(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169956
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】電力制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/35 20060101AFI20221102BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20221102BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20221102BHJP
H02J 1/12 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H02J7/35 K
H02J3/38 130
H02J3/38 120
H02J3/38 160
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J1/12
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075717
(22)【出願日】2021-04-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】508264841
【氏名又は名称】有限会社 宮脇工房
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 啓佐敏
(72)【発明者】
【氏名】壬生 喬大
(72)【発明者】
【氏名】高柳 秀明
【テーマコード(参考)】
5G066
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G066AE09
5G066HB04
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
5G165DA08
5G165EA02
5G165EA03
5G165EA06
5G165HA01
5G165LA01
5G503AA04
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503GB03
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD04
(57)【要約】
【課題】複数の電力源の出力電力を容易に管理できる電力制御装置を提供する。
【解決手段】電力制御装置は、N個の電力源にそれぞれ対応して設けられたN個のDC/DC変換器と、N個のDC/DC変換器の出力端子に共通に接続されたDC配線と、DC配線に接続された負荷接続部と、N個のDC/DC変換器に接続された電力制御部と、を備える。電力制御部は、N個のDC/DC変換器のうちの少なくとも1個のDC/DC変換器の設定出力電圧値を他のDC/DC変換器の設定出力電圧値と異なる値に設定することによって、設定出力電圧値が高い順に優先的に1つ以上のDC/DC変換器からの出力電力を電力負荷部に供給する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nを2以上の整数とするとき、N個の電力源からの電力を電力負荷部に供給する制御を行う電力制御装置であって、
前記N個の電力源にそれぞれ対応して設けられ、対応する電力源に由来する直流電力の電圧レベルを変換するN個のDC/DC変換器と、
前記N個のDC/DC変換器の出力端子に共通に接続されたDC配線と、
前記DC配線に接続されており、前記電力負荷部が接続される負荷接続部と、
前記N個のDC/DC変換器に接続された電力制御部と、
を備え、
前記電力制御部は、前記N個のDC/DC変換器のうちの少なくとも1個のDC/DC変換器の設定出力電圧値を他のDC/DC変換器の設定出力電圧値と異なる値に設定することによって、前記設定出力電圧値が高い順に優先的に1つ以上のDC/DC変換器からの出力電力を前記電力負荷部に供給する、
電力制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力制御装置であって、更に、
前記DC配線から供給される電力を貯蔵エネルギーとして貯蔵する貯蔵部と、前記貯蔵部と前記DC配線との間に接続されて前記貯蔵エネルギーに由来する直流電力の電圧レベルを変換する放電用DC/DC変換器と、を有する蓄エネルギー部を備え、
前記電力制御部は、
前記放電用DC/DC変換器の設定出力電圧値を前記N個のDC/DC変換器の設定出力電圧値よりも低い値に設定することによって、前記N個のDC/DC変換器よりも低い優先度で前記放電用DC/DC変換器からの出力電力を前記電力負荷部に供給する、
電力制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力制御装置であって、更に、
外部送電線から供給される交流電力を直流電力に変換する受電用AC/DC変換器と、前記受電用AC/DC変換器と前記DC配線との間に接続された受電用DC/DC変換器と、を有する外部送電線接続部を備え、
前記電力制御部は、
前記受電用DC/DC変換器の設定出力電圧値を前記N個のDC/DC変換器の設定出力電圧値よりも低い値に設定することによって、前記N個のDC/DC変換器よりも低い優先度で前記受電用DC/DC変換器からの出力電力を前記電力負荷部に供給する、
電力制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力制御装置であって、更に、
前記DC配線から供給される電力を貯蔵エネルギーとして貯蔵する貯蔵処理と、前記貯蔵エネルギーを用いて前記DC配線に電力を供給する放電処理とを行う蓄エネルギー部と、
外部送電線から受電して前記DC配線に電力を供給する受電処理と、前記DC配線から供給される電力を前記外部送電線に送電する送電処理とを行う外部送電線接続部と、
の少なくとも一方を備えるとともに、
前記DC配線の電圧を測定する電圧センサーを備え、
前記電力制御部は、前記DC配線の電圧が、前記N個のDC/DC変換器に対するN個の前記設定出力電圧値のいずれよりも低く設定された第1閾値以上である場合には、前記電力負荷部における消費電力が前記N個のDC/DC変換器からの出力電力の合計値よりも少ないと判定して、前記消費電力と前記出力電力の合計値との差分である余剰電力を、前記蓄エネルギー部による前記貯蔵処理と前記外部送電線接続部による前記送電処理の少なくとも一方を用いて消費させる、
電力制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力制御装置であって、
前記電力制御部は、前記DC配線の電圧が、前記第1閾値以下に設定された第2閾値よりも低くなった場合には、前記電力負荷部における消費電力が前記N個のDC/DC変換器からの出力電力の合計値を超えると判定して、前記消費電力と前記出力電力の合計値との差分である不足電力を、前記蓄エネルギー部による前記放電処理と前記外部送電線接続部による前記受電処理の少なくとも一方を用いて補充する、
