。
【0033】
本開示は、基材(例えば、ファブリック、ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなど)の表面の一部又は全て(例えば、外表面の一部又は全て)に配置された、22mJ/m2以下(例えば、22mJ/m2未満)の表面張力を有する層を提供する。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「部分(moiety)」は、分子の一部(部分構造)又は官能基を指す。例えば、部分は、前駆体又は
樹脂の一部(部分構造)又は官能基である。様々な例において、「部分」は別の化学種(例えば、基)に共有結合され得る1つの末端、又は他の化学種に共有結合され得る複数(例えば、2つ)の末端を有する化学実体を指す。部分の例には以下のものが含まれるが、これらに限定されない:
部分は基と称され得る。
【0035】
本明細書中で使用される場合、別段の指示がない限り、用語「脂肪族」は飽和しているか、又は任意に、1つ以上の不飽和度を含む、分岐又は非分岐の炭化水素部分/基を指す。不飽和度を有する部分には、アルケニル基/部分、アルキニル基/部分、および環式脂肪族基/部分が含まれるが、これらに限定されない。例えば、脂肪族基は、C1~C40(例えば、C1~C30、C1~C12、C1~C10、又はC1~C5)(全ての整数の炭素数およびそれらの間の炭素数の範囲を含む)の脂肪族基/部分(例えば、アルキル基)であってもよい。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基等が含まれるが、これらに限定されない。脂肪族基/部分は、置換されていなくてもよく、又は1つ以上の置換基で置換されていてもよい。置換基の例としては例えば、ハロゲン(-F、-Cl、-Br、および-I)、追加の脂肪族基(例えば、アルケン、アルキン)、アリール基、アルコキシド、カルボキシレート、カルボン酸、エーテル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基など、およびこれらの組合せなどの様々な置換基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
様々な例において、本開示は、低表面エネルギー材料と工学的表面粗さとを組み合わせた層を提供する。表面粗さは、例えば、ベースポリマーの分子構造を活用することによって、又はスタンピングによって設計することができる。分子粗さの例としては、分岐又は剛性セグメントを含コポリマーの使用、コポリマーの自己集合、ポリマーブレンドのマイクロ相分離、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。樹脂のパターン化は、マイクロ接触印刷(microcontact printing)、およびソフトリソグラフィのために開発された技術を利用することによって達成することができる。
【0037】
一側面において、本開示は、基材の外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)に配置された、22mJ/m2以下(例えば、22mJ/m2未満)の表面張力を有する層(例えば、分子的に粗い層)を提供する。層(単数又は複数)は、フッ素フリーの単層又はフッ素フリーの複数の層であってもよい(例えば、実質的にフッ素フリーの単層又は実質的にフッ素フリーの複数の層)。層は、複数の個別の層を含んでもよい。ある例では、層は、基材表面の一部又は全てに配置される。
【0038】
ある例では、ファブリック、 ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなどは、その外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)に配置された、22mJ/m2以下(例えば、22mJ/m2未満)の表面張力を有するフッ素フリーの層(例えば、分子的に粗い層)を有する。
【0039】
層の表面張力は、22、21、20、19、又は18mJ/m2未満である。例えば、層は12~22mJ/m2、12~20mJ/m2、又は12~18mJ/m2の表面張力を有する。
【0040】
層は、様々な厚みを有し得る。様々な例において、層の厚みは数ナノメートルから、数百ミクロンである。種々の他の例では、層の厚みは、10nm~300ミクロン、又は50nm~100ミクロンである。
【0041】
層は、1又は複数の樹脂を含んでもよい。例えば、樹脂は、複数のPDMS部分を含んでもよい。例えば、樹脂は、架橋性基を含み、この架橋性基には、1つ以上のアクリレート、メタクリレート、アリル、ビニル、チオール、ヒドロキシル、シラノール、カルボン酸、アルデヒド、アミン、イソシアネート、アジド、アルキン、エポキシ、ハライド、水素、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。前記架橋性基は、1又は複数の化学結合(例えば、共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、又はそれらの組み合わせ)を経て、前記基材と相互作用可能である(例えば、前記基材に共有結合的に及び/又は非共有結合的に結合される)。ある例では、PDMS樹脂には、ペンダント状分岐PDMS樹脂及び直線状PDMS樹脂が含まれる。
【0042】
樹脂として、様々な
ポリマー及び/又は
コポリマー(例えば、ランダムコポリマー)が挙げられる。
樹脂は、1又は複数のポリマー鎖を含んでもよい。前記ポリマー鎖は様々な構造を有していてもよい。樹脂は、
ポリマー及び/又は
コポリマーの組み合わせを含んでもよい。様々な例において、
樹脂は、1又は複数のポリ(ジメチルシロキサン)を含み、各ポリ(ジメチルシロキサン)は、1又は複数のポリ(ジメチルシロキサン)部分を含んでいる(例えば、単数又は複数の、直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)部分)。前記部分(単数又は複数)は、例えば基(単数又は複数)などの末端部分(単数又は複数)であってもよい。場合によっては、前記
ポリマーは、独立して、以下の構造を有する1又は複数のペンダント基を含む。
式中、Rは、
それぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'は、-O-SiOR’基の中でそれぞれ独立して、アルキル基(例えば、メチル基)から選択される。様々な例において、
樹脂は、1又は複数のポリマーを含み、各ポリマーは1又は複数の骨格を含んでおり、これは、直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)、炭化水素ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなど)、ポリアクリレートポリマー、ポリ(メタクリレート)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(アリルエーテル)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、及びそれらの組み合わせから選択される骨格から選択される。場合によっては、少なくとも1つのペンダント基は、以下の構造を有している:
Rは、それぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'基はアルキル基であり、前記層は、基材の外表面の一部又は全てに配置されている。前記連結基は、アルキ
レン、アリー
レン、シリル部分など及びそれらの組み合わせを含む基(例えば、-CH
2-基、-CH
2CH
2-基、-CH
2CH
2CH
2-基
-Si(CH
3)
2O-、-CH
2O-基、-CH
2CH
3O-基、-CH
2N-基、-CH
2SO
2-基;ここでnは0~40(その間の全ての整数値と範囲を含む))であってもよい。連結基の例は、本明細書に記載される。
【0043】
前記樹脂は、140g/mol以上(例えば、400g/mol以上、又は600g/mol以上)の分子量を有するポリマーを含むことができる。望ましい層の厚みを達成するためには、ポリマーの分子量が、140g/molより大きい(例えば、400g/mol、600g/mol、1000g/mol、3000g/mol、又は4000g/molを超える)ことが望ましいかもしれない。ある例において、分子量は10,000g/mol以下である。
