(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016991
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】吸水剤
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20220118BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20220118BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220118BHJP
C08F 120/06 20060101ALI20220118BHJP
C08F 6/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
B01J20/26 D
B01J20/30
B01J20/28 Z
C08F120/06
C08F6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120018
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 義久
(72)【発明者】
【氏名】橋本 孝之
(72)【発明者】
【氏名】細見 哲也
(72)【発明者】
【氏名】西澤 彰宏
【テーマコード(参考)】
4G066
4J100
【Fターム(参考)】
4G066AB05D
4G066AB07D
4G066AC17B
4G066AC17D
4G066AC35B
4G066BA28
4G066BA38
4G066CA43
4G066DA12
4G066DA13
4G066EA05
4G066FA03
4G066FA07
4G066FA21
4G066FA37
4J100AJ02P
4J100AK08P
4J100BA15H
4J100CA01
4J100HA11
4J100HA53
4J100HA62
4J100HC39
4J100HE05
4J100JA19
(57)【要約】
【課題】アルカリ水溶液に対する可溶性が高い吸水剤を提供する。
【解決手段】水溶液重合法で得られ、エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートで内部架橋されたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂からなり、0.5%の水酸化ナトリウム水溶液に対する溶解率が50%以上である吸水剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液重合法で得られた、エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートによる内部架橋を含むポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂からなり、0.5%の水酸化ナトリウム水溶液に対する溶解率が50%以上である吸水剤。
【請求項2】
生理食塩水のCRC(遠心分離機保持容量)が5~55g/gである、請求項1に記載の吸水剤。
【請求項3】
内部架橋の80モル%以上が、前記エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートによる内部架橋である、請求項1又は2に記載の吸水剤。
【請求項4】
内部架橋に用いる架橋剤の60重量%以上が前記エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートである、請求項1又は2に記載の吸水剤。
【請求項5】
前記エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートがエステル結合を含む、請求項4に記載の吸水剤。
【請求項6】
断熱重合方式による、請求項1~5のいずれかに記載の吸水剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ水溶液に対する可溶性が高い吸水剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、衛生用品、食品、農林業、土木等、様々な分野で広く用いられているが、特にその吸水力を活かし、紙オムツ、生理用ナプキン等衛生用品に汎用されている。これらの衛生用品は使用後に水分を大量に含み難燃性であり、また、燃焼し始めると有機高分子を多く含むため高温になりやすく、焼却・埋め立てに大きな負荷がかかる。高齢化により、今後も衛生用品の廃棄量は増加すると予想されるため、環境負荷の小さい吸水性樹脂が求められている。
【0003】
衛生用品に用いられる吸水性樹脂として、一般にポリアクリル酸やポリメタクリル酸の部分中和塩が用いられている。さらに、吸水した水分子を保持するために、ポリアクリル酸の主鎖同士は内部架橋される。架橋に用いられる化合物として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール化合物(特許文献1)、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物とポリアルキレングリコールジアクリレートとの混合物(特許文献2)、エポキシ化合物(特許文献3~4)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-16903号公報
【特許文献2】特開第2017-185485号公報
【特許文献3】特開第2002-284892号公報