電力制御装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の電力制御装置であって、
前記電力制御部と前記N個のDC/DC変換器は、アドレス可能なバス配線を介して互いに接続されており、
前記電力制御部は、前記N個のDC/DC変換器のそれぞれに予め設定されているアドレスを指定して、前記バス配線を介して前記設定出力電圧値を前記N個のDC/DC変換器に個別に送信する、電力制御装置。
【請求項7】
Nを2以上の整数とするとき、N個の電力源からの電力を電力負荷部に供給する制御を行う電力制御装置であって、
前記N個の電力源にそれぞれ対応して設けられ、対応する電力源に由来する直流電力の電圧レベルを変換するN個のDC/DC変換器と、
前記N個のDC/DC変換器の出力端子に共通に接続されたDC配線と、
前記DC配線に接続されており、前記電力負荷部が接続される負荷接続部と、
前記N個のDC/DC変換器に接続された電力制御部と、
前記DC配線の電圧を測定する電圧センサーと、
前記DC配線から供給される電力を貯蔵エネルギーとして貯蔵する貯蔵処理と、前記貯蔵エネルギーを用いて前記DC配線に電力を供給する放電処理とを行う蓄エネルギー部と、外部送電線から受電して前記DC配線に電力を供給する受電処理と、前記DC配線から供給される電力を前記外部送電線に送電する送電処理とを行う外部送電線接続部と、の少なくとも一方と、
を備え、
前記電力制御部は、前記N個のDC/DC変換器の設定出力電圧値をそれぞれ独立に設定することが可能であり、
前記電力制御部は、前記DC配線の電圧が、前記N個のDC/DC変換器に対するN個の前記設定出力電圧値のいずれよりも低く設定された第1閾値以上である場合には、前記電力負荷部における消費電力が前記N個のDC/DC変換器からの出力電力の合計値よりも少ないと判定して、前記消費電力と前記出力電力の合計値との差分である余剰電力を、前記蓄エネルギー部による前記貯蔵処理と前記外部送電線接続部による前記送電処理の少なくとも一方を用いて消費させる、
電力制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電力制御装置であって、
前記電力制御部は、前記DC配線の電圧が、前記第1閾値以下に設定された第2閾値よりも低くなった場合には、前記電力負荷部における消費電力が前記N個のDC/DC変換器からの出力電力の合計値を超えると判定して、前記消費電力と前記出力電力の合計値との差分である不足電力を、前記蓄エネルギー部による前記放電処理と前記外部送電線接続部による前記受電処理の少なくとも一方を用いて補充する、
電力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、それぞれ相関関係なく変動する複数種類の電力発生源を一括管理する電力充電装置が記載されている。この電力充電装置は、複数の電力発生源からの電力を同一の電圧に調整して充電部に供給することによって、充電媒体への充電を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、電力を消費する負荷部に電力を供給する場合については考慮されていなかった。また、複数の電力発生源の出力電力を同一の電圧で管理するため、比較的安定な電力発生源や不安定な電力発生源などが混在する場合に、複数の電力発生源からの電力をうまく管理することができない可能性があるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の第1の形態によれば、Nを2以上の整数とするとき、N個の電力源からの電力を電力負荷部に供給する制御を行う電力制御装置が提供される。この電力制御装置は、前記N個の電力源にそれぞれ対応して設けられ、対応する電力源に由来する直流電力の電圧レベルを変換するN個のDC/DC変換器と、前記N個のDC/DC変換器の出力端子に共通に接続されたDC配線と、前記DC配線に接続されており、前記電力負荷部が接続される負荷接続部と、前記N個のDC/DC変換器に接続された電力制御部と、を備える。前記電力制御部は、前記N個のDC/DC変換器のうちの少なくとも1個のDC/DC変換器の設定出力電圧値を他のDC/DC変換器の設定出力電圧値と異なる値に設定することによって、前記設定出力電圧値が高い順に優先的に1つ以上のDC/DC変換器からの出力電力を前記電力負荷部に供給する。
この電力制御装置によれば、設定出力電圧が高い順に優先的に1つ以上のDC/DC変換器から電力負荷部に電力が供給されるので、N個の電力源のうちの一部を優先的に用いて電力負荷部への電力供給を行うことができ、N個の電力源の出力電力を容易に管理することができる。
(2)上記電力制御装置は、更に、前記DC配線から供給される電力を貯蔵エネルギーとして貯蔵する貯蔵部と、前記貯蔵部と前記DC配線との間に接続されて前記貯蔵エネルギーに由来する直流電力の電圧レベルを変換する放電用DC/DC変換器と、を有する蓄エネルギー部を備え、前記電力制御部は、前記放電用DC/DC変換器の設定出力電圧値を前記N個のDC/DC変換器の設定出力電圧値よりも低い値に設定することによって、前記N個のDC/DC変換器よりも低い優先度で前記放電用DC/DC変換器からの出力電力を前記電力負荷部に供給するものとしてもよい。
この電力制御装置によれば、放電用DC/DC変換部の設定出力電圧値をN個のDC/DC変換器の設定出力電圧値よりも低い値に設定することによって、蓄エネルギー部からの出力電力よりも優先的にN個の電力源の出力電力を電力負荷部に供給することができる。
(3)上記電力制御装置は、更に、外部送電線から供給される交流電力を直流電力に変換する受電用AC/DC変換器と、前記受電用AC/DC変換器と前記DC配線との間に接続された受電用DC/DC変換器と、を有する外部送電線接続部を備え、前記電力制御部は、前記受電用DC/DC変換器の設定出力電圧値を前記N個のDC/DC変換器の設定出力電圧値よりも低い値に設定することによって、前記N個のDC/DC変換器よりも低い優先度で前記受電用DC/DC変換器からの出力電力を前記電力負荷部に供給するものとしてもよい。
この電力制御装置によれば、受電用DC/DC変換部の設定出力電圧値をN個のDC/DC変換器の設定出力電圧値よりも低い値に設定することによって、外部送電線接続部から供給される電力よりも優先的にN個の電力源の出力電力を電力負荷部に供給することができる。
(4)上記電力制御装置は、更に、前記DC配線から供給される電力を貯蔵エネルギーとして貯蔵する貯蔵処理と、前記貯蔵エネルギーを用いて前記DC配線に電力を供給する放電処理とを行う蓄エネルギー部と、外部送電線から受電して前記DC配線に電力を供給する受電処理と、前記DC配線から供給される電力を前記外部送電線に送電する送電処理とを行う外部送電線接続部と、の少なくとも一方を備えるとともに、前記DC配線の電圧を測定する電圧センサーを備え、前記電力制御部は、前記DC配線の電圧が、前記N個のDC/DC変換器に対するN個の前記設定出力電圧値のいずれよりも低く設定された第1閾値以上である場合には、前記電力負荷部における消費電力が前記N個のDC/DC変換器からの出力電力の合計値よりも少ないと判定して、前記消費電力と前記出力電力の合計値との差分である余剰電力を、前記蓄エネルギー部による前記貯蔵処理と前記外部送電線接続部による前記送電処理の少なくとも一方を用いて消費させる。
