(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169851
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】電気融雪器センサ及び監視システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/50 20200101AFI20221102BHJP
G01R 31/56 20200101ALI20221102BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20221102BHJP
G01R 31/54 20200101ALI20221102BHJP
B61K 13/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G01R31/50
G01R31/56
G01R31/52
G01R31/54
B61K13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075530
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】391054464
【氏名又は名称】株式会社てつでん
(71)【出願人】
【識別番号】592259060
【氏名又は名称】サンリツオートメイシヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】宮島 卓也
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆男
(72)【発明者】
【氏名】米田 和也
(72)【発明者】
【氏名】峯山 悟
(72)【発明者】
【氏名】箭原 正道
【テーマコード(参考)】
2G014
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AA03
2G014AB19
2G014AC15
(57)【要約】
【課題】電気融雪器の電気的な異常を容易に検出する。
【解決手段】電気融雪器センサ1は、電圧センサ3と、電流センサ4と、制御部5とを備える。電圧センサ3は、ヒータ21に供給する供給電圧Vを測定する。電気融雪器2は、単相3線式で電力が供給される。電圧センサ3は、ヒータ21に供給する供給電圧Vを測定する。電流センサ4は、各電圧線22a、22bの負荷電流Iを測定する。制御部5は、供給電圧V及び各電圧線22a、22bの負荷電流Iの測定値に基づいて電気融雪器2の異常の有無を判定する。供給電圧Vが所定の小電流異常用電圧閾値V7以上かつ負荷電流Iが所定の小電流異常閾値I1未満であるとき、制御部5は、小電流異常が発生していると判定する。負荷電流Iが所定の小電流異常回復閾値I2以上になったとき、制御部5は、小電流異常から回復したと判定する。小電流異常回復閾値I2は、小電流異常閾値I1以上の値に設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヒータを有する電気融雪器の異常を検出するための電気融雪器センサであって、
電気融雪器は、2線の電圧線と1線の中性線を用いた単相3線式で電力が供給され、
ヒータは、分岐器に設けられ、
該電気融雪器センサは、前記ヒータに供給する供給電圧を測定する電圧センサと、
前記各電圧線の負荷電流を測定する電流センサと、
前記供給電圧及び前記各電圧線の負荷電流の測定値に基づいて前記電気融雪器の異常の有無を判定する制御部とを備え、
前記供給電圧が所定の小電流異常用電圧閾値以上かつ前記負荷電流が所定の小電流異常閾値未満であるとき、前記制御部は、小電流異常が発生していると判定し、前記負荷電流が所定の小電流異常回復閾値以上になったとき、前記制御部は、前記小電流異常から回復したと判定し、
前記小電流異常回復閾値は、前記小電流異常閾値以上の値に設定されていることを特徴とする電気融雪器センサ。
【請求項2】
前記電気融雪器は、受電した電力を前記分岐器ごとに分配して前記ヒータに電力を供給する分電盤と、前記分電盤と前記ヒータとを接続する配線とを有し、
前記電圧センサは、前記分電盤内において供給電圧を測定し、
前記電流センサは、前記分電盤内において前記分岐器ごとに前記負荷電流を測定することを特徴とする請求項1に記載の電気融雪器センサ。
【請求項3】
前記負荷電流が所定の大電流異常閾値を超えているとき、前記制御部は、大電流異常が発生していると判定し、前記負荷電流が所定の大電流異常回復閾値以下になったとき、前記大電流異常から回復したと判定し、
前記大電流異常回復閾値は、前記大電流異常閾値以下の値に設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気融雪器センサ。
【請求項4】
前記供給電圧が所定の低電圧異常閾値未満であるとき、前記制御部は、低電圧異常が発生していると判定し、前記供給電圧が所定の低電圧異常回復閾値以上になったとき、前記低電圧異常から回復したと判定し、
