(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169810
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】フォームラバー及びその製造方法並びに吸音材
(51)【国際特許分類】
C08J 9/30 20060101AFI20221102BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20221102BHJP
C08L 9/10 20060101ALI20221102BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C08J9/30 CEQ
C08K3/34
C08L9/10
B60R13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019171096
(22)【出願日】2019-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 正雄
(72)【発明者】
【氏名】砂田 貴史
【テーマコード(参考)】
3D023
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
3D023BA03
3D023BB21
3D023BC01
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3D023BD12
3D023BE04
3D023BE31
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4J002AC011
4J002AC031
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4J002GN00
4J002HA07
(57)【要約】
【課題】低周波領域の吸音特性に優れる吸音材向けフォームラバーを提供すること。
【解決手段】中空のセル同士が連結した連続気泡を有するフォームラバーであって、前記セルのJIS Z 8827-1:2018で定義されたHeywood径が100~180μm、密度が0.10~0.35g/cm3であるフォームラバー。フォームラバーは、セル連結部分の内穴のJIS Z 8827-1:2018で定義されたHeywood径が10~35μmであることが好ましく、エラストマーラテックスを主原料としたものが好ましい。フォームラバーは、自動車用の吸音材として好適に使用することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のセル同士が連結した連続気泡を有するフォームラバーであって、前記セルのJIS Z 8827-1:2018で定義されたHeywood径が100~180μm、密度が0.10~0.35g/cm3であるフォームラバー。
【請求項2】
セル連結部分の穴のJIS Z 8827-1:2018で定義されたHeywood径が10~35μmである、請求項1に記載のフォームラバー。
【請求項3】
エラストマーラテックスを主原料とした請求項1又は2に記載のフォームラバー。
【請求項4】
JIS A 1405-2:2007で規定される周波数500Hzの垂直入射吸音率が0.5~0.8である、請求項1~3いずれか一項に記載のフォームラバー。
【請求項5】
JIS A 1405-2:2007で規定される周波数領域50~1500Hzの全ての範囲の垂直入射吸音率が0.5~1.0である、請求項1~4いずれか一項に記載のフォームラバー。
【請求項6】
請求項1~5いずれか一項に記載のフォームラバーからなる吸音材。
【請求項7】
自動車用である、請求項6に記載の吸音材。
【請求項8】
フォームラバーの製造方法であって、エラストマーラテックスに添加剤を配合してラテックス組成物を得る配合工程と、ラテックス組成物に気泡を取り込む発泡工程と、エラストマー組成物中にゲル化剤を加えてエラストマー粒子を凝集させるゲル化工程と、加硫工程と、水洗・乾燥工程を有するフォームラバーの製造方法であって、ゲル化工程においてゲル化剤を加えた後のゲル化時間が2~8分であるフォームラバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低周波領域の吸音特性に優れる吸音材向けフォームラバー及びその製造方法並びに吸音材に関する。より詳しくは、エラストマーラテックスを主原料とした吸音材向けフォームラバー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸音材は、家屋、音響施設、鉄道車両、航空機及び自動車などに幅広く利用されている。特に自動車には、車外やエンジンルームからの騒音を低減するために、車載用防音材料としての吸音材が車内壁面の多くに使用されている。
【0003】
