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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169845
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】液体供給装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
B41J2/175 169
B41J2/175 113
B41J2/175 133
B41J2/175 141
B41J2/175 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075518
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】芦田 七海
(72)【発明者】
【氏名】刑部 吉記
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 真也
(72)【発明者】
【氏名】林 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】大木 聡
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA29
2C056EB20
2C056EB55
2C056FA10
2C056KC13
(57)【要約】
【課題】貯留室541Bにおけるインク残量の目視により確認し易くすること。
【解決手段】複合機100は、3色タンク54を備える。3色タンク54において、バッファ室541Cからの突出部61の突出端は、左右方向9において貫通孔31Fの左端よりも右方まで及んでいる。また、突出部61の内表面は、バッファ室541Cを区画している。そのため、突出部61への入射光がバッファ室541Cに至るまでに通過する部材(即ち界面)の数が少なくなる。突出部61への入射光がさほど減衰することなく貯留室541Bに貯留されるインクの液面に到達する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開口を有する第1側壁、および第2開口を有する第2側壁を備えた筐体と、
上記筐体内に設置されており、液体を貯留する貯留室を有するタンクと、を備えており、
上記タンクは、
液体注入口と、
液体流出口と、
上記貯留室を区画しており、上記第1開口と対向する透光性の第1タンク壁と、
上記第2開口と対向する第2タンク壁と、
上記第2タンク壁から上記第2開口を通じて上記筐体の外方に向かって突出する透光性の突出部と、を有する液体供給装置。
【請求項2】
上記突出部は、上記第2側壁の外表面より外方へ突出している請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
上記突出部の外表面は、外向きの法線ベクトルが上向き成分を含む第1領域と、上記外向きの法線ベクトルが下向き成分を含む第2領域と、を有しており、
上記第1領域の面積は、上記第2領域の面積より広い請求項1または2に記載の液体供給装置。
【請求項4】
上記タンクは、上記貯留室と区画されており、且つ連通路を通じて上記貯留室と連通するバッファ室を有しており、
上記突出部の内面は、上記バッファ室を区画する請求項1から3のいずれかに記載の液体供給装置。
【請求項5】
上記バッファ室は、上記貯留室より上方に位置する請求項4に記載の液体供給装置。
【請求項6】
上記バッファ室は、上記貯留室より下方に位置する請求項4に記載の液体供給装置。
【請求項7】
上記突出部の内面は、上記貯留室を区画しない請求項4から6のいずれかに記載の液体供給装置。
【請求項8】
上記突出部の内面は、上記貯留室と、上記バッファ室とをそれぞれ区画する請求項4から6のいずれかに記載の液体供給装置。
【請求項9】
上記第1側壁と上記第2側壁とは互いに隣接する請求項1から8のいずれかに記載の液体供給装置。












【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を貯留するタンクが筐体内に設置された液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された記録装置は、筐体内に液体収容部および記録ヘッドを備えている。液体収容部は、内部に貯留されている液体を記録ヘッドに供給する。記録ヘッドは、液体を吐出して画像記録を行う。
【0003】
