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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169869
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】建設車両のブレーキ機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/438 20100101AFI20221102BHJP
   B60K 17/10 20060101ALI20221102BHJP
   F16H 61/4061 20100101ALI20221102BHJP
【FI】
F16H61/438
B60K17/10 D
F16H61/4061
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075556
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000182384
【氏名又は名称】酒井重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳村 和志
【テーマコード(参考)】
3D042
3J053
【Fターム(参考)】
3D042AA10
3D042AB07
3D042BA02
3D042BA08
3D042BC07
3D042BD02
3D042BD04
3D042BD09
3J053AA01
3J053AB01
3J053AB50
3J053DA27
3J053EA07
3J053EA12
(57)【要約】
【課題】ヒューマンエラーによる衝突事故を簡易な構造で回避することができる建設車両のブレーキ機構を提供する。
【解決手段】建設車両の周囲の障害物を検知する障害物検知装置と、前後進レバー16の傾倒に伴って軸回りに回動するシャフト17と、シャフト17に固定された回動プレート18と建設車両を走行させる走行用ポンプPの前後進切替レバー81とを連結する第一ケーブル19と、建設車両に設けられたアクチュエータ30Aと、前後進切替レバー81とアクチュエータ30Aとを連結する第二ケーブル82と、障害物検知装置によって障害物が検知されたとき、アクチュエータ30Aを作動させるとともに第二ケーブル82を介して前後進切替レバー81を中立に戻しブレーキを作動させる制御部と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図27
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設車両の周囲の障害物を検知する障害物検知装置と、
前後進レバーの傾倒に伴って軸回りに回動するシャフトと、
前記シャフトに固定された回動プレートと前記建設車両を走行させる走行用ポンプの前後進切替レバーとを連結する第一ケーブルと、
前記建設車両に設けられたアクチュエータと、
前記前後進切替レバーと前記アクチュエータとを連結する第二ケーブルと、
前記障害物検知装置によって障害物が検知されたとき、前記アクチュエータを作動させるとともに前記第二ケーブルを介して前記前後進切替レバーを中立に戻しブレーキを作動させる制御部と、を備えたことを特徴とする建設車両のブレーキ機構。
【請求項2】
前記前後進切替レバーは、前後進レバーの傾倒によって当該前後進切替レバーの回動を許容する第一切欠孔を有し、
前記アクチュエータが作動した際に、前記第一切欠孔を介して前記前後進切替レバーを引くことで前記前後進切替レバーを中立に戻すことを特徴とする請求項1に記載の建設車両のブレーキ機構。
【請求項3】
前記前後進切替レバーは、前記第一切欠孔に連続し、当該前後進切替レバーの回動中心から離間する側に延設された第二切欠孔を有し、
前記アクチュエータが作動した際に、前記第二切欠孔内に係合した前記第二ケーブルを引くことで、前記前後進切替レバーの傾きを中立に戻すことを特徴とする請求項2に記載の建設車両のブレーキ機構。
【請求項4】
前記前後進切替レバーは、第一部材の他端と第二部材の一端とが相対回動可能に連結支点部で連結して構成されており、
前記第一部材は、一端側に設けられ回動中心となる固定支点部と、前記固定支点部と離間して設けられ前記第一ケーブルが連結される連結支点部と、を備え、
前記第二部材は、長手方向に延設された長孔と、前記第二ケーブルの先端に設けられるとともに前記長孔に移動可能に連結された可動ピンと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の建設車両のブレーキ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設車両のブレーキ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、建設車両のブレーキ機構が開示されている。特許文献1に係る建設車両は、オペレーターが、運転席に設けられた前後進レバーを前進位置又は後進位置から中立位置に戻すことで、HST(Hydro Static Transmission)ブレーキを作動させて制動させている。また、特許文献1に係る建設車両は、ブレーキペダルと前後進レバーとをベースプレート及び複数のロッドを介して連結することにより、ブレーキペダルの踏み込みによって前後進レバーを中立位置に戻し、制動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61-16930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設車両の走行中及び作業中の周囲の確認は、運転講習を受けたオペレーターが、対象物への直接目視やミラーの間接目視により行っている。オペレーターが危険を察知した際、前後進レバーの操作やブレーキペダルの踏み込みによって建設車両を制動させて衝突を回避することができる。しかし、オペレーターの危険軽視や、慣れ等に起因するヒューマンエラーにより衝突事故が発生するという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、ヒューマンエラーによる衝突事故を簡易な構造で回避することができる建設車両のブレーキ機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建設車両のブレーキ機構は、建設車両の周囲の障害物を検知する障害物検知装置と、前後進レバーの傾倒に伴って軸回りに回動するシャフトと、前記シャフトに固定された回動プレートと前記建設車両を走行させる走行用ポンプの前後進切替レバーとを連結する第一ケーブルと、前記建設車両に設けられたアクチュエータと、前記前後進切替レバーと前記アクチュエータとを連結する第二ケーブルと、前記障害物検知装置によって障害物が検知されたとき、前記アクチュエータを作動させるとともに前記第二ケーブルを介して前記前後進切替レバーを中立に戻しブレーキを作動させる制御部と、を備えたこと特徴とする。
【0007】
本発明によれば、障害物検知装置の検知によって、アクチュエータ及び第二ケーブルを介して前後進切替レバーを中立位置に戻すことができる。これにより、簡易な構造でヒューマンエラーによる衝突事故を回避することができる。
【0008】
また、前記前後進切替レバーは、前後進レバーの傾倒によって当該前後進切替レバーの回動を許容する第一切欠孔を有し、前記アクチュエータが作動した際に、前記第一切欠孔を介して前記前後進切替レバーを引くことで前記前後進切替レバーを中立に戻すことが好ましい。
【0009】
また、前記前後進切替レバーは、前記第一切欠孔に連続し、当該前後進切替レバーの回動中心から離間する側に延設された第二切欠孔を有し、前記アクチュエータが作動した際に、前記第二切欠孔内に係合した前記第二ケーブルを引くことで、前記前後進切替レバーの傾きを中立に戻すことが好ましい。
【0010】
本発明によれば、前後進切替レバーを簡易に構成することができる。また、第二切欠孔を設けることで第二ケーブルと第二切欠孔とが係合してより確実にブレーキを作動させることができる。
【0011】
また、前記前後進切替レバーは、第一部材の他端と第二部材の一端とが相対回動可能に連結支点部で連結して構成されており、前記第一部材は、一端側に設けられ回動中心となる固定支点部と、前記固定支点部と離間して設けられ前記第一ケーブルが連結される連結支点部と、を備え、前記第二部材は、長手方向に延設された長孔と、前記第二ケーブルの先端に設けられるとともに前記長孔に移動可能に連結された可動ピンと、を備えていることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、前後進切替レバーを簡易に構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヒューマンエラーによる衝突事故を簡易な構造で回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係る建設車両のブレーキ機構であって、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
