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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169905
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075616
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜多 昂大
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA23
2H033BA10
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA25
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB12
2H033BB30
2H033BB33
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】定着ベルトの内周面を傷つけることなく、かつ、最も効果的な箇所で潤滑剤を保持することのできる定着装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着装置200は、周回移動可能な無端状の定着ベルト211と、定着ベルト211の外側から圧接する加圧ローラ220と、定着ベルト211の内周面側に配置されて定着ベルト211と加圧ローラ220との間で定着ニップ領域FNを形成する押圧パッド212と、押圧パッド212を定着ベルト211とは反対側から支持する支持部材215とを備えている。さらに、定着装置200は、押圧パッド212の長手方向に沿って、押圧パッド212の全長とほぼ等しい長さに形成された保持部301を有する潤滑剤保持部材300を備えている。潤滑剤保持部材300は、定着ベルト211の回転方向において押圧パッド212の下流側付近のニップ出口に保持部301を配置させて潤滑剤を保持する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周回移動可能な定着ベルトと、前記定着ベルトの外側から圧接する加圧部材と、前記定着ベルトの内周面側に配置されて該定着ベルトと前記加圧部材との間で定着ニップ領域を形成するニップ形成部材とを備えた定着装置であって、
前記ニップ形成部材の長手方向に沿って、前記ニップ形成部材の全長とほぼ等しい長さに形成された保持部を有する潤滑剤保持部材を備え、
前記潤滑剤保持部材は、前記定着ベルトの回転方向において前記ニップ形成部材の下流側付近のニップ出口に前記保持部を配置させて潤滑剤を保持することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置であって、
前記潤滑剤保持部材は、前記保持部の両端から屈曲して形成され、互いに平行に配置された2本の連結部と、前記連結部における前記保持部との反対側端部を屈曲して形成された係止部とを有しており、
前記潤滑剤保持部材は、前記ニップ形成部材を支持する支持部材に設けられた貫通穴に前記連結部を挿入し、前記係止部を前記支持部材に係止させることで、前記支持部材に取り付けられることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の定着装置であって、
前記保持部は、長手方向に沿って複数の保持溝となる切込みが設けられていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項3に記載の定着装置であって、
前記保持溝は、前記定着ベルトの内周側から外周側に向かうにつれて、前記保持部の端部から中央部に向かうような斜めの切込みとされていることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の定着装置であって、
前記保持部は、コイル状に形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の定着装置であって、
前記保持部の周囲に潤滑剤吸収部材が巻き付けられていることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置、およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着装置として、定着ベルトの内周面側にニップ形成部材を配置し、加圧部材(例えば加圧ローラ)を定着ベルトの外側からニップ形成部材に向けて圧接することで、定着ベルトと加圧ローラとの間で定着ニップ領域を形成する定着装置が知られている。このような定着装置では、定着ベルトがニップ形成部材に摺動しながら回転するため、ニップ形成部材と定着ベルトとの摺擦面に潤滑剤が供給される。この場合、定着ベルトの幅方向の端部から潤滑剤が漏れ出ないように潤滑剤を保持する必要がある。