前記低電圧異常回復閾値は、前記低電圧異常閾値以上の値に設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電気融雪器センサ。
【請求項5】
前記供給電圧が所定の高電圧異常閾値を超えているとき、前記制御部は、高電圧異常が発生していると判定し、前記供給電圧が所定の高電圧異常回復閾値以下になったとき、前記高電圧異常から回復したと判定し、
前記高電圧異常回復閾値は、前記高電圧異常閾値以下の値に設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の電気融雪器センサ。
【請求項6】
前記供給電圧が所定の電圧なし判定閾値未満であるとき、前記制御部は、供給電圧なしと判定し、前記供給電圧が所定の電圧あり判定閾値以上になったとき、供給電圧ありになったと判定し、
前記電圧あり判定閾値は、前記電圧なし判定閾値以上の値に設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の電気融雪器センサ。
【請求項7】
該電気融雪器センサは、前記中性線とアース間の絶縁抵抗を測定するアースセンサをさらに備え、
前記絶縁抵抗が所定の絶縁抵抗下限閾値以下であることが所定時間継続したとき、前記制御部は、地絡が発生したと判定することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の電気融雪器センサ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の電気融雪器センサと、監視装置とを有する監視システムであって、
前記電気融雪器センサは、前記監視装置とデータ通信を行う通信部を有し、
前記通信部は、前記制御部による判定結果を前記監視装置に送信し、
前記監視装置は、前記電気融雪器センサから受信した判定結果が所定の異常結果であるとき、警報を報知することを特徴とする監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気融雪器の異常を検出するための電気融雪器センサ、及びそれを有する監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道において、線路の分岐箇所に分岐器が設けられている(非特許文献1参照)。
図9に示すように、分岐器9は、ポイント91(ポイント部)に、固定された基本レール92、93と、転換されるトングレール94、95とを有し、車両が通過する際に、左右いずれか一方の基本レールにトングレールが密着する。分岐器9に雪が積もると、ポイント91の密着不良や不転換が生じるおそれがある。このため、多雪地域では、降った雪を融かす融雪器が分岐器9に設けられる。融雪器として、ヒータを有する電気融雪器がある(例えば、特許文献1参照)。電気融雪器のヒータは、分岐器9のレールの腹部又は床板下部等に取り付けられ、電流でジュール熱を発生して雪を融かす。したがって、電気融雪器が正常に機能するためには、ヒータが適切に通電される必要がある。
【0003】
従来から、融雪器(電気融雪器)の通電異常の発生を検出する異常監視システムが知られている(特許文献2参照)。融雪器には、単相3線式で電力が供給される。単相3線には、2線の電圧線と、1線の中性線(特許文献2では「中性電圧線」)がある。この異常監視システムは、中性線に流れる不平衡電流を監視して断線等の異常の発生を検出する。しかし、この異常監視システムは、正常時における中性線の電流を平衡させるため、各電圧線に接続される融雪器の数が異なる場合、融雪器の数が少ない方の配線において、一台の融雪器の配線を中性線の変流器に2回通す必要があり、配線が複雑になる。また、共通の中性線の電流を監視するので、2線のうちのどちらの電圧線に通電異常が発生したか分からない。
【0004】
中性線の電流ではなく、各電圧線の測定値に基づいて電気融雪器の異常を検出できれば、配線が複雑化しないとともに、どの電圧線に異常が発生したかが分かる。しかしながら、従来はそのようなことができなかった。なぜなら、各電気融雪器に電力を供給する電源は、駅で受電され、電気融雪器のほか、冷暖房、照明、駅務機器等の各負荷設備に分配される。このため、それらの負荷設備の稼働状況に応じて電気融雪器に供給される電圧が変動する。また、電気融雪器のヒータは、種々のタイプが存在し、温度によって抵抗値が変動するものもある(例えば、特許文献3参照)。このような供給電圧や抵抗値等の変動のため、電圧線の測定値に異常を検出するための閾値を設定することが困難だからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3163730号公報
【特許文献2】特開2015-94660号公報
