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特開2022-169893家族性正常眼圧緑内障の診断補助方法、診断キット及びバイオマーカー
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  • 特開-家族性正常眼圧緑内障の診断補助方法、診断キット及びバイオマーカー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169893
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】家族性正常眼圧緑内障の診断補助方法、診断キット及びバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20221102BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12N15/11 Z ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075596
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】511286942
【氏名又は名称】岩田 岳
(71)【出願人】
【識別番号】521185309
【氏名又は名称】潘 洋
(71)【出願人】
【識別番号】521187200
【氏名又は名称】木村 至
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 岳
(72)【発明者】
【氏名】潘 洋
(72)【発明者】
【氏名】木村 至
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】家族性正常眼圧緑内障の関連遺伝子を見つけ、早期発見のためのその診断補助方法を提供する。
【解決手段】原発開放隅角緑内障のうち正常眼圧緑内障に分類される患者の割合は非常に高い。本発明ではMETTL23遺伝子変異を検出することを特徴とする。METTL23遺伝子変異はc.A83Gである。METTL23遺伝子変異はエクソン2にある。更にイントロン2の遺伝子多型(c.84+60delAT)を検出することでより正確に家族性正常眼圧緑内障の診断が可能である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
METTL23遺伝子変異を検出することを特徴とする、家族性正常眼圧緑内障の診断補助方法。
【請求項2】
METTL23遺伝子変異はc.A83Gであることを特徴とする、請求項1に記載の家族性正常眼圧緑内障の診断補助方法。
【請求項3】
METTL23遺伝子変異がエクソン2にあることを特徴とする、請求項1に記載の家族性正常眼圧緑内障の診断補助方法。
【請求項4】
更にイントロン2の遺伝子多型(c.84+60delAT)を検出することを特徴とする、請求項3に記載の家族性正常眼圧緑内障の診断補助方法。
【請求項5】
家族性正常眼圧緑内障を診断するための診断キットであって、生物学的試料におけるMETTL23遺伝子変異を検出する手段を含むことを特徴とする、家族性正常眼圧緑内障の診断キット。
【請求項6】
METTL23遺伝子変異はc.A83Gであることを特徴とする、請求項5に記載の家族性正常眼圧緑内障の診断キット。
【請求項7】
METTL23遺伝子変異がエクソン2にあることを特徴とする、請求項5に記載の家族性正常眼圧緑内障の診断キット。
【請求項8】
更にイントロン2の遺伝子多型(c.84+60delAT)を検出する手段を含むことを特徴とする、請求項7に記載の家族性正常眼圧緑内障の診断キット。
【請求項9】
家族性正常眼圧緑内障を診断するためのバイオマーカーであって、METTL23遺伝子変異であることを特徴とするバイオマーカー。
【請求項10】
METTL23遺伝子変異はc.A83Gであることを特徴とする、請求項9に記載のバイオマーカー。
【請求項11】
METTL23遺伝子変異がエクソン2にあることを特徴とする、請求項9に記載のバイオマーカー。
【請求項12】
更にイントロン2の遺伝子多型(c.84+60delAT)を含むことを特徴とする請求項11に記載のバイオマーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家族性正常眼圧緑内障の診断補助方法、診断キット、及び、家族性正常眼圧緑内障を診断するためのバイオマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は、国内における失明原因第1位の疾患であり、40歳以上の約5.0%が罹患している(日本緑内障学会多治見スタディ)。緑内障の有病率は年齢とともに増加するが、痛みが無く、症状の進行が遅いため、緑内障であることを気づかない人も多い。緑内障では、眼内の静水圧(眼圧)が高くなることで視神経が圧迫されて傷害を受ける。日本人の平均眼圧は約14.5mmHgで、標準偏差2.5mmHgの2倍よりも高い場合に高眼圧と診断される。慢性的な高眼圧の負荷によって視神経が圧迫され続けると次第に視覚伝達機能が不全となり、視野が欠損する(非特許文献1)。
【0003】
緑内障には、原発開放隅角緑内障、原発閉塞隅角緑内障、続発緑内障、発達緑内障などがあるが、日本人の場合は約8割が原発開放隅角緑内障(Primary Open Angle Glaucoma, POAG)である。POAGは、隅角が閉塞していないにも関わらず、緑内障に特徴的な形態的症状(視神経乳頭辺縁部の菲薄化、網膜神経線維層欠損など)や視野欠損が現れる。POAGには、その眼圧が正常値内(日本人の場合10.0mmHg~21.0mmHg)であっても上記緑内障症状を呈する正常眼圧緑内障(Normal Tension Glaucoma, NTG)が約90%含まれる(非特許文献1参照)。
【0004】
POAGのうちNTGに分類される患者の割合は世界的に見て非常に高い事が明らかとなっている。例えば、米国ラテン系人種では80~82%である(非特許文献2)。
【0005】
緑内障の主な危険因子として、遺伝因子があり、その発症には遺伝子が関与していることが強く示唆されている。米国特許第5,789,169号(特許文献1)には緑内障関連遺伝子としてTIGR(小柱網誘導グルココルチコイド応答)タンパク質をコードする遺伝子が開示された。また、緑内障関連遺伝子のうちCYP1B1遺伝子における突然変異を検出し、該突然変異の存在を緑内障の指標として緑内障の診断を行う方法も開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,789,169号
【特許文献2】特表2001-512969号公表公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Iwase et al.Ophthalmol.2004,111:1641-1648.