図2】第一実施形態に係る建設車両のブレーキ機構の要部概略図である。
図3図2のIII-III矢視図である。
図4図2のIV-IV矢視図である。
図5】前後進レバーを前進方向に最も傾倒させた場合のベースプレート周りの作用図である。
図6】前後進レバーを後進方向に最も傾倒させた場合のベースプレート周りの作用図である。
図7】ブレーキペダルを踏み込んだ場合のベースプレート周りの作用図である。
図8】第一実施形態に係る建設車両のブレーキ機構のブロック図である。
図9】第一実施形態に係る油圧回路の概略図である。
図10図2のX-X矢視図である。
図11】本発明の第二実施形態に係る建設車両のブレーキ機構の要部側面図である。
図12】本発明の第三実施形態に係る建設車両のブレーキ機構の要部側面図である。
図13A】第三実施形態に係るベース部材の拡大斜視図である。
図13B】第三実施形態の変形例に係るベース部材の拡大側面図である。
図13C】第三実施形態の変形例に係るベース部材の拡大側面図である。
図14】本発明の第四実施形態に係る建設車両のブレーキ機構の要部側面図である。
図15】本発明の第五実施形態に係る建設車両のブレーキ機構の要部側面図である。
図16】本発明の第六実施形態に係る建設車両のブレーキ機構の要部側面図である。
図17】本発明の第七実施形態に係る建設車両のブレーキ機構の要部概略図である。
図18】第七実施形態に係る要部側面図である。
図19図18において前後進レバーを前進方向に最も傾倒させた場合を示す作用図である。
図20図18において前後進レバーを後進方向に最も傾倒させた場合を示す作用図である。
図21図18においてアクチュエータを作動させた場合を示す作用図である。
図22】本発明の第八実施形態に係る建設車両のブレーキ機構の要部概略図である。
図23図22のXXIII-XXIIIである。
図24】本発明の第九実施形態に係る建設車両のブレーキ機構の要部概略図である。
図25】第九実施形態に係る建設車両のブレーキ機構の要部側面図である。
図26】従来の前後進レバーと前後進切替レバーとの関係を示す概略図である。
図27】本発明の第十実施形態に係る建設車両のブレーキ機構の概略図である。
図28】第十実施形態の変形例に係る前後進切替レバーの拡大図である。
図29】第十実施形態の変形例に係る前後進切替レバーの拡大図である。
図30】本発明の第十一実施形態に係る建設車両のブレーキ機構の概略図である。
図31】第十一実施形態に係る建設車両のブレーキ機構の前進時の作用図である。
図32】第十一実施形態に係る建設車両のブレーキ機構の後進時の作用図である。
図33】第十一実施形態に係る建設車両のブレーキ機構のアクチュエータを作動させた場合を示す作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1について、図面を参照して詳細に説明する。図1において、本実施形態の建設車両のブレーキ機構1は、低速走行しながら作業を行う転圧ローラ等の建設車両に搭載される。本実施形態では転圧ローラを例示するが、他の建設車両に本発明を適用してもよい。なお、以下の「上下」、「前後」、「左右」は図1の矢印に従う。
【0016】
図1は、ローラ11A及びタイヤ11Bでアスファルト路面等の転圧を行う転圧ローラ10に建設車両のブレーキ機構1を搭載した場合を示している。転圧ローラ10は、運転席12と、ダッシュボード13と、ハンドル14と、ブレーキペダル15と、前後進レバー16とを備えている。
【0017】
運転席12は、オペレーターが座る部位であって、ダッシュボード13と対向している。ダッシュボード13は、運転席の前方に設置された箱状体であって、上面には各種計器、ボタン、つまみ等が配置されている。ハンドル14は、車両の進行方向を定める機器であり、ダッシュボード13の上面に設けられている。
【0018】
ハンドル14は、ダッシュボード13の上面13c(図10参照)の内部に設けられたオービットロール(登録商標、以下同じ。図10参照)14aに接続されている。オービットロール14aは、ステアリング装置の一部を構成する油圧モータである。オービットロール14aは、油圧回路(図示省略)に連結される配管14bを介して作動油が供給される。
【0019】
図1に示すように、ブレーキペダル15は、ダッシュボード13の下部に設けられ、オペレーターの踏み込みによってブレーキが作動するように構成されている。前後進レバー16は、ダッシュボード13の両側に設けられ、中立位置、前進位置、後進位置に傾倒可能なレバーである。前後進レバー16は、ダッシュボード13の片側だけに設けられる構成であってもよい。
【0020】
前後進レバー16,16は、図2に示すように、シャフト17の両端部に垂直に連結されている。シャフト17は、ダッシュボード13の内部に幅方向に沿って配置されている。図2及び図3に示すように、シャフト17には、シャフト17と同期して回動する板状の回動プレート18が貫通して垂直に固定されている。回動プレート18の本体部18aの端部には、連結支点部18bが形成されている。連結支点部18bには、第一ケーブル19がピン結合により連結されている。第一ケーブル19の一端は連結支点部18bに連結され、他端は走行用ポンプP(図9参照)の前後進切替レバー(図示省略)に連結されている。
【0021】
図2及び図3に示すように、前後進レバー16を前進位置に倒すと転圧ローラ10が前進し、後進位置に倒すと転圧ローラ10が後進し、中立位置に戻すと転圧ローラ10が制動する。つまり、前後進レバー16を前進位置に倒すと、回動プレート18がシャフト17の軸心を中心に上側に回動し、第一ケーブル19を引っ張る。これにより、前後進切替レバーが前進位置に回動して転圧ローラ10が前進する。一方、前後進レバー16を後進位置に倒すと、回動プレート18がシャフト17の軸心を中心に下側に回動し、第一ケーブル19を押し込む。これにより、前後進切替レバーが後進位置に回動して転圧ローラ10が後進する。また、前後進レバー16を中立位置に戻すと後記するHSTブレーキが作動し、転圧ローラ10が制動する。
【0022】
ブレーキペダル15は、図2及び図4に示すように、シャフト17と連動するように構成されている。シャフト17には、シャフト17と同期して回動する板状のベースプレート22が貫通して垂直に固定されている。ベースプレート22には、後側の左側面に垂直に設けられた第一ピン22a及び前側の右側面に垂直に設けられた第二ピン22bが形成されている。第一ピン22a及び第二ピン22bは、シャフト17から概ね等距離で配置されている。ブレーキペダル15は、本体プレート15aと、ペダル部15bと、回動支点部15cと、連結支点部15dと、を備えている。
【0023】
本体プレート15aは、後方にペダル部15bを備えた板状部材である。本体プレート15aの前端は、ダッシュボード13の前壁13aに固定されたブラケットBKを介して回動可能に固定されている。回動支点部15cは、ブレーキペダル15の回動中心になっている。連結支点部15dは、本体プレート15aの中央上部に形成されている。
【0024】
連結支点部15dは、第一ブレーキペダル用ロッド23及び第二ブレーキペダル用ロッド24を介してベースプレート22に連結されている。第一ブレーキペダル用ロッド23及び第二ブレーキペダル用ロッド24は、棒状の部材である。第一ブレーキペダル用ロッド23及び第二ブレーキペダル用ロッド24の下端は、連結支点部15dにピン結合により連結されている。
【0025】
第一ブレーキペダル用ロッド23の上端部には、第一ピン22aが遊嵌する長孔23aが形成されている。第二ブレーキペダル用ロッド24の上端部には、第二ピン22bが遊嵌する長孔24aが形成されている。側面視すると、第一ブレーキペダル用ロッド23及び第二ブレーキペダル用ロッド24はV字状を呈する。
【0026】
初期位置(前後進レバー16が中立位置)において、ベースプレート22は概ね水平となる。また、第一ピン22a及び第二ピン22bは、長孔23a,24aにおいて高さ方向の真ん中やや上側に位置する。
【0027】
図5は、前後進レバー16を前進方向に最も傾倒させた場合のベースプレート22周りの作用図である。図5に示すように、前後進レバー16を前進方向に傾倒させるとそれに伴って、シャフト17及びベースプレート22がシャフト17を中心に反時計回りに回動する。この時、第一ピン22aは、第一ブレーキペダル用ロッド23の長孔23aの上端に位置する。一方、第二ピン22bは、第二ブレーキペダル用ロッド24の長孔24aの高さ方向の真ん中やや下側に位置する。前後進レバー16を前進方向に傾倒させても、長孔23a,24a内を第一ピン22a及び第二ピン22bが移動するため、ブレーキペダル15の位置は変わらない。
【0028】
図6は、前後進レバー16を後進方向に最も傾倒させた場合のベースプレート22周りの作用図である。図6に示すように、前後進レバー16を後進方向に傾倒させるとそれに伴って、シャフト17及びベースプレート22がシャフト17を中心に時計回りに回動する。この時、第二ピン22bは、第二ブレーキペダル用ロッド24の長孔24aの上端に位置する。一方、第一ピン22aは、第一ブレーキペダル用ロッド23の長孔23aの高さ方向の真ん中やや下側に位置する。前後進レバー16を後進方向に傾倒させても、長孔23a,24a内を第一ピン22a及び第二ピン22bが移動するため、ブレーキペダル15の位置は変わらない。
