(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169875
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】段ボールベッド
(51)【国際特許分類】
A47C 19/00 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
A47C19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075563
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】521185206
【氏名又は名称】井川 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100119367
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 理
(74)【代理人】
【識別番号】100142217
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 宜紀
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和哉
(57)【要約】 (修正有)
【課題】保管時等において場所を取らず、荷重や変形に強い段ボールベッドを提供する。
【解決手段】段ボールベッドは、ベッドの幅方向に延びた水平板部と、垂直板部の垂直スリットを備えた幅方向部材と、垂直折り込み部と垂直折り込み部に続く水平折り込み部と、水平折り込み部の水平スリットを備えた端部部材と、ベッドの長さ方向に延びた垂直板部と、垂直板部に設けられた複数の垂直スリットと、水平に設けられた水平スリットを備えた縦方向部材とを有し、縦方向部材の垂直スリットは幅方向部材または端部部材の垂直板部が2枚係合できる幅であり、縦方向部材を逆に向けて2本が並べた列が平行に複数列配置され、前後の端部には端部部材が配置され、その間には幅方向部材が配置され、縦方向部材の各垂直スリットに幅方向部材または端部部材の垂直板部が2枚ずつ挿入されて係合し、縦方向部材と端部部材の水平スリットが係合している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドの幅方向に延びた長方形状の水平板部と、水平板部の両側端部のそれぞれより下向きに延びた垂直板部と、垂直板部の下端部側に設けられた複数の垂直スリットを備えた段ボール板で形成された複数の幅方向部材と、
ベッドの幅方向に延びた長方形状の水平板部と、水平板部の第1端部より下向きに延びた垂直板部と、水平板部の第2端部より下向きに延びた垂直折り込み部と垂直折り込み部に続いて垂直板部に向いて水平に設けられた水平折り込み部と、水平折り込み部の先端より水平に設けられた水平スリットを備えた段ボール板で形成された2本の端部部材と、
ベッドの長さ方向に帯状に延びた垂直板部と、垂直板部の上端部側に設けられた複数の垂直スリットと、垂直板部の両側端部のいずれかより水平に設けられた水平スリットを備えた段ボール板で形成された複数の縦方向部材とを有し、
幅方向部材および端部部材の水平板部の段目はベッドの長さ方向に沿っていて、
幅方向部材および端部部材の垂直スリットは縦方向部材が1枚係合できる幅であり、
縦方向部材の垂直スリットは幅方向部材または端部部材の垂直板部が2枚係合できる幅であり、
縦方向部材の水平スリットは端部部材の水平折り込み部が1枚係合できる幅であり、
縦方向部材は各列において水平スリットが設けられた側を相互に逆に向けて2本が並べられ、これが平行に複数列配置されており、
前後の端部にはそれぞれ端部部材が配置され、その間には幅方向部材が配置され、縦方向部材の各垂直スリットに幅方向部材または端部部材の垂直板部が2枚ずつ挿入されて幅方向部材または端部部材の垂直スリットと係合しており、
縦方向部材の水平スリットは端部部材の水平折り込み部の水平スリットが係合している段ボールベッド。
【請求項2】
各列において並べられた縦方向部材は相互に分離しており、水平スリットの側とは逆の端部同士が近接しており、近接する縦方向部材の最端部の垂直スリットのそれぞれに同じ幅方向部材の垂直板部の片方が係合されることによって2本の縦方向部材が結合されている請求項1に記載の段ボールベッド。