【特許文献4】特開第2010-59254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1ではエステルによる架橋が形成され、特許文献2ではアルキレングリコールによる架橋が存在し、吸水剤の分解性が十分とはいえない。特許文献3~4ではエポキシ化合物による内部架橋を有するが、吸水性樹脂が逆相懸濁重合で重合されているため、この吸水性樹脂からなる吸水剤の分解性は十分とはいえない。本発明は、分解性の高い吸水剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、水溶液重合法により得られたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が、エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートによる内部架橋を有するとアルカリ水溶液に対する可溶性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、水溶液重合法で得られた、エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートによる内部架橋を含むポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂からなり、0.5%の水酸化ナトリウム水溶液に対する溶解率が50%以上である吸水剤に関する。
【0008】
生理食塩水のCRC(遠心分離機保持容量)が5~55g/gであることが好ましい。
【0009】
内部架橋の80モル%以上が、前記エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートによる内部架橋であることが好ましい。
【0010】
内部架橋に用いる架橋剤の60重量%以上が前記エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートであることが好ましい。
【0011】
前記エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートがエステル結合を含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明は、断熱重合方式による、前記吸水剤の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吸水剤は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が主にエポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートによる内部架橋を含むため、アルカリ水溶液に対する可溶性が高い。かかる吸水剤は使用後に分解しやすく、環境負荷を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<<吸水剤>>
本発明の吸水剤は、水溶液重合法で得られた、エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートによる内部架橋を含むポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂からなり、0.5%の水酸化ナトリウム水溶液に対する溶解率が50%以上であることを特徴とする。
【0015】
<吸水性樹脂>
本発明で用いるポリアクリル酸(塩)系の吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸部分中和物架橋物、自己架橋型ポリアクリル酸部分中和物、でんぷん-アクリル酸グラフト重合物が挙げられる。
【0016】
吸水性樹脂の主要な構成単位はアクリル酸とアクリル酸(塩)である。アクリル酸とアクリル酸(塩)との合計量中、アクリル酸が10~40モル%であり、アクリル酸(塩)が90~60モル%であることが好ましい。アクリル酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられ、特に、ナトリウム塩が好ましい。
【0017】
吸水性樹脂を得る際には、必要に応じて、アクリル酸(塩)以外の単量体を併用していてもよい。アクリル酸(塩)以外の単量体としては、例えば、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸などのアニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、N-アクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジンなどのノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、およびこれらの四級塩のようなカチオン性不飽和単量体が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0018】
アクリル酸(塩)以外の単量体を用いる場合、その使用量は、主成分として用いるアクリル酸(塩)との合計量に対して30モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。この範囲で用いることにより、得られる吸水性樹脂の吸水特性がより一層向上するとともに、吸水性樹脂をより一層安価に得ることができる。
【0019】
<水溶液重合法>
本発明で用いるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、単量体であるアクリル酸(塩)の水溶液を用いる水溶液重合法により得られる。水溶液重合法における水溶液中のアクリル酸(塩)の濃度は10~70重量%が好ましく、20~40重量%がより好ましい。水溶液重合を行う際には、水以外に、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール、イソペンチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの溶媒を併用してもよい。水以外の溶媒を併用する場合、水以外の溶媒の量は、溶媒全体のうち30重量%以下が好ましい。これらの水以外の溶媒は、複数を混合して用いてもよい。
