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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169958
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
H01F37/00 J
H01F37/00 S
H01F37/00 M
H01F37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075721
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍太
(57)【要約】      (修正有)
【課題】作業性の向上及びコスト削減を図りつつ、リアクトルの温度上昇を抑制でき、放熱効率に優れたリアクトルを提供する。
【解決手段】リアクトルは、コイル4が装着される中脚11と、中脚11の平行に延び、中脚11の両隣に配置された一対の外脚12と、中脚11及び外脚12を連結するヨーク部13を有するコアと、コアに装着されるコイル4と、コアの表面を被覆するコアモールド樹脂2と、を備える。また、コイル4の底面と接触する放熱部材6が設けられている。コアモールド樹脂2は、コアの底面を被覆する底面被覆部21と、放熱部材6と接触する接触部22と、底面被覆部21と接触部22を繋ぐ伝導部23と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、
前記コアに装着されるコイルと、
前記コアの表面を被覆するコアモールド樹脂と、
を備え、
前記コイルの底面と接触する放熱部材が設けられ、
前記コアモールド樹脂は、
前記コアの底面を被覆する底面被覆部と、
前記放熱部材と接触する接触部と、
前記底面被覆部と前記接触部を繋ぐ伝導部と、
を有すること、
を特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記伝導部は、前記底面被覆部から前記接触部に向かって傾斜する傾斜面を有すること、
を特徴とする請求項1のリアクトル。
【請求項3】
前記コアは、
複数の脚部と、
前記複数の脚部を繋ぐヨーク部と、
を有し、
前記脚部は、
前記コイルが装着される脚部と、
前記コイルが装着されない脚部と、
を有し、
前記底面被覆部は、少なくとも前記コイルが装着されていない脚部の底面を被覆し、
前記伝導部は、前記コイルが装着されない脚部の底面を被覆する底面被覆部と前記接触部を繋いでいること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記コアは、
中脚と、
前記中脚の平行に延び、前記中脚の両隣に配置された一対の外脚と、
を有し、
前記コイルは、前記中脚に装着され、
前記コアモールド樹脂は、前記一対の外脚の底面を被覆し、
前記伝導部は、前記外脚の底面を被覆する底面被覆部と前記接触部を繋いでいること、
を特徴する請求項3に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記底面被覆部は、前記ヨーク部の底面を被覆し、
前記伝導部は、前記ヨーク部の底面を被覆する底面被覆部と前記接触部を繋いでいること、
を特徴とする請求項3又は4に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアとコイルを備えたリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
OA機器、太陽光発電システム、自動車、無停電電源など様々な用途にリアクトルが用いられている。リアクトルは主としてコイル及びコアから成る。コイルは、通電により巻数に従って磁束を発生させ、コアは、コイルが発生させた磁束を通す磁路となる。リアクトルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品である。
【0003】
