(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169821
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】電動移動体の運行管理システム、電動移動体及び運行管理方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20221102BHJP
G08G 1/0968 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G01C21/26 C
G08G1/0968 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019184423
(22)【出願日】2019-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中屋 聡
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129CC12
2F129CC18
2F129DD45
2F129DD46
2F129DD49
2F129EE02
2F129EE25
2F129EE43
2F129EE82
2F129EE92
2F129EE96
2F129FF02
2F129FF11
2F129FF32
2F129FF59
2F129HH02
2F129HH12
5H181AA01
5H181AA26
5H181BB04
5H181CC12
5H181EE02
5H181EE12
5H181FF05
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF32
5H181FF40
5H181MB03
(57)【要約】
【課題】電動移動体の出発後に変化する状況に応じて変動する電力消費量によって変化し得る航続可能距離を適切に把握できるようにする。
【解決手段】電動移動体の運行管理システム1000は、移動体側演算部120で演算された電源部140の残容量に基づいて推定された、電動移動体100が走行可能な範囲を表示させる移動体側表示部130とを備える電動移動体100と、電動移動体100の運行に必要な電力を変動させる要因となる消費電力変動情報を収集するサーバ側演算部220と、サーバ側演算部220で収集した消費電力変動情報を、移動体側通信部110に送信するサーバ側通信部210とを備えるクラウドサーバ200と、を備え、移動体側表示部130は、移動体側演算部120で演算された電源部140の残容量と、サーバ側演算部220で取得した消費電力変動情報に基づいて演算された、電動移動体100の走行可能範囲を表示するよう構成している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一以上の電動移動体の走行可能な距離を管理するための運行管理システムであって、
二次電池を備える電源部と、
前記電源部から電力供給を受けて前記電動移動体を移動させる駆動部と、
前記駆動部で移動された前記電動移動体の現在位置を測位する測位部と、
外部と通信を行うための移動体側通信部と、
前記駆動部で消費される前記電源部の残容量を演算する移動体側演算部と、
前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量に基づいて推定された、前記電動移動体が走行可能な範囲を表示させる移動体側表示部と、
を備える前記電動移動体と、
前記電動移動体の運行に必要な電力を変動させる要因となる消費電力変動情報を収集するサーバ側演算部と、
前記サーバ側演算部で収集した消費電力変動情報を、前記移動体側通信部に送信するサーバ側通信部と、
を備えるクラウドサーバと、
を備え、
前記移動体側表示部は、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量と、前記サーバ側演算部で収集した消費電力変動情報に基づいて演算された、前記電動移動体の走行可能範囲を表示するよう構成してなる電動移動体の運行管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電動移動体の運行管理システムであって、
前記消費電力変動情報が、前記電動移動体の目的地までのルート情報を含む電動移動体の運行管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動移動体の運行管理システムであって、
前記消費電力変動情報が、前記測位部で測位された前記電動移動体の現在位置における気象情報を含む電動移動体の運行管理システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電動移動体の運行管理システムであって、
前記電動移動体はさらに、該電動移動体に搭載される人及び荷物の重量情報の入力を受け付ける重量入力部を備えており、
前記移動体側表示部は、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量、前記クラウドサーバから取得した消費電力変動情報、前記重量入力部から入力された重量情報に基づいて演算された、前記電動移動体の走行可能範囲を表示するよう構成してなる電動移動体の運行管理システム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電動移動体の運行管理システムであって、さらに、
前記電源部を充電する充電装置を備えており、
前記充電装置は、
前記電動移動体に搭載される人及び荷物の重量を測定する重量測定部と、
前記クラウドサーバと通信するための充電側通信部と
を備えており、
前記移動体側表示部は、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量、前記クラウドサーバから取得した消費電力変動情報、前記重量測定部で測定された重量情報に基づいて演算された、前記電動移動体の走行可能範囲を表示するよう構成してなる電動移動体の運行管理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の電動移動体の運行管理システムであって、
前記電動移動体が複数台存在し、
各電動移動体は、固有の識別情報を付与されており、
前記充電装置は、前記複数の電動移動体を識別情報で区別して、前記クラウドサーバに対して充電済みの電動移動体の情報を送信するよう構成してなる電動移動体の運行管理システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電動移動体の運行管理システムであって、
前記サーバ側演算部は、前記消費電力変動情報と、前記移動体側通信部を介して取得した、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量に基づいて、前記電動移動体の走行可能範囲を演算し、
該走行可能範囲の情報を前記サーバ側通信部から前記電動移動体に送信して、前記移動体側表示部に表示させるよう構成してなる電動移動体の運行管理システム。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電動移動体の運行管理システムであって、
前記移動体側演算部は、前記移動体側通信部を介して取得した、前記サーバ側演算部で収集した消費電力変動情報と、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量に基づいて、前記電動移動体の走行可能範囲を演算し、前記移動体側表示部に表示させるよう構成してなる電動移動体の運行管理システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の電動移動体の運行管理システムであって、さらに、
