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  • 特開-空気中の二酸化炭素を除去する方法 図1
  • 特開-空気中の二酸化炭素を除去する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169854
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】空気中の二酸化炭素を除去する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20221102BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20221102BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20221102BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20221102BHJP
   B01J 20/08 20060101ALI20221102BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B01D53/14 100
B01J20/02 B
B01J20/04 A
B01J20/06 A
B01J20/06 C
B01J20/08 A
B01J20/08 C
B01J20/10 A
B01J20/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075533
(22)【出願日】2021-04-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 英国物理学会(Institute of Physics:IOP)の出版部門であるIOP Publishingが発行する学術文献のオンラインサービスであるIOP SCIENCEで開示された、「Environmental Research Letters,Volume15,Number 12(Environ.Res.Lett.15 124018)」によるウェブサイト、令和2(2020)年11月27日公開 https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-9326/abc217 https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-9326/abc217/pdf https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-9326/abc217/epub
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115842
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 正則
(72)【発明者】
【氏名】マイヤズ コーリ アダム
(72)【発明者】
【氏名】中垣 隆雄
【テーマコード(参考)】
4D020
4G066
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA02
4D020BA04
4D020BA06
4D020BA08
4D020BA12
4D020BA30
4D020BB01
4D020CA05
4D020CC06
4D020DA03
4D020DB02
4D020DB10
4D020DB12
4G066AA16B
4G066AA17B
4G066AA27B
4G066AA30B
4G066AA73B
4G066AA76B
4G066BA09
4G066BA20
4G066CA35
4G066DA03
(57)【要約】
【課題】低コストで実施可能であり、実質的な二酸化炭素の削減を図ることができるとともに、二酸化炭素の貯留のリスクもなく、環境にも優しい空気中の二酸化炭素を除去する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、アルカリ土類金属を含む岩石を微粒子化し、得られた微粒子を所定の環境とした空間内で空気と接触させることにより、空気中の二酸化炭素を炭酸塩として鉱物化することで、二酸化炭素を岩石に固定して、空気中の二酸化炭素を除去する。本発明は、薬品を使用せず、低コストで空気中の二酸化炭素の除去を簡便に実施することができ、付随する二酸化炭素の発生量も少なく、質的な二酸化炭素の削減を図ることができる。加えて、二酸化炭素の貯留におけるリスクもないとともに、固定化された二酸化炭素は環境に無害な炭酸塩となり、環境にも優しいものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の二酸化炭素を除去する方法であって、
アルカリ土類金属を含む化合物(炭酸塩を除く。)を含む岩石を粉砕して前記岩石の微粒子を得る微粒子化工程と、
得られた前記岩石の微粒子を、温度が15~50℃、相対湿度が50~100%の空間で空気と接触させ、前記岩石の微粒子に炭酸塩を形成する炭酸塩形成工程と、
を含むことを特徴とする空気中の二酸化炭素を除去する方法。
【請求項2】
前記岩石が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、カルシウム・鉄酸化物、アルミン酸カルシウム及びケイ酸カルシウムからなる群の化合物のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の空気中の二酸化炭素を除去する方法。
【請求項3】
前記岩石が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、カルシウム・鉄酸化物、アルミン酸カルシウム及びケイ酸カルシウムからなる群の化合物のうち少なくとも1種を、合計量で、前記岩石全体の5質量%以上含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気中の二酸化炭素を除去する方法。
【請求項4】
前記微粒子の粒径が100μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の空気中の二酸化炭素を除去する方法。
【請求項5】
前記岩石が超塩基性岩、塩基性岩、スラグ及び廃コンクリートのうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の空気中の二酸化炭素を除去する方法。
【請求項6】
前記岩石の非晶化された部分が全体の30質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の空気中の二酸化炭素を除去する方法。
【請求項7】
前記岩石の微粒子が、トレイの底面全体に層状に広げた状態で当該トレイに入れられ、前記空間内に前記トレイを載置することにより前記空気と接触され、
前記層状に広げた前記岩石の微粒子の厚さが、1~50mmであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の空気中の二酸化炭素を除去する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の二酸化炭素を除去する方法に関する。さらに詳しくは、大気中の二酸化炭素を炭酸塩として鉱物化することにより、有用で無害の状態に変換することを可能とする空気中の二酸化炭素を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中に排出される二酸化炭素は、近年問題とされている地球温暖化の原因であることは自明である。かかる二酸化炭素の排出量を削減することが地球環境の保護の大きな課題となっている。
【0003】
二酸化炭素は、陸上及び海洋の植物生活による光合成等の生物学的プロセスを通じて大気から自然に捕捉されるものの、大気中の二酸化炭素の濃度は依然上昇し続けている。また、二酸化炭素は、海洋生態系に脅威を引き起こしている世界の海の酸性化の要因にもなるといわれている。これに対し、工場等の排煙や大気中の二酸化炭素(CO)ガスを固定化して除去するためのシステムが種々提案されている(例えば、特許文献1等を参照。)。
【0004】
世界の二酸化炭素(CO)濃度を正味に削減して大気中の二酸化炭素を除去ないし削減することは、負の排出技術(NET:Negative Emission Technology)または二酸化炭素除去(CDR:Carbon Dioxide Removal)と呼ばれ、種々の技術が提供されている(例えば、非特許文献1ないし非特許文献3等を参照。)。
【0005】
放出された二酸化炭素は、現代文明と互換性のある範囲内で地球の気候を安定させるために、大気から除去する必要がある。また、一般に、前記の文献に記載された技術は、生物学的システム(例えば、土壌、植物、または海洋における二酸化炭素の貯留等。)に依存するか、または空気から二酸化炭素をろ過し、液化し、地下に貯留する高度に工業化された機械等に依存する。そして、かかる機械等に依存する工業プロセスにあっては、化学薬品、高温、及び特殊な反応器が必要となる傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2013-504424号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nduagu, E., Bergerson, J. and Zevenhoven, R., 2012. Life cycle assessment of CO2 sequestration in magnesium silicate rock A comparative study. Energy Conversion and Management, 55, pp.116-126.
【非特許文献2】Ncongwane, M.s., Broadhurst, J.L. and Petersen, J., 2018. Assessment of the potential carbon footprint of engineered processes fwor the mineral carbonation of PGM tailings. International Journal of Greenhouse Gas Control, 77, pp.70-81.