【0029】
図7は、ブレーキペダルを踏み込んだ場合のベースプレート22周りの作用図である。図7に示すように、オペレーターがブレーキペダル15を踏み込むと、回動支点部15cを中心にブレーキペダル15下側に回動する。これに伴い、第一ブレーキペダル用ロッド23及び第二ブレーキペダル用ロッド24が下側に引っ張られるため、第一ピン22a及び第二ピン22bがそれぞれ長孔23a,24aの上端に位置し、ベースプレート22が所定の角度で回動するとともにベースプレート22が概ね水平になる。これらと同期して、シャフト17及び回動プレート18も回動して中立位置に位置するため、HSTブレーキが作動して制動する。
【0030】
以上説明したように、オペレーターが、前後進レバー16を中立位置に戻すこと、若しくは、ブレーキペダル15を踏み込むことによって前後進レバー16を中立位置に戻すことによって転圧ローラ10を制動させることができる。つまり、前記した構成は、オペレーターの操作によるブレーキ手段である。
【0031】
次に、制御装置(制御部)3によって作動するブレーキ手段6(6A,6B)について説明する。
【0032】
図8は、第一実施形態に係る建設車両のブレーキ機構のブロック図である。図1及び図8に示すように、建設車両のブレーキ機構1は、投射光と反射光との時間差から距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式の距離画像センサ(3D距離センサ)2と、距離画像センサ2の測定データに基づいて障害物Gの有無を判定する制御装置(制御部)3(図8参照)と、を備えている。障害物Gは、例えば、柱、壁等の構造物や人である。
【0033】
距離画像センサ(障害物検知装置)2は、赤外線等の投射光を発光する発光部と、投射光が物体に当たった際の反射光を受光する受光部とを備えている。発光部から赤外線を送ってから反射光を受光部で受信するまでの時間を計測することで対象までの距離が測定される。距離画像センサ2からの投射角度は、例えば横方向角度が95°、縦方向角度(図1(b)に示す符号θ1)が32°であり、投射断面が横長矩形状を呈している。画像分解能は、例えば横方向に64ピクセル、縦方向に16ピクセルの計1024ピクセルである。距離画像センサ2は、転圧ローラ10の後部の車幅方向中央部に、投射光が後進方向斜め下に投射されるように取り付けられている。
【0034】
障害物Gの検知範囲に関して、投射光の投射範囲をそのまま検知範囲に設定すると、つまり車幅方向の寸法L1(図1(a))を転圧ローラ10の車幅寸法よりも広く設定すると、衝突のおそれがないにもかかわらず障害物Gがあると認識されて、車両が無駄に停止する事態が生じる。そのため、車幅方向に関する検知範囲(図1に斜線にて示す)4の寸法L1は、本実施形態では転圧ローラ10の車幅寸法と略同じに設定する。距離画像センサ2は、障害物Gまでの距離を測定できるため、ピクセル毎の測定データ、具体的には距離画像センサ2と障害物Gとの車幅方向の距離から、車幅寸法に設定された検知範囲4に障害物Gが存在するか否かを制御装置3で判定できる。このように距離画像センサ2を用いることにより、検知範囲4の寸法L1を車両前後方向にわたって一定に確保できる。つまり、検知範囲4を、図1(a)に示すように平面視で、1辺を寸法L1とした略矩形状の範囲に容易に設定することができる。検知範囲4の車両前後方向の寸法L2は、常用される走行速度に応じて適宜に設定され、本実施形態では例えば3メートル程度に設定される。
【0035】
また、距離画像センサ2の投射光が後進方向斜め下に投射されるので、平面視したときの投射光の横方向角度θ2は、95°よりも一層大きな範囲となる。したがって、転圧ローラ10の後部両端と検知範囲4との間に形成される非検知範囲5,5について、その車両前後方向の距離L3を小さく抑えることができる。つまり、車両後部の両脇に形成される非検知の死角を小さくできる。
【0036】
制御装置(制御部)3は、図9に示すように、検知範囲4に障害物Gがあると判定したとき、車両にブレーキをかけるブレーキ手段6Aを備えている。図示しないエンジンにより駆動する走行用ポンプPと、ローラ11A及びタイヤ11B(図1)を回転させる走行用モータMとは、直列に接続されて油圧の閉回路U1を構成している。走行用ポンプPは、斜板式ポンプからなる。走行用ポンプPには、斜板を作動させるための油路T1と油路T2とが接続されている。油路T1と油路T2との間には、走行用ポンプPと並列に2位置3ポートの電磁バルブV1が介設されている。
【0037】
エンジンがかかっているとき、電磁バルブV1は図9における右位置にあり、油路T1と油路T2とを連通していない状態となる。したがって、エンジンがかかっているときに、運転席周りの前後進レバー16を前進位置側に傾けると、斜板作動油が油路T1側から油路T2側に流れて斜板が一方側に傾く。これにより、閉回路U1において圧油が一方向側に流れ、走行用モータMが一方向に回転して車両が前進する。前後進レバー16を後進位置側に傾けると、斜板作動油が油路T2側から油路T1側に流れて斜板が他方側に傾く。これにより、閉回路UIにおいて圧油が他方向側に流れ、走行用モータMが他方向に回転して車両が後進する。
【0038】
エンジンがかかっていないとき、電磁バルブV1は図9に図示されるように左位置にあり、油路T1と油路T2とは連通した状態となっている。電磁バルブV1と走行用ポンプPとの間で油圧の閉回路U2が形成され、油路T1と油路T2との間で差圧が生じないことで、斜板はニュートラル位置に位置している。これにより、閉回路U1においてHST(Hydro Static Transmission)ブレーキが作用する。
【0039】
本実施形態のブレーキ手段6Aは、この電磁バルブV1を利用しており、後進中に障害物が検知されたとき、制御装置3は、ブレーキ信号を出力して電磁バルブV1を右位置から左位置に切り換える。これにより、エンジンがかかった状態でかつ前後進レバーが後進位置側に傾いたままであっても、斜板がニュートラル位置に位置し、閉回路U1においてHSTブレーキが作用して、走行用モータMが停止する。なお、走行用ポンプPに内蔵されたチャージポンプP1と走行用モータMに内蔵されたネガティブブレーキM1との間には、パーキング時にネガティブブレーキM1を作動させるための電磁バルブV2が介設されている。
【0040】
制御装置3が障害物Gがあると判定してからブレーキ信号を出力するまでのタイミング、つまりブレーキ手段6Aのブレーキの開始タイミングは、車両の走行速度に応じて変化させることが好ましい。例えば、制御装置3は、走行速度に応じて予め設定したブレーキ開始距離と、距離画像センサ2で測定した検知範囲4に存在する障害物Gまでの距離とを比較し、障害物Gまでの距離がブレーキ開始距離以下になったとき、電磁バルブV1にブレーキ信号を出力する。
【0041】
ブレーキ開始距離は、例えば車両の実測の限界制動距離よりも若干余裕を持った距離に設定されることが好ましい。ブレーキ開始距離は、時速2kmで約0.5m、時速4kmで約1m、時速6kmで約1.6m、時速8kmで約2.4mに設定されている。なお、車両の走行速度を検出する車速センサ7(図8)としては、タイヤの回転数を検出するロータリエンコーダ等の近接センサが挙げられる。
【0042】
また、本実施形態では、図8に示すように、制御装置(制御部)3は、検知範囲4に障害物Gがあると判定したとき、車両にブレーキをかけるブレーキ手段6Bを備えている。図10に示すように、ブレーキ手段6Bは、アクチュエータ30と、リンクプレート31と、ベース部材32と、第一リンク用ロッド33と、第二リンク用ロッド34と、を備えている。
【0043】
アクチュエータ30は、制御装置3からのブレーキ信号に基づいて、出力軸30aを高さ方向に作動させる装置である。アクチュエータ30は、エアシリンダ、電動シリンダ等の各種シリンダを用いることができるが、本実施形態では油圧シリンダを用いている。アクチュエータ30は、車体のどこに設定してもよいが、本実施形態ではダッシュボード13の前壁13aの前面にブラケットBKを介して設置されている。アクチュエータ30は、車両の内部に設けられた油圧回路に配管(図示省略)を介して接続されている。
【0044】
リンクプレート31は、アクチュエータ30と第一リンク用ロッド33及び第二リンク用ロッド34とを連結する板状部材である。リンクプレート31は、本体部31aと、固定支点部31bと、連結支点部31cと、連結支点部31dと、を備えている。本体部31aは、ダッシュボード13の前壁13aに形成された開口13dを挿通して配置されている。
【0045】
固定支点部31bは、本体部31a上部に設けられ、前壁13aの前面にブラケットBKを介して回動可能に固定されている。連結支点部31cは、本体部31aの前端部に設けられ、アクチュエータ30の出力軸30aの先端とピン結合により連結されている。連結支点部31dは、本体部31aの後端の上部に設けられ、第一リンク用ロッド33及び第二リンク用ロッド34の下端とピン結合により連結されている。