液体収容部の少なくとも一部分は、内部に貯留する液体の残量を視認可能な透明度を有する透明材料で形成される。筐体は、筐体内の液体収容部が収容する液体の残量を視認可能な開口を有する。開口を通じて、液体収容部の液体の残量を、ユーザは筐体の外方から目視で確認できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-142115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
筐体の開口を通じて液体収容部に外光が入射して、液体収容部の内部空間が明るくなると、液体の残量、特に液面の位置が視認しやすい。しかし、外光の量や入射角度は、記録装置の設置環境に依存して異なる。また、特許文献1の記録装置では、開口の位置や大きさによって、筐体の内部に入射する外光が制限されるので、必ずしも液体収容部に十分な外光が入射しないおそれがある。また、外光は、筐体の開口に設けられた透明部材と、液体収容部の透明材料とを通過するが、その際に外光が屈折したり反射したりするので、開口に入射した外光の全てが液体収容部に到達しないことがある。これらを原因として、ユーザが液体収容部の液面を視認し難くなるという問題点があった。
【0006】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザがタンクに貯留された液体の液面を視認し易い液体供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明の液体供給装置は、第1開口を有する第1側壁、および第2開口を有する第2側壁を備えた筐体と、上記筐体内に設置されており、液体を貯留する貯留室を有するタンクと、を備えており、上記タンクは、液体注入口と、液体流出口と、上記貯留室を区画しており、上記第1開口と対向する透光性の第1タンク壁と、上記第2開口と対向する第2タンク壁と、上記第2タンク壁から上記第2開口を通じて上記筐体の外方に向かって突出する透光性の突出部と、を有する。
【0008】
上記構成によれば、タンクの突出部が筐体の第2開口を通じて外方に向かって突出するので、突出部に外光が入射し易い。外光がタンク内に至るまでに通過する部材が少ない。
【0009】
(2) 上記突出部は、上記第2側壁の外表面より外方へ突出している。
【0010】
上記構成によれば、第2側壁の外面と平行に進む光が突出部を通じてタンク内に到達する。
【0011】
(3) 上記突出部の外表面は、外向きの法線ベクトルが上向き成分を含む第1領域と、上記外向きの法線ベクトルが下向き成分を含む第2領域と、を有しており、上記第1領域の面積は、上記第2領域の面積より広い。
【0012】
上記構成によれば、上方から突出部に進入する外光、および下方から突出部に進入する外光がタンク内に到達する。
【0013】
(4) 上記タンクは、上記貯留室と区画されており、且つ連通路を通じて上記貯留室と連通するバッファ室を有しており、上記突出部の内面は、上記バッファ室を区画する。
【0014】
(5) 上記バッファ室は、上記貯留室より上方に位置する。
【0015】
上記構成によれば、貯留室において液面より上方が明るくなるので、筐体の外部から第1開口を通じて液面が視認し易い。
【0016】
(6) 上記バッファ室は、上記貯留室より下方に位置する。
【0017】
(7) 上記突出部の内面は、上記貯留室を区画しない。
【0018】
上記構成によれば、突出部に進入した外光が貯留室の液体に進入しないので、外光により、液体の液面より上方を効率よく明るくすることができる。
【0019】
(8) 上記突出部の内面は、上記貯留室と、上記バッファ室とをそれぞれ区画する。
【0020】
(9) 上記第1側壁と上記第2側壁とは互いに隣接する。
【0021】
上記構成によれば、第2開口を通じてタンク内に進入した外光が、第1開口を通じて視認されるタンクの第1側壁に到達し易い。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ユーザが液面を視認し易い液体供給装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る複合機100を模式的に示す斜視図であり、(A)は、複合機100の筐体カバー32が閉位置P11にあるときを示し、(B)は、複合機100の筐体カバー32が開位置P12にあるときを示す。
図2図1の複合機100の内部構成を模式的に示す縦断面図である。
図3】(A)は3色タンク54の正面図、(B)は3色タンク54の側面図、(C)は3色タンク54の上面図。
図4】(A)は、突出部61の第1構成例と示す模式図、(B)は、突出部61の第2構成例を示す模式図。
図5】(A)は、実施形態に係る突出部61の作用効果を示す図であり、(B)は、参考例における光減衰を示す図。
図6】(A),(B)は、第1変形例に係る突出部61を示す模式図。
図7】タンク本体541の他の変形例を示す模式図、
