IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ツインバード工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-糖質低減炊飯器 図1
  • 特開-糖質低減炊飯器 図2
  • 特開-糖質低減炊飯器 図3
  • 特開-糖質低減炊飯器 図4
  • 特開-糖質低減炊飯器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169838
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】糖質低減炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
A47J27/00 103H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075509
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000109325
【氏名又は名称】株式会社ツインバード
(72)【発明者】
【氏名】高山 修一
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA02
4B055AA22
4B055BA80
4B055CA09
4B055CB02
4B055CB30
(57)【要約】
【課題】良好に糖質を低減してご飯を炊きあげることができる糖質低減炊飯器を提供することこと。
【解決手段】加熱手段としてのヒータ6によって加熱されると共に水が収容される釜としての内釜7と、この内釜7内に収容されると共に米が収容される有孔容器11とを有する糖質低減炊飯器1において、前記有孔容器11の貫通孔16,18が形成された範囲の外面と前記内釜7の内面との間に間隙Sを有すると共に、前記貫通孔16,18が、炊飯開始時の水面Lwよりも低い第一の貫通孔群22と、炊飯開始時の水面Lwよりも高い第二の貫通孔群23とを有することで、前記ヒータ6によって加熱された前記有孔容器11内の水(湯)が米を加熱すると共に糖質を溶解した後、前記第二の貫通孔群23から前記有孔容器11外に排出されるので、水(湯)に溶解した糖質がご飯に留まりにくくして良好に糖質を低減することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段と、この加熱手段によって加熱されると共に水が収容される釜と、この釜内に収容されると共に米が収容される有孔容器とを有する糖質低減炊飯器において、
前記釜の内面と有孔容器における貫通孔が形成された範囲の外面との間に間隙を有すると共に、前記有孔容器の貫通孔が、炊飯開始時の水面よりも低い位置にある第一の貫通孔群と、炊飯開始時の水面よりも高い位置にある第二の貫通孔群とを有することを特徴とする糖質低減炊飯器。
【請求項2】
前記第二の貫通孔群が、炊飯終了時の飯の上端位置よりも高い位置にある第三の貫通孔群を有することを特徴とする請求項1記載の糖質低減炊飯器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖質が低減されたご飯を炊くことができる糖質低減炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の糖質低減炊飯器としては、外釜(本願発明の釜に相当する)に収容されるホール(本願発明の貫通孔に相当する)が形成された内釜(本願発明の有孔容器に相当する)を有し、前記外釜には水が収容され、前記内釜には米が収容され、ヒーターコイル(本願発明の加熱手段に相当する)によって外釜を加熱してこの中の水を加熱することで内釜内の米を炊き、米から湯に溶け出した糖質を外釜内に排出することで、炊きあがったご飯の糖質を低減する糖質低減炊飯器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。なお、前記ホールは、図面上、前記内釜の底部にのみ形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-27987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような糖質低減炊飯器は、糖質を含む湯が内釜の底部に形成されたホールを通過して外釜内に排出される。この際、糖質を含む湯は、炊きかけのご飯を通過して排出されることになる。しかしながら、糖質を含む湯は「おねば」と言われるように、粘度の高いものである。このため、湯に溶け出した糖質がご飯に留まってしまい、炊きあがったご飯の糖質が思ったほど低減されない虞があった。