この電力制御装置によれば、DC配線の電圧と第1閾値との比較に応じて余剰電力があることを判定し、その余剰電力を蓄エネルギー部や外部送電線接続部を用いて消費するので、簡単な構成で電力の管理を行うことができる。
(5)上記電力制御装置において、前記電力制御部は、前記DC配線の電圧が、前記第1閾値以下に設定された第2閾値よりも低くなった場合には、前記電力負荷部における消費電力が前記N個のDC/DC変換器からの出力電力の合計値を超えると判定して、前記消費電力と前記出力電力の合計値との差分である不足電力を、前記蓄エネルギー部による前記放電処理と前記外部送電線接続部による前記受電処理の少なくとも一方を用いて補充するものとしてもよい。
この電力制御装置によれば、DC配線の電圧と第2閾値との比較に応じて不足電力があることを判定し、その不足電力を蓄エネルギー部や外部送電線接続部を用いて補充するので、簡単な構成で電力の管理を行うことができる。
(6)上記電力制御装置において、前記電力制御部と前記N個のDC/DC変換器は、アドレス可能なバス配線を介して互いに接続されており、前記電力制御部は、前記N個のDC/DC変換器のそれぞれに予め設定されているアドレスを指定して、前記バス配線を介して前記設定出力電圧値を前記N個のDC/DC変換器に個別に送信するものとしてもよい。
この電力制御装置によれば、N個のDC/DC変換器に対して設定出力電圧値を任意の値に独立に設定できる。
(7)本開示の第2の形態によれば、Nを2以上の整数とするとき、N個の電力源からの電力を電力負荷部に供給する制御を行う電力制御装置が提供される。この電力制御装置は、前記N個の電力源にそれぞれ対応して設けられ、対応する電力源に由来する直流電力の電圧レベルを変換するN個のDC/DC変換器と、前記N個のDC/DC変換器の出力端子に共通に接続されたDC配線と、前記DC配線に接続されており、前記電力負荷部が接続される負荷接続部と、前記N個のDC/DC変換器に接続された電力制御部と、前記DC配線の電圧を測定する電圧センサーと、前記DC配線から供給される電力を貯蔵エネルギーとして貯蔵する貯蔵処理と、前記貯蔵エネルギーを用いて前記DC配線に電力を供給する放電処理とを行う蓄エネルギー部と、外部送電線から受電して前記DC配線に電力を供給する受電処理と、前記DC配線から供給される電力を前記外部送電線に送電する送電処理とを行う外部送電線接続部と、の少なくとも一方と、を備える。前記電力制御部は、前記N個のDC/DC変換器の設定出力電圧値をそれぞれ独立に設定することが可能であり、前記電力制御部は、前記DC配線の電圧が、前記N個のDC/DC変換器に対するN個の前記設定出力電圧値のいずれよりも低く設定された第1閾値以上である場合には、前記電力負荷部における消費電力が前記N個のDC/DC変換器からの出力電力の合計値よりも少ないと判定して、前記消費電力と前記出力電力の合計値との差分である余剰電力を、前記蓄エネルギー部による前記貯蔵処理と前記外部送電線接続部による前記送電処理の少なくとも一方を用いて消費させる。
この電力制御装置によれば、DC配線の電圧と第1閾値との比較に応じて余剰電力があることを判定し、その余剰電力を蓄エネルギー部や外部送電線接続部を用いて消費するので、簡単な構成で電力の管理を行うことができる。
(8)上記電力制御装置において、前記電力制御部は、前記DC配線の電圧が、前記第1閾値以下に設定された第2閾値よりも低くなった場合には、前記電力負荷部における消費電力が前記N個のDC/DC変換器からの出力電力の合計値を超えると判定して、前記消費電力と前記出力電力の合計値との差分である不足電力を、前記蓄エネルギー部による前記放電処理と前記外部送電線接続部による前記受電処理の少なくとも一方を用いて補充するものとしてもよい。
この電力制御装置によれば、DC配線の電圧と第2閾値との比較に応じて不足電力があることを判定し、その不足電力を蓄エネルギー部や外部送電線接続部を用いて補充するので、簡単な構成で電力の管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態における電力制御装置の構成を示すブロック図。
【
図2】DC/DC変換器とDC配線の接続関係を示す説明図。
【
図3】DC/DC変換器の一般的な出力特性を示すグラフ。
【
図4】複数の電力変換部の出力電圧値と出力電力の関係を示す説明図。
【
図6】DC配線の電圧による余剰電力と不足電力の判定方法を示す説明図。
【
図7】複数の電力源の出力電力の変動と余剰電力又は不足電力の発生例を示す説明図。
【
図8】第2実施形態におけるDC/DC変換器とDC配線の接続関係を示す説明図。
【
図9】第2実施形態における複数の電力変換部の出力電圧値と出力電力の関係を示す説明図。
【
図10】第2実施形態におけるDC配線の電圧による余剰電力と不足電力の判定方法を示す説明図。
【
図11】第3実施形態におけるDC配線の電圧による余剰電力と不足電力の判定方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、第1実施形態における電力制御装置100の構成を示す説明図である。この電力制御装置100は、外部の複数の電力源10,20,30にそれぞれ接続される複数の電力変換部210,220,230と、DC配線300と、電力制御部400と、外部の電力負荷部50に接続される負荷接続部500と、蓄エネルギー部600と、外部の送電線70に接続される外部送電線接続部700と、を備える。但し、蓄エネルギー部600と外部送電線接続部700のうちの一方又は両方を省略してもよい。
【0009】
複数の電力源10,20,30のそれぞれは、太陽光や、風力、水力などの再生可能エネルギーを利用した発電装置とすることが好ましい。再生可能エネルギーを利用した発電装置は、その出力電力が時間的に大きく変動するが、以下に詳述するように、本実施形態の電力制御装置100によれば、変動する出力電力を容易に管理できる。なお、電力源としては、ディーゼル発電機などの他の種類の発電装置を用いても良い。
【0010】
第1の電力変換部210は、電力源10に接続されるAC/DC変換器212と、AC/DC変換器212の出力側に接続されたDC/DC変換器214と、を有する。同様に、第2の電力変換部220は電力源20に接続されるAC/DC変換器222とDC/DC変換器224とを有し、第3の電力変換部230は電力源30に接続されるAC/DC変換器232とDC/DC変換器234とを有する。なお、電力変換部210,220,230の数をNとしたとき、Nは2以上の任意の整数とすることが可能である。
【0011】