図8】(A),(B)は、突出部61および貫通孔31Fの他の変形例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る複合機100について詳説する。実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更可能である。
【0025】
[用語の定義]
以下では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。
【0026】
各図および以下の説明において、上下方向7は、複合機100が使用可能に設置された状態(図1(A)の状態)を基準として定義される。前後方向8は、複合機100において開口31Cがある側が前側として定義される。複合機100を前方から見て左右方向9が定義される。
【0027】
[複合機100の全体構成]
図1において、複合機100は、プリンタ部1(液体供給装置の一例)と、スキャナ部2と、筐体3と、を備える。複合機100は、プリンタ部1およびスキャナ部2以外にも、ファックス機能を実現するための構成を備えている。しかし、実施形態の要部は、プリンタ部1および筐体3であるため、それら以外の説明については省略または簡素化する。
【0028】
[筐体3]
筐体3は、筐体ケース31(筐体の一例)と、筐体カバー32と、を有する。
【0029】
筐体ケース31は、略直方体形状の箱体であり、複数の壁により内部空間31A(図1(B)を参照)を外部から区画する。内部空間31Aには、主として、プリンタ部1の構成要素(後述)がレイアウトされる。内部空間31Aの上端は、上向きの開口31Bになっている。複数の壁は、底壁311、前壁312、右壁313および左壁314を含む。前壁312には、正面視で矩形形状であり、且つ前向きの開口31Cが形成されている。開口31Cから筐体ケース31の後方に向かって内部空間31Dが拡がっている。内部空間31Dの下端は、排出トレイ18により画定され、その後端は、筐体ケース31の内壁315により画定される。内壁315は、排出トレイ18の後端から上方に延出しており、内部空間31Aおよび内部空間31Dを互いに区画する。
【0030】
筐体カバー32は、偏平な略直方体形状の箱体である。筐体カバー32の内部には、スキャナ部2がレイアウトされる。スキャナ部2は、筐体カバー32にセットされた原稿を光学的に読み取り、原稿に記録された画像を示すデータを生成し、コントローラ19に送信する。筐体カバー32は、筐体ケース31の上端且つ後端の位置に連結具323(図1(B)を参照)で連結される。筐体カバー32は、連結具323の回転軸A11を回転中心として、回転軸A11の周方向に、閉位置P11(図1(A)を参照)と、開位置P12(図1(B)参照)とに回動可能である。閉位置P11で、筐体カバー32は、開口31Bや内部空間31A(図1(B)参照)を閉塞し、開位置P12で、筐体カバー32は、開口31B等を開放する。以下の説明では、特に断り書きが無い場合、「筐体カバー32」という用語は、「閉位置P11にある筐体カバー32」を意味する。
【0031】
[プリンタ部1]
図2において、プリンタ部1は、シートSに、インクジェット記録方式で画像を記録する。シートSは、紙、布、プラスチックシート、OHPシートおよび封筒等である。プリンタ部1は、筐体カバー32に、供給トレイ11を備える。プリンタ部1は、筐体カバー32および内部空間31Aに搬送路12を有する。プリンタ部1は、内部空間31Aに、給送ローラ対13と、搬送ローラ対14と、プラテン15と、記録ヘッド16と、排出口17と、排出トレイ18と、コントローラ19と、モータ51と、を備えている。
【0032】
搬送路12では、プリンタ部1による画像記録の対象となるシートSが搬送される。搬送路12は、傾斜部121と、直線部122と、を有する。傾斜部121は、筐体カバー32における後端付近で、上面321から下面322へと貫通する。傾斜部121は、上面321から下面322へと前方斜め下方へと傾斜している。
【0033】
図1(A)において、供給トレイ11は、上面321に設けられている回転軸A12の周方向に、閉位置P21と、開位置P22とに回動可能である。閉位置P21の供給トレイ11は、実線で示される。開位置P22の供給トレイ11は、破線で示される。閉位置P21にあるとき、供給トレイ11は、上面321と段差無く平行になるように筐体カバー32に位置し、傾斜部121の上流端を閉塞する。開位置P22にあるとき、供給トレイ11は、筐体カバー32から後方斜め上方に突出し、傾斜部121の上流端を開放する。以下の説明では、特に断り書きが無い場合、「供給トレイ11」という用語は、「開位置P22にある供給トレイ11」を意味する。図2に示すように、供給トレイ11の上面は、画像記録の対象となるシートSを支持し、シートSを傾斜部121に供給できるように傾斜部121と連続する。
【0034】
