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  • 特開-成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169892
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20221102BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221102BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C08L23/16
C08K3/013
C08K3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075595
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 達司
(72)【発明者】
【氏名】笠石 航
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB151
4J002DA037
4J002DJ006
4J002FD016
4J002FD017
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】金属部材と接触するように用いても金属部材の電食劣化が抑制され、しかも成形性が良好で、薄肉形状の物品にも適用可能な成形体を提供する。
【解決手段】ゴム組成物の加硫物たる成形体1である。加硫物の50%モジュラスが2.7Mpa以上である。加硫物の体積固有抵抗値が1×10Ω・cm以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物の加硫物たる成形体であって、
前記加硫物の50%モジュラスが2.7Mpa以上であり、
前記加硫物の体積固有抵抗値が1×10Ω・cm以上である、成形体。
【請求項2】
前記加硫物の硬度が70以上90以下である、請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記ゴム組成物は、エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムを含有する、請求項1又は2に記載の成形体。
【請求項4】
前記エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムは、
エチレン単位、α-オレフィン単位、及び非共役ポリエン単位を含有し、
前記エチレン単位の含有量、前記α-オレフィン単位の含有量、及び前記非共役ポリエン単位の含有量の合計を100質量%とした場合に、前記エチレン単位の含有量が60質量%以上90質量%以下である、請求項3に記載の成形体。
【請求項5】
前記ゴム組成物は、無機充填剤を含有し、
前記ゴム組成物における前記無機充填剤の含有量は、15.0質量%以上40.0質量%以下である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項6】
前記ゴム組成物は、カーボンブラックを含有し、
前記ゴム組成物における前記カーボンブラックの含有量は、20.0質量%以上45.0質量%以下である、請求項5に記載の成形体。
【請求項7】
前記無機充填剤に対する前記カーボンブラックの割合(前記カーボンブラック/前記無機充填剤)は、質量比で0.70以上1.40以下である、請求項6に記載の成形体。
【請求項8】
ホース形状を有する、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物の加硫物たる成形体は、金属部材と接触して用いられる場合がある。例えば、成形体がホースの場合に、固定用の金属製のクランプと接触するように使用される。成形体が金属部材に接触していると、成形体を通じて金属部材に電気が流れて、金属部材が電食劣化するおそれがある。
そこで、金属部材の電食劣化を抑制するために、成形体の体積固有抵抗を向上させる技術が検討されている。例えば、特許文献1では、絶縁性フィラーであるクレーを配合する技術が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-72291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、クレーの配合量を増やすと、補強材として使用されるカーボンブラックの配合量を減らす必要があり、その結果、成形性が低下するおそれがある。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、金属部材と接触するように用いても金属部材の電食劣化が抑制され、しかも成形性が良好な成形体を提供することを目的とする。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ゴム組成物の加硫物たる成形体であって、
前記加硫物の50%モジュラスが2.7Mpa以上であり、
前記加硫物の体積固有抵抗値が1×10Ω・cm以上である、成形体。
【発明の効果】
【0006】