【請求項3】
幅方向部材が3本または5本である請求項2に記載の段ボールベッド。
【請求項4】
幅方向部材および端部部材の水平板部の上に段ボール板で形成されており段目がベッドの幅方向に沿った天板が設けられ、天板の隅部には切込線によって形成された折り込み部が設けられ、
端部部材の水平板部には天板の折り込み部が挿入される天板固定スリットが設けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の段ボールベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、段ボール板を素材とする簡易ベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
発泡体の板材やプラスチック段ボールを使用した組み立て式の家具が特許文献1などに提案されている。また、特許文献2では組立式家具として、プラスチックン段ボールを素材としたベッドやヘッドボードなどが提案されている。
【0003】
さらに、特許文献3では災害発生時において避難所で使用する簡易ベッドとして段ボールシートを素材とする組み立て式の簡易ベッドが提案されている。段ボールシートを素材とする組み立て式の簡易ベッドであり、天板用シートの一面に天板部を支持するための脚部となる脚部用シートが積層された第一シートと、脚部を補強するための第二シートとを具え、第一シートにおける脚部用シートが中央から観音開き式に開かれて向かい合う一対ないし複数対の脚部となり、脚部の対に第二シートが架橋するように組み付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-311918号公開特許公報
【特許文献2】実用新案登録第3229918号公報
【特許文献3】実用新案登録第3229660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に記載の組立式家具は発泡体の板材やプラスチック段ボールを使用した組み立て式であり、ピクニック等に携帯して屋外において使用することを目的としている。しかし、プラスチック段ボールは材料として高価であり、また使用後の廃棄やリサイクルが容易でない。また、発泡体の板材は十分な強度を有しない。特許文献1の発明はベッドにも適用できるとの記載があるが、1人用腰掛椅子やサイドテーブルなど小さい家具の例しか記載されておらず、ベッドのような大きな家具を十分な強度で作ることは困難である。
【0006】
特許文献2はベッドへの適用について言及している。固定板には2枚の脚部と係合する幅広スリットが多数設けられているが、両端部におけるスリットは1枚の脚部のみと係合する幅狭スリットである。これらのスリットに折曲板の脚部を係合させてベッドの形状を形成する。端部の幅狭スリットには両側部の折曲板の片方の脚部が係合する。そして、幅狭スリットより外側の固定板の端部は、形成されたベッドの両側に突き出した形状となる。略チャンネル状の折曲板を固定板と直交させて格子状に組み合わせることにより、一定の強度が得られると思われる。しかし、略チャンネル状の折曲板をベッドの縦方向の長さに渡って形成するので、組み立て前の状態においても折曲板あるいは折り曲げ前の第1板状体は2m近くの長さを有する部材である。したがって、組み立て前の状態でも保管や運送は困難であり、組み立て式であることによるメリットが小さい。
【0007】
特許文献2のベッドでは、5枚の折曲板をベース部が一平面上に位置するように並べ、寝るための面を形成する。しかし、複数の折曲板の形状・寸法を厳密に揃えることは困難であり、ある程度はベース部の高さに不揃いが発生する。この不揃いによる段差は、ベッドの全長に沿って発生する。使用者がベッドに寝た場合、全身に渡って段差を感じることになり、不快である。
【0008】
特許文献3の簡易ベッドは紙の段ボールを使用している。三枚のライナーの間に、二枚のメディアムが各々挟まれた二層構造を有する厚さ10mmの段ボールシートを使用している(同文献0017段落)。天板部をなす天板用シートと、天板部を支持するための脚部をなす脚部用シートが接着によって一体に積層された第一シートを備え、脚部の対に第二シートが架橋するように組み付けられる。
【0009】