図2において、給送ローラ対13は、駆動ローラ131およびピンチローラ132を有する。駆動ローラ131は、傾斜部121の下流端より若干下方の位置で左右に延び、左右方向9に沿う回転軸A21の周方向に回転可能である。ピンチローラ132は、駆動ローラ131の外周面に前方から当接し、ニップN1を形成する。ピンチローラ132は、駆動ローラ131に従動して回転する。
【0035】
搬送ローラ対14は、駆動ローラ141およびピンチローラ142を有する。駆動ローラ141は、給送ローラ対13に対し前方斜め下方の位置で左右に延び、回転軸A21に平行な回転軸A22の周方向に回転可能である。ピンチローラ142は、駆動ローラ141の外周面に上方から当接して、ニップN2を形成する。ピンチローラ142は、駆動ローラ141に従動して回転する。
【0036】
駆動ローラ131および駆動ローラ141は、コントローラ19の制御下でモータ51から伝達される駆動力により回転する。これにより、給送ローラ対13は、供給トレイ11上のシートSを1枚ずつ傾斜部121に送り出す。搬送ローラ対14は、傾斜部121で搬送されるシートSを、直線部122の下流(即ち、前方)へと送り出す。
【0037】
図2において、プラテン15および記録ヘッド16は、搬送ローラ対14よりも前方であって、内壁315よりも後方に位置する。プラテン15は、平面視で、前後左右に拡がり且つ左右に細長い矩形形状である。プラテン15は、上下方向7においてニップN2とほぼ同じ位置に上面15Aを有する。上面15Aは、直線部122で搬送されるシートSを支持する。即ち、上面15Aは、直線部122の下端を画定する。なお、上面15Aは、上下方向7においてニップN2より僅かに下方に位置してもよい。
【0038】
記録ヘッド16には、3色タンク54と、ブラックタンク55とにより複数色のインクが供給される。記録ヘッド16は、各色のインクを内部に貯留する。記録ヘッド16は、コントローラ19の制御下で周知のベルト搬送機構161により、プラテン15の上面15Aより若干上方の位置で上面15Aに沿って左右に移動させられる。即ち、記録ヘッド16の下面は、直線部122の上端を画定する。記録ヘッド16は、左右移動しつつ、コントローラ19の制御下で内部に貯留する各色のインクを、上面15Aにより支持されるシートSに向けて吐出する。これにより、シートSには、画像が記録される。その結果、記録ヘッド16の内部に貯留される各色のインクは消費される。
【0039】
排出口17は、内壁315において直線部122と交差する位置に形成されている。排出口17は、前方からの平面視で左右に細長い矩形形状である。画像記録済のシートSは、印刷物Sとして、排出口17から排出され、排出トレイ18により支持される。
【0040】
図1(B)に示すように、プリンタ部1は、内部空間31Aにおける前端付近に、タンク収容部52,53と、3色タンク54と、ブラックタンク55と、を備える。
【0041】
タンク収容部52は、内部空間31Dおよび排出トレイ18の右側に配置され、タンク収容部53は、内部空間31D等の左側に配置される。
【0042】
[タンク収容部52,3色タンク54(タンクの一例)]
タンク収容部52は、筐体ケース31の底壁311、前壁312および右壁313等と、上壁521とにより、タンク収容部52の内部空間52A(図3(B)参照)を外部から区画する。上壁521には、上壁521を上下に貫通する3つの開口522~524が形成されている。開口522~524は、等間隔をあけて左右に並んでいる。開口522~524の前後位置は概ね同じであり、それらの上下位置も概ね同じである。
【0043】
3色タンク54は、内部空間52A(図3(B)参照)に使用姿勢で据え置かれている。即ち、3色タンク54は、筐体ケース31内にレイアウトされている。3色タンク54やブラックタンク55が据え置かれるとは、それら自体がユーザによって交換されることが予定されておらず、3色タンク54やブラックタンク55が筐体ケース31に固定された状態を意味する。3色タンク54やブラックタンク55内のインクは、ユーザにより補充される。
【0044】
図3に示すように、3色タンク54は、タンク本体541~543と、キャップ544~546と、を備えている。
【0045】
タンク本体541,542,543は、この記載順で右から左に内部空間52A(図3(B)参照)内で並んでいる。タンク本体541~543の中では、タンク本体541が右壁313(図1(B)参照)の最も近くに位置する。
【0046】
[タンク本体541]