【0003】
特許文献1では、フェルトやスポンジなどの潤滑剤保持部材を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-128496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、フェルトやスポンジを用いた潤滑剤保持部材を小型化できず、潤滑剤の最も溜まりやすい(潤滑剤が最も漏れ出やすい)位置に潤滑剤保持部材を配置することが困難であるといった課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、定着ベルトの内周面を傷つけることなく、かつ、最も効果的な箇所で潤滑剤を保持することのできる定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の定着装置は、周回移動可能な定着ベルトと、前記定着ベルトの外側から圧接する加圧部材と、前記定着ベルトの内周面側に配置されて該定着ベルトと前記加圧部材との間で定着ニップ領域を形成するニップ形成部材と、を備えた定着装置であって、前記ニップ形成部材の長手方向に沿って、前記ニップ形成部材の全長とほぼ等しい長さに形成された保持部を有する潤滑剤保持部材を備え、前記潤滑剤保持部材は、前記定着ベルトの回転方向において前記ニップ形成部材の下流側付近のニップ出口に前記保持部を配置させて潤滑剤を保持することを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、潤滑剤保持部材の保持部を潤滑剤の溜まりやすいニップ出口に配置させ、表面張力を利用して潤滑剤を保持部の周囲に保持することができる。ニップ出口は定着ベルト内における狭い隙間であるが、表面張力を利用する保持部は細い棒状などの部材とすることができ、保持部をニップ出口に配置することが容易であるため、潤滑剤保持部材は最も効果的な箇所で潤滑剤を保持することができる。また、表面張力を利用する保持部は、定着ベルトに接触させることなく潤滑剤を保持することが可能であり、定着ベルトの内周面を傷つけることも回避できる。
【0009】
また、上記定着装置では、前記潤滑剤保持部材は、前記保持部の両端から屈曲して形成され、互いに平行に配置された2本の連結部と、前記連結部における前記保持部との反対側端部を屈曲して形成された係止部とを有しており、前記潤滑剤保持部材は、前記ニップ形成部材を支持する支持部材に設けられた貫通穴に前記連結部を挿入し、前記係止部を前記支持部材に係止させることで、前記支持部材に取り付けられる構成とすることができる。
【0010】
上記の構成によれば、針金などで形成された潤滑剤保持部材の連結部を支持部材の貫通穴に挿入させ、連結部の一部を貫通穴から突出させてから屈曲させることで係止部とすることができる。これにより、支持部材への潤滑剤保持部材の取り付けが容易に行え、係止部によって支持部材からの抜け落ちが防止できる。また、連結部を貫通穴に挿入させることで、潤滑剤保持部材が定着ベルトの回転方向に沿ってフリーに移動することを防止でき、保持部をニップ出口の最適な箇所に維持することができる。
【0011】
また、上記定着装置では、前記保持部は、長手方向に沿って複数の保持溝となる切込みが設けられている構成とすることができる。
【0012】
上記の構成によれば、保持溝を設けることで保持部の表面積を増やすことができ、保持溝の形成箇所で潤滑剤の保持力を高めることができる。
【0013】
また、上記定着装置では、前記保持溝は、前記定着ベルトの内周側から外周側に向かうにつれて、前記保持部の端部から中央部に向かうような斜めの切込みとされている構成とすることができる。
【0014】
上記の構成によれば、保持溝を斜めの切込みとすることで、潤滑剤が定着ベルトの端部に向かって濡れ広がることを抑制でき、定着ベルト端部からの潤滑剤漏れを効果的に抑制することができる。
【0015】
また、上記定着装置では、前記保持部は、コイル状に形成されている構成とすることができる。
【0016】
上記の構成によれば、保持部をコイル状にすることで、保持部の表面積を増大させて潤滑剤の保持力を高めることができる。
【0017】
また、上記定着装置は、前記保持部の周囲に潤滑剤吸収部材が巻き付けられている構成とすることができる。
【0018】
上記の構成によれば、保持部の周囲に潤滑剤吸収部材を巻き付けることで、潤滑剤吸収部材に潤滑剤を吸収させて潤滑剤の保持力を高めることができる。