【0005】
本発明は以上の問題点を解決し、良好に糖質を低減してご飯を炊きあげることができる糖質低減炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の糖質低減炊飯器は、加熱手段と、この加熱手段によって加熱されると共に水が収容される釜と、この釜内に収容されると共に米が収容される有孔容器とを有する糖質低減炊飯器において、前記釜の内面と有孔容器における貫通孔が形成された範囲の外面との間に間隙を有すると共に、前記有孔容器の貫通孔が、炊飯開始時の水面よりも低い位置にある第一の貫通孔群と、炊飯開始時の水面よりも高い位置にある第二の貫通孔群とを有するものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の糖質低減炊飯器は、請求項1において、前記第二の貫通孔群が、炊飯終了時の飯の上端位置よりも高い位置にある第三の貫通孔群を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に記載の糖質低減炊飯器は、以上のように構成することにより、加熱手段によって加熱された有孔容器内の水(湯)が米を加熱すると共に糖質を溶解した後、第二の貫通孔群から前記有孔容器外に排出されるので、水(湯)に溶解した糖質がご飯に留まりにくくして良好に糖質を低減することができる。
【0009】
なお、前記第二の貫通孔群が、炊飯終了時の飯の上端位置よりも高い位置にある第三の貫通孔群を有することにより、炊飯により米が膨張しても、水(湯)に溶解した糖質を第三の貫通孔群から前記有孔容器外に排出することができるので、水(湯)に溶解した糖質がご飯に留まりにくくして良好に糖質を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示す糖質低減炊飯器の右側面図である。
図2】同、A-A断面図である。
図3】同、内釜及び有孔容器の拡大断面図である。
図4】同、有孔容器の破線Xで囲んだ部分の拡大断面図である。
図5】同、有孔容器の破線Yで囲んだ部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図5に基づいて説明する。なお、以下の実施形態において、図1に基づいて前後を規定する。即ち、図1における左が前、右が後である。また、図1乃至図5における上が実際の上、下が実際の下である。1は糖質低減炊飯器である。この糖質低減炊飯器1は、本体2と蓋体3とを有する。そして、前記蓋体3は、前記本体2の後部に設けられたヒンジ部4によって枢支される。
【0012】
前記本体2内には、外釜5が設けられると共に、この外釜5の底部に加熱手段としてのヒータ6が設けられる。そして、このヒータ6に載るように、前記外釜5内に釜としての金属製の内釜7が着脱可能に収容される。この内釜7は、底部8と側面部9とを有して有底円筒状に形成されると共に、前記側面部9の上部に、外側に広がるようにフランジ部10が形成される。
【0013】
更に、前記内釜7の内部には、金属製の有孔容器11が着脱可能に装着される。この有孔容器11は、底部12と側面部13とを有して有底円筒状に形成されると共に、前記側面部13の上部に、外側に広がるようにフランジ部14が形成される。なお、前記内釜7の高さは、有孔容器11の高さよりも高い。そして、前記有孔容器11のフランジ部14は、前記内釜7のフランジ部10に載せることができる。このため、前記有孔容器11は、その底部12が前記内釜7の底部8から離れるように、また、前記有孔容器11は、その側面部13が前記内釜7の側面部9から離れるように、前記内釜7に装着される。これによって、前記内釜7の内面と前記有孔容器11の貫通孔16,18が形成された範囲の外面との間に、間隙Sが形成される。なお、前記フランジ部14には、軟質のクッション材15が装着される。これにより、前記内釜7内の水が沸騰することで前記有孔容器11が振動したとしても、前記内釜7との衝突音が発生したりせず、また、内釜7や有孔容器11が傷ついたりすることが抑制される。
【0014】