【0044】
樹脂は、ペンダント状分枝
樹脂であり得る。ペンダント状分枝
樹脂は、複数の脂肪族部分及び/又は脂肪族基(例えば、アルカンジイル/アルケンジイル部分及び/又はアルカンジイル/アルケンジイル基)および複数のペンダント基(例えば、
シロキサンペンダント基)を含む骨格を有することができる。一例では、ペンダント状分岐
樹脂は、1つ以上の脂肪族部分及び/又は脂肪族基(例えば、アルカンジイル/アルケンジイル部分及び/又はアルカンジイル/アルケンジイル基)を含む1つ以上のアルキルシリル化合物(これは前駆体(例えば、モノマー)と呼ぶことができる)の重合によって形成される樹脂である。例えば、ペンダント状分岐
樹脂は、ペンダント形成前駆体(例えば、トリス(トリアルキルシロキシ)シリルアルキルアクリレートなど)、および基材と架橋し得る1つ以上の架橋前駆体(例えば、アルキルアクリルオキシアルキルトリアルコキシシランなど)の重合によって形成される樹脂である。架橋前駆体は例えば、1つ以上のヒドロキシル、シラノール、エポキシ、カルボキシル、アルデヒド、アミノ、又はイソシアネート架橋性基、又はそれらの組み合わせを有するコモノマーであり得る。個々の脂肪族部分及び/又は脂肪族基(例えば、アルカンジイル/アルケンジイル部分及び/又はアルカンジイル/アルケンジイル基)はそれぞれ独立して、C
1からC
40(例えば、C
1~C
30、C
1~C
10、又はC
1~C
5)(及びその間の全ての整数の炭素および範囲を含む)の数の炭素を含む任意の分子リンケージ(例えば、部分/基)であってよい。一例では、ペンダント状分岐
樹脂は、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレートとビニルトリメトキシシランとの重合によって形成される樹脂である。例えば、
図2を参照のこと。アルキルアクリルオキシアルキルトリアルコキシシランに対するトリス(トリアルキルシロキシ)シリルアルキルアクリレート(例えば、ビニルトリメトキシシランに対するトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート)のモル比は、一般に1より高い。一例では、前記比は3~20である。
【0045】
架橋性部分の例には、以下のもの、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
式中、R
3は、炭素数1~40(その間の全ての整数値の炭素及び範囲を含む)の炭化水素であり(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、フェニル、ジフェニル、ナフチルなど)、nは0~600(その間の全ての値及び範囲を含む)であり、Xは架橋性基であり、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:アクリレート、メタクリレート、アリル、ビニル、チオール、ヒドロキシル、シラノール、カルボン酸、アルデヒド、アミン、イソシアネート、アジド、アルキン、エポキシ、ハライド、水素、及びそれらの組み合わせ。様々な例において、前記架橋性部分は、1又は複数の架橋性基が反応すると(例えば、異なるポリマー鎖、同じポリマー鎖、基材又はそれらの組み合わせの架橋性基と反応すると)、架橋部分となる。
【0046】
PDMS樹脂は直線状PDMS樹脂であってもよい。直線状PDMS樹脂は、複数のPDMS脂肪族部分及び/又は脂肪族基(例えば、アルカンジイル/アルケンジイル部分及び/又はアルカンジイル/アルケンジイル基)、および場合により、複数のペンダント基(例えば、
シロキサンペンダント基)を含む骨格を有することができる。例えば、PDMS樹脂は、基材への結合基を有する直線状PDMS樹脂(例えば、反応性官能基末端(例えば、アミン末端)PDMS、フェノール(例えば、ビスフェノールA)、およびパラホルムアルデヒドの重合によって形成された樹脂;シラノール、エポキシ、カルボキシル、アルデヒド、イソシアネート、チオール、ビニル、水素およびヒドロキシル基で末端化されたPDMS)である。例えば、
図3参照。反応性官能基末端PDMS、及び/又は、シラノール、エポキシ、カルボキシル、アルデヒド、イソシアネート、チオール、ビニル、水素およびヒドロキシル基、又はこれらの組み合わせで末端化されたPDMSの、脂肪族部分及び/又は脂肪族基(例えば、アルカンジイル/アルケンジイル部分及び/又はアルカンジイル/アルケンジイル基)はそれぞれ独立して、C
1からC
40までの数の炭素(例えば、C
1~C
30、C
1~C
10、又はC
1~C
5)を含む任意の分子リンケージであり得る。様々な例において、PDMSポリマーの繰り返し単位(例えば、R
2
SiO-)(例えば、
(CH
3
)
2
SiO又は
図3のn)の数は0以上である。様々な例において、繰り返し単位の数は0~400、及びその間の繰り返し単位の全ての整数および範囲を含む。様々な例において、PDMSポリマー中の繰り返し単位の数(例えば、
図3のm)は、少なくとも1である。様々な例において、PDMSポリマー中の繰り返し単位の数(例えば、
図3中のm)は、1~50,000、1~25,000、又は1~10,000である。様々な例において、PDMSポリマー中の繰り返し単位の数(例えば、
図3のm)は、5~50,000、5~25,000、又は5~10,000である。様々な例において、mは2,000である。様々な例において、nは0~400であり得る。様々な例において、nは50である。
【0047】
任意のフェノール類を使用することができる。適切なフェノール類の例として、1以上のベンゼン環に結合した少なくとも2つのヒドロキシル基及び1以上の単鎖(例えば、C1~C5、又はC1~C4)アルキル基を含むフェノール類、又は1以上の芳香族環に直接結合したヒロドキシル基を有するもの(例えば、ヒドロキシル化されたC5~C16の芳香族基/部分、例えば、ヒドロキシル化ナフタレン、ヒドロキシル化ピレン、ヒドロキシル化アントラセンなど)が挙げられるが、これらに限定されない。一例において、前記フェノールは、ビスフェノールAである。
【0048】
フィルムは、ナノ粒子(例えば、シリカナノ粒子)を含むことができる。前記ナノ粒子は、多官能性ナノ粒子であってもよい。「多官能性ナノ粒子」は、樹脂及びトリメチルシロキシル基との適合性を改善し、表面エネルギーを減少させるために、2種以上の官能基が、ナノ粒子上に固定(例えば、ナノ粒子上のシラノール基)されているものを意味する。前記シリカナノ粒子及び樹脂及び/又は基材は、これらのナノ粒子の表面官能基に由来する共有結合及び/又は水素結合を有していてもよい。
【0049】
ナノ粒子は、金属、炭素、金属酸化物、又は半金属酸化物(例えばシリカ)ナノ粒子であり得る。ナノ粒子は低表面エネルギー基(例えば、トリメチルシロキシル、メチル、t-ブチル、ベンゾキサジン、PDMS基など)で表面官能化することができる。ナノ粒子は様々な形態を有することができる。様々な例では、ナノ粒子は、球形、ナノプレート、ナノチューブ、ナノロッド、ナノワイヤ、そのようなナノ粒子によって生成された階層構造、又はそれらの組合せである。一例において、層は複数のシリカナノ粒子(例えば、Ludox HSシリカ、又は他の市販のコロイド状シリカ粒子)を含む。ナノ粒子は様々な量で存在し得る。様々な例において、ナノ粒子は、層の総重量に基づいて、0~95重量%(その間の全ての整数値の重量%および範囲を含む)で層中に存在する。一例では、ナノ粒子は層中に20~40重量%存在する。シリカナノ粒子と、樹脂又はファイバー/繊維との間の相互作用は、ナノ粒子の表面官能基が関与する共有結合及び/又は水素結合の形であってもよい。
【0050】
層は、基材の外表面の一部又は全て(又は外表面の全て)に配置されることができる。基材は、多様な大きさと形状を有し得る。基材は、多様な組成を有し得る。基材の材料の例として、ファブリック、 ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
