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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169971
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】管継手構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/04 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
F16L19/04
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075750
(22)【出願日】2021-04-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】390037774
【氏名又は名称】井上スダレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】井上 智史
【テーマコード(参考)】
3H014
【Fターム(参考)】
3H014EA06
(57)【要約】
【課題】硬い金属パイプが揺動振れを起こしても、パイプが引抜けない管継手構造を提供する。
【解決手段】継手本体1から突出状のパイプ接続筒部5を有し、この接続筒部5の外周面には、引抜け用独立小突条20を有し、さらに、この独立小突条20よりも軸心内方位置には、閉円環状リング13によって、パイプ振れ止め領域15が形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心方向の一方に雄ネジ部(3)と段付部(4)とパイプ接続筒部(5)とを、順次有する継手本体(1)と、上記雄ネジ部(3)に螺着される雌ネジ部(8)を有する袋ナット(7)とを、備え、
被接続用のパイプ(P)には、先端面(9)から所定軸心寸法(L10)に渡って、先端拡径管部(10)が形成されると共に、上記先端拡径管部(10)と基本径管部(11)との境界には、テーパ状段付部(12)が形成され、
上記継手本体(1)の上記パイプ接続筒部(5)が、パイプ(P)の上記先端拡径管部(10)に挿入された状態で、上記袋ナット(7)の継手本体(1)への螺進により、上記パイプ(P)のテーパ状段付部(12)を経て上記先端拡径管部(10)に外嵌される閉円環状リング(13)を、上記袋ナット(7)の内部に設け、
上記リング(13)のラジアル内方向への縮径付勢力にて、パイプ(P)の先端拡径管部(10)と、継手本体(1)の上記パイプ接続筒部(5)との密封状態を保つように構成した管継手構造に於て、
上記継手本体(1)から突出状の上記パイプ接続筒部(5)の外周面には、断面が鋭い頂部(41)又は鋭い角部(42)を有する複数本の独立小突条(20)を外周面先端寄り(55)に形成すると共に、
複数本の上記独立小突条(20)の最内方位置小突条(20X)と最外方位置小突条(20Y)の間隔寸法(W20)よりも大きい、上記段付部(4)から先端方向へのアキシャル方向寸法(W15)に渡って、パイプ軸心(Lp)の揺動振れ(Sp)を阻止するように、上記リング(13)の内周面(13A)がパイプ(P)の外周面に密接するパイプ振れ止め領域(15)を、形成したことを特徴とする管継手構造。
【請求項2】
軸心方向の両側の各々に雄ネジ部(3)と段付部(4)とパイプ接続筒部(5)とを、順次有する継手本体(1)と、上記雄ネジ部(3)に螺着される雌ネジ部(8)を有する2個の袋ナット(7)(7)とを、備え、
相互に接続される2本の被接続用のパイプ(P)には、先端面(9)から所定軸心寸法(L10)に渡って、先端拡径管部(10)が形成されると共に、上記先端拡径管部(10)と基本径管部(11)との境界には、テーパ状段付部(12)が形成され、
