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特開2022-169861区分線形モデル作成装置、区分線形モデル作成方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169861
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】区分線形モデル作成装置、区分線形モデル作成方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20221102BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G05B23/02 G
G05B11/36 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075548
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】安田 秀策
(72)【発明者】
【氏名】野村 真澄
(72)【発明者】
【氏名】竹中 竜児
【テーマコード(参考)】
3C223
5H004
【Fターム(参考)】
3C223AA02
3C223AA18
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223FF05
3C223FF12
3C223FF22
3C223FF52
3C223GG01
3C223HH01
3C223HH29
5H004GA28
5H004GB04
5H004GB11
5H004JB23
5H004KC22
5H004KC28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】滑らかな形状を有する区分線形モデルを作成することができる区分線形モデル作成装置、区分線形モデル作成方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】区分線形モデル作成装置は、区分線形モデルにおける区分を規定する節点の真値をカルマンフィルタによって推定するにあたり、前記区分線形モデルの滑らかさに関するペナルティ項をカルマンゲインの算出式に追加して、カルマンゲインおよび誤差共分散行列を算出して、前記節点の真値を推定し、推定された前記節点を結んで区分線形モデルを作成する計算部、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
区分線形モデルにおける区分を規定する節点の真値をカルマンフィルタによって推定するにあたり、前記区分線形モデルの滑らかさに関するペナルティ項をカルマンゲインの算出式に追加して、カルマンゲインおよび誤差共分散行列を算出して、前記節点の真値を推定し、推定された前記節点を結んで区分線形モデルを作成する計算部、
を備える区分線形モデル作成装置。
【請求項2】
前記ペナルティ項は、前記区分線形モデルの更新前と更新後の差の一階微分のノルムおよび/または二階微分のノルムを含む、
請求項1に記載の区分線形モデル作成装置。
【請求項3】
前記計算部は、Pを更新後の誤差共分散行列、trをトレース、Nを前記区分線形モデルの更新前と更新後の差の一階微分のノルム、Nを前記区分線形モデルの更新前と更新後の差の二階微分のノルム、Kをカルマンゲイン、κとλを重み係数としたときに以下の式を満たすKを算出する、
∂tr(P)/∂K+κ・∂N/∂K+λ・∂N/∂K=0
請求項1または請求項2に記載の区分線形モデル作成装置。
【請求項4】
前記計算部は、前記ペナルティ項を除外してカルマンゲインKを算出する局所フィッティングと、前記ペナルティ項を追加してカルマンゲインKを算出するカーブフィッティングと、を切り替えて実行することができる、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の区分線形モデル作成装置。
【請求項5】
前記計算部は、前記カーブフィッティングの実行中に、更新前の前記節点と更新後の前記節点の差が所定の閾値を上回る場合、前記カーブフィッティングから前記局所フィッティングに切り替える、
請求項4に記載の区分線形モデル作成装置。
【請求項6】
前記計算部は、更新前の前記節点と更新後の前記節点の差が所定の閾値以下となるよう、更新後の前記節点の値を上限値または下限値で上書きする、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の区分線形モデル作成装置。
【請求項7】
前記計算部は、前記節点ごとに状態遷移誤差、更新速度、前記カルマンゲインへの重み付け、前記ペナルティ項への重み付けを設定して、前記節点の真値を推定する、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の区分線形モデル作成装置。