【非特許文献3】Keller, d.P., Lenton, A., Littleton, E.w., Oschlies, A., Scott, v. and Vaughan, N.E., 2018. The effects of carbon dioxide removal on the carbon cycle. Current climate change reports, 4(3), pp.250-265.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
岩石への二酸化炭素の鉱化は,数十万年の間に自然に生じるが、反応を促進させる従来の方法は,高温・高圧,または薬品の添加等による方法がある。一方、このような方法は,エネルギーの負荷や、付随する二酸化炭素の排出量が大きく、温室効果ガスの削減にはならなかった。
【0009】
具体的には、前記した非特許文献1に開示される技術にあっては、高温・高圧の条件で二酸化炭素と反応させているため、実質的な二酸化炭素の削減量が減ってしまうという問題があった。また、非特許文献2に開示される技術は、薬品の添加が必要であり,その製造時のバックグラウンドエミッション(例えば、薬品や添加物の作成、輸送、終了処理・処分に関連する二酸化炭素の排出。)によって、非特許文献1で開示される技術と同様に、実質的な二酸化炭素の削減量が少なくなっていた。
【0010】
さらには、非特許文献3に開示された方法は、破砕した岩石を土壌表面に単純に分散させる方法であるが、二酸化炭素の鉱化量を見積もることが難しいとともに、環境に悪影響を与える可能性があるため、好ましくなかった。
【0011】
なお、大気からの二酸化炭素の直接除去は、気候変動抑制目標に見合った既放出の二酸化炭素除去(CDR)の全体量からみれば一部でしかない。除去された二酸化炭素は、処分のために適切な場所に輸送され、特定の地質構造物の地下深くに貯留する必要がある。かかる輸送及び貯留システムは、個々の企業が製造及び運用するには大規模すぎるとともにコストがかかり、地下に二酸化炭素を貯留するシステムに依存するCDRを達成するには政治的、経済的、社会的等の種々のリスクが発生するという問題もあった。
【0012】
本発明は、前記に鑑みてなされたものであって、低コストで実施可能であり、実質的な二酸化炭素の削減を図ることができるとともに、二酸化炭素の貯留のリスクもなく、環境にも優しい空気中の二酸化炭素を除去する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するために、本発明に係る空気中の二酸化炭素を除去する方法は、
空気中の二酸化炭素を除去する方法であって、
アルカリ土類金属を含む化合物(炭酸塩を除く。)を含む岩石を粉砕して前記岩石の微粒子を得る微粒子化工程と、
得られた前記岩石の微粒子を、温度が15~50℃、相対湿度が50~100%の空間で空気と接触させ、前記岩石の微粒子に炭酸塩を形成する炭酸塩形成工程と、
を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る空気中の二酸化炭素を除去する方法は、前記した本発明において、前記岩石が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、カルシウム・鉄酸化物、アルミン酸カルシウム及びケイ酸カルシウムからなる群の化合物のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る空気中の二酸化炭素を除去する方法は、前記した本発明において、前記岩石が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、カルシウム・鉄酸化物、アルミン酸カルシウム及びケイ酸カルシウムからなる群の化合物のうち少なくとも1種を、合計量で、前記岩石全体の5質量%以上含むことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る空気中の二酸化炭素を除去する方法は、前記した本発明において、前記微粒子の粒径が100μm以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る空気中の二酸化炭素を除去する方法は、前記した本発明において、前記岩石が超塩基性岩、塩基性岩、スラグ及び廃コンクリートのうち少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る空気中の二酸化炭素を除去する方法は、前記した本発明において、前記岩石の非晶化された部分が全体の30質量%以下であることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る空気中の二酸化炭素を除去する方法は、前記した本発明において、前記岩石の微粒子が、トレイの底面全体に層状に広げた状態で当該トレイに入れられ、前記空間内に前記トレイを載置することにより前記空気と接触され、前記層状に広げた前記岩石の微粒子の厚さが、1~50mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、アルカリ土類金属を含む岩石を微粒子化し、得られた微粒子を所定の環境とした空間内で空気と接触させることにより、空気中の二酸化炭素を炭酸塩として鉱物化することにより、二酸化炭素を岩石に固定して、空気中の二酸化炭素を除去するようにしている。
【0021】
よって、本発明は、薬品を使用せず、また、大掛かりな設備等も使用しないで低コストで空気中の二酸化炭素の除去を簡便に実施することができ、付随する二酸化炭素の発生量も少ないので、実質的な二酸化炭素の削減を図ることができる。加えて、本発明は、二酸化炭素の貯留の必要もなく、かかる貯留におけるリスクもないとともに、固定化された二酸化炭素は環境に無害な炭酸塩となり、岩石とともに再利用も可能であるため、環境にも優しいものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】大気中の二酸化炭素の鉱物化作用(鉱物化率(%))の変化を、経過日数を14日間として測定した結果を示した図(グラフ1)である。
図2】大気中の二酸化炭素の鉱物化作用(鉱物化率(%))の変化を、経過月数を12月(1年間)として測定した結果を示した図(グラフ2)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一態様について説明する。本発明に係る空気中の二酸化炭素を除去する方法は、アルカリ土類金属を含む岩石を微粒子化し((I)微粒子化工程)、かかる微粒子を特定の環境とした空間内で空気と接触させることにより、空気中の二酸化炭素を炭酸塩とすることで鉱物化して固定する((II)炭酸塩形成工程)ことによりかかる二酸化炭素を空気中から除去するようにしている。
【0024】
(A)微粒子化工程:
微粒子化工程では、岩石を粉砕して微粒子を得る工程である。
【0025】
(A-1)岩石について:
まず、使用可能な岩石について説明する。岩石は、下記に例示した化合物等から形成されていれば、天然岩石、人工岩石のいずれも使用することができる。なお、本発明では、「化合物」は「鉱物」も含む概念である。
【0026】
使用可能な岩石は、例えば、0~100℃の温度、適当な湿気(例えば、反応環境の相対湿度が50~100%等。)、大気圧の環境下で、気相二酸化炭素と反応して炭酸塩を形成することが熱力学的に可能であることを必要とする。また、「熱力学的に」とは、0次元の計算条件を考慮し、メソ(meso)スケール構造を考慮しないものと解する。
【0027】
本発明で使用可能な岩石としては、アルカリ土類金属を含む化合物を含む岩石として、鉱石から金属を製錬する際等に、冶金対象である金属から溶融によって分離した鉱石母岩の鉱物成分等を含む物質からなる、いわゆるスラグ(鉄鋼スラグ、製鉄スラグ等。)や、元来は建築物等に用いられていたコンクリートであって、この建築物等自体が不要になったり、建築物等が使用された建物等を解体することによって生じた解体コンクリートや、建築物等が建設される際等に発生する余剰となったコンクリート自体等、将来的に廃棄することが想定されるコンクリート等である廃コンクリート(コンクリート廃棄物)も含み、これらスラグや廃コンクリートを用いることが好ましい。なお、炭酸塩は、空気中の二酸化炭素と反応してさらに炭酸塩となることもないので、アルカリ土類金属を含む化合物からは除かれる。
【0028】
岩石は、アルカリ土類金属を含む化合物を含む。つまり、アルカリ土類金属であるCa(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Be(ベリリウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ra(ラジウム)等の化合物が挙げられるが、天然岩石に多く含まれる、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)の化合物を採用することが好ましい。
【0029】
以下、アルカリ土類金属を含む化合物の例を挙げる。まず、単独のアルカリ土類金属の酸化物が挙げられる。例えば、カルシウムの酸化物である酸化カルシウム(CaO)、マグネシウムの酸化物である酸化マグネシウム(MgO)等を使用することができる。
【0030】
その他、バリウムとの酸化物である酸化バリウム(BaO)、ストロンチウムとの酸化物である酸化ストロンチウム(SrO)等が挙げられるが、酸化カルシウム(CaO)、マグネシウムの酸化物である酸化マグネシウム(MgO)等を使用することが好ましい。
【0031】
酸化物としては、他にも、マグネシウム・鉄酸化物(MgFe等)、カルシウム・鉄酸化物(CaFe等)、アルミン酸マグネシウム(アルミナ酸化マグネシウム)(MgAl等)等の酸化物や、アルミン酸カルシウム、鉄アルミン酸カルシウム等の酸化物を使用することができる。例えば、CaAl、Ca12Al1433等のアルミン酸カルシウム、CaAlFe10等の鉄アルミン酸カルシウムを使用することができる。
【0032】
化合物としては、例えば、ケイ酸カルシウムを使用することができる。例えば、CaSiO、CaSi、CaSiO、CaSiO等のケイ酸カルシウムを移用することができる。
【0033】
化合物としては、例えば、ケイ酸マグネシウムやアルミノケイ酸マグネシウムを使用することができる。例えば、MgSiO、MgSiO等のケイ酸マグネシウムや、MgAlSi12等のアルミノケイ酸マグネシウムを使用することができる。
【0034】
化合物としては、例えば、ケイ酸カルシウムマグネシウムを使用することができる。例えば、CaMgSiO、CaMgSi、CaMgSi16、CaMgSi、CaMgSi等のケイ酸カルシウムマグネシウムを使用することができる。
【0035】
化合物としては、例えば、アルミノケイ酸カルシウムを使用することができる。例えば、CaAlSi、CaAlSiO、CaAlSi12等のアルミノケイ酸カルシウムを使用することができる。
【0036】
化合物としては、例えば、ケイ酸カルシウム鉄を使用することができる。例えば、CaFeSiO、(Ca/Fe)SiO、(Ca/Fe)SiO、CaFeSi12、CaFeSi、Ca0.82Fe0.18SiO等、Ca(Fe/Mg)Si、等のケイ酸カルシウム鉄、ケイ酸カルシウムマグネシウム鉄、ケイ酸マグネシウム鉄を使用することができる。
【0037】
なお、例えば、ケイ酸カルシウム鉄はCaFe2-XSiO(0<X<2)とすることができ、また、前記したケイ酸カルシウムマグネシウム部分を鉄に置き換えた化合物、あるいは前記したケイ酸カルシウム鉄の鉄部分をマグネシウムに置き換えた化合物等も適用することができる。
【0038】
前記に例示した化合物も含め、アルカリ土類金属を含む化合物については、本発明に適用するに際して、化合物元来の反応性(二酸化炭素と接触することによる二酸化炭素を鉱物化することのしやすさあるいはしにくさ。)の違い、粉砕して微粒子化した場合の反応性の違いがあると考えられる。
【0039】
図1及び図2は、前記した化合物のうち、図1及び図2に載せた化合物を選択して、粒径を3μm未満となるように粉砕して、温度を30℃、相対湿度を90%とした場合における、対象とする化合物について、大気中の二酸化炭素(二酸化炭素の濃度:415ppm)の鉱物化作用(鉱物化率(%))の変化を、経過日数を14日(図1に挙げた化合物)、経過月数を12月(1年間)(図2に挙げた化合物)として測定した結果を示した図である。なお、図1を「グラフ1」、図2を「グラフ2」とする。
【0040】
ここで、鉱物化率(%)とは、各化合物が有する、下記の式(I)で表されるCO(二酸化炭素)鉱物化量ポテンシャルに対する実際の鉱物化量を示したものである(下記式(II)参照。)。
【0041】
CO鉱物化ポテンシャルは、いわば理想的に達成可能な鉱物化量を示すものであり、かかるポテンシャルに対する実際の鉱物化量の割合である鉱物化率(%)は、鉱物化(鉱物化反応)のしやすさの程度を示す指標である。
【0042】
【数1】
【0043】
【数2】
【0044】
図1及び図2より、図1に挙げた化合物(CaO、MgO、CaSiO、CaSiO)は反応性が優れており、短期間で鉱物化することが確認できる(なお、図2において、MgSiOとMgSiOの結果のラインはほとんど重なっている。)。また、図1及び図2に加えて、表1は、前記した化合物のうち、表1に載せた化合物を選択して、CO鉱物化量ポテンシャル(kg-CO/kg)と、粉砕した化合物の粒径を1~3μmとした場合、5~10μmとした場合の1年後の鉱物化率(%)(表1では略して「鉱化率」としているが、鉱物化率と同意である(他も同様)。)を示している。
【0045】
【表1】
【0046】
前記した化合物(鉱物)は例示であるが、この中でも、アルカリ土類金属の酸化物である酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)や、カルシウム・鉄酸化物、アルミン酸カルシウム、ケイ酸カルシウムの鉱物化率が高いことが確認できる。