DC配線300は、複数の電力変換部210,220,230における複数のDC/DC変換器214,224,234の出力端子に共通に接続されている。換言すれば、複数のDC/DC変換器214,224,234は、DC配線300に並列に接続されている。DC配線300には、電圧センサー310が設けられている。電圧センサー310で測定された電圧は、電力制御部400に通知される。
【0012】
電力制御部400は、複数の電力変換部210,220,230と、負荷接続部500と、蓄エネルギー部600と、外部送電線接続部700と、に接続されているが、
図1ではこれらの接続線の一部が省略されている。電力制御部400による処理内容については後述する。なお、電力変換部210,220,230と蓄エネルギー部600と外部送電線接続部700は、それぞれの電力を測定する電力センサーを設け、電力センサーで測定した測定電力を電力制御部400に通知するようにしてもよい。但し、後述する不足電力の補充処理や余剰電力の消費処理は、電力センサーを用いずに実行することが可能である。
【0013】
負荷接続部500は、DC/AC変換器510を有しており、DC配線300を介して供給される直流電力を交流電力に変換して電力負荷部50に供給することが可能である。但し、電力負荷部50が直流電力で動作する場合には、DC/AC変換器510は省略しても良く、又はDC/DC変換器に置換しても良い。
【0014】
蓄エネルギー部600は、DC配線300から供給される電力を貯蔵エネルギーとして貯蔵する貯蔵処理と、貯蔵エネルギーを用いてDC配線300に電力を供給する放電処理とを行うことが可能である。蓄エネルギー部600は、DC/DC変換器610と、二次電池620とを備える。DC/DC変換器610は、双方向DC/DCコンバーターであり、二次電池620の充放電制御部の一部を構成している。二次電池620は、DC配線300から供給される電力を貯蔵エネルギーとして貯蔵する貯蔵部の一種である。なお、貯蔵部としては、二次電池620の代わりに、キャパシターなどの他の蓄電装置を用いても良く、或いは、フライホイール付きのモーターのように電力以外の形態の貯蔵エネルギーを貯蔵する貯蔵部を用いても良い。後者の場合に、充電時は、モーターを駆動制御させフライホイールを回転加速させて電力を機械変換し、回転運動エネルギーとして保存(充電)させる。また放電時は、モーターを回生制御させフライホイールからの回転減速により回転運動エネルギーを電気変換させ電力として再生(放電)させる。DC/DC変換器610は、DC配線300に直流電力を供給する際に貯蔵部の貯蔵エネルギーに由来する直流電力の電圧レベルを変換するものであり、「放電用DC/DC変換器」と呼ぶことができる。
【0015】
外部送電線接続部700は、外部の送電線70から受電してDC配線300に電力を供給する受電処理と、DC配線300から供給される電力を外部の送電線70に送電する送電処理とを行うことが可能である。外部送電線接続部700は、外部の送電線70に接続されて交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器710と、AC/DC変換器710の出力側に接続されたDC/DC変換器720と、を有する。DC/DC変換器720は、DC配線300に接続されている。AC/DC変換器710を「受電用AC/DC変換器」とも呼び、DC/DC変換器720を「受電用DC/DC変換器」とも呼ぶ。外部送電線接続部700は、更に、DC配線300からの直流電力を交流電力に変換して送電線70の送電するDC/AC変換器730を有している。このDC/AC変換器730を「送電用DC/AC変換器」とも呼ぶ。
【0016】
電力制御部400は、アドレス可能なバス配線410を介して、電力制御装置100内のDC/DC変換器214,224,234,610,720に接続されている。電力制御部400は、このバス配線410を介して、DC/DC変換器214,224,234,610,720のそれぞれに予め設定されているアドレスを指定して、設定出力電圧値E1,E2,E3,Eb,Eaをそれぞれ個別に送信して設定することが可能である。個々のDC/DC変換器214,224,234,610,720は、与えられた設定出力電圧値E1,E2,E3,Eb,Eaで直流電力を出力する。DC配線300に出力された電力は、負荷接続部500を介して電力負荷部50に供給される。
【0017】
図2は、複数のDC/DC変換器214,224,234,610,720とDC配線300の接続関係を示す説明図である。この例では、第1の電力源10は、ソーラーパネルのような直流電源である。第1の電力源10の直流出力電力は、第1の電力変換部210のAC/DC変換器212に入力されており、ほぼそのままAC/DC変換器212から出力されてDC/DC変換器214に入力される。但し、この場合には、AC/DC変換器212をバイパスして、第1の電力源10の直流出力電力をDC/DC変換器214に直接供給するようにしてもよい。他の電力源20,30は交流電力源であり、それらの交流出力電力は、AC/DC変換器222,232でそれぞれ直流電力に変換された後にDC/DC変換器224,234に供給される。これらの説明から理解できるように、DC/DC変換器214,224,234のそれぞれは、対応する電力源10,20,30に由来する直流電力の電圧レベルを変換する処理を実行する。
【0018】
前述したように、電力制御部400は、バス配線410を介して、設定出力電圧値E1,E2,E3,Eb,EaをDC/DC変換器214,224,234,610,720に独立に送信することが可能である。この例では、設定出力電圧値は、E1,E2,E3,Eb,Eaの順に大きな値に設定されている。すなわち、第1の電力源10に由来する直流電力の電圧を変換するDC/DC変換器214の設定出力電圧値E1が最も大きく、外部の送電線70に由来する直流電力の電圧を変換するDC/DC変換器720の設定出力電圧値Eaが最も小さい。DC/DC変換器214,224,234,610,720は、与えられた設定出力電圧値E1,E2,E3,Eb,Eaで直流電力をDC配線300に出力する動作を実行する。電力変換部210,220,230の出力電圧V1,V2,V3と、蓄エネルギー部600の出力電圧Vbと、外部送電線接続部700の出力電圧Vaは、設定出力電圧値E1,E2,E3,Eb,Eaとほぼ同じ値となる。
【0019】
電力源用の複数のDC/DC変換器214,224,234の設定出力電圧値E1,E2,E3は、すべて同じ値に設定しても良いが、そのうちの少なくとも1つの設定出力電圧値を他の設定出力電圧値と異なる値に設定することが好ましく、すべて異なる値に設定することが更に好ましい。設定出力電圧値E1,E2,E3のうちの少なくとも1つの設定出力電圧値を他の設定出力電圧値と異なる値に設定すれば、後述するように、設定出力電圧値が高い順に優先的にDC/DC変換器214,224,234の出力電力を電力負荷部50に供給することができる。
【0020】