【請求項8】
区分線形モデルにおける区分を規定する節点の真値をカルマンフィルタによって推定するにあたり、前記区分線形モデルの滑らかさに関するペナルティ項をカルマンゲインの算出式に追加して、カルマンゲインおよび誤差共分散行列を算出して前記節点の真値を推定し、推定された前記節点を結んで区分線形モデルを作成する、
区分線形モデル作成方法。
【請求項9】
コンピュータに、
区分線形モデルにおける区分を規定する節点の真値をカルマンフィルタによって推定するにあたり、前記区分線形モデルの滑らかさに関するペナルティ項をカルマンゲインの算出式に追加して、カルマンゲインおよび誤差共分散行列を算出して前記節点の真値を推定し、推定された前記節点を結んで区分線形モデルを作成する処理、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、区分線形モデル作成装置、区分線形モデル作成方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所などのプラントやエンジンなどでは、弁などの非線形性の強い機器が用いられる。この機器の状態推定には、カルマンフィルタなどのデータ同化手法が用いられる。一方、カルマンフィルタは状態方程式で記述可能な線形モデルしか扱うことができず、非線形性の強い機器のデータ同化を扱うことが難しい。特許文献1には、非線形性を有する機器の状態推定を、非線形カルマンフィルタによって実現する技術が開示されている。しかし、非線形カルマンフィルタによる状態推定は計算負荷が高い。非線形性を有する機器の特性を記述する他の方法として、区分線形モデルを用いる方法が提供されている(非特許文献1)。この方法は、機器の特性を示す曲線を区分ごとに一次関数で近似してモデル化する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-27329号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Rafael Rui, Tohid Ardeshiri and Alexandre Bazanella, “Identification of Piecewise Affine State-Space Models via Expectation Maximization”, 2016[閲覧:2021年4月5日]URL:https://arxiv.org/abs/1609.09789
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
区分線形モデルでは、各区分それぞれにおいて独立にデータ同化する。その結果、区分線形モデルの連続性が損なわれる場合がある。例えば、機器特性を示すある1つの点の値が突出して大きくなったり小さくなったりすると、その点を節点とする区分の一次関数の傾きが突出した点に引きずられて変化し、区分線形モデルの形状に尖った部分が現れ、滑らかではなくなることがある。すると、機器特性が本来滑らかな曲線で表される場合、機器特性の記述力が損なわれることになる。
【0006】
本開示は、上記課題を解決することができる区分線形モデル作成装置、区分線形モデル作成方法およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の区分線形モデル作成装置は、区分線形モデルにおける区分を規定する節点の真値をカルマンフィルタによって推定するにあたり、前記区分線形モデルの滑らかさに関するペナルティ項をカルマンゲインの算出式に追加して、カルマンゲインおよび誤差共分散行列を算出して、前記節点の真値を推定し、推定された前記節点を結んで区分線形モデルを作成する計算部、を備える。
【0008】
本開示の区分線形モデル作成方法は、区分線形モデルにおける区分を規定する節点の真値をカルマンフィルタによって推定するにあたり、前記区分線形モデルの滑らかさに関するペナルティ項をカルマンゲインの算出式に追加して、カルマンゲインおよび誤差共分散行列を算出して前記節点の真値を推定し、推定された前記節点を結んで区分線形モデルを作成する。
【0009】
本開示のプログラムは、コンピュータに区分線形モデルにおける区分を規定する節点の真値をカルマンフィルタによって推定するにあたり、前記区分線形モデルの滑らかさに関するペナルティ項をカルマンゲインの算出式に追加して、カルマンゲインおよび誤差共分散行列を算出して前記節点の真値を推定し、推定された前記節点を結んで区分線形モデルを作成する処理、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
