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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169809
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】車両アシスト装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/34 20060101AFI20221102BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
F16H63/34
B60T1/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019132526
(22)【出願日】2019-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 貢
(72)【発明者】
【氏名】内田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】中井 雅也
(72)【発明者】
【氏名】所 昇平
(72)【発明者】
【氏名】大参 昂平
【テーマコード(参考)】
3J067
【Fターム(参考)】
3J067AA21
3J067AB23
3J067DA52
3J067DB32
3J067FA57
3J067FA63
3J067FA84
3J067FB83
3J067GA01
(57)【要約】
【課題】ポンプおよびパーキングロック機構をより簡易な構成で選択的に駆動可能にする。
【解決手段】モータを有する駆動ユニットと、駆動ユニットとポンプとに接続された第1ワンウェイクラッチと、駆動ユニットとパーキングロック機構とに接続された第2ワンウェイクラッチとを備える。そして、第1ワンウェイクラッチは、モータが第1回転方向に回転するときにモータの回転をポンプに伝達すると共にモータが第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転するときにモータの回転を前記ポンプに伝達しない。また、第2ワンウェイクラッチは、モータが第2回転方向に回転するときにモータの回転をパーキングロック機構に伝達すると共にモータが第1回転方向に回転するときにモータの回転をパーキングロック機構に伝達しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、ポンプおよびパーキングロック機構を備える車両アシスト装置であって、
モータを有する駆動ユニットと、
前記駆動ユニットと前記ポンプとに接続され、前記モータが第1回転方向に回転するときに前記モータの回転を前記ポンプに伝達すると共に前記モータが前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転するときに前記モータの回転を前記ポンプに伝達しない第1ワンウェイクラッチと、
前記駆動ユニットと前記パーキングロック機構とに接続され、前記モータが前記第2回転方向に回転するときに前記モータの回転を前記パーキングロック機構に伝達すると共に前記モータが前記第1回転方向に回転するときに前記モータの回転を前記パーキングロック機構に伝達しない第2ワンウェイクラッチと、
を備える車両アシスト装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両アシスト装置であって、
前記駆動ユニットは、前記モータの回転を、回転方向の変更を伴わずに前記第1,第2ワンウェイクラッチのうちの一方に伝達すると共に、回転方向の変更を伴って前記第1,第2ワンウェイクラッチのうちの他方に伝達する、
車両アシスト装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両アシスト装置であって、
前記駆動ユニットは、前記モータと前記第1,第2ワンウェイクラッチのうちの一方の入力側とに接続された第1回転軸に取り付けられた第1ギヤと、前記第1,第2ワンウェイクラッチのうちの他方の入力側に接続された第2回転軸に取り付けられると共に前記第1ギヤに噛合する第2ギヤと、を有するギヤ機構を備える、
車両アシスト装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両アシスト装置であって、
前記ギヤ機構は、前記モータの回転を回転方向の変更および減速を伴って前記第2ワンウェイクラッチに伝達する減速機構として構成される、