この第一シートはベッドの上面を形成する一枚の天板用シートと、観音開きによって脚部を形成する脚部用シートが一体となった重くて大きな部材である。天板用シート又は前記脚部用シートのいずれか少なくとも一方に折線となる切り溝が設けられ、二つに折り畳めるようになっているが、それでも相当に大きい部材であり、保管や移動は容易でない。また、このような切り溝を設けることは強度の低下に繋がる。さらに、このような複雑な第一シートは高価なものとなる。脚部の対に第二シートが架橋するように組み付ける構造も強固とは言えず、とくに床面近くおいては変形を防ぐ力がほとんどない。
【0010】
本発明は保管時や運搬時において場所を取らず、しかも荷重や変形にも強い段ボールベッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明の段ボールベッドは、ベッドの幅方向に延びた長方形状の水平板部と、水平板部の両側端部のそれぞれより下向きに延びた垂直板部と、垂直板部の下端部側に設けられた複数の垂直スリットを備えた段ボール板で形成された複数の幅方向部材と、
ベッドの幅方向に延びた長方形状の水平板部と、水平板部の第1端部より下向きに延びた垂直板部と、水平板部の第2端部より下向きに延びた垂直折り込み部と垂直折り込み部に続いて垂直板部に向いて水平に設けられた水平折り込み部と、水平折り込み部の先端より水平に設けられた水平スリットを備えた段ボール板で形成された2本の端部部材と、
ベッドの長さ方向に帯状に延びた垂直板部と、垂直板部の下端部側に設けられた複数の垂直スリットと、垂直板部の両側端部のいずれかより水平に設けられた水平スリットを備えた段ボール板で形成された複数の縦方向部材とを有し、
幅方向部材および端部部材の水平板部の段目はベッドの長さ方向に沿っていて、
幅方向部材および端部部材の垂直スリットは縦方向部材が1枚係合できる幅であり、
縦方向部材の垂直スリットは幅方向部材または端部部材の垂直板部が2枚係合できる幅であり、
縦方向部材の水平スリットは端部部材の水平折り込み部が1枚係合できる幅であり、
縦方向部材は各列において水平スリットが設けられた側を相互に逆に向けて2本が並べられ、これが平行に複数列配置されており、
前後の端部にはそれぞれ端部部材が配置され、その間には幅方向部材が配置され、縦方向部材の各垂直スリットに幅方向部材または端部部材の垂直板部が2枚ずつ挿入されて幅方向部材または端部部材の垂直スリットと係合しており、
縦方向部材の水平スリットは端部部材の水平折り込み部の水平スリットが係合している。
各列において並べられた縦方向部材は相互に分離しており、水平スリットの設けられた側とは逆の側の端部同士が近接されており、近接する縦方向部材の最端部の垂直スリットのそれぞれに同じ幅方向部材の垂直板部の片方が係合されることによって2本の縦方向部材が結合されることが好ましい。
また、幅方向部材が3本または5本であることが好ましい。
さらに、各列において並べられた縦方向部材は相互に分離しており、水平スリットの内側の端部同士が近接されており、近接する縦方向部材の最端部の垂直スリットのそれぞれに同じ幅方向部材の垂直板部の片方が係合されることによって2本の縦方向部材が結合されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明の段ボールベッドは、少ない材料で実施でき、しかも荷重や変形に対して強い。組み立て前の状態では小さいので保管や運搬において場所を取らない。また、部品の種類も少なく、組み立てや分解も簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図8】段ボールベッドの組み立ての第1段階を示す斜視図である。
【
図9】段ボールベッドの組み立ての第2段階を示す斜視図である。
【
図10】段ボールベッドの組み立ての第3段階を示す斜視図である。
【
図11】段ボールベッドの組み立ての第4段階を示す斜視図である。
【
図12】段ボールベッドの別の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は段ボールベッドの例を示す斜視図である。段ボールベッド1は、複数の幅方向部材2と、2本の端部部材3と、複数の縦方向部材4とを有する。段ボールベッド1は概ね直方体状であり、その形状や寸法は任意に選択できる。この発明において、ベッド本体の長い方向、すなわち、使用者が寝たときに身体に沿った方向を長さ方向あるいは縦方向とする。また、ベッドの上面で長さ方向に直交する方向を幅方向とする。本例では一般的なシングルベッドと同様の寸法としており、長さ方向が198cm、幅方向が90cmである。したがって、大人も含めてほとんどの人が快適に使用できる大きさであり、通常の布団や毛布などがそのまま使用できる。また、高さは30cmであり、設置面からの距離は十分であり、床面にある埃などが舞い上がっても使用者の身体までには届きにくいので衛生的である。