前記有孔容器11について詳述する。この有孔容器11は、前述したように、底部12と側面部13とを有して有底円筒状に形成される。そして、前記底部12には、複数の貫通孔16からなる底部貫通孔群17が形成される。また、前記側面部13には、複数の貫通孔18からなる側部貫通孔群19が形成される。この側部貫通孔群19は、周方向に環状に複数列(本実施形態では4列)形成される。便宜上、下から第一列19A、第二列19B、第三列19C、第四列19Dとする。そして、前記貫通孔16,18は、それぞれ収容される米粒の大きさよりも小さく形成される。また、前記側面部13には一対の軸受孔20が形成されると共に、この軸受孔20に把手21が揺動可能に枢支される。この把手21は、炊飯時には倒されて、前記有孔容器11の上端から突出しないようにされる。
【0015】
なお、前記有孔容器11を用いて炊飯する場合、前記内釜7に水を入れると共に、前記有孔容器11に研いだ米を入れる。この時の水位Lwは、図3に示すように、前記側部貫通孔群19の第二列19Bよりも僅かに低い。即ち、底部貫通孔群17及び側部貫通孔群19の第一列19Aは、炊飯開始時の水位Lwよりも低く、側部貫通孔群19の第二列19Bから第四列19Dまでは、炊飯開始時の水位Lwよりも高い。但し、第二列19Bは、炊飯量や水加減等によって、炊飯開始時に水位Lwよりも低くなる場合があり得る。また、炊飯すると、飯の上端位置Lcは、最初の米の上端位置Lrよりも高くなる。この飯の上端位置Lcは、前記側部貫通孔群19の第三列19Cと第四列19Dの間となる。ここで、炊飯開始時の水位Lwよりも低い位置にある貫通孔群を第一貫通孔群22と定義し、炊飯開始時の水位Lwよりも高い位置にある貫通孔群を第二貫通孔群23と定義する。そして、この第二貫通孔群23のうち、炊飯終了時の飯の上端Lcよりも高い位置にある貫通孔群を第三貫通孔群24と定義する。本実施形態の場合、前記底部貫通孔群17及び側部貫通孔群19の第一列19Aが第一貫通孔群22であり、前記側部貫通孔群19の第三列19C及び第四列19Dが第二貫通孔群23である。また、第二貫通孔群23のうち、第四列19Dが第三貫通孔群24である。なお、第二列19Bは、図3に示すように、炊飯開始時の水位Lwとの関係で第二貫通孔群23であるが、水加減や炊飯量によっては第一貫通孔群22ともなり得る。
【0016】
次に、本実施形態の作用について説明する。なお、通常の炊飯は、前記内釜7内に研いだ米及び水を入れて行うが、これはよく知られた方法なので、説明を省略する。
【0017】
糖質低減炊飯を行う場合、使用者は、まず前記内釜7に所定量の水を入れた後、この内釜7を前記外釜5内に収容する。なお、前記内釜7の内面には図示しない水位線が表記されているので、この水位線の高さまで水を入れればよい。このように、前記内釜7を前記外釜5に収容すると、前記内釜7の底部8は、前記ヒータ6に伝熱的に接触する。次に、使用者は、前記有孔容器11に研いだ米を入れた後、前記把手21を起こして把持し、前記有孔容器11を前記内釜7内に収容する。この際、前記有孔容器11と米の分、水位が上昇する。この水位は、図3に示すようにLwである。そして、前述したように、前記内釜7の内面と有孔容器11の外面との間に間隙Sが形成される。なお、前記内釜7に有孔容器11を収容した後、これらを外釜5に収容してもよい。更に、前記把手21を倒し、前記蓋体3を閉じた後、図示しない操作部を操作して炊飯を開始する。
【0018】
炊飯が開始されると、前記内釜7内の水が前記ヒータ6によって加熱されて湯になる。この湯は、前記有孔容器11を加熱し、この加熱された有孔容器11がその中の米を加熱する。また、湯の一部は、前記有孔容器11の第一の貫通孔群22(即ち、底部貫通孔群17及び側部貫通孔群19のうち第一列19A)から前記有孔容器11内に流入し、その中の米を加熱する。これによって、前記内釜7内及び有孔容器11内の水が沸騰して、前記有孔容器11内の米が炊かれる。この際、米が吸水により膨張すると共に、米に含まれる糖質(この場合、アミロースやアミロペクチン)が糊化し、湯に溶け出す。糖質を含む湯(いわゆる「おねば」)は、前記有孔容器11内を上昇する。そして、「おねば」は、前記第二の貫通孔群23(即ち、前記側部貫通孔群19の第二列19Bから第四列19Dまで)から前記有孔容器11外に排出され、前記内釜7内に溜められる。また、「おねば」は、前記第一の貫通孔群22からも前記有孔容器11外に排出され、前記内釜7内に溜められる。これによって、炊かれた飯から糖質が除かれる。
【0019】
なお、上述したように、炊飯の過程で米粒が吸水膨張するので、この結果、米(飯)の上端位置は、炊飯に伴ってLrからLcに変化する。しかしながら、このように米(飯)の上端位置がLcまで高くなっても、この上端位置Lcよりも高い位置に第三の貫通孔群24(即ち、前記側部貫通孔群19の第四列19D)が設けられるので、この第三の貫通孔群24から「おねば」を排出することができる。