本開示の成形体は、金属部材と接触するように用いても、金属部材の電食劣化が抑制され、しかも成形性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】成形体1の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕前記加硫物の硬度が70以上90以下である、成形体。
〔3〕前記ゴム組成物は、エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムを含有する、成形体。
〔4〕前記エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムは、
エチレン単位、α-オレフィン単位、及び非共役ポリエン単位を含有し、
前記エチレン単位の含有量、前記α-オレフィン単位の含有量、及び前記非共役ポリエン単位の含有量の合計を100質量%とした場合に、前記エチレン単位の含有量が60質量%以上90質量%以下である、成形体。
〔5〕前記ゴム組成物は、無機充填剤を含有し、
前記ゴム組成物における前記無機充填剤の含有量は、15.0質量%以上40.0質量%以下である、成形体。
〔6〕前記ゴム組成物は、カーボンブラックを含有し、
前記ゴム組成物における前記カーボンブラックの含有量は、20.0質量%以上45.0質量%以下である、成形体。
〔7〕前記無機充填剤に対する前記カーボンブラックの割合(前記カーボンブラック/前記無機充填剤)は、質量比で0.70以上1.40以下である、成形体。
〔8〕ホース形状を有する、成形体。
【0009】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0010】
1.成形体1
成形体1は、ゴム組成物の加硫物である。成形体1は、加硫物の50%モジュラスが2.7Mpa以上である。成形体は、加硫物の体積固有抵抗値が1×10Ω・cm以上である。成形体1の一例が図1に示されている。成形体1の形状は、特に限定されない。図1の成形体1は、ホース形状を有する。この成形体1は、エアクリーナーホースの一例である。エアクリーナーホースは、一般的にエンジンルーム内に搭載され、エアクリーナーを通過したクリーンエアーをエンジンに導く機能を有する。
【0011】
(1)ゴム組成物
(1.1)ゴム
ゴム組成物は、ゴム(ポリマー)を含有する。ゴムの種類は、特に限定されない。ゴムとして、例えば、エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴム、アクリロニトリルブタジエン共重合体、クロロプレンゴムが好適に例示される。これらのゴムは、単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0012】
ゴム組成物は、ゴムとして、エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムを含有することが好ましい。
エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムのα-オレフィンは、特に限定されない。α-オレフィンとしては、炭素原子数が3以上20以下のα-オレフィンが好適に例示される。α-オレフィンは、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン等が挙げられる。これらのα-オレフィンは、単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。α-オレフィンとして、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。
エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムに用いられる非共役ポリエンは、特に限定されない。非共役ポリエンとしては、炭素原子数3以上20以下の非共役ポリエンが好適に例示される。非共役ポリエンは、具体的には、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等が挙げられる。これらの非共役ポリエンは、単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0013】
エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムは、エチレン単位、α-オレフィン単位、及び非共役ポリエン単位を含有する。「エチレン単位」は、エチレンに由来する単量体単位を意味する。「α-オレフィン単位」は、α-オレフィンに由来する単量体単位を意味する。「非共役ポリエン単位」は、非共役ポリエンに由来する単量体単位を意味する。
エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムにおけるエチレン単位の含有量は、特に限定されない。エチレン単位の含有量は、ゴム組成物の成形性が良好であるという観点から含まれていればよく、エチレン単位の含有量、α-オレフィン単位の含有量、及び非共役ポリエン単位の含有量の合計を100質量%とした場合に、0質量%よりも大きく、60質量%以上が好ましく、63質量%以上がより好ましく、68質量%以上が更に好ましい。他方、エチレン単位の含有量は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、エチレン単位の含有量は、60質量%以上90質量%以下が好ましく、63質量%以上85質量%以下がより好ましく、68質量%以上80質量%以下が更に好ましい。上記のエチレン単位の含有量を含んでいるものが好ましい。
