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特開2022-169782熱可塑性シリカナノ材料を使用するサイズ選択精製
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  • 特開-熱可塑性シリカナノ材料を使用するサイズ選択精製 図1A
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  • 特開-熱可塑性シリカナノ材料を使用するサイズ選択精製 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169782
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】熱可塑性シリカナノ材料を使用するサイズ選択精製
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20221101BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20221101BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20221101BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
C12M1/00 A
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139060
(22)【出願日】2022-09-01
(62)【分割の表示】P 2019572747の分割
【原出願日】2018-06-29
(31)【優先権主張番号】62/527,659
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】519461473
【氏名又は名称】サーキュロミクス インク
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ケルビン ジェン ファン リュウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ダンカン キルバーン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフェリー マイケル バーク
(57)【要約】
【課題】処理中に核酸に損傷を与えず、大小両方の核酸分子の迅速なサイズ選択を可能にする方法およびキットを提供する。
【解決手段】本開示は、核酸を含有する試料を精製して、サイズカットオフを上回るか、またはカットオフを下回るか、またはサイズの定義された域内のいずれかである所望するサイズ範囲の単離された核酸を得るための方法であって、a)核酸含有試料と結合緩衝液を合わせて結合混合物を提供するステップと、b)結合混合物とシリカナノ膜を接触させるステップであり、シリカナノ膜が結合混合物から所望するサイズ範囲内の核酸を吸着する、ステップと、c)残存する試料から結合した核酸を分離するステップとを含む方法を対象とする。シリカナノ膜、結合緩衝液および1または複数の洗浄緩衝液を含むキットも本明細書で提供する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を含有する試料を精製して所望するサイズ範囲の単離された核酸を得るための方法であって、
a.核酸含有試料と結合緩衝液を合わせて結合混合物を提供するステップと、
b.ナノ膜が前記結合混合物中の核酸に結合するように、前記結合混合物と前記ナノ膜を接触させるステップと、
c.前記核酸と前記ナノ膜との結合の前、結合の間または結合の後に、サイズに基づいて前記核酸を選択するステップと、
d.残存する試料から結合した核酸を分離するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ステップcが、核酸結合後に前記ナノ膜を洗浄して、特定のサイズ範囲の核酸を選択的に除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップcが、特定のサイズ範囲の核酸を選択的に結合することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップcが、特定のサイズ範囲の結合した核酸を選択的に溶出させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップcが、ステップaの前に、核酸のサイズ特異的沈殿を行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップcが、核酸結合中に、核酸のサイズ特異的沈殿を行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップcが、溶出後に、核酸のサイズ特異的沈殿を行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記所望するサイズ範囲の前記核酸が、前記ナノ膜に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記所望するサイズ範囲の前記核酸が、前記ナノ膜に結合しない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ膜が、シリカナノ膜を含み、
前記方法が、
a.洗浄溶液を前記シリカナノ膜と接触させるステップと、
b.前記洗浄溶液を前記シリカナノ膜との接触から除去するステップと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
核酸の前記所望するサイズ範囲が、カットオフ値を上回る全サイズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
核酸の前記所望するサイズ範囲が、カットオフ値を下回る全サイズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
核酸の前記所望するサイズ範囲が、低いカットオフ値を上回り、高いカットオフ値を下回るサイズ範囲域である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
特定のサイズ域の核酸が、2つ以上の連続した精製ステップによって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ステップcが、組み合わせて、または連続して使用される2つ以上のサイズ選択ステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
カットオフ値を下回る核酸サイズを含む第1の溶出液およびカットオフ値を上回る核酸サイズを含む第2の溶出液が、単一の核酸含有試料から生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
タンパク質が、前記核酸と共精製される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
特定のサイズ範囲の核酸を選択的に結合することが、少なくとも1つの結合条件によって決定され、前記少なくとも1つの結合条件が、
a.pH、
b.塩濃度、
c.カオトロピック塩の有無、
d.1価および/または2価塩の有無、
e.アルコールの種類および濃度、
f.分子クラウダー濃度、
g.分子クラウダーの種類および分子量、
h.結合時間、
i.結合中の温度、
j.変性剤の有無、
k.ポリアミンの有無、
l.その他の添加分子の有無、
m.緩衝液体積、
n.結合中の試験管の動き、例えば、ボルテックス、遠心分離、震盪、回転、
o.ナノ膜のサイズ、
p.ナノ膜の形状、
q.ナノ膜の3D構造、
r.ナノ膜の数、および
s.それらの組合せ
からなる群から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
サイズ特異的沈殿が、沈殿緩衝液の少なくとも1つの条件によって促進され、前記沈殿緩衝液の少なくとも1つの条件が、
a.分子クラウダー濃度、
b.分子クラウダーの分子量、
c.分子クラウダーの種類、
d.カオトロピック塩の有無、
e.1価および/または2価の塩の有無、
f.塩濃度および種類、
g.アルコールの種類および濃度、
h.ポリアミンの有無、
i.変性剤の有無、
j.その他の添加分子の有無、
k.pH、
l.沈殿/結合時間、
m.沈殿/結合温度、
n.沈殿/結合体積、
o.遠心分離時間、
p.遠心分離温度、および
q.それらの組合せ
からなる群から選択される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
核酸結合後に前記ナノ膜を洗浄して、特定のサイズ範囲の核酸を選択的に除去することが、洗浄緩衝液の少なくとも1つの条件によって決定され、前記洗浄緩衝液の少なくとも1つの条件が、
a.pH、
b.塩濃度、
c.カオトロピック塩の有無、
d.1価および/または2価塩の有無、
e.アルコールの種類および濃度、
f.分子クラウダー濃度、
g.分子クラウダーの種類、
h.洗浄時間、
i.洗浄中の温度、
j.変性剤の有無、
k.ポリアミンの有無、
l.その他の添加分子の有無、
m.緩衝液体積、および
n.それらの組合せ
からなる群から選択される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
特定のサイズ範囲の核酸を選択的に溶出させることが、少なくとも1つの溶出条件によって決定され、少なくとも1つの前記溶出条件が、
a.pH、
b.塩濃度、
c.カオトロピック塩の有無、
d.1価および/または2価塩の有無、
e.アルコールの種類および濃度、
f.分子クラウダー濃度、
g.分子クラウダーの種類、
h.溶出時間、
i.溶出中の温度、
j.変性剤の有無、
k.ポリアミンの有無、
l.その他の添加分子の有無、
m.溶出体積、
n.溶出中の試験管の動き、
o.シリカナノ膜のサイズ、
p.シリカナノ膜の形状、
q.シリカナノ膜の3D構造、および
r.それらの組合せ
からなる群から選択される、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ナノ膜が、
a.アミノプロピル、
b.クロロプロピル、
c.オクタデシル、
d.オクチル、
e.4級アンモニウム基、
f.ジエチルアミノエチル基、
g.スルホン酸基、
h.スルフヒドリル、
i.チオール基、
j.カルボキシル基、
k.ヒドロキシル基、
l.フェニル基、
m.アルデヒド基、
n.シラン、
o.ハロゲン化物、
p.キトサン、
q.ビオチン、
r.ストレプトアビジン、
s.レクチン、
t.抗体、
u.タンパク質、
v.酵素、
w.アミノ酸、
x.オリゴヌクレオチド、
y.脂質、
z.ポリエチレングリコール、
aa.デキストラン、および
bb.ポリマー
からなる群から選択される1つまたは複数の基で官能基化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
ナノ膜、結合緩衝液および1つまたは複数の洗浄緩衝液を含む、核酸を含有する試料を精製して所望するサイズ範囲の単離された核酸を得るためのキット。
【請求項24】
前記結合緩衝液が、分子クラウダーを含む、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記1つまたは複数の洗浄緩衝液が、イソプロピルアルコールを含む、請求項23または24に記載のキット。
【請求項26】
前記分子クラウダーが、ポリエチレングリコールまたはポリビニルピロリドンである、請求項24に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全体の開示が参照として本明細書に組み込まれる2017年6月30日出願の米国特許仮出願第62/527659号の利益を主張し、その出願日に依存する。
【背景技術】
【0002】
近年、第3世代のシークエンシング技術は、ゲノムの構造-機能の理解および参照構築物の精度を激変させた。Pacific Biosciences(Menlo Park、CA)、Oxford Nanopore Technologies Limited(Oxford、United Kingdom)、10X Genomics(Pleasanton、CA)およびBioNano Genomics(San Diego、CA)による変革的な進歩により、最高品質の高分子(HMW)DNAおよび高分子DNAを効率的に処理するための新技術の必要性が再浮上してきた。しかし、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)、沈殿、ならびにゲルプラグ抽出および透析精製等のHMW DNAを処理および分析するための技術の大部分は元々、分子生物学の黎明期に開発されたものであり、非常に時間がかかり面倒である。
【0003】
ほとんどのロングリードシークエンシング技術のライブラリー調製は、類似のワークフローに従う。まず、HMW DNA(50kb~Mb+)を単離しなければならない。次に、様々な酵素ステップを使用するシークエンシングのためにDNAを調製する。酵素処理中、サイズ選択を使用して所望するライブラリー生成物から小さなバックグラウンド分子を除去する。これは、ほぼBeckman Coulter AMPURE(登録商標)ビーズのみで行われる。しかし、ビーズが絡み合い、最長の最も所望されるDNA分子が優先的に失われるため、AMPURE(登録商標)によるHMW DNAの回収効率は低い(<25%)。ライブラリーが長くなるにつれて、多数のAMPURE(登録商標)ステップを必要とするライブラリー調製では、この問題は一層深刻になる。さらに、AMPURE(登録商標)のサイズ選択カットオフ(100bp~1000bp)は、ほとんどのロングリードライブラリーには小さすぎる。したがって、追跡サイズ選択は、最大分子量のライブラリー生成物のみを単離することによってリード長を長くするSage Science’s BLUEPIPPIN(商標)(Beverly、MA)等のPFGE装置を使用して実施することが多い。BLUEPIPPIN(商標)は、大きいDNA(100bp~50kb)をサイズ選択することができるが、これは時間がかかり(8.5時間)、長いPFGE工程の間にDNAも損傷を受け、その後の酵素的修復が必要となる。サイズ選択ステップは全て、比較的高濃度(>50ng/μl)で最適に行われなければならず、所望するシークエンシング長が増加するにつれて、一定のモル濃度を維持するためにDNAの質量濃度も増加させなければならない。したがって、100kbpから1Mbpの範囲のリードについては、質量濃度は、Illuminaシークエンシングに典型的な350~600bpの断片長を有する同じモル濃度の試料よりも200~3000倍高くすることが必要である。AMPURE(登録商標)およびBLUEPIPPIN(商標)両方の回収率は、高濃度では低下する。
