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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169890
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】原子力電池
(51)【国際特許分類】
   G21H 1/10 20060101AFI20221102BHJP
   H01L 35/30 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G21H1/10
H01L35/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075592
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 礼
(72)【発明者】
【氏名】宮寺 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】中込 宇宙
(72)【発明者】
【氏名】浅野 和仁
(57)【要約】
【課題】発熱密度の低い放射性同位体を熱源に用いても、熱電素子の高温側と低温側の温度差を大きくして、変換効率及び電気出力が向上する原子力電池を提供する。
【解決手段】原子力電池10は、Cs-137、Cm-244、Sr-90、Am-241の中から選択される少なくとも一つの放射性同位体17を収容する収容容器11と、この収容容器11に接触する第1面21とその反対側で冷却される第2面22とを持ち放射性同位体17の発熱を電力に変換する熱電素子12と、この熱電素子12の第2面22に接触する基端部25を持ちその反対側の末端部26で放熱する伝熱部15と、を備え、収容容器11の全表面積に対し、熱電素子12の第1面21の接触面積Aの占める割合を0.01から0.5の範囲に設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cs-137、Cm-244、Sr-90、Am-241の中から選択される少なくとも一つの放射性同位体を収容する収容容器と、
前記収容容器に接触する第1面とその反対側で冷却される第2面とを持ち前記放射性同位体の発熱を電力に変換する熱電素子と、
前記熱電素子の前記第2面に接触する基端部を持ちその反対側の末端部で放熱する伝熱部と、を備え、
前記収容容器の全表面積に対し、前記熱電素子の前記第1面の接触面積の占める割合を0.01から0.5の範囲に設定する原子力電池。
【請求項2】
Cs-137、Cm-244、Sr-90、Am-241の中から選択される少なくとも一つの放射性同位体を収容する収容容器と、
前記収容容器に接触する第1面とその反対側で冷却される第2面とを持ち前記放射性同位体の発熱を電力に変換する熱電素子と、
前記熱電素子の前記第2面に接触する基端部を持ちその反対側の末端部で放熱する伝熱部と、を備え、
前記熱電素子が非接触である前記収容容器の外表面は、輻射放熱を抑制する輻射放熱抑制部となる原子力電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の原子力電池において、
前記放射性同位体としてAm-241が前記収容容器に収容されている原子力電池。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の原子力電池において、
前記熱電素子が非接触である前記収容容器の外表面には、輻射放熱を抑制するコーティングが施されている原子力電池。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の原子力電池において、
前記収容容器を内部空間で浮かせた状態で支持する筐体を備え、
前記伝熱部は、前記末端部が前記筐体の外部に配置され、前記熱電素子を押圧するように前記筐体に固定されている原子力電池。
【請求項6】
請求項5に記載の原子力電池において、
前記伝熱部には雄螺子が設けられており、前記筐体には前記雄螺子に螺合する雌螺子が設けられており、前記筐体に対する前記伝熱部の挿入量を調整することで、前記熱電素子に対する押圧量が設定される原子力電池。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の原子力電池において、
前記収容容器に、さらに別の熱電素子が、前記筐体に固定された別の伝熱部に押圧され接触している原子力電池。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の原子力電池において、