上記継手本体(1)の上記パイプ接続筒部(5)が、パイプ(P)の上記先端拡径管部(10)に挿入された状態で、上記袋ナット(7)の継手本体(1)への螺進により、上記パイプ(P)のテーパ状段付部(12)を経て上記先端拡径管部(10)に外嵌される閉円環状リング(13)を、上記袋ナット(7)の内部に設け、
上記リング(13)のラジアル内方向への縮径付勢力にて、パイプ(P)の先端拡径管部(10)と、継手本体(1)の上記パイプ接続筒部(5)との密封状態を保つように構成した管継手構造に於て、
上記継手本体(1)から突出状の上記パイプ接続筒部(5)の外周面には、断面が鋭い頂部(41)又は鋭い角部(42)を有する複数本の独立小突条(20)を外周面先端寄り(55)に形成すると共に、
複数本の上記独立小突条(20)の最内方位置小突条(20X)と最外方位置小突条(20Y)の間隔寸法(W20)よりも大きい、上記段付部(4)から先端方向へのアキシャル方向寸法(W15)に渡って、パイプ軸心(Lp)の揺動振れ(Sp)を阻止するように、上記リング(13)の内周面(13A)が密接するパイプ振れ止め領域(15)を、形成したことを特徴とする管継手構造。
【請求項3】
上記リング(13)の内周面(13A)は、軸心方向の内端側から外端側へ、順次、大径孔部(31)とテーパ部(32)と小径孔部(33)とを、備え、
配管接続完了状態下で、
大径孔部(31)は、上記パイプ振れ止め領域(15)に対応し、
上記小径孔部(33)は、上記独立小突条(20)を有する上記外周面先端寄り(55)に対応し、
上記テーパ部(32)は、上記パイプ振れ止め領域(15)の外端近傍に対応するように、設定した請求項1又は2記載の管継手構造。
【請求項4】
上記パイプ接続筒部(5)における上記パイプ振れ止め領域(15)の外周面には、配管接続完了状態下でパイプ(P)の内周面に食込状態となるパイプ廻り止め用の多数の小凹凸部(22)が、形成されている請求項1,2又は3記載の管継手構造。
【請求項5】
パイプ廻り止め用の上記小凹凸部(22)は、上記振れ止め領域(15)の軸方向外端に配設された第1小凹凸部(22A)と、上記振れ止め領域(15)の軸方向内端に配設された第2小凹凸部(22B)と、から成る請求項4記載の管継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図8に示すフレア継手は広く知られている。一般に、このフレア継手は、図8に示すように、パイプPの端部にフレア加工部fを作業工具(治具)によって塑性加工することで形成していた。フレア継手本体hのテーパ部aに当てて袋ナットnにて締付け、袋ナットnのテーパ面tとフレア継手本体hのテーパ部aにて挾圧し、金属面の相互圧接にて密封性を確保する構成である(例えば、特許文献1参照)。作業現場にて、被接続用パイプPの端部に、専用治具(作業工具)を使用してフレア加工部fを形成する際に、テーパ状への大きな塑性変形によって、フレア加工部fの小径側角部f1 に亀裂を生じ易い。
【0003】
そこで、図9に示すような構造の管継手構造が提案されている(特許文献2参照)。図9に示す管継手構造は、フレア継手本体82と袋ナット83を有し、内部に引抜阻止部材81を備えた構成であって、パイプ先端にフレア加工も、その他の加工も省略できるという優れた点もあるが、極めて超精密な、爪80を有する引抜阻止部材81を必要とした。そのため製作が難しく、コスト高となるという問題が残されている。また、パイプPに回転トルクが作用すると、爪80によって螺旋溝が形成されながらパイプ引抜けが生ずる場合もある。
【0004】
そこで、本発明者は、図10図11に示すような「冷媒用」管継手構造を提案した(特許文献3参照)。
図10図11に示す管継手構造は、冷媒用パイプとして、Cu又はAlが使用される。その構造は、以下の通りである。
【0005】