【0004】
したがって、AMPURE(登録商標)およびPFGE精製の別々のステップを必要とせず、処理中に核酸に損傷を与えない、大小両方の核酸分子の迅速なサイズ選択を可能にする技術が当業界では依然として所望されている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、核酸を含有する試料を精製して所望するサイズ範囲の単離された核酸を得るための方法であって、a)核酸含有試料と結合緩衝液(binding buffer)を合わせて結合混合物を提供するステップと、b)結合混合物とナノ膜(例えば、シリカナノ膜等)を接触させるステップであり、ナノ膜が結合混合物中の核酸(例えば、所望するサイズ範囲内)に結合する、ステップと、c)核酸とナノ膜との結合の前、その間またはその後に、サイズに基づいて核酸を選択するステップと、d)残存する試料から結合した核酸を分離するステップとを含む方法を対象とする。一部の実施形態では、タンパク質が核酸と共精製される。
【0006】
一部の実施形態では、ステップc)は、核酸結合後にナノ膜を洗浄して、特定のサイズ範囲の核酸を選択的に除去することを含む。ある特定の実施形態では、ステップc)は、特定のサイズ範囲の核酸を選択的に結合することを含む。所望により、ステップc)は、特定のサイズ範囲の結合した核酸を選択的に溶出させることを含む。一部の実施形態では、ステップc)はステップa)の前に核酸のサイズ特異的沈殿を実施することを含む。一部の実施形態では、ステップc)は核酸結合中に核酸のサイズ特異的沈殿を実施することを含む。ある特定の実施形態では、ステップc)は溶出後に核酸のサイズ特異的沈殿を実施することを含む。任意選択で、ステップc)は、組み合わせて、または連続して使用される2つ以上のサイズ選択ステップを含む。
【0007】
ある特定の実施形態では、所望するサイズ範囲の核酸が、ナノ膜に結合し、一方その他の実施形態では、所望するサイズ範囲の核酸が、ナノ膜に結合しない。典型的に、ナノ膜はシリカナノ膜を含み、この方法は、a)洗浄溶液をナノ膜と接触させるステップと、b)洗浄溶液をナノ膜との接触から除去するステップとを含む。
【0008】
ある特定の実施形態では、核酸の所望するサイズ範囲はカットオフ値を上回るサイズ全てを含み、一方その他の実施形態では、核酸の所望するサイズ範囲はカットオフ値を下回るサイズ全てを含む。一部の実施形態では、核酸の所望するサイズ範囲は、低いカットオフ値を上回り、高いカットオフ値を下回るサイズ範囲域である。任意選択で、特定のサイズ域の核酸は、2つ以上の連続した精製ステップによって生成される。一部の実施形態では、カットオフ値を下回る核酸サイズを含む第1の溶出液およびカットオフ値を上回る核酸サイズを含む第2の溶出液は、単一の核酸含有試料から生成される。
【0009】
典型的に、この方法は、少なくとも1つの結合条件によって決定された特定のサイズ範囲の核酸を選択的に結合するステップを含み、少なくとも1つの結合条件は、
a.pH、
b.塩濃度、
c.カオトロピック塩の有無、
d.1価および/または2価塩の有無、
e.アルコールの種類および濃度、
f.分子クラウダー濃度、
g.分子クラウダーの種類および分子量、
h.結合時間、
i.結合中の温度、
j.変性剤の有無、
k.ポリアミンの有無、
l.その他の添加分子の有無、
m.緩衝液体積、
n.結合中の試験管の動き、例えば、ボルテックス、遠心分離、震盪、回転、
o.ナノ膜のサイズ、
p.ナノ膜の形状、
q.ナノ膜の3D構造、
r.ナノ膜の数、ならびに
s.それらの組合せ
からなる群から選択される。
【0010】
一部の実施形態では、サイズ特異的沈殿は、沈殿緩衝液の少なくとも1つの条件によって促進され、沈殿緩衝液の少なくとも1つの条件は、
a.分子クラウダー濃度、
b.分子クラウダーの分子量、
c.分子クラウダーの種類、
d.カオトロピック塩の有無、
e.1価および/または2価の塩の有無、
f.塩濃度および種類、
g.アルコールの種類および濃度、
h.ポリアミンの有無、
i.変性剤の有無、
j.その他の添加分子の有無、
k.pH、
l.沈殿/結合時間、
m.沈殿/結合温度、
n.沈殿/結合体積、
o.遠心分離時間、
p.遠心分離温度、および
q.それらの組合せ
からなる群から選択される。
【0011】
ある特定の実施形態では、ナノ膜は、
a.アミノプロピル、
b.クロロプロピル、
c.オクタデシル、
d.オクチル、
e.4級アンモニウム基、
f.ジエチルアミノエチル基、
g.スルホン酸基、
h.スルフヒドリル、
i.チオール基、
j.カルボキシル基、
k.ヒドロキシル基、
l.フェニル基、
m.アルデヒド基、
n.シラン、
o.ハロゲン化物、
p.キトサン、
q.ビオチン、
r.ストレプトアビジン、
s.レクチン、
t.抗体、
u.タンパク質、
v.酵素、
w.アミノ酸、
x.オリゴヌクレオチド、
y.脂質、
z.ポリエチレングリコール、
aa.デキストラン、および
bb.ポリマー
からなる群から選択される1つまたは複数の基で官能基化されている。
【0012】
本明細書では、ナノ膜ディスク、結合緩衝液および1つまたは複数の洗浄緩衝液を含む、核酸含有試料を精製して所望するサイズ範囲の単離された核酸を得るためのキットも提供する。一部の実施形態では、結合緩衝液は分子クラウダー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等)を含む。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の洗浄緩衝液は、イソプロピルアルコールを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、NANOBIND(商標)表面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示した図であり、SiOの厚さに基づいて微調整することができるマイクロスケールの折り畳みおよびナノスケールのシリカ薄層の階層状の層を示している(上-20ナノメートル(nm)のSiO、下-150nmのSiO、左-低倍率、右-高倍率)。
図1B図1Bは、低費用で縮小することができる熱収縮による、磁気NANOBIND(商標)およびNANOBIND(商標)ディスクの製作工程を示す。
図1C図1Cは、手動(上)および自動(下)のプラットフォームを使用した核酸抽出の方法を示す。
図1D図1Dは、磁気粒子およびスピンカラムで使用した手順に類似した、NANOBIND(商標)を使用した核酸の結合、洗浄および溶出を示す。処理にかかる時間は、典型的にはわずか15分である。図1A~1Dは、詳細な説明においてさらに記載されている。
【0014】
図2】熱可塑性シリカナノ材料を使用するサイズ選択精製を実現するための様々な工程を示した図である。「投入試料DNA」は、例えば、シークエンシングライブラリー調製の結果である任意の典型的なDNA含有溶液であってもよい。フローチャートの「NANOBIND」は、本明細書で1)~3)で定義した工程を表し、NANOBINDとNANOBINDに結合したDNA(Nanobindの後の括弧内に挙げた結合したDNAのサイズ範囲)および結合緩衝液を生じ、アルコールをさらに含有していてもよい(BIND BUFFERの後の括弧内に挙げた結合緩衝液中のDNAのサイズ範囲)。洗浄ステップは、「洗浄」(WASH)によって表し、NANOBINDから洗浄されるDNAサイズの範囲も示されている。NANOBINDに結合したDNAのサイズ範囲およびその後の溶出含有物は、フローチャートの下に示す。
【0015】
図3】実施例1で記載したような結合緩衝液に様々なイソプロピルアルコール(IPA)濃度を用いてシリカナノ膜単離法を使用した、2本鎖DNA(dsDNA)のサイズ依存回収を示した図である。
【0016】
図4A図4Aは、実施例2で記載したような0.6Xおよび1X AMPURE(登録商標)ビーズを使用したオリゴヌクレオチドの除去と比較した、NANOBIND(商標)を使用した高分子量(MW)ゲノムDNA(gDNA)(50kb~300kb)からのCy5標識1本鎖オリゴヌクレオチド(20ヌクレオチド長)の除去の有効性を示した図である。両方法とも、オリゴヌクレオチドを検出不可能なレベルまで効率的に除去した。
図4B図4Bは、実施例2で記載した0.6Xおよび1X AMPURE(登録商標)ビーズを使用したオリゴヌクレオチドの除去と比較した、NANOBIND(商標)を使用した高分子量(MW)ゲノムDNA(gDNA)(50kb~300kb)からのCy5標識2本鎖オリゴヌクレオチド(20塩基対長)の除去の有効性を示した図である。両方法とも、オリゴヌクレオチドを検出不可能なレベルまで効率的に除去した。
図4C図4Cは、使用した濃度、100ng/μlで高分子量DNAの回収効率が低いAMPURE(登録商標)ビーズと比較して、NANOBIND(商標)の回収効率が高いことを示す、QUBIT(商標)定量アッセイによるDNA回収の定量を示す。実施例2を参照のこと。
【0017】
図5】実施例3で記載したような洗浄ステップと同じ結合条件であるが、様々なNaCl濃度を用いたシリカナノ膜単離法を使用した、2本鎖DNA(dsDNA)のサイズ依存回収を示した図である。左の列は投入試料で、ラムダDNAおよび100bp plusラダー(100~3000bp)を含有する。サイズカットオフは、洗浄緩衝液中のNaClが減少するにつれてより大きなDNAに増加する。
【0018】
図6】投入DNA(左の列)ならびに実施例4で記載したようにpH=9、10、11、12および13で実施したNANOBIND(商標)サイズ選択精製から回収されたDNA(右の列)(左から2番目の列から、左から右へ)を示した図である。緑色に着色されたバンドはラムダDNAを示し、50bpラダーはSYBR(登録商標) Goldインターカレーション色素で染色した。赤色に着色されたバンドは、Alexa647標識20ヌクレオチド(nt)ssDNAオリゴヌクレオチド(オリゴ)からの蛍光を示す。NANOBIND(商標)サイズ選択精製後、赤色のバンドの強度は著しく減少し、NANOBIND(商標)がこれらの短い1本鎖DNAオリゴマーの除去に有効であることを示している。ラムダDNAバンドは、pH=12および13で実施した精製には存在せず、この精製は長いdsDNAを同様に効率的に除去することを示している。
【0019】
図7A図7Aは、本明細書で記載したような大核酸サイズ選択法を使用した、実施例5で記載したような1kbプラスラダーを添加したλDNAのNANOBIND(商標)サイズ選択精製を示した図である。大核酸サイズ選択法は、ポリビニルピロリドン(PVP)による沈殿を使用して実施した。PVPは、核酸沈殿を長さによって調整するための分子クラウダーとして作用する。
図7B図7Bは、PVP濃度を変化させることによって、1000bp~10kbまで調整することができるカットオフサイズ(10%以下の回収率を有する最高Mwバンドとして定義される)を示す。実施例5を参照のこと。
【0020】
図8】実施例6で記載したようなNANOBIND(商標)サイズ選択精製法を使用したdsDNAPCR生成物のサイズ依存回収を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、NANOBIND(商標)等のナノ膜を使用した、核酸含有試料からの大小両サイズの核酸分子の迅速なサイズ選択方法を対象とする。NANOBIND(商標)等のナノ膜は、安価に製造することができ、全般的にその他の核酸結合マトリクスよりも核酸含有試料から高品質の核酸を抽出することができる、新規熱可塑性ナノ材料である。例えば、全体が参照として本明細書に組み込まれる参照文献5を参照のこと。ナノ膜の低剪断、非多孔性基材は、DNA等の核酸を、例えば、ディスクの表面に縮合させ、核酸を断片化およびその他の損傷から保護する新規テンタクル結合機構を使用して、高品質な高分子量DNAの抽出および/または精製を可能にする。結合機構に基づいた特有の縮合により、ナノ膜の結合特性は、広範な範囲の核酸サイズ選択能力を付与するために微調整することができる。NANOBIND(商標)等のシリカナノ膜を使用して、本発明者等は非効率的なAMPURE(登録商標)精製および遅いゲル分離の代わりとなり得る、例えば、本明細書に記載したような1回の結合、洗浄および溶出工程による高効率な大小両方の核酸のサイズ選択を可能にした。
【0022】
次世代のシークエンシング(NGS)は、研究および臨床応用の両方によって驚異的な成長を遂げている。第3世代のシークエンシング技術は、ヒト参照ゲノムの品質を継続的に高めながら、増加し続ける植物、動物および微生物の数々のデノボ配列決定のために使用されている。NGSはまた、遺伝的多様性、メタゲノム解析およびエピジェネティクス等の基本的な生物学をより理解するために使用されている。しかし、液体細胞診、非侵襲性出生前検査および感染症検査等の臨床検査の成熟が、近い将来に主要な原動力になる可能性がある。
【0023】
サイズ選択精製は、NGSライブラリー調製の欠くことのできない部分であり、これは、酵素反応をクリーンアップして、適切に調製されたライブラリー分子のみを確実に配列決定するために、スピンカラム、磁気粒子およびゲル精製の組合せを使用した、10もの精製ステップを必要とするいくつもの調製を含む。典型的に、サイズ選択精製は第1に、適切に調製されたライブラリー分子からアダプター二量体、オリゴ、酵素および塩等の低分子を除去するために使用される。場合によっては、アダプター二量体の十分な除去を確実にするために、二重精製が必要である。第2のサイズ選択ステップは、特定のサイズのライブラリー分子のみをさらに単離するために使用されることが多い。多数の精製ステップは、高い回収率が最も重要であることを意味する。ショートリードNGSは、サイズ選択が不十分なため、特に、メイトペアシークエンシング等の方法において、正確なアラインメントおよびアセンブリーができない。ロングリードNGSでは、過剰な短DNAが平均リード長を損ない、アセンブリーの品質を低下させる。
【0024】