コアは、例えば、中脚と、中脚の両隣に中脚の延び方向と平行に配置される2本の外脚と、中脚と2本の外脚を繋ぐ一対のヨーク部とを有する一対のE字型コア部材から成る。このE字型コア部材には、コイルとの絶縁を図るため、樹脂部材が被覆されている。コイルは1つ設けられ、中脚にコイルを装着し、E字型コア部材の中脚及び外脚を互いに向かい合わせて接合することで、閉じた磁気回路が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-088205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通電させることでコイルの温度が上昇する。また、リアクトルの損失によって生じた熱などによってコアの温度が上昇する。そのため、コイル及びコアの温度上昇を抑制するために冷却シートといった放熱部材を用いることがある。
【0006】
例えば、上記のような中脚及び2本の外脚から成る3本の脚部を有し、中脚にコイルが装着されている場合、コイルの底面、2本の外脚の底面、一対のヨーク部の底面に放熱部材を配置させることで、コイル及びコアの温度上昇を抑制する手法がある。しかし、この場合、各底面に放熱部材を配置する作業が生じ、生産効率が悪化する。また、放熱部材は費用が高いため、材料費が高騰する。そこで、生産性の向上及びコスト削減が強く要求されている。
【0007】
一方で、コイル及びコアの温度上昇も無視できない。コイルやコアの温度が上昇すると、リアクトルの温度が上昇し、その結果、磁気特性が悪化する。そこで、生産効率の向上及びコスト削減を図りつつ、放熱効果を上げることができるリアクトルが要求されている。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、作業性の向上及びコスト削減を図りつつ、リアクトルの温度上昇を抑制でき、放熱効率に優れたリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のリアクトルは、コアと、前記コアに装着されるコイルと、前記コアの表面を被覆するコアモールド樹脂と、を備え、前記コイルの底面と接触する放熱部材が設けられ、前記コアモールド樹脂は、前記コアの底面を被覆する底面被覆部と、前記放熱部材と接触する接触部と、前記底面被覆部と前記接触部を繋ぐ伝導部と、を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業性の向上及びコスト削減を図りつつ、リアクトルの温度上昇を抑制でき、放熱効率に優れたリアクトルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】モールドコアの斜視図である。
図2】モールドコアにコイルを装着させた組立体の斜視図である。
図3】リアクトルの全体構成を示す斜視図である。
図4】モールドコアの底面斜視図である。
図5】放熱部材が設けられたリアクトルの図であり、(a)が底面平面図であり、(b)が断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
本実施形態に係るリアクトルについて、図面を参照しつつ説明する。各図面においては、理解容易のため、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。図1は、モールドコアの斜視図である。図2は、モールドコアにコイルを装着させた組立体の斜視図である。図3は、リアクトルの全体構成を示す斜視図である。
【0013】
リアクトル10は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品であり、OA機器、太陽光発電システム、自動車など様々な用途で使用される。本実施形態のリアクトル10は、コア1、コアモールド樹脂2、コイル4及び二次モールド樹脂5を備える。
【0014】
まず、図1に示すように、コア1をコアモールド樹脂2でモールド成型して一対のモールドコア3を作製する。このコア1をコアモールド樹脂2でモールド成型する工程が一次モールド成型である。即ち、コアモールド樹脂2は一次モールド樹脂と言い換えることができる。この一対のモールドコア3にコイル4を組付け(図2参照)、図3に示すように、二次モールド樹脂5によって更にモールド成型して、モールドコア3とコイル4は一体化する。即ち、本実施形態のリアクトル10は、2度のモールド成型によって作製されたリアクトルである。