【0020】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’-アゾビス(2-アミノジプロパン)二塩酸塩などのラジカル重合開始剤を使用することができる。さらに、これら重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用することにより、両者を組み合わせたレドックス系開始剤として使用することもできる。上記の還元剤の例としては、亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムのような(重)亜硫酸(塩)、L-アスコルビン酸(塩)、第一鉄塩などの還元性金属(塩)、アミン類などが挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0021】
重合開始剤の使用量は、単量体であるアクリル酸(塩)に対し0.0001~5モル%が好ましく、0.001~2モル%がより好ましい。0.0001モル%未満の場合には、未反応の単量体が多くなるため、得られる吸水性樹脂中の残存単量体量が増加する恐れがある。一方、重合開始剤の使用量が5モル%を超えると、得られる吸水性樹脂中の水可溶成分量が増加する恐れがある。
【0022】
また、反応系に放射線、電子線、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより重合反応の開始を行ってもよい。反応時間は特に限定されず、親水性単量体および重合開始剤の種類、反応温度などに応じて適宜設定され得る。重合反応における反応温度は、特に限定されないが、0℃~90℃が好ましい。ただし、重合反応を制御しやすいことから、重合は断熱重合により行うことが好ましい。
【0023】
水溶液重合によりゲル状ポリマーが生成する。このゲル状ポリマーに、必要に応じて乾燥、粉砕、分級等の操作を行うことにより、吸水性樹脂が得られる。乾燥、粉砕、分級等は、公知の方法により行うことができる。
【0024】
<内部架橋>
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートによる内部架橋を含む。ポリアクリル酸(塩)のカルボキシル基と、エポキシ化合物のエポキシ基との反応により、ポリアクリル酸(塩)主鎖同士の間に2以上のエポキシエステルを含む架橋が形成される。エポキシアクリレートの存在下でアクリル酸(塩)の重合反応を行い、ポリアクリル酸(塩)を合成することによっても、同様の架橋が形成される。
【0025】
エポキシ化合物としては、例えば、コハク酸グリシジルエステル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等を挙げることができる。これらの中でも、加水分解性の官能基を豊富に含んでいるという観点でエステル結合を含むエポキシ化合物が好ましく、コハク酸グリシジルエステルがより好ましい。
【0026】
エポキシアクリレートとしては上記エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物を用いることができる。
【0027】
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートによる内部架橋に加えて、エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレート以外の内部架橋剤による内部架橋を含んでいてもよい。ただし、内部架橋の80モル%以上がエポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートによる内部架橋であることが好ましく、この割合は90モル%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートによる内部架橋の割合が80モル%未満では、吸水剤のアルカリ水溶液に対する可溶性が不十分となる傾向がある。ここで、前記モル%は、内部架橋剤の全仕込みモル数に対する、エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートのモル比を意味する。
【0028】
また、内部架橋に用いる架橋剤の60重量%以上が前記エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートであることが好ましく、この割合は70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。ここで、前記重量%は、内部架橋剤の全仕込み重量に対するエポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートの重量比を意味する。
【0029】
前記エポキシ化合物および/またはエポキシアクレート以外の内部架橋剤としては、多価アルコール化合物、多価アミン化合物、ポリイソシアネート化合物、アルキレンカーボネート化合物、ハロエポキシ化合物、ハロヒドリン化合物、多価オキサゾリン化合物、シランカップリング剤、多価金属化合物等を挙げることができる。これらは、1種のみを用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0030】
上記多価アルコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2-ブテン-1,4-ジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等を挙げることができる。
【0031】