基材は、生来あるいは改質されて、超親水性、親水性、疎水性又は超疎水性を有するファブリックであってもよい。ファブリックは、綿、PET (ポリエチレンテレフタレート)、ブレンド(例えば、綿/PETのブレンドなど)、ナイロン、ポリエステル、スパンデックス、絹、ウール、ビスコース、セルロース繊維(例えば、TENCEL(登録商標))、アクリル、ポリプロピレン、又はそれらのブレンドであってもよい。ファブリックは、レザーであってもよい。ファブリックは、織り構造(例えば、平織、あや織、繻子織など)、編み構造(例えば、シングルジャージ、ダブルジャージ、ピケ、メッシュなど)、又は不織構造(例えば、フェルト、繊維マット、メンブラン、フィルム、レザー、紙など)を有していてもよい。
【0052】
基材は、1つ以上の凹状(リエントラント)構造を含んでもよい。凹状構造の非限定的な例としては、繊維構造(例えば、
図1aに示されるような繊維構造の非限定的な例)、T字型構造(例えば、
図1bに示されるような繊維構造の非限定的な例)、および、例えば台形、マッチ棒様、土柱(hoodoo)様/逆オパールおよびマッシュルーム様構造などの派生的構造が挙げられる(例えば、派生的構造の非限定的な例が
図1cに示される)。基材は2つ以上の異なる(例えば、1以上の特性に関して異なる;例えば、1又は複数の寸法、1又は複数のタイプの凹状構造など)凹状構造を含んでもよい。これらの構造を有する基材上に配置された層の疎油性挙動は、例えば
図1に示されるように、毛管長さ、オーバーハングの半径R、微細構造間隔D、および局所テクスチャ角度(local texture angle)Ψによって決定することができ、繊維構造と比較して、T字型構造は、これらのパラメータを同時に最大化することを可能にするので、高い撥油性を有し得る。一例では、基材は凹状構造を全く含まない。
【0053】
層はファブリックに配置されることができ、このファブリックは、ファブリック外表面の一部に配置された超親水性層を有する。超親水性層の非限定的な例は、米国特許出願第14/122,535号(Wang等、“Antifouling Ultrafiltration and RO/FO /Membranes”)に記載されており、その中の超親水性層及び、超親水性層の製造方法に関する開示は、参照により本明細書中に包含される。一例において、本明細書に開示の層と超親水性層は、ファブリックの反対側に配置される。
【0054】
超親水性層は、複数の超親水性ナノ粒子を含むことができる。親水性ナノ粒子は、アルキルシロキサン-リンカー基で表面機能化(官能化)されたシリカナノ粒子である。様々な例において、超親水性層は、30度、25度、20度、15度、10度、又は5度未満の接触角を有する表面を有する。超親水性層は、当該分野で既知の方法によって作られたナノ粒子から形成することができる。
【0055】
層は疎油性である。層は疎脂性であり、疎油性であってもよい。層は、疎脂性、疎油性および疎水性であってもよい。「疎油性」は、油からはじかれているように見える分子の物理的特性を指す。層の疎油性又は撥油性は、AATCC(登録商標)試験法118-2013によって評価することができる。様々な例では、層は1つ又は複数のオイル(例えば、AATCC(登録商標)試験方法118-2013に記載されている1つ又は複数のオイル)について、AATCC(登録商標)試験方法118-2013をパスする。疎脂性(lipophobicity)は、ときにリポフォビア(lipophobia)とも呼ばれるが、「脂肪拒絶」、文字通り「脂肪への恐れ」を意味する化合物の化学的性質である。疎脂性化合物は脂質又は他の非極性溶媒に溶解しない化合物であり、例えば、水は疎脂性である。
【0056】
一側面において、本開示は、本明細書に開示の層を製造する方法を提供する。様々な例において、前記方法は、基材上に樹脂をコーティングすることを基礎とし、これはgraft-to法とも呼ばれる。様々な他の例において、in situ重合によって形成された樹脂は、graft-from法とも呼ばれる。
【0057】
様々な例において、基材(例えば、本明細書に記載の基材、例えば、ファブリック、ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなど)の外表面の一部又は全て(例えば、外表面全て)に配置された、22mJ/m2以下の表面張力を有する層(例えば、分子的に粗い層)(例えば、22mJ/m2未満の硬化樹脂を含む層)を形成する方法は、
基材(例えば、ファブリック)を用意すること;
前記基材(例えば、ファブリック)の表面の一部又は全て(例えば、外表面の一部又は全て)を、樹脂(例えば、ペンダント状分岐樹脂又は直線状樹脂)(例えば、本明細書に開示の樹脂)でコーティングすること(例えば、ディップコーティング又はスプレーコーティングによって);
前記樹脂コーティングを硬化(例えば、熱硬化)させることを含み、
この際、22mJ/m2以下の(例えば、22mJ/m2未満の)表面張力を有する層(例えば、分子的に粗い層)が、前記基材(例えば、ファブリック)の表面の一部又は全て(例えば、外表面の一部又は全て)に形成される。
【0058】
硬化の結果として、層の1以上のポリマー鎖の間及び/又は1以上のポリマー鎖と前記基材との間の架橋(例えば、1以上の共有結合の形成)が生じ得る。架橋は、架橋部分を形成し得る(例えば、1以上の架橋性部分の反応から)。
【0059】
様々なコーティング方法が使用できる。コーティング方法の例として、スプレーコーティング、ディップコーティング、フローティング・ナイフコーティング、ダイレクトロールコーティング、パディング、カレンダーコーティング、フォームコーティング、及びペインティングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
樹脂は、ナノ粒子、樹脂、及び任意で溶媒の混合物であってもよい(例えば、前記混合物を含む)。そのような樹脂は、「複合ナノ流体」と称されてもよい。様々な例において、基材は、複合ナノ流体でコーティングされる。前記ナノ粒子は、層の表面粗さを増加させると考えられる。さらに、前記ナノ粒子は、層の機械的耐久性と強度を増加させ得る(例えば、ファブリックの外表面の少なくとも1部又は全て(例えば、外表面の全て)に配置された層を有するファブリック)。
【0061】
層(単数又は複数)は、in situ重合によって形成することができる。例えば、層は、基材(例えば、基材上に配置された1以上の基)から開始される重合を経て成長する。例えば、重合はラジカル重合である。様々な例において、ラジカル重合は、例えば原子移動ラジカル重合(ATRP)などのリビング重合である。
【0062】
in situ重合の一例は、
シロキサン前駆体の重合を開始できる複数の官能基を有する基材(例えば、その表面に配置された、1以上の以下に示す基
など、又はその組み合わせを含むもの)を、
反応混合物と接触させることを含み、この反応混合物は、1以上の
シロキサン前駆体、及び以下の(i)又は(ii)を含み、この際、基材の表面に配置された開始剤層及び/又は
シロキサン結合を有するポリマーを含む層が形成される。
(i)1以上のラジカル開始剤(例えば、
のようなハロゲン化物開始剤;例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなアゾラジカル開始剤;例えば、過酸化ベンゾイルのような過酸化物;例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシルのようなアルコキシアミン;例えば、シアノメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]トリチオカーボネートのような連鎖移動剤など、又はそれらの組み合わせ);
