IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • -ローラーカム装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169927
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】ローラーカム装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 37/08 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
B21D37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075656
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000175582
【氏名又は名称】三協オイルレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100126147
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 成年
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・ヨルケ
【テーマコード(参考)】
4E050
【Fターム(参考)】
4E050DA04
4E050DA06
4E050DA08
(57)【要約】
【課題】 衝撃に対して十分に強いローラーカム装置を提供する。
【解決手段】 カムホルダ部と、カムホルダ部に移動可能に取り付けられ、ローラー部を有するカムスライダー部と、ローラーに当接する第1摺動面を有し、カムスライダー部を駆動するためのカムドライバー部とを有するローラーカム装置であって、カムスライダー部は、摺動曲面を有する強制戻し部を有し、カムドライバー部は、第1摺動面に平行であり、第1摺動面と反対向きの第2摺動面を有する摺動部材を有し、強制戻し時には、強制戻し部の摺動曲面と摺動部材の第2摺動面が摺動する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムホルダ部と、
前記カムホルダ部に移動可能に取り付けられ、ローラー部を有するカムスライダー部と、
前記ローラーに当接する第1摺動面を有し、前記カムスライダー部を駆動するためのカムドライバー部と、
を有するローラーカム装置であって、
前記カムスライダー部は、摺動曲面を有する強制戻し部を有し、
前記カムドライバー部は、前記第1摺動面に平行であり、前記第1摺動面と反対向きの第2摺動面を有する摺動部材を有し、
強制戻し時には、前記強制戻し部の摺動曲面と前記摺動部材の第2摺動面が摺動する、ローラーカム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラーカム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディ等の大型金属製板は、固定金型と移動金型とによりプレス成型される。プレス成型と同時に、プレス成型品の側面に孔を穿設したり縁部を屈曲させたりするために、金型内に設置可能なカム装置が用いられる。
【0003】
ローラーカム装置は、例えば、カムホルダと、カムホルダに加工方向に摺動可能に取り付けられたカムスライダーと、カムスライダーに設けられたローラーに当接し、カムスライダーを加工方向に駆動するカムドライバーとを有する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ローラーカム装置のカムドライバーとカムスライダーとの摺動は、平面(カムドライバーの摺動面)と円筒面(カムスライダーのローラーの表面)であるため、カムドライバーの平面の角度は自由に設定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国実用新案第202015106307号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ピアスで穴をあけた後にピアスがパネルに引っかかった場合に、カムスライダーが離脱動作しないことがある。強制戻し機構は、カムスライダーを機械的係合により、強制的に加工位置から初期位置へ離脱させる機構である。
【0007】
従来のカム装置の強制戻し機構は、平面同士の摺動となる。このため、ドライバー面の角度が変わると、強制戻しが正確に当たらなくなる。そのため、従来のローラーカム装置では、ローラー(カムフォロア)が強制戻しに用いられる。しかしながら、ローラー(カムフォロア)は、衝撃に対して十分に強い構造とはいえない。また、部品点数が増えるため、カム装置のコストが高くなる。
【0008】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、衝撃に対して十分に強い構造とすることが可能なローラーカム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、カムホルダ部と、カムホルダ部に移動可能に取り付けられ、ローラー部を有するカムスライダー部と、ローラーに当接する第1摺動面を有し、カムスライダー部を駆動するためのカムドライバー部とを有するローラーカム装置であって、カムスライダー部は、摺動曲面を有する強制戻し部を有し、カムドライバー部は、第1摺動面に平行であり、第1摺動面と反対向きの第2摺動面を有する摺動部材を有し、強制戻し時には、強制戻し部の摺動曲面と摺動部材の第2摺動面が摺動する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のローラーカム装置によれば、衝撃に対して十分に強い構造とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ローラーカム装置を示す図である。