上記多価アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、これら多価アミン化合物の無機塩又は有機塩(アジチニウム塩等)等を挙げることができる。
【0032】
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等を、上記多価オキサゾリン化合物としては、例えば、1,2-エチレンビスオキサゾリン等を挙げることができる。
【0033】
上記アルキレンカーボネート化合物としては、例えば、1,3-ジオキソラン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン等を挙げることができる。
【0034】
上記ハロエポキシ化合物としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリンやその多価アミン付加物(例、ハーキュレス社製カイメン(登録商標))等を挙げることができる。
【0035】
また、その他公知の架橋剤として、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤や、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物や塩化物等の多価金属化合物等も用いることができる。
【0036】
内部架橋に用いるエポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートの使用量は、吸水性樹脂に含まれるカルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基1モルに対し、エポキシ基および/またはアクリレート基が0.01~10モル%であることが好ましく、0.05~7モル%であることがより好ましく、0.1~5モル%であることがさらに好ましい。エポキシ基またはアクリレート基が0.01モル%未満であると、吸水性樹脂の架橋を有効に行うことができず、加圧下での十分な吸水性向上効果が得られないことがあり、10モル%を超えると、架橋密度が高くなりすぎることにより、得られる吸水剤の吸水能力や吸水速度が低下することがある。
【0037】
内部架橋を行う際は、エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートを、単量体であるポリアクリル酸(塩)の重合時に反応系に添加してもよく、重合後に添加してもよい。
【0038】
ポリアクリル酸(塩)の重合後にエポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートを添加する場合、エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートの添加後に加熱することにより内部架橋を形成できる。加熱温度は特に限定されないが、40~250℃が好ましい。加熱時間も特に限定されないが、0.2~3時間が好ましい。
【0039】
内部架橋を行う際には、反応系に、炭酸(水素)塩、二酸化炭素、アゾ化合物、不活性有機溶媒などの各種発泡剤;澱粉・セルロース、澱粉・セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体などの親水性高分子;各種界面活性剤;次亜燐酸(塩)などの連鎖移動剤を添加してもよい。
【0040】
内部架橋を行う際には、水以外の溶媒を用いてもよい。水以外の溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコールおよびイソプロピルアルコールなどの低級脂肪族アルコール類;アセトンなどのケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフランおよびメトキシ(ポリ)エチレングリコールなどのエーテル類;ε-カプロラクタムおよびN,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。
【0041】
<表面架橋>
本発明の吸水剤は、内部架橋後に、さらに表面架橋がなされたものであってもよい。表面架橋により、吸水剤の強度を向上できる。
【0042】
表面架橋剤は、前述したエポキシ化合物および/またはエポキシアクリレート、並びにエポキシ化合物および/またはエポキシアクリレート以外の内部架橋剤と同じものが使用可能である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、CRCの制御が容易であるという観点でエポキシ化合物が好ましく、エチレングリコールジグリシジルエーテル、コハク酸グリシジルエステルがより好ましい。
【0043】
表面架橋は、表面架橋剤を吸水性樹脂に噴霧した後、円筒型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型混合機、粉砕型ニーダー等を用いて公知の方法で混合した後、架橋させることにより形成できる。噴霧、混合時には、必要に応じて界面活性剤を添加することができる。
【0044】
表面架橋を行う際、表面架橋剤の使用量は、表面架橋前の吸水性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001~10重量部、より好ましくは0.005~5重量部、更に好ましくは0.01~3重量部である。
【0045】
表面架橋を行う際には、水、親水性有機溶剤又はこれらの混合物からなる溶剤を添加しても良い。かかる親水性有機溶剤としては、内部架橋を行う際に用いる溶媒として前述した、水以外の溶媒が挙げられる。
【0046】
表面架橋時の加熱温度は特に限定されないが、40~250℃が好ましい。加熱時間も特に限定されないが、0.2~3時間が好ましい。
【0047】