車両アシスト装置。
【請求項5】
請求項1記載の車両アシスト装置であって、
前記モータ、前記第1ワンウェイクラッチの入力側、前記第2ワンウェイクラッチの入力側は、何れも同一方向に回転する、
車両アシスト装置。
【請求項6】
請求項5記載の車両アシスト装置であって、
前記モータと前記パーキングロック機構との間に設けられ、前記モータ側の回転を回転方向の保持および減速を伴って前記パーキングロック機構側に伝達する減速機構を更に備える、
車両アシスト装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちの何れか1つの請求項に記載の車両アシスト装置であって、
前記パーキングロック機構は、前記第2ワンウェイクラッチの出力側に連結されたカムの回転に伴ってパーキングロック状態とパーキングロック解除状態とを切り替える、
車両アシスト装置。
【請求項8】
請求項7記載の車両アシスト装置であって、
前記パーキングロック機構は、パーキングロック状態を形成するロック側またはパーキングロック解除状態を形成する解除側に支軸周りに回動するレバーと、前記カムの回転に伴って軸方向における一方側または他方側に移動することにより前記レバーを前記ロック側または前記解除側に回動させる従動部材とを有する、
車両アシスト装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちの何れか1つの請求項に記載の車両アシスト装置であって、
前記ポンプは、前記第1ワンウェイクラッチの出力側に連結された回転部材の回転に伴って前記車両の潤滑冷却対象に潤滑冷却媒体を供給する、
車両アシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両アシスト装置としては、オイルを減速機に循環させるポンプを有する電動ポンプ機構と、減速機の出力軸に設けられたパーキングギヤをロックまたはアンロックするロック手段を有するパーキングロック機構と、ポンプに接続されるモータと、モータとロック手段との間に設けられた駆動力切替機構(例えば、電磁クラッチ)とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、電動ポンプ機構は、モータの正転時および逆転時の何れでも減速機にオイルを循環可能にするために、複数の逆止弁や複数のバイパス路を有する。この車両アシスト装置では、駆動力切替機構を遮断した状態でモータを駆動してモータの駆動力をポンプおよびロック手段のうちのポンプのみに伝えることにより、減速機に対してオイルを供給することができる。また、駆動力切替機構を接続した状態でモータを駆動してモータの駆動力をロック手段およびポンプに伝えることにより、パーキングギヤをロックまたはアンロックするロック制御またはアンロック制御を行なうと共に減速機に対してオイルを供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-185651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の車両アシスト装置では、パーキングロック機構だけを作動させたいときでも、ポンプが作動してしまうから、モータの容量をある程度大きくする必要がある。また、駆動力切替機構や複数の逆止弁、複数のバイパス路を設ける必要があるから、構造が複雑になり、装置全体の大型化やコストの増加を招いている。
【0005】
本開示の車両アシスト装置は、ポンプおよびパーキングロック機構をより簡易な構成で選択的に駆動可能にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両アシスト装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の車両アシスト装置は、
車両に搭載され、ポンプおよびパーキングロック機構を備える車両アシスト装置であって、
モータを有する駆動ユニットと、
前記駆動ユニットと前記ポンプとに接続され、前記モータが第1回転方向に回転するときに前記モータの回転を前記ポンプに伝達すると共に前記モータが前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転するときに前記モータの回転を前記ポンプに伝達しない第1ワンウェイクラッチと、