一方、昨今のモータ駆動の普及により、エンジン騒音の低減が達成されている一方で、モータ音やロードノイズの騒音が問題となっており、これらの騒音に対応した吸音材料へのニーズが高まっている。これらはエンジン騒音よりも低周波領域の騒音であることから、従来よりも低周波領域の吸音特性を改善した吸音材の開発が強く望まれている。
吸音材として使用されるフォームラバーとしては、pH8.5以下の乳化剤を含有させたラテックスを用いて作製したものが知られている(例えば特開2014-177536参照)。
また、低密度層と高密度層を積層させたEPDMゴムの連続気泡発泡体により、600Hz以下の低周波領域での吸音特性が優れるもの(例えば特開2016-122187参照)や、半独立気泡のフォーム材に貫通穴を設け、その貫通穴の大きさや配置を適宜調整することで、吸音周波数のピークをシフトできること(日本ゴム協会誌2012.12.15.519-522)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-177536号公報
【特許文献2】特開2016-122187号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本ゴム協会誌2012.12.15.519-522
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら特許文献1、2及び非特許文献1に記載の発泡体は、吸音材として要求される特性をある程度バランスよく兼ね備えた材料である。しかしながら、幅広い低周波領域の吸音特性がまだ十分であるとは言えず、更に優れた吸音特性を単層で有する吸音材の開発が切望されていた。
【0007】
そこで本発明は、従来よりも低周波領域の吸音特性に優れるフォームラバーを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、中空のセル同士が連結した連続気泡を有するフォームラバーであって、前記セルのJIS Z 8827-1:2018で定義されたHeywood径が100~180μm、密度が0.10~0.35g/cm3であるフォームラバーである。
フォームラバーは、セル連結部分の穴のJIS Z 8827-1:2018で定義されたHeywood径が10~35μmであることが好ましく、エラストマーラテックスを主原料としたものが好ましい。
フォームラバーは、JIS A 1405-2:2007で規定される周波数500Hzの垂直入射吸音率が0.5~0.8であり、JIS A 1405-2:2007で規定される周波数領域50~1500Hzの全ての範囲の垂直入射吸音率が0.5~1.0である。
フォームラバーは、自動車用の吸音材として好適に使用することができる。
フォームラバーは、配合工程、発泡工程、ゲル化工程、加硫工程及び、水洗・乾燥工程を経て製造することができ、ゲル化工程におけるゲル化時間は2~8分とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、従来よりも低周波領域の吸音特性に優れるフォームラバーが提供されうる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0011】
<フォームラバー>
フォームラバーは、中空のセル同士が連結した連続気泡を有するものである。
フォームラバーのセルのHeywood径の範囲は100~180μmである。セルのHeywood径が100μmに満たないフォームラバーはフォームラバー作製の際のゲル化が速く成型性が損なわれ、180μmを超えると低周波領域の吸音特性が損なわれる。
【0012】
ここで、フォームラバーのセルのHeywood径とは、JIS Z 8827-1:2018で定義されるものであり、粒子の投影面積と等しい円の直径を示すものであり、以下の手順により測定することができる。
1)縦100mm、横100mm、厚さ20mmのフォームラバーを、その厚さ方向に切断して中心部分のSEM写真(撮影倍率45倍)を撮影する。
2)得られたSEM写真を、画像解析式粒度分布測定ソフトウエア Mac-View(株式会社マウンテック)にて解析する。
3)対象セルを個々にトレースし、セル数100以上のデータを採取して平均径を求める。
【0013】
フォームラバーのセルのHeywood径を調整するには、後述するゲル化工程で添加するゲル化剤の量を調整することによりエラストマー組成物を金型に入れた後のゲル化時間を調整すればよい。例えば、セルのHeywood径を大きくするにはゲル化剤の量を減らしてゲル化時間を長くすればよい。
【0014】
フォームラバーのセル連結部分の穴のHeywood径の範囲は10~35μmが好ましい。内穴のHeywood径をこの範囲に調整することによって、低周波領域の吸音特性にすぐれたフォームラバーを得ることができる。
【0015】
セル連結部分の穴のHeywood径は、セルのHeywood径と同様に測定できる。
【0016】
