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特開2022-169872食肉用または魚介類肉用の品質改良剤、品質改良用浸漬液、食肉または魚介類肉、および、食肉または魚介類肉の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169872
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】食肉用または魚介類肉用の品質改良剤、品質改良用浸漬液、食肉または魚介類肉、および、食肉または魚介類肉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/00 20160101AFI20221102BHJP
【FI】
A23L13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075560
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】506009453
【氏名又は名称】オルガノフードテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯村 遼
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC05
4B042AC10
4B042AD39
4B042AG07
4B042AG12
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK04
4B042AK11
4B042AP07
(57)【要約】
【課題】アレルゲンフリーであり、食肉または魚介類肉の加熱処理後の食感および加熱歩留まりを改良することができる食肉用または魚介類肉用の品質改良剤を提供する。
【解決手段】70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含み、有機酸塩は、クエン酸塩を含む、食肉用または魚介類肉用の品質改良剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含み、
前記有機酸塩は、クエン酸塩を含むことを特徴とする食肉用または魚介類肉用の品質改良剤。
【請求項2】
請求項1に記載の食肉用または魚介類肉用の品質改良剤であって、
前記有機酸塩は、さらに酒石酸塩を含み、前記クエン酸塩と前記酒石酸塩の質量基準での配合比は、クエン酸塩:酒石酸塩=70:30~95:5の範囲であることを特徴とする食肉用または魚介類肉用の品質改良剤。
【請求項3】
70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含み、前記有機酸塩は、クエン酸塩を含む、食肉用または魚介類肉用の品質改良剤と、
水と、
を含有することを特徴とする食肉用または魚介類肉用の品質改良用浸漬液。
【請求項4】
請求項3に記載の食肉用または魚介類肉用の品質改良用浸漬液であって、
前記有機酸塩は、さらに酒石酸塩を含み、前記クエン酸塩と前記酒石酸塩の質量基準での配合比は、クエン酸塩:酒石酸塩=70:30~95:5の範囲であることを特徴とする食肉用または魚介類肉用の品質改良用浸漬液。
【請求項5】
70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含み、前記有機酸塩は、クエン酸塩を含む、食肉用または魚介類肉用の品質改良剤を含むことを特徴とする食肉および魚介類肉。
【請求項6】
請求項5に記載の食肉および魚介類肉であって、
前記有機酸塩は、さらに酒石酸塩を含み、前記クエン酸塩と前記酒石酸塩の質量基準での配合比は、クエン酸塩:酒石酸塩=70:30~95:5の範囲であることを特徴とする食肉および魚介類肉。
【請求項7】
70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含み、前記有機酸塩は、クエン酸塩を含む、食肉用または魚介類肉用の品質改良剤を用いて、食肉または魚介類肉の品質改良を行うことを特徴とする食肉または魚介類肉の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の食肉または魚介類肉の製造方法であって、
前記有機酸塩は、さらに酒石酸塩を含み、前記クエン酸塩と前記酒石酸塩の質量基準での配合比は、クエン酸塩:酒石酸塩=70:30~95:5の範囲であることを特徴とする食肉または魚介類肉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉用または魚介類肉用の品質改良剤、その品質改良剤を含む品質改良用浸漬液、食肉または魚介類肉、および、食肉または魚介類肉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハムやソーセージ等の食肉加工食品の製造において、加熱処理後の食感改良や加熱歩留まり向上等の品質改良を目的としてリン酸塩を使用することは広く知られている。リン酸塩を用いた塩漬処理を経た食肉材料を加熱処理することによって、ハムやソーセージ等に必要とされる硬さとしなやかさを得ることができる。