【0046】
ベース部材32は、シャフト17と同期して回転する板状の部材である。ベース部材32は、シャフト17に対して垂直に貫通して固定されている。ベース部材32には、後側の左側面に垂直に設けられた第一ピン32a及び前側の右側面に垂直に設けられた第二ピン32bが形成されている。第一ピン32a及び第二ピン32bは、シャフト17から概ね等距離で配置されている。
【0047】
第一リンク用ロッド33は、連結支点部31dと第一ピン32aとを連結する棒状部材である。第一リンク用ロッド33の上端部には、第一ピン32aが遊嵌する長孔33aが形成されている。第二リンク用ロッド34の上端部には、第二ピン32bが遊嵌する長孔34aが形成されている。側面視すると、第一リンク用ロッド33及び第二リンク用ロッド34はV字状を呈する。請求項における「アクチュエータの出力軸とベース部材とを連結する連結機構」とは、本実施形態では、リンクプレート31、第一リンク用ロッド33及び第二リンク用ロッド34を含めて構成されるリンク機構を意味している。
【0048】
初期位置(前後進レバー16が中立位置)において、ベース部材32は概ね水平となる。また、第一ピン32a及び第二ピン32bは、長孔33a,34aにおいて高さ方向の真ん中やや上側に位置する。
【0049】
前後進レバー16の傾倒によって前進又は後進する場合、前記したブレーキペダル15によるブレーキと同じように、シャフト17及びベース部材32の回動によって長孔33a,34a内を第一ピン32a及び第二ピン32bがそれぞれ移動する。つまり、前後進レバー16の傾倒に伴って、第一ピン32a及び第二ピン32bが長孔33a,34aを移動するため、リンクプレート31の位置は変わらない。
【0050】
一方、例えば、後進中に距離画像センサ2によって障害物Gが検知されたとき、制御装置3は、ブレーキ信号を出力してアクチュエータ30を作動させる。アクチュエータ30の出力軸30aが引っ張られると、固定支点部31bを中心にリンクプレート31の後端側が下側に回動する。これに伴い、第一リンク用ロッド33及び第二リンク用ロッド34が下側に引っ張られるため、第一ピン32a及び第二ピン32bがそれぞれ長孔33a,34aの上端に位置し、ベース部材32が所定の角度で回動するとともにベース部材32が概ね水平になる。これらと同期して、シャフト17及び回動プレート18も回動して中立位置に位置するため、HSTブレーキが作動して制動する。
【0051】
なお、ブレーキ手段6Bによって前後進レバー16を中立位置に戻したら、アクチュエータ30を作動させて出力軸30aを元の位置に伸ばすことで初期位置(図10の状態)に戻る。
【0052】
以上説明した本実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1によれば、ブレーキ手段6Bを備えているため、距離画像センサ(障害物検知装置)2の検知によって前後進レバー16を自動的に中立に戻してHSTブレーキを作動させることができ、簡易な構造でヒューマンエラーによる衝突事故を回避することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、リンクプレート31、第一リンク用ロッド33及び第二リンク用ロッド34を含めて構成されるリンク機構で、アクチュエータ30の出力軸30aとベース部材32とを連結しているため、簡易な構造とすることができる。また、既存の転圧ローラ10にもブレーキ手段6Bを取り付けることができる。
【0054】
また、第一ピン32a及び第二ピン32bが長孔33a,34aを移動可能になっているため、通常の前後進の操作がアクチュエータ30及びリンクプレート31に影響を及ぼさないようになっている。
【0055】
また、本実施形態では、ブレーキ手段6A,6Bの両方を備えているため、電磁バルブV1系統のブレーキと、アクチュエータ30系統のブレーキを両方作動させることができ、より確実に転圧ローラ10を制動させることができる。
なお、本実施形態では、ブレーキ手段6A,6Bを両方設けたが、ブレーキ手段6Aを設けない構成としてもよい。
【0056】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Aについて説明する。図11に示すように、第二実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Aでは、ブレーキ手段6Baが第一実施形態と相違する。第二実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0057】
ブレーキ手段6Baは、アクチュエータ30Aと、リンクプレート31Aと、ベース部材32と、第一リンク用ロッド33と、第二リンク用ロッド34と、ケーブル37と、を備えている。
【0058】
アクチュエータ30Aは、制御装置3からのブレーキ信号に基づいて、出力軸30Aaを作動させる装置である。リンクプレート31Aは、略三角形状を呈する板状部材である。リンクプレート31Aは、本体部31aと、固定支点部31bと、連結支点部31cと、連結支点部31dとを備えている。本体部31aは、ダッシュボード13の内部に配置される。
【0059】
固定支点部31bは、本体部31aの前端部に設けられ、前壁13aの後面にブラケットBKを介して回動可能に固定されている。連結支点部31cは、本体部31aの中央の下部に設けられ、ケーブル37とピン結合により連結されている。ケーブル37の一端は連結支点部31cに連結され、他端はアクチュエータ30Aの出力軸30Aaに連結されている。連結支点部31dは、本体部31aの後端に設けられ第一リンク用ロッド33及び第二リンク用ロッド34の下端とピン結合により連結されている。
【0060】
請求項における「アクチュエータの出力軸とベース部材とを連結する連結機構」とは、本実施形態では、リンクプレート31A、第一リンク用ロッド33及び第二リンク用ロッド34及びケーブル37を含めて構成されるリンク機構を意味している。
【0061】
例えば、後進中に距離画像センサ2によって障害物が検知されたとき、制御装置3は、ブレーキ信号を出力してアクチュエータ30Aを作動させる。アクチュエータ30Aの出力軸30aによりケーブル37が引っ張られると、固定支点部31bを中心にリンクプレート31Aの後端側が下側に回動する。これに伴い、第一リンク用ロッド33及び第二リンク用ロッド34が下側に引っ張られるため、第一ピン32a及び第二ピン32bがそれぞれ長孔33a,34aの上端に位置し、ベース部材32が所定の角度で回動するとともにベース部材32が概ね水平になる。これらと同期して、シャフト17及び回動プレート18も回動して中立位置に位置するため、HSTブレーキが作動して制動する。
【0062】
以上説明した第二実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Aによっても、第一実施形態と概ね同じ効果を奏することができる。また、ブレーキ手段6Baのアクチュエータ30Aは、転圧ローラ10内であればどこに設けてもよい。また、本実施形態のように、ケーブル37を介してリンクプレート31Aの回動を行ってもよい。ケーブル37を用いることで、アクチュエータ30Aの設置位置の自由度を高めることができる。
【0063】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態にかかる建設車両のブレーキ機構1Bについて説明する。図12に示すように、第三実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Bは、ブレーキ手段6Bbが第一実施形態と相違する。第三実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0064】
ブレーキ手段6Bbは、アクチュエータ30と、リンクプレート31と、ベース部材41と、係合治具42と、連結治具43と、を備えている。
【0065】
図12及び図13Aに示すように、ベース部材41は、シャフト17と同期して回動する板状部材である。ベース部材41は、シャフト17に貫通して垂直に固定されている。ベース部材41は、本体部41aと、第一切欠孔41bと、第二切欠孔41cとを備えている。第一切欠孔41bは、下方に向けて凸となるように略円弧状に形成されている。第二切欠孔41cは、第一切欠孔41bの中央の下部に第一切欠孔41bに連続して形成されている。第二切欠孔41cは下方に向けて凸となるように略半円状に形成されている。第一切欠孔41bは、第二切欠孔41cに対して十分大きな開口になっている。
【0066】
係合治具42は、ベース部材41と連結治具43とを連結する部材であって、本実施形態ではクレビスを用いている。係合治具42は、二股状の本体部42aと、本体部42aの先端部同士を繋ぐ接続具42bとを備えている。連結治具43は、係合治具42と、連結支点部31dとを連結する棒状部材である。係合治具42は、本体部42aと接続具42bとで形成された中空部に、ベース部材41の下部が回動可能に挿通するように配置されている。係合治具42は、常に起立しており,第一切欠孔41bの内部に接続具42bが位置している。