【0019】
また、上記の課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、上記記載の定着装置を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の定着装置および画像形成装置は、表面張力を利用して潤滑剤を保持部の周囲に保持することで、定着ベルトの内周面を傷つけることなく、かつ、最も効果的な箇所で潤滑剤を保持することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
図2】定着装置における加熱定着部および加圧ローラの断面構造を示す斜視図である。
図3】定着装置における加熱定着部および加圧ローラの断面図である。
図4】潤滑剤保持部材を備えた加熱定着部の断面図である。
図5A】加熱定着部から押圧パッド、支持部材および潤滑剤保持部材を抜き出して示す図であり、記録媒体搬送方向の下流側から見た図である。
図5B】加熱定着部から押圧パッド、支持部材および潤滑剤保持部材を抜き出して示す図であり、記録媒体搬送方向の上流側から見た図である。
図6】支持部材に対する潤滑剤保持部材の取り付け方法を説明する図である。
図7A】実施の形態2に係る潤滑剤保持部材の模式図である。
図7B】実施の形態2に係る潤滑剤保持部材の変形例を示す模式図である。
図8A】実施の形態3に係る潤滑剤保持部材の模式図である。
図8B】実施の形態3に係る潤滑剤保持部材の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態1に係る定着装置200を備えた画像形成装置100の概略構成を模式的に示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、画像形成装置100は、感光体ドラム110、帯電装置120、露光装置130、現像装置140、転写装置150、クリーニング装置160および定着装置200を備えている。帯電装置120は、感光体ドラム110の表面を帯電させる。露光装置130は、帯電された感光体ドラム110を露光して感光体ドラム110表面に静電潜像を形成する。現像装置140は、静電潜像を現像して感光体ドラム110表面にトナー像を形成する。転写装置150は、形成されたトナー像を記録紙などの記録媒体P上に転写する。クリーニング装置160は、感光体ドラム110に残留するトナーを除去し回収する。定着装置200は、転写装置150によって転写されたトナー像を搬送方向Fに搬送される記録媒体P上に定着して画像を形成する。定着装置200は、加熱定着部210および加圧ローラ(加圧部材)220を備えており、加熱定着部210と加圧ローラ220との間に形成される定着ニップ領域FNに記録媒体Pを通過させることで定着を行う。
【0024】
この例では、画像形成装置100は、モノクロのプリンタ(具体的にはレーザプリンタ)とされている。尚、画像形成装置100は、例えば、カラー画像を形成できる中間転写方式のカラー画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置100は、この例では、プリンタとしたが、例えば、複写機、複合機またはファクシミリ装置であってもよい。
【0025】
続いて、図2および図3を参照して定着装置200の基本構成を説明する。図2は、定着装置200における加熱定着部210および加圧ローラ220の断面構造を示す斜視図である。図3は、定着装置200における加熱定着部210および加圧ローラ220の断面図である。図2および図3に示すように、加熱定着部210は、定着ベルト211、押圧パッド(ニップ形成部材)212、ヒータランプ213、反射部材214、支持部材215および保護部材216を備えている。
【0026】
定着ベルト211は、周回移動可能な無端状(筒状)の耐熱性ベルト(フィルム)である。定着ベルト211としては、所定厚み(例えば30μm~100μm程度)の金属、または、ポリイミド(PI)の基体上に所定厚み(例えば100μm~300μm程度)のシリコーンゴム層を形成し、さらにその上に厚み(例えば20μm~30μm程度)のフッ素樹脂を形成したもの、具体的には、シリコーンゴム上層にPFAのチューブを設けたものや、フッ素樹脂を塗布したものを例示できる。
【0027】
定着ベルト211は、ベルトガイド230によって両端部が周回移動自在に支持されている。尚、図2は断面構造を示す斜視図であるため、片方の端部側におけるベルトガイド230のみを図示している。ベルトガイド230は、定着ベルト211との対向面側において、半リング状のベルト支持部231(図3参照)を有しており、このベルト支持部231を定着ベルト211の内周面(定着ニップ領域FNとは反対側の内周面)に摺擦させている。これにより、定着ベルト211は、内周面をベルトガイド230のベルト支持部231と摺擦させながら周回移動することができる。