【0047】
この結果から、本発明で使用される岩石には、表1で「グループ1」とされる、これらの化合物が含まれることが好ましい(後記の「グループ1」にも対応する。)。
【0048】
図1図2及び表1の結果からは、これらの化合物は、鉱物化率が高く(鉱物化する反応が速く)、岩石に含まれた場合には、空気中の二酸化炭素と接触することにより炭酸塩を効率よく形成すると考えられるためである。
【0049】
そして、表1等の結果より、前記した化合物は、下記のグループ1~グループ3に分けることができる。各グループは、それぞれ、鉱物化について、下記の特性を有するものと考えられる。
【0050】
なお、天然の岩石、スラグ、廃コンクリート等には、前記した化合物以外の化合物、すなわち、アルカリ土類金属を含まない化合物を含むことが多い。例えば、酸化物である酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(アルミナ)(Al)、アルミノケイ酸塩、酸化鉄(FeO、Fe、Fe)、酸化マンガン(MnO)、ケイ酸鉄(FeSiO、FeSiO)、炭酸塩、アルカリ鉱物等の化合物(鉱物)が挙げられる。これら全部は脈石(みゃくせき)となり、本来は不要な化合物(鉱石)である。
【0051】
これらの化合物のような、カルシウムやマグネシウム等といったアルカリ土類金属を含有しない化合物は、粉砕して所定の条件で二酸化炭素と接触させても、炭酸塩を形成しない(グループ4とする。)。また、所定の条件下で炭酸塩を形成できない化合物も、このグループ4に含む。
【0052】
表1の結果等より、鉱物化反応の程度で、グループ1~グループ4を下記のように定義する。
【0053】
グループ1:粒径を1~3μmに粉砕すれば、1年以内に二酸化炭素の鉱物化を概ね完了(95%を超える。粒径を5~10μmに粉砕した場合は60%以上。)可能であると考えられる化合物(鉱物)(反応性が高い化合物)を指す。例えば、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、カルシウム・鉄酸化物(CaFe等)の酸化物、CaAl、Ca12Al1433等のアルミン酸カルシウム、CaSiO、CaSi、CaSiO、CaSiO等のケイ酸カルシウム等の化合物のうち少なくとも1種を含む、表1のグループ1に挙げた化合物等が挙げられる。なお、これらの化合物や第2グループの化合物等、本発明でいうところのアルカリ土類金属を含む化合物は、陽イオンが他の元素で部分的に置換される、これらの化合物に属すると解される化合物を含むものである。具体的には、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの一部が鉄イオンで置き換えられたケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムマグネシウム等の化合物としてもよい。
【0054】
グループ2:粒径を1~3μmに粉砕しても、1年以内で、二酸化炭素の鉱物化率が10~95%であると考えられる化合物(反応性が普通である化合物)を指す。例えば、CaAlFe10等の鉄アルミン酸カルシウム、MgSiO、MgSiO等のケイ酸マグネシウム、CaMgSiO、CaMgSi、CaMgSi、CaMgSi16、CaMgSi、のケイ酸カルシウムマグネシウム、CaAlSiO、CaAlSi2等のアルミノケイ酸カルシウム、MgAl等の酸化物(アルミン酸マグネシウム)、MgFe等のマグネシウム・鉄酸化物、A-CaMgSiO、A-CaMgSi、A-CaSi、A-CaSiO(「A-」はアモルファス状態(非晶化された)の化合物を指す。以下同じ。)等を含む、表1のグループ2(2*も含む。)に挙げた化合物等が挙げられる。
【0055】
グループ3:粒径を1~3μmに粉砕しても、1年以内で、二酸化炭素の鉱物化率が10%未満となると考えられる化合物(反応性がやや低い化合物)を指す。例えば、A-CaSiO、A-CaAlSi、A-CaSiO、A-MgSiO、A-CaAlSiO、A-CaMgSi、A-CaMgSi16、A-CaFe、A-CaMgSi等を含む、表1のグループ3(3*も含む。)に挙げた化合物等が挙げられる。
【0056】
グループ4:アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等。)を含まない、または周囲条件下で炭酸塩を形成できないと考えられる化合物(脈石を含む。)(反応が期待できない化合物)を指す。例えば、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(アルミナ)(Al)、酸化鉄(FeO、Fe、Fe等。)、酸化マンガン(MnO)、ケイ酸鉄(FeSiO、FeSiO)、炭酸塩、アルカリ鉱物等が挙げられる。
【0057】
本発明の方法に適用される岩石としては、前記したグループ1~グループ4の割合が重要であると考えられる。前記したグループでは、グループ1が化合物単体で考えると一番反応性が高く、グループ4が化合物単体で考えると一番反応性が低い(反応性は、グループ1>グループ2>グループ3>グループ4、である。)。
【0058】
使用される岩石の組成は、反応性が高いグループに属する化合物の含有量が高い方がよいことはいうまでもない。以下、各グループの含有量の範囲を載せるが、後記するように、反応性は、岩石の他の成分(天然の岩石であれば、脈石等の存在も含む。)や、微粒子工程で得られる微粒子のサイズ(粒径)、接触する空気の二酸化炭素濃度等に左右されるので、下記の範囲はあくまでも1つの目安である。
【0059】
グループ1に属する化合物は、他のグループの化合物と比較して、岩石にできる限り存在することを期待したいが、天然の岩石の場合、採掘しないとわからない場合も多く、一概には決定できない。
【0060】
そのような事情を勘案して、グループ1に属する化合物(酸化カルシウム、酸化マグネシウム、カルシウム・鉄酸化物、アルミン酸カルシウム及びケイ酸カルシウム等の化合物のうち少なくとも1種)は、合計で、岩石全体に対して、5質量%以上含むことが好ましく、10質量%以上含むことがさらに好ましく、15質量%以上含むことが特に好ましい。グループ1に属する化合物は、例えば岩石の全て(100質量%)や、岩石全体に対して90質量%以上等、多ければ多いほど岩石の鉱物化性能は向上するが、実際に期待できる含有量は25質量%程度が限界であろうし、5~20質量%含有すればよいかと考えられる。なお、グループ1に属する化合物は、天然の岩石の場合は、グループ1の化合物が存在する場合、概ね、合計で、岩石全体に対して、5~20質量%含有することが多い。また、スラグ、廃コンクリート等の場合は、0~90質量%含有することが多い。
【0061】