【特許文献3】実開平5-30203号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JIS E 1303:2001「鉄道用分岐器類」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するものであり、電気融雪器の電気的な異常を容易に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気融雪器センサは、複数のヒータを有する電気融雪器の異常を検出するためのものであって、電気融雪器は、2線の電圧線と1線の中性線を用いた単相3線式で電力が供給され、ヒータは、分岐器に設けられ、該電気融雪器センサは、前記ヒータに供給する供給電圧を測定する電圧センサと、前記各電圧線の負荷電流を測定する電流センサと、前記供給電圧及び前記各電圧線の負荷電流の測定値に基づいて前記電気融雪器の異常の有無を判定する制御部とを備え、前記供給電圧が所定の小電流異常用電圧閾値以上かつ前記負荷電流が所定の小電流異常閾値未満であるとき、前記制御部は、小電流異常が発生していると判定し、前記負荷電流が所定の小電流異常回復閾値以上になったとき、前記制御部は、前記小電流異常から回復したと判定し、前記小電流異常回復閾値は、前記小電流異常閾値以上の値に設定されていることを特徴とする。
【0009】
この電気融雪器センサにおいて、前記電気融雪器は、受電した電力を前記分岐器ごとに分配して前記ヒータに電力を供給する分電盤と、前記分電盤と前記ヒータとを接続する配線とを有し、前記電圧センサは、前記分電盤内において供給電圧を測定し、前記電流センサは、前記分電盤内において前記分岐器ごとに前記負荷電流を測定することが好ましい。
【0010】
この電気融雪器センサにおいて、前記負荷電流が所定の大電流異常閾値を超えているとき、前記制御部は、大電流異常が発生していると判定し、前記負荷電流が所定の大電流異常回復閾値以下になったとき、前記大電流異常から回復したと判定し、前記大電流異常回復閾値は、前記大電流異常閾値以下の値に設定されていることが好ましい。
【0011】
この電気融雪器センサにおいて、前記供給電圧が所定の低電圧異常閾値未満であるとき、前記制御部は、低電圧異常が発生していると判定し、前記供給電圧が所定の低電圧異常回復閾値以上になったとき、前記低電圧異常から回復したと判定し、前記低電圧異常回復閾値は、前記低電圧異常閾値以上の値に設定されていることが好ましい。
【0012】
この電気融雪器センサにおいて、前記供給電圧が所定の高電圧異常閾値を超えているとき、前記制御部は、高電圧異常が発生していると判定し、前記供給電圧が所定の高電圧異常回復閾値以下になったとき、前記高電圧異常から回復したと判定し、前記高電圧異常回復閾値は、前記高電圧異常閾値以下の値に設定されていることが好ましい。
【0013】
この電気融雪器センサにおいて、前記供給電圧が所定の電圧なし判定閾値未満であるとき、前記制御部は、供給電圧なしと判定し、前記供給電圧が所定の電圧あり判定閾値以上になったとき、供給電圧ありになったと判定し、前記電圧あり判定閾値は、前記電圧なし判定閾値以上の値に設定されていることが好ましい。
【0014】
この電気融雪器センサにおいて、該電気融雪器センサは、前記中性線とアース間の絶縁抵抗を測定するアースセンサをさらに備え、前記絶縁抵抗が所定の絶縁抵抗下限閾値以下であることが所定時間継続したとき、前記制御部は、地絡が発生したと判定することが好ましい。
【0015】
本発明の監視システムは、前記電気融雪器センサと、監視装置とを有するシステムであって、前記電気融雪器センサは、前記監視装置とデータ通信を行う通信部を有し、前記通信部は、前記制御部による判定結果を前記監視装置に送信し、前記監視装置は、前記電気融雪器センサから受信した判定結果が所定の異常結果であるとき、警報を報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電気融雪器センサによれば、電圧線の供給電圧と負荷電流に基づいて電気融雪器の異常の有無を判定するので、どの電圧線に接続されたヒータに異常が発生したかが分かる。中性線の電流を判定に用いる必要がないので、正常時の中性線の電流を平衡させる必要がなく、既存の電気融雪器の配線を変更せずに電気融雪器を設置できる。また、供給電圧が小電流異常用電圧閾値以上かつ負荷電流が小電流異常閾値未満であるとき、小電流異常が発生していると判定するので、供給電圧の低下に起因する小電流異常の誤判定を防ぐことができる。さらに、負荷電流が小電流異常回復閾値以上になったとき、小電流異常から回復したと判定するので、供給電圧の低下に起因する小電流異常からの回復の誤判定を防ぐことができる。供給電圧の低下に起因する誤判定が防がれるので、異常の有無を判定するための閾値の設定が容易になる。小電流異常回復閾値は、小電流異常閾値以上の値に設定されるので、小電流異常の判定におけるチャタリングを防ぐことができる。したがって、電気融雪器センサは、電気融雪器の電気的な異常を容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電気融雪器センサ及び監視システムの構成図。
【
図2】同監視システムにおける電気融雪器センサ及び監視装置の配置を示す図。
【
図7】小電流異常からの回復の誤判定の防止の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る電気融雪器センサ及び監視システムを
図1乃至
図8を参照して説明する。