前記サーバ側通信部と通信可能な管理側通信部と、
前記管理側通信部で取得した情報を表示させる管理側表示部と、
を備える管理装置を備えており、
前記管理側表示部は、前記測位部で測位された前記電動移動体の現在位置を、前記サーバを介して取得し、地図上に表示させると共に、該電動移動体の前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量を表示可能としてなる電動移動体の運行管理システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の電動移動体の運行管理システムであって、
前記移動体側表示部は、各電動移動体の走行可能範囲を地図上に重ねて表示可能としてなる電動移動体の運行管理システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の電動移動体の運行管理システムであって、
前記クラウドサーバは、前記一以上の電動移動体に対して、前記電源部の残容量で、あとどのくらいの時間走行可能かを示す走行可能時間を通知可能に構成してなる電動移動体の運行管理システム。
【請求項12】
一以上の電動移動体の走行可能な距離を管理するための運行管理システムであって、
二次電池を備える電源部と、
前記電源部から電力供給を受けて前記電動移動体を移動させる駆動部と、
前記駆動部で移動された前記電動移動体の現在位置を測位する測位部と、
外部と通信を行うための移動体側通信部と、
前記駆動部で消費される前記電源部の残容量を演算する移動体側演算部と、
前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量に基づいて推定された、前記電動移動体が走行可能な範囲を表示させる移動体側表示部と、
を備える前記電動移動体と、
前記電動移動体の運行に必要な電力を変動させる要因となる消費電力変動情報を収集するサーバ側演算部と、
前記サーバ側演算部で収集した消費電力変動情報を、前記移動体側通信部に送信するサーバ側通信部と、
を備えるクラウドサーバと、
を備え、
前記移動体側表示部は、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量と、前記サーバ側演算部で収集した消費電力変動情報に基づいて演算された、前記電動移動体の走行可能時間を表示するよう構成してなる電動移動体の運行管理システム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の電動移動体の運行管理システムであって、
前記クラウドサーバは、前記一以上の電動移動体に対して、前記電源部の残容量で、前記測位部で測位された現在位置から、指定された目的地又は充電装置の配置位置に到達できるか、又は出発地に戻れるかを通知可能に構成してなる電動移動体の運行管理システム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の電動移動体の運行管理システムであって、
前記移動体側通信部及び移動体側表示部が、前記電動移動体の乗員が保持する情報携帯端末である電動移動体の運行管理システム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の電動移動体の運行管理システムであって、
前記電動移動体が電動カート又は電動ボートである電動移動体の運行管理システム。
【請求項16】
二次電池を備える電源部と、
前記電源部から電力供給を受けて前記電動移動体を移動させる駆動部と、
前記駆動部で移動された前記電動移動体の現在位置を測位する測位部と、
外部と通信を行うための移動体側通信部と、
前記駆動部で消費される前記電源部の残容量を演算する移動体側演算部と、
前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量に基づいて推定された、前記電動移動体が走行可能な範囲を表示させる移動体側表示部と、
を備え、
前記移動体側表示部は、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量と、前記移動体側通信部を介して取得した、前記電動移動体の運行に必要な電力を変動させる要因となる消費電力変動情報に基づいて演算された、走行可能範囲を表示するよう構成してなる電動移動体。
【請求項17】
一以上の電動移動体の走行可能な距離を管理する運行管理方法であって、
クラウドサーバが、前記電動移動体の運行に必要な電力を変動させる要因となる消費電力変動情報をサーバ側演算部で収集し、サーバ側通信部を介して前記電動移動体に送信する工程と、
前記サーバ側通信部が送信した、前記サーバ側演算部で収集した消費電力変動情報を、前記電動移動体の移動体側通信部で受信する工程と、
前記電動移動体は、二次電池を備える電源部から電力供給を受けて前記電動移動体を移動させる駆動部で消費される前記電源部の残容量と、前記消費電力変動情報に基づいて演算された、該電動移動体の走行可能範囲を、移動体側表示部に表示させる工程と、
を含む電動移動体の運行管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動移動体の運行管理システム、電動移動体及び運行管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然保護と環境対策の世界的な流れから、化石燃料を使わない電動車輌やドローン等の電動移動体が普及し始めており、ゴルフ場や商業施設の電動カー卜、アウトドア施設の電動バギーやトライク等の全地形対応車(All Terrain Vehicle:ATV)や、水上を走行する電動ボートや水上オートバイ(ジェットスキー)等、様々な分野で注目されている。このような電動移動体においては、搭載されている電源に含まれる二次電池の容量に限りがあるため、航続距離も有限である。よって、使用に際しては、目的地に到達できるよう、あるいは出発地に戻ってこられるよう、電源の残容量が十分かどうかを確認した上で、運行させている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
しかしながら、これら電動移動体の航続可能距離は、路面や海面といった走行する媒体の状態、乗車人数、荷物積載量等によっても変化する。このため、出発前に電源の充電量を確認しても、その後の天候変化による影響等でより多くの電池を消耗してしまうことが考えられる。この結果、目的地に到達できなかったり、出発地点まで戻れなくなる可能性がある。特に電動ボートの場合は、沖合で停止してしまうと充電が困難であり、陸上交通よりも事態が深刻となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/033944号
