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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169921
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20221102BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20221102BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20221102BHJP
   B60W 20/16 20160101ALI20221102BHJP
   B60W 20/20 20160101ALI20221102BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/442 ZHV
B60K6/52
B60W20/16
B60W20/20
F01N3/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075646
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】蒲地 誠
【テーマコード(参考)】
3D202
3G091
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB09
3D202CC23
3D202CC24
3D202CC42
3D202CC52
3D202DD19
3D202DD45
3D202FF02
3G091AA02
3G091AA14
3G091AA23
3G091AA24
3G091AB03
3G091AB06
3G091AB13
3G091AB15
3G091AB16
3G091BA03
3G091BA15
3G091CA18
3G091CA19
3G091CB03
3G091CB05
3G091EA07
3G091EA27
3G091EA28
3G091EA29
3G091EA34
3G091FA02
3G091FB02
3G091FC07
3G091HA36
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電動車両に搭載された内燃機関の冷態始動直後の排気を速やかに浄化する電動車両を提供する。
【解決手段】電動車両に搭載される内燃機関2と、駆動用電池から供給された電力で駆動軸を駆動可能な第1回転電機と、内燃機関により駆動されて発電するとともに駆動用電池から供給された電力で内燃機関を駆動する第2回転電機と、内燃機関2の排気を浄化する排気浄化装置2eと、排気浄化装置の上流に添加剤を噴射する添加剤噴射装置3とを備える。制御装置は、内燃機関を停止した状態で第1回転電機を駆動して走行する内燃機関停止モードと、内燃機関を稼働させて走行する内燃機関稼働モードとを切り替えて制御する。内燃機関が冷態状態であるか否か判断し、内燃機関が冷態状態であると判断した場合であって、内燃機関停止モードから内燃機関稼働モードへの移行に伴って内燃機関を始動する場合に添加剤噴射装置3から添加剤を噴射する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両に搭載される内燃機関と、
前記電動車両に搭載された駆動用電池から供給された電力で駆動軸を駆動可能な第1回転電機と、
前記内燃機関により駆動されて発電するとともに前記駆動用電池から供給された電力で前記内燃機関を駆動する第2回転電機と、
前記内燃機関の排気を浄化する排気浄化装置と、
前記排気浄化装置の上流に添加剤を噴射する添加剤噴射装置と、
前記添加剤噴射装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記内燃機関を停止した状態で前記第1回転電機を駆動して走行する内燃機関停止モードと、前記内燃機関を稼働させて走行する内燃機関稼働モードとを切り替えて制御し、
前記制御装置は、前記内燃機関が冷態状態であるか否か判断し、前記内燃機関が前記冷態状態であると判断した場合であって、前記内燃機関停止モードから前記内燃機関稼働モードへの移行に伴って前記内燃機関を始動する場合に前記添加剤噴射装置から前記添加剤を噴射する、
電動車両。
【請求項2】
前記内燃機関が始動する際の出力が所定出力値以上の場合に、前記添加剤を噴射する、