【0015】
コア1は、圧粉磁心、フェライト磁心、積層鋼板、又はメタルコンポジットコア等を用いることができる。メタルコンポジットコアとは、磁性粉末と樹脂とが混練され、樹脂が硬化されて成る磁性体である。コア1は、コイル4が発生させた磁束が通る磁路となる。
【0016】
コア1は、一対のE字型コア部材により構成させ、この一対のE字型コア部材の互いの脚部を接合することで、2つの環状を有する概略θ型形状となっている。即ち、コア1は、中脚11と、中脚11と平行に延び、中脚11の両隣に配置された一対の外脚12と、中脚11及び外脚12を繋ぐヨーク部13を有する。中脚11の外径は、コイル4の内径よりも小径であり、中脚11にコイル4が装着される。一方、外脚12にはコイル4は装着されていない。
【0017】
コアモールド樹脂2は、コア1を被覆する樹脂部材である。コアモールド樹脂2によってE字型コア部材をモールド成型することで、E字型コア部材とコアモールド樹脂が一体に成形されたモールドコア3となる。モールドコア3は、2つ作製され、互いのモールドコア3を篏合させる。
【0018】
樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、又はこれらの複合を挙げることができる。なお、樹脂に熱伝導性のフィラーを混ぜてもよい。
【0019】
図4は、モールドコアの底面斜視図である。図5は、放熱部材が設けられたリアクトルの図であり、(a)が底面平面図であり、(b)が断面図である。なお、図5(a)の放熱部材は、他の構成部材が見えるように、透視図としている。コアモールド樹脂2は、図4に示すように、底面被覆部21、接触部22及び伝導部23を有する。底面被覆部21、接触部22及び伝導部23は、モールド成型により継ぎ目なく一体に形成されている。
【0020】
底面被覆部21は、コア1の底面を被覆する。コア1の底面とは、放熱部材6と対向するコア1の端面である。底面被覆部21は、コア1の底面のうち、コイル4が装着されていない脚部を被覆していれば足りる。本実施形態では、底面被覆部21は、外脚12の底面を被覆している。なお、中脚11の外表面は、コイル4との絶縁を図るためコアモールド樹脂2で被覆されているが、中脚11の外表面を二次モールド樹脂5で被覆することでコイル4との絶縁を図れるのであれば、コアモールド樹脂2で被覆する必要はない。接触部22は、後述するコイル4の底面に設けられた放熱部材6と接触する。接触部22は、コイル4の巻軸方向を長辺とする板状の部材である。
【0021】
伝導部23は、コイル4が装着されていないコア1を被覆している底面被覆部21と接触部22の間に設けられ、底面被覆部21と接触部22を繋ぐ。底面被覆部21と接触部22を伝導部23によって繋げることで、コア1の熱を底面被覆部21、伝導部23及び接触部22を介して放熱部材6に放出する。
【0022】
伝導部23は、複数設けられ、隣接する伝導部23の間には空間24が設けられている。この空間24は、巻軸方向の長さが概略同一の長さであり、換言すれば、伝導部23は、概略等間隔に設けられている。
【0023】
伝導部23は、コア1の脚部の横並び方向の長さが、底面被覆部21と接触している側が最も長く、接触部22に向かうにつれて短くなるように形成されている。中脚11コイル4の巻軸方向から見ると、伝導部23は、概略三角形状となっている。即ち、伝導部23は、傾斜面を有する。換言すれば、コイル4の巻軸方向からモールドコア3を見ると、モールドコア3は、底面被覆部21から接触部22に向かうにつれて窄んだ形状になっている。
【0024】
また、本実施形態では、コアモールド樹脂2は、底面被覆部21a、接触部22a及び伝導部23aを有する。底面被覆部21aは、ヨーク部13の底面の一部を被覆する。具体的には、底面被覆部21aは、脚部の横並び方向のヨーク部13の底面の両端部を被覆する。また、底面被覆部21aは、ヨーク部13の底面のコイル4側の縁部分をヨーク部13の底面の両端部を繋ぐように被覆している。
【0025】