【非特許文献2】Varma et al. Ophthalmol. 2004, 111: 1121-1131.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
緑内障は気づかないうちに症状が進行することが多く、しかも症状が進行すると最終的に失明に至る。本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、家族性正常眼圧緑内障の関連遺伝子を見つけ、早期発見のためのその診断補助方法を提供することを目的とする。また、家族性正常眼圧緑内障の診断キットを提供することを目的とする。また、家族性正常眼圧緑内障を診断するためのバイオマーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる家族性正常眼圧緑内障の診断補助方法は、METTL23遺伝子変異を検出することを特徴とする。
【0010】
本発明にかかる家族性正常眼圧緑内障の診断キットは、生物学的試料におけるMETTL23遺伝子変異を検出する手段を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる家族性正常眼圧緑内障を診断するためのバイオマーカーは、METTL23遺伝子変異であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、家族性正常眼圧緑内障を適切に診断することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】家族性正常眼圧緑内障の家系図を示す図である。
図2】家族性正常眼圧緑内障患者におけるMETTL23遺伝子変異の検出手法を説明する図である。
図3】METTL23ノックインマウスの網膜を示す写真図である。
図4】METTL23遺伝子c.A83G変異によるスプライシング異常を説明する図であって、そのうち(A)はスプライシング・ベクターにMETTL23エクソン2と周辺の配列を挿入し、これをHEK293細胞株にトランスフェクションする実験を説明する図であって、(B)は抽出されたmRNAのRT-PCR産物の電気泳動の結果を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0015】
ヒトMethyltransferase Like Proteins(METTL)はメチル化反応の共基質であるS-アデノシルメチオニンの結合ドメインの存在を特徴とする大きなタンパク質ファミリーである。このタンパク質ファミリーのメンバーはDNA、RNA、またはタンパク質のメチルトランスフェラーゼであることが予測されているが、ほとんどのMETTTLタンパク質はまだ十分にその機能が明らかにされていない。METTL23は、タンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼ(PRMT)との相同性が高いMETTTLファミリーに属しているが、臓器における酵素活性はまだ確認されていない。2つのアイソフォーム(アイソフォーム1と2)と7つの異なるMETTTL23 mRNA転写物(UCSC Genome Browser)が報告されており、6つのコーディングと1つの非コーディングが含まれている。転写変異体1、2、および3は、タンパク質アイソフォーム1(190アミノ酸)をコードし、転写物4、5、および6は、より短いタンパク質アイソフォーム2(123アミノ酸)をコードする。
【0016】
本発明者は、METTL23遺伝子に家族性正常眼圧緑内障と相関性の高い変異領域があり、家族性正常眼圧緑内障患者では健常者と比較して変異型が有意に多いことを新知見として見いだし、かかる事実に基づいて本発明を完成させた。
【0017】
本発明において、家族性正常眼圧緑内障の診断補助方法は、METTL23遺伝子変異を検出することを特徴とする。
【0018】
本発明において、家族性正常眼圧緑内障の診断キットは、生物学的試料におけるMETTL23遺伝子変異を検出する手段を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明において、家族性正常眼圧緑内障を診断するためのバイオマーカーは、METTL23遺伝子変異である。
【0020】
本明細書において「バイオマーカー」とは、家族性正常眼圧緑内障の罹患の有無又は罹患の程度を診断するために、直接又は間接的に利用されるものである。
【0021】
本発明においては、METTL23遺伝子変異の有無を指標として家族性正常眼圧緑内障の診断がなされ、具体的には、(A)生物学的試料中に含まれるゲノムDNAを抽出する工程と、(B)生物学的試料中のMETTL23遺伝子変異を検出する工程と、(C)METTL23遺伝子変異の有無を指標として家族性正常眼圧緑内障を検出する工程と、を含む。
【0022】
生物学的試料は、特に制限されることなく、被験者の血液、血清、涙液、唾液、尿、生検組織等が含まれ、例えば血液を好適に用いることができる。
【0023】