更に、吸水剤は、種々の機能を付与する目的で、消毒剤、消臭剤、抗菌剤、香料、各種の無機粉末、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、肥料、酸化剤、還元剤、水、及び塩類等の他の添加剤を含有していても良い。これら他の添加剤の添加量は当業者により適切に選択される。
【0048】
<吸水剤の物性>
本発明の吸水剤は、エポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートによる内部架橋を含み、アルカリ水溶液に対する溶解率が向上している。アルカリ水溶液に対する溶解率は、吸水剤を0.5%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、40℃で24時間静置した後の溶解した樹脂の割合により評価する。本発明の吸水剤は、この溶解率が50%以上であるが、60%以上であることが好ましく70%以上であることがより好ましい。
【0049】
CRC(遠心分離機保持容量)は、吸水剤に荷重をかけずに生理食塩水(0.9%の塩化ナトリウム水溶液)を吸収させ、その後150Gの遠心分離により水切りを行った後の吸水性を、実施例に記載の方法で測定して求められる。本発明の吸水剤は、CRCが5~55g/gであることが好ましく、25~40g/gであることがより好ましい。
【0050】
AAP(加圧下の吸水倍率)は、吸水剤に0.7psiの荷重をかけたときの生理食塩水の吸収性を、実施例に記載の方法で測定して求められる。本発明の吸水剤は、AAPが10~30g/gであることが好ましく、11~25g/gであることがより好ましい。
【0051】
FSC(無加圧下の吸水倍率)は、吸水剤に荷重をかけないときの生理食塩水の吸収性を、実施例に記載の方法で測定して求められる。本発明の吸水剤は、FSCが30~100g/gであることが好ましく、40~70g/gであることがより好ましい。
【0052】
<<衛生用品>>
本発明の吸水剤は、紙おむつや生理用品などの衛生用品に好適に使用できる。衛生用品の構造としては、例えば、バックシート、吸収体、及びトップシートがこの順に積層された積層体が挙げられる。吸収体は本発明の吸水剤を含み、必要に応じて、さらに吸水紙やパルプを含んでいてもよい。
【実施例0053】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0054】
(1)使用材料
(1-1)吸水性樹脂の原料モノマー
アクリル酸(三菱ケミカル社製)
(1-2)架橋剤
アクリルエステル(日本化薬社製、PEG400DA-D)
エチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、EX-810)
コハク酸グリシジルエステル(ナガセケムテックス社製、GSR-105)
エチレンカーボネート(富士フイルム和光純薬社製)
(1-3)親水性溶媒
プロピレングリコール(富士フイルム和光純薬社製)
【0055】
(2)吸水性樹脂の重合および内部架橋
(合成例1~5、比較合成例1)
(合成例1)
2Lセパラブルフラスコに、アクリル酸242g、10℃以下に冷却したイオン交換水903gを仕込む。滴下ロートに48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液206gを仕込み、上記、アクリル酸水溶液に滴下仕込みし、75mol%中和アクリル酸水溶液を調製する。フラスコは氷浴で冷却し、液温が20℃を超えないよう水酸ナトリウム水溶液の滴下速度を調整する。水酸化ナトリウムの滴下終了後、液温を10℃以下に冷却し、予め冷凍庫で冷却しておいた内容量2Lのガラス製デュワー瓶に移す。デュワー瓶中の75mol%中和アクリル酸水溶液中に窒素ガスを30分以上吹込み、系内を窒素置換し、液温が10℃以下であることを確認する。窒素置換後、内部架橋剤として、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、デナコールEX-810)0.71g、0.3重量%過酸化水素水溶液3.2g、1.0重量%アスコルビン酸水溶液3.6g及び0.01重量%硫酸鉄(II)水溶液を添加する。重合が始まり、重合熱により内温が10℃を超えたところで窒素ガスの導入を停止し、デュワー瓶をシリコン栓で密閉する。密閉してから1時間後に、デュワー瓶ごと70℃に設定した送風乾燥機に投入し、そのまま12時間重合を行う。重合終了後、室温まで冷却後、デュワー瓶からゲル状の重合物を取り出し、ハサミやミンチ機などを使用して、ゲルを細かく裁断し、105℃に設定した送風乾燥機で12時間以上ゲルを乾燥させる。乾燥したゲルをフードミキサーで粉砕し、150~850μmの粒度に調整し、吸水性樹脂1を得た。
【0056】
(合成例2)
内部架橋剤を、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.71gからコハク酸ジグリシジルエステル(ナガセケムテックス社製、GSR-105)0.71gに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂2を得た。
【0057】
(合成例3)
内部架橋剤を、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.71gからコハク酸ジグリシジルエステル(ナガセケムテックス社製GSR-105)1.06gに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂3を得た。
【0058】
(合成例4)
内部架橋剤を、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.71gからエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテック社製、デナコールEX-810)0.63gおよびアクリルエステル(日本化薬社製、PEG400ジアクリレート)0.07gに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂4を得た。