【0028】
押圧パッド212は、定着ベルト211の内周面側に配置されて定着ベルト211と加圧ローラ220との間で定着ニップ領域FNを形成する。また、押圧パッド212は、定着ベルト211の内周面に当接される当接部材でもある。押圧パッド212としては、剛性を有する耐熱性樹脂材料〔例えば、液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)や、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:Poly Ether Ether Ketone)樹脂〕、ポリフェニレンスルファイド(PPS:Poly Phenylene Sulfide)で形成されたものを例示できる。剛性の押圧パッド212に弾性を持たせる場合には、表面に弾性層(例えばシリコーンゴムなどのゴム層)を設けることができる。
【0029】
ヒータランプ213は、定着ベルト211を内側から加熱する。ヒータランプ213は、例えば、最大800℃近くまで昇温する。反射部材214は、ヒータランプ213から出射された光(特に赤外線)を定着ベルト211に向けて反射させる。反射部材214は、この例では、少なくともヒータランプ213に対向するように支持部材215に沿って折り曲げられた板材(反射板)とされている。反射部材214は、表面を鏡面加工したアルミニウムなどの金属材料で形成されている。これにより、ヒータランプ213から出射される光を定着ベルト211に効率的に照射することができる。
【0030】
支持部材215は、押圧パッド212を定着ベルト211とは反対側から支持する。ここでは、支持部材215は、断面L字形状の2つの部材を連結して構成されており、これにより、押圧パッド212に対する支持性を向上させることができる。押圧パッド212は、図示しない締結部材(ネジ)などにより支持部材215に対して固定される。
【0031】
保護部材216は、ヒータランプ213から出射された光および/または反射部材214から反射した光の定着ベルト211への照射を許容する構成とされた耐熱部材であり、ヒータランプ213と定着ベルト211との間に設けられ、ヒータランプ213に対し定着ベルト211を保護する。こうすることで、保護部材216を介して光を定着ベルト211に照射する際に定着ベルト211を効率的に加熱することができる。
【0032】
保護部材216としては、例えば、繊維状の材料をメッシュ(網目)状に編んだもの、ベルト状の材料にパンチ加工やエッチング加工によって多数の貫通穴を設けたものを挙げることができる。繊維状の材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウムなどの金属材料を挙げることができる。ベルト状の材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)、ニッケルなどの金属材料を挙げることができる。保護部材216の厚みは小さい方がよく、0.5mm以下程度が好ましい。保護部材216は、定着ベルト211との対向面が記録媒体Pの搬送方向Fにおいて定着ニップ領域FNよりも上流側に向くように設けられている。
【0033】
加圧ローラ220としては、アルミニウムなどの金属製の基体上に所定厚み(例えば6mm程度)の弾性部材(シリコーンゴムなどのスポンジゴムやソリッドゴムなどのゴム部材)を設け、弾性部材上にフッ素樹脂を形成したもの、具体的には、弾性部材上にPFAのチューブを設けたものを例示できる。尚、加圧ローラ220の内側に加熱手段(ヒータランプ)が設けられていてもよい。加圧ローラ220は、図示しない駆動モータからの回転駆動力により回転駆動される。そして、定着ベルト211は、押圧パッド212により加圧ローラ220へ圧接されているため、加圧ローラ220の回転により、従動回転する。
【0034】
また、定着装置200では、定着ニップ領域FNよりも定着ベルト211の回転方向Gの下流側において、定着ベルト211の近傍に剥離部材240が設けられる。これにより、定着ニップ領域FNを通過した記録媒体Pが定着ベルト211に巻き付くことを効果的に防止することができる。
【0035】