【0067】
ここで、シャフト17の軸心から直下に距離h離れた位置をセットバック中心C1とする。また、シャフト17の軸心から第一切欠孔41bの上縁41dまでの半径を半径r1とする。また、シャフト17の軸心から接続具42bの軸心までの半径を半径r2とする。また、セットバック中心C1から第一切欠孔41bの下縁41eまでの半径を半径r3とする。
【0068】
請求項における「アクチュエータの出力軸とベース部材とを連結する連結機構」とは、本実施形態では、リンクプレート31、係合治具42及び連結治具43で構成される機構を意味している。
【0069】
初期位置(前後進レバー16が中立位置)において、図13Aに示すように、接続具42bは、第一切欠孔41bの概ね中心に位置する。前後進レバー16を前進位置又は後進位置に切り替えると、それに伴ってシャフト17及びベース部材41がシャフト17周りに回動する。この時、第一切欠孔41bが形成されているため、ベース部材41と係合治具42とは干渉せず、ベース部材41の回動を許容するようになっている。
【0070】
一方、例えば、後進中に距離画像センサ2によって障害物Gが検知されたとき、制御装置3は、ブレーキ信号を出力してアクチュエータ30を駆動させる。アクチュエータ30の出力軸30aが引っ張られると、固定支点部31bを中心にリンクプレート31の後端側が下側に回動して係合治具42も下側に引っ張られる。これにより、傾いていたベース部材41は、接続具42bが第一切欠孔41bの下縁41eに摺動しつつ第二切欠孔41cに係合する。さらに、第二切欠孔41cが、係合治具42によって初期位置まで戻されることで、シャフト17及び回動プレート18が中立位置に位置する。これにより、HSTブレーキが作動して制動する。
【0071】
以上説明した第三実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Bによっても、第一実施形態と概ね同じ効果を奏することができる。また、本実施形態のようにベース部材41を用いても、ブレーキ手段6Bbのアクチュエータ30を作動させてシャフト17及び回動プレート18を中立位置に戻すことができる。
【0072】
ここで、図13B及び図13Cは、第三実施形態の変形例に係るベース部材の拡大側面図である。図13Bに示すように、第二切欠孔は省略してもよい。当該変形例では、第一切欠孔41bの下縁41eを係合治具42の接続具42bで引っ張ることで、傾いたベース部材41を中立位置へ戻すことができる。
【0073】
また、図13Cに示すように、第二切欠孔41cの形状は側面視三角形状としてもよい。図13A,13Cのように、第一切欠孔41bの最下縁よりも下方に延設された第二切欠孔41cを設けることで、係合治具42の接続具42bが係合し易くなるため、中立位置へ戻す力及び中立位置を維持する力(アクチュエータ30が作動している間)を大きくすることができる。
【0074】
なお、第二切欠孔41cは上記の形状に限定されるものではなく、接続具42bと係合又は離脱可能であれば他の形状であってもよい。
また、図13A~13Cの形態のように、半径r3のセットバック中心C1が、シャフト17の軸心に対して距離hだけずれていてもよいし、具体的な図示はしないが、半径r1,r2,r3が同心円(距離hがゼロ)であってもよい。
第一切欠孔41b(第二切欠孔41c)、半径r1,r2,r3は、前後進レバー16を傾倒させた際に、ベース部材41と係合治具42とが干渉せずにベース部材41の回動を許容しつつ、アクチュエータ30が作動した際に、係合治具42を引っ張ることで傾いたベース部材41を中立位置へ戻すことができように適宜設定すればよい。
【0075】
前記したように、半径r1,r2,r3が同心円(距離hがゼロ)であっても、第二切欠孔41cが必要十分に大きい場合は成立させることができる。必要十分に大きいとは、ベース部材41が回動して前側又は後側に最大傾倒角となる場合において、接続具42bが鉛直方向に引っ張られたとき、接続具42bが半径r3が描く円弧よりも下方(中心に対して外側)に位置するように、第一切欠孔41b及び第二切欠孔41cの大きさ、形状を決定すればよい。
【0076】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Cについて説明する。図14に示すように、第四実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Cでは、ブレーキ手段6Bcが第一実施形態と相違する。第四実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0077】
前記したように、オービットロール14aは、油圧回路(図示省略)に連結される配管14bを備えている。また、本実施形態では、配管14bに、分岐管14c及びバイパス配管14dを備えている。分岐管14c及びバイパス配管14dは、配管14bとアクチュエータ30とを連結している。これにより、油圧シリンダであるアクチュエータ30は、既存の配管14bを利用して、アクチュエータ30に作動油を供給することができる。これにより、本実施形態によれば、油圧回路を容易に構成することができる。
【0078】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Dについて説明する。図15に示すように、第五実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Dでは、ブレーキ手段6Bdが第一実施形態と相違する。第五実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0079】
ブレーキ手段6Bdは、アクチュエータ30と、リンクプレート31Dと、ベース部材32と、第一リンク用ロッド33と、第二リンク用ロッド34と、ブレーキペダル用ロッド51と、を備えている。ブレーキ手段6Bdは、アクチュエータ30を作動させた際に、ベース部材32を回動させるとともに、ブレーキペダル15Dも連動して回動させるというものである。
【0080】
ブレーキペダル用ロッド51の前端は、リンクプレート31Dの連結支点部31eにピン結合により連結されている。ブレーキペダル用ロッド51の後端側には、長孔51aが形成されている。ブレーキペダル15Dの本体プレート15aには、係合ピン15eが垂直に設けられている。係合ピン15eは、長孔51aに遊嵌されている。連結支点部31eは、係合ピン15eよりも前側の下方に位置している。ブレーキペダル15Dの後端は、ダッシュボード13の後壁13bに形成された開口13eから外部に露出している。
【0081】
オペレーターが、ブレーキペダル15Dを踏み込むと、第一実施形態と同じように、ベースプレート22(図7参照)が中立位置(水平)に戻ってHSTブレーキが作動して制動することができる。この時、ブレーキペダル15Dの係合ピン15eは、長孔51a内において前方に移動するため、ブレーキペダル15Dの踏み込みによって、リンクプレート31Dは回動しない。
【0082】
一方、例えば、後進中に距離画像センサ2によって障害物が検知されたとき、制御装置3は、ブレーキ信号を出力してアクチュエータ30を作動させる。これにより、第一実施形態と同じ動作でベース部材32が概ね水平になる。これらと同期して、シャフト17及び回動プレート18も回動して中立位置に位置するため、HSTブレーキが作動して制動する。また、リンクプレート31Dが、固定支点部31bを中心に時計回りに回動するため、ブレーキペダル用ロッド51が前側斜め下方に引っ張られるとともに、ブレーキペダル用ロッド51によってブレーキペダル15Dが作動方向に回動する。
【0083】
これにより、アクチュエータ30の作動により、ブレーキペダル15系統でもHSTブレーキが作動して制動させることができる。第五実施形態によれば、1つのアクチュエータ30で、リンクプレート31Dを含んだリンク機構と、ブレーキペダル15Dとを連動させることができるため、2つの系統でHSTブレーキが作動してより確実に制動させることができる。
【0084】
[第六実施形態]
次に、本発明の第六実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Eについて説明する。図16に示すように、第六実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Eは、第二実施形態の変形例である。第六実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Eでは、ブレーキ手段6Beが第二実施形態と相違する。第六実施形態では、第二実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0085】