上述の区分線形モデル作成装置、区分線形モデル作成方法およびプログラムによれば、滑らかさを考慮した区分線形モデルを作成することにより、機器の非線形特性を高精度に推定・記述することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の区分線形モデル作成装置の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る区分線形モデルの一例を示す図である。
図3】実施形態に係る局所フィッティングを説明するための図である。
図4】実施形態に係るカーブフィッティングを説明するための図である。
図5】カルマンフィルタに用いる式を示す図である。
図6A】実施形態に係るカルマンフィルタの拡張について説明する第1の図である。
図6B】実施形態に係るカルマンフィルタの拡張について説明する第2の図である。
図7】実施形態に係るフィッティング処理の一例を示すフローチャートである。
図8】実施形態に係る区分線形モデル作成処理の一例を示すフローチャートである。
図9】実施形態に係る区分線形モデル作成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下、本開示の実施形態に係る区分線形モデル方法について、図1図9を参照しながら説明する。
(構成)
図1は、実施形態の区分線形モデル作成装置の一例を示すブロック図である。
図示するように、区分線形モデル作成装置10は、データ取得部11と、入力受付部12と、計算部13と、出力部14と、記憶部15と、を備える。
データ取得部11は、観測データを取得する。観測データとは、例えば、プラントが備える機器の特性を示すデータである。
入力受付部12は、閾値や係数などの設定情報やユーザによる指示操作を受け付ける
計算部13は、区分線形モデルを作成する処理を実行する。計算部13は、区分線形モデルの作成に際し、カーブフィッティングと局所フィッティングを使い分けて、精度良く機器特性の曲線を推定する。カーブフィッティングと局所フィッティングについては後述する。
出力部14は、計算部13が作成した区分線形モデルをグラフなどに表示して、表示装置や電子ファイルに出力する。
記憶部15は、データ取得部11が取得した観測データ、計算部13が作成した区分線形モデル、閾値や係数など各種データを記憶する。
【0013】
本実施形態の区分線形モデル作成装置10は、非線形な特性を有する対象を区分線形モデルによってモデル化する。非線形な特性の一例として、本実施形態ではバルブの流量特性を取り上げる。バルブの流量特性とは、例えば、Mv値(弁開度など)とCv値の関係である。Cv値とは流体の流れやすさを示す値である。このMv値とCv値の関係が示すバルブの流量特性は非線形(例えば、バルブを2倍の開度で開いたときに流量が今の2倍となるという関係が成立しない。)であることが知られている。このような非線形な特性を記述するのに区間線形モデルが用いられることがある。図2を参照する。図2の縦軸はMv値、横軸はCv値である。ここで、図2に示す点P1~P9は、例えば、バルブをあるMv値で制御したときに実際に観測されたCv値である。観測点P1~P9を順に結んでできた線は、バルブの流量特性を示す区分線形モデルである。つまり、観測データが得られなかった範囲については点同士を結んでできた線上の点がこのバルブの流量特性を表していると考える。以降、この区分線形モデルを関数Fxと呼ぶ。また、区分線形モデルの各区分を規定する点P1~P9のことを節点と呼ぶ。
【0014】
一般に観測データにはノイズが重畳しているため、実際には、図2の枠2Aに示すように、区分線形モデルで定義された機器特性に対して得られる観測データは、区分線形モデルの線を中心に値が分布する。これに対し、機器特性の真値を求める必要がある。例えば、カルマンフィルタを用いて、観測データの真値を推定する。真値とは、Mv値とCv値の組合せを推定対象の状態量としたときに、推定誤差が最小となるときのMv値とCv値の組合せのことである。観測データが得られると、カルマンフィルタにより真値(つまり図2のグラフ上の点)を推定し、例えば、これまで真値とみなされていた点P6に代えて、新たに真値と推定された点P6´を採用し、点P5と点P6´、点P6´と点P7を結んで関数Fxを更新する。これにより、実際の観測データに応じて適応的に区分線形モデル(関数Fx)を更新することができる。バルブなどは経年劣化することから、流量特性が年数を経るとともに変化するが、この方法であれば、運用中に計測された観測データから現在の流量特性を表す区分線形モデルを得ることができる。また、この方法には、特許文献1に開示されている非線形カルマンフィルタのように膨大な計算量を必要とせず、例えば、プラントの制御装置に搭載されたコンピュータでもオンラインで実行可能な計算負荷で対応することができる。
【0015】