【特許文献2】国際公開第2010/033517号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の一は、電動移動体の出発後に変化する状況に応じて変動する電力消費量によって変化し得る航続可能距離を適切に把握可能な電動移動体の運行管理システム、電動移動体及び運行管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面に係る電動移動体の運行管理システムは、一以上の電動移動体の走行可能な距離を管理するための運行管理システムであって、二次電池を備える電源部と、前記電源部から電力供給を受けて前記電動移動体を移動させる駆動部と、前記駆動部で移動された前記電動移動体の現在位置を測位する測位部と、外部と通信を行うための移動体側通信部と、前記駆動部で消費される前記電源部の残容量を演算する移動体側演算部と、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量に基づいて推定された、前記電動移動体が走行可能な範囲を表示させる移動体側表示部とを備える前記電動移動体と、前記電動移動体の運行に必要な電力を変動させる要因となる消費電力変動情報を収集するサーバ側演算部と、前記サーバ側演算部で収集した消費電力変動情報を、前記移動体側通信部に送信するサーバ側通信部とを備えるクラウドサーバと、を備え、前記移動体側表示部は、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量と、前記サーバ側演算部で収集した消費電力変動情報に基づいて演算された、前記電動移動体の走行可能範囲を表示するよう構成している。
【発明の効果】
【0007】
以上の電動移動体の運行管理システムによれば、電源部の残容量のみならず、電動移動体の運行に必要な電力を変動させる要因となる消費電力変動情報も収集して、電動移動体の走行可能範囲を算出するため、より正確で誤差の少ない走行可能範囲を表示させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る電動移動体の運行管理システムを示すブロック図である。
【
図2】電動移動体をゴルフカートに使用する例を示す模式図である。
【
図3】
図2の電動移動体の運行管理システムを示すブロック図である。
【
図4】移動体側表示部の一表示例を示すイメージ図である。
【
図5】移動体側表示部の他の表示例を示すイメージ図である。
【
図6】移動体側表示部のさらに他の表示例を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態は、以下の構成によって特定されてもよい。
【0010】
本発明の一実施形態に係る電動移動体の運行管理システムは、前記消費電力変動情報が、前記電動移動体の目的地までのルート情報を含むことができる。上記構成により、目的地の位置や目的地までの経路、勾配や高低差、残距離等のルート情報に基づいて、電動移動体の電力消費量を演算することが可能となる。
【0011】
本発明の他の実施形態に係る電動移動体の運行管理システムは、上記いずれかの構成に加えて、前記消費電力変動情報が、前記測位部で測位された前記電動移動体の現在位置における気象情報を含むことができる。上記構成により、雨量、路面状態、風向、風速、波の高さ、災害情報といった気象情報を加味して、電動移動体の電力消費量の変化を考慮して走行可能範囲を演算することで、電動移動体の出発時点から気候が変化しても、また電動移動体が別の地域に移動しても、これに応じて走行可能範囲を更新し、より誤差の少ない正確な演算が実現される。
【0012】
また、本発明の他の実施形態に係る電動移動体の運行管理システムは、上記いずれかの構成に加えて、前記電動移動体はさらに、該電動移動体に搭載される人及び荷物の重量情報の入力を受け付ける重量入力部を備えており、前記移動体側表示部は、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量、前記クラウドサーバから取得した消費電力変動情報、前記重量入力部から入力された重量情報に基づいて演算された、前記電動移動体の走行可能範囲を表示するよう構成している。上記構成により、さらに電動移動体に乗る乗員や荷物の重量によって電動移動体の移動に要する電力が変化することも加味して、電動移動体の走行可能範囲を表示させることが可能となる。
【0013】
さらに、本発明の他の実施形態に係る電動移動体の運行管理システムは、上記いずれかの構成に加えて、さらに前記電源部を充電する充電装置を備えており、前記充電装置は、前記電動移動体に搭載される人及び荷物の重量を測定する重量測定部と、前記クラウドサーバと通信するための充電側通信部とを備えており、前記移動体側表示部は、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量、前記クラウドサーバから取得した消費電力変動情報、前記重量測定部で測定された重量情報に基づいて演算された、前記電動移動体の走行可能範囲を表示するよう構成している。上記構成により、さらに電動移動体に乗る乗員や荷物の重量によって電動移動体の移動に要する電力が変化することも加味して、電動移動体の走行可能範囲を表示させることが可能となる。
【0014】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動移動体の運行管理システムは、上記いずれかの構成に加えて、前記電動移動体が複数台存在し、各電動移動体は、固有の識別情報を付与されており、前記充電装置は、前記複数の電動移動体を識別情報で区別して、前記クラウドサーバに対して充電済みの電動移動体の情報を送信するよう構成している。上記構成により、充電装置は、複数の電動移動体を識別情報で区別してクラウドサーバに対して、充電済みの電動移動体を通知できるので、クラウドサーバ側で各電動移動体の充電状態を把握できる。
【0015】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動移動体の運行管理システムは、上記いずれかの構成に加えて、前記サーバ側演算部は、前記消費電力変動情報と、前記移動体側通信部を介して取得した、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量に基づいて、前記電動移動体の走行可能範囲を演算し、該走行可能範囲の情報を前記サーバ側通信部から前記電動移動体に送信して、前記移動体側表示部に表示させるよう構成している。上記構成により、クラウドサーバ側で電源部の残容量と消費電力変動情報を収集して、電動移動体毎に走行可能範囲を算出することで、各電動移動体側の処理を軽負荷として効率のよい運用が図られる。
【0016】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動移動体の運行管理システムは、上記いずれかの構成に加えて、前記移動体側演算部は、前記移動体側通信部を介して取得した、前記サーバ側演算部で収集した消費電力変動情報と、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量に基づいて、前記電動移動体の走行可能範囲を演算し、前記移動体側表示部に表示させるよう構成している。上記構成により、電動移動体側で電源部の残容量と消費電力変動情報を収集して、電動移動体の走行可能範囲を算出することで、通信量を低減して自律的な走行可能範囲の演算が可能となる。
【0017】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動移動体の運行管理システムは、上記いずれかの構成に加えて、さらに、前記サーバ側通信部と通信可能な管理側通信部と、前記管理側通信部で取得した情報を表示させる管理側表示部と、を備える管理装置を備えており、前記管理側表示部は、前記測位部で測位された前記電動移動体の現在位置を、前記サーバを介して取得し、地図上に表示させると共に、該電動移動体の前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量を表示可能としている。