請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記内燃機関をクランキングすることによって始動し、前記クランキング中に前記添加剤を噴射する、
請求項1または2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記駆動用電池の充電率が所定値以下の場合、前記添加剤を噴射する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記内燃機関が始動する際の出力が高いほど、前記添加剤の噴射量を多くする、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項6】
前記内燃機関稼働モードは、前記内燃機関によって前記第2回転電機を駆動して発電した電力を少なくとも前記第1回転電機に供給し前記駆動軸を駆動する第1走行モードと、
前記内燃機関を前記駆動軸に接続し、前記内燃機関の出力によって前記駆動軸を駆動する第2走行モードと、
を含み、
前記制御装置は、前記添加剤を噴射して前記内燃機関を始動する場合、前記第1走行モードおよび前記第2走行モードのうち、前記内燃機関に要求する出力が低い方を選択する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項7】
前記第1回転電機が回生中に前記添加剤を生成する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関を搭載する電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気浄化装置の触媒を活性化するために吸気に添加剤を噴射する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の装置は、吸気に水素を噴射することによって内燃機関の燃焼を改善し、触媒を早期に活性化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005―105909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、内燃機関とモータとを動力源とする電動車両が実現している。このような電動車両は、高負荷走行領域において電池出力不足によりエンジンが始動した場合、エンジンを冷態かつ高負荷で運転する必要がある。このため、例えば内燃機関がガソリンエンジンの場合、一酸化炭素と粒子状物質の数(以下明細書にPN:Partical Numberと記す)が増大しやすい。特許文献1の装置では、吸気に水素を噴射するため、高負荷運転中の内燃機関の排気を浄化することは困難である。
【0005】
本開示の課題は、電動車両に搭載された内燃機関の冷態始動直後の排気を速やかに浄化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電動車両は、電動車両に搭載される内燃機関と、電動車両に搭載された駆動用電池から供給された電力で駆動軸を駆動可能な第1回転電機と、内燃機関により駆動されて発電するとともに駆動用電池から供給された電力で内燃機関を駆動する第2回転電機と、内燃機関の排気を浄化する排気浄化装置と、排気浄化装置の上流に添加剤を噴射する添加剤噴射装置と、添加剤噴射装置を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、内燃機関を停止した状態で第1回転電機を駆動して走行する内燃機関停止モードと、内燃機関を稼働させて走行する内燃機関稼働モードとを切り替えて制御する。制御装置は、内燃機関が冷態状態 であるか否か判断し、内燃機関が冷態状態であると判断した場合であって、内燃機関停止モードから内燃機関稼働モードへの移行に伴って内燃機関を始動する場合に添加剤噴射装置から添加剤を噴射する。
【0007】
この電動車両によれば、内燃機関を始動する場合、添加剤を排気浄化装置の上流に噴射することによって、例えば排気中に含まれる有害物質を燃焼させて除去することができる。さらに、燃焼によって排気浄化装置の温度を速やかに上昇させて排気浄化装置を活性化させることができる。これによって、例えば、一酸化炭素やPNを削減することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電動車両に搭載された内燃機関の冷態始動直後の排気を速やかに浄化する電動車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態による電動車両のシステム図。