グループ2に属する化合物(なお、表1におけるアモルファス化したものを除いて考える。)は、グループ1に属する化合物が存在する岩石の場合、後記するグループ3、グループ4に属する化合物をできる限り含みたくないので、グループ1に属する化合物を除いた残部のうちできる限り(概ね、残部の80~100質量%)含むことが好ましい。
【0062】
一方、グループ1に属する化合物を含まない場合、グループ2に属する化合物は、合計で、岩石全体に対して、50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことが好ましく、70~100質量%含むことが特に好ましい。なお、グループ2に属する化合物は、天然の岩石の場合は、概ね、合計で、岩石全体に対して、70~100質量%(グループ1に属する化合物が存在しない場合であり、存在する場合は、概ね0~25質量%)含有することが多いし、スラグ、廃コンクリート等の場合は、0~30質量%含有することが多い。
【0063】
グループ3、グループ4に属する化合物は、可能であれば、できる限る存在しないことが好ましい。
【0064】
なお、岩石を天然の岩石とする場合、本発明にあっては、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムマグネシウム、ケイ酸マグネシウム鉄を主に使用することができる。
【0065】
天然の岩石は、例えば、火成岩、堆積岩、変成岩等が考えられるが、火成岩を使用することが好ましい。また、火成岩は、深成岩、火山岩等が考えられるが、深成岩を使用することが好ましい。
【0066】
深成岩は、SiOの含有量から、酸性岩(一般に、SiOの含有量が全体の66質量%を超える。)、中性岩(SiOの含有量が、全体の52~66質量%である。)、塩基性岩(同、45~52質量%)、超塩基性岩(同、45%以下である。)が挙げられる。本発明にあっては、超塩基性岩や塩基性岩を使用することが好ましく、超塩基性岩を使用することが特に好ましい。
【0067】
超塩基性岩は、超苦鉄質岩とも呼ばれ、一般に、かんらん(橄欖)岩、ダンかんらん岩、蛇紋岩、斜方輝石かんらん岩、単斜輝石かんらん岩、複輝石かんらん岩、コマチアイト等からなる。また、塩基性岩は、苦鉄質岩とも呼ばれ、一般に、斑れい岩、玄武岩、ドレライト等からなる。
【0068】
超塩基性岩は、主として、MgSiO(橄欖石)、MgSiO(橄欖石)等のケイ酸マグネシウム(マグネシウムケイ酸塩)やCaMgSi(輝石)を含み、CaAlSi等のケイ酸化鉱物も含む場合もある。かかるケイ酸マグネシウムは、前記のグループ2に属し、鉱物化反応はそれほど速くない。
【0069】
一方、超塩基性岩には、グループ1に属し、鉱物化反応が非常に速い酸化マグネシウム(MgO)が適当に(一般的には、0~10質量%程度と考えられるが、この範囲には限定されない。)含まれ、グループ1の化合物が、合計で5~20質量%程度含有されると考えられる。さらに、超塩基性岩にはシリカ(SiO)や珪酸化アルミナ等がほとんど含まれておらず、鉱物化という点では適する天然岩石である。加えて、超苦鉄質岩は、広く多量に入手可能な天然岩石である。
【0070】
塩基性岩は、主としてCaAlSi8等のケイ酸化鉱物やCaMgSi(輝石)を含み、MgSiO(橄欖石)、MgSiO(橄欖石)等のケイ酸マグネシウム(マグネシウムケイ酸塩)等も含む。
【0071】
なお、アモルファス化(非晶化)された化合物を多く含む岩石(アモルファス相が多い岩石)は、反応性が低く、鉱物化の妨げになる場合が多く、アモルファス相が多い岩石は、他に存在する結晶を包み込み、アモルファス相に巻き込んでしまうため、結晶同士を繋げる(鉱物化反応を進行させるために重要である。)ことを妨げる原因となる。
【0072】
粉砕前の岩石の状態で、アモルファス化(非晶化)された化合物を多く含む岩石(アモルファス相が多い岩石)は、概ね、アモルファス化(非晶化)された部分が全体の30質量%以下であることが好ましい。アモルファス化(非晶化)された部分の割合が30質量%以下であれば、アモルファス相(非晶化された部分)が結晶性鉱物間の空間を占めることがあっても、結晶を完全には包み込むことが抑制されると考えられる。なお、前記の範囲は、岩石の他の成分(天然の岩石であれば、脈石等の存在も含む。)や、微粒子工程で得られる微粒子のサイズ(粒径)、接触する空気の二酸化炭素濃度等に左右されるので、かかる範囲もあくまでも1つの目安である。
【0073】
(A-2)粉砕:
岩石は、天然岩石の場合採掘された後、粉砕されて微粒子化される。微粒子化にあっては、岩石を形成する各化合物の結晶状態を維持する(非晶化(アモルファス化)させないようにする。)ことが重要となる。
【0074】
岩石を構成する化合物は、粉砕して微粒子とした場合、粒径が小さければ小さいほど、微粒子の表面積が大きくなり、空気(二酸化炭素)との接触面が大きくなるため好ましい。ここで、粉砕化された岩石の微粒子は、結晶化された状態であれば、鉱物化反応が進行することが期待できるが、あまり細かすぎると(粒径が小さ過ぎると)、岩石がアモルファス化してしまい、鉱物化への反応性が低下することになる。
【0075】
前記した化合物のうち、表2に載せた化合物を選択し、粉砕して微粒子とした場合のアモルファス化(非晶化)する粒径(アモルファス化直径)の目安を表2に載せた。なお、表2には、あわせて、「各化合物の研削効率」及び「鉱物化の有効率」も併せて載せる。また、表2に載せたアモルファス化直径はあくまでも目安であり、この径を下回ると確実にアモルファス化するわけではない。
【0076】
【表2】
【0077】
また、半径R(m)の微粒子が反応して深さδに達するまでの時間tは、下記式(III)に示すように、固体中のカルシウム(Ca)とマグネシウム(Mg)の密度ρ、COの気相濃度C、及び生成物層を通るイオンの拡散係数D(m/秒)等による関数となる。
【0078】
【数3】
【0079】
t:時間(秒)
ρ: 岩石にあるマグネシウム(Mg)とカルシウム(Ca)のモル密度の和(moles/m-rock)
R:微粒子の半径(m)
D:化合物中のCO拡散係数(m/秒)
:気相のCOモル濃度(moles/m-gas)
δ:反応の深さ(m)
【0080】
一方、微粒子の半径(粒径)が大きすぎると、微粒子の全部が反応することについて非常に時間がかかることになり、これも好ましくない。未反応核モデルによると、反応速度は粒子の直径の三乗に反比例すると考えられる。例えば、3μmを想定して粉砕した結果、6μmとなった場合は、反応が8(2)倍遅くなると考えられる。
【0081】
なお、拡散係数Dは、未反応核モデルにおける生成物層を通るCO拡散の速度を表すものであり(m/秒)、他の要因があるため、二酸化炭素の鉱物化率を直接示すものではない。一方、生成物層を介した拡散は、気固CO鉱物化の律速段階であるため、大きい拡散係数Dは、実際に二酸化炭素を急速に鉱物化する鉱物を示すことになる。
【0082】
微粒子の外径(粒径)は、得られた岩石の微粒子全体に対して、前記したグループ1に属する化合物が多ければ、岩石を必要以上に細かく粉砕せずとも反応は進行すると考えられ、エネルギーの損失ないしは粉砕による二酸化炭素の発生を抑制することができ、加えて、岩石(化合物)のアモルファス化を抑制することもできると考えられる。