図1に示すように、電気融雪器センサ1は、電気融雪器2の異常を検出するための装置である。電気融雪器2は、複数のヒータ21を有する。
【0019】
電気融雪器2は、2線の電圧線22a、22bと1線の中性線22cを用いた単相3線式で電力が供給される。単相3線式は、交流の電力供給方式の一つであり、日本産業規格JIS C60364-1:2010「低圧電気設備-第1部:基本的原則,一般特性の評価及び用語の定義」の「32.1.1 交流回路の通電導体」に記載されている(同規格の
図2参照)。
【0020】
図2に示すように、ヒータ21は、分岐器9に設けられる。本実施形態では、ヒータ21は、分岐器9のポイント91(ポイント部)に設けられる。なお、ヒータ21が設けられる箇所は、ポイント91に限定されず、分岐器9のノーズ96付近等であってもよい。ヒータ21は、分岐器9のレールの腹部又は床板の下部等に取り付けられる。
【0021】
電気融雪器2において、ヒータ21は、負荷として接続されている(
図1参照)。負荷とは、電気エネルギーを消費するものである。ヒータ21は、電気エネルギーを熱エネルギー(ジュール熱)に変換するので負荷である。本実施形態では、ヒータ21は、電圧線22aと中性線22cの間、及び電圧線22bと中性線22cの間に接続される。
図1において、端子箱23からヒータ21への配線は、3線を単線で表している(単線結線図)。なお、電気融雪器センサ1は、中性線22cの電流を測定しなくてよいので、対をなす電圧線22aと電圧線22bの間にヒータ21を接続することも電気的に可能である。
【0022】
電気融雪器センサ1は、電圧センサ3と、電流センサ4と、制御部5とを備える。電圧センサ3は、ヒータ21に供給する供給電圧Vを測定する。測定された供給電圧Vの値は、制御部5に入力される。電流センサ4は、各電圧線22a、22bの電流を測定する。単相3線式において各電圧線22a、22bには負荷が接続されるので、各電圧線22a、22bの電流は、負荷電流Iである。すなわち、電流センサ4は、各電圧線22a、22bの負荷電流Iを測定する。測定された負荷電流Iの値は、制御部5に入力される。制御部5は、供給電圧V及び各電圧線22a、22bの負荷電流Iの測定値に基づいて電気融雪器2の異常の有無を判定する。
【0023】
電気融雪器2は、ヒータ21のほかに、分電盤24と配線を有する。分電盤24は、受電した電力を分岐器9ごとに分配してヒータ21に電力を供給する(
図2参照)。各分岐器9の近くに端子箱23が設けられる。電気融雪器2の配線は、分電盤24から各分岐器9近くの端子箱23に接続され、端子箱23からヒータ21に接続される。電圧センサ3は、分電盤24内において供給電圧Vを測定する(
図1参照)。電流センサ4は、分電盤24内において分岐器9ごとに負荷電流Iを測定する。すなわち、電流センサ4は、分岐器9ごとに分配された各電圧線22a、22bの負荷電流Iを測定することになる(
図1及び
図2参照)。各分岐器9に複数のヒータ21が設けられるので、測定される負荷電流Iは、各分岐器9に設けられた複数のヒータ21に流れる電流を電圧線22a、22bごとに足した値になる。
【0024】
電気融雪器センサ1は、電圧センサ3、電流センサ4、及び制御部5のほかに、アースセンサ6、通信部7、及び電源ユニット11を有する。アースセンサ6は、電気融雪器2の中性線22cとアース間の絶縁抵抗を測定する。通信部7は、監視装置8とデータ通信を行う機器である。電源ユニット11は、電気融雪器センサ1の各部に電力を供給する電源である。電気融雪器センサ1は、筐体12に収容される。
【0025】
電気融雪器センサ1の構成をさらに詳述する。電気融雪器2は、電気融雪器センサ1による異常検出対象である。電気融雪器2が受電した電力は、分電盤24の主幹ブレーカ25及び制御スイッチ26を介して複数のブレーカ27に分配される。主幹ブレーカ25は、過負荷、短絡等の異常事故発生時に電路を自動遮断する遮断器である。制御スイッチ26は、正常動作時の電路を開閉する開閉器である。制御スイッチ26の開閉は、電気融雪器2の使用・使用停止の制御に用いられる。ブレーカ27は、二次側の回路(ヒータ21及び配線)に過電流が流れたときに、一次側からの電力供給を遮断する遮断器である。主幹ブレーカ25とブレーカ27は、保護協調が行われる。各ブレーカ27からの配線は、各端子箱23に接続される。1台の分岐器9に複数のヒータ21が設けられることから、各端子箱23に複数のヒータ21が並列接続される。
【0026】
電圧センサ3は、交流電圧トランスデューサであり、制御スイッチ26とブレーカ27との間の電路に接続され、中性線22cに対する電圧線22a、22bの各交流電圧(供給電圧V)を直流信号に変換して制御部5に出力する。
【0027】
電流センサ4は、クランプ式交流電流センサであり、各ブレーカ27と端子箱23との間の電圧線22a、22bにクランプされ、各交流電流(負荷電流I)を非接触で測定して制御部5に出力する。
【0028】
制御部5は、マイクロコントローラであり、CPU、メモリ等を有する。
【0029】