図2】本開示の実施形態による電動車両に搭載される内燃機関のシステム図。
図3】本開示の実施形態による電動車両の制御装置の制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態による電動車両1は、四輪駆動型のハイブリッド自動車である。電動車両1は、内燃機関(ENG)2と、発電機(第2回転電機の一例:GEN)4と、フロントモータ(第1回転電機の一例:FrM)6と、リアモータ(RM)8と、駆動用電池(BT)10と、制御装置(HVECU)20と、アクセルペダル21と、外部給電装置22と、を有する。
【0012】
本実施形態の電動車両1は、フロントモータ6がトランスアクスル16を介して前輪12の前輪駆動軸12aを駆動する。リアモータ8は、減速機8cを介して後輪14の後輪駆動軸14aを駆動する。フロントモータ6は、フロントインバータ18を介して駆動用電池10と接続され、駆動用電池10から電力(第2電力)が供給される。
【0013】
フロントインバータ18は、フロントモータ制御装置(FrMCU)6aと、発電機4を制御する発電機制御装置(GCU)4aと、を有する。フロントモータ制御装置6aは、制御装置20から信号を取得し、フロントモータ6が所望の運転状態となるようにフロントモータ6の回生と力行を制御する。リアモータ8も同様に、リアインバータ8bを介して駆動用電池10と接続され、駆動用電池10から電力(第2電力)が供給される。リアインバータ8bは、リアモータ制御装置(RMCU)8aを有する。リアモータ制御装置8aは、制御装置20から信号を取得し、リアモータ8が所望の運転状態となるようにリアモータ8の回生と力行を制御する。
【0014】
内燃機関2は、トランスアクスル16を介して発電機4を駆動する。内燃機関2は、燃料タンク(Fuel TANK)23から供給される燃料が燃焼することで駆動する。内燃機関2の各種装置および各種センサは、エンジン制御装置(ENG-ECU)2aと電気的に接続される。エンジン制御装置2aは、制御装置20からの信号を取得し、内燃機関2が所望の運転状態となるように制御する。トランスアクスル16は、内燃機関2の回転速度を増幅し発電機4に伝達する。また、本実施形態のトランスアクスル16は、クラッチ16aを有する。クラッチ16aは、内燃機関2とフロントモータ6との間および内燃機関2と前輪駆動軸12aとの間で動力を伝達および遮断する。内燃機関2は、トランスアクスル16のクラッチ16aを介して前輪駆動軸12aに接続され、前輪駆動軸12aを駆動する。
【0015】
図2に示すように、内燃機関2は、少なくとも、燃料噴射弁2cと、排気管2dと、排気浄化装置2eと、添加剤噴射装置3とを有する。本実施形態では、内燃機関2は、排気管2dが内燃機関2から電動車両1の後方に向かって延びる後方排気型のものである。内燃機関2は、排気管2dを介して排気浄化装置2eに接続される。また、本実施形態では、マルチインジェクション方式のガソリンエンジンである。内燃機関2は、吸気ポート2fに配置された燃料噴射弁2cによって燃料を噴射し、スロットル弁2bによって吸入空気量を調整することにより出力を調整する。なお、内燃機関2は、気筒2gに直接燃料を噴射する直噴方式のガソリンエンジンやディーゼルエンジンであってもよい。さらに、内燃機関2は、マルチインジェクション方式および直噴方式を併用するガソリンエンジンであってもよい。また、内燃機関2は、このほか排気循環弁および排気循環通路を含む排気循環装置などの装置を含んでもよい。
【0016】
排気浄化装置2eは、内燃機関2の排気を浄化する。本実施形態では、排気浄化装置2eは、排気に含まれる炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物を酸化または還元させて浄化する三元触媒である。このような三元触媒は、少なくとも排気浄化装置2eの上流に配置されたセンサ(本実施形態ではリニア空燃比センサまたは酸素センサ)2hによって、浄化状態を検知する。しかし、排気浄化装置2eは、このほか酸素吸蔵機能、窒素吸蔵機能を有する触媒を含んでもよい。また、排気浄化装置2eは、燃料の燃え残りを吸蔵するガソリンパーティキュレートフィルタ、またはディーゼルパーティキュレートフィルタなどの装置を含んでもよい。
【0017】