前記伝熱部は、密閉管に収容した作動液を前記基端部で蒸発させ前記末端部で凝縮させることで前記熱電素子の前記第2面の冷却を促進するヒートパイプで構成されている原子力電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、熱電変換方式に基づく原子力電池に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力電池は、半減期の長い放射性同位体が出す放射線のエネルギーを電気エネルギーに変える仕組みの電池である。この放射線のエネルギーを熱エネルギーとして利用する熱電変換方式を採る放射性同位体熱電気転換器(RTG;Radioisotope thermoelectric generator)が宇宙開発の黎明期から長く宇宙探査等で実用化されている。このRTGは、両端に温度差を生じさせると起電力が生じる熱電素子のゼーベック効果を利用し、放射性同位体の原子核崩壊の際に発生する熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0003】
このようなRTGでは、熱源となる放射性同位体として、主にプルトニウム238(Pu-238)が用いられてきた。しかしながらこのPu-238は、発熱密度が高くガンマ線を放出しないという熱源として望ましい性質を持つ一方で、生産・調達コストが極端に高いといった課題があった。このため、生産・調達コストがより安価である放射性同位体が、RTGの熱源として提案されている。
【0004】
そこで、RTGの熱源として利用が検討されるその他の放射性同位体として、キュリウム244(Cm-244)、ストロンチウム90(Sr-90)、アメリシウム241(Am-241)などが挙げられている。中でもAm-241が、放射線遮蔽と発熱密度の観点より、Pu-238から代替されるRTGの熱源として有望視されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】June F. Zakrajsek, et al., Next-Generation Radioisotope Thermoelectric Generator Presentation, NASA https://rps.nasa.gov/resources/69/next-generation-radioisotope-thermoelectric-generator-presentation/
【非特許文献2】Richard Ambrosi, et al., “AMERICIUM-241 RADIOISOTOPE THERMOELECTRIC GENERATOR DEVELOPMENT FOR SPACE APPLICATIONS”, 2013 International Nuclear Atlantic Conference (INAC 2013), Recife PE Brazil, November 24-29, 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらAm-241の発熱密度は、Pu-238に比べて約1/5程度と低いために、エネルギーの利用効率を向上させるシステムの構築が求められている。
発電に熱電素子を用いるRTGでは、エネルギーの利用効率の向上のために、この熱電素子の高温側と低温側の温度差を可能な限り大きくする事が考えられる。しかし、Am-241の様な発熱密度が低い熱源に熱電素子を張り付けると、この熱電素子を介した外部への熱リークにより熱源(高温側)の温度が低下してしまう。さらに低温側で輻射放熱を行う放熱板の面積が限られることから、高温側と低温側の温度差を付けにくく、変換効率及び電気出力が低下する課題を克服できないでいる。
【0007】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、発熱密度の低い放射性同位体を熱源に用いても、熱電素子の高温側と低温側の温度差を大きくして、変換効率及び電気出力が向上する原子力電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る原子力電池において、Cs-137、Cm-244、Sr-90、Am-241の中から選択される少なくとも一つの放射性同位体を収容する収容容器と、前記収容容器に接触する第1面とその反対側で冷却される第2面とを持ち前記放射性同位体の発熱を電力に変換する熱電素子と、前記熱電素子の前記第2面に接触する基端部を持ちその反対側の末端部で放熱する伝熱部と、を備え、前記収容容器の全表面積に対し、前記熱電素子の前記第1面の接触面積の占める割合が0.01から0.5の範囲にあることを特徴とする。
【0009】