タンク本体541は、略直方体形状の箱体であり、複数の外壁により、内部空間541Aを外部から区画する。複数の外壁は、底壁5411、前壁5412(第1タンク壁の一例)、左壁5413、右壁5414(第2タンク壁の一例)、後壁5415、および上壁5416を有している。タンク本体541は、様々な条件を満たしつつタンク収容部52に据え付けられる。これら条件の中で、実施形態で特に重要であるのが、下記の2条件である。第1条件は、図3(B)に示すように、前壁5412がタンク収容部52の前壁312の直ぐ後で前壁312に沿って位置することである。第2条件は、図3(C)に示すように、右壁5414がタンク収容部52の右壁313の直ぐ左で右壁313に沿って位置することである。
【0047】
タンク本体541は、隔壁5417をさらに有している。隔壁5417は、図3(B)に示すように、内部空間541Aにおいて底壁5411および上壁5416の間の上下位置で、後壁5415から前方に向かって延出し、前壁5412から後方に離れた位置に至る。即ち、隔壁5417の延出端と、前壁5412との間は、ギャップになっている。このギャップは、貯留室541Bおよびバッファ室541Cを互いに連通する連通路5418をなす。隔壁5417は、図3(C)に示すように、左壁5413および右壁5414の間で、前後左右に拡がっている。
【0048】
タンク本体541の外壁および隔壁5417は、透明の樹脂材料(例えば、ポリプロピレン)で作製されている。タンク本体541の外壁および隔壁5417は、筐体ケース31の前壁312に形成された貫通孔31Fを通じて貯留室541B内のインクを外部から視認可能な程度の透光性を有する。タンク本体541は、樹脂材料の射出成型により一体成型されてもよいし、複数の部材が組み合わさって成型されてもよい。
【0049】
[貯留室541B,バッファ室541C]
隔壁5417により、内部空間541Aは、イエロのインクが貯留される貯留室541Bと、バッファ室541Cとに区画される。実施形態では、貯留室541Bは、隔壁5417より下方の空間であり、バッファ室541Cは、隔壁5417より上方の空間である。
【0050】
バッファ室541C(より詳細には、後壁5415において隔壁5417より上方の位置)には、大気連通孔5419が形成されている。実施形態では、バッファ室541Cは、タンク本体541の外壁と、隔壁5417とにより区画された空間である。しかし、これに限らず、バッファ室541Cには、所謂ラビリンス構造をなすための隔壁(図示せず)により、細い大気連通路が形成されていてもよい。
【0051】
[供給口5420(液体注入口の一例)]
上壁5416において前端寄りには、供給口5420が形成されている。供給口5420は、上壁5416から上下に突出する筒体である。詳細には、図3(B)に示すように、供給口5420において上壁5416より下方の部分は、バッファ室541Cおよび連通路5418を通って、貯留室541Bに至る。供給口5420において上壁5416より上方の部分は、上壁521の開口524(図1(B)参照)を通って、上壁521より上方に突出する。なお、図示の都合上、図1(B)には、供給口5420等、タンク本体541の構成に参照符号を付していない。供給口5420の筒体には、上端から下端まで貫通する貫通孔が形成されている。即ち、供給口5420の上端には、上向きの開口が形成され、供給口5420の下端には、下向きの開口が形成されている。ユーザは、インクを貯留室541Bに補充する際、キャップ544を取り外して、インクボトル(図示せず)を供給口5420に挿通し、インクボトル内のインクを貯留室541Bに補充する。
【0052】
[流出口5421(液体流出口の一例)]
貯留室541Bの後壁5415において底壁5411付近には、貯留室541Bから記録ヘッド16へインクを供給するための流出口5421が形成されている。流出口5421には、図3(B)に示すように、イエロ用のインクチューブ561の一方端が接続されている。インクチューブ561の他方端は、図2に示すように、記録ヘッド16に接続されている。貯留室541Bのインクは、インクチューブ561を介して記録ヘッド16に供給される。
【0053】
キャップ544は、ゴムなどの弾性体で作製されている。キャップ544は、図3(B)に示すように、タンク本体541における供給口5420に上方から嵌合されることによって、供給口5420を液密に封止する。また、供給口5420のキャップ544は、図3(B)に示されるように、ユーザにより上方へ引き上げられることによって、供給口5420から離脱可能である。
【0054】
図3(B)に示されるように、上壁521において供給口5420の上端から後方に離れた位置には、左右方向9に平行な回転軸A23を有する二個一対の軸受け547が設けられている。キャップ544は、閉位置P31と、開位置P32とに回転軸A23の周方向に移動可能に、アーム部材548を介して軸受け547により支持される。アーム部材548は、キャップ544が開位置P32に位置する際に、その重さにより曲がらない程度の硬質な樹脂材料で作製される。閉位置P31は、供給口5420に嵌合するキャップ544の位置である。開位置P32は、閉位置P31から回転軸A23の周方向に110°程度回転した位置であり、キャップ544が自重により閉位置P31へと倒れない位置である。