【0018】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動移動体の運行管理システムは、上記いずれかの構成に加えて、前記移動体側表示部は、各電動移動体の走行可能範囲を地図上に重ねて表示可能としている。
【0019】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動移動体の運行管理システムは、上記いずれかの構成に加えて、前記クラウドサーバは、前記一以上の電動移動体に対して、前記電源部の残容量で、あとどのくらいの時間走行可能かを示す走行可能時間を通知可能に構成している。上記構成により、電動移動体の乗員は、走行可能な残り時間を通知されるため、時間の尺度でもって運行を把握できる。
【0020】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動移動体の運行管理システムは、一以上の電動移動体の走行可能な距離を管理するための運行管理システムであって、二次電池を備える電源部と、前記電源部から電力供給を受けて前記電動移動体を移動させる駆動部と、前記駆動部で移動された前記電動移動体の現在位置を測位する測位部と、外部と通信を行うための移動体側通信部と、前記駆動部で消費される前記電源部の残容量を演算する移動体側演算部と、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量に基づいて推定された、前記電動移動体が走行可能な範囲を表示させる移動体側表示部とを備える前記電動移動体と、前記電動移動体の運行に必要な電力を変動させる要因となる消費電力変動情報を収集するサーバ側演算部と、前記サーバ側演算部で収集した消費電力変動情報を、前記移動体側通信部に送信するサーバ側通信部とを備えるクラウドサーバと、を備え、前記移動体側表示部は、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量と、前記サーバ側演算部で収集した消費電力変動情報に基づいて演算された、前記電動移動体の走行可能時間を表示するよう構成している。
【0021】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動移動体の運行管理システムは、上記いずれかの構成に加えて、前記クラウドサーバは、前記一以上の電動移動体に対して、前記電源部の残容量で、前記測位部で測位された現在位置から、指定された目的地又は充電装置の配置位置に到達できるか、又は出発地に戻れるかを通知可能に構成している。上記構成により、残容量不足で電動移動体が立ち往生する事態を回避できる。
【0022】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動移動体の運行管理システムは、上記いずれかの構成に加えて、前記移動体側通信部及び移動体側表示部を、前記電動移動体の乗員が保持する情報携帯端末とできる。
【0023】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動移動体の運行管理システムは、上記いずれかの構成に加えて、前記電動移動体を電動カート又は電動ボートとすることができる。
【0024】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動移動体は、二次電池を備える電源部と、前記電源部から電力供給を受けて前記電動移動体を移動させる駆動部と、前記駆動部で移動された前記電動移動体の現在位置を測位する測位部と、外部と通信を行うための移動体側通信部と、前記駆動部で消費される前記電源部の残容量を演算する移動体側演算部と、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量に基づいて推定された、前記電動移動体が走行可能な範囲を表示させる移動体側表示部と、を備え、前記移動体側表示部は、前記移動体側演算部で演算された前記電源部の残容量と、前記移動体側通信部を介して取得した、前記電動移動体の運行に必要な電力を変動させる要因となる消費電力変動情報に基づいて演算された、走行可能範囲を表示するよう構成している。上記構成により、電源部の残容量のみならず、電動移動体の運行に必要な電力を変動させる要因となる消費電力変動情報も収集して、電動移動体の走行可能範囲を算出するため、より正確で誤差の少ない走行可能範囲を表示させることが可能となる。
【0025】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動移動体の運行管理方法は、一以上の電動移動体の走行可能な距離を管理する運行管理方法であって、クラウドサーバが、前記電動移動体の運行に必要な電力を変動させる要因となる消費電力変動情報をサーバ側演算部で収集し、サーバ側通信部を介して前記電動移動体に送信する工程と、前記サーバ側通信部が送信した、前記サーバ側演算部で収集した消費電力変動情報を、前記電動移動体の移動体側通信部で受信する工程と、前記電動移動体は、二次電池を備える電源部から電力供給を受けて前記電動移動体を移動させる駆動部で消費される前記電源部の残容量と、前記消費電力変動情報に基づいて演算された、該電動移動体の走行可能範囲を、移動体側表示部に表示させる工程とを含む。これにより、電源部の残容量のみならず、電動移動体の運行に必要な電力を変動させる要因となる消費電力変動情報も収集して、電動移動体の走行可能範囲を算出するため、より正確で誤差の少ない走行可能範囲を表示させることが可能となる。
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
[実施形態1]
【0027】
本発明の実施形態1に係る電動移動体の運行管理システム1000を、
図1に示す。この図に示す電動移動体の運行管理システム1000は、一以上の電動移動体100と、クラウドサーバ200とが通信ネットワークNCを介して通信可能に接続されている。各電動移動体100とクラウドサーバ200との通信は、光ファイバや電話回線等の公衆回線や専用回線を用いることができる。また通信ネットワークNCを無線データネットワークとしてもよく、例えばセルラーネットワーク、Wi-Fiネットワーク、WiMAXネットワーク、EDGEネットワーク、GPRSネットワーク、EV-DOネットワーク、RTTネットワーク、HSPAネットワーク、UTMSネットワーク、Flash-OFDMネットワーク、iBurstネットワークやこれらの組合せが利用できる。典型的には、インターネット接続を用いる。また基地局やアクセスポイン卜等を適宜介した接続形態が利用できる。
【0028】
各電動移動体100は、走行可能な距離をクラウドサーバ200との通信を利用して管理することができる。また電動移動体の運行管理システム1000は、各電動移動体100を充電するための充電装置300を備える。さらに電動移動体の運行管理システム1000は、管理装置400を備えていてもよい。管理装置400は、各電動移動体の現在位置や充電状態等を把握するコントロールセンタ等として機能する。
(電動移動体100)
【0029】
各電動移動体100は、電源部140と、受電部150と、駆動部160と、測位部170と、移動体側通信部110と、移動体側演算部120と、移動体側表示部130とを備える。
【0030】
電源部140は、二次電池141を備えている。二次電池は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の充電可能な電池が利用できる。好ましくは、複数の二次電池を直列や並列に接続した組電池や電池パックを用いることで、電源部140の電池容量を調整できる。