放電用のDC/DC変換器610の設定出力電圧値Ebと、受電用のDC/DC変換器720の設定出力電圧値Eaは、電力源用のDC/DC変換器214,224,234の設定出力電圧値E1,E2,E3のいずれよりも低い値に設定することが好ましい。また、2つの設定出力電圧値Eb,Eaは、同じ値に設定してもよいが、放電用の設定出力電圧値Ebを受電用の設定出力電圧値Eaよりも高い値に設定することが好ましい。
【0021】
図3は、DC/DC変換器の一般的な出力特性を示すグラフである。この例では、DC/DC変換器の最大出力Pmaxは、5000Wである。最大出力Pmaxを「変換器最大出力Pmax」とも呼ぶ。変換器最大出力Pmaxよりも出力が小さい場合には、DC/DC変換器は、設定出力電圧Esetにほぼ等しい電圧で直流電力を出力する。但し、変換器最大出力Pmaxに近い領域では出力電流リミッタ値を設定して電流制限を行うことが望ましく、また、出力がゼロに近い領域では無負荷電流とするバイアス電流を流すことで出力の安定化を図ることが望ましい。通常使用範囲内であれば、安定した電圧でDC/DC変換器から直流電力を出力することができる。
【0022】
図4は、電力変換部210,220,230の出力電圧値V1,V2,V3と出力電力の関係を示す説明図である。上側の図では、電力源10,20,30の出力P1,P2,P3が、それぞれ1000W,2000W,3000Wとなっている例を示している。但し、電力源10,20,30として再生可能エネルギーを利用した発電装置を使用する場合には、それぞれの出力P1,P2,P3は時々刻々と変化する。出力電圧値V1,V2,V3は、電力源10,20,30の出力P1,P2,P3に達するまではそれぞれの設定出力電圧値E1,E2,E3にほぼ等しい一定値であり、出力P1,P2,P3に達すると急激に降下する。
【0023】
図4の下側の図は、電力負荷部50による消費電力とDC配線300の電圧値との関係を示している。消費電力が1000Wに至るまでは、DC配線300の電圧値は、第1の電力変換部210の出力電圧値V1にほぼ等しい。また、消費電力が1000W~2000Wの範囲では、DC配線300の電圧値は第2の電力変換部220の出力電圧値V2にほぼ等しくなり、消費電力が2000W~3000Wの範囲では、DC配線300の電圧値は第3の電力変換部230の出力電圧値V3にほぼ等しくなる。
【0024】
図5は、
図4の特性を前提としたときの電力負荷部50の消費電力とその内訳を示す説明図である。電力負荷部50による消費電力が1000Wに至るまでは、消費電力のほぼすべてが第1の電力源10に由来する。消費電力が1000W~2000Wの範囲では、消費電力は第1の電力源10と第2の電力源20に由来し、消費電力が2000W~3000Wの範囲では、消費電力は3つの電力源10,20,30に由来するものとなる。これから理解できるように、第1実施形態では、電力制御部400が、複数の電力源10,20,30に由来する直流電力の電圧レベルを変換するDC/DC変換器214,224,234に設定出力電圧値E1,E2,E3を互いに異なる値に設定することによって、設定出力電圧値が高い順に優先的に1つ以上のDC/DC変換器214,224,234からの出力電力を電力負荷部50に供給することが可能である。この結果、複数の電力源10,20,30のうちの一部を優先的に用いて電力負荷部50への電力供給を行えるので、複数の電力源10,20,30の出力電力を気候変動、四季変動に見合って設定することで容易に管理することができる。なお、電力源用の複数のDC/DC変換器214,224,234の設定出力電圧値E1,E2,E3のすべてを異なる値に設定する必要はないが、少なくとも1個のDC/DC変換器の設定出力電圧値を他のDC/DC変換器の設定出力電圧値と異なる値に設定することが好ましい。
【0025】
図6は、DC配線300の電圧による余剰電力と不足電力の判定方法を示す説明図である。この例では、余剰電力があるか否かの判定を行うための第1閾値Vth1と、不足電力があるか否かの判定を行うための第2閾値Vth2が設定されている。第1閾値Vth1は、3つの電力源10,20,30に対応するDC/DC変換器214,224,234の設定出力電圧値E1,E2,E3のいずれよりも低い値に予め設定されている。第2閾値Vth2は、第1閾値Vth1以下の値に予め設定されている。但し、
図6の例では、第2閾値Vth2は、第1閾値Vth1よりも低く、放電用のDC/DC変換器610の設定出力電圧値Ebや、受電用のDC/DC変換器720の設定出力電圧値Eaよりも高い値に設定されている。
【0026】
電力制御部400は、電圧センサー310で測定されたDC配線300の電圧に応じて、余剰電力を蓄電又は送電により消費する処理と、不足電力を放電又は受電により補充する処理と、のいずれかを実行することが可能である。すなわち、電力制御部400は、DC配線300の電圧が第1閾値Vth1以上である場合には、電力負荷部50における消費電力が電力源用の複数のDC/DC変換器214,224,234からの出力電力の合計値よりも少ないと判定して、消費電力と出力電力合計値との差分である余剰電力を、蓄エネルギー部600による蓄電処理(貯蔵処理)と外部送電線接続部による送電処理の少なくとも一方を用いて消費させる。また、電力制御部400は、DC配線300の電圧が第2閾値Vth2よりも低くなった場合には、電力負荷部50における消費電力が電力源用の複数のDC/DC変換器214,224,234からの出力電力の合計値を超えると判定して、消費電力と出力電力合計値との差分である不足電力を、蓄エネルギー部600による放電処理と外部送電線接続部700による受電処理の少なくとも一方を用いて補充する。このように、DC配線300の電圧を測定することによって、余剰電力や不足電力の発生の有無を判定して、その余剰電力や不足電力を蓄エネルギー部600や外部送電線接続部700を用いて調整することができるので、簡単な構成で電力の制御を行うことが可能である。
【0027】
なお、電力制御部400は、余剰電力と不足電力の両方を判定する必要はなく、いずれか一方のみを判定してその調整を行うようにしてもよい。また、余剰電力の消費や不足電力の補充のために、蓄エネルギー部600と外部送電線接続部700の両方を用いる必要はなく、それらのうちの一方のみを用いてもよい。この場合には、他方を省略してもよい。
【0028】