また、実施形態に係る原子力電池において、Cs-137、Cm-244、Sr-90、Am-241の中から選択される少なくとも一つの放射性同位体を収容する収容容器と、前記収容容器に接触する第1面とその反対側で冷却される第2面とを持ち前記放射性同位体の発熱を電力に変換する熱電素子と、前記熱電素子の前記第2面に接触する基端部を持ちその反対側の末端部で放熱する伝熱部と、を備え、前記熱電素子が非接触である前記収容容器の外表面は、輻射放熱を抑制する輻射放熱抑制部となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態により、発熱密度の低い放射性同位体を熱源に用いても、熱電素子の高温側と低温側の温度差を大きくして、変換効率及び電気出力が向上する原子力電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)本発明の第1実施形態に係る原子力電池の概略図、(B)その分解図。
図2】原子力電池における熱伝導の式。
図3】原子力電池において熱電素子の接触面積に対する電気出力の特性を、「輻射放熱」の影響を無視し「熱伝導」の影響のみを反映させて示したグラフ。
図4】(A)放射性同位体の発熱の収容容器からの伝熱経路を示す図、(B)コーティングにより輻射放熱が抑制された収容容器からの伝熱経路を示す図。
図5】原子力電池において熱電素子の接触面積に対する電気出力の特性を、「輻射放熱」の影響及び「熱伝導」の影響を共に反映させて示したグラフ。
図6】第2実施形態に係る原子力電池の概略図。
図7】第2実施形態の変形例に係る原子力電池の概略図。
図8】第3実施形態に係る原子力電池の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1(A)は本発明の第1実施形態に係る原子力電池10Aの概略図である。図1(B)はその分解図である。
【0013】
このように原子力電池10A(10)は、Cs-137、Cm-244、Sr-90、Am-241の中から選択される少なくとも一つの放射性同位体17を収容する収容容器11と、この収容容器11に接触する第1面21とその反対側で冷却される第2面22とを持ち放射性同位体17の発熱を電力に変換する熱電素子12と、この熱電素子12の第2面22に接触する基端部25を持ちその反対側の末端部26で放熱する伝熱部15と、を備えている。そして、収容容器11の全表面積に対し、熱電素子12の第1面21の接触面積Aの占める割合が0.01から0.5の範囲に設定されている。
【0014】
Cs-137(半減期30.1年)、Cm-244(半減期18.1年)、Sr-90(半減期28.8年)、Am-241(半減期432.2年)は、いずれも放射性崩壊によってより安定な核種に変化し、その過程で崩壊熱を放出する。これら放射性同位体17は、RTG燃料として広く採用されるPu-238(半減期87.7年)と対比して、発熱密度が小さいが、生産・調達コストが比較的安価であるという利点を持つ。例示した放射性同位体17のうち、発熱密度が比較的大きくガンマ線の放出が少ないAm-241が好適に採用される。
【0015】
熱電素子12は、2種類の異なる金属または半導体を接合して、両端に温度差を与えて起電力を生じさせるゼーベック効果を利用するものである。この熱電素子12の一方の第1面21を収容容器11の表面に接触させて加熱する。そして、反対側の第2面22を伝熱部15の基端部25に接触させて冷却する。これにより、第1面21と第2面22との間の温度差が拡大し、熱電素子12は放射性同位体17の発熱を電力に変換する。
【0016】
伝熱部15は、熱伝導率が高い材料で構成され、一方の基端部25が熱電素子12の第2面22に接触し、反対側の末端部26が放熱部16を形成している。そして、放熱部16を冷却空間に置くか若しくは他の冷却媒体に接触されることで、基端部25と末端部26との温度差を大きくする。これにより、伝熱部15を介した熱伝導による熱輸送により第2面22における熱電素子12の冷却が促進される。
【0017】
ここで、原子力電池10は、宇宙空間の真空状態で使用することを想定している。このために、原子力電池10の設計仕様は、熱輸送の三つの形態である「熱伝導」、「対流」、「輻射放熱」のうち、「熱伝導」及び「輻射放熱」の影響を検討すればよい。仮に「輻射放熱」を無視し「熱伝導」の影響のみを検討すると、放射性同位体17の発熱は、全て伝熱部15を経由して放熱部16で放熱されることになる。
【0018】
このような仮想状態では、収容容器11の全表面積に対する接触面積Aの占める割合を小さくする程、第1面21における熱流束密度が高くなり、熱電素子12の電気出力が向上するといえる。しかし現実には、接触面積Aの占める割合を小さくする程、収容容器11の外表面から「輻射放熱」により散逸して発電に寄与しない熱量が増える。このために、使用する放射性同位体17の発熱密度が小さい場合、熱電素子12の電気出力を最大化させる収容容器11との接触面積Aの最適範囲があるといえる。
【0019】