接触部22aは、接触部22と同様、コイル4の底面と接触する放熱部材6と接触している。伝導部23aは、底面被覆部21aと接触部22aの間に設けられ、底面被覆部21aと接触部22aを繋いでいる。伝導部23aは、伝導部23と同様、複数設けられ、各伝導部23aの間には空間24aが設けられている。なお、本実施形態では、ヨーク部13の底面の一部は、コアモールド樹脂2に被覆されず、露出している。
【0026】
コイル4は、エナメルなどで絶縁被覆した1本の平角状の導電性部材により構成される。コイル4は、巻き位置を巻軸方向にずらしながら導電性部材を筒状に巻回して成る。本実施形態では、銅線によって構成された平角線のエッジワイズコイルである。なお、コイル4の線材の種類や巻き方はこれに限らず、他の形態のものであってもよい。
【0027】
コイル4の端部は、図3に示すように、バスバー8と接続され、バスバー8を介して外部機器と電気的に接続される。外部機器から電力が供給されると、コイル4に電流が流れ、磁束が発生し、コア1内に磁束が流れ、閉じた磁気回路が形成される。
【0028】
コイル4の底面は、二次モールド樹脂5によって被覆されず、露出している。コイル4の底面には、コイル4の底面と接触する放熱部材6が設けられている。放熱部材6は、1つのみ設けられている。換言すれば、放熱部材6は、外脚12の底面やヨーク部13の底面には設けられていない。放熱部材6は、コイル4の熱をリアクトル10の外部に放出する。放熱部材6としては、例えば、放熱シート、放熱グリス、放熱性ギャップフィラー(塗布時はペースト状で硬化するとシート状になり弾性を有する材料)等の弾性を有する部材、アルミニウム等の金属から成る板状部材などを用いることができる。放熱部材6の形状は、本実施形態では概略矩形状となっているが(図5(a)参照)、如何なる形状であってもよい。なお、放熱部材6は、リアクトル10の構成部品としてもよいし、リアクトル10の構成要素ではなく、リアクトル10の設置場所に配置されており、その上にリアクトル10は載置してもよい。
【0029】
二次モールド樹脂5は、図3に示すように、モールドコア3とコイル4を被覆する樹脂部材である。二次モールド樹脂5を金型内に射出し、二次モールド樹脂5が固化することでもモールドコア3とコイル4は一体化する。本実施形態では、二次モールド樹脂5は、モールドコア3の中脚11の表面及並びに外脚12及びヨーク部13の内周面を被覆している。また、二次モールド樹脂5は、コイル4の底面及びコイル4を構成する導電性部材の端部を除きコイル4の外表面及び内表面を被覆している。
【0030】
二次モールド樹脂5の樹脂としては、コアモールド樹脂2と同様の種類の樹脂を挙げることができる。なお、二次モールド樹脂5とコアモールド樹脂2は、異なる樹脂によって構成されていてもよいが、同一種類の樹脂によって構成させた方がよい。同一の種類の樹脂を用いることで、樹脂の収縮率が同一になり、コアモールド樹脂2と二次モールド樹脂5の密着性が高まり、コアモールド樹脂2と二次モールド樹脂5の剥離を防止でき、リアクトル10の騒音・振動の悪化を抑制できる。
【0031】
なお、コイル4の上面及び底面には、カバー7a、7bが設けられている。カバー7a、7bは、モールド成型時に金型がコイル4の接触することを防止する。カバー7aは板状の部材でコイル4の上面を被覆する。カバー7bは、枠状の部材でコイル4の底面の縁を被覆する。換言すれば、コイル4の底面はカバー7aに全面が被覆されているわけではなく、露出している。
【0032】
(作用効果)
以上のとおり、本実施形態のリアクトル10は、コア1と、コア1に装着されるコイル4と、コア1の表面の被覆するコアモールド樹脂2と、を備える。コイル4の底面には、コイル4の底面と接触する放熱部材6が設けられている。コアモールド樹脂2は、コア1の底面を被覆する底面被覆部21と、放熱部材6と接触する接触部22と、底面被覆部21と接触部22を繋ぐ伝導部23と、を有する。
【0033】
従来は、放熱部材6は、コイル4の底面のみではなく、コアの底面など複数の個所に設けられていた。そのため、放熱部材6を配置する作業が複数回行われ、生産性が悪化していた。また、放熱部材6は、高級であるため材料費の高騰を招いていた。