図7は、複数の電力源の出力電力の変動と余剰電力又は不足電力の発生例を示す説明図である。横軸は時間であり、縦軸は相対電力を示す。この例では、電力負荷部50の消費電力Poutは説明を簡易的にするため一定値であると仮定しており、この消費電力Poutを100%として他の電力の変化を相対的に示している。3つの電力源10,20,30の出力電力P1,P2,P3は、経時的に常時変化している。時刻t1までは、3つの電力源10,20,30の出力電力P1,P2,P3の合計値Ptが消費電力Poutを超えているので、出力電力P1,P2,P3の合計値Ptと消費電力Poutの差分である余剰電力が、蓄エネルギー部600による蓄電処理又は外部送電線接続部700による送電処理によって消費されている。一方、時刻t1以降の期間では、3つの電力源10,20,30の出力電力P1,P2,P3の合計値Ptが消費電力Poutよりも少ないので、出力電力P1,P2,P3の合計値Ptと消費電力Poutの差分である不足電力が、蓄エネルギー部600による放電処理又は外部送電線接続部700による受電処理によって補充されている。なお、この例では、3つの電力源10,20,30の出力P1,P2,P3うち、第1の電力源10の出力P1が最も安定しており、変動が少ない。この場合には、第1の電力源10に対応するDC/DC変換器214の設定出力電圧値E1を、他の2つのDC/DC変換器224,234の設定出力電圧値E2,E3よりも高い値に設定することが好ましい。
【0029】
以上のように、第1実施形態では、電力制御部400は、電力源用の複数のDC/DC変換器214,224,234の設定出力電圧値を独立に設定することによって、設定出力電圧値が高い順に優先的に1つ以上のDC/DC変換器からの出力電力を電力負荷部50に供給する。この結果、複数の電力源10,20,30のうちの一部を優先的に用いて電力負荷部50への電力供給を行うことができ、複数の電力源10,20,30の出力電力を容易に管理することができる。
【0030】
また、第1実施形態では、DC配線300の電圧に応じて余剰電力や不足電力があることを判定し、その余剰電力や不足電力を蓄エネルギー部600や外部送電線接続部700を用いて調整するので、簡単な構成で電力の管理を行うことができる。
【0031】
図8は、第2実施形態における複数のDC/DC変換器とDC配線の接続関係を示す説明図である。
図2に示した第1実施形態との違いは、DC/DC変換器214,224,234,610,720の出力端子に、保護用の逆流防止素子216,226,236,612,722がそれぞれ接続されている点だけであり、他の構成は第1実施形態と同じである。逆流防止素子216,226,236,612,722としては、例えばダイオードやMOSFETを用いた整流器を用いることができる。
【0032】
逆流防止素子216,226,236,612,722による電圧降下が無視できない場合には、それらの出力端子における電圧V1,V2,V3,Vb,Vaは、DC/DC変換器214,224,234,610,720の設定出力電圧値E1,E2,E3,Eb,Eaよりも小さい値となる。なお、逆流防止素子216,226,236の出力端子における電圧V1,V2,V3は、電力変換部210,220,230の出力電圧値に相当する。
【0033】
図9は、第2実施形態における電力変換部210,220,230の出力電圧値V1,V2,V3と出力電力の関係を示す説明図であり、第1実施形態の
図4に対応する図である。
【0034】
図9の上側の図では、電力源10,20,30がそれぞれの最高出力P1max,P2max,P3maxの状態にある場合を示している。これらの最高出力P1max,P2max,P3maxは、電力源10,20,30の仕様によって定められている。この例では、最高出力P1max,P2max,P3maxは、それぞれ2000W,2500W,3000Wである。
図8に示した電力変換部210,220,230の出力電圧値V1,V2,V3は、それぞれの出力が増加するに従って徐々に低下する。例えば、電力変換部210の出力電圧値V1は、無負荷ではV1iniであり、最高出力P1maxではV1minである。無負荷の電圧V1iniは、DC/DC変換器214の設定出力電圧値E1にほぼ等しい。同様に、電力変換部220の出力電圧値V2は無負荷ではV2iniであり、最高出力P2maxではV2minである。電力変換部230の出力電圧値V3は無負荷ではV3iniであり、最高出力P3maxではV3minである。この場合、
図9の下側の図に示すように、DC配線300の電圧値は、消費電力の増加に伴って徐々に減少する。
【0035】
図10は、第2実施形態におけるDC配線300の電圧による余剰電力と不足電力の判定方法を示す説明図であり、第1実施形態の
図6に対応する図である。
【0036】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、電力制御部400が、余剰電力があるか否かの判定を行うための第1閾値Vth1と、不足電力があるか否かの判定を行うための第2閾値Vth2が設定されている。第1閾値Vth1は、
図9に示した電力変換部210,220,230の最低出力電圧値V1min,V2min,V3minのいずれよりも低い値に予め設定されている。
図9の例では、第3の電力変換部230の最低出力電圧値V3minが最も小さいので、第1閾値Vth1は、この最低出力電圧値V3minよりも小さな値に設定される。第2閾値Vth2は、第1閾値Vth1以下の値に予め設定されている。
図10の例では、第2閾値Vth2は、第1閾値Vth1よりも低く、放電用の設定出力電圧値Ebや、受電用のDC/DC変換器720の設定出力電圧値Eaよりも高い値に設定されているが、これ以外の値に設定されていてもよい。
【0037】
第2実施形態も、上述した第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第2実施形態では、電力源用のDC/DC変換器214,224,234の出力端子とDC配線300との間の電圧降下を考慮して、余剰電力や不足電力の判定や調整を実行することが可能である。
【0038】
図11は、第3実施形態におけるDC配線300の電圧による余剰電力と不足電力の判定方法を示す説明図である。第3実施形態の電力制御装置の構成は、
図8に示した第2実施形態の構成と同じであり、また、
図9の特性も同じである。第2実施形態との違いは、2つの閾値Vth1,Vth2の設定方法とその使用方法である。
【0039】
第1閾値Vth1は、第2実施形態と同様に、電力変換部210,220,230の最低出力電圧値V1min,V2min,V3minのうちの最小値V3minよりも低い値に設定されている。第2閾値Vth2は、蓄エネルギー部600の最低出力電圧値Vbminよりも低く、外部配線接続部700のDC/DC変換器720の設定出力電圧値Eaよりも高い値に設定されている。蓄エネルギー部600の最低出力電圧値Vbminは、蓄エネルギー部600の仕様で定められている最高出力Pbmaxでの電圧値である。第3実施形態では、電力制御が以下のように行われる。
【0040】
(1)DC/DC変換器の設定出力電圧値E1,E2,E3,Eb,Eaがこの順に大きな値に設定されているので、DC配線300への電圧供給制御は自励式で行われる。また、3つの電力源10,20,30と蓄エネルギー部600の放電による電力の合計値が電力負荷部50の消費電力未満の場合にも、外部送電線接続部700から供給される電力によって、その不足電力を補充できる。
【0041】
(2)DC配線300の電圧値が第1閾値Vth1以上の場合には、3つの電力源10,20,30の出力電力の合計値が電力負荷部50の消費電力よりも大きいので、その余剰電力を蓄エネルギー部600による蓄電処理(貯蔵処理)によって消費させる。