図2は、原子力電池10に適用される熱伝導の式である。これら、(1)~(5)式に基づいて、上述した考察を検証する。ここで、熱電素子12の第1面21と第2面22との温度差dTとすると、熱電素子12の発電効率ηは、この温度差dTの2乗に比例することが知られている。すると、熱電素子12の発電量Pは、収容容器11と熱電素子12との接触面積A、係数kを用いて、図2の式(1)のように表される。
【0020】
さらに、この温度差dTは、熱電素子12の厚さL、熱電素子12の熱通過量Q、熱電素子12の熱伝導率λを用いて、図2の式(2)のように表される。そして、この式(2)を式(1)に代入して式(3)を得る。この式(3)において、放射性同位体17の発熱Qが一定で、熱伝導率λ、厚さL等も変化が小さいとすると、接触面積A以外を定数Cに置き換えることができ、図2の式(4)のように表すことができる。この式(4)は「輻射放熱」の影響を無視し「熱伝導」の影響のみを反映した特性を表している。
【0021】
図3は、原子力電池10において熱電素子12の接触面積Aに対する電気出力の特性を、図2の熱伝導式(4)に基づいて示したグラフである。このように、「輻射放熱」の影響を無視し「熱伝導」の影響のみを反映した原子力電池10における電気出力の特性は、熱電素子12の収容容器11に対する接触面積Aが小さい程、優れているという結果が得られる。
【0022】
図4(A)は放射性同位体17の発熱の収容容器11からの伝熱経路30(30a,30b)を示す図である。この伝熱経路30は、熱電素子12と伝熱部15を経由する熱伝導30aによるものと、収容容器11の外表面から直接される輻射放熱30bによるものとに分類される。ここで、放射性同位体17の全発熱量をQ、熱伝導30aによる伝熱量Qtec、輻射放熱30bによる放熱量Qradとすると、図2の式(5)の関係がある。
【0023】
図5は、原子力電池10において熱電素子12の接触面積Aに対する電気出力の特性を、「輻射放熱」の影響及び「熱伝導」の影響を共に反映させて示したグラフである。このグラフは、Am-241と同等の発熱密度を持つ発熱面の温度として、熱電素子12の第2面22の温度にdTを加算した値を近似的に設定し、シミュレーションした結果である。ここで、式(2)のQは式5のQtecを用いる。
【0024】
このような条件でシミュレーションした結果、熱電素子12の接触面積Aが小さくなるに連れて電気出力は増加するものの、さらに一定値よりも接触面積Aを小さくすると、この電気出力は減少に転じる。これは、熱電素子12の接触面積Aがこの一定値を超えて小さくなったところで輻射放熱30bが急激に増加し、放射性同位体17の発熱の多くが熱電素子12を経由して熱伝導30aができなくなることに関係している。
【0025】
図4(B)はコーティング31により輻射放熱30bが抑制された収容容器11からの伝熱経路30(30a,30b)を示す図である。このコーティング31としては、セラミック製の真空ビーズの含有塗料を塗布したものや、アルミニウムシートを貼付したものや、銀メッキを施したりしたものが挙げられる。
【0026】
このように、熱電素子12が非接触である収容容器11の外表面に、輻射放熱30bを抑制するコーティング31を施すことができる。これにより、図5のグラフに示される電気出力のピーク位置を、接触面積Aが小さくなる方向でかつ電気出力が大きくなる方向に改善することができる。
【0027】
このようなコーティング31の有無を含め、設定条件を様々に変化させて接触面積Aと電気出力の関係をシミュレーションした。その結果、熱電素子12の電気出力を最大化させる最適条件が、収容容器11の全表面積に対し熱電素子12の第1面21の接触面積Aの占める割合が0.005から0.5の範囲、また多くのケースで0.02から0.2の範囲にあることを見出した。接触面積Aの占める割合が0.005よりも小さいと輻射放熱30bの増大が避けられず電気出力が低下してしまう。そして、接触面積Aの占める割合が0.5よりも大きいと、放射性同位体17の発熱が熱電素子12を介して外部に大量に熱リークしてしまう。その結果、収容容器11との接触面(第1面21)における温度が低下して、熱電素子12の高温側と低温側の温度差が小さくなり電気出力が低下する。
【0028】
(第2実施形態)
次に図6から図7を参照して本発明における第2実施形態について説明する。図6は第2実施形態に係る原子力電池10Bの概略図である。なお、図6及び図7において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0029】
第2実施形態に係る原子力電池10Bは、第1実施形態と同様に、放射性同位体17を収容する収容容器11と、この放射性同位体17の発熱を電力に変換する熱電素子12と、この熱電素子12に接触しその反対側で放熱する伝熱部15と、を備え、収容容器11の全表面積に対し、熱電素子12の接触面積Aの占める割合が0.01から0.5の範囲に規定された構成を持つ。
【0030】
