(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169911
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20221102BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20221102BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221102BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20221102BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20221102BHJP
A61K 8/88 20060101ALI20221102BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
A61Q19/00
A61K8/9789
A61K8/92
A61K8/88
A61K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075624
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
(72)【発明者】
【氏名】石津 亮
(72)【発明者】
【氏名】岡田 歩美
【テーマコード(参考)】
2E185
4C083
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA20
2E185CC73
4C083AA111
4C083AA121
4C083AA122
4C083AD071
4C083CC02
4C083CC03
4C083DD12
4C083DD21
4C083EE07
4C083EE12
4C083EE13
(57)【要約】
【課題】肌の潤いを保持することができるマスクを提供する。
【解決手段】マスク1は、ツバキ由来の抽出物を含有するマスク本体部3を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツバキ由来の抽出物を含有するマスク本体部を備える、マスク。
【請求項2】
前記抽出物がツバキ油である、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記マスク本体部が少なくともポリアミド繊維を含む、請求項1又は請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
前記マスク本体部がストッキング生地を備えている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、茶の抽出成分を不織布に添着したマスクが開示されている。このマスクは、ウイルスを不活化し、再飛散を防止することを目的としている。
特許文献2には、竹もしくは笹あるいはその抽出成分、包接化合物、及び、ヨウ素を含んでなる抗菌性組成物が開示されている。この抗菌性組成物は、マスクに利用できることが開示されている。
このように従来技術のマスクは、抗菌性、抗ウイルス性という機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-333271号公報
【特許文献2】特開2006-169152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のマスクは、肌の潤いを保持する特性は必ずしも十分でなかった。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、肌の潤いを保持することができるマスクを提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ツバキ由来の抽出物を含有するマスク本体部を備える、マスク。
【発明の効果】
【0006】
本開示のマスクは、肌の潤いを保持する特性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示のマスクの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、従来のマスクの保湿加工の作用を説明する概念図である。
【
図3】
図3は、本開示のマスクの保湿加工の作用を説明する概念図である。
【
図4】
図4は、本開示のマスクにおいて、ツバキ由来の抽出物が保持されている様子を示す概念図である。
【
図5】
図5は、本開示のマスクの使用方法の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、本開示のマスクの使用方法の一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、肌水分量試験に用いたマスクを示す説明図である。
【
図8】
図8は、肌水分量試験における測定部位を示す説明図である。
【
図9】
図9は、目下における実験前後の肌水分量の変化を示すグラフである。
【
図10】
図10は、頬における実験前後の肌水分量の変化を示すグラフである。
【
図11】
図11は、フェイスラインにおける実験前後の肌水分量の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