【0042】
(3)DC配線300の電圧値が第1閾値Vth1未満で第2閾値Vth2以上の場合には、電力負荷部50の消費電力が3つの電力源10,20,30の出力電力の合計値よりも大きいが、3つの電力源10,20,30の出力電力と蓄エネルギー部600の放電による電力との合計値が電力負荷部50の消費電力よりも大きいので、その余剰電力を外部送電線接続部700による送電処理によって消費する。換言すれば、蓄エネルギー部600の放電による電力の一部が電力負荷部50で消費され、他の一部が外部の送電線70に送電される。例えば、夜間において3つの電力源10,20,30の出力電力と電力負荷部50の消費電力がともに小さくなった場合に、昼間に蓄エネルギー部600に蓄積していたエネルギーを用いた放電を利用して、外部の送電線70に売電することが可能である。このような処理は、特に、蓄エネルギー部600のエネルギー蓄積能力が高い場合に有効である。具体的には、フライホイール付きのモーターを貯蔵部として用いる場合には大きなエネルギーを蓄積できるので、夜間にそのエネルギーを用いて売電することが可能である。
【0043】
(4)DC配線300の電圧値が第2閾値Vth2未満の場合には、電力負荷部50の消費電力が3つの電力源10,20,30の出力電力と蓄エネルギー部600の放電による電力との合計値よりも大きいので、その不足電力を外部送電線制御部700による受電処理で補充する。
【0044】
第3実施形態も、上述した第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果を奏する。また、第3実施形態においても、DC配線300の電圧値と2つの閾値Vth1,Vth2との比較結果に応じて、余剰電力や不足電力の判定や調整を実行することが可能である。
【0045】
本開示の電力制御装置は、スマートタウン(未来型都市)、農場、家、工場、施設、公園、砂漠、海上等の地表の任意の場所に設置することができ、特に、地下に埋設することで地震等災害からの危険回避ができる。また、主駆動部に電動モーターを用いる移動体(陸、空、海)に本開示の電力制御装置を設けた場合には、電力源として自然エネルギー以外に主モーター、副モーターを用いても同様の効果が得られ、そこで蓄エネルギー部にフライホイールを用いた場合は、フライホイールの回転から生じる慣性モーメントを受け走行の弊害となるため走行方向に対し左右に異なった回転方向(右回転、左回転)のフライホイールを少なくも一機を設けることにより慣性モーメントを相殺させ回避させることができる。
【0046】
本開示は、上述の実施形態や実施形態、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、開示の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…電力源、20…電力源、30…電力源、50…電力負荷部、70…送電線、100…電力制御装置、210…電力変換部、212…AC/DC変換器、214…DC/DC変換器、216…逆流防止素子、220…電力変換部、222…AC/DC変換器、224…DC/DC変換器、226…逆流防止素子、230…電力変換部、232…AC/DC変換器、234…DC/DC変換器、236…逆流防止素子、300…DC配線、310…電圧センサー、400…電力制御部、410…バス配線、500…負荷接続部、510…DC/AC変換器、600…蓄エネルギー部、610…DC/DC変換器、620…二次電池、700…外部送電線接続部、710…AC/DC変換器、720…DC/DC変換器、730…DC/AC変換器
【手続補正書】
【提出日】2022-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nを2以上の整数とするとき、N個の電力源からの電力を電力負荷部に供給する制御を行う電力制御装置であって、
前記N個の電力源にそれぞれ対応して設けられ、対応する電力源に由来する直流電力の電圧レベルを変換するN個のDC/DC変換器と、
前記N個のDC/DC変換器の出力端子に共通に接続されたDC配線と、
前記DC配線に接続されており、前記電力負荷部が接続される負荷接続部と、
前記N個のDC/DC変換器に接続された電力制御部と、
を備え、更に、
前記DC配線から供給される電力を貯蔵エネルギーとして貯蔵する貯蔵処理と、前記貯蔵エネルギーを用いて前記DC配線に電力を供給する放電処理とを行う蓄エネルギー部と、
外部送電線から受電して前記DC配線に電力を供給する受電処理と、前記DC配線から供給される電力を前記外部送電線に送電する送電処理とを行う外部送電線接続部と、
の少なくとも一方を備えるとともに、
前記DC配線の電圧を測定する電圧センサーを備え、
前記電力制御部は、前記N個のDC/DC変換器のうちの少なくとも1個のDC/DC変換器の設定出力電圧値を他のDC/DC変換器の設定出力電圧値と異なる値に設定することによって、前記設定出力電圧値が高い順に優先的に1つ以上のDC/DC変換器からの出力電力を前記電力負荷部に供給し、
前記電力制御部は、前記電圧センサーで測定された前記DC配線の電圧が、前記N個のDC/DC変換器に対するN個の前記設定出力電圧値のいずれよりも低く設定された第1閾値以上である場合には、前記電力負荷部における消費電力が前記N個のDC/DC変換器からの出力電力の合計値よりも少ないと判定して、前記消費電力と前記出力電力の合計値との差分である余剰電力を、前記蓄エネルギー部による前記貯蔵処理と前記外部送電線接続部による前記送電処理の少なくとも一方を用いて消費させる、
電力制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力制御装置であって、更に、
前記DC配線から供給される電力を貯蔵エネルギーとして貯蔵する貯蔵部と、前記貯蔵部と前記DC配線との間に接続されて前記貯蔵エネルギーに由来する直流電力の電圧レベルを変換する放電用DC/DC変換器と、を有する蓄エネルギー部を備え、
前記電力制御部は、
前記放電用DC/DC変換器の設定出力電圧値を前記N個のDC/DC変換器の設定出力電圧値よりも低い値に設定することによって、前記N個のDC/DC変換器よりも低い優先度で前記放電用DC/DC変換器からの出力電力を前記電力負荷部に供給する、
電力制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力制御装置であって、更に、
前記外部送電線から供給される交流電力を直流電力に変換する受電用AC/DC変換器と、前記受電用AC/DC変換器と前記DC配線との間に接続された受電用DC/DC変換器と、を有する前記外部送電線接続部を備え、
前記電力制御部は、
前記受電用DC/DC変換器の設定出力電圧値を前記N個のDC/DC変換器の設定出力電圧値よりも低い値に設定することによって、前記N個のDC/DC変換器よりも低い優先度で前記受電用DC/DC変換器からの出力電力を前記電力負荷部に供給する、