【0003】
昨今、リン酸塩の使用が敬遠されるようになってきており、リン酸塩以外のものを用いる品質改良が求められてきている。
【0004】
例えば、特許文献1には、リン酸塩の代わりに有機酸塩と乳清ミネラルからなる有効成分を含む食肉加工用の塩漬剤製剤が記載されている。
【0005】
しかし、乳清ミネラルは乳由来であり、表示義務のあるアレルゲン7品目のうちの1つである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5923249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、アレルゲンフリーであり、食肉または魚介類肉の加熱処理後の食感および加熱歩留まりを改良することができる食肉用または魚介類肉用の品質改良剤、その品質改良剤を含む品質改良用浸漬液、食肉または魚介類肉、および、食肉または魚介類肉の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含み、前記有機酸塩は、クエン酸塩を含む、食肉用または魚介類肉用の品質改良剤である。
【0009】
前記食肉用または魚介類肉用の品質改良剤において、前記有機酸塩は、さらに酒石酸塩を含み、前記クエン酸塩と前記酒石酸塩の質量基準での配合比は、クエン酸塩:酒石酸塩=70:30~95:5の範囲であることが好ましい。
【0010】
本発明は、70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含み、前記有機酸塩は、クエン酸塩を含む、食肉用または魚介類肉用の品質改良剤と;水と;を含有する、食肉用または魚介類肉用の品質改良用浸漬液である。
【0011】
前記食肉用または魚介類肉用の品質改良用浸漬液において、前記有機酸塩は、さらに酒石酸塩を含み、前記クエン酸塩と前記酒石酸塩の質量基準での配合比は、クエン酸塩:酒石酸塩=70:30~95:5の範囲であることが好ましい。
【0012】
本発明は、70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含み、前記有機酸塩は、クエン酸塩を含む、食肉用または魚介類肉用の品質改良剤を含む、食肉および魚介類肉である。
【0013】
前記食肉および魚介類肉において、前記有機酸塩は、さらに酒石酸塩を含み、前記クエン酸塩と前記酒石酸塩の質量基準での配合比は、クエン酸塩:酒石酸塩=70:30~95:5の範囲であることが好ましい。
【0014】
本発明は、70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含み、前記有機酸塩は、クエン酸塩を含む、食肉用または魚介類肉用の品質改良剤を用いて、食肉または魚介類肉の品質改良を行う、食肉または魚介類肉の製造方法である。
【0015】
前記食肉または魚介類肉の製造方法において、前記有機酸塩は、さらに酒石酸塩を含み、前記クエン酸塩と前記酒石酸塩の質量基準での配合比は、クエン酸塩:酒石酸塩=70:30~95:5の範囲であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、アレルゲンフリーであり、食肉または魚介類肉の加熱処理後の食感および加熱歩留まりを改良することができる食肉用または魚介類肉用の品質改良剤、その品質改良剤を含む品質改良用浸漬液、食肉または魚介類肉、および、食肉または魚介類肉の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<食肉用または魚介類肉用の品質改良剤>
本発明の実施の形態に係る食肉用または魚介類肉用の品質改良剤は、有機酸塩と、海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含む組成物である。本実施形態に係る食肉用または魚介類肉用の品質改良剤は、70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含み、前記有機酸塩は、クエン酸塩を含む組成物である。
【0019】
本発明者らは、乳清ミネラル(例えば、Ca含有量24質量%以上)の代替として、同じくカルシウムを含む食品素材であり、アレルゲンフリーである海藻粉末やドロマイトを用いて検討した。そして、70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含み、有機酸塩は、クエン酸塩を含む、食肉用または魚介類肉用の品質改良剤が、アレルゲンフリーであり、食肉または魚介類肉の加熱処理後の食感および加熱歩留まりを改良することができることを見出した。
【0020】