しかし、一般的なカルマンフィルタによって推定された真値に従って、区分線形モデルを更新すると、本当のバルブの流量特性から外れてしまう場合がある。ここで、図3を参照する。図3の縦軸はMv値、横軸はCv値である。図3に示す点P1~P7は、ある時刻までに計測されたMv値とCv値の観測データから推定された真値である。点P1~P7について隣り合う点同士を結ぶことで関数Fxが得られる。本来、バルブの流量特性は、滑らかな曲線で表され、関数Fxはこの曲線を良好に近似しているとする。バルブの運用中に、Mv値とCv値の観測データが蓄積され、一般的なカルマンフィルタにより、点P4に代わる新たな点P4´が推定されたとする。すると、一般的な区分線形モデルの更新では、新たに推定された真値の周辺だけを局所的に更新する。具体的には、点P3と点P4を結ぶ線を点P3と点P4´を結ぶ線に置き換え、点P4と点P5を結ぶ線を点P4´と点P5を結ぶ線に置き換えて関数Fxを更新する。更新された箇所を破線にて示す。このように更新すると、点P3~点P5の間が鋸状となる。バルブの流量特性が滑らかな曲線で表されることを考えると、更新後の関数Fxによって示される点P3~点P5の間の流量特性は精度が十分でない可能性が高い。つまり、このように局所的なフィッティングによって得られる関数Fxでは、点P3~点P5の間の機器特性の記述力が損なわれていることになる。このような問題に対し、本実施形態では、機器特性が示す滑らかな曲線を維持したまま区分線形モデルを作成・更新する方法を提供する。以下、本実施形態の区分線形モデルの作成・更新方法をカーブフィッティング、図3を用いて説明した区分線形モデルの作成・更新方法を局所フィッティングと呼ぶ。
【0016】
図4に、更新前の関数Fxを実線で示し、カーブフィッティングによって更新した関数Fx´を破線で示す。本実施形態のカーブフィッティングでは、カルマンフィルタの誤差共分散行列の算出時に、区分線形モデルの滑らかさのペナルティ項を導入する。より具体的には、更新前の関数Fxと更新後の関数Fx´の差の一階微分および二階微分の少なくとも1つについて、更新前の関数Fxと更新後の関数Fx´のノルム(二乗ノルム)をペナルティ項として追加して誤差共分散行列を算出することで、観測データとの誤差を最小にし、かつ滑らかさを維持可能な区分線形モデルを算出する。この計算により、局所フィッティングでは点P4´だけが突出して移動していたのに対し、図4に示すカーブフィッティングでは、点P3と点P6が、観測データとの誤差を最小にしつつ、滑らかさを維持するようにそれぞれ点P3´と点P6´へ移動し、その結果、関数Fx´が得られる。ペナルティ項のうち一階微分の項は、元の関数Fxの形状を維持したまま、関数Fxが点P4から点P4´を含むような位置へ並行移動させるように働く。二階微分の項は、元の関数Fxの形状(曲率)を、全ての観測データの分布に沿った形状・曲がり具合へ調整するように働く。なお、ペナルティ項には任意の大きさの重み付けを付すことができる。
【0017】
図5に一般的なカルマンフィルタで用いられる公式を示す。式(1)はカルマンゲインKの導出に用いられる式である。式(1)は、更新後の誤差共分散行列PをカルマンゲインKで微分した式を表し、カルマンフィルタでは、式(1)の値を0にするようなカルマンゲインKが導出される。具体的には、カルマンゲインKは式(2)により計算される。また、更新後の誤差共分散行列Pは、式(3)で表される。各式に用いられる記号の意味は枠5A内に示してある。誤差共分散行列Pは、関数Fx(Mv値とCv値の組みのデータ)の推定値の誤差の分布を表し、例えば、この分布の中心を真値として推定する。
【0018】
次に図6A図6Bを参照してペナルティ項について説明する。図6Aの上側に関数Fxの一例を示す。関数Fxの点(Cv値、Mv値)を(Ci、Mi)、(Ci+1、Mi+1)、・・・、等で表すと、関数Fxの一階微分、二階微分(Mv値で微分)は、それぞれ図6Aの式(4)、式(5)で表すことができる。また、一階微分用の演算子Jを図6Bの式(6)のようにおくと、関数Fxの一階微分はJxのように記述できる。関数Fxの二階微分についても行列形式の二階微分用の演算子H(図示せず)を用いて簡単な形式で記述できる。ここで、更新前の関数Fxと更新後の関数Fx´の差の一階微分を考える。具体的には、一階微分領域における、更新前の関数Fxに対する更新後の関数Fxのノルムの二乗Nは、図6Bの式(7)で表すことができる。二階微分領域における、更新前の関数Fxに対する更新後の関数Fxのノルムの二乗Nについても二階微分の演算子Hを用いて同様の式で表すことができる(図示せず)。従って、ペナルティ項を加えてカルマンゲインKを導出する式は、図6Bの式(8)のようになる。式(8)のκ、λはそれぞれ、一階微分のペナルティに対する重み係数、二階微分のペナルティに対する重み係数であり、任意の実数を設定することができる。例えば、κ、λに0を設定すれば、局所フィッティングのときのカルマンゲインKを導出する式となる。例えば、λに0を設定し、一階微分のペナルティだけを考慮すると、更新後の関数Fxは、更新前の関数Fxの全体をある方向へシフトさせたような形状となる。反対に、κに0を設定し、二階微分のペナルティだけを考慮すると、更新後の関数Fxは、更新前の関数Fxの全体形状(曲率)を変更するように修正される。κとλを適切に調整すると、一階微分と二階微分の両方を用いると、局所と大域の両面で精度の良い推定結果が得られる。