【0034】
しかし、本実施形態では、放熱部材6は、コイル4の底面のみに1つだけ配置している。そのため、放熱部材6の配置作業を削減でき、リアクトル10の生産性が向上するとともに、材料費の削減を図ることができる。また、コア1の熱は、底面被覆部21、伝導部23及び接触部22を介してコイル4の底面に設けられた放熱部材6に伝達させている。そのため、コア1の熱を放出する経路も確保され、リアクトル10の温度上昇も抑制できる。このように、本実施形態のリアクトル10は、生産性の向上及びコスト削減を図るとともに、温度上昇を抑制でき、放熱効率(作業及びコストに対する放熱効果)が上がる。
【0035】
特に、底面被覆部21、接触部22及び伝導部23は、コア1と一体に成形されている。例えば、底面被覆部21、接触部22及び伝導部23を別体として成形し、接着剤などでコア1の底面と放熱部材6の間に固定する場合、コア1の表面には凹凸があるため底面被覆部21とコア1の底面の間に空間が生じることがある。また、接着剤で接合することで熱抵抗が生じる。そのため、伝熱性が悪化する。
【0036】
しかし、本実施形態では、コア1と底面被覆部21は、モールド成型により一体に成型され、底面被覆部21はコア1の表面の凹凸に入り込み、密着している。また、底面被覆部21、接触部22及び伝導部23は、継ぎ目なく一体に形成されている。そのため、伝熱性を悪化させることなく、コア1の熱を放熱部材6に伝達させることができる。
【0037】
また、伝導部23は、複数設けられ、隣接する伝導部23の間には空間24が設けられており、伝導部23の表面積を大きくしている。例えば、リアクトル10が風通しの良い場所やファンなどによってリアクトル10に空気が送られるような場所に設置される場合、伝導部23からも空冷により放熱できる。そのため、放熱効率を更に上げることができる。
【0038】
伝導部23は、底面被覆部21から接触部22に向かって傾斜する傾斜面を有し、モールドコア3の下部は、内側に向かって窄んでいる。これにより、リアクトル10を小型化することができる。また、伝導部23を傾斜させず、垂直に延ばし、コイル4の巻軸方向から見た場合に、矩形状に形成する場合に比べて、コアモールド樹脂2を構成する樹脂の量を削減でき、更なるコスト削減を図ることができる。そして、伝導部23に傾斜面を設けても、伝導部23を垂直に延ばした場合と同程度の放熱効果を有する。そのため、放熱効率が更に上がる。
【0039】
コア1は、コイル4が装着される中脚11と、中脚11の平行に延び、中脚11の両隣に配置された一対の外脚12と、中脚11及び外脚12を連結するヨーク部13を有する。コアモールド樹脂2は、コイル4が装着されていない一対の外脚12の底面を被覆し、伝導部23は、外脚12の底面を被覆する底面被覆部21と接触部を繋いでいる。
【0040】
このように、中脚11と一対の外脚12の3本の脚部があり、中脚11のみにコイル4が装着される場合、従来であれば、放熱部材6はコイル4の底面以外に、一対の外脚12の底面と、一対のヨーク部13の底面の最大合計4つ追加することになる。そのため、更なる作業やコスト増大を招く。また、作業性の悪化やコスト増大を防止するため、放熱部材6を減らし、例えば、コイル4の底面と一対のヨーク部13の底面のみに放熱部材6を配置することも考えられるが、この場合、外脚12の温度が上昇してしまい、リアクトル10の磁気特性が悪化する虞がある。
【0041】
しかし、本実施形態では、伝導部23は、外脚12の底面を被覆する底面被覆部21と接触部22を繋ぎ、外脚12の底面やヨーク部13の底面は、放熱部材6を配置していない。そして、外脚12の熱は伝導部23を介してコイル4の底面に配置された放熱部材6に放出できる。よって、作業性の向上及びコスト削減を図りつつ、放熱効果を上げることができる。
【0042】
さらに、コアモールド樹脂2は、ヨーク部13の底面の一部を被覆する底面被覆部21aを有し、伝導部23aは、底面被覆部21aから接触部22aを繋いでいる。これにより、ヨーク部13からもコア1の熱を放熱部材6に伝達させることができるので、リアクトル10の放熱性がより向上する。
【0043】