【0059】
(合成例5)
内部架橋剤を、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.71gからコハク酸ジグリシジルエステル(ナガセケムテックス社製、GSR-105)0.63gおよびアクリルエステル(日本化薬社製、PEG400ジアクリレート)0.07gに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂5を得た。
【0060】
(比較合成例1)
アクリル酸145.4部を9.4部の水で希釈し、30℃に冷却しつつ225重量%の水酸化ナトリウム水溶液242.3部を加えて中和した。この溶液にエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、デナコールEX-810)を0.08部、次亜リン酸ソーダ1水和物を0.015部及び過硫酸カリウムを0.07部添加して溶解させ、モノマー水溶液とした。攪拌機、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を付設した4つ口丸底フラスコにシクロヘキサン624部を入れ、これに分散剤としてポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルリン酸(第一工業製薬社製品、ブライサーフA210G)1.56部を加え、350rpmで撹拌して分散させた。フラスコを窒素置換した後、75℃に昇温してシクロヘキサンを還流させた。これに上記で調整したモノマー水溶液を90分間かけて滴下し、滴下終了後75℃で60分間保持し、反応混合物の含水率を10%(重量基準)まで低下させ、その後、攪拌を停止すると吸水性樹脂ケーキがフラスコの底に沈降したので、これをデカンテーションにより分離した。
【0061】
分離した吸水性樹脂ケーキを乾燥温度130℃で60分間乾燥し、吸水性樹脂粒子を得た。得られた吸水性樹脂粒子を150~850μmの粒度に調整した。この粉末100重量部を攪拌しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの10重量%水/メタノール混合溶液(水/メタノール(重量比)=60/40)を4.0g加えて混合した後、120℃で60分間加熱架橋することにより粉末状の表面架橋型吸水性樹脂を得た。
【0062】
(3)表面架橋
重合および内部架橋後の合成例1から5の吸水性樹脂100重量部に対し、表1に記載の配合比率にて配合した各内部架橋剤溶液を7.5重量部噴霧し、十分に混合した。混合物を120℃で30分間加熱して、表面架橋した吸水剤を得た。この吸水剤のAUL、FSC、CRCの測定結果を表1に示す。
【0063】
(4)吸水剤の物性評価
(4-1)AAP(加圧下の吸水倍率)
るつぼ型ガラスフィルター(内径40mm、高さ70mm)を鉛直に立て、この中に吸水剤1gを均一に入れた。この吸水剤の上にPETフィルム(厚さ100μm)をのせ、初期重量Wa(g)を測定した。更にこの上に0.7psi荷重となるように外径38mmの分銅をのせた。次に、生理食塩水(濃度0.9%)約630gを入れたバット(縦210mm、横170mm)の中に、前記吸水剤を入れたるつぼ型ガラスフィルターを底部を下側にして30分間浸漬した後、引き上げて吸水後の重量Wb(g)を測定した。WaとWbから、次式に従って加圧下の吸水倍率を算出した。
AAP=(Wb(g)-Wa(g))/吸水剤の重量(g)
【0064】
(4-2)FSC(無加圧下の吸水倍率)
吸水剤0.2gをナイロンメッシュ製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、生理食塩水(濃度0.9%)約200gを入れたビーカー中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250×9.81m/sec2(250G)で3分間水切りを行った後、袋の重量W1(g)を測定した。また、吸水剤を用いないこと以外は同様にして、重量W0(g)を測定した。W1とW0から、次式に従って無加圧下の吸水倍率を算出した。
FSC=(W1(g)-W0(g))/吸水剤の重量(g)
【0065】
(4-3)CRC(遠心分離保持容量)
FSCの測定後、ティーバッグごと、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の生理食塩水を取り除き、ティーバックを含めた重量(W2)を測定し次式から保水量を求めた。
CRC(g/g)=((W2)-(W0))/吸収剤の重量(g)
【0066】
(4-4)アルカリ水溶液への溶解率
30mlのガラス製スクリュー管に、吸水性樹脂 0.5gを精秤し(Ws)、0.5重量%水酸化ナトリウム水溶液 25gを添加し、蓋を閉めた。このスクリュー管を40℃に設定した乾燥器に投入し、24時間静置した。24時間後、乾燥器からスクリュー管を取り出し、室温まで冷却させたのち、スクリュー管の内容物を目開き1mmのふるい上に空け、イオン交換水で洗浄した。ふるい上に残ったゲル状の吸水性樹脂をあらかじめ重量(W0)を測定しておいたシャーレに移した。シャーレを120℃に設定した送風乾燥機に投入し、12時間乾燥させた。乾燥後、シャーレの重量(W1)を計量し、次式より溶解率を算出した。
溶解率(%)= (1-(W1-W0)/Ws)×100
【0067】
【0068】
比較例1では逆相懸濁重合で吸水剤を製造したため、得られた吸水性樹脂は製造時に使用した分散剤で表面が被覆されており、アルカリ水溶液への溶解率が低かった。実施例1~5では水溶液重合で吸水剤を製造し、主にエポキシ化合物および/またはエポキシアクリレートによる内部架橋構造を有するため、アルカリ水溶液への溶解率が50%を超えていた。