ブレーキ手段6Beは、アクチュエータ30Aと、リンクプレート31Eと、ベース部材32と、第一リンク用ロッド33と、第二リンク用ロッド34と、ケーブル37と、ブレーキペダル用ロッド51と、を備えている。ブレーキ手段6Beは、アクチュエータ30Aを作動させた際に、ベース部材32を回動させるとともに、ブレーキペダル15Eも連動して回動させるというものである。
【0086】
リンクプレート31Eは、本体部31aと、固定支点部31bと、連結支点部31cと、連結支点部31dと、連結支点部31eとを備えている。固定支点部31bは、本体部31aの前側に設けられ、前壁13aの後面にブラケットBKを介して回動可能に固定されている。
【0087】
連結支点部31cは、固定支点部31bよりも前方に突出しており、前壁13aの開口13dから前方に突出している。連結支点部31cは、ケーブル37の端部とピン結合により連結されている。
【0088】
連結支点部31dは、本体部31aの上部に設けられ、第一リンク用ロッド33及び第二リンク用ロッド34の下端とピン結合により連結されている。連結支点部31eは、ブレーキペダル用ロッド51の前端がピン結合により連結されている。ブレーキペダル用ロッド51の後端側には、長孔51aが形成されている。ブレーキペダル15Eに形成された係合ピン15eは、長孔51aに遊嵌されている。連結支点部31eは、係合ピン15eよりも前側の下方に位置している。ブレーキペダル15Eの後端は、ダッシュボード13の後壁13bに形成された開口13eから外部に露出している。
【0089】
オペレーターが、ブレーキペダル15Eを踏み込むと、第一実施形態と同じように、ベースプレート22(図7参照)が中立位置(水平)に戻ってHSTブレーキが作動して制動することができる。この時、ブレーキペダル15Eの係合ピン15eは、長孔51a内において前方に移動するため、ブレーキペダル15Eの踏み込みによって、リンクプレート31Eは回動しない。
【0090】
一方、例えば、後進中に距離画像センサ2によって障害物が検知されたとき、制御装置3は、ブレーキ信号を出力してアクチュエータ30Aを作動させる。これにより、第一実施形態と同じ動作でベース部材32が概ね水平になる。これらと同期して、シャフト17及び回動プレート18も回動して中立位置に位置するため、HSTブレーキが作動して制動する。また、リンクプレート31Eが、ケーブル37によって押されるため、固定支点部31bを中心に時計回りに回動する。これにより、ブレーキペダル用ロッド51が前側斜め下方に引っ張られるため、ブレーキペダル15Eが作動方向に回動する。
【0091】
つまり、アクチュエータ30Aの作動により、ブレーキペダル15E系統でもHSTブレーキが作動して制動させることができる。第六実施形態によれば、1つのアクチュエータ30Aで、リンクプレート31Eを含んだリンク機構と、ブレーキペダル15Eとを連動させることができるため、2つの系統でHSTブレーキが作動してより確実に制動させることができる。
【0092】
[第七実施形態]
次に、本発明の第七実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Fについて説明する。図17に示すように、第七実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Fでは、ブレーキ手段6Bfが第一実施形態と相違する。第七実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0093】
ブレーキ手段6Bfは、図17及び図18に示すように、回動プレート18Aと、連結プレート61と、第二ケーブル62と、アクチュエータ30Aと、を備えている。
【0094】
回動プレート18Aは、略三角形状を呈する板状部材である。回動プレート18Aの前部には、回動プレート18Aと同期して回動するシャフト17が貫通して垂直に固定されている。回動プレート18Aは、本体部18aと、連結支点部18bと、連結支点部(連結ピン)18cとを備えている。シャフト17の軸心、連結支点部18b及び連結支点部18cは、本体部18aの三角形の各角部近傍に設けられている。連結支点部18bは、本体部18aの下部に設けられ、第一ケーブル19の端部がピン結合により連結される部位である。
【0095】
連結支点部(連結ピン)18cは、本体部18aの上部に設けられ、連結プレート61がピン結合により連結される部位である。連結プレート61は、矩形の板状部材であって、回動プレート18Aと第二ケーブル62とを連結する部材である。連結プレート61には長孔61aが形成されている。第二ケーブル62は、一端部に可動ピン63が設けられており、他端部はアクチュエータ30Aに接続されている。可動ピン63は、長孔61aに遊嵌されている。
【0096】
図19は、図18において前後進レバーを前進方向に最も傾倒させた場合を示す作用図である。図19に示すように、オペレーターが前後進レバー16を前進方向に傾倒させると、シャフト17を中心に回動プレート18Aが反時計回りに回動する。これにより、第一ケーブル19が引っ張られ、走行用ポンプPの前後進切替レバー(図示省略)が前進位置に回動する。この時、連結支点部18cを中心に回動プレート18Aと連結プレート61とが相対的に回動するとともに、可動ピン63が長孔61a内を移動する。
【0097】
図20は、図18において前後進レバーを後進方向に最も傾倒させた場合を示す作用図である。図19に示すように、オペレーターが前後進レバー16を後進方向に傾倒させると、シャフト17を中心に回動プレート18Aが時計回りに回動する。これにより、第一ケーブル19が押され、走行用ポンプPの前後進切替レバー(図示省略)が後進位置に回動する。この時、連結支点部18cを中心に回動プレート18Aと連結プレート61とが相対的に回動するとともに、可動ピン63が長孔61a内を移動する。
【0098】
つまり、前後進レバー16を前進方向又は後進方向に傾倒させても、連結プレート61及び長孔61aが形成されているため、アクチュエータ30Aに負荷はかからない。
【0099】
一方、例えば、後進中に距離画像センサ2によって障害物が検知されたとき、制御装置3は、ブレーキ信号を出力してアクチュエータ30Aを作動させる。図21に示すように、アクチュエータ30Aによって第二ケーブル62が引っ張られると、可動ピン63が長孔61aの端部まで移動しつつ、さらに第二ケーブル62に引っ張られることで回動プレート18Aがシャフト17を中心に回動し、中立位置に戻る。これにより、HSTブレーキが作動して制動する。
【0100】
以上説明した本実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Fによれば、ブレーキ手段6Bfを備えているため、距離画像センサ(障害物検知装置)2の検知によって前後進レバー16を自動的に中立に戻してHSTブレーキを作動させることができ、簡易な構造でヒューマンエラーによる衝突事故を回避することができる。
【0101】
また、連結プレート61は、回動プレート18Aに対して回動可能に連結する連結支点部(連結ピン)18cと、第二ケーブル62の可動ピン63が摺動する長孔61aと、を備えているため、簡易な構成で回動プレート18Aと第二ケーブル62とを連結することができる。
【0102】
なお、長孔61aのうち、第二ケーブル62側の端部を局所的に細孔としてもよい。これにより、可動ピン63が長孔61aの細孔にガイドされて端部に移動し易くなりブレーキの反応性を高めることができる。
【0103】
[第八実施形態]
次に、本発明の第八実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Gについて説明する。図22に示すように、第八実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Gでは、ブレーキ手段6Bgが第一実施形態と相違する。第八実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0104】
ブレーキ手段6Bgは、図22及び図23に示すように、アクチュエータ30と、リンクプレート31と、ベース部材32と、第一リンク用ロッド33と、第二リンク用ロッド34と、を備えている。アクチュエータ30系統のブレーキ手段については、第一実施形態と同じである。
【0105】
また、ブレーキ手段6Bgは、回動プレート18Aと、連結プレート61と、第二ケーブル62と、アクチュエータ30Aと、を備えている。図22に示すように、アクチュエータ30A系統のブレーキ手段については第七実施形態と同じである。
【0106】
本実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Gによれば、例えば、後進中に距離画像センサ2によって障害物Gが検知されたとき、制御装置3は、ブレーキ信号を出力してアクチュエータ30及びアクチュエータ30Aの両方を作動させる。これにより、アクチュエータ30系統及びアクチュエータ30A系統の両方の機構によりHSTブレーキをより確実に作動させることができる。
【0107】
[第九実施形態]