エチレン単位の含有量の異なるエチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムを複数種用いた場合には、少なくとも1種のエチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムにおいて、エチレン単位の含有量が上記範囲内であることが好ましい。
エチレン単位の含有量は、ASTM D3900に従ったFTIR法によって求められる。
【0014】
エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムにおける非共役ポリエン単位の含有量は、特に限定されない。非共役ポリエン単位の含有量は、エチレン単位の含有量、α-オレフィン単位の含有量、及び非共役ポリエン単位の含有量の合計を100質量%とした場合に、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、4質量%以上が更に好ましい。他方、非共役ポリエン単位の含有量は、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、非共役ポリエン単位の含有量は、2質量%以上15質量%以下が好ましく、3質量%以上10質量%以下がより好ましく、4質量%以上5質量%以下が更に好ましい。
非共役ポリエン単位の含有量の異なるエチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムを複数種用いた場合には、少なくとも1種のエチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムにおいて、非共役ポリエン単位の含有量が上記範囲内であることが好ましい。
非共役ポリエン単位の含有量は、ASTM D6047に従ったFTIR法によって求められる。
【0015】
(1.2)充填剤
(1.2.1)無機充填剤
ゴム組成物は、無機充填剤(但し、カーボンブラックを除く)を含有することが好ましい。ゴム組成物が無機充填剤を含有すると、成形体の体積固有抵抗値が向上し、金属部材の電食劣化を抑制できる。
無機充填剤は、特に限定されない。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ等が挙げられる。無機充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。無機充填剤は、白色フィラーと呼ばれることもある。
無機充填剤の含有量は、特に限定されない。ゴム組成物における無機充填剤の含有量は、成形体の体積固有抵抗値を向上させる観点から、ゴム組成物を100質量%とした場合に、15.0質量%以上が好ましく、20.0質量%以上がより好ましく、25.0質量%以上が更に好ましい。他方、無機充填剤は、ゴム組成物の成形性を良好にする観点から、40.0質量%以下が好ましく、35.0質量%以下がより好ましく、30.0質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、無機充填剤の含有量は、15.0質量%以上40.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以上35.0質量%以下がより好ましく、25.0質量%以上30.0質量%以下が更に好ましい。
【0016】
(1.2.2)カーボンブラック
ゴム組成物は、ゴム組成物の成形性の観点からカーボンブラックを含有することが好ましい。
カーボンブラックの種類は、特に限定されない。カーボンブラックとしては、例えば、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate SAF)、ISAF-HM(Intermediate SAF-High Modulus)、FEF(Fast Extrusion Furnace)、MAF(Medium Abrasion Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)が挙げられる。カーボンブラックは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、カーボンブラックのヨウ素吸着量(IA)は、特に限定されない。IAは、JIS K6217-1:2008に準拠して測定される値である。複数種のカーボンブラックを用いる場合には、IAは、複数種のカーボンブラックの混合物を試料として測定した値を採用する。カーボンブラックのヨウ素吸着量は10~160mg/gが好ましく、15~100mg/gがより好ましく、20~50mg/gが更に好ましい。