上記(A)工程におけるゲノムDNAを抽出する方法としては、被験者から得られる生物学的試料からゲノムDNAを抽出することのできる方法であれば特に制限されない。
【0024】
上記(B)工程におけるMETTL23遺伝子変異を検出する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば定量PCR法(リアルタイムPCR法を含む)が挙げられる。この定量PCR法は、METTL23遺伝子変異の配列を増幅し得るプライマーセットを用いる方法であり、METTL23遺伝子変異を検出することが可能である限り特に制限されず、蛍光プローブ法(例えば、TaqMan(登録商標)プローブ法)、アガロース電気泳動法、SYBRグリーン法等の通常の定量PCR法を用いることができる。
【0025】
定量PCR法におけるプライマーセットとは、METTL23遺伝子変異の配列を増幅し得るプライマー(ポリヌクレオチド)の組合せを意味する。上記プライマーとしては、METTL23遺伝子変異の配列を増幅し得る限り特に限定されないが、フォワードプライマーとリバースプライマーとからなるプライマーセットを例示することができる。プライマーセットは、その配列情報に基づき当該技術分野において周知の方法を用いて化学合成等することにより得ることができる。
【0026】
上記(C)工程において、具体的には、被験者の生物学的試料中のMETTL23遺伝子に変異が存在するが、コントロールの生物学的試料中のMETTL23遺伝子には変異が存在しない場合に、被験者が家族性正常眼圧緑内障であると診断することができる。
【0027】
また、本実施形態による家族性正常眼圧緑内障を診断するためのキットは、生物学的試料におけるMETTL23遺伝子変異を測定する手段を含むものであり、例えば、METTL23遺伝子変異の配列を増幅し得る、フォワードプライマーとリバースプライマーとからなるプライマーセットを含む。
【0028】
本発明においてMETTL23遺伝子変異は、特に限定されるものではないが例えば後述の実施例にて示されるようにc.A83Gである。
【0029】
また本発明においてMETTL23遺伝子変異は例えばエクソン2に位置する。
【0030】
また本発明においてMETTL23遺伝子変異の検出に加えて更にイントロン2の遺伝子多型(c.84+60delAT)を検出することにより正確に家族性正常眼圧緑内障を診断することが可能である。
【0031】
遺伝子多型の検出は公知のSNP検出方法のいずれも使用することができる。古典的な検出方法としては、例えば、被験者の細胞等から抽出したゲノムDNAを試料とし、遺伝子多型(c.84+60delAT)部位の塩基を含む約15~約500塩基の違続した塩基配列を含有してなる核酸をプローブとして用い、ストリンジェンシーを正確にコントロールしながらハイブリダイゼーションを行い、プローブと完全相補的な配列のみを検出する方法や、上記核酸と上記核酸において多型部位の塩基が他の塩基に置換された核酸のいずれか一方を標識し、他方を未標識としたミックスプローブを用い、変性温度から徐々に反応温度を低下させながらハイブリダイゼーションを行い、一方のプローブと完全相補的な配列を先にハイブリダイズさせ、ミスマッチを有するプローブとの交差反応を防ぐ方法などが挙げられる。
【0032】
好ましくは、遺伝子多型の検出は、例えばTaqMan PCR法、RFLP法、PCR-SSCP法、ASOハイブリダイゼーション、ダイレクトシークエンス法、ARMS法、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法、RNaseA切断法、化学切断法、DOL法、インベーダー法、MALDI-TOF/MS法、TDI法、モレキュラー・ビーコン法、ダイナミック・アリールスペシフィック・ハイブリダイゼーション法、パドロック・プローブ法、UCAN法、DNAチップまたはDNAマイクロアレイを用いた核酸ハイブリダイゼーション法、およびECA法などにより実施することができる。
【実施例0033】
(1)METTL23遺伝子の変異が開放隅角緑内障の原因である根拠
1,462症例の情報をGenEyeデータベースに登録し、1,120検体について全エクソーム解析/全ゲノム解析を行った。今回、ヒストンのメチル化酵素Methyltransferase Like 23 遺伝子(METTLE23)の変異によって、開放隅角正常眼圧緑内障を発症する優性遺伝の家系を発見した(図1)。ゲノム解析の結果、METTL23 遺伝子の変異型はc.A83Gであった。図1は開放隅角緑内障の家系図を示す。ここで四角が男性、丸が女性、黒は患者、白は健常者、斜線は死亡である。アスタリスクの検体について遺伝子解析を行った。
【0034】
METTL23遺伝子変異の検出は下記手法により行った。即ち、患者の血液サンプルからゲノムDNAを抽出した(Magtration System 8Lx QIAamp; DNA Kit; Precision System Science Co.、Ltd.、Tokyo、Japan)。METTL23の変異(p.E28G; c.A83G)は、下記プライマーを使用したDNAシーケンサー(ABI 3130; Applied Biosystems)でのダイレクトシーケンス(BigDyeTMターミネーターv3.1サイクルシーケンスキット; Thermo Fisher Scientific)によって決定された(図2)。