前記駆動ユニットと前記パーキングロック機構とに接続され、前記モータが前記第2回転方向に回転するときに前記モータの回転を前記パーキングロック機構に伝達すると共に前記モータが前記第1回転方向に回転するときに前記モータの回転を前記パーキングロック機構に伝達しない第2ワンウェイクラッチと、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本開示の車両アシスト装置では、モータを有する駆動ユニットと、駆動ユニットとポンプとに接続された第1ワンウェイクラッチと、駆動ユニットとパーキングロック機構とに接続された第2ワンウェイクラッチとを備える。そして、第1ワンウェイクラッチは、モータが第1回転方向に回転するときにモータの回転をポンプに伝達すると共にモータが第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転するときにモータの回転をポンプに伝達しない。また、第2ワンウェイクラッチは、モータが第2回転方向に回転するときにモータの回転をパーキングロック機構に伝達すると共にモータが第1回転方向に回転するときにモータの回転をパーキングロック機構に伝達しない。これにより、モータを第1回転方向に回転させると、ポンプを作動させることができ、モータを第2回転方向に回転させると、パーキングロック機構を作動させることができる。この結果、ポンプおよびパーキングロック機構をより簡易な構成で選択的に駆動することができる。そして、車両アシスト装置の小型化やコストの低減を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両アシスト装置10の構成の概略を示す構成図である。
図2】パーキングロック機構30の構成の概略を示す構成図である。
図3】パーキングロック機構30の構成の概略を示す構成図である。
図4】車両アシスト装置10Bの構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本開示の車両アシスト装置10の構成の概略を示す構成図である。本開示の車両アシスト装置10は、エンジンやモータなどの駆動源や、その駆動源からの動力を変速して駆動輪に伝達する変速機などを備える車両に搭載され、図示するように、駆動ユニット11と、第1ワンウェイクラッチ20と、オイルポンプ24と、第2ワンウェイクラッチ26と、パーキングロック機構30とを備える。以下の説明では、各回転要素について、車両アシスト装置10を図1の右側から見たときの時計回り、反時計回りの回転をそれぞれ正回転(第1回転方向の回転)、逆回転(第2回転方向の回転)という。
【0012】
駆動ユニット11は、モータ12と、ギヤ機構16とを備える。モータ12は、図示しない電子制御ユニットにより駆動制御される。ギヤ機構16は、モータ12の回転子が連結された回転軸13に取り付けられたドライブギヤ(第1ギヤ)17と、回転軸13と平行に延びる回転軸14に取り付けられると共にドライブギヤ17と噛合するドリブンギヤ(第2ギヤ)18とを備える。ドライブギヤ17の歯数は、ドリブンギヤ18の歯数よりも少なくなるように設計されている。したがって、ギヤ機構16は、回転軸13の回転を回転方向の変更および減速(トルクの増幅)を伴って第2回転軸に14に伝達する減速機構として構成されている。
【0013】
第1ワンウェイクラッチ20は、モータ12に接続された回転軸13と、オイルポンプ24に回転軸22を介して連結された回転部材21と、の間に設けられている。この第1ワンウェイクラッチ20は、モータ12が正回転して回転軸13も正回転するときには、その回転を回転部材21および回転軸22を介してオイルポンプ24に伝達するが、モータ12が逆回転して回転軸13も逆回転するときには、その回転をオイルポンプ24側に伝達しない。
【0014】
オイルポンプ24は、ギヤポンプとして構成されており、インナーロータ(外歯ギヤ)24iや、インナーロータ24iに噛合するアウターロータ(内歯ギヤ)24o、ポンプボディおよびポンプカバー(何れも図示省略)により構成されると共にインナーロータ24iおよびアウターロータ24oをそれぞれ回転自在に収容するギヤ室を画成するハウジングを有する。インナーロータ24iは、回転軸22に連結され、回転軸22に付与される回転(動力)により回転駆動される。ポンプボディは、例えば変速機の変速機ケースに固定され、ポンプカバーは、ポンプボディに固定される。
【0015】
このオイルポンプ24は、モータ12が正回転して回転軸13も正回転するときには、第1ワンウェイクラッチ20の機能により、回転部材21、回転軸22、オイルポンプ24のインナーロータ24iが正回転し、オイルパン内の作動油(ATF)を吸引して車両の潤滑冷却対象に供給する。一方、モータ12が逆回転して回転軸13も逆回転するときには、第1ワンウェイクラッチ20の機能により、回転部材21、回転軸22、オイルポンプ24のインナーロータ24iは回転しないから、オイルポンプ24は、作動油を潤滑冷却対象に供給しない。