電力制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電力制御装置であって、
前記電力制御部は、前記電圧センサーで測定された前記DC配線の電圧が、前記第1閾値以下に設定された第2閾値よりも低くなった場合には、前記電力負荷部における消費電力が前記N個のDC/DC変換器からの出力電力の合計値を超えると判定して、前記消費電力と前記出力電力の合計値との差分である不足電力を、前記蓄エネルギー部による前記放電処理と前記外部送電線接続部による前記受電処理の少なくとも一方を用いて補充する、
電力制御装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の電力制御装置であって、
前記電力制御部と前記N個のDC/DC変換器は、アドレス可能なバス配線を介して互いに接続されており、
前記電力制御部は、前記N個のDC/DC変換器のそれぞれに予め設定されているアドレスを指定して、前記バス配線を介して前記設定出力電圧値を前記N個のDC/DC変換器に個別に送信する、電力制御装置。
【請求項6】
Nを2以上の整数とするとき、N個の電力源からの電力を電力負荷部に供給する制御を行う電力制御装置であって、
前記N個の電力源にそれぞれ対応して設けられ、対応する電力源に由来する直流電力の電圧レベルを変換するN個のDC/DC変換器と、
前記N個のDC/DC変換器の出力端子に共通に接続されたDC配線と、
前記DC配線に接続されており、前記電力負荷部が接続される負荷接続部と、
前記N個のDC/DC変換器に接続された電力制御部と、
前記DC配線の電圧を測定する電圧センサーと、
前記DC配線から供給される電力を貯蔵エネルギーとして貯蔵する貯蔵処理と、前記貯蔵エネルギーを用いて前記DC配線に電力を供給する放電処理とを行う蓄エネルギー部と、外部送電線から受電して前記DC配線に電力を供給する受電処理と、前記DC配線から供給される電力を前記外部送電線に送電する送電処理とを行う外部送電線接続部と、の少なくとも一方と、
を備え、
前記電力制御部は、前記N個のDC/DC変換器の設定出力電圧値をそれぞれ独立に設定することが可能であり、
前記電力制御部は、前記電圧センサーで測定された前記DC配線の電圧が、前記N個のDC/DC変換器に対するN個の前記設定出力電圧値のいずれよりも低く設定された第1閾値以上である場合には、前記電力負荷部における消費電力が前記N個のDC/DC変換器からの出力電力の合計値よりも少ないと判定して、前記消費電力と前記出力電力の合計値との差分である余剰電力を、前記蓄エネルギー部による前記貯蔵処理と前記外部送電線接続部による前記送電処理の少なくとも一方を用いて消費させる、
電力制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電力制御装置であって、
前記電力制御部は、前記電圧センサーで測定された前記DC配線の電圧が、前記第1閾値以下に設定された第2閾値よりも低くなった場合には、前記電力負荷部における消費電力が前記N個のDC/DC変換器からの出力電力の合計値を超えると判定して、前記消費電力と前記出力電力の合計値との差分である不足電力を、前記蓄エネルギー部による前記放電処理と前記外部送電線接続部による前記受電処理の少なくとも一方を用いて補充する、
電力制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本開示は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本開示の一形態は、Nを2以上の整数とするとき、N個の電力源からの電力を電力負荷部に供給する制御を行う電力制御装置である。この電力制御装置は、前記N個の電力源にそれぞれ対応して設けられ、対応する電力源に由来する直流電力の電圧レベルを変換するN個のDC/DC変換器と、前記N個のDC/DC変換器の出力端子に共通に接続されたDC配線と、前記DC配線に接続されており、前記電力負荷部が接続される負荷接続部と、前記N個のDC/DC変換器に接続された電力制御部と、を備え、更に、前記DC配線から供給される電力を貯蔵エネルギーとして貯蔵する貯蔵処理と、前記貯蔵エネルギーを用いて前記DC配線に電力を供給する放電処理とを行う蓄エネルギー部と、外部送電線から受電して前記DC配線に電力を供給する受電処理と、前記DC配線から供給される電力を前記外部送電線に送電する送電処理とを行う外部送電線接続部と、の少なくとも一方を備えるとともに、前記DC配線の電圧を測定する電圧センサーを備える。前記電力制御部は、前記N個のDC/DC変換器のうちの少なくとも1個のDC/DC変換器の設定出力電圧値を他のDC/DC変換器の設定出力電圧値と異なる値に設定することによって、前記設定出力電圧値が高い順に優先的に1つ以上のDC/DC変換器からの出力電力を前記電力負荷部に供給し、また、前記電力制御部は、前記電圧センサーで測定された前記DC配線の電圧が、前記N個のDC/DC変換器に対するN個の前記設定出力電圧値のいずれよりも低く設定された第1閾値以上である場合には、前記電力負荷部における消費電力が前記N個のDC/DC変換器からの出力電力の合計値よりも少ないと判定して、前記消費電力と前記出力電力の合計値との差分である余剰電力を、前記蓄エネルギー部による前記貯蔵処理と前記外部送電線接続部による前記送電処理の少なくとも一方を用いて消費させる。
本開示の他の形態は、Nを2以上の整数とするとき、N個の電力源からの電力を電力負荷部に供給する制御を行う電力制御装置である。この電力制御装置は、前記N個の電力源にそれぞれ対応して設けられ、対応する電力源に由来する直流電力の電圧レベルを変換するN個のDC/DC変換器と、前記N個のDC/DC変換器の出力端子に共通に接続されたDC配線と、前記DC配線に接続されており、前記電力負荷部が接続される負荷接続部と、前記N個のDC/DC変換器に接続された電力制御部と、前記DC配線の電圧を測定する電圧センサーと、前記DC配線から供給される電力を貯蔵エネルギーとして貯蔵する貯蔵処理と、前記貯蔵エネルギーを用いて前記DC配線に電力を供給する放電処理とを行う蓄エネルギー部と、外部送電線から受電して前記DC配線に電力を供給する受電処理と、前記DC配線から供給される電力を前記外部送電線に送電する送電処理とを行う外部送電線接続部と、の少なくとも一方と、を備える。前記電力制御部は、前記N個のDC/DC変換器の設定出力電圧値をそれぞれ独立に設定することが可能であり、前記電力制御部は、前記電圧センサーで測定された前記DC配線の電圧が、前記N個のDC/DC変換器に対するN個の前記設定出力電圧値のいずれよりも低く設定された第1閾値以上である場合には、前記電力負荷部における消費電力が前記N個のDC/DC変換器からの出力電力の合計値よりも少ないと判定して、前記消費電力と前記出力電力の合計値との差分である余剰電力を、前記蓄エネルギー部による前記貯蔵処理と前記外部送電線接続部による前記送電処理の少なくとも一方を用いて消費させる。