添加剤噴射装置3は、生成装置3aと、添加剤通路3bと、ノズル3cと、を含む。生成装置3aは、添加剤を生成し貯蔵する。添加剤噴射装置3は、制御装置20と電気的に接続され、制御装置20によって制御される。ノズル3cは、排気浄化装置2eよりも上流の排気管2dの内部に先端が配置され、先端から添加剤を排気管2dの内部に噴射する。添加剤通路3bは、ノズル3cと、生成装置3aとを接続する。本実施形態では、添加剤は、水素である。しかし、添加剤は、内燃機関2の排気中に含まれる一酸化炭素およびPNと反応することによって燃焼し、排気浄化装置2eの触媒を早期に暖気可能な物質であればよい。このような物質は、水素のほかに、炭化水素のうち、メタンなどの炭素が少ない低炭化水素物質が考えられる。添加剤噴射装置3は、さらに、排気管2dの排気浄化装置2eの上流に設けられる点火装置を含んでもよい。添加剤噴射装置3は、さらに、排気浄化装置2eの上流に空気中の酸素を供給する酸素供給装置(二次エア)を含んでもよい。
【0018】
添加剤噴射装置3は、フロントモータ6およびリアモータ8(以下明細書において各モータと記す)の回生エネルギーを利用して、添加剤を生成してもよい。例えば、本実施形態のような水素であれば、回生エネルギーを利用して水を電気分解することによって抽出可能である。
【0019】
図1に示すように、発電機4は、内燃機関2と接続され、内燃機関2によって駆動されることにより発電する。発電機4によって発電された電力(第1電力)は、駆動用電池10を充電可能であるとともに、フロントインバータ18およびリアインバータ8bを介して各モータに供給可能である。本実施形態では、発電機4はモータジェネレータであり、発電に加えて内燃機関2を回転駆動することによって内燃機関2をクランキングまたはモータリングすることができる。発電機4は、内燃機関2から駆動される場合、発電機4に負荷を与えることで発電する。一方、発電機4は、駆動用電池10から電力が供給され力行することによって内燃機関2を駆動しクランキングまたはモータリングさせる。発電機4は、フロントインバータ18に設けられた発電機制御装置4aによって制御される。発電機制御装置4aは、制御装置20と電気的に接続され、制御装置20からの信号を取得し、発電機4が所望の運転状態となるように発電と力行を制御する。
【0020】
駆動用電池10は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成され、複数の電池セルをまとめて構成された図示しない電池モジュールを有する。駆動用電池10は、各モータの電源として機能する。さらに駆動用電池10は、電池モニタリングユニット(BMU)10aを有する。電池モニタリングユニット(BMU)10aは、電池モジュールの充電率(State Of Charge、以下、SOCと記す)の算出、電池モジュールの劣化状態(State Of Health 以下 SOH)、電池モジュールの電圧Bv、および電池温度Btmpの検出を行う。電池モニタリングユニット10aは、駆動用電池10の電圧Bv、充電率SOC、劣化状態SOH、および電池温度Btmpを取得し、制御装置20に送信する。
【0021】
制御装置20は、少なくとも走行モードの切り替えをする制御と、各走行モードにおいて、内燃機関2に発電させる発電制御と、内燃機関2を発電機4によって駆動するモータリング制御と、添加剤噴射装置によって添加剤を噴射する制御と、を実行する。
【0022】
本実施形態では、制御装置20は、速度V、充電率SOC、およびアクセル開度Thなどの情報に基づいて、クラッチ16aを制御することによって、シリーズモード(第1走行モードの一例)、パラレルモード(第2走行モードの一例)、およびEVモードの中から、いずれかにひとつの走行モードに切り替える。ここで、シリーズモード及びパラレルモードは内燃機関2が稼働した状態で電動車両1が走行するためエンジン稼働モード(内燃機関稼働モード)に含まれる。一方、EVモードでは内燃機関2が停止した状態で電動車両1が走行するためエンジン停止モード(内燃機関停止モード)に含まれる。パラレルモードでは、制御装置20は、クラッチ16aを接続し、内燃機関2とフロントモータ6の両方よって前輪駆動軸12aを駆動する。このとき、フロントモータ6には、駆動用電池10からの電力(第2電力)、および発電機4で発電した電力(第1電力)のいずれか一方、または両方が供給される。リアモータ8も同様に駆動用電池10からの電力(第2電力)、および発電機4で発電した電力(第1電力)のいずれか一方、または両方が供給され、後輪駆動軸14aを駆動する。EVモードでは、制御装置20は、クラッチ16aを開放し、駆動用電池10の電力(第2電力)を各モータに供給し、各モータが前輪駆動軸12aおよび後輪駆動軸14a(以下明細書において各駆動軸と記す)を駆動する。