加熱定着部210においては、定着ベルト211が押圧パッド212に摺動しながら回転する際、その摺動性を高めるために押圧パッド212と定着ベルト211との摺擦面に潤滑剤が供給される。具体的には、定着ベルト211の内周面に潤滑剤が塗布されている。しかしながら、加熱定着部210において定着ベルト211の端部は開放されているため、定着ベルト211の幅方向の端部から潤滑剤が漏れ出ないように潤滑剤を保持する必要がある。特に、潤滑剤は、定着ベルト211の回転方向Gにおいて押圧パッド212の下流側近傍、すなわち定着ニップ領域FNの出口部分(以下、ニップ出口)に溜まりやすく、潤滑剤の溜まったニップ出口から漏れ出やすいため、ニップ出口で潤滑剤を保持することが効果的である。
【0036】
続いて、本実施の形態1に係る定着装置200の特徴的構成、すなわち、潤滑剤保持部材300の構成について図4ないし図6を参照して説明する。図4は、潤滑剤保持部材300を備えた加熱定着部210の断面図である。但し、図4では、潤滑剤保持部材300以外の構成要素として定着ベルト211、押圧パッド212および支持部材215のみを図示し、ヒータランプ213、反射部材214および保護部材216については図示を省略している。図5Aは、加熱定着部210から押圧パッド212、支持部材215および潤滑剤保持部材300のみを抜き出して示す図であり、記録媒体Pの搬送方向Fの下流側から見た図である。図5Bは、加熱定着部210から押圧パッド212、支持部材215および潤滑剤保持部材300のみを抜き出して示す図であり、記録媒体Pの搬送方向Fの上流側から見た図である。図6は、支持部材215に対する潤滑剤保持部材300の取り付け方法を説明する図である。
【0037】
図4図5Aおよび図5Bに示すように、潤滑剤保持部材300は、細い棒状の部材(例えば、φ1mm程度の針金)を屈曲させて形成されたものであり、保持部301、連結部302および係止部303を有している。潤滑剤保持部材300は、高い耐熱性を有し、かつ曲げ成形が容易な金属(例えばSUS)にて形成することが好ましい。
【0038】
保持部301は、定着ベルト211の回転軸方向(押圧パッド212の長手方向)に沿って、押圧パッド212の全長とほぼ等しい長さに形成されており、潤滑剤の溜まりやすいニップ出口に配置される。このように、潤滑剤保持部材300は、保持部301をニップ出口に配置させ、表面張力を利用して潤滑剤を保持部301の周囲に保持することができる。ニップ出口は加熱定着部210内における狭い隙間となっているが、潤滑剤保持部材300は細い棒状の部材であるため、保持部301をニップ出口に配置することが容易であり、潤滑剤保持部材300は最も効果的な箇所で潤滑剤を保持することができる。
【0039】
また、潤滑剤保持部材300は、保持部301を定着ベルト211の内周面に近接して配置させるが、定着ベルト211には接触しない配置とされることが好ましい。潤滑剤保持部材300を定着ベルト211には接触させないことで、潤滑剤保持部材300によって定着ベルト211の内周面に傷が付くことを回避できる。また、潤滑剤保持部材300が回転する定着ベルト211に接触することで潤滑剤保持部材300に不所望な変形が生じることも回避できる。尚、保持部301は、定着ベルト211の内周面に接触はしないものの近接して配置されることが好ましく、保持部301と定着ベルト211の内周面との間は1~2mm程度の隙間が設けられていることが好ましい。
【0040】
潤滑剤保持部材300は、支持部材215に取り付けられるものであり、保持部301の両端から屈曲して形成され、互いに平行に配置された2本の連結部302によって支持部材215に連結される。係止部303は、連結部302の一端(保持部301と反対側端部)から屈曲して形成されており、潤滑剤保持部材300を支持部材215に対して係止する。
【0041】
支持部材215に対する潤滑剤保持部材300の取り付けは、図6に示す方法にて行われる。支持部材215には、潤滑剤保持部材300の連結部302を挿入するための貫通穴215Aが、潤滑剤保持部材300の両端の連結部302に対応して2か所に設けられている(図6では一端側のみを図示)。また、支持部材215への取り付け前の潤滑剤保持部材300は、保持部301と連結部302とから形成された略コの字形状とされている。
【0042】
略コの字形状である潤滑剤保持部材300は、連結部302の先端を支持部材215の貫通穴215Aに挿入し、連結部302の一部を貫通穴215Aから突出させる。その後、貫通穴215Aから突出させた連結部302の一部を屈曲させて係止部303とする。このとき、連結部302から屈曲させた係止部303は、支持部材215における係止面215Bと接触させることが好ましい(図4参照)。係止部303が形成された後の潤滑剤保持部材300は、係止部303によって支持部材215からの抜け落ちが防止できる。また、連結部302を貫通穴215Aに挿入させることで、潤滑剤保持部材300が定着ベルト211の回転方向Gに沿ってフリーに回転することを防止でき、保持部301をニップ出口の最適な箇所に維持することができる。