【0019】
(動作)
[関数Fxの更新処理]
次に図7を参照して、カーブフィッティング、局所フィッティングの流れについて説明する。これらの処理は、一般的にカルマンフィルタを適用して状態推定を行う処理と同様である。観測データは、Mv値とCv値の組合せのデータであり、推定する状態量はMv値に対するCv値の真値である。データ取得部11は、Mv値とCv値を組合せた観測データを例えば所定の時間間隔で取得しているとする。
【0020】
図7は、実施形態に係るフィッティング処理の一例を示すフローチャートである。
まず、入力受付部12が、各種設定を受け付ける(ステップS1)。例えば、入力受付部12は、式(8)のκ、λ、後述する各種閾値を取得し、記憶部15に登録する。
次に、計算部13が、初期化処理を行う(ステップS2)。初期化処理では、計算部13が、関数Fxの初期化、誤差共分散行列の初期化、状態ノイズと観測ノイズの初期化などを行う。関数Fxの初期化は、これまでにデータ取得部11が取得した観測データに基づいて、計算部13が、区間線形モデルを作成する。例えば、図2の点P1~P9が得られていれば、各点を隣接する点を結んで関数Fxを設定する(関数Fxの初期化)。
次に計算部13が、滑らかさに関するペナルティ項を追加した式を作成する(ステップS3)。計算部13は、ステップS1で設定されたκ、λを用いて図6Bの式(8)を作成する。計算部13は、局所フィッティングを行うときにはκ、λに0を設定し、カーブフィッティングを行うときにはκ、λに設定された値をセットする。
【0021】
次に計算部13が、状態方程式と観測方程式を作成し、予測処理を行う(ステップS4)。
状態方程式:x=Axt-1+Bu+状態遷移分のノイズ
ここで、xは時刻tのx、xは真値を推定したい状態変数(Cv値とMv値の組合せ)、uは入力変数、Aは状態遷移行列、Bは駆動行列である。
観測方程式:y=Cx+観測ノイズ
ここで、yは観測される変数(Cv値)、Cは観測行列である。
例えば、計算部13は、状態方程式に基づいて、誤差共分散行列Pに状態遷移分のノイズ(状態遷移誤差)を付加する(P=Pt-1+状態遷移誤差)。次に、計算部13は、現在のCv値を取得して観測Cv値として設定し、現在のMv値を取得して観測行列Cを算出する。この観測行列は、上記の観測方程式における係数Cである。計算部13は、観測行列Cと観測方程式に基づいてCv値を予測する。
【0022】
次に計算部13が、カルマンゲインと誤差共分散行列を算出する(ステップS5)。例えば、計算部13は、観測されたCv値と予測されたCv値の観測誤差etを計算する(e=y-C)。また、計算部13は、更新前のxと、xの推定値のCv値方向の差を計算する。次に計算部13は、観測誤差の共分散行列(式(1)の右辺2項目のカッコ内)を計算する。次に計算部13は、式(8)に基づいてカルマンゲインKを算出する。
【0023】
次に計算部13は、関数Fxを更新する(ステップS6)。例えば、計算部13は、カルマンゲインKと観測誤差eを用いて、xt+1の推定値を更新する(xt+1=x+Ke)。次に計算部13は、次の時刻t+1の誤差共分散行列Pt+1を計算する。
【0024】
ここで、Fx推定値が制限を超える場合には、補正を行ってもよい。例えば、許容する更新幅に制限を設けておき、更新前の関数Fxの値xt+1とxt+1推定値の差が所定の閾値以上離れている場合、xt+1の推定値を、最大で変化したときの値に置き換える。例えば、(Cv値、Mv値)とすると、(1,1)から(1.1、1)までの変化を許容すると定めている場合に、xt+1推定値が(1.5、1)となるような場合、計算部13は、推定された(1.5、1)を(1.1、1)に補正する。
【0025】
また、区分線形モデルの状態誤差分散Pの更新時に、各点の状態誤差分散に上下限を設定してもよい。例えば、観測データがあまり得られない範囲(例えば、図3図4の点P7)の点に対して許容する状態誤差分散の上下限値は狭く設定する。これにより、状態遷移誤差が足し込まれ蓄積されることを防止することができる。
【0026】