【0055】
[突出部61,貫通孔31E,31F]
図3に示すように、タンク本体541は、突出部61をさらに有する。突出部61は、右壁5414(第2タンク壁の一例)の外表面において下記の矩形領域に形成される。突出部61は、図3(B)に示すように、上下方向7において、上壁5416より若干下方の位置と、隔壁5417より若干上方の位置との間の範囲を占める。突出部61は、図3(C)に示すように、前後方向8において、前壁5412より若干後方の位置と、後壁5415より若干前方の位置との間の範囲である。図3(C)に示すように、3色タンク54がタンク収容部52に据え付けられている状態で、突出部61は、筐体ケース31の右壁313の外方に向かって右壁5414の外表面から突出している。なお、図3(A),(B)では、都合上、右壁313の図示は省略されている。
【0056】
突出部61は、三角柱形状を有しており、2つの傾斜面611,612、上面613、および底面614を有している。傾斜面611,612の各々は矩形形状である(図3(B)参照)。傾斜面611は、図3(C)に示すように、突出部61の前端から後方斜め右方に向かって延出し、前後方向8において突出部61の前後中央まで延びている。傾斜面612は、突出部61の後端から傾斜面611の後端まで延びている。上面613は、互いに同じ三角形形状である(図3(C)参照)。底面614は、上面613と同じ三角形形状である。
【0057】
実施形態では、タンク本体541は、射出成型により作製されるため、突出部61は、右壁5414の内表面において凹んでいる。即ち、突出部61の内表面は、図3に示すように、バッファ室541Cの右端を区画している。しかし、突出部61の内表面は、図3(A),(B)に示されるように、貯留室541Bを区画していない。突出部61は、タンク本体541と一体であり、タンク本体541と同じ透光性材料で作製される。
【0058】
図3(C)に示すように、筐体ケース31の右壁313(第2側壁の一例)において、右壁5414における突出部61の形成領域と左右方向9に対向する矩形領域には、左右に貫通する採光用の貫通孔31E(第2開口の一例)が形成されている。突出部61において右壁5414からの突出端は、左右方向9において貫通孔31Fの右端と概ね同じ位置まで到達している。しかし、これに限らず、突出部61の突出端は、図4(A)に示すように、左右方向9において貫通孔31Fの左端および右端の間の位置まで到達していてもよいし、図4(B)に示すように、左右方向9において貫通孔31Fの右端(即ち、筐体ケース31の右壁313の外表面)よりも右方の位置まで到達していてもよい。
【0059】
図1図3(B)に示すように、筐体ケース31の前壁312(第1側壁の一例)において、タンク本体541の前壁5412と前後方向8に対向する矩形領域には、前後に貫通するインク残量の確認用の貫通孔31F(第1開口の一例)が形成されている。なお、図3(A),(C)には、前壁312は示されていない。図3(B)に示すように、貫通孔31Fは、上下方向7において、隔壁5417以下の位置と、隔壁5417および底壁5411の位置との間の範囲を占める。貫通孔31Fには、透明の樹脂材料による透明部材がはめ込まれていてもよい。ユーザは、貯留室541Bにおけるインクを貫通孔31Fを通じて視認し、インクの残量を確認する。
【0060】
[3色タンク54(その他),ブラックタンク55]
図3において、タンク本体542,543は、タンク本体541と比較すると、各々が設置される左右位置、内部に貯留されるインクの色、および突出部61が無い点で相違する。キャップ545,546は、キャップ544と比較すると、各々が設置される左右位置が異なる点で相違する。そのため、タンク本体542,543、キャップ545,546の詳細な説明を控える。タンク本体542は、シアンのインクを貯留し、タンク本体543は、マゼンタのインクを貯留する。図1において、筐体ケース31の前壁312には、前後に貫通するインク残量の確認用の貫通孔31G,31Hが、タンク本体542,543(図3参照)の前壁と対向するように形成されている。
【0061】
図1において、タンク収容部53は、タンク収容部53と比較すると、各々が設置される左右位置と、1つのタンク(即ち、ブラックタンク55)が据え付けられる点とにおいて相違する。そのため、タンク収容部53の詳細な説明を控える。
【0062】
ブラックタンク55は、3色タンク54と比較すると、タンク本体541およびキャップ544と概ね左右対称な形状のタンク本体と、キャップと、を備えている点で相違する。ブラックタンク55は、ブラックのインクを貯留する点でも、3色タンク54と相違する。