次に、第九実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Hについて説明する。図24及び図25に示すように、第九実施形態に係るブレーキ機構1Hは、ブレーキ手段6Bhを備えるものであって、第七実施形態にブレーキペダル15(第三ケーブル65)系統によるブレーキを付加したものである。第九実施形態では、第七実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0108】
ブレーキ手段6Bhは、回動プレート18Aと、連結プレート61と、第二ケーブル62と、アクチュエータ30Aと、を備えている。第二ケーブル62系統のブレーキ機構は第七実施形態と同じである。
【0109】
また、ブレーキ手段6Bhは、図24及び図25に示すように、第三ケーブル65と、回動プレート71と、ブレーキペダル用ロッド51とを備えている。ブレーキ手段6Bhは、アクチュエータ30Aに基づいて、第二ケーブル62系統と、第三ケーブル65系統との両方でHSTブレーキを作動させるものである。
【0110】
第三ケーブル65は、アクチュエータ30Aと回動プレート71とを連結するケーブルである。回動プレート71は、略三角形状を呈する板状部材である。回動プレート71は、本体部71aと、固定支点部71bと、連結支点部71cと、連結支点部71dとを備えている。固定支点部71bと、連結支点部71c及び連結支点部71dは、本体部71aの三角形の各角部近傍に設けられている。固定支点部71bは、車両の一部に接続されたブラケットBKを介して回動可能に固定される部位である。
【0111】
連結支点部71cは、第三ケーブル65の端部がピン結合により連結される部位である。連結支点部71dは、ブレーキペダル用ロッド51の前端部がピン結合により連結される部位である。ブレーキペダル用ロッド51の後端部は、長孔51aを介してブレーキペダル15の係合ピン15eに遊嵌されている。
【0112】
第一実施形態と同じように、ブレーキペダル15の踏み込みによってシャフト17及び回動プレート18Aが中立位置に戻るため、HSTブレーキが作動して制動する。この時、ブレーキペダル15には、長孔51aが設けられているため、長孔51a内を係合ピン15eが移動する。つまり、ブレーキペダル15の踏み込みによって回動プレート71は回動しない。
【0113】
一方、例えば、後進中に距離画像センサ2によって障害物Gが検知されたとき、制御装置3は、ブレーキ信号を出力してアクチュエータ30Aを駆動させる。第二ケーブル62系統のブレーキ動作については第七実施形態と同じである。また、アクチュエータ30Aの駆動により、出力軸30Aaが引っ張られると、第三ケーブル65を介して回動プレート71が、固定支点部71bを中心に時計回りに回動する。
【0114】
これにより、ブレーキペダル用ロッド51が前側斜め下方に引っ張られるため、ブレーキペダル15の作動方向にブレーキペダル15が回動する。これにより、ブレーキペダル15系統のブレーキ機構も作動し、HSTブレーキが作動する。
【0115】
以上説明した第九実施形態によれば、1つのアクチュエータ30Aで、第二ケーブル62系統と、第三ケーブル65(ブレーキペダル15)系統を両方作動させることができるため、より確実に制動させることができる。
【0116】
[第十実施形態]
次に、第十実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Jについて説明する。まずは、従来の前後進レバー及び前後進切替レバーについて説明する。図26は、従来の前後進レバーと前後進切替レバーとの関係を示す概略図である。図26に示すように、従来の走行用ポンプP(図9も参照)は、矩形板状の前後進切替レバー80を備えている。前後進切替レバー80は、走行用ポンプPの圧油(作動油)の流通方向を切り替えるレバーである。
【0117】
前後進切替レバー80は、端部に設けられた固定支点部80aと、中央部に設けられた連結支点部80bとを備えている。連結支点部80bは、第一ケーブル19にピン支持により連結されている。第一ケーブル19は、前後進切替レバー80の連結支点部80bと、回動プレート18の連結支点部18bとを連結している。前後進切替レバー80は、第一ケーブル19の押し引きにより、固定支点部80aを中心に回動可能になっている。より詳しくは、前後進切替レバー80は、中立位置(例えば、12時の位置)から時計回り及び反時計回りに所定の角度で回動可能になっている。
【0118】
オペレーターが、前後進レバー16を前方に傾倒させると(前進)、第一ケーブル19が引っ張られ、前後進切替レバー80は固定支点部80aを中心に時計回りに回動する。これにより、走行用ポンプPの圧油が一方側に流通する。
【0119】
オペレーターが、前後進レバー16を後方に傾倒させると(後進)、第一ケーブル19が押され、前後進切替レバー80は固定支点部80aを中心に反時計回りに回動する。これにより、走行用ポンプPの圧油が他方側に流通する。
【0120】
オペレーターが、前後進レバー16を中立位置に戻すと、前後進切替レバー80も中立位置に位置する。これにより、図9に示すように、油路T1と油路T2との間で差圧が生じなくなり、斜板はニュートラル位置に位置し、閉回路U1においてHST(Hydro Static Transmission)ブレーキが作用する。
【0121】
図27は、本発明の第十実施形態に係る建設車両のブレーキ機構の概略図である。図27に示すように、第十実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Jでは、ブレーキ手段6Biが第一実施形態と相違する。第十実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0122】
ブレーキ手段6Biは、前後進切替レバー81と、第二ケーブル82と、アクチュエータ30Aとを備えている。前後進切替レバー81は、走行用ポンプPの圧油の流通方向を切り替えるレバーである。前後進切替レバー81は、連結支点部81fを介して第一ケーブル19に連結されている。連結支点部81fと固定支点部81gとは所定の距離で離間している。前後進切替レバー81は、第一ケーブル19の押し引きにより、固定支点部81gを中心に、所定の角度で回動可能になっている。
【0123】
前後進切替レバー81は、本体部81aと、第一切欠孔81bと、第二切欠孔81cとを備えている。第一切欠孔81bは、図面上方(第一切欠孔81bに対して連結支点部81fとは反対側)に向けて凸となるように略円弧状に形成されている。第二切欠孔81cは、第一切欠孔81bの中央に第一切欠孔81bに連続して形成されている。第二切欠孔81cは図面上方(回動中心となる固定支点部81gから離間する側)に向けて凸となるように略半円状に形成されている。第一切欠孔81bは、第二切欠孔81cに対して十分大きな開口になっている。
【0124】
第二ケーブル82の端部には、係合治具42が形成されている。係合治具42は、前後進切替レバー81と第二ケーブル82とを連結する部材であって、本実施形態ではクレビスを用いている。係合治具42は、第三実施形態と同様の部材を用いている。
【0125】
ここで、固定支点部81gの軸心から図面上方(第一切欠孔81bに対して固定支点部81gとは反対側)に距離h1離れた位置をセットバック中心C2とする。また、固定支点部81gの軸心から第一切欠孔81bの内縁81dまでの半径を半径r1とする。また、固定支点部81gの軸心から接続具42bの軸心までの半径を半径r2とする。また、セットバック中心C2から第一切欠孔81bの外縁81eまでの半径を半径r3とする。
【0126】
初期位置(前後進レバー16及び前後進切替レバー81が中立位置)において、図27に示すように、係合治具42の接続具(可動ピン)42bは、第一切欠孔81bの概ね中心に位置する。前後進レバー16を前進位置又は後進位置に切り替えると、それに伴って第一ケーブル19が押し引きされ、固定支点部81gを中心に前後進切替レバー81が回動する。この時、第一切欠孔81bが形成されているため、前後進切替レバー81と係合治具42とは干渉せず、前後進切替レバー81の回動を許容するようになっている。
【0127】
一方、例えば、後進中に距離画像センサ2によって障害物Gが検知されたとき、制御装置3は、ブレーキ信号を出力してアクチュエータ30Aを駆動させる。アクチュエータ30Aの出力軸30Aaが引っ張られると、第二ケーブル82も図面上方(係合治具42に対して連結支点部81fとは反対側)に引っ張られる。これにより、傾いていた前後進切替レバー81は、接続具42bが第一切欠孔81bの外縁81eに摺動しつつ第二切欠孔81cに係合する。さらに、第二切欠孔81cが、係合治具42によって引っ張られ、前後進切替レバー81が中立位置に位置する。これにより、閉回路U1(図9参照)においてHST(Hydro Static Transmission)ブレーキが作用する。
【0128】
なお、検知によってアクチュエータ30Aが作動すると、前後進切替レバー81によって第一ケーブル19が押され又は引かれるため、回動プレート18及び前後進レバー16も中立位置に戻される。また、アクチュエータ30Aの出力軸30Aaを元の位置に戻すと、第二ケーブル82が押されて係合治具42の接続具42bも元の位置に戻る。