即ち、軸心方向両側の各々に、雄ネジ部37fと段付部38fとパイプ接続筒部41fとを、順次形成した継手本体40fと、上記雄ネジ部37fに螺着される雌ネジ部を有する2個の袋ナット15fとを、備え、相互に接続される2本の被接続用パイプPfは、Cu又はAlの軟らかい金属製であって、先端面から所定軸心寸法に渡って先端拡径管部5fが形成されると共に、上記先端拡径管部5fと基本径管部との境界には、テーパ状段付部10fが形成され、上記継手本体40fの上記パイプ接続筒部41fが、パイプPfの上記先端拡径管部5fに挿入された状態で、上記袋ナット15fの継手本体40fへの螺進により、上記パイプPfのテーパ状段付部10fを経て上記先端拡径管部5fに外嵌される閉円環状リング25fを、上記袋ナット15fの内部に設け、上記リング25fのラジアル内方向への縮径付勢力にて、パイプPfの先端拡径管部5fと、継手本体40fの上記パイプ接続筒部41fとの密封状態を保つように構成した冷媒用管継手構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-42858号公報
【特許文献2】特開2010-270846号公報
【特許文献3】特許第6730759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図10図11に示した管継手構造は、冷媒用として優れている。しかし、最近、蒸気用パイプの接続用への需要が高まりつつある。
このような蒸気用パイプの材質は、ステンレス鋼や高硬度の銅等であり、剛性,強度,硬度が高いことに伴って、次のような問題が発生することが、判明してきた。
即ち、図10に於て、矢印Mpにて示した曲げモーメントがパイプPfに作用した際、パイプPfの先端拡径管部5fが、外方へ抜け出てしまう虞れがあるという問題である。
【0008】
従来の冷媒用の軟質CuのパイプPfであれば、大きな曲げモーメント(外力)Mpが作用しようとしても、軟らかいパイプPf自身が大きく弯曲変形しつつ、その曲げモーメント(外力)Mpを吸収(緩和)して、直接的には、リング25fとパイプ接続筒部41fに、伝達されずに済んでいたと、推察される。
さらに、図10に示すように、パイプPfに、軸心廻りの回転力(捩りトルク)Npが同時に作用する場合もあり、前記曲げモーメントMp及び回転トルクNpの同時作用によって、簡単にパイプPfが回転を起こしつつ、一層容易にパイプPfが外方へ抜け出ることが判ってきた。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題を解決して、硬度と剛性の高いパイプに対しても確実に、引抜け事故を防止し、冷媒用以外の流体(蒸気)にも安心して適用できる管継手構造を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、軸心方向の一方に雄ネジ部と段付部とパイプ接続筒部とを、順次有する継手本体と、上記雄ネジ部に螺着される雌ネジ部を有する袋ナットとを、備え;被接続用のパイプには、先端面から所定軸心寸法に渡って、先端拡径管部が形成されると共に、上記先端拡径管部と基本径管部との境界には、テーパ状段付部が形成され;上記継手本体の上記パイプ接続筒部が、パイプの上記先端拡径管部に挿入された状態で、上記袋ナットの継手本体への螺進により、上記パイプのテーパ状段付部を経て上記先端拡径管部に外嵌される閉円環状リングを、上記袋ナットの内部に設け;上記リングのラジアル内方向への縮径付勢力にて、パイプの先端拡径管部と、継手本体の上記パイプ接続筒部との密封状態を保つように構成した管継手構造に於て;上記継手本体から突出状の上記パイプ接続筒部の外周面には、断面が鋭い頂部又は鋭い角部を有する複数本の独立小突条を外周面先端寄りに形成すると共に;複数本の上記独立小突条の最内方位置小突条と最外方位置小突条の間隔寸法よりも大きい、上記段付部から先端方向へのアキシャル方向寸法に渡って、パイプ軸心の揺動振れを阻止するように、上記リングの内周面がパイプの外周面に密接するパイプ振れ止め領域を、形成したものである。
【0011】