【0016】
第2ワンウェイクラッチ26は、モータ12に回転軸13およびギヤ機構16を介して連結された回転軸14と、パーキングロック機構30に回転軸28を介して連結された回転部材27と、の間に設けられている。この第2ワンウェイクラッチ26は、モータ12が逆回転して回転軸13も逆回転して回転軸14が正回転するときには、その回転を回転部材27および回転軸28を介してパーキングロック機構30に伝達するが、モータ12が正回転して回転軸13も正回転して回転軸14が逆回転するときには、その回転をパーキングロック機構30側に伝達しない。
【0017】
図2および図3は、パーキングロック機構30の構成の概略を示す構成図である。図2は、パーキングロック状態の様子を示し、図3は、パーキングロック解除状態の様子を示す。パーキングロック機構30は、図2図3に示すように、パーキングギヤ31や、パーキングポール32、パーキングロッド33、カム部材34、支持ローラ35、カムスプリング36、ディテントレバー40、カム機構50を備える。
【0018】
パーキングギヤ31は、外周に複数の歯31aを有すると共に変速機の出力部材に取り付けられている。パーキングポール32は、パーキングギヤ31と係合可能な突部32aを有すると共にスプリング32bによりパーキングギヤ31から離間するように付勢されている。パーキングロッド33は、その軸方向に沿って往復移動可能に設けられ、基端部(図2図3における右端部)がディテントレバー40に回転自在に連結されている。カム部材34は、筒状に形成されており、パーキングロッド33の軸方向に移動可能にパーキングロッド33が挿通されている。支持ローラ35は、例えば変速機の変速機ケースにより回転自在に支持され、パーキングポール32と共にカム部材34を挟持する。カムスプリング36は、パーキングロッド33により一端部が支持されると共にパーキングポール32をパーキングギヤ31に押し付けるようにカム部材34を付勢する。パーキングギヤ31やパーキングポール32、パーキングロッド33、カム部材34、支持ローラ35、カムスプリング36は、何れも周知の構成を有する。
【0019】
ディテントレバー40は、略L字状に形成されており、基部41と第1遊端部42と第2遊端部43とを有する。基部41は、第1遊端部42および第2遊端部43の基部(コーナー部)であり、例えば変速機の変速機ケースに取り付けられたシャフト46により回動自在に支持されている。第1遊端部42は、パーキングロッド33の基端部(図2図3における右端部)に回転自在に連結されている。第2遊端部43の外周には、カム機構50の従動部材53の一端面(図2図3における上端面)と当接する当接面43aが形成されている。
【0020】
カム機構50は、カム51や、カム51と一体に回転する円板部52、カム51の回転に伴って往復動する従動部材53を有する。カム51は、円板状に形成され、回転軸28に偏心して(回転軸28に対して重心がずれるように)取り付けられている。円板部52は、円板状に形成され、回転軸28に対して重心が一致するように且つカム51と回転軸の軸方向に並ぶように回転軸28に取り付けられる。円板部52の外周には、周方向に180度の間隔をおいて径方向内側に凹む係合凹部52a,52bが形成されている。係合凹部52a,52bは、例えば変速機の変速機ケースにより支持される板ばねとしてのスプリング54の先端部に取り付けられたピン55と係合可能に形成されている。ピン55は、スプリング54により円板部52側に付勢されている。
【0021】
従動部材53は、円柱状に形成され、一端面がディテントレバー40の第2遊端部43の当接面43aに当接すると共に他端面がカム51の外周面に当接する。この従動部材53は、その軸方向(図2図3における上下方向)に沿って移動可能に図示しない支持部材により支持されており、且つ、図示しないスプリングにより回転軸28側(図2図3における下側)に付勢されている。
【0022】
このパーキングロック機構30は、パーキングロック状態では、図2に示すように、パーキングポール32の突部32aがパーキングギヤ31の隣り合う2つの歯31aの間の凹部に係合することにより、変速機の出力軸がロックされている。このとき、カム機構50では、カム51の重心が回転軸28に対して従動部材53から離間する側(図2における下側)に位置しており、且つ、円板部52の係合凹部52aにピン55が係合されている。