【0031】
受電部150は、充電装置300と接続されて、電力を受けて二次電池を充電する。受電部150は、二次電池の使用等に応じて、電圧や電流を変換する変換機能を持たせてもよい。
【0032】
駆動部160は、電源部140から電力供給を受けて電動移動体100を移動させるための部材である。好適には電動モータが利用できる。電動モータは、電動移動体100が車両の場合は、車輪を回転させ、船舶の場合はスクリューを回転させ、ドローンの場合はプロペラを回転させることで、電動移動体100を移動させる。
【0033】
測位部170は、駆動部160で移動された電動移動体100の現在位置を測位するための部材である。好適には、人工衛星を用いたGPSセンサが利用できる。
【0034】
移動体側通信部110は、外部と通信を行うための部材である。この例では、公衆回線を利用してクラウドサーバ200と接続する通信モジュールであり、3G、4G、5G等の規格化された通信規格に従って通信を行う。
【0035】
移動体側演算部120は、受電部150や測位部170、移動体側通信部110等と接続されて、これらの動作を制御したり、取得した情報に基づいて必要な演算を行ったりするための部材である。また移動体側演算部120は、駆動部160で消費される電源部140の残容量を演算する残容量演算部121として機能する。このような移動体側演算部120は、MPUやCPU、SoC、マイコンやASIC等で構成される。
【0036】
移動体側表示部130は、情報や地図、通知などを表示するためのディスプレイである。この移動体側表示部130は、移動体側演算部120で演算された電源部140の残容量に基づいて推定された、電動移動体100が走行可能な範囲を表示させる走行可能範囲表示領域131として機能する。この移動体側表示部130は、各電動移動体100の走行可能範囲を地図上に重ねて表示可能としている。このような移動体側表示部130は、液晶や有機EL等が好適に利用できる。
【0037】
なお電動移動体100側の移動体側通信部110や移動体側表示部130は、専用の機器を用意する他、電動移動体の乗員が保持する情報携帯端末でもって代用することができる。情報携帯端末は、スマートフォンやタブレット、スレートPCやラップトップPC等が挙げられる。このような情報携帯端末に専用のプログラムをインストールして、通信機能やディスプレイ、演算回路を有する情報携帯端末を、移動体側通信部や移動体側表示部、移動体側演算部として機能させることが可能となる。さらに、このようなカーナビゲーションアプリケーション(カーナビアプリ)や既存のカーナビゲーション装置(カーナビ)と、他の部材、例えば後述する電動移動体100の充放電ユニット190とを連携させて、電動移動体の運行管理システムを構築してもよい。
(クラウドサーバ200)
【0038】
一方、クラウドサーバ200は、サーバ側通信部210と、サーバ側演算部220とを備える。
【0039】
サーバ側通信部210は、外部と通信を行うための部材である。サーバ側通信部210は上述した移動体側通信部110と同様、汎用的な通信モジュールが利用できる。
【0040】
サーバ側演算部220は、サーバ側通信部210を制御する。このサーバ側演算部220は、消費電力変動情報を収集する消費電力変動情報収集部221の機能を実現する。サーバ側演算部220で収集した消費電力変動情報は、サーバ側通信部210を介して移動体側通信部110に送信される。このサーバ側演算部220も、MPUやCPU、SoC、マイコンやASIC等で構成できる。
【0041】
このようにして移動体側表示部130は、移動体側演算部120で演算された電源部140の残容量と、サーバ側演算部220で収集した消費電力変動情報に基づいて演算された、電動移動体100の走行可能範囲を表示する。これにより、電源部の残容量のみならず、電動移動体の運行に必要な電力を変動させる要因となる消費電力変動情報も収集して、電動移動体の走行可能範囲を算出するため、より正確で誤差の少ない走行可能範囲を表示させることが可能となる。
(消費電力変動情報)
【0042】
消費電力変動情報は、電動移動体の運行に必要な電力を変動させる要因となる情報である。消費電力変動情報は、例えば目的地までのルート情報を含む。これにより、目的地の位置や目的地までの経路、勾配や高低差、残距離等のルート情報に基づいて、電動移動体の電力消費量を演算することが可能となる。
【0043】
また消費電力変動情報は、測位部170で測位された電動移動体100の現在位置における気象情報を含んでもよい。これにより、雨量、路面状態、風向、風速、波の高さ、災害情報といった気象情報を加味して、電動移動体100の電力消費量の変化を考慮して走行可能範囲を演算することで、電動移動体100の出発時点から気候が変化しても、また電動移動体100が別の地域に移動しても、これに応じて走行可能範囲を更新し、より誤差の少ない正確な演算が実現される。
【0044】
さらに消費電力変動情報は、電動移動体100の重量情報を含むことができる。これにより、電動移動体100に乗る乗員や荷物の重量によって電動移動体100の移動に要する電力が変化することも加味して、電動移動体100の走行可能範囲を表示させることが可能となる。
【0045】
重量情報を取得するために、例えば電動移動体100に、この電動移動体100に搭載される人及び荷物の重量情報の入力を受け付ける重量入力部180を設けることができる。重量入力部180は、例えばユーザが手動で乗車人数や荷物の数を入力したり、重量を数値で指定して入力する。この場合は、タッチパネル等のHMIや入力コンソールが利用できる。あるいは重量入力部180を、外部の重量を測定する機器、例えば重量計で測定した重量情報を入力する入力インターフェースとしてもよい。このような重量入力部180を設ける場合、移動体側表示部130は、残容量演算部121で演算された電源部140の残容量、クラウドサーバ200から取得した消費電力変動情報、重量入力部180から入力された重量情報に基づいて演算された、電動移動体100の走行可能範囲を表示する。
(走行可能範囲の演算)
【0046】
走行可能範囲の演算は、クラウドサーバ200側で行うことができる。サーバ側演算部220は、消費電力変動情報と、移動体側通信部110を介して取得した、残容量演算部121で演算された電源部140の残容量に基づいて、電動移動体100の走行可能範囲を演算する。そして、演算された走行可能範囲の情報をサーバ側通信部210から電動移動体100に送信して、移動体側表示部130に表示させる。これにより、クラウドサーバ200側で電源部140の残容量と消費電力変動情報を収集して、電動移動体100毎に走行可能範囲を算出することで、各電動移動体100側の処理を軽負荷として効率のよい運用が図られる。
【0047】
ここで、走行可能範囲の演算は、充放電ユニット190の充放電制御部194により、電池制御情報を考慮して行う。電池制御情報には、電源部140に含まれる二次電池141の充放電履歴による劣化度合の情報が含まれる。すなわち、二次電池141の劣化度合に応じて容量が変化することを考慮しながら、走行可能範囲を演算して、より正確な走行可能範囲の予測が可能となる。特に充放電ユニット190の制御による充放電量や電池性能等を考慮し、二次電池141の将来における劣化度合、すなわち劣化や故障を予測して、残走行距離を決定する。
【0048】
また、走行可能範囲の演算をリアルタイムで行い、残走行距離を更新することで、常に最新の残走行距離を把握できる。
【0049】