(ii)1以上の金属触媒(例えば、Cu(I), Cu(II), Fe(II), Fe(III), Co(II)など、及びそれらの組み合わせ)及び1以上のアミン(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、N,N-ビス(2-ピリジルメチル)アミン、トリス[2-アミノエチル]アミン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、2,2'-ビピリジン、4,4'-ジ(5-ノニル)-2,2'-ビピリジン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N-プロピル(2-ピリジル)メタンイミン、2,2':6',2''-テルピリジン、4,4',4''-トリス(5-ノニル)- 2,2':6',2''-テルピリジン、N,N,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N-ビス(2-ピリジルメチル)オクチルアミン、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリス[(2-ピリジル)メチル]アミン、1,4,8,11-テトラアザ-1,4,8,11-テトラメチルシクロテトラデカン、N,N,N',N'-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミンなど、それらの組み合わせ)を含む1以上の活性化剤。
【0063】
基材は、コーティングの前に前処理されてもよい。一例では、ナノ粒子が、基材の外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)に配置され及び/又は成長する。様々な例において、方法は、本明細書に開示の層を形成する前に、ファブリックの外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)に複数のナノ粒子を含む層を形成することを含む。様々な例において、前記形成は、ファブリックの外表面の一部又は全てを、シリカゾル(例えば、一以上のテトラアルコキシシランを加水分解する(例えば、アルコール/水溶液中で)(例えば、アルカリ性条件下で)ことによって形成されるシリカゾル)でコーティングすること(例えば、ディップコーティング又はスプレーコーティングによって)、及び、コーティングされた布帛を乾燥することを含む。テトラアルコキシシランの組み合わせを使用することもできる。テトラアルコキシシランの例として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロピルオルトシリケート、テトラブチルオルトシリケート、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。シリカゾルは、ケイ酸ナトリウムを酸性化することによっても形成できる。
【0064】
一例では、基材の前処理を含む方法は、さらに、乾燥したファブリックと、シリカナノ粒子(例えば、シリカナノ粒子の懸濁液)を接触させることを含む。
【0065】
基材は使用前にクリーニングされてもよい。一例では、基材(例えば、ファブリック、又は複数のナノ粒子がその上に配置されたファブリック)は、シリカゾルによるコーティング前に、クリーニングされる(例えば、プラズマ洗浄、酸化、例えば水及び/又は他の溶媒(例えば、有機溶媒など)のような溶媒を用いてすすぐ)。
【0066】
コーティングと硬化は、所望の回数繰り返すことができる。所望の厚みを有する層を得るために、コーティングと硬化を繰り返すことが望ましい。様々な例において、コーティングと硬化は、1~20回(その間の全ての整数の繰り返しを含む)繰り返される。
【0067】
様々な例において、方法は、さらに、フィルム上にさらなる(追加的な)表面粗さを形成することを含む。表面粗さは、例えば、ナノファブリケーション、エレクトロスピニング、フォースドスピニング(forced spinning)、押出、機械的スタンピング、摩耗、エッチング、又はそれらの組み合わせによって形成できる。
【0068】
一側面において、本開示は製造品を提供する。前記製造品は、本明細書に開示の層を1つ以上、及び/又は本明細書に開示の方法によって作られた層を1つ以上含む。
【0069】
製造品の例としては、例えば、布地、シャツ、ジャケット、ズボン、帽子、タイ、コート、靴等のような衣類(例えば、子供用衣類、大人用衣類、産業用作業衣類等のような衣類)、食品包装、眼鏡、ディスプレイ(例えば、タッチスクリーン)、スキャナ(例えば、指紋スキャナ)、飛行機コーティング、スポーツ用品(例えば、テント、ユニフォーム等)、建築材料(例えば、窓)、風防ガラスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
製造品は、様々な産業で使用できる。産業の例には、航空宇宙、自動車、建築・建造、食品加工、エレクトロニクスが含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
本明細書に開示された様々な実施形態および例に記載された方法のステップは、本明細書に開示の方法を実行するのに十分である。したがって、様々な例において、方法は、本質的に、本明細書で開示される方法のステップの組合せからなる。様々な他の例において、方法は、そのようなステップのみからなる。
【0072】
以下の陳述は、本明細書に開示の層(例えば、22mJ/m
2以下の表面張力(例えば、12~22mJ/m
2)を有する分子的に粗い層)、本明細書に開示の方法(例えば、本明細書に開示の層を製造する方法)、及び本明細書に開示の製造品(例えば、本明細書に開示の層を1つ以上含む製造品)の実施形態及び/又は例を提供する。
陳述1.
基材の外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)に配置された、22mJ/m
2(例えば、12~22mJ/m
2)以下の表面張力を有する本明細書に開示の層(例えば、分子的に粗い層)。
陳述2.
1以上の
樹脂を含む層(例えば、基材上に配置された層)であって、各
樹脂が、以下の(i)及び/又は(ii)を含む:
i)1以上のポリ(ジメチルシロキサン)、各ポリ(ジメチルシロキサン)は、1以上のポリ(ジメチルシロキサン)部分(例えば、直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)部分(単数又は複数))を含む、及び
任意で、前記ポリ(ジメチルシロキサン)(単数又は複数)は、独立して、以下の構造を有するペンダント基を1以上含む:
ここで、連結基は、アルキ
レン、アリー
レン、シリル部分など及びそれらの組み合わせを含む基(例えば、-CH
2-基、-CH
2CH
2-基、-CH
2CH
2CH
2-基
-Si(CH
3)
2O-、-CH
2O-基、-CH
2CH
3O-基、-CH
2N-基、-CH
2SO
2-基;ここでnは0~40(その間の全ての整数値と範囲を含む))であってもよく、Rは、前記ポリ(ジメチルシロキサン)(単数又は複数)の中でそれぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'は、-O-SiOR’基(単数又は複数)の中でそれぞれ独立して、アルキル基(例えば、メチル基)から選択される;
ii)1以上のポリマーであって、各ポリマーは、直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)、炭化水素ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなど)、ポリアクリレートポリマー、ポリ(メタクリレート)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(アリルエーテル)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、及びそれらの組み合わせから選択される骨格から選択される1以上の骨格、及び任意で、
以下の構造を有する少なくとも1つのペンダント基を含み:
前記連結基は、アルキ
レン、アリ
ーレン、シリル部分など及びそれらの組み合わせを含む基(例えば、-CH
2-基、-CH
2CH
2-基、-CH
2CH
2CH
2-基
-Si(CH
3)
2O-、-CH
2O-基、-CH
2CH
3O-基、-CH
2N-基、-CH
2SO
2-基;ここでnは0~40(その間の全ての整数値と範囲を含む))であってもよく、Rは、それぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'基は、-アルキル基である
この際、前記層は、基材の表面の一部又は全てに配置される。
陳述3.
前記1以上のポリ(ジメチルシロキサン)が、直線状のポリ(ジメチルシロキサン)部分(単数又は複数)、分岐状のポリ(ジメチルシロキサン)部分(単数又は複数) 、又はそれらの組み合わせを含む、陳述2の層。
陳述4.