【0023】
そして、パーキングロック状態で、モータ12が逆回転して回転軸13も逆回転して回転軸14が正回転すると、第2ワンウェイクラッチ26の機能により、回転部材27、回転軸28、カム機構50が正回転する(例えば、図2における時計回りで回転する)。このカム機構50の回転に伴って、ピン55が円板部52の係合凹部52aから離脱すると共に、カム51の外周の従動部材53との当接部分と回転軸28との距離が長くなって従動部材53が図2における上側に移動する。この従動部材53の移動に伴って、ディテントレバー40が図2における時計回りに回動し、パーキングロッド33が図2における右側に移動し、カム部材34によるパーキングポール32の押圧が解除され、パーキングポール32の突部32aがパーキングギヤ31の隣り合う2つの歯31aの間の凹部から離間する。これにより、図3に示すように、パーキングロック解除状態が形成される(変速機の出力軸のロックが解除される)。このとき、カム機構50では、カム51の重心が回転軸28に対して従動部材53に接近する側(図3における上側)に位置し、円板部52の係合凹部52bにピン55が係合される。
【0024】
そして、パーキングロック解除状態で、モータ12が逆回転してカム機構50が正回転する(例えば、図3における時計回りで回転する)と、ピン55が円板部52の係合凹部52bから離脱すると共に、カム51の外周の従動部材53との当接部分と回転軸28との距離が短くなって図示しないスプリングによる付勢力により従動部材53が図3における下側に移動する。この従動部材53の移動に伴って、ディテントレバー40が図3における反時計回りに回動し、パーキングロッド33が図3における左側に移動し、カムスプリング36により付勢されたカム部材34によりパーキングポール32がパーキングギヤ31と係合するように押圧され、パーキングポール32の突部32aがパーキングギヤ31の隣り合う2つの歯31aの間の凹部に係合する。これにより、図2に示すように、パーキングロック状態が形成される。このとき、カム機構50では、カム51の重心が回転軸28に対して従動部材53から離間する側(図2における下側)に位置し、且つ、円板部52の係合凹部52aにピン55が係合される。
【0025】
即ち、モータ12の逆回転に伴って、パーキングロック機構30は、パーキングロック状態とパーキングロック解除状態とが切り替わるのである。一方、モータ12が正回転して回転軸13も正回転して回転軸14が逆回転するときには、第2ワンウェイクラッチ26の機能により、回転部材27、回転軸28、パーキングロック機構30のカム機構50は回転しないから、パーキングロック機構30は、パーキングロック状態またはパーキングロック解除状態を保持する。
【0026】
こうして構成される車両アシスト装置10では、シフトレバーが駐車ポジションのときには、パーキングロック機構30がパーキングロック状態になっている。そして、シフトレバーが駐車ポジションからそれ以外のポジションに変更されると(その変更を図示しない電子制御ユニットが検知すると)、電子制御ユニットは、モータ12を逆回転させる。これにより、パーキングロック機構30がパーキングロック状態からパーキングロック解除状態に切り替わる。このとき、オイルポンプ24は停止している。その後に、電子制御ユニットは、モータ12を正回転させると、オイルポンプ24が車両の潤滑冷却対象に作動油を供給する。このとき、パーキングロック機構30はパーキングロック解除状態を保持する。そして、シフトレバーが駐車ポジションに変更されると、電子制御ユニットは、モータ12を逆回転させる。これにより、パーキングロック機構30がパーキングロック解除状態からパーキングロック状態に切り替わる。このとき、オイルポンプ24は停止している。なお、パーキングロック機構30がパーキングロック状態のときでも、モータ12を正回転させれば、オイルポンプ24が車両の潤滑冷却対象に作動油を供給する。このようにして、オイルポンプ24およびパーキングロック機構30を選択的に駆動することができる。
【0027】