セル連結部分の穴のHeywood径を調整するには、セルのHeywood径を調整するのと同様にゲル化時間を調整すればよく、また、フォームラバーの密度を調整することで、セルのHeywood径を一定に保ったままセル連結部分の穴のHeywood径のみを調整することができる。
【0017】
[密度]
フォームラバーの密度は、0.10~0.35g/cm3の範囲とすることが好ましい。フォームラバーの密度をこの範囲に調整することにより、フォームラバーの柔軟性と機械強度を維持することができる。
【0018】
フォームラバーの密度を調整するには、後述する発泡工程においてエラストマー組成物に取り込む空気の量を調整すればよい。
【0019】
フォームラバーの密度は、以下の手順により測定することができる。
1)縦100mm、横100mm、厚さ20mmのフォームラバーを作製し、その厚さ方向の両表層部分を5mm切断して厚さ10mmのフォームラバーを調整する。
2)厚さを調整したフォームラバーから直径36mmの円形のサンプルを打ち抜き、質量を秤量する。
3)以下の式により密度を算出する。
密度(g/cm3)=サンプルの質量(g)/サンプルの体積(3.24πcm3)
【0020】
[垂直入射吸音率]
フォームラバーは、周波数500Hzの垂直入射吸音率が0.5~0.8である。また、周波数領域50~1500Hzに垂直入射吸音率のピークがあり、そのピークが0.6~0.9であり、低周波領域で優れた吸音特性を示す。
このような特性を有するフォームラバーは吸音材として用いられ、特に、モータ音やロードノイズといった低周波領域を吸音する車載用吸音材として用いられる。
【0021】
垂直入射吸音率は、JIS A 1405-2:2007により測定した値である。
具体的には、電子測器株式会社製の垂直入射吸音率測定器TYPE10041(フプローブチューブマイクロホン)を用いて10Hzから10Hz刻みで2000Hzまでの吸音率を測定する。
測定サンプルは、縦100mm、横100mm、厚さ30mmのフォームラバーを作製し、その厚さ方向の両表層部分を5mm切断して厚さ20mmに調整したものを使用する。
【0022】
<フォームラバーの製造方法>
次に、フォームラバーの製造方法について説明する。
【0023】
フォームラバーの製造方法は、エラストマーラテックスを主原料とし、加硫剤や助剤をエラストマーラテックスに配合してエラストマー組成物を得る配合工程、エラストマー組成物中に気泡を取り込む発泡工程、エラストマー組成物中にゲル化剤を加えてエラストマー粒子を凝集させるゲル化工程、加硫・水洗・乾燥工程の順からなる。
【0024】
[エラストマーラテックス]
本発明に用いられるエラストマーラテックスの種類としては、特に限定されず、天然ゴムラテックス、イソプレンラテックス、ニトリルブタジエンラテックス、スチレンブタジエンラテックス、クロロプレンラテックス、クロロプレンとアクリロニトリルの共重合ラテックス、エチレンプロピレンジエンラテックス、ブタジエンラテックス、ブチルラテックス等を用いることができる。エラストマーラテックスは、フォームラバー作製に適した固形分濃度として、固形分濃度が55~70質量%のエラストマーラテックスであることが好ましい。固形分濃度が55質量%に満たないと加硫時の収縮が大きくなり、成型性が悪化する場合がある。固形分濃度が70質量%を超えるとエラストマーラテックスの粘度が増大し、発泡時のラテックス安定性が低下する場合がある。
【0025】
[配合工程]
配合工程では、上述のエラストマーラテックスに、加硫剤、加硫促進剤、起泡剤、気泡安定剤、老化防止剤、粘着防止剤、増粘剤、保水剤、着色剤などの添加剤を適宜添加してラテックス組成物を得る工程である。
【0026】
加硫剤の種類は特に限定されないが、例えば硫黄や酸化亜鉛、過酸化物などが使用される。加硫剤の添加量は、硫黄は0.0~2.0質量%、酸化亜鉛は3.0~10.0質量%、過酸化物は0.0~2.0質量%使用することが好ましい。
【0027】
加硫促進剤の種類は特に限定されないが、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛やジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム等のジチオカルバミン酸塩系促進剤、N,N‘-ジエチルチオ尿素等のチオウレア系促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系促進剤、キサントゲン酸系促進剤等が挙げられる。加硫促進剤の添加量は、0.0~8.0質量%使用し、複数の種類を組み合わせて使用しても良い。
【0028】
起泡剤はラテックス組成物に気体を混入させる際に、ラテックス組成物を起泡させる役割を有する。起泡剤としては発泡性の良さから炭素数C12~18のアニオン系界面活性剤であることが好ましい。具体的には、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アンモニウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ひまし油カリウム石鹸、やし油カリウム石鹸のような脂肪酸塩等が挙げられる。起泡剤の量は0.0~2.0質量%使用することが好ましい。