【0015】
幅方向部材2の本数はベッドの大きさや求める強度、あるいは使用する段ボール板の厚さなどに合わせて選択できるが、奇数であることが好ましい。上述の寸法であれば、3本または5本にすると使用する材料を少なくし、しかも十分な強度が得られる。特に、ベッドの高さを30cm程度とする場合には3本または5本にすることが好ましい。本例では幅方向部材2は3本である。
【0016】
幅方向部材2について説明する。
図2は幅方向部材を示す正面図であり、
図3は同展開図である。幅方向部材2は展開時には概ね長方形の段ボール板である。2本の平行な折り曲げ線5が設けられており、それぞれ、縁辺からの距離は同じである。2本の折り曲げ線5の間にある部分が水平板部6であり、外側が垂直板部7である。段ボール板の段目は折り曲げ線5に対して直交した方向である。
【0017】
2本の折り曲げ線5を直角に山折りにすると
図3に示す形状となる。水平板部6が上部に位置し、その両側部より下向きに垂直板部7が続き、下側に開いたチャンネル状の部材を形成する。ベッドとして組み込まれたときに、ベッドの幅方向に沿って配置される。このとき、水平板部6では段ボールの段目はベッドの長さ方向に沿う。また、垂直板部7では段ボールの段目は上下の方向に沿う。また、使用した段ボール板の厚さは5mmである。
【0018】
本例において、水平板部6のベッドの幅方向の長さは概ね90cmであり、ベッドの長さ方向の長さは概ね40cmである。また、垂直板部7の高さ、すなわち折り曲げ線5から縁辺までの長さは概ね30cmである。
【0019】
垂直板部7には複数の垂直スリット9が縁辺8に沿って設けられている。縁辺9から折り曲げ線5までの距離の2分の1の深さのスリットが垂直板部7の両方の縁辺9に設けられている。このスリットの本数は後述の縦方向部材4の列の数に対応し、スリットの幅は縦方向部材4の1枚分の厚さに対応する。ここでは、スリットは6本であり、幅は6mmである。ベッドに組み込まれたときに下から上に形成された垂直スリットである。
【0020】
端部部材3について説明する。
図4は端部部材を示す正面図であり、
図5は同展開図である。端部部材3も幅方向部材2と同様に、展開時には概ね長方形の段ボール板である。展開時の外形は幅方向部材2と概ね同じである。対向する縁辺のうちの一方を(
図5において上側)を第1縁辺10とし、他方を第2縁辺11とする。2本の平行な第1折り曲げ線12a,bが設けられており、それぞれ、第1縁辺10および第2縁辺11からの距離は同じであり、これは幅方向部材2の折り曲げ線5の位置に対応する。本例では第1縁辺10および第2縁辺11から30cm離れた位置である。また、第1縁辺10とこれに近い方の第1折り曲げ線12aの間には、1本の第2折り曲げ線13が設けられている。本例では、第1縁辺10と第1折り曲げ線12aの距離の2/3だけ第1縁辺10から離れた位置にあり、具体的には20cmの距離である。
【0021】
第1折り曲げ線12a,bおよび第2折り曲げ線13をそれぞれ直角に山折りにすると
図5に示す形状となる。水平板部14が上部に位置し、第1折り曲げ線12bに沿った端部を第1端部とし、他方の第1折り曲げ線12bに沿った端部を第2端部とする。第1端部(第1折り曲げ線12b)より下向きに1体の垂直板部15が続く。他方の第1折り曲げ線12bから下向きに延びた垂直折り込み部16が続き、垂直折り込み部16に続いて垂直板部15に向いて水平に水平折り込み部17が形成される。このとき、水平板部14では段ボールの段目はベッドの長さ方向に沿う。また、垂直板部16では段ボールの段目は上下の方向に沿う。また、使用した段ボール板は幅方向部材2と同じであり、その厚さは5mmである。
【0022】
垂直板部15には幅方向部材2の垂直板部7と同様に垂直スリット18が第2縁辺11に沿って設けられている。垂直スリット18の本数、幅、深さ、位置は幅方向部材2の垂直板部7の垂直スリット9と同じである。
【0023】