アレルゲンフリーのミネラル高含有食品素材である海藻粉末やドロマイトと有機酸塩とを併用することによって、有機酸塩と乳清ミネラルを用いる場合と同等以上の、食肉または魚介類肉の加熱処理後の食感改良や加熱歩留まり向上等を達成することができる。これは、有機酸塩が海藻粉末やドロマイト中のミネラル成分の溶解を促進して塩漬用液のpHを高pH側にシフトする。これによって、アルカリ性の塩漬用液による塩漬効果を得ることができる。このpHのシフトは、有機酸塩が海藻粉末やドロマイトのキレート剤として作用して、カルシウム等の水に対する溶解度の低い塩を形成する成分の塩漬用液中への溶解を促進していることによるものと考えられる。この塩漬用液で浸漬処理することによって、保水性が高まり、肉または魚介類肉の加熱処理後の食感および加熱歩留まりが改良されると考えられる。
【0021】
海藻粉末は、石化した海藻を粉末にしたものである。海藻粉末のカルシウム(Ca)含有量は、例えば、Ca含有量30質量%以上である。
【0022】
ドロマイト(dolomite)は、CaMg(COで表され、鉱物である苦灰石(別名、白雲石)、または岩石である苦灰岩とも呼ばれる。ドロマイトのカルシウム(Ca)含有量は、例えば、20質量%以上である。
【0023】
有機酸塩は、クエン酸塩を含む。クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等が挙げられる。有機酸塩は、酒石酸塩をさらに含むことが好ましい。酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等が挙げられる。有機酸塩として、クエン酸塩、酒石酸塩の他に、リンゴ酸塩、グルコン酸塩等を含んでもよい。
【0024】
品質改良剤中の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つの含有量は、5~30質量%の範囲であり、15~30質量%の範囲であることが好ましい。海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つの含有量が5質量%未満であると、品質改良効果が不十分となる場合があり、30質量%を超えると、海藻粉末およびドロマイトのざらつきが残る場合がある。
【0025】
品質改良剤中の有機酸塩の含有量は、70~95質量%の範囲であり、70~85質量%の範囲であることが好ましい。有機酸塩の含有量がこの範囲外となると、品質改良効果が不十分となる場合がある。
【0026】
有機酸塩がクエン酸塩および酒石酸塩を含む場合、クエン酸塩と酒石酸塩の質量基準での配合比は、クエン酸塩:酒石酸塩=70:30~95:5の範囲であることが好ましく、85:15~95:5の範囲であることがより好ましい。
【0027】
本実施形態に係る品質改良剤は、有機酸塩、海藻粉末、ドロマイトの他に、食塩、澱粉分解物、グルタミン酸ナトリウム等の他の成分を含んでもよいし、有機酸塩、海藻粉末、ドロマイトの他に、他の成分を含まなくてもよい。すなわち、本実施形態に係る品質改良剤は、70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、からなってもよい。なお、品質改良剤が70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、からなる場合、有機酸塩、海藻粉末、ドロマイトの他に、例えば10質量%以下の不純物等を含んでもよい。
【0028】
他の成分を含む場合、他の成分の含有量は、例えば、1質量%~10質量%の範囲であり、好ましくは1質量%~5質量%の範囲である。
【0029】
食肉としては、食用に供される肉であればよく、特に限定されないが、例えば、牛、豚、鶏、馬、羊、アヒル、七面鳥等の畜肉、猪、鹿、熊等の獣肉、クジラ、海豚等の海産動物、カモ、ガチョウ、ダチョウ、カンガルー、ワニ等の精肉、およびこれらの加工品等が挙げられる。食肉の部位としては、特に限定されず、脛、肩、ネック、タン、ホホ、モモ、スネ、テール、足等の部位が挙げられる。食肉の形態は、特に制限されず、例えば、ブロック、サイコロ、ぶつ切り、スライス、挽いたもの等のいずれの形態であってもよい。
【0030】
魚介類肉としては、食用に供される魚介類肉であればよく、特に限定されないが、例えば、鮭、鰆、鰤、鱈等の魚肉、エビ、タコ、イカ、カニ等の甲殻類等およびこれらの加工品等が挙げられる。魚介類肉の形態は、特に制限されず、例えば、切り身、柵等のいずれの形態であってもよい。
【0031】
本実施形態に係る品質改良剤は、食肉または魚介類肉の加熱処理後の食感を改良するために利用することができる。改良する食感としては、例えば、味、やわらかさ、弾力感、ジューシー感等が挙げられる。
【0032】
本実施形態に係る品質改良剤の形態は特に制限されず、例えば、液体状、ペースト状、顆粒状、粉末状、固形状等のいずれの形態であってもよい。
【0033】
本実施形態に係る品質改良剤は、粉末添加、浸漬、インジェクション、タンブリング等の処理方法で、食肉または魚介類肉の加熱処理後の食感および加熱歩留まりの改良に用いることができる。
【0034】
<食肉用または魚介類肉用の品質改良用浸漬液>