現在の技術では、上記のサイズ選択の必要性全てを満足させることはできない(表1)。Beckman Coutler AMPURE(登録商標)磁気粒子は、処理の簡便さ、調整可能なカットオフ(100bp~1kb)および自動化能力のため、広く使用されている。スピンカラムも使用することができるが、カットオフは低く(150bp)、調整が不可能で、適用が制限される。ロングリードおよびメイトペアシークエンシング等の高いカットオフを必要とするNGS適用では、甚だしく面倒で、時間がかかり、変動が大きいにも関わらず、ゲル精製が唯一の方法である。ナノ膜を使用するサイズ選択は、NGSライブラリー調製における多数の精製ステップを解決するために、ゲル精製の柔軟な選別能力を備えながら磁気粒子の速度をもたらす唯一の技術である。
【0025】
さらに例示するために、表1は、NANOBINDサイズ選択精製法は、NGSライブラリー精製のために全く異種の方法を使用する必要性を排除することを示す。ゲル精製に対抗するために、この方法はAMPURE(登録商標)粒子よりも100倍高いサイジングカットオフを有する。連続精製を不要にするために、AMPURE(登録商標)よりも20倍近く小さい分子を除去する。全サイズのDNAライブラリーについて高い回収効率を有し、処理も迅速である。
【表1】
【0026】
NANOBIND(商標)は、伝統的なカラムおよび磁気粒子を上回る数多くの利益をもたらす核酸試料調製技術である。NANOBIND(商標)は、多孔性膜または数百万の個々の微粒子というよりもむしろミクロおよびナノ構造のシリカで高密度に覆われた固体磁気ディスク(直径1~5mm)である。ディスクは、熱収縮フィルムから、工業的にロールツーロール方式を使用してディスク当たり少額の費用で安価に製造される。ナノ構造のディスク形式は比類のない結合能、DNA品質および純度を可能にする。1枚のディスクが、同程度のカラムおよび粒子法の数百倍である10ミリグラム超のDNAを結合することができる。ディスク形式はまた、DNAを損傷から保護し、細胞、細菌、血液および植物を含む種々の試料からの高分子量(MW)DNAの迅速な抽出を可能にする。ディスク形式は、ゲノムマッピングのために十分な品質である超高MWメガベースDNAを抽出することができる唯一の固相技術である。処理は、通常の機器を使用して手動または自動で実施することができる結合、洗浄および溶出工程によって行われる。高いDNA品質は、PacBioおよびOxford Nanoporeを含むプラットフォームで並外れたシークエンシングデータをもたらす。ディスク形式はまた、流体のデッドボリュームを排除し、より効率的な洗浄によって高い純度をもたらし、汚染の持ち込みを最小限に抑える。さらに、NANOBIND(商標)ディスクのサイズおよび緩衝液の体積を低減することによって、1μLおよび10細胞というわずかな試料を効率的に処理することができる。これらの特性は、NANOBIND(商標)ディスクが、いかなる磁気粒子またはスピンカラムシステムよりも広範なサイズ選択能力、高い収率および高い純度を実現するのを可能にする。
【0027】
本明細書でまた記載したように、NANOBIND(商標)等のナノ膜でDNAサイズ選択を実施するために使用した新規テンタクル結合機構は、テンタクル結合機構の性能とAMPURE(登録商標)またはスピンカラム等の既存の先行技術の方法の性能との間にいくつかの顕著な差をもたらす。ナノ膜への核酸結合は、主に沈殿力によって引き起こされ、ナノ膜は沈殿種としての役割を果たし、それによってDNAはNANOBIND(商標)ディスクの表面に縮合する。DNA核酸分子の大部分はディスク自体よりもその他の核酸分子に結合する。核酸分子の小画分は沈殿した分子の残部をナノ膜に留める。この機構は沈殿条件を調節することができることを意味し、したがって、沈殿してその後結合する核酸と結合しない核酸との間のサイズカットオフはAMPURE(登録商標)ビーズよりも大きい分子量に変化することができない。NANOBIND(商標)では、マイクロおよびナノ構造の表面がDNA濃縮の効率的な種として、および沈殿したDNAを固く係留し、その後放出するための非多孔性の係留として作用するので、このアプローチは可能である。AMPURE(登録商標)ビーズでは、磁気ビーズおよびDNAが不溶性DNAの絡み合いを引き起こし、DNAを溶出させることができなくなるので、このアプローチは不可能である。スピンカラムでは、沈殿したDNAがカラムを詰まらせるので、このようなアプローチはまた不可能である。
【0028】
したがって、ナノ膜を使用するサイズ選択は、いかなる磁気粒子またはカラム法よりも100倍広範な範囲のカットオフ(100bp~100kb)を有する。ナノ膜を使用するサイズ選択はまた、磁気粒子および自動化ゲル精製の両方よりも高MWgDNAライブラリーの5倍近く高い回収率を有し、試薬費用および試料投入を>50%低減する。同時に、NANOBIND(商標)はアダプター二量体混入が19倍近く少ない高い精製効率を有し、シークエンシングリードの無駄を抑える。最後に、ナノ膜を使用するサイズ選択はゲル精製よりも8.5倍迅速で、遅い8.5時間の代わりとなる。BluePippin精製は、<1時間での迅速な、結合、洗浄および溶出工程である。
【0029】
NGSライブラリー調製のために使用することに加えて、ナノ膜を使用したサイズ選択の工程は、PCR精製、酵素反応クリーンアップ、またはサイズに基づいて核酸分子を分離することが必要な任意の適用のために使用することができる。
【0030】
本明細書でまた記載したように、NANOBIND(商標)等のナノ膜を使用する小サイズ選択工程は、10bp~30000bpのサイズ範囲の核酸の調整可能なカットオフを可能とする。小サイズ選択工程は、高MWDNAを含むカットオフ値を上回るライブラリー生成物を回収しながら、dNTP、過剰なプライマー、酵素およびプライマー二量体等の反応副生成物等のカットオフを下回る低分子を排除することができる。AMPURE(登録商標)またはスピンカラムを使用する方法等のその他の方法を使用して得られる核酸の精製効率および回収率と比較して、高MWDNA(例えば、50kb~1Mb+)の優れた回収率(例えば、>90%)を維持しながら高い精製効率(>99.9%)を得ることができる。
【0031】
本明細書で記載したように、NANOBIND(商標)等のナノ膜を使用する大サイズ選択工程は、200bp~100kbのサイズ範囲の核酸の調整可能なカットオフを可能とする。大サイズ選択工程を使用して、例えば、長いシークエンシングリード長のためのシークエンシングライブラリーを得るために、カットオフを下回る核酸分子を排除することができる。本明細書で以下に記載するように、分子クラウディングを使用して、所望しない短いライブラリー生成物を所望する長いライブラリー生成物から分離し、時間がかかる面倒なPFGE分離を、非常に迅速な結合、洗浄および溶出工程に置き換えることによってライブラリー調製を加速することができる。例えば、200bp~100kb範囲に亘る高精製効率(例えば、>99%)は、高MWDNA(例えば、50kb~1Mb+)の高効率回収(例えば、>90%)を迅速に、例えば、<1時間の工程で実現することができる。対照的に、その他の磁気粒子またはスピンカラム技術は、キロベース範囲のサイズ選択を行うことができない。
【0032】
本明細書でまた記載したように、最小と最大の間のDNAサイズの帯域の選択を可能にするために、いくつかのサイズ選択手法を連続して実施することができる。これは、例えば、2つの小サイズ選択、2つの大サイズ選択の組合せ、または小サイズ選択に続く大サイズ選択、または大サイズ選択に続く小サイズ選択であってもよい。
【0033】
本明細書でまた記載したように、サイズ除去を使用してカットオフを上回る核酸を除去することができる。これは、まず試料にナノ膜を使用する、大または小サイズ選択を実施し、次にカットオフを下回る未結合核酸を含有する結合緩衝液を取り出し、この核酸を回収するために第2のナノ膜精製を実施することによって実現する。
【0034】
本明細書でまた記載したように、タンパク質は核酸と共精製することができる。ほとんどの精製方法の目的は、反応混合物を取り出し、これらに限定されないが、酵素、緩衝液およびdNTPを含むその他の試薬全てを除去しながらサイズ選択された核酸画分のみを戻すことである。本明細書で記載したように、本方法は、一部の実施形態では、核酸および酵素の両方が、例えば、共精製において試薬の残部から単離され得るように、核酸およびタンパク質を一緒に精製することを可能にする。
【0035】
核酸を単離する方法
本開示は、例えば、本明細書で記載したような核酸を結合する(例えば、吸着する)、例えば、シリカナノ膜を含む方法を記載する。本明細書で使用したように、用語「ナノ膜」は、ポリマーコア上の数十ナノメートルからマイクロメートルのサイズ範囲のマイクロ皺、ナノ皺および薄片等の構造を含むことができるシリカ、金属またはその他の層の3次元構造を意味する。用語「薄層」、「皺」、「折り畳み」、「薄片」、「チップ」等は、ナノ膜表面のこのような構造の外観を記載するために使用した説明的用語である。これらの3次元構造は、ポリマーコアの熱収縮によって誘導される応力の結果として生じる。シリカナノ膜形態の例については、例えば、図1Aを参照のこと。
【0036】
ナノ膜は、さらに特性を付与するために層またはコーティングをさらに含んでいてもよい。例えば、磁石によるナノ膜の操作を可能にするために、例えば、鉄、ニッケルまたはパーマロイ等の磁気層をシリカ層の、例えば、下、上、または間に堆積させてもよい。
【0037】
ナノ膜はシリカでコーティングして、シリカナノ膜と称することができる。本明細書で使用した用語「シリカ」は、酸化ケイ素、二酸化ケイ素ならびにSiO結晶およびSiOのその他の形態等の二酸化ケイ素誘導体、例えば、SiOから構成される珪藻、ゼオライト、二酸化ケイ素アモルファス、ガラス粉末、ケイ酸、水ガラス、水晶、ホウケイ酸、ケイ酸アルミニウムおよび活性化ケイ酸を意味する。ナノ膜は、実際のシリカを含有せず、代わりに、同じ機能性を実現するために、シラン、シラノール機能化デキストラン、シラノールまたはシロキサン等のシリカ様ポリマーまたはコーティングで覆われていてもよい。
【0038】
さらに、表面は、ナノ膜のサイズ選択結合および放出特性を増強するために、その他の基で官能基化またはコーティングされていてもよい。官能基化は、これらに限定されないが、アミノプロピル基、クロロプロピル基、オクタデシル基、オクチル基、4級アンモニウム基、ジエチルアミノエチル基、スルホン酸基、スルフヒドリル基、チオール基、カルボン酸基、ヒドロキシル基、アミン基、アルデヒド基、フェニル基、シラン、ハロゲン化物、キトサン、ビオチン、ストレプトアビジン、レクチン、抗体、タンパク質、酵素、アミノ酸、オリゴヌクレオチド、脂質、ポリエチレングリコール、デキストランおよびその他のポリマー分子を含むことができる。表面の、例えば、アミン基による官能基化を使用して、DNAのナノ膜への結合様式を変化させることによってサイズ選択を行うことができる。低pHでは、アミン基は正に荷電しており、したがって静電的にDNA分子に結合する。大きなDNA分子は、小さいDNA分子よりもアミン基と接触することができる点、したがって結合点を多く有する。こうして、大きなDNA分子から発生する正味の結合力は、pH依存性でアミン官能基によって媒介されるように、低分子よりも大きい。この方法では、ナノ膜DNA精製のサイズ選択特性を変化させるために、官能基を使用することができる。シリカ表面のアミノ酸リジンによる官能基化は、DNA試料のサイズ選択精製を実施するために有効な方法であることが示されたことがある。より一般的には、異なる官能基は、ナノ膜へのDNAの結合様式を変化させ、サイズ選択特性を調節する異なる方法をもたらす。
【0039】
本明細書で使用したように、用語「ポリマー」は、熱収縮することができる任意のポリマー基材を意味する。一部の実施形態では、ポリマーは熱可塑性ポリマーである。本明細書で使用したように、用語「熱可塑性」は、特定の温度を上回ると柔軟または塑造可能になり、冷却すると固体の状態に戻るポリマーを意味する。熱可塑性物質は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレン(PS)、ポリオレフィン(PO)、環状ポリオレフィン(PO)、塩化ポリビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネートおよびポリアミドポリマー等のポリマーを含むことができる。
【0040】
本明細書で使用したように、用語「結合」は、ナノ膜の表面近くへの(DNA)分子の可逆的または不可逆的固定を意味する。これは、これらに限定されないが、吸着、物理吸着、化学吸着、静電気引力、共有結合および位相的絡み合いを包含することができる。
【0041】
本開示の適切なナノ膜の一例は、NANOBIND(商標)シリカナノ膜(Circulomics Inc.、Baltimore、Maryland)を含む。NANOBIND(商標)等の本開示のナノ膜は、安価に製造することができる。参照文献5は、全体が参照として本明細書に組み込まれる。例えば、シリカナノ膜は、二酸化ケイ素堆積、熱収縮および型抜きによって製作してもよい(図1B)。フィルム堆積は安価で、抽出当たり<$0.01で、1日(数百万の抽出)当たり数百メートルの材料を製作することができるMylarシーティングと同種の工業的ロールツーロール方式を使用して容易に規模拡大される。一部の実施形態では、ナノ膜は手動または自動化処理のいずれかのために磁化されていてもよい(図1C)。処理は、わずか15分で実施することができる、本明細書で記載したような結合、洗浄および溶出手順を通じて行うことができる(図1D)。一部の実施形態では、ナノ膜をディスクまたはその他の形状にパンチして、処理を促進することができる。
【0042】
ある特定の実施形態では、NANOBIND(商標)等のナノ膜は、新規テンタクル結合機構を介してサイズ選択することができる。参照文献5は、全体が参照として本明細書に組み込まれる。核酸が取りやすい構造で結合して、微粒子中または多孔性膜内に点在するその他の技術とは異なり、NANOBIND(商標)の低剪断、非多孔性構造は、例えば、ディスクの表面に核酸を、例えば、単一の高分子複合体で凝縮させ、核酸を断片化およびその他の損傷から保護し、本明細書で記載したような高品質な高分子核酸を生成する。結合は、核酸のディスクへの凝縮によって行われ、例えば、次に、溶解性、静電的相互作用、塩架橋およびエントロピーを含む種々の分子力8~10によって行われる。いかなる既存の技術よりも広範な核酸サイズに亘ってサイズ選択精製を可能にするのは、この特有の凝縮駆動型結合機構である。精製緩衝液の条件を変化させることによって、小対大DNAがナノ膜表面に凝縮および結合する性質は、微調整することができる。NANOBIND(商標)を含むナノ膜の説明については、全体が本明細書に参照として組み込まれる国際公開第2016/123101号および米国特許出願第20150037802号明細書も参照のこと。参考文献8~10のそれぞれは、全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0043】