前述の陳述のいずれか1つの層であって、前記PDMS樹脂が、直線状PDMS樹脂である(例えば、基材への結合基を有するPDMS樹脂)(例えば、アミン末端PDMS、ベンゼン環に結合したヒロドキシル基及び単鎖(<C
5)アルキル基を有するフェノール、又は芳香環に直接ヒロドキシル基が結合したフェノール(例えば、ビスフェノールA)、及びパラホルムアルデヒドの重合によって形成された樹脂;シラノール、エポキシ、カルボキシル、アルデヒド、イソシアネート、チオール、ビニル、水素およびヒドロキシル基、又はそれらの組み合わせで末端化されたPDMS)。例えば、
図3参照。例えば、前記アミン末端PDMS前駆体、又は、シラノール、エポキシ、カルボキシル、アルデヒド、イソシアネート、チオール、ビニル、水素、ヒドロキシル基、又はそれらの組み合わせで末端化されたPDMSのアルキル部分は、それぞれ独立して、C
1からC
40(その間の全ての整数値の炭素及び範囲を含む)(例えば、C
1~C
30、C
1~C
10、又はC
1~C
5)である。
陳述5.
陳述2~4のいずれか1つの層であって、前記1以上のポリ(ジメチルシロキサン)が以下のものであり、
式中、R
2は、それぞれ独立して、H、炭素数1~40の炭化水素基、又は-O-SiOR’基から選択され、ここで、R’基は、アルキル基であり(例えば、C
1~C
40、C
1~C
30、C
1~C
10、又はC
1~C
5);nは0~400であり、mは1~50,000である。
陳述6.
前記1以上の
樹脂の少なくとも1つが、1以上の架橋性基を有する、陳述2~5のいずれか1つの層。
陳述7.
前記架橋性基が、アクリレート、メタクリレート、アリル、ビニル、チオール、ヒドロキシル、シラノール、カルボン酸、アルデヒド、アミン、イソシアネート、アジド、アルキン、エポキシ、ハライド、水素、及びそれらの組み合わせから選択される、陳述2~6のいずれか1つの層。
陳述8.
陳述2~7のいずれか1つの層であって、ペンダント状分岐
樹脂が、1以上のトリス(トリアルキルシロキシ)シリルビニル化合物(例えば、トリス(トリアルキルシロキシ)シリルアルキルアクリレート、例えば、トリス(トリアルキルシロキシ)シリル メタクリレートなどのような)及びトリメトキシシランビニル化合物(例えば、アルキルアクリルオキシアルコキシトリメトキシシランなど)の重合によって形成され、ここで前記アルキル部分(例えば、アルキル部分(単数又は複数)及び/又はアルキル基(単数又は複数))は、それぞれ独立して、C
1~C
40アルキル部分である。例えば、
図2参照。
陳述9.
これらの前駆体から生じる前記
樹脂又は前記
樹脂中の部分を製造するために使用されるトリス(トリアルキルシロキシ)シリルアルキルアクリレートとビニルシランのモル比(例えば、ビニルトリメトキシシランに対するトリス(トリメチルシロキシル)シリルプロピルメタクリレートのモル比)が、1より大きい(例えば、3~20)、陳述2~8のいずれか1つの層。
陳述10.
前記アルキル部分が、それぞれ独立して、C
1~C
30、C
1~C
10アルキル部分、又はC
1~C
5アルキル部分である、陳述2~9のいずれか1つの層。
陳述11.
前記ペンダント基が、以下のものから選択され、
及び任意で、前記ペンダント基が、連結基によって、前記ポリ(ジメチルシロキサン)樹脂又は
前記骨格に共有結合している、陳述2~10のいずれか1つの層。
陳述12
陳述2~11のいずれか1つの層であって、前記ポリ(ジメチルシロキサン)が、以下の構造を有しており、
式中、nは0~600であり、mは0~3であり、Xは架橋性基であって、架橋性基としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:アクリレート、メタクリレート、アリル、ビニル、チオール、ヒドロキシル、シラノール、カルボン酸、アルデヒド、アミン、イソシアネート、アジド、アルキン、エポキシ、ハライド、水素、及びそれらの組み合わせ。
陳述13.
前記1以上のポリ(ジメチルシロキサン)部分、又は前記直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)(単数又は複数)骨格のR
2
SiO(例えば
、(CH
3
)
2
SiO)繰り返し単位の数が、0~400である、陳述2~12のいずれか1つの層。
陳述14.
前記PDMSの前記繰り返し単位(例えば、
(CH
3
)
2
SiO)の数が2より大きく、好ましくは10~400である、陳述2~13のいずれか1つの層。graft-to法(例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング、エマルション/フォームコーティングなど)以外に、graft-from法(例えば、
図9に示すように)によって前記コーティングを基材に適用できる。開始剤は、可逆的不活性化ラジカル生成剤、例えば、1以上の有機ハロゲン化部分を含む化合物(例えばハロゲン化アルキル)など、又は1以上のアルコキシアミン部分、又は適切な連鎖移動剤、例えば、1以上のチオカルボニルチオ部分などであってもよい。モノマーは、1以上の脂肪族部分及び/又は脂肪族基を含む1以上のアルキルシリル化合物であってもよい。
陳述15.
前記層が硬化されている、陳述2~14のいずれか1つの層。
陳述16.
陳述2~15のいずれか1つの層であって、前記層がさらに、
樹脂の2つのポリマー鎖の間(
樹脂の同じポリマー鎖であっても、異なるポリマー鎖であってもよい)に、少なくとも1つの架橋(例えば、2より多くの、5より多くの、10より多くの架橋、又は25より多くの架橋)を有する、及び/又は
樹脂のポリマー鎖(
樹脂の同じポリマー鎖であっても、異なるポリマー鎖であってもよい)と基材との間に、少なくとも1つの架橋(例えば、2より多くの、5より多くの、10より多くの架橋、又は25より多くの架橋)を有する。
陳述17.
陳述2~16のいずれか1つの層であって、前記層がさらに、以下のものから選択される1以上の架橋部分を含み:
式中、R
3は、炭素数1~40(その間の全ての整数値の炭素及び範囲を含む)の炭化水素基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、フェニル、ビフェニル、ナフチルなど)であり、nは0~600(その間の全ての値及び範囲を含む)である。
陳述18.
前記層が、本明細書に開示されたナノ粒子(例えば、Ludox HSシリカ、及び他の市販のコロイド状シリカ粒子などのシリカナノ粒子)を複数含む、陳述2~17のいずれか1つの層。
陳述19.
前記複数のナノ粒子が、シリカナノ粒子からなる群より選択される、陳述18の層。
陳述20.
前記ナノ粒子の重量パーセンテージが、前記層の総重量に対して、1~98wt%(例えば、1~95wt%又は1~50wt%)である、陳述18又は19に記載の層。
陳述21.
前記ナノ粒子の重量パーセンテージが、0~95wt%、好ましくは20~40wt%である、陳述18~20のいずれか1つに記載の層。
陳述22.
前記基材が、本明細書に開示された基材である、前述の陳述のいずれか1つに記載の層。
陳述23.
前記層の厚みが、10nm~300ミクロン(例えば、50nm~100ミクロン)である、前述の陳述のいずれか1つに記載の層。
陳述24.
前記基材が、ファブリック、 ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなどである、前述の陳述のいずれか1つに記載の層。
陳述25.