カーボンブラックの含有量は、特に限定されない。ゴム組成物におけるカーボンブラックの含有量は、薄肉形状の物品であっても成形性を良好にする観点から、ゴム組成物を100質量%とした場合に、20.0質量%以上が好ましく、24.0質量%以上がより好ましく、28.0質量%以上が更に好ましい。他方、カーボンブラックは、金属部材の電食劣化を抑制する観点から、45.0質量%以下が好ましく、40.0質量%以下がより好ましく、35.0質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、カーボンブラックの含有量は、20.0質量%以上45.0質量%以下が好ましく、24.0質量%以上40.0質量%以下がより好ましく、28.0質量%以上35.0質量%以下が更に好ましい。
【0017】
(1.2.3)無機充填剤に対するカーボンブラックの割合
無機充填剤に対するカーボンブラックの割合は、特に限定されない。
無機充填剤に対するカーボンブラックの割合(カーボンブラック/無機充填剤)は、質量比で0.70以上1.50以下であることが好ましく、0.90以上1.40以下であることがより好ましく、1.00以上1.30以下であることが更に好ましい。この範囲内では、成形体を金属部材と接触するように用いても、金属部材の電食劣化が抑制され、しかもゴム組成物の成形性が良好となる。
【0018】
(1.2.4)無機充填剤及びカーボンブラックの合計量
無機充填剤(但し、カーボンブラックを除く)及びカーボンブラックの合計量は、特に限定されない。この合計量は、ゴムを100質量部とした場合に、150質量部以上300質量部以下が好ましく、180質量部以上250質量部以下がより好ましい。
【0019】
(1.3)他の配合材
ゴム組成物には、ゴム、充填剤に加えて、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤、架橋助剤等を、必要に応じて適宜に配合しても差し支えない。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0020】
(1.3.1)軟化剤
軟化剤は、特に限定されない。軟化剤としては、例えば、ステアリン酸等の脂肪酸およびそのエステル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ポリエチレングリコール等のグリコール、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、石油アスファルト、ヒマシ油、ファクチス等が挙げられる。軟化剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
軟化剤の含有量は、特に限定されない。軟化剤の含有量は、ゴムを100質量部とした場合に、加工性を維持しつつ、加硫物の硬度を確保する観点から、20質量部以上120質量部以下が好ましい。
【0021】
(1.3.2)加硫剤
加硫剤としては、例えば、硫黄、有機過酸化物(過酸化物加硫剤)等が、好適に用いられる。軟化剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
(1.3.2.1)硫黄
硫黄は、特に限定されない。硫黄としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄等が好適に用いられる。
硫黄の配合量は、特に限定されない。硫黄の配合量は、ゴムを100質量部とした場合に、加硫を適度に進行させて、加硫後のブルームの発生を抑制する観点から、0.3質量部以上5.0質量部以下が好ましい。
【0023】
(1.3.2.2)有機過酸化物
有機過酸化物は、特に限定されない。有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5- ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペル オキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3 、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド-3,3,5-トリメチル シクロヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。有機過酸化物は、単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(1.3.2.3)架橋形態
架橋形態としては、硫黄系架橋、樹脂系架橋、有機過酸化物系架橋等が好適に例示される。架橋形態は、単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(1.3.3)加硫促進剤