なお、露出しているヨーク部13の底面に別途放熱部材6を設けてもよい。ヨーク部13の熱は、伝導部23aを介して放熱部材6に放出することができるので、ヨーク部13の底面の露出面積は小さくできる。そのため、ヨーク部13の底面に設ける放熱部材6は、露出しているヨーク部13の底面の大きさにすればよいので、ヨーク部13の底面全面と接触するように配置する場合に比べて小さくでき、コスト削減できる。それに加え、コア1の熱をヨーク部13の底面から直接放熱部材6に放出できるので、リアクトル10の放熱効果も上がる。
【0044】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0045】
(1)本実施形態では、伝導部23、23aは、複数設けられ、隣接する伝導部23、23aの間には空間24が設けられていたが、空間24は設けなくてもよい。即ち、空間24部分にもコアモールド樹脂2を流し込み、中実の1つの伝導部23としてもよい。中実の伝導部23、23aとすることで、コア1の熱をより効果的に放熱部材6に伝達させることができるので、放熱効率を上げることができる。
【0046】
(2)底面被覆部21aは、ヨーク部13の底面の一部のみ被覆していたが、全面を被覆させてもよい。これにより、ヨーク部13の熱をより多く放熱部材6に伝達することができるので、放熱効率を上げることができる。
【0047】
(3)本実施形態のリアクトル10は、まず、コア1をコアモールド樹脂2でモールド成型して底面被覆部21、接触部22及び伝導部23を有するモールドコア3を作製し、コイル4をモールドコア3に組み付け、二次モールド樹脂5で一体に成型していた。もっとも、底面被覆部21、接触部22及び伝導部23は、二次モールド時の樹脂によって形成させてもよい。即ち、まず、コイル4をモールド成型し、モールドコイルを作製し、モールドコイルにコア1を組付け、二次モールド樹脂5で底面被覆部21、接触部22及び伝導部23を形成するとともに、コア1とモールドコイルを一体に成型してもよい。この場合において、二次モールド樹脂5が実施形態のコア1を被覆するコアモールド樹脂2となる。
【0048】
(4)本実施形態では、コイル4は中脚11に装着していたが、リアクトル10はコイル4を2つ備え、一対の外脚12それぞれに装着させ、中脚11にはコイル4を装着させなくてもよい。この場合、放熱部材6を2つ設け、各外脚12に装着されたコイル4の底面に放熱部材6をそれぞれ配置し、底面被覆部21は中脚11の底面を被覆する。接触部22は、2つ設けられ、一方の接触部22は、一方の外脚12に装着されたコイル4の底面に配置された放熱部材6と接触し、他方の接触部22は、他方の外脚12に装着されたコイル4の底面に配置された放熱部材6と接触する。伝導部23は、底面被覆部21と一方の接触部22、底面被覆部21と他方の接触部22をそれぞれ繋ぐ。これにより、中脚11の底面からコア1の熱を2つの放熱部材6に放出することができる。
【0049】
(5)コア1の脚部の数は、3本ではなくてもよい。コア1は、例えば、U字型コア部材を接合させた2本の脚部を有していてもよい。この場合、一方の脚部にコイル4を装着し、他方の脚部にはコイル4を装着せず、脚部の底面を底面被覆部21によって被覆させる。そして、底面被覆部21からコイル4の底面に設けられた放熱部材6と接触する接触部22まで伝導部23を延ばす。これにより、コイル4が装着されていない脚部の底面からコア1の熱を放熱部材6に放出することができる。
【0050】
(6)伝導部23は傾斜面を有していればよく、コイル4の巻軸方向から見た形状が概略三角形状で限定されない。例えば、コイル4の巻軸方向から見た伝導部23の形状は、底面被覆部21と接続している部分を下底、接触部22側を上底とする台形形状であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 リアクトル
1 コア
2 コアモールド樹脂
21、21a 底面被覆部
22、22a 接触部
23、23a 伝導部
24、24a 空間
3 モールドコア
4 コイル
5 二次モールド樹脂
6 放熱部材
7a、7b カバー
8 バスバー
図1
図2
図3
図4
図5