【0083】
一方、岩石全体の反応性は、岩石の他の成分の種類(天然の岩石であれば、脈石等の存在も含む。)、アモルファス相の存在及びその含有量、岩石に構成における結晶層とアモルファス相の形成位置及び関係等、その他炭酸化量等の要素(以下、「岩石の要素」とする場合もある。)により左右され、かかる岩石を粉砕した微粒子の粒径の範囲もこれらに左右される。
【0084】
これらに鑑みれば、岩石を微粒子化するに際しては、1つの目安として、微粒子の粒径は、概ね好ましくは100μm以下(より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは25μm以下、特に好ましくは10μm以下。)として、岩石の要素を考慮して、例えば、粒径1~25μm、1~20μm、1~10μm、1~5μm、1~3μm等の範囲の中で、適宜選択するようにしてもよい。例えば、反応性が高い第1グループの化合物を含有する場合、粒径は1~25μm(好ましくは1~10μm)とすればよいと考えられる。
【0085】
なお、粒径を1~3μmとすれば、表面積が大きく、良好な反応性も期待できるが、表2にあるように、粒径をあまり小さくすると、アモルファス化が進行し、却って反応性が悪くなる場合があるので、1~3μmを目標として、1~10μm程度以下に抑えることが好ましい。なお、微粒子の粒径等について、例えば、粉砕された岩石の微粒子を重ならないように広げ、光学顕微鏡等によって取得した画像をコンピュータによって分析し、微粒子の完全な分布の粒子直径(粒径)と形状を決定するようにすればよい(粒径は最大値を採用することが好ましい。)。また、化合物のサンプルごとに最低5000個(あるいは10000個)の微粒子が分析されることが望ましい。
【0086】
微粒子化に際しての岩石の粉砕操作は、従来公知の粉砕手段を用いて行うことができるが、例えば、岩石を竪型ローラミル(Vertical Roller Mill)や高圧粉砕ロール(High Pressure Grinding Rolls)等を用いて実施することが好ましい。なお、ボールミルは、一般に、エネルギー効率が低く、アモルファス化する傾向があると考えられている。
【0087】
また、微粒子化を簡易的に実施する場合にあっては、岩石を乳鉢に投入し、すり鉢とすりこぎを用いて岩石を粉砕して、所望の粒径となるようにしてもよい。乳鉢とすり鉢等による岩石の粉砕では、例えば、アモルファス化されたことが予想される非常に小さい微粒子が生成されるときにそれらを分離し、最小量の粉砕を実行して所望の粒子サイズを達成することにより、アモルファス化を非常に低く抑えることを達成することが可能である。
【0088】
岩石の粉砕は、アモルファス化の防止、粒子分布(微粒子のサイズの分布)をできる限り狭くする、エネルギー消費の最小化(エネルギー消費により二酸化炭素が発生し、実質的な二酸化炭素の削減量が減少する。)の3つを考慮する必要がある。これらは、例えば、高圧粉砕を使用し、研削しながら小さくなりすぎた微粒子(アモルファス化していると考えられる。また、分離により粉砕機の負荷を下げる(エネルギー効率を上げる)ことができる。)を分離することにより、目的に維持される。一方、低圧粉砕(低圧研削)は、供給されたエネルギーが、結晶構造の転位(アモルファス化)と熱と音の生成(エネルギー損失)をもたらすため、高圧粉砕手段の一態様と考えられる竪型ローラミルにより粉砕することが好ましい。
【0089】
また、岩石粉砕における粒子分布は可能な限り絞る(狭くする)ことが好ましい。粒子分布を絞ることにより、二酸化炭素を鉱物化するための接触対象となる空気が微粒子層の中に拡散することになる。
【0090】
かかる拡散は、二酸化炭素の鉱物化において重要なファクターであり、粒子分布が広くなると、粒子の間の間隙率が減少してしまい、粉砕層の上の部分のみが二酸化炭素と接触することになり非効率であると考えられる。拡散が少ないということは、岩石をより薄い層に広げる(岩石層が薄くなること。)必要があることを意味する。岩石層が薄くなると、設備の単位体積あたりに処理できる岩石の量が減少すると同時に、単位岩石あたりのシート等が増えるため、コストが増加することになるため好ましくない。
【0091】
分級は、市販の空気分級機を使用してもよいし、ふるい等を使用してもよい。また、分級機能を備えた粉砕機を用いてもよい。粒度分布は、従来公知の技術(例えば、分級後の微粒子を、市販のソフトウェアによって操作されるコンピュータービジョンを備えた光学顕微鏡を使用して測定して行う等。)を用いて行うようにすればよい。
【0092】
なお、例えば、前記した表1のCaMgSiOにもあるように、微粒子化された結果アモルファスとなった化合物がアモルファスでない化合物(結晶化合物)よりも速くCOを鉱物化するケースもある。このケースの場合、アモルファス化された化合物の構造が、カチオンとシリカの比率によって変化するため、CaMgSiO等の特定の組成では、アモルファス構造であっても二酸化炭素と良好に反応して、鉱物化が進行されることになる。
【0093】
一方、このようなケースは例外であり、工学の観点からは、純粋な鉱物を見つけることは決してなく、常にある程度の混合と組成の変動がある。したがって、ほとんどのアモルファス化合物に伴う二酸化炭素の鉱物化の大幅な減少は、いくつかの化合物のわずかな性能向上を上回るものである。換言すれば、二酸化炭素との反応速度、鉱物化の速度が非常に低くなる可能性が高いため、アモルファス化合物を避けることが好ましい。
【0094】
なお、微粒子化工程を実施し得られた岩石の微粒子について、岩石のアモルファス化等により、岩石の微粒子に元来含まれる前記したグループ4(反応が期待できない化合物)や、微粒子化とともにアモルファス化したものについては、鉱物化反応が期待できないので、岩石の微粒子にできる限り存在しないことが好ましい。これらは、合計で、概ね80質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
【0095】
(B)炭酸塩形成工程:
得られた岩石の微粒子は、所定の空間で空気と接触することにより、微粒子に炭酸塩が形成される。すなわち、空気中の二酸化炭素は、前記の組成からなる岩石の微粒子と反応し、微粒子の表面ないしその内部に炭酸塩(主に、カルシウムやマグネシウム等の炭酸塩。)となって鉱物化により固定化されることになり、その結果、空気中の二酸化炭素が除去されることになる。
【0096】
空間は、空気を常時安定した状態(二酸化炭素を含む空気を安定して供給し、かつ、後記する条件を実施期間維持する等。)で岩石の微粒子と接触させることができる場合は、屋外でも問題はないが、かかる安定した状態を容易かつ確実に形成できる点で、室内とすることが好ましい。また、空間は、換気等によりある程度の頻度で空気を供給できるような、密閉された空間とすることが好ましい。
【0097】