【0063】
ブラックタンク55のタンク本体は、タンク本体541と左右対称な形状であるため、ブラックタンク55は、突出部61と同様の突出部を備えている。ブラックタンク55の突出部に関連して、筐体ケース31の左壁314には、貫通孔31Fと同様に採光用の貫通孔が形成される。
【0064】
[突出部61,貫通孔31Fの作用効果]
複合機100は、主としてオフィスや住宅の居室に設置される。複合機100において、突出部61には、貫通孔31Fを通じて、外光が入射される。外光は、居室の天井に設置された照明器具から光や、居室の窓から入射される自然光である。そのため、図5(A)に示すように、突出部61には、突出部61を基準として斜め上方または斜め前方から外光L1が入射される。
【0065】
図5(B)の参考例に示すように、実施形態の突出部61が無く単に貫通孔31Eに透明部材62が設けられている場合、透明部材62へ入射される外光L2が貯留室541Bにおけるインクの液面F2に至るまでの間に入射する部材(以下、「介在部材」とも称する)の界面で反射および透過する。介在部材は、透明部材62、右壁5414、および隔壁5417を含む。介在部材での反射により、透明部材62への入射光L2は、液面F2に至るまでに減衰する。その結果、液面F2が十分な光で照らされなくなる。
【0066】
一方、実施形態では、図3に示すように、バッファ室541Cからの突出部61の突出端が、貫通孔31Fの左端よりも右方の位置に到達している。また、突出部61の内表面は、バッファ室541Cを区画している。そのため、図5(A)に示すように、突出部61への入射光L1が、貯留室541Bにおけるインクの液面F1に至るまでの間に入射する介在部材の数(即ち、界面数)が少なくなる。よって、入射光L1の減衰量は、図5(B)の参考例より少ない。換言すると、より多くの入射光L1が貯留室541B内のインクの液面F1に到達する。その結果、ユーザは、貫通孔31Fを通じて貯留室541Bにおけるインク残量の目視により確認し易くなる。
【0067】
また、3色タンク54は、タンク本体541の左方に、タンク本体541と同様の構成を有するタンク本体542,543を備える。突出部61への入射光の一部は、タンク本体542,543のバッファ室にも入射する。そのため、ユーザは、貫通孔31G,31H(図1参照)を通じて、タンク本体542,543(図3参照)内のインク残量も目視により確認し易くなる。ブラックタンク55は、タンク本体541と同様の構成を有する。そのため、ユーザは、ブラックタンク55内のインク残量も目視により確認し易くなる。
【0068】
突出部61の突出端が、図4(B)に示すように、貫通孔31Fの右端よりも右方の位置まで到達している場合、複合機100の右壁313を居室の壁面に隙間なく付けることができない。即ち、貫通孔31Fが居室の壁で完全に塞ぐことができない。よって、図4(B)のような突出部61は、右壁313と居室の壁面との間に光路を形成し、右壁313に沿って進行する光を突出部61に入光させることができ、ひいてはバッファ室541Cへと到達させることができる。
【0069】
実施形態では、バッファ室541Cが貯留室541Bの上方に位置する。よって、バッファ室541Cからの光により、貯留室541Bの液面の上方を明るくし易い。これにより、ユーザは、貯留室541Bにおけるインク残量の目視により確認し易くなる。
【0070】
実施形態では、突出部61は、図3(B)に示すように、右壁5414の外表面において隔壁5417より下方に位置しない。即ち、上下方向7において、突出部61が占める範囲は、貯留室541Bにおいてインクが占める範囲と重ならない。したがって、突出部61の透過光は、貯留室541Bのインクに右方から入光しないため、インクで減衰しない。
【0071】
図1に示すように、貫通孔31Eは、右壁313において前壁312付近に形成され、貫通孔31Fは、前壁312において右壁313付近に形成される。即ち、貫通孔31E,31Fは互いに近くに位置する。そのため、突出部61への入射光がインクの液面に到達し易く、且つ光損失を抑えることができる。
【0072】
[第1変形例]
実施形態では、図3に示すように、突出部61の傾斜面611は右斜め前方を向く面であり、突出部61の傾斜面612は右斜め後方を向く面であった。しかし、これに限らず、突出部61および貫通孔31Eは、図6(A),(B)に示すような構成でもよい。
【0073】
図6(A)において、突出部61は、右壁5414の外表面において下記のような矩形領域に形成される。突出部61は、上下方向7において、上壁5416より若干下方の位置と、隔壁5417よりも下方の位置との間の範囲であり、前後方向8において、前壁5412より後方の位置と、後壁5415より前方の位置との間の範囲である。
【0074】