また、点ごとに更新速度を変更しても構わない。例えば、観測データがあまり得られない範囲については、状態誤差分散の上下限値を狭く設定し、状態遷移誤差を大きく設定することで真値の推定を早く(更新速度を速く)することができる。反対に観測データが頻繁に得られる範囲(例えば、図3図4の点P3~P5)では、状態遷移誤差を小さく設定することで、更新速度を遅くすることができる。また、このとき観測データが頻繁に得られる範囲では、状態誤差分散の上下限値を広く設定することで、(更新に時間がかかるが)大幅な変更を許容することになる。例えば、あまり観測データが得られない範囲(あまり使用しない弁開度)については、状態誤差分散に上下限を狭く設定し、状態遷移誤差を大きく設定することで、観測データが得られたときにすぐに更新するがあまり大きな変化は許容しないようにし、よく使われる範囲(観測データが頻繁に得られる範囲)では、その逆の設定を行うことで、少しずつであるが長期的には大きな変化を許容するといった設定にすることができる。よく使われる範囲では、経年劣化などにより長期的には大きく特性が変化することがあり得るので、このような設定は効果的である。
【0027】
また、カルマンゲインに対して、点ごとに異なる重みを付けて更新量を更新してもよい。例えば、あまり大幅に更新したくない節点については小さな重みを付すことができる。また、一次微分、二次微分のペナルティ項に対し、点ごとに重み係数κ、λの値を変えてもよい。
【0028】
関数Fxの真値(Mv値とCv値の真値、図3図4の点P4´等の更新後の点)を更新すると、計算部13は、更新後の隣り合う点を結んで関数Fxを更新する。
計算部13は、関数Fxの更新を継続する間は、上記のステップS3~S6の処理を繰り返し行う。
【0029】
[全体処理]
次に図8を参照して、局所フィッティング、カーブフィッティングの切り替えを含む関数Fxの作成処理全体の一例について説明する。
図8は、実施形態に係る区分線形モデル作成処理の一例を示すフローチャートである。
一例として、「調整モード」、「全体Fitting」、「局所Fitting」の3つの処理モードを用意する。まず「調整モード」において関数Fxの初期値を設定し、その後、「全体Fitting」の処理モードにおいては、カーブフィッティングを実行し、関数Fxの全体の形状を時々刻々と取得される観測データに応じて調整する。そして、必要に応じて、「局所Fitting」に切り替えて関数Fxの精度を維持する。
【0030】
(調整モード)
まず、入力受付部12は各種設定を受け付け、計算部13はカルマンフィルタの初期化等を行う(ステップS10)。この処理は、図7のステップS1、2と同様であるが、図8のフローチャートでは、関数Fxの初期化をステップS10~S13の調整モードで行う。次にデータ取得部11が、観測データを取得する(ステップS11)。例えば、データ取得部11は、バルブの動作範囲の全域にわたる観測データを取得する。データ取得部11は、観測データを記憶部15に記録する。次に、計算部13が、記憶部15から観測データを読み出して、カーブフィッティングを行う(ステップS12)。カーブフィッティングの処理については、図7のフローチャートで説明したとおりである。出力部14は、カーブフィッティングの結果(区分線形モデル、関数Fx)と観測データとを重畳して表示装置などに出力する。ユーザは、例えば、関数Fxの形状と観測データの分布を見比べる等して、カーブフィッティングの精度の確認等を行う。カーブフィッティングが完了し、関数Fxの初期値が設定できると、ユーザはその旨を区分線形モデル作成装置10へ入力する。関数Fxの設定が不十分(精度が良好ではないなど)な場合(ステップS13;No)、ユーザは各種閾値や係数などを調整する。また、新たな観測データが得られる場合は観測データを追加して、計算部13は、関数Fxの初期値が設定できるまで、カーブフィッティングを繰り返し行う。このように初期段階でカーブフィッティングを行うことで、精度の高い機器特性の区分線形モデルを得ることができる。例えば、機器が使用される環境などの影響で、メーカが提供する機器特性と実際にプラント等に導入した機器の特性に差があるような場合、調整モードの実行によって、関数Fxの初期値を設定することにより、速やかに高精度な区分線形モデルを得ることができる。
【0031】
関数Fxの設定が完了すると(ステップS13;Yes)、「全体Fitting」の処理モードに移行する。その前に、計算部13は、運転停止するか否かを判定する(ステップS14)。運転停止する場合(ステップS14;Yes)、関数Fxの更新を終了する。運転停止しない場合(ステップS14;No)、次の全体フィッティングの処理モードへ移行する。なお、ここでは一例として「調整モード」から「全体Fitting」へ移行する際に終了判定を行うこととしたが、例えば、ステップS11~S13のループ処理の実行中に運転停止命令が入力された場合、関数Fxの更新を終了してもよい。
【0032】
(全体Fitting)