【0043】
〔実施の形態2〕
本実施の形態2では、潤滑剤保持部材300において、潤滑剤の保持機能をさらに向上させるための変形例について説明する。
【0044】
図7Aは、本実施の形態2に係る潤滑剤保持部材300の模式図であり、潤滑剤保持部材300の保持部301において、保持部301の長手方向に沿って複数の保持溝304となる切込みを設けた構成である。このように保持溝304を設けることで保持部301の表面積を増やすことができ、保持溝304の形成箇所で潤滑剤の保持力を高めることができる。保持溝304の幅(短手方向幅)は、0.5mm~1.0mm程度の幅とすることが好ましい。また、保持溝304のピッチは、均等であってもよく不均等であってもよい。保持溝304のピッチを不均等とする場合は、定着ベルト211端部からの潤滑剤漏れを効果的に抑制できるように、保持溝304の中央部よりも端部におけるピッチを狭くすることが考えられる。
【0045】
図7Bは、本実施の形態2に係る潤滑剤保持部材300の変形例を示す模式図である。図7Bの潤滑剤保持部材300においても、保持部301の長手方向に沿って複数の保持溝304が設けられているが、保持溝304は保持部301の長手方向に対して斜めに切込みが入れられている。より具体的には、図7Bの潤滑剤保持部材300では、保持溝304は、定着ベルト211の内周側から外周側に向かうにつれて(図7B中の矢印A方向に向かうにつれて)、端部から中央部に向かうような斜めの切込みとされている。保持溝304をこのような斜めの切込みとすることで、潤滑剤が端部に向かって濡れ広がることを抑制でき、定着ベルト211端部からの潤滑剤漏れを効果的に抑制することができる。
【0046】
尚、図7Aおよび図7Bは潤滑剤保持部材300の一方の面を図示しているが、保持溝304は潤滑剤保持部材300の他方の面においても同様に形成されていることが好ましい。あるいは、保持溝304は、保持部301の全周において環状に形成されていてもよい。
【0047】
〔実施の形態3〕
本実施の形態3では、潤滑剤保持部材300において、潤滑剤の保持機能をさらに向上させるためのさらに他の変形例について説明する。
【0048】
図8Aは、本実施の形態2に係る潤滑剤保持部材300の模式図である。図8Aの潤滑剤保持部材300では、保持部301が単なる棒状ではなく、コイル状に形成されている。このように、保持部301をコイル状にすることで、保持部301の表面積を増大させて潤滑剤の保持力を高めることができる。尚、図8Aの潤滑剤保持部材300は、棒状の連結部302とコイル状の保持部301とを別途作成し、これらを溶接などで接続することで作成することができる。
【0049】
図8Bは、本実施の形態3に係る潤滑剤保持部材300の変形例を示す模式図である。図8Bの潤滑剤保持部材300は、保持部301の周囲に潤滑剤吸収部材305を巻き付けた構成である。このように、保持部301の周囲に潤滑剤吸収部材305を巻き付けることで、潤滑剤吸収部材305に潤滑剤を吸収させて潤滑剤の保持力を高めることができる。尚、潤滑剤吸収部材305には、耐熱性を有する不織布などが好適に使用できる。
【0050】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0051】
例えば、上記説明では、潤滑剤保持部材300は細い棒状の部材を屈曲させて形成されるものとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、潤滑剤保持部材300は細くて薄い板状の部材を屈曲させて形成されるものであってもよい。
【0052】
また、上記説明では、連結部302は屈曲の無い真っ直ぐな形状とされているが、保持部301の配置箇所を調整するために(例えば、保持部301を押圧パッド212に対してより近接して配置するために)、連結部302に屈曲箇所を設けてもよい。
【符号の説明】
【0053】
100 画像形成装置
200 定着装置
210 加熱定着部
211 定着ベルト
212 押圧パッド(ニップ形成部材)
213 ヒータランプ
214 反射部材
215 支持部材
215A 貫通穴
215B 係止面
216 保護部材
220 加圧ローラ(加圧部材)
230 ベルトガイド
231 ベルト支持部
240 剥離部材
300 潤滑剤保持部材
301 保持部
302 連結部
303 係止部
304 保持溝
305 潤滑剤吸収部材
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B