分電盤24の筐体は接地(アース)されている。アースセンサ6は、接地検出器であり、制御スイッチ26とブレーカ27との間の中性線22cと、分電盤24の筐体アースに接続され、その中性線22cと筐体アースとの間の絶縁抵抗を常時監視し、その絶縁抵抗が所定の絶縁抵抗下限閾値以下になった時、制御部5に警報出力を行う。
【0030】
通信部7は、ローパワー(低消費電力)ワイドエリア(長距離)の無線通信方式でデータ通信を行う装置である。通信部7は、制御部5に接続される。
【0031】
電源ユニット11は、交流を定電圧の直流に変換する装置であり、主幹ブレーカ25と制御スイッチ26との間から交流が入力され、電気融雪器センサ1の各部に直流を供給する。
【0032】
電気融雪器2の異常の有無を判定するため、電気融雪器センサ1には、供給電圧Vと負荷電流Iに、それぞれ複数の閾値が設定される。
図3において、縦軸は供給電圧Vである。同図に示すように、供給電圧Vに、低いほうから順に、電圧なし判定閾値V1、電圧あり判定閾値V2、低電圧異常閾値V3、低電圧異常回復閾値V4、高電圧異常回復閾値V5、高電圧異常閾値V6が設定される。低電圧異常閾値V3は供給電圧Vの正常範囲の下限、高電圧異常閾値V6は供給電圧Vの正常範囲の上限である。供給電圧Vのこれらの閾値以外に、小電流異常用電圧閾値V7が設定される。小電流異常用電圧閾値V7は、供給電圧Vの正常範囲内、すなわち低電圧異常閾値V3以上かつ高電圧異常閾値V6以下である(V3≦V7≦V6)。
図4において、縦軸は負荷電流Iである。同図に示すように、負荷電流Iに、小さいほうから順に、小電流異常閾値I1、小電流異常回復閾値I2、大電流異常回復閾値I3、大電流異常閾値I4が設定される。小電流異常閾値I1は負荷電流Iの正常範囲の下限、大電流異常閾値I4は正常範囲の上限である。これらの閾値は、制御部5に記憶され、制御部5による判定に用いられる(
図1参照)。
【0033】
上記のように構成された電気融雪器センサ1による小電流異常の検出について、
図4を参照して説明する。
図4において、横軸は時刻tであり、負荷電流Iは変動している。時刻tがt0≦t<t1の間、負荷電流Iは、小電流異常閾値I1以上である(I≧I1)。すなわち、負荷電流Iは、正常範囲の下限以上である。
【0034】
時刻t=t1に、負荷電流Iが小電流異常閾値I1未満に低下している。この時、供給電圧Vが小電流異常用電圧閾値V7以上であれば、負荷電流Iが正常範囲の下限未満であるので、制御部5は、電気融雪器2に小電流異常が発生していると判定する。すなわち、供給電圧Vが所定の小電流異常用電圧閾値V7以上かつ負荷電流Iが所定の小電流異常閾値I1未満であるとき、制御部5は、小電流異常が発生していると判定する。このように、電気融雪器センサ1によって、電気融雪器2の小電流異常が検出される。小電流異常の原因は、例えば、ヒータ21の断線又は電気的な接触不良である。
【0035】
そして、時刻t=t3に、負荷電流Iが小電流異常回復閾値I2以上に上昇している。この時、制御部5は、電気融雪器2が小電流異常から回復したと判定する。すなわち、負荷電流Iが所定の小電流異常回復閾値I2以上になったとき、制御部5は、小電流異常から回復したと判定する。小電流異常からの回復の原因は、例えば、故障の修理である。つまり、小電流異常からの回復を検出したことにより、修理が完了したことが分かる。
【0036】
本実施形態では、小電流異常回復閾値I2は、小電流異常閾値I1よりも大きい(I2>I1)。このため、時刻tがt2≦t<t3の間、負荷電流Iが小電流異常閾値I1以上に上昇しているが(I≧I1)、制御部5は、小電流異常から回復したと判定しない。このような閾値のヒステリシスは、制御部5による判定が正常と小電流異常の状態間を短時間に繰り返すこと(チャタリング)を防止するためである。なお、他の方法でチャタリングを防止すれば、小電流異常回復閾値I2は小電流異常閾値I1と同じでもよい(I2=I1)。チャタリング防止には、例えば、負荷電流Iの測定値のアナログ回路による積分がある。したがって、小電流異常回復閾値I2は、小電流異常閾値I1以上の値とされる(I2≧I1)。
【0037】
図5は、制御部5による正常と小電流異常の判定を示す状態遷移図である。上述したように、正常(状態s0)から小電流異常(状態s1)への異常検出の判定(イベントe01)には、供給電圧Vと負荷電流Iの条件がある(V≧V7かつI<I1)。小電流異常(状態s1)から正常(状態s0)への回復の判定(イベントe10)には、負荷電流Iの条件があるが(I≧I2)、供給電圧Vの条件が無い。
【0038】
もし、負荷電流Iが正常(状態s0)から小電流異常(状態s1)への異常検出の判定(イベントe01)を負荷電流Iの条件(I<I1)のみで行った場合、電気融雪器2に供給される電圧が低下すると、供給電圧Vの低下によって負荷電流Iが減少するので、ヒータ21が断線等していなくても、電気融雪器2に小電流異常が発生しているとの誤判定が生じる可能性がある。このため、負荷電流Iが小電流異常閾値I1未満であっても、供給電圧Vが小電流異常用電圧閾値V7未満のときは、小電流異常が発生していると判定しない。すなわち、供給電圧Vが所定の小電流異常用電圧閾値V7以上かつ負荷電流Iが所定の小電流異常閾値I1未満であるとき(V≧V7かつI<I1)、制御部5は、小電流異常が発生していると判定する。