本実施形態に係る食肉用または魚介類肉用の品質改良用浸漬液は、上記食肉用または魚介類肉用の品質改良剤と、水と、を含有する。すなわち、本実施形態に係る食肉用または魚介類肉用の品質改良用浸漬液は、有機酸塩と、海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、水と、を含有する。本実施形態に係る食肉用または魚介類肉用の品質改良用浸漬液は、70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含み、有機酸塩は、クエン酸塩を含む、食肉用または魚介類肉用の品質改良剤と;水と;を含有する。有機酸塩は、クエン酸塩および酒石酸塩を含むことが好ましく、クエン酸塩と酒石酸塩の質量基準での配合比は、クエン酸塩:酒石酸塩=70:30~95:5の範囲であることが好ましい。本実施形態に係る品質改良用浸漬液には、ピックル液も含まれる。
【0035】
品質改良用浸漬液のpHは、例えば、7.5~10.0の範囲であり、8.5~10.0の範囲であることが好ましい。品質改良用浸漬液のpHが7.5未満であると、品質改良効果が不十分となる場合があり、10.0を超えると、風味に悪影響が出る場合がある。
【0036】
品質改良用浸漬液における有機酸塩の含有量は、例えば、1.0~3.0質量%の範囲であり、1.5~2.5質量%の範囲であることが好ましい。品質改良用浸漬液における有機酸塩の含有量が1.0質量%未満であると、品質改良効果が不十分となる場合があり、3.0質量%を超えると、風味に悪影響が出る場合がある。
【0037】
品質改良用浸漬液における海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つの含有量は、例えば、0.2~1.0質量%の範囲であり、0.5~1.0質量%の範囲であることが好ましい。品質改良用浸漬液における海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つの含有量が0.2質量%未満であると、品質改良効果が不十分となる場合があり、1.0質量%を超えると、風味に悪影響が出る場合がある。
【0038】
水としては、特に制限はないが、水道水、純水等が挙げられる。水の他に、食塩、調味料、酵母等を含んでもよい。
【0039】
<食肉または魚介類肉>
本実施形態に係る食肉または魚介類肉は、上記食肉用または魚介類肉用の品質改良剤を含む食肉または魚介類肉である。すなわち、本実施形態に係る食肉または魚介類肉は、有機酸塩と、海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含む。本実施形態に係る食肉または魚介類肉は、70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含み、有機酸塩は、クエン酸塩を含む、食肉用または魚介類肉用の品質改良剤を含む。有機酸塩は、クエン酸塩および酒石酸塩を含むことが好ましく、クエン酸塩と酒石酸塩の質量基準での配合比は、クエン酸塩:酒石酸塩=70:30~95:5の範囲であることが好ましい。食肉および魚介類肉としては、上記で述べた食肉および魚介類肉が挙げられる。
【0040】
食肉および魚介類肉に対する有機酸塩の含有量は、食肉および魚介類肉の質量に対して、例えば、0.2~5.0質量%の範囲であり、0.5~2.0質量%の範囲であることが好ましい。食肉および魚介類肉の質量に対して有機酸塩の含有量が0.2質量%未満であると、品質改良効果が不十分となる場合があり、5.0質量%を超えると、風味に悪影響が出る場合がある。
【0041】
食肉および魚介類肉に対する海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つの含有量は、食肉および魚介類肉の質量に対して、例えば、0.1~2.0質量%の範囲であり、0.2~1.0質量%の範囲であることが好ましい。食肉および魚介類肉の質量に対して海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つの含有量が0.1質量%未満であると、品質改良効果が不十分となる場合があり、2.0質量%を超えると、風味に悪影響が出る場合がある。
【0042】
<食肉または魚介類肉の製造方法>
本実施形態に係る食肉または魚介類肉の製造方法は、上記食肉用または魚介類肉用の品質改良剤を用いて食肉または魚介類肉の品質改良を行う方法である。すなわち、本実施形態に係る食肉または魚介類肉の製造方法は、有機酸塩と、海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を用いて食肉または魚介類肉の品質改良を行う方法である。本実施形態に係る食肉または魚介類肉の製造方法は、70~95質量%の有機酸塩と、5~30質量%の海藻粉末およびドロマイトのうち少なくとも1つと、を含み、有機酸塩は、クエン酸塩を含む、食肉用または魚介類肉用の品質改良剤を用いて、食肉または魚介類肉の品質改良を行う方法である。有機酸塩は、クエン酸塩および酒石酸塩を含むことが好ましく、クエン酸塩と酒石酸塩の質量基準での配合比は、クエン酸塩:酒石酸塩=70:30~95:5の範囲であることが好ましい。
【0043】
例えば、上記品質改良用浸漬液に、食肉または魚介類肉を予め定めた温度で、予め定めた時間、浸漬する方法である。その他に、上記品質改良剤を食肉または魚介類肉に直接振りかける方法、上記品質改良剤を含む水溶液を食肉または魚介類肉にインジェクションする方法、上記品質改良剤を含む水溶液を食肉または魚介類肉とともにタンブリングする方法であってもよい。