図2】ローラーカム装置を示す図である。
図3】カムホルダ部とカムスライダー部を示す図である。
図4】強制戻し部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態であるローラーカム装置について、図を参照して詳細に説明をする。なお、ローラーカム装置の公知の構成については説明を適宜省略する。
【0013】
図1は、ローラーカム装置1を示す図(正面図)である。実施形態では、ローラーカム装置1は下置きカム装置となっているが、ローラーカム装置は、吊りカム装置であってもよい。
【0014】
図1に示すように、ローラーカム装置1は、固定金型(下型、不図示)等に固定されたカムホルダ部100と、カムホルダ部100に摺動可能に支持され、弾性部材(不図示)で戻り方向に付勢されて、所定のストロークで加工方向に往復動作し、加工方向の所定の側面に加工工具(不図示)が取り付くカムスライダー部200と、移動金型(上型、不図示)等に固定され、カムスライダー部200を所定の加工方向に駆動するためのカムドライバー部300と、を有する。
【0015】
図3は、カムホルダ部とカムスライダー部を示す図である。図3(a)は正面図であり、図3(b)は、図3(a)のA-A断面図である。図3に示すように、カムホルダ部100は、カムスライダー部200を所定の加工方向Aに動作可能とするための摺動部101と103を有する。
【0016】
図3に示すように、カムスライダー部200は、摺動部101と103に挟持される突起部203を有する。カムスライダー部は、側面200bと上面200cとを有する。側面200bと上面200cとは、曲面200dを介して、連続した面である。
【0017】
カムスライダー部200は、ローラー部201を有する。ローラー部201の表面201aは曲面200dの外側にある。
【0018】
カムスライダー部200は、強制戻し部202を有する。図4は、強制戻し部を示す図である。図4(a)は正面図であり、図4(b)は、側面図である。強制戻し部202は、一端及び中程にカムスライダー部200本体への取付部となる穴202bを有する。強制戻し部202は、他端の表面201aに対向する位置に、摺動曲面202aを有する。強制戻し部202の幅をL、摺動曲面202aの半径をr、摺動曲面202aの中心角の半分をθとした場合には、可変可能なカム角度θは、θ=sin-1(L/2r)となる。例えば、カム幅Lが80mmの場合、θ=21.3°,L=20mm,r=27.5mmとなる。
【0019】
強制戻し部202は、強度確保の観点から、削り出し等により、1つの材料から作られた一体的な部品とすることが好ましい。
【0020】
カムドライバー部300は、移動金型に結合し、図1中のB方向に上下動する。カムドライバー部300は、ローラー部201の表面201aと当接するカム面301を有する。図1では、カム面301と固定面100aとがなす角度は50°である。
【0021】
カムドライバー部300は、カムブロック302を有する。カムブロック302の上面302aは、カム面301と平行である。上面302aは、カム面301と反対向きの面である。
【0022】
(動作50°)
次に、強制戻し機構の動作について簡単に説明する。上型等(不図示)が下降する(図のBの下方向)と、上型等に取りつけられたカムドライバー部300も下降する。カムスライダー部200の側面200aには、ピアス等の工具(不図示)が取り付けられる。
【0023】
カムドライバー部300が下死点に到達すると、ピアスによりワークへの穴開け加工が行われる。次に、上型等が上昇する(図のBの上方向)と、上型等に取りつけられたカムドライバー部300も上昇する。
【0024】
通常であれば、穴あけ加工後のピアスはカムホルダ部100内の弾性部材(不図示)の付勢力により、ワークから引き抜かれ、カムスライダー部200も初期位置へ移動(図のAの左方向)を始める。しかしながら、ピアスがパネルに引っかかった場合には、この付勢力では足りないことがある。このため、カムスライダー部200を、強制戻し機構の機械的係合により、強制的に加工位置から図のAの左方向の初期位置へ離脱させる。
【0025】
カムスライダー部200が移動を始めない場合には、カムドライバー部300のカムブロック302の上面302aと、強制戻し部202の摺動曲面202aとが当接する。
【0026】
これにより、摺動曲面202aには、上型の上昇に伴う上面302aからの力が作用し、カムスライダー部200に離脱力を伝達する(図中のAの左方向)。この離脱力により、パネルに引っかかったピアスを抜くことが可能となる。
【0027】
(動作45°)
図2は、カム面301と固定面100aとがなす角度が45°の場合のローラーカム装置である。図に示すように、カム角度が50°から45°に変更された場合でも、摺動曲面202aは曲面であるため、カムスライダー部200(及び、カムホルダ部100)の構成は50°の場合から変更は不要である。
【0028】
実施形態のローラーカム装置によれば、強制戻しの摺動曲面202aを円弧にしたことで、相手面の角が変化しても対応することが可能となる。強制戻し部202を一体構造としたことにより、強い衝撃荷重に耐えることが可能となる。強制戻し部202を一体構造としたことにより、部品点数も減ることから、コストを抑えることが可能となる。
【0029】
実施形態では、摺動曲面202aを、半径r、中心角2θとした円弧断面を有する曲面としたが、これに限られない。例えば、摺動曲面202aは、球面でもよいし、楕円弧断面であってもよいし、それらを組み合わせた面でもよい。
【0030】
以上、実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1:カム装置
100:カムホルダ部
200:カムスライダー部
300:カムドライバー部
図1
図2
図3
図4