そして第2実施形態に係る原子力電池10Bの特徴は、収容容器11を内部空間18で浮かせた状態で支持する筐体32を、さらに備えている。そして伝熱部15は、末端部26が筐体32の外部に配置され、熱電素子12を押圧するように筐体32に固定されている。
【0031】
さらに伝熱部15には雄螺子(図示略)が設けられており、筐体32にはこの雄螺子に螺合する雌螺子35が設けられている。そして、筐体32に対する伝熱部15の挿入量を調整することで、熱電素子12に対する押圧量を設定することができる。なお、収容容器11を筐体32から支持する支持部材36は、放射性同位体17の発熱が収容容器11から直接に筐体32へ熱伝導することを抑制する役割を持つ。さらにこの支持部材36は、伝熱部15及び熱電素子12から受ける押圧力や運動に伴う慣性力に対して、筐体32と収容容器11とを一体化させておくのに十分な機械剛性を持つ。
【0032】
第2実施形態では、収容容器11、熱電素子12及び伝熱部15のそれぞれの接触面において、押圧力が作用するために、接触熱抵抗が低減する。その結果、熱電素子12の第1面21と第2面22との温度差を大きくすることができ、熱電素子12の電気出力を向上させることができる。つまり、上述した接触面に隙間が存在すると、大きな接触熱抵抗が発生するが、押圧力を作用させることで接触面の隙間を無くすことができる。
【0033】
図7は第2実施形態の変形例に係る原子力電池10Cの概略図である。この変形例に係る原子力電池10Cにおいては、収容容器11に、熱電素子12a及び伝熱部15aとは異なる、さらに別の熱電素子12bが、筐体32に固定された別の伝熱部15bに押圧され接触している。この別の伝熱部15bにも雄螺子(図示略)が設けられており、筐体32にはこの雄螺子に螺合する雌螺子35bが設けられている。
【0034】
収容容器11の全表面積に対し、熱電素子12の接触面積Aの占める割合を0.01から0.5の範囲にする規定は、これら複数(図示は二つ)の熱電素子12a,12bの合わせた接触面積で適用される。また第2実施形態の変形例は、収容容器11を平行な両端面から挟むように二つで一対の熱電素子12a,12bを配置した場合を例示しているが、これに限定されることはない。六面を持つ収容容器11の残りの四面のそれぞれに対し、同様に熱電素子を配置し、筐体32から伝熱部15で押圧することができる。
【0035】
(第3実施形態)
次に図8を参照して本発明における第3実施形態について説明する。図8は第3実施形態に係る原子力電池10Dの概略図である。なお、図8において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0036】
第3実施形態に係る原子力電池10Dは、第1実施形態と同様に、放射性同位体17を収容する収容容器11と、この放射性同位体17の発熱を電力に変換する熱電素子12と、この熱電素子12に接触しその反対側で放熱する伝熱部15と、を備え、収容容器11の全表面積に対し、熱電素子12の接触面積Aの占める割合が0.01から0.5の範囲に規定された構成を持つ。さらに第2実施形態と同様に、収容容器11を内部空間18で支持し、熱電素子12を押圧するように伝熱部15を固定する筐体32が設けられている。
【0037】
そして第3実施形態に係る原子力電池10Dの特徴は、伝熱部15が、ヒートパイプで構成されている点にある。すなわち第3実施形態では、伝熱部15(ヒートパイプ)において、密閉管37に収容した作動液38を熱電素子12に接触する基端部25で蒸発させ末端部26で凝縮させることで熱電素子12との接触面(第2面22(図1(B)))の冷却を促進する。このようなヒートパイプの機能により、熱電素子12の高温側と低温側の温度差を大きくして電気出力を向上させることができる。
【0038】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の原子力電池によれば、収容容器の全表面積に対し熱電素子の接触面積の占める割合が0.01から0.5の範囲にあるといった特徴を持つことにより、発熱密度の低い放射性同位体を熱源に用いても、熱電素子の高温側と低温側の温度差を大きくして、変換効率及び電気出力が向上する。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0040】
10(10A,10B,10C,10D)…原子力電池、11…収容容器、12(12a,12b)…熱電素子、15(15a,15b)…伝熱部、16…放熱部、17…放射性同位体、18…内部空間、21…第1面、22…第2面、25…基端部、26…末端部、30…伝熱経路、30a…熱伝導、30b…輻射放熱、31…コーティング、32…筐体、35…雌螺子、36…支持部材、37…密閉管、38…作動液。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8