第1縁辺10に沿って水平折り込み部17内に水平スリット19が、垂直スリットと対向する位置に同じ本数設けられている。水平スリット19の深さは第1縁辺10と第2折り曲げ線13の距離の2分の1であり、本例では5cmである。また、水平スリット19の幅は縦方向部材4の1枚分の厚さに対応し、本例では7mmである。
【0024】
水平板部14には、その両側部に天板固定スリット20が設けられている。
【0025】
縦方向部材について説明する。
図6は縦方向部材を示す正面図である。縦方向部材4は概ね長方形状の部材であり、紙段ボール板を素材とする。ベッドの長さ方向に帯状に延びた垂直板部と、垂直板部の上端部側に設けられた複数の垂直スリット21と、垂直板部の両側端部のいずれかより水平に設けられた水平スリット22を備える。
【0026】
縦方向部材4の長さはベッドの長さの2分の1に対応し、本例では99cmである。また、高さは幅方向部材2および端部部材3の垂直板部7,15に対応し、本例では30cmである。本例で使用される段ボール板の厚さは5mmである。また、段ボールの段目は上下方向に沿っている。
【0027】
垂直スリット21の本数は、幅方向部材2の本数に関係しており、本例では3本の幅方向部材2に対応して垂直スリット21の本数は2である。幅方向部材2の本数が増えれば垂直スリット21の本数も増加する。
【0028】
水平スリット22が設けられた端部から幅方向部材2の水平板部14の長さに対応した距離だけ離れた位置に垂直スリット21aが設けられ、さらに幅方向部材2の水平板部6の長さに対応した距離だけ離して次の垂直スリット21bが設けられる。3本以上設ける場合にも、同じ間隔を繰り返して垂直スリット21を設けていく。本例では、水平スリット22が設けられた端部から30cmの位置に最初の垂直スリット21が設けられ、そこから30cmの位置にもう1本の垂直スリット21が設けられる。この垂直スリット21の深さは幅方向部材2の高さの2分の1であり、本例では15cmである。また、垂直スリット21の幅は幅方向部材2または端部部材3の垂直板部7,15が2枚係合できる幅である。本例では13mmである。
【0029】
水平スリット22の位置は端部部材3の水平に水平折り込み部17の高さ方向の位置に対応する。すなわち、縦方向部材4の上端より端部部材3の垂直折り込み部16の長さ分だけ下がった高さに設けられる。また、水平スリット22の深さは水平折り込み部17の長さの2分の1に対応する。水平スリット22の幅は水平スリット22の幅に対応するが、水平折り込み部17の水平スリット18よりも1mm程度広く、本例では7mmである。
【0030】
本例においては、長さ方向において中央となる位置に折り曲げ線23が設けられている。この折り曲げ線23により二つ折りに畳むことことができ、保管時や運搬時において場所を取らず、便利である。
【0031】
縦方向部材4は各列において水平スリットが設けられた側を相互に逆に向けて2本が並べられ、これが平行に複数列配置される。ここで、1つの列に並べられる2本の縦方向部材4は背中合わせに接続されていてもよい。これによって、部材の点数を少なくすることができる。この場合、接続部分に沿っても折り曲げ線を設けることが好ましく、保管時や運搬時において小さく折り畳むことができる。本例では1体の縦方向部材は
図6に示すように形成される。2体の分離した縦方向部材を背中合わせに並べて一つの列を形成する。この列は幅方向部材2および端部部材3の垂直スリットの本数に対応しており、本例では6列である。したがって、
図6に示すような縦方向部材4は12本使用される。
【0032】
幅方向部材2,端部部材3および縦方向部材4によりベッドの本体形状を組み上げることができる。本例では、さらに段ボール板で形成さた天板24が備えらている。
図7は天板を示す平面図である。天板24はベッドの上面をほぼ覆う大きさであり、本例では長さおよび幅ともベッドの上面よりやや小さい。段ボール板の段目がベッドの幅方向に沿っている。長さ方向に沿って等間隔に3本の折り曲げ線25が設けられ、4つ折りに畳めるようになっている。
【0033】
天板24の4つの隅部にはそれぞれ切込み線26が設けられている。そして、この切込み線26の内側には折り込み部27となる領域が形成される。この切込み線26の位置は、端部部材に設けられた天板固定スリット20の位置に合せられている。
【0034】