サイズカットオフ値は、下回ると核酸分子が非効率的に回収され、上回ると核酸分子が効率的に回収される閾値を示す。カットオフサイズは、回収が低サイズ回収と高サイズ回収の限界挙動の間の半分である核酸のサイズと定義することができる。例えば、低分子量の核酸分子(例えば、10bp)が効率0%で回収され、高分子量の核酸分子(例えば、50kbp)が効率100%で回収される場合、カットオフサイズは、回収率が50%である分子量である。
【0044】
サイズカットオフ値はまた、上回ると核酸分子が非効率的に回収され、下回ると核酸分子が効率的に回収される閾値を示す。カットオフサイズは、回収が低サイズ回収と高サイズ回収の限界挙動の間の半分である核酸のサイズと定義することができる。例えば、低分子量の核酸分子(例えば、10bp)が効率100%で回収され、高分子量の核酸分子(例えば、50kbp)が効率0%で回収される場合、カットオフサイズは、回収率が50%である分子量である。
【0045】
本明細書で使用したように、用語「核酸」または「核酸分子」は同義に使用され、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」を含む。この用語は、1本鎖または2本鎖であってもよく、天然材料から合成されるかまたは得られ(例えば、単離および/または精製され)ていてもよく、天然、非天然または改変されたヌクレオチドを含有することができ、未修飾オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間に見いだされるホスホジエステルの代わりに、ホスホラミデート結合またはホスホロチオエート結合等の天然、非天然または改変されたヌクレオチド間結合を含有することができる、DNA、RNAまたはcDNAのポリマーをさらに含む。この用語は、これらに限定されないが、蛍光色素、消光剤、メチル化塩基を含むその他の一般的な核酸修飾を有する核酸をさらに含む。処理される核酸は、ゲノムDNA(gDNA)、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、プラスミドDNA(pDNA)、無細胞DNA(cfDNA)、環状核酸、無細胞RNA(cfRNA)、マイクロRNA、リボソームRNA(rRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、非翻訳RNA(ncRNA)として示すことができる。高分子量DNAは、典型的には20kb長より大きく、しばしば数百kb長(最高100kb、200kb、300kb、500kb等)、時々Mb長(最高1Mb、2Mb、5Mb+等)である大きな断片化されていないDNAである。
【0046】
本明細書で使用したように、DNAサイズに関して使用したとき、用語「所望するサイズ範囲」は、記載した手順のステップまたはサイズ選択工程全体への投入に含有されるDNAサイズの一部である一連のDNAサイズを示すために使用される。一例として、投入DNA試料は、10bpと500000bpとの間の長さのDNAを含有するライブラリー調製生成物であり、試料中には10bpより短いDNA分子および500000bpより長いDNA分子は存在しない。その他のサイズは全て、等しい数で表される。この例で所望されるサイズ範囲は、300bpのカットオフサイズを上回るDNA分子全てである。したがって、所望するサイズ範囲は、300bpと500000bpとの間の長さのDNAを含有する投入分子の一部を含み、所望するサイズ範囲が300bpより短いDNA分子および500000bpより長いDNA分子は存在しない。別の例として、限界は、DNAサイズより大きいかまたは小さいDNAのパーセンテージ回収を用いて定義される。上記と同じ投入試料、10bpと500000bpとの間の長さのDNAで、試料中には10bpより短いDNA分子および500000bpより長いDNA分子は存在しない。その他のサイズは全て、等しい数で表される。所望するサイズ範囲は、300bpを上回る長さのDNA分子の平均回収率が90%で、300bpより短い長さのDNA分子の平均回収率が10%であるような回収を含む。こうして、長いDNA分子が優先的に回収される。
【0047】
DNA含有試料等の核酸含有試料は、様々なサイズ(長さ)のDNA分子等の核酸を含む。本開示による方法は、1本鎖ならびに2本鎖核酸のサイズ選択を可能にする。典型的に、核酸分子は、直鎖状の2本鎖DNA分子である。核酸含有試料は、核酸処理中に得られる生物学的試料および人工的試料を含む、様々な起源であってもよい。生物学的試料は、血液、血漿、血清、尿、糞便、痰、頬側スワブ、髪、歯、骨等の体液、または培養細胞、組織および固定された組織等のその他の臨床試料を含むことができる。一部の実施形態では、本発明の方法は、大きなgDNAから小さなcfDNAを含有する体液試料を精製するために使用される。一部の実施形態では、本発明の方法は、大腸菌細菌培養物等の細菌培養物の大きなgDNAから小さなプラスミドDNAを精製するために使用される。一部の実施形態では、本発明の方法は、様々なサイズのプラスミドを精製するために使用してもよい。一部の実施形態では、本発明の方法は、プラスミド、コスミド、フォスミド、酵母の人工的染色体および細菌の人工的染色体等の様々なサイズの構築物を精製するために使用してもよい。一部の実施形態によれば、核酸含有試料は抽出核酸または、例えば、剪断もしくは酵素反応を介してさらに処理された抽出核酸の試料である。一部の実施形態では、核酸試料は、シークエンシングライブラリー調製物である。一部の実施形態では、本発明の方法は、様々なサイズのRNA種を含有する全RNA試料を精製するために使用される。一部の実施形態では、本発明の方法は全RNA試料から小RNA画分を単離するために使用される。一部の実施形態では、本発明の方法は全RNA試料から大きなrRNAまたはmRNAを単離するために使用される。
【0048】
一部の実施形態によれば、核酸含有試料は、DNA、例えば、剪断したDNA等の断片化した核酸を含む。その他の実施形態によれば、核酸含有試料は、剪断したゲノムDNAまたは剪断したcDNAを含む。したがって、一部の実施形態によれば、核酸含有試料は、針剪断、音響剪断、超音波剪断、酵素消化、水力学的剪断およびトランスポサーゼ媒介断片化等のサイズ剪断手法から得られる溶液である。このような核酸含有試料は、様々なサイズの核酸断片を含む。特定のサイズまたはサイズ範囲のDNAのみを得ることが所望されることがある。前記断片化した核酸は、平滑末端を有する核酸断片をもたらすために末端修復することができる。したがって、一部の実施形態によれば、核酸含有試料は、様々なサイズの直鎖状平滑末端DNA断片を含む。
【0049】
ある特定の実施形態によれば、核酸含有試料は、酵素反応後に得られる。開示の方法を使用して処理することができる核酸含有試料をもたらす酵素反応の例は、これらに限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応、連結反応、損傷修復、末端修復、ポリ-Aテーリング、逆転写、ヌクレアーゼ消化、転位、メチル化、転写、ループ媒介等温増幅、本体標識および末端標識を含む。したがって、一部の実施形態によれば、核酸含有試料は増幅手法から得られる溶液で、増幅生成物、例えば、PCR生成物を含む。ある特定の実施形態によれば、核酸含有試料は、アダプター連結ステップの結果として得られるアダプター連結試料である。このような酵素反応では、未使用の反応物、酵素、反応副生成物および反応緩衝液から所望する酵素反応生成物を精製することが望まれることがある。酵素反応生成物は、反応副生成物および未使用の反応物からサイズによって区別されることが多い。一部の実施形態では、大きなPCR増幅生成物は、小さなPCRプライマー、dNTPおよびプライマー二量体から精製される。その他の実施形態では、大きなライゲーション生成物、例えば、gDNA-アダプターは、小さなライゲーション前の投入物、例えば、連結していないアダプターから精製される。
【0050】
一部の実施形態では、酵素反応はシークエンシングのためのライブラリー調製の一連のステップのうちの1つのステップである。シークエンシング反応のための典型的なライブラリー調製は、アダプターライゲーションを含む。典型的な実施形態によれば、アダプターは修飾または非修飾核酸オリゴマーである。アダプターはまた、酵素、その他のタンパク質または、これらに限定されないが、ビオチンを含むその他の非核酸分子と複合体化することができる。アダプターは、1本鎖、2本鎖であってもよく、ヘアピンを含有していてもよく、平滑末端または5’もしくは3’末端に突出する1つもしくは複数のヌクレオチドを有していてもよい。1本鎖アダプターは、試料核酸の5’または3’末端または5および3’両末端に連結することができる。ヘアピンを有するものを含む2本鎖アダプターは、平滑末端または付着末端連結のいずれかによって連結することができる。
【0051】
ある特定の実施形態によれば、ヘアピンアダプターは、ポリメラーゼで促進されるプライマー伸長を利用して試料DNA分子に結合することができる。
【0052】
ある特定の実施形態によれば、核酸含有試料は、シークエンシングライブラリーの調製中、特に、第3世代シークエンシングライブラリーの調製中に得られる。典型的な実施形態によれば、試料中の核酸分子は、核酸アダプター(本明細書で定義したもの等)が5’または3’または3’および5’両末端に連結している。したがって、試料は、連結していない試料核酸分子、連結した試料核酸分子、連結していないアダプター、連結したアダプター二量体、三量体およびアダプターのその他の組合せ、ならびに、これらに限定されないが、緩衝液種および酵素を含むその他の試薬を含んでいることがある。本開示による方法は、5’および/または3’にアダプターが近接しているDNA分子等の2本鎖または1本鎖核酸のサイズ選択的精製、それによるそれぞれの混入物の効率的除去を可能にする。ライゲーション後、DNA分子は典型的に、連結していないアダプターよりも長く、したがってサイズに基づいて精製することが可能である。
【0053】
ある特定の実施形態によれば、本開示による方法は、保護核酸分子を残すために未保護核酸分子を消化した後に使用される。消化には、これらに限定されないが、エキソヌクレアーゼIII、エキソヌクレアーゼVII、ラムダエキソヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼI、エキソヌクレアーゼVIII、T5エキソヌクレアーゼ、T7エキソヌクレアーゼ、T7エキソヌクレアーゼIが含まれる。
【0054】
ある特定の実施形態によれば、この方法は特定のサイズまたはサイズ範囲のライブラリー分子のみを選択するために、ライブラリー(最終ライブラリー分子)の完成後に使用される。その他の実施形態では、この方法は、特定のサイズまたはサイズ範囲の核酸分子のみがライブラリー調製に投入されるように、核酸開始材料に使用される。その他の実施形態では、サイズ選択はライブラリー調製の増幅ステップ後に実施される。その他の実施形態では、サイズ選択は、これらに限定されないが、ライブラリー調製中のポリ-Aテーリング、末端修復、ヌクレアーゼ消化、損傷修復、アダプター連結および/または転位ステップの後に実施される。
【0055】
本明細書で使用したようなカオトロピック剤または塩は、タンパク質、核酸およびタンパク質-核酸複合体の1次構造はそのままで、2次構造、3次構造および/または4次構造を変化させるかまたは破壊する化合物を意味する。溶液中、カオトロピック条件下では、カオトロピック化合物は、生物学的分子の安定化している分子内相互作用、例えば、水素結合、ファンデルワールス力および疎水性効果を妨害するので、タンパク質、タンパク質-核酸複合体および核酸等の生物学的分子の分子内相互作用は破壊される。カオトロピック化合物は通常、サイズによって、分子間相互作用を妨害し、溶媒の極性を低減させ、それによって分子間および分子内水素結合を破壊することができる、体積の大きなイオンを有する。その結果、多くのタンパク質が沈殿するが、2本鎖核酸部分のらせん構造は維持される。カオトロピック化合物を反応溶液に添加することによって、核酸を溶液中に残しながら、タンパク質を沈殿させることができる。カオトロピック条件下では、核酸の二酸化ケイ素をベースにしたマトリクスへの結合は、非常に好まれる。カオトロピック塩は、例えば、グアニジウム塩溶液(例えば、塩化グアニジウム等の6mol/l)および高濃度リチウム塩(例えば、過塩素酸リチウム4.5mol/l)を含む。その他の例には、チオシアン酸グアニジン、イソチオシアン酸グアニジンおよびヨウ化ナトリウムが含まれる。
【0056】
本開示は、所望するサイズ範囲の核酸を単離する方法であって、a)核酸含有試料と結合緩衝液を合わせて結合混合物を提供するステップと、b)結合混合物とナノ膜を接触させるステップであり、ナノ膜が結合混合物中の特定のサイズの核酸に結合する、ステップと、c)任意選択で、結合した核酸およびナノ膜を洗浄緩衝液で洗浄して、不純物をさらに除去するか、またはサイズ選択を促進するステップと、d)ナノ膜から特定のサイズの結合した核酸を分離するかまたは溶出させるステップとを含む方法を対象とする。
【0057】
一部の実施形態では、所望する核酸サイズ範囲を得るステップは、少なくとも1つの結合条件によって促進され、少なくとも1つの結合条件は、i)pH、ii)塩濃度、iii)カオトロピック塩の有無、iv)1価および/または2価塩の有無、v)アルコールの種類および濃度、vi)分子クラウダー濃度、vii)分子クラウダーの種類、viii)結合時間、ix)結合中の温度、x)変性剤の有無、xi)その他の分子種の有無、xii)緩衝液体積、xiii)結合中の試験管の動き、例えば、ボルテックス、遠心分離、震盪、回転、xiv)ナノ膜のサイズ、xv)ナノ膜の形状、xvi)ナノ膜の3D構造、xvii)ナノ膜の数、ならびにxviii)それらの組合せから選択される。
【0058】
小サイズの選択