導入される空気は、二酸化炭素を含む空気一般を指し、例えば、大気(二酸化炭素含有量が概ね400~450ppm程度と考えられる。)、排気ガス等、二酸化炭素を含むと考えられる全ての空気(気体)を使用することができる。対象となる空気の二酸化炭素の濃度についても特に制限はない。
【0098】
空間は、温度が15~50℃、相対湿度が50~100%の条件とされる。温度の条件及び湿度の条件は、ともに、前記した範囲とすることにより、二酸化炭素の鉱物化が効率よく行われることになる。空間における温度は、20~40℃とすることが好ましく、30~35℃とすることが特に好ましい。相対湿度は、60~95%とすることが好ましい。
【0099】
空間における二酸化炭素を含む空気の流量は、二酸化炭素の濃度や岩石の種類、組成等により適宜決定することができるが、例えば、岩石として天然の超塩基性岩(超苦鉄質石)を使用し、二酸化炭素除去対象の空気を大気(二酸化炭素の含有量は前記した程度とする。)とした場合、概ね1~100mm/秒程度とすることが好ましく、1~10mm/秒とすることが特に好ましい。岩石の微粒子は粒径が小さく粉砕されているため、微粒子の飛散を防止等すべく前記した程度とすることが好ましい。
【0100】
なお、空間において、岩石の微粒子と空気の接触は、特に制限はないが、例えば、任意の面積としたトレイ等の底が浅い容器に微粒子を入れ、トレイの底面全体に層状に広げた状態で、空間内にかかるトレイ等を載置するようにしてもよい。
【0101】
このように岩石の微粒子を層状にする場合、層の最も深い部分への二酸化炭素の拡散を考慮する必要がある。岩石をマイクロメートルレベルまで粉砕すると、微粒子間の空隙での二酸化炭素の拡散は分子拡散によるものと考えられる。よって、微粒子状の岩石を厚く積み上げると、層状とした岩石の微粒子の下部(深い部分)については二酸化炭素の濃度が低下し、鉱物化反応が遅くなることが懸念される。一方、この深い部分の程度については、岩石(化合物)の種類、空間のサイズ、微粒子の粒径、空気の流速等により左右される。
【0102】
以上より、層状に広げた場合における岩石の微粒子(微粒子層)の厚さは、例えば、5cm(50mm)以下とすることが好ましく、1~50mmとすることが好ましく、1~20mmとすることがより好ましく、1~10mmとすることがさらに好ましく、1~5mmとすることが特に好ましい。
【0103】
なお、このようにしてトレイ等に微粒子を入れ、層状に広げた状態で空気と接触させる場合にあっては、かかるトレイ等は、空間の内部で、高さ方向に多段化して載置するようにしてもよい。
【0104】
空気と岩石の微粒子の接触時間(反応時間にもなる。)は、空気中の二酸化炭素の濃度や使用される岩石の種類や量等によって適宜決定すればよいが、目安として7日~1年として、例えば、7日~2か月の間で選択する等、任意に決定することができる。岩石の量や種類にもよるが、接触が開始(鉱物化反応が開始)されて1年が経過すれば、概ね鉱物化反応も終了していると考えられる。
【0105】
岩石の微粒子に炭酸塩が形成され、二酸化炭素が鉱物化されたら、表面に炭酸塩が堆積して、多数の微粒子同士が集合した状態となった岩石の微粒子の塊について、まず、100℃未満で加熱等を行うことにより吸着した水分を除去する。なお、この操作及び後記の分析操作は、生成された炭酸塩等を分析しない場合には、特に必要ではない。
【0106】
水分を除去した後、分析操作として、炭酸塩形成工程前の岩石の微粒子の質量と比較して、質量変化を確認することにより、鉱物化した二酸化炭素の量を確認することができる。また、熱重量示差熱分析(TG―DTA)及び蛍光X線分析(X-Ray Fluorescence Analysis:XRF)により鉱物化された二酸化炭素(炭酸塩)により二酸化炭素の存在量等詳細に分析することができる。
【0107】
また、環境に無害な炭酸塩(主に、カルシウムやマグネシウム等の炭酸塩(炭酸カルシウム(CaCOやMgCO等。)が形成された鉱物化後の岩石は、例えば、路盤材や埋め立て用建設資材等として利用することができる。このように、鉱物化後の岩石は、環境に優しいものである。
【0108】
(C)本発明の効果:
以上説明した本発明は、アルカリ土類金属を含む岩石を微粒子化し、得られた微粒子を所定の環境とした空間内で空気と接触させることにより、空気中の二酸化炭素を炭酸塩として鉱物化することにより、二酸化炭素を岩石に固定して、空気中の二酸化炭素を除去するようにしている。
【0109】
よって、本発明は、薬品を使用せず、また、大掛かりな設備等も使用しないで低コストで空気中の二酸化炭素の除去を簡便に実施することができ、付随する二酸化炭素の発生量も少ないので、実質的な二酸化炭素の削減を図ることができる。加えて、本発明は、二酸化炭素の貯留の必要もなく、かかる貯留におけるリスクもないとともに、固定化された二酸化炭素は環境に無害な炭酸塩となり、岩石とともに再利用も可能であるため、環境にも優しいものである。
【0110】
本発明によれば、他の技術・インフラに頼らずにCDRを実施することができる。これまでの技術では、空気中の二酸化炭素を除去するためには、多大なエネルギーを必要として、かかるエネルギーにより発生する二酸化炭素を考慮すると、二酸化炭素の実質的な削減とはなっていないものが多かった。一方、本発明は、岩石の微粒子化工程及び得られる岩石の微粒子と空気中の二酸化炭素を反応させて炭酸塩とする炭酸塩形成工程という簡便な方法で、空気中から二酸化炭素を除去するものであるため、必要とするエネルギーも少なく、二酸化炭素の実質的な削減につながる技術であると考えられる。
【0111】
CDRとしては、現在、2つの主要な技術がある。二酸化炭素(CO)回収及び貯留を伴うバイオマスエネルギー(Bioenergy with Carbon Capture and Storage:BECCS)と、二酸化炭素貯留を伴う直接空気回収(DIRECT Air CO Capture with Storage:DACCS)である。
【0112】
このうち、BECCSは、バイオマスの燃焼、二酸化炭素の回収、貯留場所への輸送、地下への貯留に依存する。また、DACCSは、機械を使用して、輸送及び地下貯留の前に空気から二酸化炭素をろ過する。 これらを比較する主なポイントは、エネルギー要件(GJ/t-CO)、土地要件(km/Mt-CO)、水要件(m/t-CO)、CO回収にかかる期間、生物学的制限(Gt-CO/年)、及びコストと考えられる。これら全ての場合において、t-COは、環境から除去された正味の二酸化炭素(CO)を意味する(プロセスおよびサプライチェーンからの二酸化炭素排出量を考慮した。)。本発明及びこれら2つの技術を比較した表を表3に示す。表3からは、本発明が、他の技術と比較して、有利に作用することが確認できる。
【0113】
【表3】
【0114】