前記ファブリックが、綿、PET、綿/PETのブレンド、ナイロン、ポリエステル、スパンデックス、絹、ウール、ビスコース、セルロース繊維、アクリル、ポリプロピレン、又はそれらのブレンド(例えば、ファブリックを形成できる2種以上の糸のブレンドであって、これらには、ファブリック材料としての、綿、PET、綿/PETのブレンド、ナイロン、ポリエステル、スパンデックス、絹、ウール、ビスコース、セルロース繊維、アクリル、ポリプロピレン糸が含まれる)、レザー、及びそれらの組み合わせから選択される、陳述24に記載の層。
陳述26.
前記基材が、ファブリック外表面の一部に配置された超親水性層を有するファブリックである、陳述25に記載の層。
陳述27.
前記層が、22mJ/m
2以下の表面張力を有する、陳述2~26のいずれか1つに記載の層。
陳述28.
22mJ/m
2以下の表面張力を有する層と超親水性層とが、布帛の反対側に配置されている、陳述2~27のいずれか1つに記載の層。
陳述29.
前記基材及び/又は層が、フッ素フリーである、前述の陳述のいずれか1つに記載の層。
陳述30.
前記層が、1つ以上のオイル(例えば、AATCC(登録商標)試験方法118-2013に記載されている1つ以上のオイル)について、AATCC(登録商標)試験方法118-2013をパスする、前述の陳述のいずれか1つに記載の層。
陳述31.
基材(例えば、ファブリック)の外表面の一部又は全て(例えば、外表面全て)に配置された、本明細書に開示の層(例えば、分子的に粗い層)(例えば、22mJ/m
2未満の表面張力を有する層)(例えば、硬化
樹脂を含む層)を形成する方法であって、
基材(例えば、ファブリック)を用意すること;
前記基材の外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)を、
樹脂(例えば、ペンダント状分岐
樹脂又は直線状
樹脂)(例えば、本明細書に開示の
樹脂、例えば、陳述4~13のいずれか1つに記載の
樹脂など)又は複合ナノ流体でコーティングすること(例えば、スプレーコーティング、ディップコーティング、フローティング・ナイフコーティング、ダイレクトロールコーティング、パディング、カレンダーコーティング、又はフォームコーティングによって);
前記
樹脂コーティング又は前記複合ナノ流体から形成されたコーティングを硬化(例えば、熱硬化)させること
を含み、この際、本明細書に開示の層(例えば、分子的に粗い層)(例えば、22mJ/m
2未満の表面張力を有する層)が、前記基材の外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)に形成される。
陳述32.
基材の外表面の一部又は全てに配置された、本明細書に開示の層を形成する方法であって、
前記基材の外表面の一部又は全てを、
樹脂又は複合ナノ流体でコーティングすること;及び
前記
樹脂コーティング又は前記複合ナノ流体から形成されたコーティングの温度にて、前記コーティングを加熱して硬化させること(例えば、前記コーティングを、-30℃~200℃の温度、例えば20~160℃などの温度で、例えば1秒~2週間維持する)
を含み、この際、本明細書に開示の層が、前記基材の外表面の一部又は全てに形成される。
陳述33.
陳述31又は32に記載の方法であって、
前記
樹脂が、以下の(i)及び/又は(ii)を含む:
i)1以上のポリ(ジメチルシロキサン)部分(例えば、直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)部分(単数又は複数))を含む1以上のポリ(ジメチルシロキサン)樹脂、
ここで、任意で、前記ポリ(ジメチルシロキサン)樹脂は、以下の構造を有するペンダント基を1以上含む:
Rは、前記ポリ(ジメチルシロキサン)(単数又は複数)の中でそれぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'は、-O-SiOR’基(単数又は複数)の中でそれぞれ独立して、アルキル基(例えば、メチル基)から選択される;
ii)1以上のポリマーであって、
直線状あるいは分岐状ポリ(ジメチルシロキサン)、炭化水素ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなど)、ポリアクリレートポリマー、ポリ(メタクリレート)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(アリルエーテル)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、及びそれらの組み合わせから選択される骨格、及び、
以下の構造を有する少なくとも1つのペンダント基を含み、
式中、Rは、それぞれ独立して、アルキル基及び-O-SiOR’基から選択され、R'基は、アルキル基である。
陳述34.
前記複合ナノ流体が、
樹脂、1以上のナノ粒子、及び任意で、溶媒(例えば、トルエン、キシレン、炭素数4~16の炭化水素(例えば、ヘキサンなど)、クロロホルム、テトラヒドロフラン、及びそれらの組み合わせ)を含む、陳述31~33のいずれか1つに記載の方法。
陳述35.
前記基材が、本明細書に開示された基材である、陳述31~34のいずれか1つに記載の方法。
陳述36.
前記基材が、ファブリック、 ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなどである、陳述31~35のいずれか1つに記載の方法。
陳述37.
前記基材が、ファブリックの外表面の全て又は少なくとも一部に配置された超親水性層を有する(例えば、本明細書に開示の層(例えば、22mJ/m
2以下の表面張力を有する層)が形成された面とは反対側のファブリックの面に配置された超親水性層を有する)ファブリックである、陳述31~36のいずれか1つに記載の方法。
陳述38.
前記基材がフッ素フリーである、陳述31~37のいずれか1つに記載の方法。
陳述39.
陳述31~38のいずれか1つに記載の方法であって、前記形成が、基材の外表面の一部又は全てを、シリカゾル(例えば、一以上のテトラアルコキシシランを加水分解する(例えば、アルコール/水溶液中で)(例えば、アルカリ性条件下で)ことによって形成されるシリカゾル)でコーティングすること(例えば、ディップコーティング又はスプレーコーティングによって)、及び、コーティングされたファブリックを乾燥することを含む。テトラアルコキシシランの例として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロピルオルトシリケート、テトラブチルオルトシリケート、及びそれらの組み合わせが挙げられる。前記シリカゾルは、ケイ酸ナトリウムを酸性化することによって、形成することもできる。
陳述40.
前記コーティングが、スプレーコーティング、ディップコーティング、フローティング・ナイフコーティング、ダイレクトロールコーティング、パディング、カレンダーコーティング、フォームコーティング、又はそれらの組み合わせである、陳述39に記載の方法。
陳述41.
さらに、乾燥した基材を、ナノ粒子(例えば、シリカナノ粒子、例えば、シリカナノ粒子の懸濁液など)と接触させることを含む、陳述31~40のいずれか1つに記載の方法。
陳述42.さらに、前記基材を前処理することを含む、陳述31~41のいずれか1つに記載の方法。
陳述43.
本明細書に開示の層(例えば、22mJ/m
2未満の表面張力を有する層)を形成する前に、前記基材の外表面の一部又は全て(例えば、外表面の全て)に、層を形成することを含む、陳述31~42のいずれか1つに記載の方法。
陳述44.
前記前処理が、化学的処理(例えば、プラズマ処理、溶剤洗浄、酸化処理、加水分解処理など、及びそれらの組み合わせ)、物理的処理(例えば、研磨処理など)、プライマー処理(例えば、1以上のゾルゲル前駆体と、エポキシドプライマーとを含むゾルのようなプライマーを用いる:これは、アクリレート基、メタクリレート基、アリル基、ビニル基、チオール基、ヒドロキシル基、シラノール基、カルボン酸基、カルボキシレート基、アルデヒド基、アミン基、イソシアネート基、アジド基、エポキシ基、ハロゲン化物基、水素基など、及びそれらの組み合わせの1つ以上を含む)、又はそれらの組み合わせである、陳述31~43のいずれか1つに記載の方法。
陳述45.