・前記抽出物がツバキ油である、マスク。
・前記マスク本体部が少なくともポリアミド繊維を含む、マスク。
・前記マスク本体部がストッキング生地を備えている、マスク。
【0009】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0010】
1.マスク1
マスク1は、マスク本体部3を備えている。マスク本体部3は、人体の口を覆う部分である。マスク本体部3は、細菌、ウイルス、花粉、及び粉塵のうちの少なくとも1種の通過を抑制する機能を有している。マスク本体部3の両側部には、紐状の耳かけ部5が備えられている。
【0011】
(1)マスク本体部3
マスク本体部3は、ツバキ由来の抽出物を含有している。ツバキの抽出物とは、ツバキから抽出したものである。ツバキは、自生種及びその園芸品種から成る群から選ばれるいずれかのものであることが好ましい。自生種としては、ヤブツバキ(Camellia japonica)、ユキツバキ(Camellia japonica)及びヤクシマツバキ(Camellia japonica var. macrocarpa)からなる群から選ばれるいずれかのものであることが好ましい。
園芸品種としては、Camellia japonica ‘Kamo-hon-nami’(加茂本阿弥)、Camellia japonica ‘Tarokaja’(太郎冠者)、Camellia japonica ‘Tama-no-ura’(玉之浦)、Camellia japonica ‘Tama-gasumi’(玉霞)、Camellia japonica ‘Moshio’(藻汐)、Camellia japonica ‘Ezonishiki’(蝦夷錦)、Camellia japonica ‘Soushiarai’(草紙洗)、Camellia japonica ‘Bokuhan’(卜伴)、Camellia japonica ‘Hishi-karaito’(菱唐糸)、及びCamellia japonica ‘Murage’(村下)からなる群から選ばれるいずれかのものであることが好ましい。
使用部位としては、花、実、種子、芽、茎、葉、根等の植物体の一部又は全草を使用することができる。
抽出方法は特に限定されない。抽出方法は、例えば、加熱抽出したものであっても良いし、常温抽出したものであっても良いし、低温抽出したものであっても良い。抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮等の処理をしたものであってもよい。
抽出物は、肌の潤いを保持する特性が特に優れることから、ツバキ油(椿オイル)が好ましい。ツバキ油は、オレイン酸含有率が高く、皮脂との組成の近いため、肌との相性が良好である。ツバキ油は、ビタミンEやカロテノイドを含む美容成分である。
【0012】
マスク本体部3における抽出物の配合量は、特に限定されない。抽出物の配合量は、肌に十分な潤いを与え、かつ抽出物のブリードアウトを抑制する観点から、マスク本体部3の重量100gあたり、0.1g以上5.0g以下であることが好ましく、0.5g以上3.0g以下であることがより好ましく、1.0g以上2.0g以下であることが更に好ましい。
【0013】
マスク本体部3がストッキング生地を備えていることが好ましい。ストッキング生地を備えていることで、触感が柔らかく、軽く、しかも肌の潤いを保持する特性が高いマスク1となる。マスク本体部3の略全体(マスク本体部3の重量の90%以上100%以下)がストッキング生地から構成されていてもよい。
ストッキング生地は、特に限定されない。ストッキング生地は、肌との密着性を良好にして、触感が柔らかく、きめが細かな肌さわりとする観点から、60デニール以上100デニール以下であることが好ましく、75デニール以上90デニール以下であることがより好ましく、80デニール以上85デニール以下であることが更に好ましい。
ストッキング生地は、例えば、ナイロン糸(ポリアミド繊維)、又は、ナイロン糸とポリウレタン糸とで編まれた生地を用いることができる。ストッキング生地は、「交編」「ゾッキ」のいずれであってもよい。
【0014】
交編(交編編み)は、ナイロン糸と、サポート糸(ポリウレタン糸にナイロン糸を巻き付けたカバリング糸)を交互に使用して編成する。サポート糸としては、マスク本体部3の弾性を上げて、肌との密着性を良好にする観点から、ポリウレタン糸を芯糸とし、ナイロン糸(好ましくはウーリーナイロン糸)をカバー糸とすることが好ましい。
ゾッキ(ゾッキ編み)は、サポート糸(ポリウレタン糸にナイロン糸を巻き付けたカバリング糸)だけで編成されていてもよい。ゾッキ編みは、いわゆる伝線、すなわち、使用中に編み組織の一部に引掛傷ができ糸が切れると生成される編組織が解編されたはしご状の線が発生しにくいという特徴を備える。ゾッキ(ゾッキ編み)におけるサポート糸の繊度は、特に限定されない。サポート糸は、マスク本体部3の弾性を上げて、肌との密着性を良好にする観点から、ポリウレタン糸を芯糸とし、ナイロン糸(好ましくはウーリーナイロン糸)をカバー糸とすることが好ましい。
【0015】
(2)耳かけ部5
耳かけ部5の構成は、特に限定されない。耳かけ部5は、ストッキング生地を備えていることが好ましい。ストッキング生地を備えていることで、触感が柔らかく、耳に掛けた際の装着感が良くなる。耳かけ部5の略全体(耳かけ部5の重量の90%以上)がストッキング生地から構成されていてもよい。