さらに、スケールアップとスケールアウト率の問題がある。 BECCSとDACCSでは、貯留場所と輸送インフラストラクチャが必要であり、貯留箇所の開発には多大なコストが発生するため、通常は非常に大規模(>1Mt-CO/年)に制限される。一方、本発明は、kg規模でもMt規模でも、あらゆるスケールで適応することができる。したがって、輸送や貯留等を気にすることなく、小規模、中規模および大規模のシステムを開発することができると考えられる。
【0115】
さらに、土壌や海洋を利用する他の方法では、二酸化炭素の除去量を正確に定量化することは不可能であり、加えて、かかる他の方法は、気候変動の影響により、将来に見込まれた二酸化炭素が失われる可能性があるという問題もある。本発明は、前記のような簡便な手段で二酸化炭素を炭酸塩として固定化し、空気中から除去するので、これらの問題も解決することができる。
【0116】
(D)実施形態の変形:
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0117】
例えば、(A)微粒子化工程と(B)炭酸塩形成工程について必要な操作を、部分的に例示して載せたが、本発明の目的及び効果を妨げない範囲で、例示されない他の操作を用いて実施しても問題はない。同様に、岩石を構成することが可能な化合物を例示して載せたが、あくまでも例示なので、本発明で使用する岩石にアルカリ土類金属を含む化合物等でこれ以外の化合物を含むようにしても問題はない。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例0118】
以下、本発明を実施例等に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0119】
(実施例1~実施例8)
岩石に相当するものとして、下記の表4に示した組成(化合物組成等の分析手段は後記する。)の、8種類のスラグ(スラグ1~スラグ8(実施例1~実施例8とする。))を用意した。なお、「%」は、全体に対する含有量(質量%)を示す。
【0120】
(スラグの組成)
【表4】
【0121】
スラグ1~スラグ8をすり鉢とすりこぎを用いて粉砕し、粉砕されたスラグについてふるいを用いて分級した。分級後のスラグの微粒子の粒度分布を、画像処理手法の1つである「ImageJ」ソフトウェアによって操作されるコンピュータービジョンを備えた光学顕微鏡を使用して測定し、粒径が25~90μmの微粒子サンプルと、粒径が25μm未満の微粒子サンプルをそれぞれ得た。さらに、スラグ1~スラグ8の元素組成をXRFで、スラグ1~スラグ8の化合物組成をQ-XRDでそれぞれ分析した(化合物組成等を表4に載せた。)。
【0122】
得られた微粒子サンプルを、それぞれ、直径10cm×高さ1cmの円形トレイに入れ、厚さが3mmとなるようにして広げた。
【0123】
22L容のインキュベーター(3-6815-01 COインキュベーター:株式会社アズワン製)の室内空間を、相対湿度が90%、温度が30℃となるようにした。かかる湿度及び温度のもと、微粒子サンプルが入ったトレイをインキュベーターの室内空間に入れ、ドアを閉めて密閉状態とした後、二酸化炭素濃度が5%の空気(スラグ1~スラグ5)、20%の空気(スラグ5~スラグ8)を導入するようにした。そして、この状態を維持するようにして、微粒子サンプルに空気を接触させ、二酸化炭素を鉱物化(炭酸塩を形成)させた。サンプルを別にして、試験における経過日数を1日、3日、7日、14日、21日及び28日として前記の操作を実施した(空欄は未実施。)。なお、各サンプルは3回(n=3)として実施した(表5には平均値を載せた。)。
【0124】
日数が経過した後、微粒子サンプルの質量を測定するとともに、熱重量示差熱分析(TG―DTA)及び蛍光X線分析(X-Ray Fluorescence Analysis:XRF)により鉱物化された二酸化炭素(炭酸塩)を分析した。経過日数に対応する二酸化炭素の鉱物化率(%)を表5及び表6に示した(実験値は表5であるが、表6に予測値を参考として載せた。)。なお、2つの二酸化炭素濃度で評価したのは、未反応核モデルを確認するためである。
【0125】
【表5】
【0126】
【表6】
【0127】
表5の結果より、まず、スラグ1とスラグ7の鉱物化率が非常に低い(例えば、実施した二酸化炭素の濃度条件で1%以下(スラグ1は経過日数が28日、スラグ7は経過日数が7日の場合。))ことが確認できる。この理由は、スラグ1及びスラグ7は、いずれも、元々アモルファス相(非晶化された部分のこと。以下同じ。)の含有量が高い(スラグ1は34.1%、スラグ7は100%)ためと考えられる。スラグ7は全て(100%)がアモルファス相であるので鉱物化率が低いと考えられる。
【0128】
一方、スラグ1の場合は、アモルファス相が34.1%であるが、これでも全体に対するアモルファス相の割合が高いため、アモルファス相に結晶が巻き込まれ、結晶同士が繋がらず、表面にあった結晶のみしか反応しなかったため、鉱物化率が低かったものと考えられる。
【0129】
一般に、溶融岩石(天然岩石またはスラグ)が冷却されると、結晶性またはアモルファスの化合物を形成するが、急速に冷却するとアモルファス化合物が生成されやすく、低速に冷却すると結晶が生成されやすい。溶融岩石中の核形成結晶の分布はランダムに分布しており、これらの結晶は、他に存在する結晶と接触するまで成長することになる。一方、結晶間の液相において、結晶が互いに成長する前にアモルファス相として固化してしまった場合には、結晶は互いに分離されてしまい繋がることができなくなる。このような配置となると、二酸化炭素の鉱物化作用の進行が妨げられてしまうことになると考えられる。
【0130】
なお、スラグ1及びスラグ7以外のスラグ(スラグ2~スラグ6、スラグ8)も適当量のアモルファス相が含まれていたが、前記の挙動は認められず、表5の結果より、鉱物化も良好に進行したことが確認された(例えば、実施した二酸化炭素の濃度条件で、経過日数が7日の場合における鉱物化率が5%以上。)。これは、アモルファス相が結晶性鉱物間の空間を占めていたが、結晶を完全には包みこんでいなかったためと考えられる。
【0131】
また、グループ1に属する酸化カルシウム(酸化物)等の化合物を含有するスラグ(スラグ2、スラグ4、スラグ6及びスラグ8)は、初期段階で二酸化炭素の鉱物化が認められる。特に、スラグ2及びスラグ4の速い鉱物化作用は、カルシウム含有量が主に酸化物形態(CaOやCaFe)及びケイ酸カルシウム(いずれもグループ1に属する。)によるものであると考えられる。
【0132】
一方、スラグ3及びスラグ5の鉱物化率が、前記のスラグ3及びスラグ5と比較的低いのは、これらと比較して、前記したグループ2に属する「混合カチオン」ケイ酸塩(ある程度のCaがMgまたはFeに置換されている。)が比較的多く、また、グループ4に属する化合物が存在するためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、空気中の二酸化炭素を炭酸塩として岩石に固定化し、空気中の二酸化炭素を削減することを可能とする技術を提供する手段として有利に利用することができ、産業上の利用可能性は高い。
図1
図2