本実施形態では、モータ12が正回転するときにだけモータ12の回転をオイルポンプ24に伝達する第1ワンウェイクラッチ20と、モータ12が逆回転する(モータ12に回転軸13およびギヤ機構16を介して連結された回転軸14が正回転する)ときにだけモータ12の回転をパーキングロック機構30に伝達する第2ワンウェイクラッチ26とを設ける。これにより、モータ12が正回転するときには、オイルポンプ24を作動させる(潤滑冷却対象に作動油を供給する)ことができ、モータ12が逆回転するときには、パーキングロック機構30を作動させる(パーキングロック状態とパーキングロック解除状態とを切り替える)ことができる。この結果、モータ12とオイルポンプ24との間やモータ12とパーキングロック機構30との間にアクチュエータにより駆動されるクラッチなどを設けることなく、より簡易な構成でオイルポンプ24およびパーキングロック機構30を選択的に駆動することができる。そして、車両アシスト装置10の小型化やコストの低減を図ることもできる。
【0028】
しかも、モータ12に接続された回転軸13と、パーキングロック機構30のカム機構50に回転軸28、回転部材27、第2ワンウェイクラッチ26を介して連結された回転軸14と、を減速機構として構成されたギヤ機構16を介して連結するから、モータ12が逆回転するときに、モータ12の回転をトルクの増幅を伴ってパーキングロック機構30のカム機構50に伝達することができる。これにより、パーキングロック機構30を作動させるのに要するモータ12のトルクを小さくすることができる。
【0029】
本実施形態では、ギヤ機構16は、モータ12に接続された回転軸13の回転を、パーキングロック機構30のカム機構50に回転軸28、回転部材27、第2ワンウェイクラッチ26を介して連結された回転軸14に、回転方向の変更および減速(トルクの増幅)を伴って伝達する減速機構として構成されるものとした。しかし、ギヤ機構16は、回転軸13の回転を回転軸14に、減速を伴わずに且つ回転方向の変更を伴って伝達するものとしてもよい。
【0030】
本実施形態では、モータ12に接続された回転軸13に、第1ワンウェイクラッチ20、回転部材21、回転軸22を介してオイルポンプ24が接続されると共に、ギヤ機構16、第2ワンウェイクラッチ26、回転部材27、回転軸28を介してパーキングロック機構30が接続されるものとした。しかし、モータ12が、回転軸13でなく、回転軸14に接続されるものとしてもよい。即ち、モータ12に接続された回転軸14に、第2ワンウェイクラッチ26、回転部材27、回転軸28を介してパーキングロック機構30が接続されると共にギヤ機構16、回転軸13、第1ワンウェイクラッチ20、回転部材21、回転軸22を介してオイルポンプ24が接続されるものとしてもよい。この場合、ギヤ機構16は、ドライブギヤ17が回転軸14に取り付けられると共にドライブギヤ17よりも歯数が少ない(高回転の)ドリブンギヤ18が回転軸13に取り付けられるものとしてもよい。
【0031】
図4は、他の実施形態に係る車両アシスト装置10Bの構成の概略を示す構成図である。以下の説明でも、各回転要素について、車両アシスト装置10Bを図4の右側から見たときの時計回り、反時計回りの回転をそれぞれ正回転(第1回転方向の回転)、逆回転(第2回転方向の回転)という。図4の車両アシスト装置10Bは、図1の車両アシスト装置10の回転軸14、ギヤ機構16、第2ワンウェイクラッチ26、回転部材27に代えて第2ワンウェイクラッチ70、回転部材71、回転軸72、遊星歯車機構73を用いる点、および、パーキングロック機構30が作動する際にカム機構50が正回転でなく逆回転する点を除いて、図1の車両アシスト装置10と同一である。したがって、重複する説明を回避するために、図4の車両アシスト装置10Bのうち図1の車両アシスト装置10と同一の構成については、図1の車両アシスト装置10と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0032】
車両アシスト装置10Bでは、モータ12、回転軸13、第1ワンウェイクラッチ20の入力側、第2ワンウェイクラッチ70の入力側は、何れも同軸に配置され、一体に回転する。第2ワンウェイクラッチ70は、モータ12に接続された回転軸13と、パーキングロック機構30に回転軸28、遊星歯車機構73、回転軸72を介して連結された回転部材71と、の間に設けられている。この第2ワンウェイクラッチ70は、モータ12が逆回転して回転軸13も逆回転するときには、その回転を回転部材71、回転軸72、遊星歯車機構73、回転軸28を介してパーキングロック機構30に伝達するが、モータ12が正回転して回転軸13も正回転するときには、その回転をパーキングロック機構30側に伝達しない。
【0033】