マスク本体部3と耳かけ部5は、一体的に編んで形成してもよい。マスク本体部3と耳かけ部5が共にストッキング生地であると、一体的に編むことで製造できる。
【0016】
2.肌の潤いを保持する特性が良好である推定メカニズム
マスク1が、肌の潤いを保持する特性が良好であるメカニズムの詳細は明らかでないが、次のように推定される。
図2は、従来の保湿加工を示している。従来の保湿加工は、マスク本体部3’が肌15の水分11を吸って、その水分11をマスク本体部3’内に保持することで保湿可能という思想に基づいている。しかし、この従来の保湿加工では、肌の水分11が、マスク本体部3’のマスク生地に奪われてしまう。
図3は、本開示のマスク1の保湿加工を示している。マスク本体部3は、ツバキ由来の抽出物を含有しているため、肌から出た水分11は、図中の矢印で示すように、マスク本体部3ではじかれて、マスク本体部3の内部に保持されると推定される。
【0017】
図4は、本開示のマスク本体部3において、ツバキ由来の抽出物が保持されている様子を模式的に示した模式図である。マスク生地3Aは、通常プラスに帯電している。ツバキ由来の抽出物を含んだ柔軟剤等の薬剤3Cも通常プラスに帯電している。
図4では、プラスに帯電したマスク生地3Aに、マイナスに帯電した添加剤3B(例えば染料と色止めを含む組成物)を介して、プラスに帯電した薬剤3Cが付着している様子が示されている。このように電気的に薬剤3Cをマスク生地3Aに吸着させることで、薬剤3Cがマスク生地3Aに十分に保持され、洗濯等で落ちることが抑制される。
【0018】
3.マスク1の使用方法
マスク1は、
図5に示すように、単独で使用してもよい。
マスク1は、
図6に示すように他のマスクと併用してもよい。他のマスクとしては、不織布マスク7が好ましい。
図6では、不織布マスク7が例示されている。
他のマスクと併用する場合には、マスク1と他のマスクとの重ね方は特に限定されない。触感が柔らかく、軽く、しかも肌の潤いを保持する特性が高くする観点から、マスク1を肌側にして、マスク1の外側に他のマスクを重ねることが好ましい。
【実施例0019】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
1.肌水分量試験
(1)マスク1の作製
ストッキング生地(82デニール)を用いて、マスク本体部3及び耳かけ部5を有するマスク1を作製した。
図7に示すように、右側半分のマスク本体部3Rは、ツバキ油を含む生地とした。右側半分のマスク本体部3Rには、ストッキング生地の重量100gあたり、0.2gのツバキ油を配合した。左側半分のマスク本体部3Lは、ツバキ油を配合しないコントロール生地とした。このように、椿オイルの配合生地とコントロール生地で半顔ずつ作製されたマスク1を用意した。
【0020】
(2)肌水分量試験の試験目的
椿オイルの配合による保湿効果を確認するために、着用前後の肌水分量を測定した。
図8に測定部位を示す。測定部位は、右目下31、右頬33、右フェイスライン35、左目下41、左頬43、左フェイスライン45とした。
(3)被験者
被験者は、5名(30代女性1名、40代女性2名、30代男性2名)とした。
(4)試験方法
(4.1)各被験者に、洗顔後、10分間順化させた。
(4.2)各被験者に対して、測定位置の6箇所にマーキングした。
(4.3)各被験者に対して、6箇所の着用前の水分量を測定した。
(4.4)各被験者に対して、マスク1を2時間着用させた。
(4.5)各被験者に、マスク1を外させた後、10分間順化させた。
(4.6)各被験者に対して、6箇所の着用後の水分量を測定した。
【0021】
(5)結果
試験結果を表1-3、及びこれらの表1-3をグラフ化した
図9-11に示す。試験結果は、各被験者の着用前の水分量を100%として表記した。例えば、被験者No.1の目下の場合は、ツバキ油配合生地(マスク本体部3R)の右目下では、着用前の100.0%から着用後には127.0%に水分量が上昇していることが分かる。
表1-3、及び
図9-11の結果から、目下、頬、フェイスラインのいずれにおいてもツバキ油配合生地(マスク本体部3R)で覆われた部位の方が、コントロール生地(マスク本体部3L)で覆われた部位よりも、着用後の水分量が高くなっていた。特にマスク1と一番密着する目下では、ツバキ油配合生地(マスク本体部3R)で覆われた部位は平均124.8%であり、コントロール生地(マスク本体部3L)で覆われた部位の平均112.3%よりも、12.5%も高くなっていた。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
2.剛軟度試験
(1)マスク1の作製
ストッキング生地(82デニール)を用いて、マスク本体部3及び耳かけ部5を有するマスク1を作製した。マスク本体部3の全体にツバキ油を含む生地を用いた。マスク本体部3には、ストッキング生地の重量100gあたり、0.2gのツバキ油を配合した。比較例として株式会社 MTG製の不織布マスクを用いた。
(2)剛軟度の測定
剛軟度は、JIS-L-1096 A法(45°カンチレバー)を用いた。
(3)結果
結果を表4に示す。実施例のマスク1は、柔軟であり、株式会社 MTG製の不織布マスクに比べて肌にフィットしやすいことが確認された。
【0026】
【0027】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。