典型的に、小サイズ選択ナノ膜核酸精製は、1)精製すべき核酸および除去すべき混入物を含有する試料を、例えば、微量遠心分離管に小分けするステップ、2)結合緩衝液を試料に添加し、次に、例えば、アルコールおよびナノ膜を添加し、これらの成分を混合し、この混合物をインキュベートし、その間に核酸がナノ膜に結合するステップ、3)アルコールを含む、またはアルコールを含まない結合緩衝液混合物を微量遠心分離管から除去し、ナノ膜に結合した核酸を試験管中に残すステップ、4)通常アルコール、水、緩衝液および塩を含有する洗浄緩衝液を微量遠心分離管に添加し、この試験管を5~10回反転させるステップ、5)洗浄緩衝液を試験管から除去するステップ、6)ナノ膜が完全に浸漬するように溶出緩衝液を試験管に添加するステップであり、このステップで、核酸がナノ膜から脱離するようになって溶出緩衝液中で溶液になるステップ、7)核酸を含有する溶出緩衝液を別の試験管に移し、こうしてこの試験管が最終的な精製核酸を含有するステップという順番に従う。
【0059】
一部の実施形態では、本明細書で記載した手順は、自動化ロボット、例えば、KingFisher(ThermoFisher)またはMaxwell(登録商標)およびMaxprep(商標)(Promega)によって実施される。
【0060】
ナノ膜への結合
一部の実施形態では、本発明の方法は、カットオフ値の、またはカットオフ値を上回るサイズを有する核酸を単離して所望するサイズ範囲の単離核酸を得ることを対象とする。ある特定の実施形態では、本発明の方法を使用して得られた核酸の所望するサイズ範囲は、10塩基対(bp)(2本鎖核酸について)または10ヌクレオチド(nt)(1本鎖核酸について)から約30000bpまたは30000nt以上までの間で変化することができるカットオフ値以上、例えば、>10bp(またはnt)、>25bp(またはnt)、>50bp(またはnt)、>100bp(またはnt)、>150bp(またはnt)、>200bp(またはnt)、>250bp(またはnt)、>300bp(またはnt)、>350bp(またはnt)、>400bpまたは(nt)、>500bpまたは(nt)、>600bpまたは(nt)、>700bpまたは(nt)、>800bpまたは(nt)、>900bpまたは(nt)、>1000bpまたは(nt)、>2500bpまたは(nt)、>3000bpまたは(nt)、>4000bpまたは(nt)、>5000bpまたは(nt)、>6000bpまたは(nt)、>7000bpまたは(nt)、>8000bpまたは(nt)、>9000bpまたは(nt)、>10000bpまたは(nt)、>20000bpまたは(nt)、>30000bpまたは(nt)である(本明細書では「小サイズ選択」とも称する)。
【0061】
本明細書で使用したように、用語「結合条件」は、サイジングカットオフに影響を及ぼす本明細書で記載した条件を意味する。結合条件は、結合緩衝液の成分、結合時間、結合温度、ナノ膜のサイズ、形状および構造等によって影響を受けることがある。
【0062】
ある特定の実施形態では、結合緩衝液はサイジングカットオフの低減を促進するように設計してもよい。その他の実施形態では、結合緩衝液はサイジングカットオフの増加を促進するように設計してもよい。ある特定の実施形態では、サイジングカットオフは、特定のサイズまたは範囲の2本鎖核酸を選択的に変性することによって適応させることができる。一部の実施形態では、サイジングカットオフは、結合緩衝液を1本鎖核酸よりも2本鎖核酸への結合に有利になるように調節し、次に長い核酸に対して短い核酸を選択的に変性することによって実現してもよい。このようにして、短い核酸の結合を妨ぎ、試料から除去することができる。一部の実施形態では、これは結合緩衝液のpHを調節することによって実現してもよい。例えば、pHが高いよりアルカリ性の溶液は、核酸の二次構造を不安定化する。ある特定の実施形態では、結合緩衝液のpHは、2本鎖および1本鎖核酸の画分を改変するために調節してもよい。1本鎖および2本鎖核酸はサイズに依存した方法でナノ膜に結合するために異なる性質を有する。したがって、一部の実施形態では、pHの変化は戻った核酸のカットオフを変化させる。その他の実施形態では、結合緩衝液のpHを使用して、1本鎖対2本鎖および短い核酸対長い核酸への選択性を付与するようにナノ膜の表面電荷に影響を及ぼすことができる。これらの実施形態では、pHは5~13の範囲に変化させることができる、例えば、pH=5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5または13であってもよい。
【0063】
その他の実施形態では、特定のサイズまたは範囲の核酸を選択的に変性するために、変性剤を結合緩衝液に添加してもよい。変性剤はサイズに依存した方法で核酸の二次構造を破壊し、短い核酸は低い融点を有し、低い変性剤濃度で変性させることができる。こうして、短い核酸を優先的に融解することによって、結合カットオフを長い核酸長に移動させる。例えば、0.1と5Mの間の濃度のベタインを変性剤として使用してもよい。
【0064】
ある特定の実施形態では、サイジングカットオフは、特定のサイズまたは範囲の核酸の溶解度を選択的に調節することによって適応させることができる。一部の実施形態では、サイジングカットオフは結合緩衝液の塩濃度を調節することによって実現してもよい。これは、結合緩衝液中のカオトロピック塩の有無、1価塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム)および/または2価塩(例えば、塩化マグネシウム)の有無を含むことができる。カオトロピックの高い、1価および2価の塩濃度は、全核酸の溶解度を低減し、サイジングカットオフを減少させることができる。カオトロピック塩、例えば、GuHClの濃度は、0.001Mと8Mとの間で変化させることができる。1価塩、例えば、NaClの濃度は、0.001Mと6Mとの間で変化させることができる。2価塩、例えば、MgClの濃度は、0.01mMと1000mMとの間で変化させることができる。
【0065】
ある特定の実施形態では、核酸の溶解度、したがって、サイジングカットオフは、結合緩衝液中のアルコール濃度を調節することによって調整することができる。適切なアルコールは、これらに限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールを含む。高いアルコール濃度は、核酸の溶解度を低減し、サイジングカットオフを減少させることができる。アルコール濃度は、約0%と約99%の間で変化させることができ、例えば、0%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%であってもよい。
【0066】
ある特定の実施形態では、DNAはアルコールを含有しない結合溶液中で結合している。
【0067】
ある特定の実施形態では、核酸の溶解度、したがって、サイジングカットオフは、結合緩衝液の体積を変化させることによって調整することができる。大きい結合体積は、結合条件下で低い核酸濃度を生じさせる。短い核酸は長い核酸分子よりも低い濃度ではあまり結合せず、したがって結合緩衝液の体積を増加させることによって結合カットオフを長い核酸分子に移動させる。結合緩衝液の体積は、投入試料体積の0.1倍から投入試料体積の10倍まで変化させることができる。核酸濃度は、ゼロ濃度近くから最高500ng/μlまで変化させることができる。
【0068】
ある特定の実施形態では、サイジングカットオフは、様々な濃度および/または、これらに限定されないが、ポリエチレングリコール、フィコール、BSA、直鎖状アクリルアミド、ポリビニルピロリドンおよびグリコーゲンを含む組成物の分子クラウダーを添加することによって調整することができる。クラウダーは、クラウダーを含まない溶液と比較して、完全に溶解した溶液に対して凝集または吸着した分子の自由エネルギーを低下させる傾向がある。したがって、クラウダーはDNAをナノ膜に結合させる。クラウダーの効果はサイズ依存性であることが周知であり11、クラウダーと類似のサイズの分子は最大の効果を生じる。したがって、クラウダーは核酸分子の結合カットオフを移動させる。ポリエチレングリコール濃度は、約0%と約40%との間で変化させることができる。ポリビニルピロリドン濃度は、約0%と約40%との間で変化させることができる。フィコール濃度は、約0%と約20%との間で変化させることができる。直鎖状アクリルアミドおよびグリコーゲンは、約0と約500ng/μlの間で変化させることができる。BSAは、約0と約10mg/mlの間で変化させることができる。
【0069】
ある特定の実施形態では、スペルミン、スペルミジン、カダベリンまたはプトレシン等のポリアミンは、サイジングカットオフを調整するために使用することができる。スペルミンおよびスペルミジンは、長さに依存した方法での核酸の沈殿を誘導することが公知である12。したがって、これらのポリアミンは、沈殿のサイズ依存性およびナノ膜への結合を調節するために使用することができる。
【0070】
ある特定の実施形態では、界面活性剤を使用して、サイズに依存した方法で結合溶液の表面張力、したがって核酸の溶解度を変化させることができる。界面活性剤は、これらに限定されないが、TWEEN20、ドデシル硫酸ナトリウム、Triton-X100、Triton-X114、NP40、臭化セトリモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドを含む。いずれも0%と10%の間で変化させることができる。したがって、これらの界面活性剤は沈殿のサイズ依存性およびナノ膜への結合を調節するために使用することができる。
【0071】
ある特定の実施形態では、サイジングカットオフは、結合時間を調節することによって調整することができる。短い核酸分子は、溶液から流出するのにより時間がかかり、ナノ膜に吸着する。したがって、長い結合時間は結合カットオフを短い核酸分子に移動させる。結合時間は、1分間と5日間との間で調節することができる。
【0072】
ある特定の実施形態では、サイジングカットオフは、結合温度を調節することによって調整することができる。高温はサイズに依存した方法で核酸の二次構造を融解し、短い核酸は長い核酸よりも低い温度で融解する。こうして、短い核酸を優先的に融解することによって、結合カットオフを長い核酸長に移動させる。その他の実施形態では、温度を使用して、特定のサイズまたは範囲の核酸の溶解度を選択的に調節してもよい。結合の温度は、約-20℃と約70℃の間で調節することができる。
【0073】
ある特定の実施形態では、結合条件は、これらに限定されないが、ボルテックス、震盪、反転、遠心分離、回転、タッピングを含む結合中の動きを包含する。ナノ膜に結合するために、DNAは本明細書で記載した引力に遭遇するようにナノ膜の表面の十分近くを通過しなければならない。大きなDNA分子は、分子当たりより多くの溶液を押し流すので、小DNA分子よりもナノ膜に遭遇する可能性が大きい。これは、このような動き、例えば、迅速な震盪またはボルテックスを使用することによって、ナノ膜を溶液中でより迅速に動き回らせ、したがって、大きなDNA分子の高い結合確率をあまり変化させずに、ナノ膜が短いDNA分子に遭遇して結合する可能性を増加させることによって、変化させることができる。
【0074】
ある特定の実施形態では、結合条件はナノ膜のサイズおよび形状および構造を包含する。使用される形状は、これらに限定されないが、円、四角、星形、三日月型、輪を含む。構造は、これらに限定されないが、管状、球状、立方体およびくしゃくしゃの形状を含む。表面全体に流体が流れる方法を変化させるために、ナノ膜の様々な構造を使用するができる。例えば、くしゃくしゃの形状の構造は、溶液中に直接面しない表面の一部に予想される流れを低減する。小さいDNA分子は表面を低流量で流れるとナノ膜表面に遭遇する可能性が少ないので、くしゃくしゃの形状のナノ膜に結合する可能性は少ない。
【0075】
ある特定の実施形態では、結合条件はナノ膜の数を包含する。ナノ膜の数は、これらに限定されないが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、1000、10000、100000、1×10、1×10、1×10、1×10個であってもよい。ナノ膜に結合するために、DNAは本明細書で記載した引力に遭遇するように、ナノ膜の表面の十分近くを通過しなければならない。大きなDNA分子は、分子当たりより多くの溶液を押し流すので、小DNA分子よりもナノ膜に遭遇する可能性が大きい。これは、大きなDNA分子の高い結合確率をあまり変化させずに、短いDNA分子の遭遇可能性および結合を増加させるので、ナノ膜の数を増加することによって、変化させることができる。
【0076】
本明細書で記載した前記の条件の任意の組合せを使用して本発明の方法のサイズ選択パラメータを変化させることができる。
【0077】
ある特定の実施形態では、結合緩衝液は、核酸およびタンパク質の両方がナノ膜に結合し、したがって、試料の残部から共精製され得るように選択される。その他の実施形態では、結合緩衝液は、試料中の核酸に結合しているタンパク質が破壊されず、核酸をナノ膜に結合させることによって共精製され得るように選択される。
【0078】
洗浄および溶出
一部の実施形態では、小サイズ選択法によって結合した核酸を洗浄する。本明細書では、1つまたは複数の洗浄ステップを実施することができる。典型的に、このステップは、未結合成分および、例えば、以前の反応からのヌクレオチドおよび酵素等の不純物を効率的に除去するために実施する。洗浄ステップは、核酸を含有する試料がシークエンシングライブラリーの調製中に得られた場合、特に適切である。さらに、洗浄ステップを使用して核酸サイズ画分を除去し、所望するサイズ画分を残すことができる。さらに、洗浄ステップはまた、企図した下流の工程を妨害し得る場合、結合中に使用したカオトロピック塩またはその他の塩の痕跡を除去するために適切である。
【0079】
本明細書で使用したように、用語「洗浄条件」は、サイジングカットオフに影響を及ぼす本明細書で記載したような条件を意味する。洗浄条件は、洗浄緩衝液の成分、洗浄時間、洗浄温度、ナノ膜のサイズ、形状および構造等によって影響を受けることがある。
【0080】
一部の実施形態によれば、洗浄で使用した溶液は、少なくとも1つの塩および/または少なくとも1つのアルコールを含む。洗浄溶液で使用することができる塩は、これらに限定されないが、グアニジン塩酸塩、チオシアン酸グアニジン、イソチオシアン酸グアニジン、ヨウ化ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムまたはその他の塩を含む。アルコールとして、典型的に1から5個の炭素原子を有する短鎖の分岐または非分岐アルコールを洗浄のために使用することができる。また、アルコールの混合物を洗浄溶液中で使用することができる。適切なアルコールは、これらに限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールを含む。典型的に、イソプロピルアルコールおよび/またはエタノールを洗浄溶液中で使用する。