遊星歯車機構73は、外歯歯車であるサンギヤ73sと、内歯歯車であるリングギヤ73rと、サンギヤ73sおよびリングギヤ73rに噛合する複数のピニオンギヤ73pと、複数のピニオンギヤ73pを自転かつ公転自在に支持するキャリヤ73cとを有する。サンギヤ73sには、回転軸72が接続されており、リングギヤ73rは、例えば変速機の変速機ケースに固定されており、キャリヤ73cは、回転軸28に接続されている。この遊星歯車機構73は、いわゆる減速機構として構成されており、入力要素であるサンギヤ73sの回転(動力)を回転方向の保持と減速(トルクの増幅)とを伴って出力要素である回転軸28に伝達する。
【0034】
この実施形態では、モータ12(回転軸13)が正回転するときにだけモータ12の回転をオイルポンプ24に伝達する第1ワンウェイクラッチ20と、モータ12が逆回転するときにだけモータ12の回転をパーキングロック機構30に伝達する第2ワンウェイクラッチ70とを設ける。これにより、モータ12が正回転するときには、オイルポンプ24を作動させる(潤滑冷却対象に作動油を供給する)ことができ、モータ12が逆回転するときには、パーキングロック機構30を作動させる(パーキングロック状態とパーキングロック解除状態とを切り替える)ことができる。この結果、モータ12とオイルポンプ24との間やモータ12とパーキングロック機構30との間にアクチュエータにより駆動されるクラッチなどを設けることなく、より簡易な構成でオイルポンプ24およびパーキングロック機構30を選択的に駆動することができる。そして、車両アシスト装置10の小型化やコストの低減を図ることもできる。
【0035】
しかも、モータ12に接続された回転軸13に第2ワンウェイクラッチ70、回転部材71を介して連結された回転軸72と、パーキングロック機構30のカム機構50に接続された回転軸28と、を減速機構として構成された遊星歯車機構73を介して連結するから、モータ12が逆回転するときに、モータ12の回転をトルクの増幅を伴ってパーキングロック機構30のカム機構50に伝達することができる。これにより、パーキングロック機構30を作動させるのに要するモータ12のトルクを小さくすることができる。
【0036】
この実施形態では、減速機構として構成された遊星歯車機構73を、第2ワンウェイクラッチ70とパーキングロック機構30との間に設けるものとしたが、モータ12と第2ワンウェイクラッチ70との間に設けるものとしてもよい。また、遊星歯車機構73を設けないものとしてもよい。
【0037】
以上説明したように、本開示の車両アシスト装置は、車両に搭載され、ポンプ(24)およびパーキングロック機構(30)を備える車両アシスト装置(10,10B)であって、モータ(12)を有する駆動ユニット(11)と、前記駆動ユニット(11)と前記ポンプ(24)とに接続され、前記モータ(12)が第1回転方向に回転するときに前記モータ(12)の回転を前記ポンプ(24)に伝達すると共に前記モータ(12)が前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転するときに前記モータ(12)の回転を前記ポンプ(24)に伝達しない第1ワンウェイクラッチ(20)と、前記駆動ユニット(11)と前記パーキングロック機構(30)とに接続され、前記モータ(12)が前記第2回転方向に回転するときに前記モータ(12)の回転を前記パーキングロック機構(30)に伝達すると共に前記モータ(12)が前記第1回転方向に回転するときに前記モータ(12)の回転を前記パーキングロック機構(30)に伝達しない第2ワンウェイクラッチ(26,70)とを備えることを要旨とする。
【0038】
この本開示の車両アシスト装置では、モータを有する駆動ユニットと、駆動ユニットとポンプとに接続された第1ワンウェイクラッチと、駆動ユニットとパーキングロック機構とに接続された第2ワンウェイクラッチとを備える。そして、第1ワンウェイクラッチは、モータが第1回転方向に回転するときにモータの回転をポンプに伝達すると共にモータが第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転するときにモータの回転をポンプに伝達しない。また、第2ワンウェイクラッチは、モータが第2回転方向に回転するときにモータの回転をパーキングロック機構に伝達すると共にモータが第1回転方向に回転するときにモータの回転をパーキングロック機構に伝達しない。これにより、モータを第1回転方向に回転させると、ポンプを作動させることができ、モータを第2回転方向に回転させると、パーキングロック機構を作動させることができる。この結果、ポンプおよびパーキングロック機構をより簡易な構成で選択的に駆動することができる。そして、車両アシスト装置の小型化やコストの低減を図ることもできる。