段ボールベッドの組み立て方法および段ボールベッドの構造について説明する。
図8から
図11は、段ボールベッドの組み立て方法を示す斜視図である。ここでは、大きく4段階に分けて説明する。
図8は第1段階、
図9は第2段階、
図10は第3段階、
図11は第4段階をそれぞれ示す。
【0035】
図8は組み立ての第1段階を示す。端部部材の第1折り曲げ線12a,bおよび第2折り曲げ線13を山折りして、平面板部14、垂直板部15、垂直折り込み部および水平折り込み部17を形成するとともに、垂直スリット18に縦方向部材4を組み合わせる。この作業は
図8aに示すように、平面板部14を下に向け、縦方向部材4を上から挿入するのと容易に実施できる。縦方向部材4の水平スリット22に最も近い垂直スリット21aと端部部材3の垂直スリット18を係合させるとともに、また、端部部材3の水平スリット19と縦方向部材の4の水平スリット22を係合させる。こうして、
図8bに示すように、1本の端部部材3と6本の縦方向部材4を強固に組み合わせることができる。特に、端部部材3の水平スリット19と縦方向部材4の水平スリット22を係合させることにより縦方向部材4の先端部は上下方向の移動が規制されるのに加えて、平面内での振れも規制されるので、ベッド本体部の変形を防止する。こうして
図8bに示す状態になる。
【0036】
図9は組み立ての第2段階を示す。ここからの作業は平面板部14を上向きにして行うのが便利である。幅方向部材2を端部部材3に隣接させて取り付ける。幅方向部材2の垂直板部6の一方を縦方向部材4の最初の垂直スリット21aに、他方を次の垂直スリット21bに挿入する。最初の垂直スリット21aには端部部材3の垂直板部15がすでに挿入されているが、縦方向部材4の垂直スリット21は2枚の垂直板部6,15が挿入できる幅を有するので問題ない。本例の場合は、これで第2段階は終了して
図9bに示す状態になる。より多くの幅方向部材2を使用する場合は3番目以降の垂直スリットが残っているので、さらに幅方向部材2を取り付けていく。
【0037】
もう一方の端部部材3についても第1段階および第2段階の組み立て作業を行う。こうして、
図8bに示すようなベッド本体の半分を構成する部材が二つ形成される。
【0038】
図10は組み立ての第3段階を示す。第2段階までを終えて
図8bの状態となった2つの部材を端部部材3が相互に逆に向くように合わせる。このとき、2枚の縦方向部材4が背中合わせに並べられた列が形成され、本例では6列が形成される。縦方向部材4が並ぶ端部において、端部部材3から最も遠い垂直スリット21bには、幅方向部材2の垂直板部7が1枚だけ挿入されている。最後に残った幅方向部材2の垂直板部7をこの垂直スリット21bに挿入して取り付ける。各列において近接する2つの縦方向部材の最端部の垂直スリット21bのそれぞれに同じ幅方向部材の垂直板部の片方が係合されることによって2本の縦方向部材が結合されている。ベッド本体の半分を構成する部材同士が強固に結合され、
図10bに示すように1体のベッド本体部が組みあがる。
【0039】
端部部材3および幅方向部材2は隙間なく隣接して並べられる。端部部材3および幅方向部材2の垂直板材7,15と縦方向部材4は、脚部としてベッド全体を支持する。特に端部部材3および幅方向部材2の垂直板部7,15は、縦方向部材4の垂直スリット22のそれぞれに2枚ずつ密着して挿入されるので、2枚分の厚さ板材のようになり、上下方向の荷重に対して強く、たわみや座屈も生じにくい。また、端部部材3および幅方向部材2の垂直板部7,15および縦方向部材4では、段ボールの段目は上下方向に沿っているので、高い耐荷重を有する。
【0040】
端部部材3および幅方向部材2の水平板部6,14はほぼ同一平面に並んでベッド面を形成する。したがって、この状態でもベッドとして使用できる。端部部材3および幅方向部材2の寸法誤差等により水平板部6,14の高さに違いが生じることも考えられるが、それによるベッド面の段差はベッドの幅方向に沿って生じる。したがって、ベッドに横たわった利用者の身体の一部にしか当たらず、段差による不快感は緩和される。
【0041】
本例の段ボールベッドは天板24を備えているので、端部部材3および幅方向部材2の水平板部6,14の高さの不均一により生じる段差は感じにくくなっている。