【0039】
論理式「V≧V7かつI<I1」の否定、すなわち、「(V≧V7かつI<I1)ではない」は、「V<V7またはI≧I1」である(ブール代数におけるド・モルガンの法則)。これに前述した閾値のヒステリシスを加味すると、「V<V7またはI≧I2」(I2≧I1)となる。もし、小電流異常(状態s1)から正常(状態s0)への回復の判定(イベントe10)をこの条件(V<V7またはI≧I2)で行った場合、供給電圧Vが小電流異常用電圧閾値V7未満になったとき(V<V7)、ヒータ21の断線等が解消していなくても、電気融雪器2が小電流異常から回復したとの誤判定が生じる。つまり、実際にはヒータ21の断線が原因で負荷電流Iが小さくなっていても、負荷電流Iが小さいのは供給電圧Vが低いからだと誤判定することになる。このため、回復の判定には、供給電圧Vを条件に入れない。すなわち、負荷電流Iが所定の小電流異常回復閾値I2以上になったとき(I≧I2)、制御部5は、小電流異常から回復したと判定する。なお、小電流異常用電圧閾値V7に他の電圧閾値(V1及びV2、V3及びV4)と同様にヒステリシスを設けてもよい。
【0040】
このように、小電流異常の発生と回復を判定する条件において、供給電圧Vの扱いに非対称性を設けることは、本願の発明者が試験を行って見出した。
【0041】
小電流異常の誤判定防止と閾値設定について
図6を参照してさらに説明する。上段のグラフは、供給電圧Vの時間変化、下段のグラフは、負荷電流Iの時間変化を例示する。
【0042】
時刻t=t4に、電気融雪器2を使用開始する。その直後は、ヒータ21の温度が低いので、ヒータ21の抵抗値が低く、負荷電流Iが大きい。その後、ヒータ21の温度上昇により、負荷電流Iは、次第に減少する。なお、電気融雪器2が温度にかかわらず抵抗値が一定のヒータ21を有しても、以下の説明は同じである。
【0043】
時刻t=t5に、供給電圧Vが変動し始める。この例では、供給電圧Vは、周期的に変動する。負荷電流Iは、供給電圧Vの変動に伴って変動する。なお、供給電圧Vは、駅利用者が多い時間帯に低くなる傾向がある。
【0044】
時刻t=t6に、供給電圧V及び負荷電流Iの閾値を設定する。小電流異常用電圧閾値V7は、この時点の供給電圧Vに設定される。小電流異常用電圧閾値V7は、供給電圧Vの正常範囲内である。小電流異常閾値I1は、この時点の負荷電流Iより一定値(例えば1.1[A])小さい値に設定される。この小電流異常閾値I1は、ヒータ21が一つ断線したときの負荷電流Iの減少を検出できる値である。小電流異常回復閾値I2の設定については、後述する。
【0045】
時刻t=t7に、負荷電流Iが小電流異常閾値I1未満になる。この原因は、供給電圧Vの低下であり、電気融雪器2に異常は発生していない。時刻tがt7≦t<t8の間、供給電圧Vが小電流異常用電圧閾値V7未満であるので、制御部5は、電気融雪器2に小電流異常が発生していると判定しない。
【0046】
時刻t=t8に、負荷電流Iが小電流異常閾値I1以上になる。時刻t=t9に、再び負荷電流Iが小電流異常閾値I1未満になる。この原因は、供給電圧Vの低下であり、電気融雪器2に異常は発生していない。時刻tがt9≦t<t10の間、供給電圧Vが小電流異常用電圧閾値V7未満であるので、制御部5は、電気融雪器2に小電流異常が発生していると判定しない。
【0047】
このように、電気融雪器センサ1において、供給電圧Vの低下に起因する小電流異常の誤判定が防止される。
【0048】
小電流異常からの回復の誤判定防止と閾値設定について
図7を参照してさらに説明する。上段のグラフは、供給電圧Vの時間変化、下段のグラフは、負荷電流Iの時間変化を例示する。
【0049】
時刻t=t11に、電気融雪器2を使用開始する。その直後は、ヒータ21の温度が低いので、ヒータ21の抵抗値が低く、負荷電流Iが大きい。その後、ヒータ21の温度上昇により、負荷電流Iは、次第に減少する。なお、電気融雪器2が温度にかかわらず抵抗値が一定のヒータ21を有しても、以下の説明は同じである。
【0050】
時刻t=t12に、供給電圧Vが変動し始める。この例では、供給電圧Vは、周期的に変動する。負荷電流Iは、供給電圧Vの変動に伴って変動する。
【0051】
時刻t=t13に、供給電圧V及び負荷電流Iの閾値を設定する。小電流異常用電圧閾値V7は、この時点の供給電圧Vに設定される。小電流異常用電圧閾値V7は、供給電圧Vの正常範囲内である。小電流異常閾値I1は、この時点の負荷電流Iより一定値(例えば1.1[A])小さい値に設定される。この小電流異常閾値I1は、ヒータ21が一つ断線したときの負荷電流Iの減少を検出できる値である。小電流異常回復閾値I2は、小電流異常閾値I1より若干大きい値に設定される。
【0052】
時刻t=t14に、負荷電流Iが小電流異常閾値I1未満に低下する。この時、一部のヒータ21が断線している。しかし、時刻tがt14≦t<t15の間、供給電圧Vが小電流異常用電圧閾値V7未満であるので、制御部5は、電気融雪器2に小電流異常が発生しているとまだ判定しない。