【0129】
以上説明した第十実施形態によれば、オペレーターの操作によらずとも、距離画像センサ(障害物検知装置)2の検知によって前後進切替レバー81を中立位置に戻すことができる。これにより、HSTブレーキが作動するため、簡易な構造でヒューマンエラーによる衝突事故を回避することができる。
【0130】
また、前後進切替レバー81の形状は適宜設定すればよいが、本実施形態のように、第一切欠孔81bに連続する第二切欠孔81cを有することが好ましい。アクチュエータ30Aが作動した際に、第二切欠孔81c内に係合した第二ケーブル82を引くことで、前後進切替レバー81の傾きを確実に中立に戻すことができる。つまり、第二切欠孔81cを設けることで第二ケーブル82と第二切欠孔81cとが好適に係合してより確実にブレーキを作動させることができる。
【0131】
ここで、図28及び図29は、第十実施形態の変形例に係る前後進切替レバーの拡大図である。図28に示すように、第二切欠孔81cは省略してもよい。当該変形例では、第一切欠孔81bの外縁81eを係合治具42の接続具42bで引っ張ることで、傾いた前後進切替レバー81を中立位置へ戻すことができる。
【0132】
また、図29に示すように、第二切欠孔81cの形状は三角形状としてもよい。図27及び図29のように、第一切欠孔81bの外縁81eよりもより外側に延設された第二切欠孔81cを設けることで、係合治具42の接続具42bが係合し易くなるため、中立位置へ戻す力及び中立位置を維持する力(アクチュエータ30Aが作動している間)を大きくすることができる。
【0133】
なお、第二切欠孔81cは上記の形状に限定されるものではなく、接続具42bと係合又は離脱可能であれば他の形状であってもよい。また、本実施形態では、前後進切替レバー81は、一の部材で構成したが、複数部材で構成してもよい。例えば、図26の既存の前後進切替レバー80に、板状部材を接続して前後進切替レバー81となるように形成してもよい。これにより、既存の製品を利用して、容易に改修することができる。
【0134】
また、図27~29の形態のように、半径r3のセットバック中心C2が、固定支点部81gの軸心に対して距離h1だけずれていてもよいし、具体的な図示はしないが、半径r1,r2,r3が同心円(距離h1がゼロ)であってもよい。
第一切欠孔81b(第二切欠孔81c)、半径r1,r2,r3は、前後進レバー16を傾倒させた際に、前後進切替レバー81と係合治具42とが干渉せずに前後進切替レバー81の回動を許容しつつ、アクチュエータ30Aが作動した際に、係合治具42を引っ張ることで傾いた前後進切替レバー81を中立位置へ戻すことができように適宜設定すればよい。
【0135】
前記したように、半径r1,r2,r3が同心円(距離h1がゼロ)であっても、第二切欠孔81cが必要十分に大きい場合は成立させることができる。必要十分に大きいとは、前後進切替レバー81が回動して一方側又は他方側に最大傾倒角となる場合において、接続具42bが引っ張られたとき、接続具42bが、半径r3が描く円弧よりも中心に対して外側に位置するように、第一切欠孔81b及び第二切欠孔81cの大きさ、形状を決定すればよい。
【0136】
[第十一実施形態]
次に、本発明の第十一実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Kについて説明する。図30に示すように、第十一実施形態に係る建設車両のブレーキ機構1Kでは、ブレーキ手段6Bjが第一実施形態と相違する。第十一実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0137】
ブレーキ手段6Bjは、前後進切替レバー90と、第二ケーブル82と、アクチュエータ30Aとを備えている。前後進切替レバー90は、いずれも板状の第一部材91及び第二部材92を備えている。第一部材91は、固定支点部93と、連結支点部94と、を備えている。固定支点部93は、一端側に形成され、回動中心となる支点である。連結支点部94は、固定支点部93と離間して配置されている。連結支点部94には、第一ケーブル19がピン支持により連結されている。第一部材91の他端と、第二部材92の一端とは連結支点部95により相対回動可能に連結されている。
【0138】
第二ケーブル82の端部には、係合治具42が形成されている。第二部材92には長孔92aが形成されており、当該長孔92aに係合治具42が係合されている。係合治具42は、第二部材92と第二ケーブル82とを連結する部材であって、本実施形態ではクレビスを用いている。接続具(可動ピン)42bは、長孔92a内を移動可能に連結されている。係合治具42は、第三実施形態と同様の部材を用いている。
【0139】
前後進切替レバー90が中立位置にある時、第一部材91及び第二部材92は、例えば、いずれも12時の位置に位置している。
【0140】
初期位置(前後進レバー16及び前後進切替レバー90が中立位置)において、図30に示すように、係合治具42の接続具42bは、長孔92a概ね中心に位置する。前後進レバー16を前進位置に切り替えると、図31に示すように、それに伴って第一ケーブル19が引っ張られ、固定支点部93を中心に第一部材91が時計回りに回動する。この時、第一部材91に引っ張られて第二部材92も斜めに傾斜するが、接続具42bが長孔92a内を摺動するため、第二ケーブル82に影響は無い。
【0141】
一方、例えば、前後進レバー16を後進位置に切り替えると、図32に示すように、それに伴って第一ケーブル19が第一部材91を押し、固定支点部93を中心に第一部材91が反時計回りに回動する。この時、第一部材91に引っ張られて第二部材92も斜めに傾斜するが、接続具42bが長孔92a内を摺動するため、第二ケーブル82に影響は無い。
【0142】
一方、例えば、後進中に距離画像センサ2によって障害物Gが検知されたとき、制御装置3は、ブレーキ信号を出力してアクチュエータ30Aを駆動させる。アクチュエータ30Aの出力軸30Aaが引っ張られると、図33に示すように、第二ケーブル82も図面上方(第一部材91から第二部材92が離間する方向)に引っ張られる。これにより、傾いていた第一部材91及び第二部材92が係合治具42によって引っ張られ、前後進切替レバー90が中立位置に戻される。これにより、閉回路U1(図9参照)においてHST(Hydro Static Transmission)ブレーキが作用する。
【0143】
なお、検知によってアクチュエータ30Aが作動すると、第一部材91によって第一ケーブル19が押され又は引かれるため、回動プレート18及び前後進レバー16も中立位置に戻される。また、アクチュエータ30Aの出力軸30Aaを元の位置に戻すと、第二ケーブル82が押されて係合治具42の接続具42bも元の位置に戻る。
【0144】
以上説明した第十一実施形態によれば、オペレーターの操作によらずとも、距離画像センサ(障害物検知装置)2の検知によって前後進切替レバー90を中立位置に戻すことができる。これにより、HSTブレーキが作動するため、簡易な構造でヒューマンエラーによる衝突事故を回避することができる。
【0145】
また、前後進切替レバー90は、適宜設定すればよいが、本実施形態のように第一部材91及び第二部材92で簡易に構成することができる。例えば、図26の既存の前後進切替レバー80を第一部材91として利用し、当該第一部材91に第二部材92を連結してもよい。これにより、既存の製品を利用して、容易に改修することができる。
【0146】
以上本発明の実施形態及び変形例について説明したが、適宜設計変更が可能である。一の実施形態を他の実施形態又は変形例と組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0147】
1 建設車両のブレーキ機構
2 距離画像センサ(障害物検知装置)
3 制御装置(制御部)
4 検知範囲
6,6A,6B ブレーキ手段
7 車速センサ
10 転圧ローラ(建設車両)
15 ブレーキペダル
16 前後進レバー
17 シャフト
19 第一ケーブル
22 ベースプレート
30 アクチュエータ
30A アクチュエータ
32 ベース部材
62 第二ケーブル
65 第三ケーブル
81 前後進切替レバー
81b 第一切欠孔
81c 第二切欠孔
82 第二ケーブル
90 前後進切替レバー
91 第一部材
92 第二部材
92a 長孔
G 障害物
P 走行用ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図13A
図13B
図13C
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図16
図17
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図25
図26
図27
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図32
図33