突出部61は、三角柱形状を有しており、2つの傾斜面615,616、前面617、および後面618を有している。傾斜面615,616の各々は矩形形状である。傾斜面615は、突出部61の上端から右斜め下方に向かって延出し、上下方向7において突出部61の下端付近まで延びている。傾斜面616は、矩形領域61Bの下端から傾斜面615の下端まで延びている。前面617および後面618は、互いに同じ三角形形状である。
【0075】
図6(B)に示すように、筐体ケース31の右壁313において、突出部61が右壁5414において占める領域と左右方向9において対向する矩形領域には、左右に貫通する採光用の貫通孔31Eが形成されている。
【0076】
図6(A)に示すように、突出部61は、右壁5414の内表面では矩形領域61Bより若干狭い領域で凹んでいる。突出部61の内表面は、バッファ室541Cおよび貯留室541Bの右端を区画している。実施形態では、突出部61は、バッファ室541Cの右端のみを区画するため、突出部61の入射光のほぼ全てが隔壁5417を透過した後に、インクの液面を照らすことになる。それに対し、第1変形例では、突出部61の内表面は、貯留室541Bの右端も区画するため、インク残量が減ってきた時に、突出部61の入射光の中には、隔壁5417を透過せずともインクの液面を照らす光が存在する。第1変形例の突出部61によれば、この状況では、より多く光で貯留室541B内のインク液面を照らすことができる。
【0077】
突出部61の外表面において、傾斜面615は、外向きの法線ベクトルv1が上向き成分を含む第1領域である。また、傾斜面616は、外向きの法線ベクトルv2が下向き成分を含む第2領域である。傾斜面615の面積は、傾斜面616の面積より広くなっている。上述の通り、突出部61には、居室の天井に設置された照明器具から光が入射する。よって、上方を向く傾斜面615の面積を、下方を向く傾斜面616の面積より大きくすることで、タンク本体541へ多くの光を取り込むことができる。
【0078】
[その他の変形例]
実施形態では、図3に示すように、内部空間541Aにおいて、バッファ室541Cは、貯留室541Bより上方に位置していた。しかし、これに限らず、図7に示すように、バッファ室541Cは、貯留室541Bより下方に位置してもよい。この場合、貫通孔31E(図1参照)は、右壁313において底壁311付近に形成される。なお、バッファ室541Cが貯留室541Bより下方にあるタンク本体541に関しては、周知であるため、その詳説を控える。
【0079】
実施形態では、ブラックタンク55のタンク本体は、タンク本体541と左右対称な形状であると説明した。しかし、これに限らず、ブラックタンク55のタンク本体は、タンク本体541と左右非対称な形状でもよい。例えば、ブラックタンク55は、タンク本体541より大容量であってもよい。
【0080】
実施形態では、プリンタ部1は、2つのタンク、即ち、3色タンク54およびブラックタンク55を備えていた。しかし、プリンタ部1は、例えばブラックタンク55のみ等、少なくとも1つのタンクを備えていればよい。
【0081】
実施形態では、3色タンク54およびブラックタンク55は、筐体ケース31の左右両側に分けてレイアウトされていた。しかし、これに限らず、3色タンク54およびブラックタンク55が左右に隣り合うようにレイアウトされてもよい。
【0082】
実施形態では、3色タンク54およびブラックタンク55には、インクが貯留されていた。しかし、これに限らず、3色タンク54およびブラックタンク55の少なくとも一方が、前処理液や水を貯留してもよい。前処理液は、例えば、インクによる画像記録に先立ちシートSに吐出され、インク中の成分を凝集または析出させる処理液である。
【0083】
図8(A)に示すように、突出部61および貫通孔31Fは、右方からの平面視で楕円形形状であってもよい。この場合、突出部61は、中央部ほど右壁5414から離れ、且つ湾曲する凸面をなしていてもよい。図8(B)に示すように、タンク本体541の右壁5414には、凸面をなす突出部61が複数個、前後上下に並んでいてもよい。また、筐体ケース31の右壁313には、楕円形状の貫通孔31Fが複数個、前後上下に並んでいてもよい。
【符号の説明】
【0084】
100・・・複合機
1・・・プリンタ部
3・・・筐体
31・・・筐体ケース(筐体)
312・・・前壁(第1側壁)
31F・・・貫通孔(第1開口)
313・・・右壁(第2側壁)
31E・・・貫通孔(第2開口)
32・・・筐体カバー
54・・・3色タンク(タンク)
5412・・・前壁
5414・・・右壁
541B・・・貯留室
541C・・・バッファ室
5420・・・供給口
5421・・・流出口
55・・・ブラックタンク
61・・・突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8