硫黄を使用する場合の加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、N,N'-ジメチル-N,N'-ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N'-ジオクタデシル-N,N'-ジイソプロピルチウラムジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジル-ジスルフイド、ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、アセトアルデヒド-アニリン反応物、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア、2-メルカプトイミダゾリン、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジ-o-トリルチオ尿素、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジブチルキサントゲン酸亜鉛等が挙げられる。加硫促進剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。加硫促進剤は、2種類以上を併用することが望ましい。加硫促進剤の配合量は、要求される物性に応じて適宜最適量を決定することが好ましい。加硫促進剤の配合量は、ゴムを100質量部とした場合に、加硫を適度に進行させて、加硫後のブルームの発生を抑制する観点から、2質量部以上8質量部以下が好ましい。
【0026】
(1.3.4)架橋助剤
有機過酸化物を使用する場合の架橋助剤としては、例えば、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム、トリアリルイソシアヌレート、N,N'-m-フェニレンビスマレイミド、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、メタクリロキシエチルホスフェート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、N-メチロールメタクリルアミド、メタクリル亜鉛、メタクリル酸カルシウム、メタクリル酸マグネシウム等が挙げられる。架橋助剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
(1.3.5)パラフィン系プロセスオイル
ゴム組成物は、パラフィン系プロセスオイルを含有してもよい。
パラフィン系プロセスオイルは、市販品を用いることができる。市販品として、例えば、出光興産社製 ダイアナプロセスオイル「PS-430」、「PS-32」、「PS-90」、「PW-32」、「PW-90」、「PW-150」、「PW-380」等が挙げられる。
パラフィン系プロセスオイルの量は、特に限定されない。パラフィン系プロセスオイルの配合量は、ゴムを100質量部とした場合に、10質量部以上50質量部以下が好ましく、20質量部以上40質量部以下がより好ましい。
【0028】
(1.3.6)上記以外の配合材
ゴム組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、顔料、発泡剤等も配合することもできる。
【0029】
(1.4)ゴム組成物(未架橋ゴム)のムーニー粘度
未架橋ゴム組成物のムーニー粘度[ML(1+4)125°C]は、成形性の観点から、60以下が好ましい。未架橋ゴム組成物のムーニー粘度[ML(1+4)125°C]は、通常、50以上である。
ムーニー粘度(ML(1+4)125℃)は、JIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV 300型)を用いて、125℃の条件下で測定する。この際、測定開始から5分後のML(1+4)125℃を求める。
【0030】
(2)ゴム組成物の加硫物の特性
(2.1)50%モジュラス
加硫物の50%モジュラスは、薄肉形状等の物品の強度を十分に確保する観点から、2.7Mpa以上であり、2.8Mpa以上が好ましく、2.9Mpa以上が更に好ましい。加硫物の50%モジュラスは、通常、5Mpa以下である。
50%モジュラスの測定方法は、以下の通りである。加硫ゴムシートを打抜いてJIS K6251に記載されている3号形ダンベル試験片を調製する。この試験片と引張試験機(島津製作所製 AGS-1kNX)を用いて同JIS K6251に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で行ない、50%モジュラス(M50)を測定する。
【0031】
(2.2)体積固有抵抗値
加硫物の体積固有抵抗値は、金属部材の電食劣化を抑制する観点から、1×10Ω・cm以上であり、1×10Ω・cm以上が好ましく、1×10Ω・cm以上がより好ましい。加硫物の体積固有抵抗値は、通常、1×1011Ω・cm以下である。
体積固有抵抗値は、JIS K6271に従い、平滑な表面をもっている2mm×100mm×100mmの加硫ゴムシート(加硫物のシート)と電流計(アドバンテスト製エレクトロメータR8340)を用いて、サンプル(加硫ゴムシート)を金属電極に挟み、25℃、1Vの条件で体積固有抵抗率を測定する。
【0032】
(2.3)硬度
加硫物の硬度は、薄肉形状の物品に適用する観点から、70以上90以下が好ましく、75以上85以下がより好ましく、77以上83以下が更に好ましい。
この範囲の硬度とすると、例えば、ホース形状にしても、負圧等の圧力変化に耐えうるから、エアクリーナーホース等に適している。