【0023】
シリーズモードでは、制御装置20は、クラッチ16aを開放し、内燃機関2で発電機4を駆動し、発電機4で発電した第1電力を各モータに供給する。また、第1電力によっては各モータが各駆動軸を駆動する駆動力が不足する場合、駆動用電池10からも各モータに第2電力が供給される。なお、パラレルモード、およびシリーズモードにおいて、内燃機関2によって発電した発電電力の一部を駆動用電池10に供給することによって駆動用電池10を充電してもよい。
【0024】
制御装置20は、パラレルモード、シリーズモード、およびEVモードの各走行モードにおいて、内燃機関2に要求するエンジン要求トルクETqを演算し、エンジン制御装置2aに送信する。エンジン制御装置2aは、エンジン要求トルクETqを取得し、エンジン要求トルクETqを達成できるように、内燃機関2を制御する。制御装置20は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等と、を含むマイクロコンピュータによって構成される。制御装置20は、各センサおよび各種装置からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、電動車両1が、所望の運転状態となるように各装置を制御する。
【0025】
また、本実施形態では、エンジン制御装置2a、発電機制御装置4a、フロントモータ制御装置6a、リアモータ制御装置8a、および電池モニタリングユニット10aを含む各種制御装置が、それぞれ制御装置20と別に設けられる。各種制御装置は、それぞれ制御装置20と電気的に接続される。しかし、各種制御装置は、制御装置20と一体で設けられてもよい。各種制御装置は、制御装置20と同様に、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等と、を含むマイクロコンピュータによって構成される。
【0026】
アクセルペダル21は、電動車両1のドライバが踏み込み操作することで、電動車両1の加減速を制御するペダルである。アクセルペダル21には、踏み込み位置を検知するアクセルポジションセンサ21aが設けられる。アクセルポジションセンサ21aは、制御装置20と電気的に接続され、制御装置20にアクセル踏み込み位置(アクセル開度)を送信する。
【0027】
外部給電装置22は、駆動用電池10の電力を、電動車両1のユーザが電動車両1と別に用意する電気機器(例えば、家電機器等)に供給するための装置である。外部給電装置22はインバータを含み、駆動用電池10からの直流電流を、電気機器に適した交流電流に変換する。
【0028】
次に、図3のフローチャートを用いて、本実施形態の制御装置20の制御手順について説明する。制御装置20は、図示しないイグニッションスイッチがオンされることで、制御動作を開始する。
【0029】
制御装置20は、内燃機関2の始動要求(ENG始動要求)の有無を判断する(ステップS1)。本実施形態では、内燃機関2の始動要求は、制御装置20がエンジン制御装置2aにエンジン要求トルクETqを送信する必要があるか否かによって判断する。このような状態は、一例としては、アクセル開度が上昇したことによって各モータに出力すべき第2電力が不足し、内燃機関2を駆動して発電し第1電力を供給する必要が生じた場合である(以下明細書において、このようなモードを出力補填シリーズモードと記す)。具体的には、アクセル開度が上昇すると、制御装置20は、各駆動軸に供給すべきドライバ要求トルクを演算する。制御装置20は、第2電力によっては各モータが各駆動軸を駆動する電池駆動トルクがドライバ要求トルクに対して不足するか否か判断する。制御装置20は、ドライバ要求トルクが電池駆動トルクに対して不足する場合、内燃機関2によって発電機4を駆動し、第1電力を各モータに供給することにより、電池駆動トルクを補うように、内燃機関2を制御する。制御装置20は、このように内燃機関2を制御することによって、駆動用電池10の出力によって不足する出力を内燃機関2によって補填する出力補填シリーズモード制御を実行する。出力補填シリーズモードを実行する場合、制御装置20は、ドライバ要求トルクに対する電池駆動トルクの差分トルクを演算する。制御装置20は、差分トルクから第1電力の目標値となる目標発電量を演算する。制御装置20は、目標発電量に基づいて、エンジン要求トルクETqを演算する。制御装置20は、発電機4から各モータに電力を供給するための送電損失などを含んで目標発電量を演算してもよい。