また走行可能範囲の演算を、電動移動体100側で行うこともできる。この場合、移動体側演算部120は、移動体側通信部110を介して取得した、サーバ側演算部220で収集した消費電力変動情報と、残容量演算部121で演算された電源部140の残容量に基づいて、電動移動体100の走行可能範囲を演算し、移動体側表示部130に表示させる。この構成によれば、電動移動体100側で電源部140の残容量と消費電力変動情報を収集して、電動移動体100の走行可能範囲を算出することで、通信量を低減して自律的な走行可能範囲の演算が可能となる。
【0050】
なお、走行可能範囲の演算を、クラウドサーバと電動移動体の両方で行ってもよい。例えば電動移動体で走行可能範囲を演算しつつ、クラウドサーバ側で演算した走行可能範囲で補正するように構成してもよい。あるいは、走行可能範囲の演算の一部を電動移動体側で、残りをクラウドサーバ側で行い、これらを統合してもよい。例えば、二次電池141の充放電履歴等の電池制御情報を、常時クラウドサーバ200に上げて、サーバ側演算部220で処理してもよい。あるいは、電動移動体の演算/記憶部192である程度、電池制御情報を蓄積した上で、適当なタイミングでクラウドサーバ200に上げてもよい。さらに充放電履歴に基づく劣化度合の算出も、クラウドサーバ200側、電動移動体100側のいずれで行ってもよい。これらの情報は、クラウドサーバ200側のサーバ側記憶部292や充電装置300の充電側記憶部392に、識別情報(ID)と共に記憶され、適切に管理されることで、誤差の少ない走行可能範囲の表示を実現できる。また、充放電ユニット190を据え置き型の電池パックに転用する際にも利用できる。さらに走行可能範囲の演算には、AIを用いたディープラーニング技術を適用してもよい。
(走行可能時間)
【0051】
以上の例では、各電動移動体100は走行可能範囲を地図上に表示させる等して、距離や面積で残存の走行能力を告知する例を説明した。ただ本発明はこれに限らず、走行可能範囲に代えて、あるいはこれに加えて、走行可能な残り時間を告知するようにしてもよい。例えばクラウドサーバ200が、各電動移動体100に対して、電源部140の残容量で、あとどのくらいの時間走行可能かを示す走行可能時間を通知するよう構成する。これにより、電動移動体の乗員は、走行可能な残り時間を通知されるため、時間の尺度でもって運行を把握できる。特に、上述した消費電力変動情報に基づいて、時々刻々と変化する条件下で残りの走行可能時間を更新することにより、電動移動体の乗員に対してより正確な残り時間を告知して、安心感が高められる。例えば出発後に発生した急な嵐によって負荷が増え、走行能力が当初の想定よりも低くなるような場合でも、適切な補正が行われて残り時間が更新されて表示され、予期せぬ遭難などを未然に回避できる。
【0052】
また、走行可能時間が当初よりも短くなった場合は、移動体側表示部130において残り時間を点滅させて表示させたり、警告音を発したり、音声案内で「走行可能な残り時間が短くなりました。ご注意下さい。」等とスピーカから流し、乗員に対して注意を促すこともできる。
【0053】
クラウドサーバ200は、各電動移動体100に対して、現在の残容量で目的地に到達できるかどうか、又は充電装置の配置位置まで到達できるか、あるいは出発地に戻れるかを通知するよう構成してもよい。これにより、残容量不足で電動移動体が立ち往生する事態を回避できる。特に電動移動体が電動ボートやジェットスキーのように水面上を走行する移動体の場合は、乗員が徒歩で安全な地域に戻ることが困難なため、充電が可能な地点まで到達できるかどうかを乗員に告知することで、安全性が高められる。また出発当初は電源部の残容量が十分であったとしても、その後の天候の悪化や風雨などによって電力消費量が増えて、目的地までの到着ができなくなる場合も考えられる。このような場合であっても、現在の残容量や、予想される消費電力から、走行可能な距離を推定して、随時更新することにより、時々刻々と変化する天候などの条件に応じて走行可能な範囲を補正して、目的地まで到達できるか否かを正確に判定することが可能となる。
【0054】
またクラウドサーバは、各電動移動体に対して、走行可能な距離を通知するよう構成してもよい。あるいはクラウドサーバは、電動移動体が所定の目的地などに到達できないと判定された場合には、当該電動移動体に対し通知や警告を送ると共に、管理装置側にも警告を発したり、あるいは登録されたユーザにメールや電話等を発するように構成してもよい。通知内容は、当該電動移動体の識別情報や乗員名、現在位置、電源部の残容量が尽きる予想時刻などを含むことができる。これによって当該電動移動体の現在位置に速やかに救助に向かうなど、必要な措置を講じることが可能となり、遭難事故の回避に資する。
(充電装置300)
【0055】
また電動移動体の運行管理システム1000は、各電動移動体100を充電するための充電装置300を備える。充電装置300は、送電部350と、重量測定部380と、充電側通信部310を備える。
【0056】
送電部350は、各電動移動体の受電部150と接続して、電源部140の二次電池を充電するための電力を供給する。送電部350と受電部150の接続は、ケーブル等を用いる有線接続方式の他、ワイヤレス接続方式としてもよい。特にワイヤレス接続方式は、無接点とできる上、ケーブル等を一々接続する手間がなく好ましい。充電方式としては、電磁誘導、共鳴型、電波受信型等が利用できる。
【0057】
重量測定部380は、電動移動体100に搭載される人及び荷物の重量を測定する。例えば重量計を設けて、電動移動体100をこの重量計の上面に移動させることで、簡単に人や荷物を含めた総重量を測定できる。また、必要に応じて電動移動体100の空車重量を減算してもよい。
【0058】
充電側通信部310は、クラウドサーバ200と通信するための部材である。充電側通信部310には、上述した移動体側通信部110やサーバ側通信部210等と同様、汎用的な通信モジュールが利用できる。
【0059】
さらに充電装置300は、後述する
図3に示すように充電側表示部330を設けてもよい。充電側表示部330は、充電装置300の動作状態や設定内容を表示させる他、移動体側表示部130と同様に走行可能範囲表示領域131を設けてもよい。
【0060】
電動移動体100が複数台存在する場合は、各電動移動体100は、固有の識別情報を付与されている。識別情報は、電動移動体100に付与する他、電動移動体100が備える部材に付与してもよい。後述する
図3の例では、充放電ユニット190に識別情報として充放電ユニットIDを付与している。またクラウドサーバ200は、サーバ側記憶部292に充放電ユニットIDを保持するデータベースを有している。これにより、クラウドサーバ200は複数の電動移動体100を識別情報で区別して、各電動移動体100の充電状態を把握できる。また充電装置300側でも同様に充電側記憶部392に充放電ユニットIDを保持するデータベースを有している。これにより、充電装置300は複数の電動移動体100を識別情報で区別して、クラウドサーバ200に対して充電済みの電動移動体100の情報を送信することができる。
(管理装置400)
【0061】
さらに電動移動体の運行管理システム1000は、管理装置400を備えていてもよい。管理装置400は、各電動移動体の現在位置や充電状態等を把握するコントロールセンタ等として機能する。管理装置400は、管理側通信部410と、管理側演算部420と、管理側表示部430を備える。
【0062】
管理側通信部410は、クラウドサーバ200のサーバ側通信部210と通信するための部材である。上述の通り、管理装置400は公衆回線等を用いてクラウドと接続されており、管理側通信部410が通信のインターフェースとなる。この管理側通信部410も、上述した移動体側通信部110やサーバ側通信部210、充電側通信部310等と同様、汎用的な通信モジュールが利用できる。