フォワードプライマー:5’-AATGATCCCTGATACTGTGACA-3’(配列番号1)
リバースプライマー:5’-AGGGTTCAAGCAATTCTGTTTC-3’(配列番号2)
【0035】
次にMETTL23 c.A83G変異が家族性開放隅角緑内障を発症することを証明するために、患者と同じ変異にゲノム編集したヘテロMettl23 +/G とホモ Mettl23 G/G のノックインマウスを作製した。
【0036】
生後2 か月で周辺網膜の視神経繊維層の菲薄化(図3黒枠)や網膜視神経乳頭陥凹(図3赤枠)など、開放隅角正常眼圧緑内障の病態をノックインマウスで確認した。図3はMettl23ノックインマウスの網膜を示す写真図である。Control: 正常マウス網膜、Mettl23 +/G: ヘテロノックインマウス網膜、Mettl23 G/G: ホモノックインマウス網膜である。
【0037】
以上より、本発明者はMETTL23遺伝子変異が開放隅角正常眼圧緑内障の原因であることを確信した。
【0038】
(2)METTL23イントロン2の2塩基欠損・遺伝子多型のアッセイ
PrimeSTAR HS DNAポリメラーゼ(TAKARA)を使用して、開放隅角正常眼圧緑内障患者および対照被験者のMETTTL23エクソン2をPCRによって増幅した。PCRの条件は下記表1に示すものであった。
【0039】
【表1】
【0040】
XhoIおよびXbalエンドヌクレアーゼ(TAKARA)を使用してPCR産物をpSpliceExpress(Addgene#32485)ベクターに挿入し、得られたコンストラクトをサンガーDNAシーケンシングで検証した。METTL23 c.A83G 変異(図4(A)矢印*)はスプライシング異常によって、エクソン2が欠損するmRNAが生成される(図4)。図4(A)は、正常、遺伝子変異(c.A83G)、遺伝子多型(c.84+60delAT)を含むエクソン2と周辺の配列をそれぞれスプライシング・ベクター(pSpliceExpress)のXhoIとXbaI制限酵素サイトにクローニングして、HEK293細胞株にトランスフェクションすることを説明する図である。家族性正常眼圧緑内障の患者はイントロン2の遺伝子多型(c.84+60delAT)を有することが示唆された。
【0041】
野生型(WT)および変異型(A83G)のミニ遺伝子をViaFectトランスフェクション試薬(Promega)を使用してHEK293細胞にトランスフェクトし、48時間後にRNeasy Plus Mini Kit(QIAGEN)を使用して全RNAを単離した。この実験はスプライシング・ベクターにMETTL23エクソン2と周辺の配列を挿入し、これをHEK293細胞株にトランスフェクションすることによって、正常配列と患者配列で生成されるmRNAの配列を比較するアッセイ法である(図4(A))。
【0042】
この全RNAからHigh-Capacity cDNA逆転写キット(Applied Biosystems)をランダムプライマーを使用してcDNAを生成し、ベクターエクソンInsEX2およびInsEX3の配列に対応するプライマーペアを使用したPCRによって特異的にスプライス産物を増幅した。PCRの条件は下記表2に示すものであった。
【0043】
【表2】
【0044】
野生型および変異型ミニ遺伝子から得られたRT-PCR産物は、ゲル電気泳動によって視覚化され、それらの配列組成はサンガーDNAシーケンシングによって決定された(図4(B))。図4(B)は、トランスフェクションされた細胞株からmRNAを抽出し、RT-PCR産物の電気泳動の結果を示す図である。ここでEV:空ベクター、PBS:PBSのみ(PCRネガティブ・コントロール)、WT:正常、A83G:遺伝子変異、DelAT:遺伝子多型である。
【0045】
エクソン2のc.A83G スプライス・ドナー配列の変異によって、106 bpの塩基が欠損し、67アミノ酸のないタンパク質が生成される。14人の開放隅角緑内障の患者にイントロン2の2塩基欠損・遺伝子多型が検出された(図4(A)矢印**)。即ち、METTL23遺伝子変異c.A83Gを検出し、更にイントロン2の遺伝子多型(c.84+60delAT)を検出することにより、家族性正常眼圧緑内障の診断がより適格なものとなることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0046】
開放隅角正常眼圧緑内障の診断に利用できる。
【配列表フリーテキスト】
【0047】
配列番号1、2:プライマー
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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