「全体Fitting」では、調整モードで設定した関数Fxを、実際の機器特性を精度よく反映したオリジナルな関数Fxとして設定する(ステップS15)。オリジナルな関数Fxが設定できると、この関数Fxをプラントの監視や制御に利用することができる。オリジナル関数Fxの設定後も、データ取得部11は、観測データを取得する(ステップS16)。計算部13は、設定された更新速度、閾値、重み係数に従って、全ての点を対象にカーブフィッティングを行う(ステップS17)。計算部13は、カーブフィッティングによって更新される前の値と更新後の値を各点について計算し、計算結果を閾値と比較する。この閾値には、各点ごとに異なる値が設定されていてもよい。計算部13は、どの点についても閾値を上回る変化がない場合(ステップS18;No)、取得された観測データに基づくカーブフィッティングを継続して行う。出力部14は、関数Fxが更新される度に、更新後の関数Fxを表示装置などに出力する。
【0033】
計算部13は、どれか1つの点でも閾値を上回る変化があった場合(ステップS18;Yes)、「局所Fitting」の処理モードに移行する。その前に、計算部13は、運転停止するか否かを判定する(ステップS19)。運転停止する場合(ステップS19;Yes)、関数Fxの更新を終了する。運転停止しない場合(ステップS19;No)、次の「局所Fitting」の処理モードへ移行する。なお、ここでは一例として「全体Fitting」から「局所Fitting」へ移行する際に終了判定を行うこととしたが、ステップS16~S18のループ処理の実行中に運転停止命令が入力された場合、即座に関数Fxの更新を終了してもよい。
【0034】
(局所Fitting)
「局所Fitting」の処理モードでは、フィッティング方式をカーブフィッティングから局所フィッティングに切り替える。例えば、バルブの一部が損傷したような場合、ある開度のときだけCv値が大きく変化してしまうことがある。このような場合に、ペナルティ項を設定して、損傷の影響による特定の範囲のMv値に対するCv値の大幅な変化を区分線形モデル全体に及ぼすようにすると、他の範囲については、精度を低下させることになる。従って、例えば、ある特定の範囲において更新前後で閾値を上回る変化が現れたときには、カーブフィッティングよりも局所フィッティングを適用した方が全体として精度を確保できると考え、フィッティング方式をカーブフィッティングから局所フィティングに切り替えて、関数Fxの形状が、図3の破線で例示するような形状となることを許容する。局所フィティングに切り替えた後は、データ取得部11は、観測データを取得する(ステップS20)。計算部13は、各点それぞれに対し、他の点とは独立して局所フィッティングを行う(ステップS21)。計算部13は、運転停止するまでの間(ステップS22;No)、局所フィッティングを継続して実行する。運転停止すると(ステップS22;Yes)、関数Fxの更新を終了する。なお、ステップS17のフィッティング方式の切り替え判定は、自動で行ってもよいし、ユーザが行ってもよい。例えば、バルブの一部損傷が検知された場合、ユーザは、区分線形モデル作成装置10へ、局所フィッティングへの切り替えを指示する入力を行い、この入力に基づいて、計算部13は、カーブフィッティングから局所フィッティングへの切り替えを行ってもよい。
【0035】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、カルマンゲインKを導出する式に滑らかさに関するペナルティ項を追加する。これにより、モデル化する対象の曲線との誤差を最小にしつつ、対象曲線を近似する滑らかな区分線形モデルを作成・更新することができる。これにより、非線形な特性を有する対象の値を精度よく推定することができる。また、本実施形態のフィッティング方法は、比較的少数の行列演算で実行することができるため、簡易に実装可能であり、高速に動作する。したがって、制御装置上でリアルタイムに演算するなどの用途に利用することができる。
【0036】
図9は、実施形態の区分線形モデル作成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の区分線形モデル作成装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0037】
なお、区分線形モデル作成装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。なお、区分線形モデル作成装置10は、複数のコンピュータ900によって構成されていても良い。
【0038】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0039】
<付記>
各実施形態に記載の区分線形モデル作成装置、区分線形モデル作成方法およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0040】