【0063】
管理側演算部420は、管理側通信部410や管理側表示部430を制御するための部材である。また管理側演算部420は、必要な演算や処理を行う。この管理側演算部420も、MPUやCPU、SoC、マイコンやASIC等で構成できる。
【0064】
管理側表示部430は、各種の情報や設定内容、地図などを表示させるためのディスプレイであり、液晶モニタや有機ELモニタ等が利用できる。また管理側表示部430においても、走行可能範囲を表示させる管理側走行可能範囲表示領域431を設けてもよい。管理側演算部420は、クラウドサーバ200を介して走行可能範囲を取得し、管理側走行可能範囲表示領域431に各電動移動体100の現在の残容量や消費電力変動情報に基づく走行可能範囲を表示させる。管理側走行可能範囲表示領域431では、複数の電動移動体100の走行可能範囲をまとめて表示させたり、任意の一台乃至数台の電動移動体100の走行可能範囲を表示させるように、表示を切り替え可能としてもよい。これにより管理側表示部430は、測位部170で測位された電動移動体100の現在位置を、サーバを介して取得し、地図上に表示させる。また電動移動体100の電源部140の残容量を表示できる。
(ゴルフカート)
【0065】
本発明の電動移動体100としては、ゴルフ場や商業施設の電動カー卜、アウトドア施設の電動バギーやトライク等の全地形対応車、水上を走行する電動ボートや水上オートバイ、ドローン等のマルチコプター等に適用できる。以下では、電動移動体100としてゴルフカートに適用した例を、
図2及び
図3に基づいて説明する。
図2は電動移動体の運行管理システム1000として、ゴルフ場に設置されたゴルフカート、充電ステーション、クラブハウスと、これらとネットワーク接続されたクラウドサーバ200を示している。一般に充電ステーションは、クラブハウスの近傍に設置される。各ゴルフカートは、充電装置300である充電ステーションで充電される。またゴルフ場のクラブハウスに管理装置400が設置され、複数台のゴルフカートについて、それぞれの現在位置や充電状態などを監視する。これらの機器は、公衆回線を介してクラウドサーバ200とネットワーク接続されている。
図3は、これら充電装置300とクラウドサーバ200と電動移動体100のブロック図を示している。
【0066】
ゴルフカートは、電源部140と、移動体側表示部130と、車両センサ部172と、駆動部160と、受電部150と、充放電ユニット190を備えている。すでに説明した部材については、詳細説明を省略する。
【0067】
移動体側表示部130は、カーナビゲーションとして機能し、地図を表示する。
図4に、移動体側表示部130に走行可能範囲表示領域131を表示させた一例を示す。この例では、地図上にゴルフカートの現在位置を表示させると共に、走行可能範囲を破線で示す領域で示している。この例では、ゴルフカートを中心とする同心円状に走行可能範囲を表示させている。また走行可能範囲は、面積でなく線状に示してもよい。例えば
図5に示すような道路を走行する車両のカーナビゲーション装置において、走行可能範囲を距離で演算して、道路に重ねて線状に表示させるようにしてもよい。これにより、どの道をどの地点まで走行することができるかをより具体的に把握できるようになる。
【0068】
あるいは、走行可能範囲に代えて走行可能時間を表示させてもよい。例えば
図6に示すように、移動体側表示部130に地図を表示させつつ、走行可能時間表示領域134を設けて、残り走行可能な時間を表示させてもよい。この例では、電源部140の残容量表示135と並べて、走行可能時間表示領域134として「残り30分走行可能」と表示させている。
【0069】
このように、ゴルフカートの移動体側表示部130や、クラブハウスの管理側表示部430等で、ゴルフカートの現在位置と現在の電池残量で走行可能な範囲、あるいは残りの走行可能時間等を表示して、電池切れの警告を行い、クラブハウスへ戻るように促すことができる。
【0070】
車両センサ部172は、電動移動体100の挙動や運転操作を検知する情報を取得するための部材である。具体的には、車両センサ部172はハンドル操舵角、アクセル開度、速度、加速度、方向、傾斜等の検出を行う。また車両センサ部172は、GPSと合わせてカーナビゲーションの表示に用いたり、充放電制御部194の制御情報と電源部140の電池残量変化等と合わせて、二次電池141の劣化/故障予測や、電動移動体の正常運行管理(故障の有無)に用いることもできる。
【0071】
充放電ユニット190は、GPS/通信部191と、演算/記憶部192と、データ処理部193と、充放電制御部194を備える。GPS/通信部191は、測位部170と移動体側通信部110をモジュール化したものである。このように本発明においては、任意の複数の機能を適宜統合することができる。演算/記憶部192は、各種の演算を行う演算素子と、演算結果や設定内容を記録する記憶素子で構成される。データ処理部193は、各種のデータ処理を行う。充放電制御部194は、受電部150で電源部140を充電する充電制御や、電源部140を放電する放電制御を担う。これら演算/記憶部192、データ処理部193、充放電制御部194は、部分的に移動体側演算部120の機能を実現している。また充放電ユニット190側で、消費電力変動情報を収集するよう構成してもよい。
【0072】
クラウドサーバ200は、サーバ側通信部210と、サーバ側演算部220と、サーバ側記憶部292を備える。また、必要に応じてサーバ側表示部230を付加してもよい。サーバ側表示部230は、カーナビゲーションや地図を表示する。サーバ側演算部220は、消費電力変動情報収集部221の機能を実現する。サーバ側記憶部292は、電動移動体100の識別情報である各ゴルフカートの充放電ユニットIDや、電源部140の電池情報、例えば定格電池容量、最新の電池容量などを保持するデータベースとして機能する。
【0073】
さらに、二次電池141の充放電履歴に基づいて算出された電池の劣化度合の情報等も含めた電池制御情報は、その後の電動移動体100の運行に利用する他、二次電池141を再利用する際にも活用できる。例えば、二次電池141を電動移動体100から取り外して、別の電動移動体100に転用する際、このような電池制御情報を引き継いで、走行可能範囲や走行可能時間の演算に利用することで、現在の劣化状態から誤差の少ない走行可能範囲や時間を算出できる。
【0074】
充電ステーションは、充電側通信部310と、充電側記憶部392を備える。充電側記憶部392は、サーバ側記憶部292と同様、充放電ユニットIDや電池情報のデータベースとして機能する。また充電ステーションは、カーナビゲーションや地図を表示する充電側表示部330や充電側入力部345、あるいは消費電力変動情報などのデータ収集といった機能を付加してもよい。
(ゴルフカートの使用態様)
【0075】
次に、
図2に基づいてゴルフカートの使用態様を説明する。各ゴルフカートに内蔵する充放電ユニット190には、予め識別情報が付与されている。各ゴルフカートは、使用する前、すなわち走行開始前に、充電ステーションで充電される。充電ステーションは、商用電源や蓄電池などから電力を受けて、ゴルフカートの電源部140を充電する。また各ゴルフカートは、乗車人数と積載荷物の重量を含む車両重量を、予め自動的に計測される。この重量計測は、充電ステーションで行うことができる。充電ステーションは、車両重量を充放電ユニット190に通知する。なお、ゴルフカートの重量計測と充電は、いずれを先に行ってもよいし、同時に行ってもよい。例えばワイヤレス充電を行う際に、所定の位置にゴルフカートを駐車させた状態で、車両重量を同時に計測する。