【0081】
一部の実施形態では、この方法はさらに、ナノ膜を洗浄して、所望するサイズ範囲ではない核酸を除去するステップを含む。ある特定の実施形態では、洗浄による特定の核酸サイズの除去は、i)pH、ii)塩濃度、ii)カオトロピック塩の有無、iii)1価および/または2価塩の有無、iv)アルコールの濃度、v)分子クラウダー濃度、vi)分子クラウダーの種類、vii)結合時間、viii)洗浄中の温度、ix)変性剤の有無、x)スペルミン、スペルミジン、界面活性剤等のその他の添加分子、xi)洗浄溶液体積、xii)洗浄溶液温度、ならびにxiii)それらの組合せから選択される洗浄溶液の少なくとも1つの条件によって促進される。
【0082】
ある特定の実施形態では、洗浄溶液のpHは、2本鎖および1本鎖核酸の画分を改変するために調節してもよい。1本鎖および2本鎖核酸は、サイズに依存した方法でナノ膜に結合するために異なる性質を有する。したがって、一部の実施形態では、pHを変化させると、ナノ膜から洗い流される核酸分子のカットオフが変化する。その他の実施形態では、洗浄溶液のpHを使用して、長い核酸に対して短い核酸への選択性を付与するようにナノ膜の表面電荷に影響を及ぼすことができる。これらの実施形態では、pHは5~13の範囲に変化させることができ、例えば、pH=5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5または13であってもよい。
【0083】
ある特定の実施形態では、核酸の溶解度、したがって、サイジングカットオフは、洗浄溶液中のアルコール濃度を調節することによって調整することができる。適切なアルコールは、これらに限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールを含む。高いアルコール濃度は、核酸の溶解度を低減し、サイジングカットオフを減少させることができる。アルコール濃度は、約0%と約99%の間で変化させることができ、例えば、0%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%であってもよい。
【0084】
ある特定の実施形態では、核酸の溶解度、したがって、サイジングカットオフは、洗浄溶液中の塩濃度を調節することによって調整することができる。適切な塩は、これらに限定されないが、グアニジン塩酸塩、チオシアン酸グアニジン、イソチオシアン酸グアニジン、ヨウ化ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムを含む。高い塩濃度は、核酸の溶解度を低減し、サイジングカットオフを減少させることができる。塩、例えば、これらに限定されないが、塩化ナトリウムの濃度は、約0mMと約5000mMの間で変化させることができ、例えば、0mM、5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、40mM、50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、400mM、500mM、600mM、700mM、800mM、900mM、1000mM、1500mM、2000mM、2500mM、3000mM、3500mM、4000mM、4500mM、5000mMであってもよい。
【0085】
一部の実施形態では、この方法は洗浄中にアルコールを含有しない。
【0086】
一部の実施形態では、この方法は洗浄中にポリアミン、例えば、スペルミンまたはスペルミジンを含有する。スペルミンおよびスペルミジンは、長さに依存した方法での核酸の沈殿を誘導することが公知である12。したがって、これらのポリアミンはナノ膜の洗浄のサイズ依存性を調節するために使用することができる。
【0087】
ある特定の実施形態では、核酸の溶解度、したがって、サイジングカットオフは、洗浄溶液中の分子クラウダー濃度を調節することによって調整することができる。適切な分子クラウダーは、これらに限定されないが、ポリエチレングリコール、フィコール、BSA、直鎖状アクリルアミド、ポリビニルピロリドンおよびグリコーゲンを含む。高い分子クラウダー濃度は、核酸の溶解度を低減させ、サイジングカットオフを減少させることができる。分子クラウダー濃度は、約0%と約40%との間で変化させることができ、例えば、0%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%であってもよい。
【0088】
ある特定の実施形態では、核酸の溶解度、したがって、サイジングカットオフは、洗浄中の界面活性剤濃度を調節することによって調整することができる。界面活性剤は、これらに限定されないが、TWEEN20、ドデシル硫酸ナトリウム、Triton-X100、Triton-X114、NP40、臭化セトリモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドを含む。いずれも0%と10%との間で変化させることができる。
【0089】
ナノ膜から結合した核酸の脱離を達成する任意の溶出溶液を使用することができる。シリカ表面から核酸を効率的に溶出させることが公知の古典的な溶出溶液は、これらに限定されないが、水、TE緩衝液、低EDTA TE緩衝液等の溶出緩衝液、および、塩含量が150mM以下から約10mMであるか、または塩を含まない低塩溶液を含む。
【0090】
一部の実施形態では、1つまたは複数の溶出ステップは、精製したサイズ選択核酸を溶出させるために実施される。次に、核酸および緩衝液を含む溶出物は、典型的には、下流適用で使用するためにナノ膜を含有する試験管から取り出される。しかし、一部の実施形態では、溶出緩衝液は精製した核酸および/またはタンパク質の下流操作のための試薬を含有する。その後、下流反応が開始され、ナノ膜が依然として溶液中に存在したまま完了する。反応完了時に、結合緩衝液を、例えば、微量遠心分離管に添加すると、核酸は、例えば、試験管に残存する同じナノ膜に再結合する。
【0091】
一部の実施形態では、この方法はさらに、所望するサイズ範囲の核酸を特異的に溶出させるステップ、および、ナノ膜に結合した所望するサイズ範囲ではない核酸を残すステップを含む。ある特定の実施形態では、カットオフ値は、i)pH、ii)塩濃度、ii)カオトロピック塩の有無、iii)1価および/または2価塩の有無、v)分子クラウダー濃度、vi)分子クラウダーの種類、vii)溶出時間、viii)溶出中の温度、ix)変性剤の有無、x)スペルミン、スペルミジン、界面活性剤等のその他の添加分子、xi)溶出溶液体積、xii)溶出溶液温度、ならびにxiii)それらの組合せから選択される溶出溶液の少なくとも1つの条件によって促進される。
【0092】
その他の実施形態では、ナノ膜の洗浄を実施しない。一部の実施形態では、ナノ膜ディスクを結合緩衝液から取り出し、核酸を洗浄せずに溶出させる。その他の実施形態では、ナノ膜ディスクを結合緩衝液から取り出し、核酸を溶出させずに使用する。
【0093】
大サイズの選択
ある特定の実施形態では、NANOBIND(商標)等の本開示のナノ膜は、大きな反応生成物(200bp(またはnt)から100kbの範囲)の調整可能なカットオフを実現するために、核酸含有試料から取り出すための大きな核酸断片を選択することができる。ある特定の実施形態では、本発明の方法を使用して得られた核酸の所望するサイズ範囲は、約200塩基対(bp)以上(2本鎖核酸について)もしくは200ヌクレオチド(nt)以上(1本鎖核酸について)、または約500bpもしくは500nt以上であり、例えば、≧1000bp(またはnt)、≧2000bp(またはnt)、≧3000bp(またはnt)、≧5000bp(またはnt)、≧7000bp(またはnt)、≧8000bp(またはnt)、≧9000bp(またはnt)、≧10000bp(またはnt)、≧20000bp(またはnt)、≧30000bpまたは(nt)、≧40000bpまたは(nt)、≧50000bpまたは(nt)、≧60000bpまたは(nt)、≧70000bpまたは(nt)、≧80000bpまたは(nt)、≧90000bpまたは(nt)、≧100000bp(nt)である(本明細書では「大サイズ選択」とも称する)。
【0094】
一部の実施形態では、大サイズ選択工程は分子クラウダーを組み込む13。当業界で周知のように、「分子クラウダー」は、排除体積効果によりサイズに基づいた結合を付与することができる化合物である。本発明の方法で使用するために適切な分子クラウダーは、これらに限定されないが、PVP(Mw10000)、PVP(Mw29000)、PVP(Mw40000)、PVP(Mw55000)、PVP(Mw360000)、PVP(Mw1300000)等のポリビニルピロリドン(PVP)、PEG1000、PEG2000、PEG3000、PEG4000、PEG5000、PEG6000、PEG7000、PEG8000、PEG9000、PEG10000、PEG11000、PEG12000、PEG13000、PEG14000、PEG15000、PEG16000、PEG17000、PEG18000、PEG19000およびPEG20000等のポリエチレングリコール(PEG)、グリコーゲン、フィコール、BSA、マルトデキストリン、直鎖状アクリルアミドを含む。その他の実施形態では、分子クラウダーの混合物を使用してもよい。参照文献13は、全体が参照として本明細書に組み込まれる。クラウダーの濃度は、約0%と約40%との間で調節することができる。
【0095】
一部の実施形態では、サイズ選択沈殿およびペレット形成ステップは、本明細書で概略を示したのと類似するナノ膜精製方法の前に実施する。一部の実施形態では、サイズ選択沈殿およびペレット形成ステップは、本明細書で記載したのと類似するナノ膜精製方法の後に実施する。一部の実施形態では、大サイズ選択の方法は、ナノ膜精製法と同時に行う。
【0096】
一部の実施形態では、別のサイズ選択沈殿ステップを使用する。この方法は、以下のように例示することができる:1)これらに限定されないが、水、緩衝液、塩およびPVP(Mw360000)を含有する沈殿緩衝液を核酸含有試料に添加するステップ、2)試料緩衝液を室温で8000gで30分間遠心分離するステップであり、このステップで、核酸を試験管の底にペレットにするステップ、3)上清を試験管から除去するステップ、4)70%アルコールを試験管に添加し、室温で8000gで2分間遠心分離するステップ、5)70%アルコール上清を試験管から除去し、核酸ペレットを溶出緩衝液に再懸濁するステップ。
【0097】
一部の実施形態では、大サイズ選択は、ナノ膜精製法と同時に行い、典型的に、1)精製すべき核酸および除去すべき混入物を含有する試料を、例えば、微量遠心分離管に小分けするステップ、2)結合緩衝液を試料に添加し、その後、これらに限定されないが、アルコールおよびナノ膜を添加し、これらの成分を混合し、この混合物をインキュベートし、その間に核酸がナノ膜に結合するステップ、3)結合緩衝液/アルコール混合物を微量遠心分離管から除去し、ナノ膜に結合した核酸を試験管中に残すステップ、4)これらに限定されないが、アルコール、水、緩衝液および塩を含有する洗浄緩衝液を微量遠心分離管に添加し、この試験管を5~10回反転させるステップ、5)洗浄緩衝液を試験管から除去するステップ、6)ナノ膜が完全に浸漬するように溶出緩衝液を試験管に添加するステップであるステップ、このステップで、核酸がナノ膜から脱離するようになって溶出緩衝液中で溶液になり、7)核酸を含有する溶出緩衝液を、例えば、別の試験管に移し、こうしてこの試験管が最終的な精製核酸を含有するステップの順番に従う。
【0098】
ある特定の実施形態では、大サイズ選択工程は、本明細書で記載した沈殿ステップまたは本明細書で記載した結合ステップ中に分子クラウダーの量(例えば、0.1%~40%)および/または種類(例えば、分子量10000から1300000を有するPVP)を最適化することによって調整する。ある特定の実施形態では、大サイズ選択工程は、沈殿または結合時間(2~60分)、温度(4~50℃)およびまたはそれらの組合せを最適化することによって調整する。
【0099】
一部の実施形態では、大サイズ選択工程のカットオフ値は、以下の結合条件:i)pH、ii)塩濃度、iii)カオトロピック塩の有無、iv)1価および/または2価塩の有無、v)アルコールの種類および濃度、vi)分子クラウダー濃度および分子量、vii)分子クラウダーの種類、viii)沈殿/結合時間、ix)沈殿/結合中の温度、x)変性剤の有無、xi)その他の分子種の有無、xii)緩衝液体積、xiii)結合中の試験管の動き、例えば、ボルテックス、遠心分離、震盪、回転、xiv)ナノ膜のサイズ、xv)ナノ膜の形状、xvi)ナノ膜の3D構造およびxvii)それらの組合せの少なくとも1つによって調整される。
【0100】
ある特定の実施形態では、分子クラウダーを使用してサイズ選択のカットオフ値を調整する。分子クラウダーは、分子クラウダーおよび問題の分子種の両方の濃度およびサイズに強く依存されるような方法で、分子種の溶液自由エネルギーを変化させる11、13。これによって、核酸のサイズに強く依存されるような方法で、分子クラウダーを使用して核酸の溶解度を調整することができる。例えば、ある特定の実施形態では、高パーセンテージのPVP等の分子クラウダーは排除体積効果を増加させ、したがって、小さな分子がますます溶液から排出される。別の例では、高分子量分子クラウダー、例えば、PVP360000を使用して分子クラウディング効果を高分子に移動させ、優先的に大きなサイズの核酸を沈殿させ、凝集させることができる。
【0101】
高域、低域および帯域精製
ある特定の実施形態では、本発明の方法を使用してサイジングカットオフよりも大きい(すなわち、高域)所望するサイズ範囲の核酸を回収することができる。例えば、高域方法を本明細書で説明する。
【0102】