また、本発明は、軸心方向の両側の各々に雄ネジ部と段付部とパイプ接続筒部とを、順次有する継手本体と、上記雄ネジ部に螺着される雌ネジ部を有する2個の袋ナットとを、備え;相互に接続される2本の被接続用のパイプには、先端面から所定軸心寸法に渡って、先端拡径管部が形成されると共に、上記先端拡径管部と基本径管部との境界には、テーパ状段付部が形成され;上記継手本体の上記パイプ接続筒部が、パイプの上記先端拡径管部に挿入された状態で、上記袋ナットの継手本体への螺進により、上記パイプのテーパ状段付部を経て上記先端拡径管部に外嵌される閉円環状リングを、上記袋ナットの内部に設け;上記リングのラジアル内方向への縮径付勢力にて、パイプの先端拡径管部と、継手本体の上記パイプ接続筒部との密封状態を保つように構成した管継手構造に於て;上記継手本体から突出状の上記パイプ接続筒部の外周面には、断面が鋭い頂部又は鋭い角部を有する複数本の独立小突条を外周面先端寄りに形成すると共に;複数本の上記独立小突条の最内方位置小突条と最外方位置小突条の間隔寸法よりも大きい、上記段付部から先端方向へのアキシャル方向寸法に渡って、パイプ軸心の揺動振れを阻止するように、上記リングの内周面が密接するパイプ振れ止め領域を、形成したものである。
【0012】
また、上記リングの内周面は、軸心方向の内端側から外端側へ、順次、大径孔部とテーパ部と小径孔部とを、備え;配管接続完了状態下で;大径孔部は、上記パイプ振れ止め領域に対応し;上記小径孔部は、上記独立小突条を有する上記外周面先端寄りに対応し;上記テーパ部は、上記パイプ振れ止め領域の外端近傍に対応するように、設定した。
また、上記パイプ接続筒部における上記パイプ振れ止め領域の外周面には、配管接続完了状態下でパイプの内周面に食込状態となるパイプ廻り止め用の多数の小凹凸部が、形成されている。
また、パイプ廻り止め用の上記小凹凸部は、上記振れ止め領域の軸方向外端に配設された第1小凹凸部と、上記振れ止め領域の軸方向内端に配設された第2小凹凸部と、から成る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ステンレス鋼等の高硬度の金属パイプとの接続完了状態において、パイプに大きい曲げモーメントが作用して振られた場合にも、パイプ抜けを起こさない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の一形態を示す接続完了状態の断面図である。
図2】本発明の他の実施形態を示す接続完了状態の断面図である。
図3図1及び図2に対応した作用説明のための要部拡大断面図である。
図4】拡大説明図であって、(A)は継手本体の要部の拡大断面説明図、(B)は独立小突条の複数の実施例を示す拡大断面説明図である。
図5】被接続用のパイプを継手本体のパイプ接続筒部へ挿入する状態を示す要部拡大断面図である。
図6】閉円環状リングを示す断面図であって、(A)は第1の実施例の断面図、(B)は第2の実施例の断面図である。
図7】袋ナットを螺進しつつ閉円環状リングを、パイプのテーパ状段付部を経て、先端拡径管部に外嵌してゆく状態を示した拡大断面説明図である。
図8】従来例を示す断面図である。
図9】他の従来例を示す断面図である。
図10】別の従来例を示す断面図である。
図11】接続作業途中状態を示す図10の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1に於て、1は継手本体であり、いわゆるソケットタイプの場合を例示する。この継手本体1は、軸心方向中央位置に六角ナット部等の膨出部2を有すると共に、軸心方向の一方には、雄ネジ部3と段付部4とパイプ接続筒部5とを、順次、有している(図3図4参照)。また、ソケットタイプとして、この継手本体1は、軸心方向の他方に、テーパ雄ネジ筒部6を有する場合を例示している。
【0016】
さらに、上記雄ネジ部3には、袋ナット7が螺着される。つまり、袋ナット7の雌ネジ部8が螺着される。