(1)第1の態様に係る区分線形モデル作成装置10は、区分線形モデルにおける区分を規定する節点の真値をカルマンフィルタによって推定するにあたり、前記区分線形モデルの滑らかさに関するペナルティ項をカルマンゲインの算出式に追加して、カルマンゲインおよび誤差共分散行列を算出して、前記節点の真値を推定し、推定された前記節点を結んで区分線形モデルを作成する計算部13、を備える。
これにより、区分線形モデル全体の形状の滑らかさを維持したまま、区分線形モデルを作成、更新することができる。
【0041】
(2)第2の態様に係る区分線形モデル作成装置10は、(1)の区分線形モデル作成装置10であって、前記ペナルティ項は、前記区分線形モデルの更新前と更新後の差の一階微分のノルムおよび/または二階微分のノルムを含む。
これにより、一階微分のノルムおよび/または二階微分のノルムを含めることで、現在の滑らかな形状を維持したままスライドさせたり(一階微分)、観測データの分布に沿った滑らかな形状に修正したり(二階微分)、それらをバランスさせて滑らかさを保ったまま精度の良い区分線形モデルを作成することができる。
【0042】
(3)第3の態様に係る区分線形モデル作成装置10は、(1)~(2)の区分線形モデル作成装置10であって、前記計算部は、Pを更新後の誤差共分散行列、trをトレース、Nを前記区分線形モデルの更新前と更新後の差の一階微分のノルム、Nを前記区分線形モデルの更新前と更新後の差の二階微分のノルム、Kをカルマンゲイン、κとλを重み係数としたときに以下の式を満たすKを算出する。
∂tr(P)/∂K+κ・∂N/∂K+λ・∂N/∂K=0
これにより、一般的なカルマンフィルタと同様の手法でデータ同化を行うことができる。
【0043】
(4)第4の態様に係る区分線形モデル作成装置10は、(1)~(3)の区分線形モデル作成装置10であって、前記計算部は、前記ペナルティ項を除外してカルマンゲインKを算出する局所フィッティングと、前記ペナルティ項を追加してカルマンゲインKを算出するカーブフィッティングと、を切り替えて実行することができる。
対象の特性に応じて局所フィッティングとカーブフィッティングを使い分けることで、区間線形モデルの精度(特性の記述力)を確保することができる。
【0044】
(5)第5の態様に係る区分線形モデル作成装置10は、(4)の区分線形モデル作成装置10であって、前記計算部は、前記カーブフィッティングの実行中に、更新前の前記節点と更新後の前記節点の差が所定の閾値を上回る場合、前記カーブフィッティングから前記局所フィッティングに切り替える。
これにより、対象の特性の変化に速やかに対応することができる。
【0045】
(6)第6の態様に係る区分線形モデル作成装置10は、(1)~(5)の区分線形モデル作成装置10であって、前記計算部は、更新前の前記節点と更新後の前記節点の差が所定の閾値以下となるよう、更新後の前記節点の値を上限値または下限値で上書きする。
これにより、区間線形モデルの急激かつ大幅な更新を防止することができる。例えば、外乱等の影響により一時的に観測データが変動したような場合でも、その影響を一定の範囲に抑えることができる。
【0046】
(7)第7の態様に係る区分線形モデル作成装置10は、(1)~(6)の区分線形モデル作成装置10であって、前記節点ごとに状態遷移誤差、更新速度、前記カルマンゲインへの重み付け、前記ペナルティ項への重み付けを設定して、前記節点の真値を推定する。
これにより、各節点の付近で得られる観測データの特性に応じて真意を推定し、区間線形モデルの推定精度を向上することができる。
【0047】
(8)第8の態様に係る区分線形モデル作成方法は、区分線形モデルにおける区分を規定する節点の真値をカルマンフィルタによって推定するにあたり、前記区分線形モデルの滑らかさに関するペナルティ項をカルマンゲインの算出式に追加して、カルマンゲインおよび誤差共分散行列を算出して前記節点の真値を推定し、推定された前記節点を結んで区分線形モデルを作成する。
【0048】
(9)第9の態様に係るプログラムは、コンピュータ900に、区分線形モデルにおける区分を規定する節点の真値をカルマンフィルタによって推定するにあたり、前記区分線形モデルの滑らかさに関するペナルティ項をカルマンゲインの算出式に追加して、カルマンゲインおよび誤差共分散行列を算出して前記節点の真値を推定し、推定された前記節点を結んで区分線形モデルを作成する処理を実行させる。
【符号の説明】
【0049】
10・・・区分線形モデル作成装置
11・・・データ取得部
12・・・入力受付部
13・・・計算部
14・・・出力部
15・・・記憶部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9