硬度(A硬度)は、JIS K6253に従って測定する。すなわち、シートの硬度(タイプA デュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている2mmの加硫ゴムシート(加硫物のシート)3枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約6mmとして行う。
【0033】
2.成形体1の製造方法
成形体1の製造方法は、特に限定されない。
成形体1は、例えば、以下のように製造される。
(1)ゴム組成物の調製
ゴム(ポリマー)に、所定量の充填剤、軟化剤等を配合してゴム配合物を準備する。その後、ゴム配合物をミキサー等の二軸混練機によって混練し、加硫剤及び加硫促進剤を投入しゴム組成物を調製する。
(2)成形体1の作製
ゴム組成物を所定形状に成形加工した後、所定温度で加硫することで成形体1を作製できる。
なお、成形体1がホース形状を有する場合には、厚みは特に限定されない。ホース形状の場合には、成形体1の最大厚みは、例えば2.0mm以上5.0mm以下とすることができる。
【実施例0034】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0035】
1.成形体の作製(実施例1-4、及び比較例1-2)
表1-3に示す配合割合で、各種成形体を作製した。表1において、主要な原料の詳細を以下に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
(1)主要な原料
(1.1)エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴム
エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムとして、下記のポリマーを用いた。なお、ポリマーCは、ポリマー分とオイル分を含んでいるため、表1では両者(ポリマー分、オイル分)の量を別々に記載している。
・ポリマーA:EPDM ケルタン2650 ランクセス
非共役ポリエン単位の含有量 6質量%、エチレン単位の含有量 53質量%
・ポリマーB:EPDM EPT3092M 三井化学株式会社製
非共役ポリエン単位の含有量 5質量%、エチレン単位の含有量 65質量%
・ポリマーC:EPDM エスプレン600F 住友化学株式会社製
非共役ポリエン単位の含有量 4質量%、エチレン単位の含有量 66質量%
ポリマーCのオイル分:パラフィンオイル
なお、ポリマーCは、ポリマー分を50質量%、オイル分を50質量%含有している。
・ポリマーD:EPDM NORDEL IP4725P ダウケミカル
非共役ポリエン単位の含有量 5質量%、エチレン単位の含有量 70質量%
・ポリマーE:EPDM K9720 三井化学株式会社製
非共役ポリエン単位の含有量 10質量%、エチレン単位の含有量 77質量%
【0038】
(1.2)カーボンブラック
・カーボンブラックFEF:旭#60UG(FEF) 旭カーボン株式会社製、ヨウ素吸着量IA 41mg/g
・カーボンブラックSRF:旭#50G(SRF) 旭カーボン株式会社製、ヨウ素吸着量IA 27mg/g
(1.3)無機充填剤
・白色フィラー:バーケスKE Burgess Pigment
バーケスKEはケイ酸アルミニウム主成分(SiO:51.7% Al:43.2%)とするクレー
(1.4)パラフィン系プロセスオイル(表中では、「プロセスオイル」と略して記載)
・プロセスオイル:ダイアナプロセスPS-430 出光興産株式会社製
(1.5)共通少量配合資材
全ての試料において、以下の資材を配合した。
・酸化亜鉛2種:5.00質量部(phr) ハクスイテック株式会社製
・ステアリン酸:1.00質量部(phr) 日油株式会社製
・PEG#4000:2.00質量部(phr) 株式会社アデカ製
・ヒタノール1501:1.50質量部(phr) 株式会社日立化成工業製
・ストラクトールWB-16:0.20質量部(phr)エスアンドエス株式会社製
・レノグランCBS-80(N-シクロヘキシル-2--ベンゾチアジルスルフェンアミド):2.13質量部(phr) ランクセス社製
・レノグランZDBC-80(ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛):1.25質量部(phr) ランクセス社製
・サンミックスTT-75(チウラム系加硫促進剤):0.76質量部(phr) 三新化学工業株式会社
・サンミックスTRA-70(チウラム系加硫促進剤):0.71質量部(phr) 三新化学工業株式会社
・レノグランS-80(硫黄):0.75質量部(phr) ランクセス社製
・バルノックR(4,4'-ジチオジモルホリン):1.50質量部(phr) 大内新興化学工業株式会社製
【0039】
カーボンブラックの総量(質量部)は、カーボンブラックFEFと、カーボンブラックSRFの合計量を意味する。
カーボンブラックの総量(質量%)は、組成物の全体量(質量部)に対するカーボンブラックの総量(質量部)の割合である。この割合は、本開示のカーボンブラックの含有量(質量%)に相当する。
白色フィラー(質量%)は、組成物の全体量(質量部)に対する白色フィラー(質量部)の割合である。この割合は、本開示の無機充填剤の含有量(質量%)に相当する。