図5に示すように、被接続用のパイプPには、先端面9から、所定軸心寸法L10に渡って、先端拡径管部10が形成されると共に、この先端拡径管部10と基本径管部11との境界には、所定軸心寸法L12のテーパ状段付部12が形成されている。
【0017】
このような先端拡径管部10とテーパ状段付部12の塑性加工は、従来周知の拡径工具(治具)にて、容易に成形可能である。しかも、拡径管部10の内径及び外径寸法は、高精度な公差に、容易に成形され、パイプPの基本径管部11の内径及び外径寸法の公差よりも、十分に小さい(高精度である)。
【0018】
そして、図1図3図6図7に於て、13は閉円環状リングである。この閉円環状リング13の機能と作用等について説明すると、以下の通りである。
即ち、継手本体1のパイプ接続筒部5が、パイプPの先端拡径管部10に挿入された状態(図5参照)において、袋ナット7の継手本体1(の雄ネジ部3)への螺進により、前記閉円環状リング13は、パイプPのテーパ状段付部12を経て、先端拡径管部10に外嵌される。このように、閉円環状リング13は、接続作業時には、袋ナット7の内部に設けられている。
【0019】
ところで、パイプ接続筒部5の外周面先端寄り(先端領域)55には、その外周面に、図4(A)(B)に示すような断面が鋭い頂部41又は鋭い角部(エッジ)42を有する複数本の独立小突条20が形成されている。
【0020】
この独立小突条20の断面形状について説明すると、図4(B)に於て、(a)は単数の鋭い頂部41を有する断面三角形の場合を示し、(b)は頂部41,41を2個備えた二山型である。(c)は鋭い頂部41,41を(同様に)2個備えているが全体が一山型である。(d)は鋭い角部(エッジ)42を頂上に有する富士山型である。(e)は鋭い角部(エッジ)42を頂上に有する台型の場合を示す。また、(f)は縦長矩形であり、鋭い角部(エッジ)42を頂上に有する。(g)は(d)に示した富士山型の頂上に三角形を積上げて鋭い頂部41を有する。(h)は(e)に示した台型の上に三角形を積上げて鋭い頂部41を有する。また、(i)は(f)に示した矩形の上に鋭い頂部41を有する三角形を積重ねた断面である。なお、図4(B)は独立小突条20の断面形状の複数の実施例を図示しているが、これ以外に曲線部位を有する等の変形は可能であって、要は、鋭い頂部41と鋭い角部42の少なくとも一方を有する山型(凸型)であれば良いと言える。
従って、閉円環状リング13は、そのラジアル内方向への縮径付勢力にて、パイプPの先端拡径管部10と、継手本体1のパイプ接続筒部5との密封状態を保つことができる。
【0021】
次に、複数本(図4では3本)の独立小突条20の(アキシャル方向の)最内方位置小突条20Xと最外方位置小突条20Yの間隔寸法を、W20とすると、図1図3図4に示す如く、継手本体1の段付部4から先端方向へのアキシャル方向寸法W15に渡って、パイプPの軸心Lpの揺動振れSpを阻止するように、閉円環状リング13の内周面13AがパイプPの外周面に密接するパイプ振れ止め領域15を、形成している。
さらに、このパイプ振れ止め領域15に於ては、リング13の内周面13AがパイプPの外周面に密接状態であると共に、パイプPの内周面は、パイプ接続筒部5の外周面に対して、密接状態を保つ(図3及び図1参照)。
【0022】
次に、図2に示す本発明の他の実施形態について、以下、説明する。この図2は、いわゆるカップリング型であって、パイプPとパイプPを接続するのに用いられる。図2から判るように、中央線Lmに関して、左右対称形である。
言い換えれば、既に説明した図1に於て、六角ナット部等の膨出部2の左右中央位置の中央線L2 の左側半分を除去して、上記中央線L2 に関して、右半分を対称形状としたものを、中央線L2 の左側に付設した左右対称形である。
【0023】
図2について、追加説明すると、継手本体1は、軸心方向の両側の各々に、雄ネジ部3と段付部4とパイプ接続筒部5とを、順次有している。また、2個の袋ナット7,7を備え、2本の被接続用のパイプP,Pが、相互に、接続される構成である。そして、図3図7に示す各要部の形状と構造等の構成は、図2図1とは、共通する。