前記前処理が、基材の外表面の一部又は全てを、非金属酸化物(例えば、酸化ケイ素など)、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅など、及びそれらの組み合わせ)、又はそれらの組み合わせのゾルで、コーティングすることを含む(例えば層は、非金属酸化物、金属酸化物、又はそれらの組み合わせを含んでいる)、陳述31~44のいずれか1つに記載の方法。例えば、コーティングされた基材(例えば、シリカゾルコーティング基材など)は、1又は複数の官能基を含み、官能基として、例えば、アクリレート基、メタクリレート基、アリル基、ビニル基、チオール基、ヒドロキシル基、シラノール基、カルボン酸基、カルボキシレート基、アルデヒド基、アミン基、イソシアネート基、アジド基、アルキン基、エポキシ基、ハロゲン化物基、水素基、及びそれらの組み合わせなどが挙げられ、これは、コーティング基材と層の間の架橋密度を高めうる。
陳述46.
前記基材を、シリカゾルでコーティングする前にクリーニングする(例えば、プラズマ洗浄)、陳述31~45のいずれか1つに記載の方法。
陳述47.
前記基材が、そこに配置された複数のナノ粒子を有する、陳述31~46のいずれか1つに記載の方法。
陳述48.
さらに、前記基材(例えば、乾燥された及び/又は硬化された層を有していてもよい)をシリカナノ粒子と接触させることを含む、陳述31~47のいずれか1つに記載の方法。前記ナノ粒子(例えば、シリカナノ粒子など)の一部又は全ては、基材に共有結合していてもよく、他のナノ粒子と結合及び/又は凝集していてもよく、又はそれらの組み合わせでもよい。様々な例において、前記ナノ粒子の一部又は全ては、凹状構造を形成する。
陳述49.
前記コーティングと硬化(例えば、陳述8~16のいずれかに記載のコーティング及び硬化)が、所望の回数(例えば1~20回)繰り返される、陳述31~48のいずれか1つに記載の方法。
陳述50.
さらに、前記層にさらなる表面粗さを施すことを含む(例えば、ナノファブリケーション、エレクトロスピニング、フォースドスピニング、押出、機械的スタンピング、摩耗、エッチング、又はそれらの組み合わせによって)、陳述31~49のいずれか1つに記載の方法。
陳述51.
基材の外表面の一部又は全てに配置された、
樹脂を含む層(例えば、本明細書に開示の層)を形成する方法(例えば、in situ法)であって、
シロキサン前駆体の重合を開始できる複数の官能基を有する基材(例えば、その表面に配置された、1以上の以下に示す基など、又はその組み合わせを含む)を、
反応混合物と接触させることを含み、この反応混合物は、1以上の
シロキサン前駆体、及び以下の(i)又は(ii)を含み、この際、基材の表面に配置された
層(シロキサン結合を有するポリマーを含む層
)が形成される
(i)1以上のラジカル開始剤(例えば、
のようなハロゲン化物開始剤;例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなアゾラジカル開始剤;例えば、過酸化ベンゾイルのような過酸化物;例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシルのようなアルコキシアミン;例えば、シアノメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]トリチオカーボネートのような連鎖移動剤など、又はそれらの組み合わせ);
(ii)1以上の金属触媒(例えば、Cu(I), Cu(II), Fe(II), Fe(III), Co(II)など、及びそれらの組み合わせ)及び1以上のアミン(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、N,N-ビス(2-ピリジルメチル)アミン、トリス[2-アミノエチル]アミン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、2,2'-ビピリジン、4,4'-ジ(5-ノニル)-2,2'-ビピリジン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N-プロピル(2-ピリジル)メタンイミン、2,2':6',2''-テルピリジン、4,4',4''-トリス(5-ノニル)- 2,2':6',2''-テルピリジン、N,N,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N-ビス(2-ピリジルメチル)オクチルアミン、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリス[(2-ピリジル)メチル]アミン、1,4,8,11-テトラアザ-1,4,8,11-テトラメチルシクロテトラデカン、N,N,N',N'-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミンなど、それらの組み合わせ)を含む1以上の活性化剤。
陳述52.
前記基材が、ファブリック、 ファイバー、フィラメント、ガラス、セラミック、カーボン、金属、木材、ポリマー、プラスチック、紙、膜、コンクリート、レンガなどである、陳述51に記載の方法。
陳述53.
前記基材が、その上に配置された複数のナノ粒子を有する、陳述51又は52に記載の方法。
陳述54.
前記基材がフッ素フリーである、陳述51~53のいずれか1つに記載の方法。
陳述55.
さらに、基材の前処理を含む、陳述51~54のいずれか1つに記載の方法。
陳述56.
前記前処理が、化学的処理(例えば、プラズマ処理、溶剤洗浄、酸化処理、加水分解処理など、及びそれらの組み合わせ)、物理的処理(例えば、研磨処理など)、プライマー処理(例えば、1以上のゾルゲル前駆体とエポキシドプライマーとを含むゾルのようなプライマーを用いる;これは、アクリレート基、メタクリレート基、アリル基、ビニル基、チオール基、ヒドロキシル基、シラノール基、カルボン酸基、カルボキシレート基、アルデヒド基、アミン基、イソシアネート基、アジド基、アルキン基、エポキシ基、ハロゲン化物基、水素基など、及びそれらの組み合わせの1つ以上を含む)、又はそれらの組み合わせである、陳述51~55のいずれか1つに記載の方法。
陳述57.
前記前処理が、基材の外表面の一部又は全てを、非金属酸化物(例えば、酸化ケイ素など)、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅など、及びそれらの組み合わせ)、又はそれらの組み合わせのゾルで、コーティングすることを含む(例えば層は、非金属酸化物、金属酸化物、又はそれらの組み合わせを含んでいる)、陳述51~56のいずれか1つに記載の方法。例えば、コーティングされた基材(例えば、シリカゾルコーティング基材など)は、1又は複数の官能基を含み、官能基として、例えば、アクリレート基、メタクリレート基、アリル基、ビニル基、チオール基、ヒドロキシル基、シラノール基、カルボン酸基、カルボキシレート基、アルデヒド基、アミン基、イソシアネート基、アジド基、アルキン基、エポキシ基、ハロゲン化物基、水素基、及びそれらの組み合わせなどが挙げられ、これは、コーティング基材と層の間の架橋密度を高めうる。
陳述58.
さらに、前記基材(
シロキサン
結合を有するポリマーを含む層を有していてもよい)を、シリカナノ粒子と接触させることを含む、陳述51~57のいずれか1つに記載の方法。
前記ナノ粒子(例えば、シリカナノ粒子など)の一部又は全ては、基材に共有結合していてもよく、他のナノ粒子と結合及び/又は凝集していてもよく、又はそれらの組み合わせでもよい。様々な例において、前記ナノ粒子の一部又は全ては、凹状構造を形成する。
陳述59.
前記接触を1~20回繰り返す、陳述51~58のいずれか1つに記載の方法。
陳述60.
さらに、前記層にさらなる表面粗さを施こすことを含む、陳述51~59のいずれか1つに記載の方法。
陳述61.
さらなる表面粗さを、ナノファブリケーション、エレクトロスピニング、フォースドスピニング、押出、機械的スタンピング、摩耗、エッチング、又はそれらの組み合わせによって、層に施す、陳述51~60のいずれか1つに記載の方法。
陳述62.