図11は組み立ての第4段階を示す。天板24には切り込み線26が設けられているので、その切り込み線26の内側の領域27を押し込むことによって舌状の折り込み部が形成される。天板24を広げ、端部部材3および幅方向部材2の水平板部6,14で形成されたベッド本体の上面に置く。そして、折り込み部27を端部部材3の天板固定スリット20に挿入する。これによって天板24の四隅は端部部材3に結合し、天板24のベッド本体からの分離が防止される。こうして、組み立て作業が終了し、段ボールベッドが完成する(
図11b)。水平板部6,14と天板24の2重構造にすることによって、上面の強度を高くすることができる。本例では段ボールの段目は、水平板部6,14においてはベッドの長さに沿っており、天板24では幅方向に沿っている。このように段目を相互に直交させることによって、より強度を大きくし、全ての方向に対する変形や破壊を防止する。
【0042】
以上、簡単に段ボールベッドを組み立てることができる。ベッドを構成する部材は幅方向部材3点、端部部材2点、縦方向部材12点および天板1点のみであり、種類も点数も少ない。紛失の恐れのあるような細かい部品はない。しかも、組み立てにおいて特別な工具を必要としない。分解も容易であり、上述の作業を逆に行えばよい。したがって、災害時の避難所などのように十分な工具や作業場所がなくても簡単かつ短時間で組み立てることができ、避難生活を快適にすることができる。
【0043】
この段ボールベッドは比較的薄い段ボール板を使用しても丈夫に作ることができる。したがって、軽く、しかも安価に作くることができる。構造的な強さがあるので、30cmの高さのベッドが実現でき、使用者の体は床から十分な距離を保ち、衛生的である。また、ベッド面よりも外に突き出す部分はないので近くを歩いても邪魔にならず、しかも意匠性に優れる。
【0044】
各部品は折り曲げ線によって折り畳むことによってより小さくなり、保管や運搬にも適している。一式の部品をセットにして箱詰めにすると、重量約10kg、縦92.5cm、横51cm、高さ16.5cmの直方体の梱包状態となり、コンパクトである。
【0045】
段ボールベッドの別の実施例について説明する。先の例では幅方向部材は3本であったが、それよりも本数を増やすこともできる。本数が増えることによって、ベッドに組み上げたときに脚部となる垂直板部の本数が増え、より大きな耐荷重を実現できる。一方で、幅方向部材を増やし過ぎると部品点数が増えることになり、また使用する段ボール板の合計量も増えるので、重量およびコストが増加する。また、幅方向部材の本数は奇数であることが好ましい。奇数であれば、1列に並ぶ2本の縦方向部材を同じ形状にして、これを幅方向部材で結合することができるからである。その中でも、3本または5本であることが好ましい。このときに、ベッドの強度が高く、しかも部品点数や段ボール板の使用量を抑えた最適な選択となる。
【0046】
図12は段ボールベッドの別の例を示す斜視図である。この段ボールベッド1も幅方向部材2、端部部材3、縦方向部材4で本体部が構成されている。さらに天板も備えてもよいが、本例の段ボールベッドは強度がより高いので、ここでは天板は設けられていない。
【0047】
本例では、5本の幅方向部材4が備えられる。幅方向部材2および端部部材3の水平板部6,14はベッド上面を概ね7等分した形状になっている。本例では、水平板部6,14のベッドの長さ方向に沿った長さは約29cmである。
【0048】
一方、縦方向部材4は先の例よりも少なくできる。本例では10本を5列に並べて使用する。したがって、幅方向部材2の垂直スリット、端部部材の垂直スリットおよび水平スリットは5本である。縦方向部材4の垂直スリットは3本となる。また、天板を設けない場合は、端部部材に天板固定スリットを設ける必要はない。
【0049】
本例の段ボールベッドの組み立ては、先述の例の組み方と同様であり、第1段階から第3段階までの作業を行う。
【符号の説明】
【0050】
1.段ボールベッド
2.幅方向部材
3.端部部材
4.縦方向部材
5.折り曲げ線
6.水平板部
7.垂直板部
8.縁辺
9.垂直スリット
10.第1縁辺
11.第2縁辺
12.第1折り曲げ線
13.第2折り曲げ線
14.水平板部
15.垂直板部
16.垂直折り込み部
17.水平折り込み部
18.垂直スリット
19.水平スリット
20.天板固定スリット
21.垂直スリット
22.水平スリット
23.折り曲げ線
24.天板
25.折り曲げ線
26.切込み線
27.折り込み部