その他の実施形態では、本発明の方法を使用してサイジングカットオフよりも小さい(すなわち、低域)核酸を回収することができる。低域精製は、典型的に、1)精製すべき核酸および除去すべき混入物を含有する試料を、例えば、微量遠心分離管に小分けするステップ、2)結合緩衝液を試料に添加し、その後、例えば、アルコールおよびナノ膜を添加し、これらの成分を混合し、この混合物をインキュベートし、その間にカットオフ長を上回る核酸がナノ膜に結合するステップ、3)結合緩衝液/アルコール混合物を微量遠心分離管から除去し、この結合緩衝液/結合混合物がカットオフ長を下回る小核酸を含有するステップ、4)除去した結合緩衝液/アルコール/核酸を、例えば、これらに限定されないが、多くのアルコールを添加することによって調節するステップ、5)第2のナノ膜をこの溶液に添加し、その後インキュベートし、その間に残存する核酸がナノ膜に結合するステップ、6)第2の結合溶液を微量遠心分離管から除去するステップ、7)例えば、アルコール、水、緩衝液および塩を含有する洗浄緩衝液を微量遠心分離管に添加し、この試験管を、例えば、5~10回反転させるステップ、8)洗浄緩衝液を試験管から除去するステップ、9)ナノ膜が完全に浸漬するように溶出緩衝液を試験管に添加するステップ、このステップで、核酸がナノ膜から脱離するようになって溶出緩衝液中で溶液になるステップ、10)カットオフサイズを下回るサイズの核酸を含有する溶出緩衝液を、例えば、別の試験管に移し、この試験管が最終的な精製核酸を含有するステップの順番に従う。
【0103】
一部の実施形態では、低域方法は、本明細書で記載した高域方法と類似した方法に従って実現することができるが、高pH結合緩衝液を用いる。
【0104】
ある特定の実施形態では、本発明の方法の連続適用を使用して、最小と最大の間のDNAサイズのバンド(すなわち、帯域)の選択を可能にすることができる。こうして、カットオフCを上回るサイズの核酸分子をナノ膜に結合させ、Cより小さい核酸分子を結合緩衝液の溶液中に残すように、結合条件を用いる。次に、結合緩衝液を別の微量遠心分離管に移し、例えば、アルコール含量が高い追加の緩衝液を元の緩衝液に添加する。次に、第2のナノ膜を添加する。緩衝液条件は、カットオフCを上回るサイズの核酸分子がナノ膜に結合するようにする。次に、この方法では、本開示の別のところで記載したように、洗浄および溶出が続く。最終的に回収された核酸分子は、Cの最小値とCの最大値の間の域中で選択される。
【0105】
ある特定の実施形態では、DNAは、図2で記載した順番の手順に従うことによって所望するサイズ範囲で回収される。例えば、本明細書で提供した例は、溶出(C>DNA>C)、C=0で終わる経路に従う。本明細書で提供した例は、溶出(C>DNA>C)、C>C>0で終わる経路に従う。
【0106】
ある特定の実施形態では、精製は、下限Cおよび上限Cを有する所望するDNAサイズ範囲を得るために、進めることができる。この方法は、図2に示されており、溶出(C>DNA>C)で終わる。この精製は典型的に、1)精製すべき核酸および除去すべき混入物を含有する試料を、例えば、微量遠心分離管に小分けするステップ、2)結合緩衝液を試料に添加し、次に、例えば、アルコールおよびナノ膜を添加し、これらの成分を混合し、この混合物をインキュベートし、その間にカットオフ長、Cを上回る核酸がナノ膜に結合するステップ、3)結合緩衝液/アルコール混合物を微量遠心分離管から除去するステップ、4)例えば、アルコール、水、緩衝液および塩を含有する洗浄緩衝液を微量遠心分離管に添加し、この試験管を、例えば、5~10回反転させ、サイズカットオフ、Cを上回る核酸がナノ膜に結合しなくなり、洗浄緩衝液中で溶液になるステップ、5)サイズカットオフ、Cを上回る核酸を含有する洗浄緩衝液を試験管から除去するステップ、6)ナノ膜が完全に浸漬するように溶出緩衝液を試験管に添加するステップであり、このステップで、結合した核酸がナノ膜から脱離するようになって溶出緩衝液中で溶液になるステップ、7)低カットオフ、Cより大きく、高カットオフCより小さいサイズの核酸分子を含有する溶出緩衝液を、例えば、別の試験管に移し、この試験管が最終的な精製核酸を含有するステップの順番に従う。
【0107】
ある特定の実施形態では、精製は、高域画分および低域画分の両方が回収されるように進めることができる。低域方法は、本明細書で記載したように行われる。ステップ3)の間に、微量遠心分離管に残存したナノ膜は、カットオフを上回るサイズの核酸が結合している。本明細書で記載した低域方法と同様に、このナノ膜は本開示の別のところで記載したように洗浄され、溶出される。結果は典型的に2つの溶出物で、1つはカットオフを上回る核酸を含有し、もう1つはカットオフを下回る核酸を含有する。
【0108】
シークエンシングライブラリー
本開示による方法は、シークエンシングライブラリー、例えば、第3世代シークエンシングライブラリーの場合のサイズ選択に特に適切である。第3世代シークエンシングに適切なシークエンシングライブラリーは、例えば、当業界で公知の方法を使用して調製することができる。このようなロングリードシークエンシング技術、例えば、数万またはさらに数十万の塩基対の配列のためのライブラリー調製は、類似のワークフローに従う。典型的に、高MW(50kb~Mb+)DNAを単離する。次に、このDNAは、ライゲーション、末端修復および標識化等の様々な酵素反応を使用するシークエンシングのために、典型的に調製される。酵素処理中に、この提出文書に記載されたような小サイズ選択反応精製は、ライブラリー生成物からプライマー二量体、酵素およびアダプターオリゴ等の小さなバックグラウンド分子(例えば、50ntまたはbpと30000ntまたはbpとの間の調整可能なカットオフ値を有する分子)を除去するために実施することができる。
【0109】
ある特定の実施形態では、シークエンシングライブラリーの調製は、核酸含有試料からの複数の2本鎖直鎖状DNA断片の作製を含むことが多い。例えば、ゲノムDNAまたはcDNA等のDNAは、その後のシークエンシングに適切なDNA断片をもたらすために、音波処理、水力剪断、超音波、噴霧または酵素的断片化等の剪断によって断片化することができる。断片の長さは、その後シークエンシングのために使用されるシークエンシングプラットフォームのシークエンシング能力に基づいて選択することができる。本開示の一部の実施形態では、大きな核酸分子、例えば、200bpから100kbpの間の調整可能なカットオフ値を有する核酸分子を選択するために、本明細書で記載した方法を使用してライブラリーの調製中に大きな核酸断片が単離のために選択される。
【0110】
本開示はまた、本明細書で記載したようなナノ膜を含むキットを対象としており、本明細書で記載したような結合緩衝液および任意選択で洗浄溶液および溶出溶液は本明細書でまた記載したようなキットに含まれる。典型的に、キットはシリカナノ膜および結合緩衝液を含有し、結合緩衝液は、また本明細書で記載したようなアルコールおよびカオトロピック塩を含む。典型的に、アルコールはイソプロピルアルコールである。ある特定の実施形態では、結合緩衝液はさらに、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVP(Mw360000)8000等の分子クラウダーを含む。
【実施例0111】
実施例1
この実施例は、シリカナノ膜を使用して、様々な長さの2本鎖DNAを含有する試料から長さに依存した方法で2本鎖DNAを選択的に回収することができることを示す。DNAのサイズに依存した回収は、小さいDNAおよび大きいDNAに対するサイズ依存を変化させるために調整することができる。このアプローチは、例えば、シークエンシングライブラリーの調製において、試料中のDNAサイズ分布を所望するサイズ範囲に調節するために適用することができる。
【0112】
この実施例では、投入試料は、ThermoFisher社から購入したバクテリオファージラムダの48502bp直鎖状DNA200ng/μlおよび100bp plus dsDNAラダー(ThermoFisher Scientific Inc.製品番号SM0321)100ng/μlを含有する溶液11.25μlであった。試料は、最終的なイソプロパノール濃度が45%と40%との間で、最終体積が60μlであるように、1.5mlサンプルチューブ中で結合緩衝液(GuHCl 8M、10mM Tris-HCl pH=7.5、EDTA 1mM)および100%イソプロパノールおよびTE(10mM Tris-HCl、pH=8、EDTA 1mM)7.5μlと混合した。直径3ミリメートル(mm)の円形シリカナノ膜を溶液に加え、Hulaミキサー(ThermoFisher カタログ番号15920D)で10分間混合した。混合後、溶液を除去し、シリカナノ膜を微量遠心分離管中に残した。1次洗浄緩衝液(50%EtOH、NaCl 25mM、10mM Tris-HCl pH=9、EDTA 1mM)500μlを、シリカナノ膜を含有するサンプルチューブ中に加え、試験管を7回反転させた。次に、この1次洗浄緩衝液を微量遠心分離管から除去し、シリカナノ膜を残した。溶出緩衝液(10mM Tris-HCl、pH=9、EDTA 0.1mM)30μlを添加し、サンプルチューブを室温で10分間静置して、DNAを溶出させた。
【0113】
1%アガロースゲルで泳動した回収DNAを図3に示す。図3から明らかなように、イソプロパノール%を変化させるにつれて長さに依存した回収率に有意な差が生じる。DNAカットオフ(10%以下の回収率を有する最高Mwバンドとして定義される)は、イソプロパノール濃度が45%から40%に低減するにつれて、300bpから3000bpに変化している。
【0114】
実施例2
この実施例では、シリカナノ膜を使用して、短い1本鎖または2本鎖DNAオリゴマーを除去しながら、長い2本鎖DNAを回収する。このアプローチは、PCR増幅反応からの未使用1本鎖プライマーの除去、またはライゲーション反応からの未使用の1本鎖もしくは2本鎖アダプターの除去のために適用することができる。
【0115】
この実施例では、投入試料は、1)培養したGM12878細胞から抽出したゲノムDNA100ng/μlおよびAlexa647標識した20nt長の1本鎖DNAオリゴ20nM、または2)培養したGM12878細胞から抽出したゲノムDNA100ng/μlおよびAlexa647標識した20bp長2本鎖DNAオリゴ20nMのいずれかを含有する溶液25μlであった。結合緩衝液(GuHCl 8M、10mM Tris-HCl pH=7.5、EDTA 1mM)3.57μlを1.5ml微量遠心分離管中で試料に添加し、タッピングによって混合した。次に、100%イソプロパノール28.57μlおよび直径3mmのシリカナノ膜1枚をサンプルチューブに添加し、Hulaミキサー(ThermoFisherカタログ番号15920D)で10分間混合した。混合後、溶液を除去し、シリカナノ膜を微量遠心分離管中に残した。洗浄緩衝液(60%EtOH、NaCl 50mM、10mM Tris-HCl pH=7.5、EDTA 1mM)500μlを添加し、サンプルチューブを7回反転させた。次にこの2次洗浄緩衝液を微量遠心分離管から除去し、シリカナノ膜を残した。溶出緩衝液(10mM Tris-HCl、pH=9、EDTA 0.1mM)25μlを添加し、サンプルチューブを室温で10分間静置して、DNAを溶出させた。
【0116】
この実施例の結果を図4に示す。図4の4A)は、1%アガロースゲルで泳動した後のサイズ選択試料を示す。各ゲル画像は、投入試料(左の列)をAMPURE(登録商標)精製試料(0.6Xおよび1Xビーズ標準手順)およびNANOBIND(商標)サイズ選択精製試料に対して比較している。上のバンドは、SYBR(登録商標)セーフインターカレーション色素で染色したgDNAを表す。AMPURE(登録商標)精製およびNANOBIND(商標)サイズ選択はいずれも大きなgDNAの回収を示した。下側のバンドは、Alexa647標識20nt1本鎖DNAオリゴ(図4A)またはAlexa647標識20bp2本鎖DNAオリゴ(図4B)を表す。これらは両方の投入列で認めることができるが、精製した試料では認めることができないことから、NANOBIND(商標)およびAMPURE(登録商標)はいずれもこれらの短い1本鎖DNAオリゴマーの除去に有効であることを示す。したがって、シリカナノ膜を使用して、反応混合物から増幅プライマーまたはアダプター等の短い1本鎖オリゴマーを除去することができる。図4C)は、シリカナノ膜およびAMPURE(登録商標)精製からの全体的回収率を示す。シリカナノ膜精製からの回収率が88±20%である一方、AMPURE(登録商標)精製からの回収率が0.6Xで34±24%および1Xで17±8%と著しく低い。
【0117】
実施例3
この実施例では、シリカナノ膜を使用して種々のカットオフ長を下回る2本鎖DNAを除去しながら、長い2本鎖DNAを回収する。回収されたDNAカットオフ長は、最初の結合条件よりもNANOBIND(商標)の洗浄条件を変化させることによって変化する。これは、DNAライブラリーを長いリード長に偏らせるか、または平滑末端ライゲーションステップ後のdsDNAアダプターを除去するために、シークエンシングライブラリー調製におけるような反応混合物からの小さいdsDNAの除去に有用である。
【0118】
この実施例では、投入試料はThermoFisher社から購入したバクテリオファージラムダの48502bp直鎖状DNA200ng/μlおよび100bp plus dsDNAラダー(ThermoFisher Scientific Inc.製品番号SM0321)100ng/μlを含有する溶液11.25μlであった。
【0119】
試料は、最終的なイソプロパノール濃度が45%で、最終体積が60μlであるように、1.5mlサンプルチューブ中で結合緩衝液(GuHCl 8M、10mM Tris-HCl pH=7.5、EDTA 1mM)、100%イソプロパノールおよびTE(10mM Tris-HCl、pH=8、EDTA 1mM)7.5μlと混合した。直径3ミリメートル(mm)の円形シリカナノ膜を溶液に加え、Hulaミキサー(ThermoFisher カタログ番号15920D)で10分間混合した。混合後、溶液を除去し、シリカナノ膜を微量遠心分離管中に残した。洗浄緩衝液(60%EtOH、NaCl 0または25または50または100または500mM、10mM Tris-HCl pH=9、EDTA 1mM)500μlを、シリカナノ膜を含有するサンプルチューブに添加し、試験管を7回反転させた。次に、この洗浄緩衝液を微量遠心分離管から除去し、シリカナノ膜を残した。溶出緩衝液(10mMトリス-HCl、pH=9、EDTA 0.1mM)30μlを添加し、サンプルチューブを室温で10分間静置して、DNAを溶出させた。
【0120】
1%アガロースゲルで泳動した回収DNAを図5に示す。図5から明らかなように、洗浄中のNaClを変化させるにつれて、長さに依存した回収率に有意な差が生じる。DNAカットオフ(10%以下の回収率を有する最高Mwバンドとして定義される)は、洗浄中のNaCl濃度が0から500mMに増加するにつれて100bpから1500bpまで変化する。
【0121】
実施例4