【0030】
制御装置20がエンジン制御装置2aにエンジン要求トルクETqを送信する必要があるほかの例としては、駆動用電池10の充電率SOCが低下し、内燃機関2を駆動して発電し駆動用電池10を充電する場合である(以下明細書において、このようなモードを充電シリーズモードと記す)。充電シリーズモードでは、充電率SOCが徐々に低下してきた後にシリーズモードに移行することが多いことから内燃機関2の始動タイミングがある程度予測可能である。制御装置20は、その予測に基づいて排気浄化装置2eの性能を発揮すべく内燃機関2の暖機を予め実施することができる。一方、出力補填シリーズモードでは、ドライバの操作次第で突然シリーズモードに移行することがある。このため、予め内燃機関2を暖機しておくことが難しい。このような場合に、内燃機関2の始動時に排気浄化装置2eの上流に添加剤を噴射することによって、排気の浄化を効果的に達成することができる。
【0031】
制御装置20は、内燃機関2の始動要求(ENG始動要求)があると判断した場合(ステップS1 YES)、ステップS2に処理を進める。ステップS2では、制御装置20は、内燃機関2が冷態状態(ENG冷態)であるか否か判断する。制御装置20は、一例として、内燃機関2の冷却水の温度が所定の温度以下である場合、内燃機関2が冷態状態であると判断してもよい。他の例として、制御装置20は、内燃機関2の潤滑油の温度が所定の温度以下である場合、内燃機関2が冷態状態であると判断してもよい。制御装置20は、排気浄化装置2eの触媒温度を取得し、触媒温度が所定温度以下の場合、内燃機関2が冷態状態であると判断してもよい。制御装置20は、触媒温度を内燃機関2の冷却水温度および出力から推定して取得してもよい。また、制御装置20は、排気浄化装置2eに温度センサがある場合、温度センサから触媒温度を取得してもよい。
【0032】
ステップS2で、制御装置20は、内燃機関2が冷態状態であると判断した場合(ステップS2 YES)、ステップS3に処理を進める。ステップS3では、制御装置20は、充電率SOCが所定値SOCt以下か否か判断する。所定値SOCtは、内燃機関2が第1電力の供給もしくは駆動用電池10の充電のために高負荷で運転され得る充電率SOCである。より具体的には、制御装置20が、充電率SOCが所定値SOCt以下であると判断した場合、駆動用電池10からの電力を補うため、または駆動用電池10を充電するために、制御装置20は、内燃機関2を始動直後から高い出力によって運転し発電を行うことが予想される。この結果、一酸化炭素、およびPNの排出量が多くなることが予想される。このため、制御装置20は、内燃機関2が高負荷で運転されることを予想するための一つのパラメータとして充電率SOCを取得し、添加剤の噴射の要否を判断する。言い換えると、制御装置20は、内燃機関2を始動させる際のエンジン要求トルクETqが所定出力値以上である場合に、添加剤を噴射してもよい。あるいは、制御装置20は、内燃機関2を始動させる際のドライバ要求トルクが所定出力値以上である場合に、添加剤を噴射してもよい。いずれにせよ、所定出力値は、内燃機関2が高負荷で運転され、排気の悪化が予想される出力値に設定すればよい。
【0033】
なお、制御装置20は、出力補填シリーズモードにおいては、エンジン要求トルクETqまたはドライバ要求トルクが所定出力値以上の場合はステップS3の判断をスキップし、一律にステップS4に処理を進めてもよい。あるいは、ステップS1において出力補填シリーズモードにおけるドライバ要求トルクが所定出力値未満であっても、充電率SOCが所定値SOCt以下の場合は駆動用電池10の充電が加わり、エンジン要求トルクETqが増大することもある。このような場合、ステップS3の判断によってステップS4に処理を進めてもよい。さらに、充電率SOCが所定値SOCtまで急激に低下したことによって、突然充電シリーズモードに切り替わり、内燃機関2が高負荷で運転される場合もある。このような場合においても、制御装置20は、ステップS3の判断によって処理をステップS4に進めてもよい。いずれにせよ、制御装置20は、充電率SOCが所定値SOCt以下か否かを判断することによって、内燃機関2が高負荷で運転され得るか否か判断できればよい。