【0024】
ところで、図1図2の各実施形態における共通する、具体的な要部の形状と構造と作用(機能)について、以下説明する。
図6に於て、閉円環状リング13の縦断面(上半分)を示す。
図6(A)又は図6(B)に示すように、リング13の内周面13Aは、軸心方向の内端側から外端側へ、順次、大径孔部31とテーパ部32と小径孔部33とを、順次、備えている。なお、テーパ部32は図6(A)では直線状勾配であり、図6(B)では弯曲凸状勾配の場合を示す。R32はその弯曲凸状勾配の曲率半径を示す。なお、図6(B)は外周面13Bの断面形状が、内周面13Aと略平行となるように、(ストレートではなく)軸心方向の中間で傾斜している。
【0025】
つまり、図6(B)では、短円筒素材の軸心方向の一部位を縮径又は拡径する塑性加工により、作成できる。これに対して、図6(A)では、外周面13Bが同一外径のストレート状であって、図1図2図3図7に示す如く、袋ナット7のストレート状内周面7Aに(微小間隙を介して)対応できる。
【0026】
そして、図1図2図3に示した配管接続完了状態下では、リング13の大径孔部31(図6参照)は、前記パイプ振れ止め領域15に対応する。
小径孔部33は、接続筒部5の(前述の)独立小突条20を有する外周面先端寄り55に、対応する(配管接続完了状態)。即ち、図1図2図3に示した如く、リング13の小径孔部33がパイプPを強くラジアル内方向に押圧して、独立小突条20にパイプ内周面を食い込ませることができる。
【0027】
さらに、リング13のテーパ部32は、パイプ振れ止め領域15の外端近傍に対応する。図3図4では、W15をもって示したアキシャル方向範囲の外端に、リング13のテーパ部32が対応する。
【0028】
また、図3図4図5図7等に示したように、パイプ接続筒部5におけるパイプ振れ止め領域15の外周面には、配管接続完了状態下でパイプPの内周面に食込状態となるパイプ廻り止め用の多数の小凹凸部22が、形成されている。
【0029】
図例では、この小凹凸部22は、パイプ振れ止め領域15のアキシャル方向(軸方向)外端にローレット加工等にて形成した第1小凹凸部22Aと、パイプ振れ止め領域15のアキシャル方向(軸方向)内端にローレット加工等にて形成した第2小凹凸部22Bと、をもって構成した場合を示す。
【0030】
ところで、パイプ振れ止め領域15の軸方向外端を、軸方向外方に向かって縮径するテーパ部17を形成し、第1小凹凸部22Aは、このテーパ部17を含むように、ローレット加工等で形成することによって、図5の矢印Kp方向にパイプPの先端拡径管部10を挿入することがスムーズとなる。かつ、図3に示すように、リング13のテーパ部32(図6参照)が、(上述のテーパ部17にも形成されている)第1小凹凸部22Aのテーパ部17に対向することにより、局部的に強力に噛合して、強力なパイプ回転阻止作用を行うことができる。
【0031】
また、第2小凹凸部22Bは、段付部4とパイプ接続筒部5の基端との隅部に、配設される。しかも、図3図4図5に示すように、この隅部の第2小凹凸部22Bは、三角形の縦断面形状となる。図5に於て、配管接続作業の最初の段階でパイプPを矢印Kp方向から押込んでゆくと、パイプPの先端は、第1小凹凸部22Aのテーパ部17にてスムーズに誘導されて外嵌状に差込まれる。つづいて、パイプPが図5の左方へ差込まれると、三角形の縦断面形状の第2小凹凸部22Bに直ちに突入して、係止できる。
【0032】
ところで、本発明では、図7から図3の状態までの袋ナット7の回転数は、従来例の図11の場合の回転数と、略同一で済むという利点がある。即ち、図6に示すようにリング13の内周面形状が大径孔部31と小径孔部33とを有することによって、図4のパイプ振れ止め領域15と、先端領域55の全部の独立小突条20,20とに、同時進行にて、リング13が外嵌されてゆくが故である。