この実施例では、シリカナノ膜を使用してDNA混合物および未使用の1本鎖プライマーから長い2本鎖DNAを除去しながら、短い(<1000bp)dsDNAを回収する。この実施例は、本発明の方法を使用して、例えば、キロ塩基対からメガ塩基対のgDNAのPCR増幅物から単位複製配列を精製することができることを示している。
【0122】
この実施例では、投入試料は、40nMの50bpラダー(Thermo Fisher Scientific Inc.製品番号SM0371)、直鎖化ラムダファージDNA(48kbp長、Thermo Fisher Scientific Inc.から購入)140ng/μl、および20nMのAlexa647標識20nt長DNAオリゴマーを含有する混合物12.5μlであった。
【0123】
GuHCl 1.5Mを含有し、pHが9、10、11、12または13のいずれかである結合緩衝液25μlを1.5ml微量遠心分離管中で試料に添加し、タッピングによって混合した。次に、100%イソプロパノール37.5μlおよび直径3mmのシリカナノ膜1枚を各サンプルチューブに添加し、タッピングによって混合した。これを20分間静置してDNAを結合させた。20分後、溶液を除去し、シリカナノ膜を微量遠心分離管中に残した。1次洗浄緩衝液(70%EtOH、GuHCl 0.5M、10mM Tris-HCl pH=7.5、EDTA 1mM)500μlを、シリカナノ膜を含有するサンプルチューブに添加し、試験管を5~10回反転させた。次に、この一次洗浄緩衝液を微量遠心分離管から除去し、シリカナノ膜を残した。2次洗浄緩衝液(70%EtOH、NaCl 50mM、10mM Tris-HCl pH=7.5、EDTA 1mM)500μlを添加し、試験管を5~10回反転させた。次にこの2次洗浄緩衝液を微量遠心分離管から除去し、シリカナノ膜を残した。水50μlを添加し、サンプルチューブを55℃で20分間静置して、DNAを溶出させた。
【0124】
図6は、投入試料およびpH=9、10、11、12および13の結合緩衝液を使用したNANOBIND(商標)サイズ選択精製DNAを示す。未標識DNAはSYBR(登録商標)Goldインターカレーション色素で染色した。20ntオリゴはAlexa647色素で標識した。NANOBIND(商標)サイズ選択精製試料では、Alexa647オリゴはほとんど完全に除去され、シリカナノ膜が短い1本鎖DNAオリゴマーの除去に有効であることを示している。ラムダDNAバンドは、pH=12および13で実施した精製には存在せず、高pHでの精製は長いdsDNAを同様に効率的に除去することを示している。
【0125】
実施例5
この実施例では、2本鎖DNAは1000bpと10000bpとの間で調整可能なカットオフサイズを上回って回収される。カットオフサイズは、10%以下の回収率を有する最高のMwバンドとして定義される。この手順は、第3世代のロングリードシークエンシングに有用で、時間および試料を消費するBLUE PIPPIN(商標)サイズ選択機器の代わりに使用することができる。
【0126】
この実施例では、投入試料は1kbp plusラダー(Thermo Fisher Scientific Inc.製品番号SM1331)100ng/μlおよびThermoFisher社から購入したバクテリオファージラムダの48502bp直鎖状DNA200ng/μlを含有する混合物25μlであった。
【0127】
5M NaCl 7.5μlおよび2XPVP(Mw=360000)25μlの溶液を試料に添加し、タッピングによって混合した。2XPVP溶液は、10、8、6、4、3.5およびおよび3%wt/volポリビニルピロリドン(Mw=360000)(Sigma Aldrich製品番号PVP360-100G)溶液であった。得られた溶液を室温で8000gで30分間遠心分離した。上清を除去し、DNAペレットを残した。次に、70%EtOH 200μlをサンプルチューブに添加し、室温で8000gで2分間遠心分離した。EtOH上清を除去し、微量遠心分離管を室温で2分間放置することによってDNAペレットを乾燥させた。ペレットを溶出緩衝液(10mM Tris-HCl、pH=9、EDTA 0.1mM)25μlに再懸濁し、間歇的にタッピングしながら室温で10分間インキュベートした。
【0128】
この実施例は、本明細書で記載したNANOBIND(商標)大サイズ選択工程のペレット形成ステップ部分を示す。
【0129】
図7から明らかなように、ペレット形成緩衝液変化におけるPVP濃度につれて長さに依存した回収率に有意な差が生じる。DNAカットオフ(10%以下の回収率を有する最高Mwバンドとして定義される)は、緩衝液中のPVP濃度を5%から1.5%に減少させるにつれて1000bpから10000bpに変化する。
【0130】
実施例6
この実施例は、シリカナノ膜を使用して、プライマー、dNTPおよび酵素を除去しながら、PCR増副生成物を回収することによって、どのようにPCR増幅反応をクリーンアップすることができるかを示している。
【0131】
投入試料は、標的DNA、DNAプライマーオリゴマー、dNTPおよびポリメラーゼを含有する混合物12.5μlであった。反応は、DNA単位複製配列を生成するための変性、アニーリングおよび伸長ステップによる熱サイクルであった。結合緩衝液(グアニジン塩酸塩6M、10mM Tris-HCl、pH=6.8、EDTA 1mM)25μl、シリカナノ膜1枚および100%イソプロパノール37.5μlをPCR増幅試料に添加した。次に、これを混合し、1時間静置して、その後、全液体をサンプルチューブから除去し、シリカナノ膜を残した。1次洗浄緩衝液(70%EtOH、GuHCl 0.5M、10mM Tris-HCl pH=7.5、EDTA 1mM)700μlを添加し、試験管を5~10回反転させた。次に、1次洗浄緩衝液を微量遠心分離管から除去し、シリカナノ膜を残した。次に、2次洗浄緩衝液(70%EtOH、NaCl 50mM、10mM Tris-HCl pH=7.5、EDTA 1mM)500μlを添加し、サンプルチューブを5~10回反転させた。次にこの2次洗浄緩衝液を微量遠心分離管から除去し、シリカナノ膜を残した。溶出緩衝液50μlを添加し、サンプルチューブを55℃で10分間静置して、DNAを溶出させた。溶出液はPCR単位複製配列を含有するが、dNTPおよびプライマーは投入重量の0.2%より低くまで低減した。
【0132】
シリカナノ膜精製の回収率を図8に示す。図から明らかなように、生成物の回収は長さに依存しており、短い生成物は長い生成物よりも低い効率で回収される。
参照文献(REFERENCES)
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図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
のサイズ選択方法であって、
a.水と、塩と、ポリビニルピロリドン(PVP)および/またはフィコール(Ficoll)と、を含む沈殿溶液を核酸含有試料に添加して試料溶液を生成するステップと、
b.前記核酸含有試料中の1または複数の選択されたサイズの核酸を前記PVPおよび/またはフィコールによって沈殿させて、沈殿した核酸を生じさせるステップと、
溶液中に残存する核酸から前記沈殿した核酸を分離することにより核酸のサイズ選択を行うステップと、
を含む方法。
【請求項2】
選択されたサイズカットオフ値を決定するために前記沈殿溶液の少なくとも1つの条件を調整するステップを含み、
少なくとも1つの前記条件が、PVPおよび/またはフィコールの濃度、PVPの分子量、カオトロピック塩の有無、1価および/または2価塩の有無、塩の濃度および種類、アルコールの種類および濃度、ポリアミンの有無、変性剤の有無、その他の添加分子の有無、pH、沈殿/結合時間、沈殿/結合温度、沈殿/結合体積、遠心分離時間、遠心分離温度、これらの組合せを含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記沈殿した核酸が、カットオフ値を上回る全サイズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ナノ膜精製法を行う前に前記ステップaからcを行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ナノ膜精製法を行った後に前記ステップaからcを行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ナノ膜精製法を行うのと同時に前記ステップaからcを行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記沈殿した核酸が、所望するサイズ範囲の核酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ペレット化した沈殿した核酸を再懸濁するステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記核酸含有試料中の核酸を大きさに基づいてペレット化させて核酸ペレットを生成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記核酸ペレットにアルコールを添加するステップと、前記核酸ペレットを遠心分離するステップと、前記核酸ペレットからアルコール上清を除去するステップと、さらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記PVPが、PVP(Mw29000)、PVP(Mw40000)、PVP(Mw55000)、PVP(Mw360000)、および/またはPVP(Mw1300000)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記試料溶液中の前記PVPの濃度は、前記核酸の1または複数の選択されたサイズが1000塩基対から10キロ塩基対となるような濃度である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップaからcが、ナノメンブレン精製法とは別に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記試料溶液中の核酸濃度が50ng/μlを超える核酸をサイズ選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)精製ステップを行わない、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
核酸のサイズ選択方法であって、
a.水と、塩と、ポリビニルピロリドン(PVP)および/またはフィコール(Ficoll)と、を含む沈殿溶液をチューブ中の核酸含有試料に添加して、試料溶液を生成するステップと、
b.前記試料溶液を遠心分離して前記チューブ内に核酸ペレットを生じさせるステップであって、前記核酸ペレットが前記PVPおよび/またはフィコールによって沈殿する1または複数の選択されたサイズの核酸を含み、上清が溶液中に残っているステップと、
c.前記チューブから前記上清を除去するステップと、
d.前記核酸ペレットを水溶液に再懸濁させるステップと、
を含む方法。
【請求項17】
選択されたサイズカットオフ値を決定するために前記沈殿溶液の少なくとも1つの条件を調整するステップを含み、
少なくとも1つの前記条件が、PVPおよび/またはフィコールの濃度、PVPの分子量、カオトロピック塩の有無、1価および/または2価塩の有無、塩の濃度および種類、アルコールの種類および濃度、ポリアミンの有無、変性剤の有無、その他の添加分子の有無、pH、沈殿/結合時間、沈殿/結合温度、沈殿/結合体積、遠心分離時間、遠心分離温度、これらの組合せを含む群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記沈殿した核酸が、カットオフ値を上回る全サイズを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ナノ膜精製法を行う前に前記ステップaからdを行うことを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
ナノ膜精製法を行った後に前記ステップaからdを行うことを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
ナノ膜精製法を行うのと同時に前記ステップaからdを行うことを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記ステップcを行った後に、前記チューブにアルコールを添加するステップと、前記チューブを遠心分離するステップと、前記チューブからアルコール上清を除去するステップと、をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記沈殿溶液がさらに緩衝液を含む、請求項16に記載の方法
【請求項24】
前記水溶液が溶出緩衝液を含む、請求項16に記載の方法
【請求項25】
前記PVPが、PVP(Mw29000)、PVP(Mw40000)、PVP(Mw55000)、PVP(Mw360000)、および/またはPVP(Mw1300000)を含む、請求項16に記載の方法
【請求項26】
前記試料溶液中の前記PVPの濃度は、前記核酸の1または複数の選択されたサイズが1000塩基対から10キロ塩基対となるような濃度である、請求項16に記載の方法
【請求項27】
前記ステップaからdが、ナノメンブレン精製法とは別に行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記試料溶液中の核酸濃度が50ng/μlを超える核酸をサイズ選択するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)精製ステップを行わない、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
核酸のサイズ選択方法であって、
a.水と、塩と、ポリビニルピロリドン(PVP)と、を含む沈殿溶液を核酸含有試料に添加して試料溶液を生成するステップであって、前記PVPが10000から1300000の分子量を有し、前記沈殿溶液中のPVPの濃度が0.1%から40%であるステップと、
b.前記核酸含有試料中の1または複数のサイズの核酸から前記PVPによって沈殿させて、沈殿した核酸を生じさせるステップと、
c.溶液中に残存する核酸から前記沈殿した核酸を分離することにより核酸のサイズ選択を行うステップと、を含み、
磁気ビーズ精製ステップを含まない
方法。
【請求項31】
前記沈殿した核酸が、1000塩基対から10000塩基対のサイズカットオフ値を含む、請求項30に記載の方法。