本明細書に開示の層を1つ以上含む製造品。例えば、陳述31~61のいずれか1つに記載の方法によって形成された1つ以上の層。
陳述63.
本明細書に開示された基材の外表面の一部又は全て(例えば、外表面全て)に配置された、本明細書に開示の層(例えば、分子的に粗い層)(例えば、22mJ/m
2未満の表面張力を有する層)(例えば、陳述1~30のいずれか1つに記載の層、又は陳述31~61のいずれか1つに記載の方法によって製造された層)を有する1以上のファブリックを含む製造品。
陳述64.
前記製造品が、本明細書に記載された製品である、陳述62又は63に記載の製造品。
陳述65
前記製造品が、布地、衣類、食品包装、眼鏡、ディスプレイ、スキャナ、飛行機コーティング、スポーツ用品、建築材料、窓、風防ガラス、耐食性コーティング、防氷コーティング、又は冷却器(例えば、蒸気、例えば水蒸気などを冷却するためのコンデンサ)、ライト(例えば、交通信号灯、ヘッドライト、ランプなど)である、陳述62~64のいずれか1つに記載の製造品。
【0073】
以下の実施例は、本開示を説明するために提示される。それらは、いかなる方法による限定も意図していない。
[実施例1]
【0074】
この実施例は、本開示のフィルムについて記載する。
【0075】
手法と結果:
我々は、分子的に粗い表面をベースとするフッ素フリーの疎油性コーティングを記載する。いくつかの設計において、前記表面粗さは、ナノ粒子の添加によって達成される。最大でグレード3までの疎油性表面(AATCC(登録商標)118に基づく)をもたらす、18mN/m以下の表面エネルギーが示された。前記コーティングは十分に頑強であり、洗濯/すすぎの繰り返しサイクル(30サイクル)及び、様々な有機溶媒(例えば、アセトン、エタノールなど)による処理に耐える。
【0076】
樹脂の合成
【0077】
2種類の異なる樹脂を合成した:
【0078】
ペンダント状分岐
樹脂(
図2に図式的に示される):
トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルアクリレート(10mmol)、ビニルトリメトキシシラン(1mmol)及びアゾビスイソブチロニトリル(0.1mmol)を、室温にて、ドライキシレン(20mL)中に溶解し、窒素で5分間パージした。このモノマー溶液をその後65℃まで加熱し、24時間その温度で維持した。
【0079】
直線状PDMS樹脂(
図3):
アミン末端化PDMS(10mmol)、ビスフェノールA (10mmol) 及びパラホルムアルデヒド(40mmol) を、500mLの丸底フラスコ中で、150mLのクロロホルムに溶解した。この混合物を6時間還流下で加熱し、澄んだ淡黄色の溶液を得た。真空下で溶媒を除去した後、粘性の残渣をジクロロメタンに溶解し、飽和NaHCO
3水溶液と蒸留水で5回洗浄した。洗浄溶液を真空下で乾燥した後、粘性の淡黄色の液体生成物が得られた。
【0080】
布帛の前処理
【0081】
1cm×1cmの綿ファブリック又はPETファブリックを、エタノールで洗浄し、オーブンにて80℃・10分間乾燥した。それとは別に、水酸化アンモニウム(2.75mL)の存在下で、エタノール/水溶液(75mL、80%v/v)中で、テトラエトキシシラン(10mmol)をアルカリ加水分解することによって、シリカゾルを調製した。ファブリックをプラズマ洗浄し、その後、前記ゾルに5分間浸漬し、室温で乾燥した。この処理を3回繰り返した。最終的に、前記ファブリックを、Ludox HSシリカの懸濁液(~5wt.%)に浸し、その後オーブンにて80℃で一晩乾燥した。
【0082】
フッ素フリーの疎油性ファブリックの製造
【0083】
上述のように合成した
樹脂を使用して、室温でディップコーティング又はスプレーコーティングすることによって(
図4)、フッ素フリーの疎油性コーティングの薄層を、前記前処理済みのファブリックに形成した。前記綿ファブリックを3回コーティングし、その後オーブンにて100℃で一晩乾燥した。
200℃で1時間硬化させたこと以外は同じ方法により、疎油性のPETファブリックを調製した。
[実施例2]
【0084】
この実施例は、本開示のフィルムについて記載する。
【0085】
図7は、分岐ペンダント状PDMS樹脂の一例を示す。前記PDMS樹脂は、PDMS骨格を有するPDMSポリマーを含む。PDMSポリマーは、多官能性前駆体(例えば、少なくとも2つのアクリレート基を有する二官能性前駆体)を使用して形成することができる。前記PDMS樹脂は無色であってもよい。
【0086】
図8は、PDMS樹脂の一例を示す。前記PDMS樹脂は、分岐ペンダント状PDMS樹脂の一例である。前記PDMS樹脂は、PDMSの骨格と
シロキサン結合を含む枝を有するPDMSポリマーを含む。前記PDMSポリマーは、多官能性前駆体(例えば、少なくとも3つのビニル基を有する前駆体)を使用して形成することができる。
[実施例3]
【0087】
この実施例は、本開示の層を形成する方法を提供する。
【0088】
graft-to法(例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング、エマルション/フォームコーティングなど)以外に、graft-from法(例えば、
図9に示すように)によって前記コーティングを基材に適用できる。開始剤は、可逆的不活性化ラジカル生成剤、例えば、1以上の有機ハロゲン化部分を含む化合物(例えばハロゲン化アルキル)など、又は1以上のアルコキシアミン部分、又は適切な連鎖移動剤、例えば、1以上のチオカルボニルチオ部分などであってもよい。モノマーは、1以上の脂肪族部分及び/又は脂肪族基を含む1以上のアルキルシリル化合物であってもよい。ハロゲン化アルキルは、重合の開示に効果的であった。
【0089】
表面開始原子移動ラジカル重合(ATRP)による疎油性コーティング方法
【0090】
合成の一例:
クリーニングしたファブリック試料(~1.0×1.0インチ)を、まず水とアセトンですすぎ、窒素中で乾燥した。乾燥したファブリックを、2-ブロモ-2-メチルプロピオニルブロミド(2mmol)、トリメチルアミン(1mmol)及び触媒量の4-ジメチルアミノピリジンを含む30mLのテトラヒドロフラン(THF)の溶液に、室温で24時間浸し、続いてTHFとエタノールですすいだ。ATRP開始剤で機能化(官能化)した前記ファブリックを、その後、アルキルシリルモノマー、CuBr、及びN,N',N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミンを含むDMF(CuBr/PMDETAのモル比は0.5-1)溶液に、24時間浸した。得られたコーティングファブリックを、その後THFで洗浄し、乾燥して、疎油性コーティングを有するファブリックを製造した。
【0091】
初期及び疎油性のファブリックのSEM画像を
図10に示す。ファブリック表面上の均一なコーティング層が観察された。様々な材質からなる疎油性ファブリックの写真が
図11で確認できる。
【0092】
本開示は、特定の実施例を参照して示され、記載されてきたが、本開示の精神及び範囲を逸脱することなく、形態及び詳細に関する様々な変更が可能であることが当業者によって理解される。
【外国語明細書】