カーボンブラック/白色フィラーの比率(質量比)は、本開示のカーボンブラック/無機充填剤の質量比に相当する。
フィラー総量は、カーボンブラックと白色フィラーの合計量である。
オイル総量(質量部)は、ポリマーCのオイル分とパラフィン系プロセスオイルの合計量である。
オイル総量(質量%)は、組成物の全体量(質量部)に対するオイル総量(質量部)の割合である。
【0040】
(2)成形体の作製
成形体は、具体的には以下のように作製した。
ポリマーに、所定量のカーボンブラック及び白色フィラー、軟化剤等を配合してゴム配合物を準備した。その後、この配合物をミキサーなどの二軸混練機によって混練し(排出温度100℃、回転数25rpm)、8インチロールで加硫剤、加硫促進剤を投入しゴム組成物を調製した。ゴム組成物を試験方法に適した形状に成形、加工した後、170℃で10分加硫し、加硫ゴムの成形体とした。
【0041】
2.評価方法
ゴム組成物(未架橋ゴム)のムーニー粘度は、「(1)ゴム組成物 (1.4)ゴム組成物(未架橋ゴム)のムーニー粘度」の欄に記載の方法によって測定した。
加硫物の50%モジュラス、体積固有抵抗値、及び硬度は、「(2)ゴム組成物の加硫物の特性」の欄の記載の方法によって測定した。
【0042】
3.結果
結果を表1に併記する。
(1)ムーニー粘度(ML(1+4)125℃)
表1において、ムーニー粘度の欄のAは以下のことを意味する。
A:ムーニー粘度が60以下であり、未加硫のゴム組成物の成形性が良好である。
(2)硬度
表1において、硬度の欄のA,Bは以下のことを意味する。
A:硬度が70~90であり、薄肉形状の物品にも適用可能である。
B:硬度が70未満であり、薄肉形状の物品には不適である。
(3)50%モジュラス
表1において、50%モジュラスの欄のA,Bは以下のことを意味する。
A:50%モジュラスが2.7以上あり、薄肉形状の物品にも適用可能である。
B:50%モジュラスが2.7未満であり、薄肉形状の物品には不適である。
(4)体積固有抵抗値
表1において、体積固有抵抗値の欄のA,Bは以下のことを意味する。
A:体積固有抵抗値が1.0×10Ω・cm以上であり、金属部材と接触するように用いても金属部材の電食劣化が抑制される。
B:体積固有抵抗値が1.0×10Ω・cm未満であり、金属部材と接触するように用いると金属部材を電食劣化させる。
(5)総合判定
表1において、総合判定の欄の「OK」,「NG」は以下のことを意味する。
OK:未加硫のゴム組成物の成形性が良好であり、加硫物の特性も良好である。
NG:加硫物の特性が不良である。
【0043】
(6)実施例1-4の各要件の充足状況
実施例1-4は、下記要件(a)-(h)を全て満たしている。
・要件(a):加硫物の50%モジュラスが2.7Mpa以上である。
・要件(b):加硫物の体積固有抵抗値が1×10Ω・cm以上である。
・要件(c):加硫物の硬度が70~90である。
・要件(d):ゴム組成物は、エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムを含有する。
・要件(e):エチレン-α-オレフィン-非共役ポリエン共重合体ゴムにおいて、エチレン単位の含有量が60質量%以上90質量%以下である。
・要件(f):無機充填剤を含有し、無機充填剤の含有量が15.0質量%以上40.0質量%以下である。
・要件(g):カーボンブラックを含有し、カーボンブラックの含有量が20.0質量%以上45.0質量%以下である。
・要件(h):無機充填剤に対するカーボンブラックの割合(カーボンブラック/無機充填剤)が、質量比で0.70以上1.40以下である。
【0044】
(7)比較例1-3の各要件の充足状況
これに対して、比較例1-3は、以下の要件を満たしていない。
比較例1では、要件(b)(f)(g)(h)を満たしてない。
比較例2では、要件(a)(c)を満たしてない。
比較例3では、要件(a)(c)を満たしてない。
【0045】
(8)結果及び考察
実施例1-4は、総合判定が良好であった。すなわち、実施例1-4は、未加硫のゴム組成物の成形性が良好であり、加硫物の特性も良好であった。
これに対して、無機充填剤(白色フィラー)を含まない比較例1は、加硫物の体積固有抵抗値が低く、総合判定も不良であった。
比較例2は、加硫物の50%モジュラスが低く、加硫物の硬度も低く、総合判定も不良であった。
比較例3は、加硫物の50%モジュラスが低く、加硫物の硬度も低く、総合判定も不良であった。なお、比較例3では、エチレン単位の含有量が53質量%と低いEPDM(ポリマーA)を、EPDM100質量部の中で50質量部用いており、総合判定が不良である。よって、原料として用いるEPDM100質量部の中で、少なくとも50質量部よりも多くのEPDMがエチレン単位の含有量が60質量%以上90質量%以下の方が好ましいことが分かる。
【0046】
4.実施例の効果
実施例1-4は、金属部材と接触するように用いても金属部材の電食劣化が抑制され、しかも成形性が良好で、薄肉形状の物品にも適用可能である。
【0047】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…成形体
図1