【0029】
気泡安定剤は起泡させたラテックスの泡沫を安定化させる役割を有する。気泡安定剤としては、トリメンベースや両性界面活性剤が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸型、ベタイン型、アミンオキシド型等が挙げられる。気泡安定剤の量は0.2~2.0質量%使用することが好ましい。
【0030】
老化防止剤の種類は特に限定されず、加硫又は架橋反応を阻害しない範囲において、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系、ベンズイミダゾール系、アミン径、リン酸系等を使用することができる。
【0031】
粘着防止剤は、得られるフォームラバーの粘着性を防止する役割を有する。粘着防止剤としては、ワックスやワセリンが挙げられる。
【0032】
[発泡工程]
発泡工程は、配合工程で得たラテックス組成物に気体を混合し、ラテックス組成物を泡沫状態とする工程である。得られるフォームラバーの密度は発泡工程における気体の混入量によって調整できる。ラテックス組成物の密度を調整するためには、所望のフォームラバーの密度と、配合ラテックスの体積とから、必要な配合ラテックスの重量を算出し、この重量において所望の体積となるように発泡させる気体の混入量を決定すればよい。配合ラテックスを発泡させ泡沫状態とする気体には、空気、窒素などを使用することができる。ラテックスを発泡させる方法としては、ミキサーを使用することができ、好ましい例としては、ホバートミキサー、ピンミキサー、オークスミキサー、ハンドミキサーなどが挙げられる。
【0033】
[ゲル化工程]
ゲル化工程は、ゲル化剤を泡沫状態のラテックス組成物に添加し、ラテックス組成物中に分散しているエラストマー粒子を凝集させてゲル化させる工程である。この際、ラテックス組成物に混入させた気体により発生した気泡の分散状態を維持したままラテックス組成物がゲル化し、このゲル化したラテックス組成物を加熱加硫することで、均一なセル構造を有するラテックスフォームを得ることができる。
【0034】
上記ゲル化工程により、ゲル化したラテックス組成物中に存在する発泡ガスは気泡として保持されるため、この気泡の大きさがそのまま最終的に得られるフォームラバーのセル径やセル内穴径を決定することになる。気泡セル径は、一般的にゲル化時間に依存しており、ゲル化時間が長ければ、その間にゲル化したラテックス組成物中に混合された気泡が互いに接触し合って合一して巨大化したり、ゲル化したラテックス組成物の外へ排出されたりするため、セル径は大きくなる。一方、ゲル化時間が短い程、小さなセル径となる。ゲル化時間はゲル化剤量によって調整することができ、一般的にゲル化剤量が多い程ゲル化時間は短くなり、結果として小さなセル径のフォームラバーが得られるが、その分成型工程での加工性が悪化する。ゲル化時間は特に限定するものではないが、2~8分、好ましくは3~6分とするとよい。
ゲル化剤としては、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化カリウム、硫酸アンモニウム、二酸化炭素などが使用できる。
【0035】
[加硫工程]
加硫工程は、上記ゲル化剤を添加した発泡ラテックス組成物を、完全にゲル化する前に流延、注型又は押出し成形等の方法により所望の形状に加工し、更に、加硫剤やエラストマーラテックスの種類に応じて50~200℃に加熱して十分に加硫又は架橋反応を進行させて発泡加硫体を得る工程である。ここでの加硫方法は、発泡ラテックス組成物を加硫させ得るものであれば、特に限定されず、空気加硫や水蒸気加硫等の方法を利用できる。
【0036】
[水洗・乾燥工程]
上記加硫することで得られた発泡加硫体を水洗、乾燥することでフォームラバーを得ることができる。フォームラバーは用途に応じて適宜加工を加えることで、各用途に適した所定形状のフォームラバーとすることができる。
【0037】
<吸音材>
吸音材は、上述のフォームラバーを成形加工したものであり、低周波領域の吸音特性に優れている。当該吸音材としては、自動車用吸音材が好適である。
【実施例0038】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例においては、特に断りがない限り、「質量部」は重合開始前のエラストマーラテックスモノマーの合計100質量部に対する量である、「質量%」はエラストマーラテックスに含まれる固形分濃度100質量%に対する量である。
【0039】
[実施例1]
<エラストマーラテックス(A)の作製>