【0044】
浸漬温度は、例えば、4℃~40℃の範囲であり、4℃~10℃の範囲であることが好ましい。
【0045】
浸漬時間は、例えば、30分間~24時間の範囲であり、2時間~24時間の範囲であることが好ましい。
【0046】
浸漬液に対する食肉または魚介類肉の量は、例えば、品質改良用浸漬液の質量に対して1~10倍量の範囲である。
【0047】
本発明の実施形態に係る品質改良剤、品質改良用浸漬液、食肉または魚介類肉、および食肉または魚介類肉の製造方法により、加熱処理後の食感および加熱歩留まりを改良することができる。
【実施例0048】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
<実施例1,2、比較例1~3>
以下の実施例1,2、比較例1~3について、ピックル液を調製した。ピックル液の組成(質量%)は表1の通りである。なお、貝殻焼成カルシウムは、酸化カルシウムを90質量%以上含有するものである。
【0050】
比較例1:ブランク(添加剤なし)
比較例2:有機酸塩+乳清ミネラル(クエン酸三Na 75質量%、酒石酸Na 5質量%、乳清ミネラル 20質量%)
比較例3:有機酸塩+他カルシウム原料(クエン酸三Na 75質量%、酒石酸Na 5質量%、貝殻焼成カルシウム 20質量%)
実施例1:有機酸塩+海藻粉末(クエン酸三Na 75質量%、酒石酸Na 5質量%、海藻粉末 20質量%)
実施例2:有機酸塩+ドロマイト(クエン酸三Na 75質量%、酒石酸Na 5質量%、ドロマイト 20質量%)
【0051】
調製したピックル液を用い、以下の方法で鶏モモ肉の処理を行った。
【0052】
[処理方法]
(1)上記ピックル液を調製する。
(2)鶏モモ肉を約30gに切り分ける。
(3)鶏モモ肉100質量部に対し、ピックル液を20質量部加える。
(4)常圧で2時間タンブリング処理を行う。
(5)肉の20質量%の小麦粉をかけ、揉みこんで付着させる。
(6)175℃で4分間フライ処理を行う。
(7)放冷後、重量を測定および官能評価を行う。
【0053】
[歩留測定]
塩漬前後の重量を測定し、[(塩漬後重量/塩漬前重量)×100]から塩漬上り歩留(%)を求め、加熱前後の重量を測定し、[(加熱後重量/加熱前重量)×100]から加熱歩留(%)を求めた。
【0054】
[官能評価]
5人の評価者が試食し、食感(やわらかさ、ジューシー感、味)について、比較例1を基準3点として以下の基準で5段階評価を行い、平均点(小数点以下第2位を四捨五入)を算出した。結果を表2に示す。
【0055】
(やわらかさ)
1点:かたい
2点:ややかたい
3点:基準
4点:やややわらかい
5点:やわらかい
(ジューシー感)
1点:パサつく
2点:ややパサつく
3点:基準
4点:ややジューシー
5点:ジューシー
(味)
1点:美味しくない(異味を感じる)
2点:やや美味しくない(異味を感じる)
3点:基準
4点:やや美味しい
5点:美味しい
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
比較例2の有機酸塩+乳清ミネラルの結果よりも、実施例1の有機酸塩+海藻粉末または実施例2の有機酸塩+ドロマイトの効果が高かった。
【0059】
<実施例3、比較例4,5>
以下の実施例3、比較例4,5について、浸漬液を調製した。浸漬液の組成(質量%)は表3の通りである。
【0060】
比較例4:ブランク(添加剤なし)
比較例5:有機酸塩+乳清ミネラル(クエン酸三Na 75質量%、酒石酸Na 5質量%、乳清ミネラル 20質量%)
実施例3:有機酸塩+海藻粉末(クエン酸三Na 75質量%、酒石酸Na 5質量%、海藻粉末 20質量%)
【0061】
調製した浸漬液を用い、以下の方法でエビの処理を行った。
【0062】
(1)上記浸漬液を調製する。
(2)エビの背綿を取り、殻をむく。
(3)エビと浸漬液を重量比で1:1となるようにポリ袋に入れ、冷蔵庫(4℃)で一晩(18時間)静置する。
(4)水気を切り、加熱する(スチーム70℃、15分)。
(5)放冷後、重量測定および官能評価を行う。
【0063】
[歩留測定]
上記と同様にして、塩漬上り歩留(%)および加熱歩留(%)を求めた。
【0064】
[官能評価]
5人の評価者が試食し、食感(弾力感(プリッと感))について、比較例4を基準3点として以下の基準で5段階評価を行い、平均点(小数点以下第2位を四捨五入)を算出した。結果を表4に示す。
【0065】
(弾力感(プリッと感))
1点:非常にボソボソしている
2点:ボソボソしている
3点:基準
4点:プリッとしている
5点:非常にプリッとしている
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
比較例5の有機酸塩+乳清ミネラルの結果よりも、実施例3の有機酸塩+海藻粉末の効果が高かった。
【0069】
このように、実施例の食肉用または魚介類肉用の品質改良剤によって、アレルゲンフリーであり、食肉または魚介類肉の加熱処理後の食感および加熱歩留まりを改良することができた。