このように、袋ナット7の螺進回転作業が(従来と変わらずに)迅速に、能率良くできるという利点を、本発明は有する。
【0033】
本発明は、以上詳述したように、軸心方向の一方に雄ネジ部3と段付部4とパイプ接続筒部5とを、順次有する継手本体1と、上記雄ネジ部3に螺着される雌ネジ部8を有する袋ナット7とを、備え;被接続用のパイプPには、先端面9から所定軸心寸法L10に渡って、先端拡径管部10が形成されると共に、上記先端拡径管部10と基本径管部11との境界には、テーパ状段付部12が形成され;上記継手本体1の上記パイプ接続筒部5が、パイプPの上記先端拡径管部10に挿入された状態で、上記袋ナット7の継手本体1への螺進により、上記パイプPのテーパ状段付部12を経て上記先端拡径管部10に外嵌される閉円環状リング13を、上記袋ナット7の内部に設け;上記リング13のラジアル内方向への縮径付勢力にて、パイプPの先端拡径管部10と、継手本体1の上記パイプ接続筒部5との密封状態を保つように構成した管継手構造に於て;上記継手本体1から突出状の上記パイプ接続筒部5の外周面には、断面が鋭い頂部41又は鋭い角部42を有する複数本の独立小突条20を外周面先端寄り55に形成すると共に;複数本の上記独立小突条20の最内方位置小突条20Xと最外方位置小突条20Yの間隔寸法W20よりも大きい、上記段付部4から先端方向へのアキシャル方向寸法W15に渡って、パイプ軸心Lpの揺動振れSpを阻止するように、上記リング13の内周面13AがパイプPの外周面に密接するパイプ振れ止め領域15を、形成したので、ステンレス鋼や高硬度の銅(及び高硬度の他の金属)のパイプPの接続完了状態下で、パイプに大きい曲げモーメントMp(図10参照)が作用した場合に、従来例ではパイプが抜け出る事故の虞れがあったが、本発明では、このようなパイプ抜け出し事故を、簡易な構造にて、確実に防止できる。従って、蒸気等の流体用としての高硬度の金属パイプPに対しても、本発明は十分に適応できる。さらに、高圧力が作用し、流体温度差が大きく、低温から高温まで大きく変動する使用状況にあっても、強力な耐引抜力を長期に渡って安定して発揮し、かつ、高い密封性能を維持できる。このように、冷媒は勿論のこと、それ以外の流体への用途拡大が可能となる。
【0034】
また、軸心方向の両側の各々に雄ネジ部3と段付部4とパイプ接続筒部5とを、順次有する継手本体1と、上記雄ネジ部3に螺着される雌ネジ部8を有する2個の袋ナット7,7とを、備え;相互に接続される2本の被接続用のパイプPには、先端面9から所定軸心寸法L10に渡って、先端拡径管部10が形成されると共に、上記先端拡径管部10と基本径管部11との境界には、テーパ状段付部12が形成され;上記継手本体1の上記パイプ接続筒部5が、パイプPの上記先端拡径管部10に挿入された状態で、上記袋ナット7の継手本体1への螺進により、上記パイプPのテーパ状段付部12を経て上記先端拡径管部10に外嵌される閉円環状リング13を、上記袋ナット7の内部に設け;上記リング13のラジアル内方向への縮径付勢力にて、パイプPの先端拡径管部10と、継手本体1の上記パイプ接続筒部5との密封状態を保つように構成した管継手構造に於て;上記継手本体1から突出状の上記パイプ接続筒部5の外周面には、断面が鋭い頂部41又は鋭い角部42を有する複数本の独立小突条20を外周面先端寄り55に形成すると共に;複数本の上記独立小突条20の20Xと最外方位置小突条20Yの間隔寸法W20よりも大きい、上記段付部4から先端方向へのアキシャル方向寸法W15に渡って、パイプ軸心Lpの揺動振れSpを阻止するように、上記リング13の内周面13Aが密接するパイプ振れ止め領域15を、形成したので、パイプPとパイプPを相互接続するカップリング型として好適であり、ステンレス鋼や高硬度の銅(及び高硬度の他の金属)のパイプPの接続完了状態下で、パイプに大きい曲げモーメントMp(図10参照)が作用した場合に、従来例ではパイプが抜け出る事故の虞れがあったが、本発明では、このようなパイプ抜け出し事故を、簡易な構造にて、確実に防止できる。従って、蒸気等の流体用としての高硬度の金属パイプPに対しても、本発明は十分に適応できる。さらに、高圧力が作用し、流体温度差が大きく、低温から高温まで大きく変動する使用状況にあっても、強力な耐引抜力を長期に渡って安定して発揮し、かつ、高い密封性能を維持できる。このように、冷媒は勿論のこと、それ以外の流体への用途拡大が可能となる。