加熱冷却ジャケットと攪拌機を備えた内容積3リットルの重合缶に、クロロプレン単量体20質量部、アクリロニトリル単量体20質量部、純水150質量部、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)3.3質量部、トール脂肪酸(ハリマ化成株式会社製)1.0質量部、水酸化ナトリウム0.1質量部、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、重合温度40℃にて窒素気流下で乳化重合を行った。クロロプレン単量体の分添は、比重が0.984、0.991、0.998、1.005、1.011、1.018、1.024、1.030、1.036、1.040、1.044、1.053に達した時、それぞれ5質量部ずつ、合計12回加えて行った。クロロプレン単量体及びアクリロニトリル単量体の合計量に対する重合率が80%となった時点で、重合停止剤であるフェノチアジンを加えて重合を停止させた。そして、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去及び濃縮することで固形分濃度65質量%のエラストマーラテックス(A)を得た。
【0040】
<フォームラバーの作製>
内容積1リットルの容器に、上述で得たエラストマーラテックス(A)100質量%、加硫剤や加硫促進剤として、下記の方法で作製した水分散液(固形分50質量%)14.3質量%、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(商品名「ノクセラーTP」、大内新興株式会社製)2.0質量%、起泡剤としてオレイン酸カリウム(商品名「FR-14」花王株式会社製)0.3質量%、気泡安定剤としてベタイン(商品名「アンヒトール24B」、花王株式会社製)0.7質量%、粘着防止剤(商品名「ニューエイドIAL」精工化学株式会社製)2.0質量%を添加した。各配合は撹拌しつつ添加し、添加後5分間撹拌を続けることで、ラテックス組成物を得た。
上記水分散液は、酸化亜鉛7.5質量%、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛2.0質量%、N,N‘-ジエチルチオ尿素2.0質量%、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)2.0質量%、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(商品名「デモールN」、花王株式会社製)0.2質量%、及び水14.3質量%を、陶器製ボールミルを用いて、20℃で16時間混合し、調整した。
【0041】
上記配合ラテックスをハンドミキサーにて1000回転で5分間発泡させ、その後ハンドミキサーで撹拌させたまま、ゲル化剤として20質量%ケイフッ化ナトリウム水溶液を3.0質量%添加し、2分間撹拌させた後、ステンレス製の金型へ注型した。発泡させた配合ラテックスは、注型後2分で流動性がなくなりゲル化した。ゲル化時間は撹拌2分+注型後2分を合わせて4分であった。
【0042】
ゲル化後30分間室温で静置し、その後金型ごと空気加硫釜へ移し、140℃にて120分間加硫を行った。40℃の温水で冷却洗浄後、脱型し乾燥させると、ゴム弾性のあるフォームラバーが得られた。フォームラバーの密度は0.27g/cm3であった。
【0043】
<サンプルの評価>
得られたフォームラバーについて、JIS A 1405-2:2007で規定される垂直入射吸音率を測定した。
【0044】
[実施例2~7、比較例1~4]
下記表1、2に示した条件により、実施例1と同様にサンプルを作製して評価した。
【0045】
実施例2~7の結果を下記表1に、比較例1~4の結果を下記表2に示す。
【0046】
実施例4、5は、セル連結部分の穴のHeywood径が異なること以外は略同条件である実施例1~3より低周波領域の吸音特性が低かった。このことから、セル内穴のHeywood径は10~30μmの範囲であることがより好ましいことが確認された。
【0047】
実施例6、7はエラストマーラテックスの種類をそれぞれ、クロロプレンラテックス(商品名「LM-61」、デンカ株式会社製)(B)、ニトリルブタジエンラテックス(商品名「Nipol LX531B」、日本ゼオン株式会社製)(C)に変更したこと以外は略同条件でサンプルを作製した。
【0048】
【0049】
【0050】
上記表1、2から明らかなように、実施例1~7の本発明のフォームラバーは、低周波領域の吸音率に優れていた。
【0051】
比較例1は、ゲル化時間が長いため、セルのHeywood径が大きく、低周波領域の吸音特性が劣っていた。また、比較例2はゲル化時間が短すぎるためフォームラバーの成形加工性が悪く、フォームラバー特性や吸音特性を評価できなかった。
【0052】
比較例3は、密度が0.10g/cm3未満であり、柔軟性が劣り成形加工性が悪かった。比較例4は、密度が0.35g/cm3を超えており、フォームラバーが脆く成形加工性が悪かった。