【0039】
こうした本開示の車両アシスト装置において、前記駆動ユニット(11)は、前記モータ(12)の回転を、回転方向の変更を伴わずに前記第1,第2ワンウェイクラッチ(20,26)のうちの一方に伝達すると共に、回転方向の変更を伴って前記第1,第2ワンウェイクラッチ(20,26)のうちの他方に伝達するものとしてもよい。この場合、前記駆動ユニット(11)は、前記モータ(12)と前記第1,第2ワンウェイクラッチ(20,26)のうちの一方の入力側とに接続された第1回転軸(13)に取り付けられた第1ギヤ(17)と、前記第1,第2ワンウェイクラッチ(20,26)のうちの他方の入力側に接続された第2回転軸(14)に取り付けられると共に前記第1ギヤ(17)に噛合する第2ギヤ(18)と、を有するギヤ機構(16)を備えるものとしてもよい。この場合、前記ギヤ機構(16)は、前記モータ(12)の回転を回転方向の変更および減速を伴って前記第2ワンウェイクラッチ(26)に伝達する減速機構として構成されるものとしてもよい。こうすれば、モータが第2回転方向に回転するときに、モータの回転がギヤ機構でのトルクの増幅を伴って第2ワンウェイクラッチを介してパーキングロック機構に伝達されるから、パーキングロック機構を作動させるのに要するモータのトルクを小さくすることができる。
【0040】
本開示の車両アシスト装置において、前記モータ(12)、前記第1ワンウェイクラッチ(20)の入力側、前記第2ワンウェイクラッチ(70)の入力側は、何れも同一方向に回転するものとしてもよい。この場合、前記モータ(12)と前記パーキングロック機構(30)との間に設けられ、前記モータ(12)側の回転を回転方向の保持および減速を伴って前記パーキングロック機構(30)側に伝達する減速機構(73)を更に備えるものとしてもよい。こうすれば、モータが第2回転方向に回転するときに、モータの回転が減速機構でのトルクの増幅を伴って第2ワンウェイクラッチを介してパーキングロック機構に伝達されるから、パーキングロック機構を作動させるのに要するモータのトルクを小さくすることができる。
【0041】
本開示の車両アシスト装置において、前記パーキングロック機構(30)は、前記第2ワンウェイクラッチ(26,70)の出力側に連結されたカム(51)の回転に伴ってパーキングロック状態とパーキングロック解除状態とを切り替えるものとしてもよい。この場合、前記パーキングロック機構(30)は、パーキングロック状態を形成するロック側またはパーキングロック解除状態を形成する解除側に支軸周りに回動するレバー(40)と、前記カム(51)の回転に伴って軸方向における一方側または他方側に移動することにより前記レバー(40)を前記ロック側または前記解除側に回動させる従動部材(53)とを有するものとしてもよい。こうすれば、カム部の回転を従動部材の軸方向の移動に変換してレバーを回動させることにより、パーキングロック状態とパーキングロック解除状態とを切り替えることができる。
【0042】
本開示の車両アシスト装置において、前記ポンプ(24)は、前記第1ワンウェイクラッチ(20)の出力側に連結された回転部材(24i)の回転に伴って前記車両の潤滑冷却対象に潤滑冷却媒体を供給するものとしてもよい。
【0043】
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示は、車両アシスト装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10,10B 車両アシスト装置、11 駆動ユニット、12 モータ、13,14,22,28,72 回転軸、16 ギヤ機構、17 ドライブギヤ、18 ドリブンギヤ、20 第1ワンウェイクラッチ、21,27,71 回転部材、24 オイルポンプ、24i インナーロータ、24o アウターロータ、26,70 第2ワンウェイクラッチ、30 パーキングロック機構、31 パーキングギヤ、31a 歯、32 パーキングポール、32a 突部、32b スプリング、33 パーキングロッド、34 カム部材、35 支持ローラ、36 カムスプリング、40 ディテントレバー、41 基部、42 第1遊端部、43 第2遊端部、43a 当接面、46 シャフト、50 カム機構、51 カム、52 円板部、52a,52b 係合凹部、54 スプリング、55 ピン、53 従動部材、73 遊星歯車機構、73c キャリヤ、73p ピニオンギヤ、73r リングギヤ、73s サンギヤ。
図1
図2
図3
図4