【0034】
制御装置20は、充電率SOCが所定値SOCt以下であると判断した場合(ステップS3 YES)、ステップS4に処理を進める。ステップS4では、制御装置20は、クランキングが開始されたか否か判断する。制御装置20は、クランキングが開始されていると判断した場合(ステップS4 YES)、ステップS5に処理を進める。ステップS5では、制御装置20は、添加剤噴射装置3を制御して添加剤を噴射し、ステップS6に処理を進める。このように、制御装置20は、クランキング中に添加剤を噴射することによって、内燃機関2の完爆後の排気が排気管2dにおいて燃焼しやすい状態を作る。これによって、一酸化炭素およびPNを早期に低減するとともに、触媒を早期に昇温させる。また、このとき、排気管2dに点火装置を有する場合、点火装置によって燃焼を誘発してもよい。さらに、添加剤噴射装置が酸素供給装置を有する場合、酸素(または空気)を排気管2dに供給し、燃焼を誘発してもよい。
【0035】
ステップS6では、制御装置20は、添加剤噴射中において、シリーズモード、およびパラレルモードのうち内燃機関2の出力が低い方の走行モードを選択する。本実施形態では、制御装置20は、パラレルモードにおけるエンジン要求トルクETqと、シリーズモードにおけるエンジン要求トルクETqを演算し、比較することによって、内燃機関2の出力が低い方の走行モードを選択する。これによって、添加剤噴射中の内燃機関2にかかる負荷を下げることができる。このため、内燃機関2の排気の悪化が抑制される。この結果、排気を速やかに浄化しやすい。
【0036】
制御装置20は、ステップS6で走行モードの選択を終えると、ステップS7に処理を進める。ステップS7では、制御装置20は、添加剤が所定噴射量Tt噴射されたか否か判断する。所定噴射量は、内燃機関2に要求される負荷に応じて設定してもよい。制御装置20は、例えば、内燃機関2に要求される負荷が高いほど、所定噴射量を多く設定してもよい。本実施形態では、制御装置20は、内燃機関2が始動する際のエンジン要求トルクETqが高いほど、所定噴射量Ttを多く設定する。
【0037】
制御装置20は、内燃機関2に始動要求がない場合(ステップS1 NO)、処理をステップS1に戻す。制御装置20は、内燃機関2が冷態状態でない場合(ステップS2 NO)、処理をステップS1に戻す。制御装置20は、SOCが所定値SOCtより大きい場合(ステップS3 NO)、処理をステップS1の前に戻す。制御装置20は、クランキングが開始されていない場合(ステップS4 NO)、処理をステップS2に戻してクランキングが開始されるまで待つ。制御装置20は、所定噴射量Tt添加剤を噴射できていない場合(ステップS7 NO)、処理をステップS2に戻して所定噴射量Tt添加剤を噴射できるまで処理を実行する。
【0038】
以上説明した通り、本開示によれば、電動車両1に搭載された内燃機関2の冷態始動直後の排気を速やかに浄化する電動車両1を提供できる。
【0039】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0040】
(a)上記実施形態では、四輪駆動型のハイブリッド自動車を例に説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。電動車両1は、前輪駆動のハイブリッド型およびプラグインハイブリッド型の自動車であってもよい。また、電動車両1は、四輪駆動型のプラグインハイブリッド自動車であってもよい。
【0041】
(b)上記実施形態では、クラッチ16aを用いて、内燃機関2と前輪駆動軸12aを接続する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。内燃機関2と前輪駆動軸12aは遊星ギヤを介して接続してもよい。
【0042】
(c)上記実施形態では、内燃機関2と発電機4をギヤで接続する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。内燃機関2と発電機4は遊星ギヤを介して接続してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1:電動車両,2:内燃機関,2e:排気浄化装置
3:添加剤噴射装置,
4:発電機(第2回転電機の一例),6:フロントモータ(第1回転電機の一例),
10:駆動用電池
20:制御装置
ETq:エンジン要求トルク,SOCt :所定値
図1
図2
図3