【0053】
時刻t=t15に、供給電圧Vが小電流異常用電圧閾値V7以上かつ負荷電流Iが小電流異常閾値I1未満となったので、制御部5は、電気融雪器2に小電流異常が発生したと判定する。
【0054】
その後も(t≧t15)、一部のヒータ21の断線が継続している。時刻t=t16に、供給電圧Vが小電流異常用電圧閾値V7未満となったが、制御部5は、電気融雪器2の小電流異常から回復したと誤判定しない。すなわち、電気融雪器2に小電流異常が発生しているとの判定が継続する。
【0055】
このように、電気融雪器センサ1において、発生と回復の判定条件の非対称性によって、供給電圧Vの低下に起因する小電流異常からの回復の誤判定が防止される。
【0056】
電気融雪器センサ1は、電気融雪器2の小電流異常以外の異常も検出する。
【0057】
負荷電流Iが所定の大電流異常閾値I4を超えているとき、制御部5は、電気融雪器2に大電流異常が発生していると判定する。そして、負荷電流Iが所定の大電流異常回復閾値I3以下になったとき、制御部5は、電気融雪器2が大電流異常から回復したと判定する(
図4参照)。大電流異常回復閾値I3は、大電流異常閾値I4以下の値に設定されている。大電流異常は、例えば、ヒータ21又は配線の短絡又は不完全短絡によって生じる。
【0058】
なお、変形例として、供給電圧Vが所定の電圧閾値(例えば低電圧異常閾値V3)以上かつ負荷電流Iが所定の大電流異常回復閾値I3以下になったとき、制御部5は、電気融雪器2が大電流異常から回復したと判定してもよい。これにより、供給電圧Vの低下によって負荷電流Iが減少しても、制御部5は、電気融雪器2が大電流異常から回復したと判定しない。
【0059】
供給電圧Vが所定の低電圧異常閾値V3未満であるとき、制御部5は、低電圧異常が発生していると判定する(
図3における時刻t=t17)。そして、供給電圧Vが所定の低電圧異常回復閾値V4以上になったとき、制御部5は、低電圧異常から回復したと判定する(
図3における時刻t=t18)。低電圧異常回復閾値V4は、低電圧異常閾値V3以上の値に設定されている。低電圧異常は、例えば、電気融雪器2が受電する電圧の低下によって生じる。例えば、供給電圧Vの正常範囲が105[V]プラスマイナス10[V]である場合、低電圧異常閾値V3は105[V]-10[V]に設定される。なお、低電圧異常閾値V3は、小電流異常用電圧閾値V7とは独立に設定される閾値である。
【0060】
供給電圧Vが所定の高電圧異常閾値V6を超えているとき、制御部5は、高電圧異常が発生していると判定する(
図3における時刻t=t19)。そして、供給電圧Vが所定の高電圧異常回復閾値V5以下になったとき、制御部5は、高電圧異常から回復したと判定する(
図3における時刻t=t20)。高電圧異常回復閾値V5は、高電圧異常閾値V6以下の値に設定されている。高電圧異常は、電気融雪器2が受電する電圧の過度な上昇によって生じる。例えば、供給電圧Vの正常範囲が105[V]プラスマイナス10[V]である場合、高電圧異常閾値V6は105[V]+10[V]に設定される。
【0061】
図8に示すように、供給電圧Vが所定の電圧なし判定閾値V1未満であるとき、制御部5は、供給電圧なしと判定する(
図8における時刻t=t21)。そして、供給電圧Vが所定の電圧あり判定閾値V2以上になったとき、制御部5は、供給電圧ありになったと判定する(
図3における時刻t=t22)。電圧あり判定閾値V2は、電圧なし判定閾値V1以上の値に設定されている。また、2線の電圧線22a、22bがともに供給電圧なしの判定となった場合、制御部5は、電気融雪器2が使用停止中であると判定する。供給電圧なしの判定は、例えば、制御スイッチ26のオフ、主幹ブレーカ25の遮断、又は電気融雪器2が受電する電圧の過度な低下や停電によって生じる(
図1参照)。電気融雪器センサ1が電気融雪器2の供給電圧なしを安定して検出するために、電気融雪器センサ1の電源ユニット11に蓄電器を設けてもよい。
【0062】
アースセンサ6によって測定された絶縁抵抗が所定の絶縁抵抗下限閾値以下であること(アース検知)が所定時間T継続したとき、制御部5は、電気融雪器2に地絡が発生したと判定する。電気融雪器2は、気象条件によって絶縁抵抗が不安定になることがある。所定時間T(継続時間の条件)を設定することにより(T>0)、気象条件による誤検知が防がれる。なお、気象条件変化に伴う絶縁抵抗の変動も監視する場合、所定時間Tを0に設定してもよい(即時警報)。
【0063】