【0076】
走行開始したゴルフカートの移動体側演算部120は、消費電力変動情報を求める。ここでは充放電ユニット190が、カーナビの地図データや車両センサ等の情報と連携して、車速や走行経路の道路形状等を求める。またクラウドサーバ200を介して、気象情報、例えば天候、気温、雨量、風速、風向、波の高さ他を取得する。気象情報は、クラウドサーバ200を介さず、ゴルフカー卜側で収集してもよい。例えば移動体側通信部110としてスマートフォン等の携帯情報端末を用いる場合は、インターネット上で公開されている気象情報を手動もしくは自動で収集できる。
【0077】
このようにして収集した、電動移動体100の走行に影響を与える要素である消費電力変動情報と、充放電ユニット190の制御による単位時間当たりの電池の充放電量(充放電深度)、温度変化量等の履歴データをリアルタイムで分析し、将来における電池の劣化/故障予測情報(劣化度)を求め、その二次電池141の劣化度合いを基にして現在の電池容量で継続して走行可能な残航続可能時間(走行可能時間)、あるいは残航続可能範囲(走行可能範囲)を算出する。
【0078】
算出された走行可能時間や走行可能範囲は、連携しているカーナビやカーナビアプリ等の端末に送られ、周辺地図に重畳して、または模擬的な略図として、移動体側表示部130に表示される。またクラウドサーバ200やアクセスポイン卜等を介して充電ステーションに対しても同様の情報が送られ、充電ステーションに隣接するクラブハウスや近隣の地域からも、該当するゴルフカートの位置や電池残量と走行可能時間等の情報を把握することができる。これにより、ゴルフカートの位置と走行可能範囲の関係から、充電ステーションまで戻れないおそれがある場合は、クラブハウスやその近隣地域からメッセージにより該当するゴルフカートに警告したり、経路設定の変更を指示する。さらに、電池容量不足や電池切れにより充電ステーションまで戻れない場合は、当該ゴルフカートの位置まで救援に向かうよう手配できる。
(電動移動体の運行管理方法)
【0079】
このような電動移動体を用いた運行管理方法について説明する。まず、クラウドサーバ200が、電動移動体100の運行に必要な電力を変動させる要因となる消費電力変動情報をサーバ側演算部220で収集し、サーバ側通信部210を介して電動移動体100に送信する。次に、サーバ側通信部210が送信した、サーバ側演算部220で収集した消費電力変動情報を、電動移動体100の移動体側通信部110で受信する。さらに電動移動体100は、二次電池を備える電源部140から電力供給を受けて電動移動体100を移動させる駆動部160で消費される電源部140の残容量と、消費電力変動情報に基づいて演算された、該電動移動体100の走行可能範囲を、移動体側表示部130に表示させる。これにより、電源部140の残容量のみならず、電動移動体100の運行に必要な電力を変動させる要因となる消費電力変動情報も収集して、電動移動体100の走行可能範囲を算出するため、より正確で誤差の少ない走行可能範囲を表示させることが可能となる。
【0080】
このような電動移動体の運行管理方法の詳細を、
図2で示したゴルフカートに適用する例について説明する。ゴルフカー卜は、内蔵される充放電ユニット190で電源部140の充電を行った後、利用者に貸し出されて目的のコースへ向かう。このとき充放電ユニット190は、乗車人数や荷物の重量を自動計測して記憶する。またクラウドサーバ200から気象情報を収集して、走行経路のナビデータ等も考慮して、残走行距離すなわち走行可能範囲をリアルタイムで算出する。走行可能範囲とナビデータは、クラウドサーバ200を介してクラブハウスに設置されている充電ステーションにも送信され、クラブハウス内に設置された管理装置400でゴルフカートと同じ情報を共有できる。
【0081】
またクラブハウス内の管理装置400からは、コースを周っているゴルフカー卜に対してメッセージを送信して、電池切れの警告を行うことも可能である。
【0082】
このように、電動移動体100の乗員数、荷物積載量等の情報と、電池状態の情報に加えて、気象情報等を考慮して、走行可能時間や走行距離を算出し、カーナビや携帯端末のアプリ上に表示することができる。またクラウドサーバ200を介して情報がアップされるので、遠隔地でも情報共有ができるようになる。この結果、各電動移動体100が目的地点まで到達できるか否かが明確となり、電池切れにより航続不能となるトラブル等を防止し、遠隔地からの迅速な救援活動にも貢献できる。
【0083】
また、充放電ユニットとGPSや通信機能を一体化してモジュール化することで、様々な種類の電動移動体に搭載可能とできる。これにより、ゴルフカートやバギーといった陸上を走行する車両に限らず、水面を航行する電動ボートやジェットスキー、あるいは空中を飛行する電動グライダーや無人ドローン等にも本発明を適用できる。
【0084】
例えば充放電ユニットを、シーリング材やガスケット等で気密性や耐水圧強度を高めて、肪錆対策等により完全防水とし、短絡等による火災対策を施した一体型モジュール構造とする。これにより、ゴルフカー卜だけでなく、森林や離島ツアー等で利用される電動パギーやトライク等にも搭載できる。また陸上だけでなく、海上のマリンレジャーで利用される電動ボートや水上オートバイ(ジェットスキー)等にも同様のモジュール構成でそれぞれの出力に合わせて提供が容易となる。このように、陸上、水上を走行するいずれの電動移動体に対しても、安全性を確保したサービスが提供可能となる。このように陸上だけでなく海上交通手段等、様々な環境にも幅広く対応することが可能となることで、今まで各用途毎に個別に設計、開発されていた小型の電動移動体の中核となる部分のモジュールの仕様を標準化できるようになり、製品コストの抑制に寄与できる。また、各分野の電動移動体間でモジュールの再利用も可能となり、電池材料などの限られた資源を有効に活用して環境保護にも資する。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係る電動移動体の運行管理システム、電動移動体及び電動移動体の運行管理方法は、ゴルフカートやバギー、電動スクータ、電動バイク、電動車両、電動ボート、ジェットスキー、電動グライダー、ドローン等の運行管理に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0086】
1000…運行管理システム
100…電動移動体
110…移動体側通信部
120…移動体側演算部
121…残容量演算部
130…移動体側表示部
131…走行可能範囲表示領域
134…走行可能時間表示領域
135…電源部の残容量表示
140…電源部
141…二次電池
150…受電部
160…駆動部
170…測位部
172…車両センサ部
180…重量入力部
190…充放電ユニット
191…GPS/通信部
192…演算/記憶部
193…データ処理部
194…充放電制御部
200…クラウドサーバ
210…サーバ側通信部
220…サーバ側演算部
221…消費電力変動情報収集部
230…サーバ側表示部
292…サーバ側記憶部
300…充電装置
310…充電側通信部
330…充電側表示部
345…充電側入力部
350…送電部
380…重量測定部
392…充電側記憶部
400…管理装置
410…管理側通信部
420…管理側演算部
430…管理側表示部
431…管理側走行可能範囲表示領域
NC…通信ネットワーク