【0035】
また、上記リング13の内周面13Aは、軸心方向の内端側から外端側へ、順次、大径孔部31とテーパ部32と小径孔部33とを、備え;配管接続完了状態下で;大径孔部31は、上記パイプ振れ止め領域15に対応し;上記小径孔部33は、上記独立小突条20を有する上記外周面先端寄り55に対応し;上記テーパ部32は、上記パイプ振れ止め領域15の外端近傍に対応するように、設定したので、袋ナット7の螺進(回転)に伴って、パイプ振れ止め領域15と、独立小突条20を有するパイプ抜止め領域と、に対してリング13は同時に軸心方向に押込まれて移動でき、袋ナット7の螺進ストロークS13は、図7に示す如く、短くて済む。即ち、そのストロークS13は、従来例の図11に示したリング25fの矢印K方向への螺進ストロークS25と、略等しく、極めて短くて済むので、袋ナット締付(螺進)作業性が優れて良好である。
【0036】
また、上記パイプ接続筒部5における上記パイプ振れ止め領域15の外周面には、配管接続完了状態下でパイプPの内周面に食込状態となるパイプ廻り止め用の多数の小凹凸部22が、形成されているので、配管接続完了状態でのパイプPが軸心Lp廻りに回転することを確実に阻止できる。パイプ振れ止め領域15の存在によって、パイプPが図3に示した揺動振れSpを阻止できるとしても、パイプPが軸心Lp廻りに回転を発生すれば、パイプPの外周面に螺旋溝(スクリュー状の傷)を発生しつつ、次第次第に、パイプPが抜け出る虞れがあり、特に、揺動振れSpの外力と、軸心Lp廻りの回転外力が、同時に、パイプPに作用した状況下では、パイプPが抜け出る危険性が高まる。このような危険性を、パイプ廻り止め用の小凹凸部22を付加したことによって、確実に解消できた。なお、小凹凸部22はローレット加工等によって容易に形成できる。
【0037】
また、パイプ廻り止め用の上記小凹凸部22は、上記振れ止め領域15の軸方向外端に配設された第1小凹凸部22Aと、上記振れ止め領域15の軸方向内端に配設された第2小凹凸部22Bと、から成るので、第2小凹凸部22Bは、(図5に示す如く)パイプPを接続筒部5に深く外嵌(挿入)すれば、まず、パイプPの先端面9に食い込み状態となって、パイプ廻り止め第1段目が完了する。その後、袋ナット7を螺進しつつリング13を(図7のように)押圧してゆく際に、リング13によってラジアル内方向の力がパイプPの拡径管部10に作用して、第1小凹凸部22AがパイプPの内周面に強く食い込み、一層確実にパイプPが軸心Lp廻りに回転することを、阻止できる。
このように、第2小凹凸部22B及び第1小凹凸部22Aの共働きによって、パイプPの軸心Lp廻りの回転を防止できる。それによって、パイプPが(前述したように)スクリュー状の傷をパイプ外周面に発生しながら、引抜けることを防止できる。
【符号の説明】
【0038】
1 継手本体
3 雄ネジ部
4 段付部
5 パイプ接続筒部
7 袋ナット
8 雌ネジ部
9 先端面
10 先端拡径管部
11 基本径管部
12 テーパ状段付部
13 閉円環状リング
13A 内周面
15 パイプ振れ止め領域
20 独立小突条
20X 最内方位置小突条
20Y 最外方位置小突条
22 小凹凸部
22A 第1小凹凸部
22B 第2小凹凸部
31 大径孔部
32 テーパ部
33 小径孔部
41 頂部
42 角部(エッジ)
55 外周面先端寄り
P パイプ
10 所定軸心寸法
Lp パイプ軸心
Sp 揺動振れ
15 アキシャル方向寸法
20 間隔寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11