本発明の一実施形態に係る監視システム10は、電気融雪器センサ1と、監視装置8とを有する。前述したように、電気融雪器センサ1は、監視装置8とデータ通信を行う通信部7を有する。通信部7は、制御部5による判定結果を監視装置8に送信する。監視装置8は、電気融雪器センサ1から受信した判定結果が所定の警報対象であるとき、警報を報知する。警報の報知は、画面表示又は音等により行われる。所定の警報対象は、例えば、小電流異常、大電流異常、低電圧異常、高電圧異常、地絡、及び供給電圧なしである。小電流異常、大電流異常、低電圧異常、高電圧異常、地絡の各異常からの回復、及び供給電圧ありへの変化も警報対象とされる。なお、本実施形態では、電気融雪器センサ1は、制御部5による判定結果を監視装置8に即時送信する機能に加えて、定時送信機能を有する。定時送信機能として、電気融雪器センサ1は、電圧及び電流等の測定値及びアース検知の継続時間、並びに各センサ状態等を一定時間毎に監視装置8に送信する。その一定時間は、例えば、10秒から24時間の範囲において10秒単位で設定可能である。このような定時送信機能により、電気融雪器センサ1自体の死活監視が可能である。
【0064】
以上、本実施形態に係る電気融雪器センサ1によれば、2線の電圧線22a、22bの供給電圧Vと負荷電流Iに基づいて電気融雪器2の異常の有無を判定するので、どの電圧線22a、22bに接続されたヒータ21に異常が発生したかが分かる。中性線22cの電流を判定に用いる必要がないので、正常時の中性線22cの電流を平衡させる必要がなく、既存の電気融雪器2の配線を変更せずに電気融雪器を設置できる。また、供給電圧Vが小電流異常用電圧閾値V7以上かつ負荷電流Iが小電流異常閾値I1未満であるとき、小電流異常が発生していると判定するので、供給電圧Vの低下に起因する小電流異常の誤判定を防ぐことができる。さらに、負荷電流Iが小電流異常回復閾値I2以上になったとき、小電流異常から回復したと判定するので、供給電圧Vの低下に起因する小電流異常からの回復の誤判定を防ぐことができる。供給電圧Vの低下に起因する誤判定が防がれるので、異常の有無を判定するための閾値の設定が容易になる。小電流異常回復閾値I2は、小電流異常閾値I1以上の値に設定されるので、小電流異常の判定におけるチャタリングを防ぐことができる。したがって、電気融雪器センサ1は、電気融雪器2の電気的な異常を容易に検出することができる。
【0065】
電流センサ4が分岐器9ごとに負荷電流Iを測定するので、分岐器9ごとに分配された各電圧線22a、22bの負荷電流Iが測定され、分岐器9ごとの各電圧線22a、22bの異常を検出できる。また、電圧センサ3が分電盤24内において供給電圧Vを測定し、電流センサ4が分電盤24内において負荷電流Iを測定するので、電圧センサ3及び電流センサ4の設置が容易である。
【0066】
電流センサ4が電圧線22a、22bの負荷電流Iを測定するので、大電流異常閾値I4の設定によって大電流異常の発生を検出でき、大電流異常回復閾値I3の設定によって大電流異常からの回復を検出できる。大電流異常回復閾値I3は、大電流異常閾値I4以下の値に設定されるので、大電流異常の判定におけるチャタリングを防ぐことができる。
【0067】
電圧センサ3が電圧線22a、22bの供給電圧Vを測定するので、低電圧異常閾値V3の設定によって低電圧異常の発生を検出でき、低電圧異常回復閾値V4の設定によって低電圧異常からの回復を検出できる。低電圧異常回復閾値V4は、低電圧異常閾値V3以上の値に設定されるので、低電圧異常の判定におけるチャタリングを防ぐことができる。
【0068】
電圧センサ3が電圧線22a、22bの供給電圧Vを測定するので、高電圧異常閾値V6の設定によって高電圧異常の発生を検出でき、高電圧異常回復閾値V5の設定によって高電圧異常からの回復を検出できる。高電圧異常回復閾値V5は、高電圧異常閾値V6以下の値に設定されるので、高電圧異常の判定におけるチャタリングを防ぐことができる。
【0069】
電圧センサ3が電圧線22a、22bの供給電圧Vを測定するので、電圧なし判定閾値V1の設定によって供給電圧なしを検出でき、電圧あり判定閾値V2の設定によって、供給電圧ありを検出できる。電圧あり判定閾値V2は、電圧なし判定閾値V1以上の値に設定されるので、供給電圧なしの判定におけるチャタリングを防ぐことができる。
【0070】
アースセンサ6が中性線22cとアース間の絶縁抵抗を測定するので、電気融雪器2の地絡を検出できる。
【0071】
本実施形態に係る監視システム10によれば、監視装置8は、電気融雪器センサ1から受信した判定結果が所定の異常結果であるとき、警報を報知するので、システムのユーザは、リモートで電気融雪器2の異常が分かる。
【0072】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、通信部7がローパワー・ワイドエリア以外の無線通信方式又は有線通信によって監視装置8とデータ通信を行うように監視システム10を構成してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 電気融雪器センサ
2 電気融雪器
21 ヒータ
22a、22b 電圧線
22c 中性線
3 電圧センサ
4 電流センサ
5 制御部
6 アースセンサ
7 通信部
8 監視装置
10 監視システム
I 負荷電流
I1 小電流異常閾値
I2 小電流異常回復閾値
I3 大電流異常回復閾値
I4 大電流異常閾値
V 供給電圧
V1 電圧なし判定閾値
V2 電圧あり判定閾値
V3 低電圧異常閾値
V4 低電圧異常回復閾値
V5 高電圧異常回復閾値
V6 高電圧異常閾値
V7 小電流異常用電圧閾値