【0020】
前記ヒータ6による加熱が続くと、前記内釜7内の湯が蒸発して水位が低下する。そして、水位が前記有孔容器11の底面12よりも低くなると、前記有孔容器11内の飯は、前記内釜7内で発生した水蒸気によって蒸されることになる。この蒸す工程を所定時間継続した後、糖質低減炊飯が終了する。なお、糖質低減炊飯が終了すると、前記内釜7内には「おねば」が溜まった状態となる。
【0021】
炊飯の過程で糊化して飯粒から湯に溶け出した糖質(この場合、アミロースやアミロペクチン)は、粘度の高い「おねば」となる。特許文献1に示す従来構造のような、内釜内に有孔容器を収容し、この有孔容器の底部にのみ貫通孔が形成されるものの場合、対流によって「おねば」が有孔容器内を上昇した後、下降することになるので、「おねば」は、飯を通過して有孔容器から下方に排出されることになる。炊飯の過程で、有孔容器内の水位が低下してゆくと共に飯粒が吸水膨張してゆくと、有孔容器内で徐々に「おねば」が流動しにくくなってゆく。このため、スポンジが水を含むように、飯粒間に糖質を含む「おねば」が留まることになる。そして、ヒータからの熱によって「おねば」の水分が蒸発する過程で、糖質が飯粒に再付着することになる。
【0022】
これに対し、本発明では、前記有孔容器11における炊飯初期の水位Lwよりも高い位置に第二の貫通孔群23を形成することで、飯を通過させずに「おねば」を有孔容器11外に排出させる経路を作ることができるので、飯に留まる「おねば」の量を減らして、炊きあがった飯の糖質を低減させることができる。更に本発明では、前記有孔容器11における炊飯終了時の飯の上端位置Lcよりも高い位置に第三の貫通孔群24を形成することで、炊飯終了時まで飯を通過させずに「おねば」を有孔容器11外に排出させる経路を作ることができるので、飯に留まる「おねば」の量を減らして、炊きあがった飯の糖質を低減させることができる。
【0023】
炊飯終了後は、前記有孔容器11の把手21を起こした後、この把手21を持ち上げることで、前記有孔容器11を糖質低減炊飯器1から取り出して洗うことができる。
【0024】
以上のように本発明は、加熱手段としてのヒータ6と、このヒータ6によって加熱されると共に水が収容される釜としての内釜7と、この内釜7内に収容されると共に米が収容される有孔容器11とを有する糖質低減炊飯器1において、前記内釜7の内面と有孔容器11における貫通孔16,18が形成された範囲の外面との間に間隙Sを有すると共に、前記有孔容器11の貫通孔16,18が、炊飯開始時の水面Lwよりも低い位置にある第一の貫通孔群22と、炊飯開始時の水面Lwよりも高い位置にある第二の貫通孔群23とを有することで、ヒータ6によって加熱された前記有孔容器11内の水(湯)が米を加熱すると共に糖質を溶解した後、前記第二の貫通孔群23から前記有孔容器11外に排出されるので、水(湯)に溶解した糖質がご飯に留まりにくくして良好に糖質を低減することができる。
【0025】
また本発明は、前記第二の貫通孔群23が、炊飯終了時の飯の上端位置Lcよりも高い位置にある第三の貫通孔群24を有することで、炊飯により米が膨張しても、水(湯)に溶解した糖質を前記第三の貫通孔群24から前記有孔容器11外に排出することができるので、水(湯)に溶解した糖質がご飯に留まりにくくして良好に糖質を低減することができる。
【0026】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施形態では、側部貫通孔群を第一列から第四列まで形成したが、これ以外の列数にしてもよい。また、上記実施形態では、有孔容器の底部及び側面部に多数の貫通孔を形成したが、網目が米粒よりも小さな金属メッシュを有底円筒状に形成してもよい。また、上記実施形態では、有孔容器の形状を有底円筒状に形成したが、半球状、又は逆截頭錐状に形成してもよい。更に、上記実施形態では、加熱手段としてヒータを用いたが、誘導加熱コイルを用いてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 糖質低減炊飯器
6 ヒータ(加熱手段)
7 内釜(釜)
11 有孔容器
16 貫通孔
18 貫通孔
22 第一貫通孔群
23 第二貫通孔群
24 第三貫通孔群
S 空間
Lw 水位
Lc 飯の上端位置
図1
図2
図3
図4
図5