IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-液体貯留装置 図1
  • 特開-液体貯留装置 図2
  • 特開-液体貯留装置 図3
  • 特開-液体貯留装置 図4
  • 特開-液体貯留装置 図5
  • 特開-液体貯留装置 図6
  • 特開-液体貯留装置 図7
  • 特開-液体貯留装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169983
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】液体貯留装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
B41J2/175 169
B41J2/175 133
B41J2/175 113
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075769
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】芦田 七海
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 真也
(72)【発明者】
【氏名】林 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】大木 聡
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056FA10
2C056KC02
2C056KD08
(57)【要約】
【課題】キャップ544をタンク本体541の注入口5420に当接部61により嵌入させつつ、筐体カバー32が筐体ケース31を完全に閉じること。
【解決手段】プリンタ部1において、移動機構71は、スライド部712が傾斜面7111に当接した後、筐体カバー32が閉位置P11に向かう過程で、当接部61をキャップ544に対し前方斜め下方と移動させる。即ち、当接部61は、回転軸A23から離れる向きへと移動させられる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有するケースと、
上記開口を開放する第1開位置、上記開口を閉塞する第1閉位置、および当該第1開位置と当該第1閉位置との間の中間位置に第1軸周りに回動するカバーと、
上記ケース内に位置し、上記開口に露出する注入口を有するタンクと、
上記注入口を開放する第2開位置および上記注入口を閉塞する第2閉位置に上記第1軸と平行な第2軸周りに回動するキャップと、
上記中間位置の上記カバーにおいて上記第2開位置の上記キャップに当接する第1当接部と、
上記第1閉位置付近の上記カバーにおいて上記第2閉位置付近の上記キャップに当接する第2当接部と、
上記第2当接部を、上記第2軸との距離が変動する方向へ移動させる移動機構と、を備えており、
上記第1当接部は、上記カバーが上記中間位置から上記第1閉位置へ回動するに伴って、上記第2開位置の上記キャップを上記第2閉位置へ向けて回動させ、
上記第2当接部は、上記カバーが上記第1閉位置へ回動するに伴って、上記キャップを上記第2閉位置へ回動させ、
上記キャップは、上記第2閉位置において弾性変形して上記注入口に嵌入し、
上記移動機構は、上記カバーが上記第1閉位置へ回動するに伴って、上記第2当接部を上記第2軸からの距離が遠ざかる向きへ移動させる液体貯留装置。
【請求項2】
上記第1当接部は、上記キャップの上記第2軸に近い側の近位部に当接し、
上記第2当接部は、上記キャップの上記第2軸に遠い側の遠位部に当接する請求項1に記載の液体貯留装置。
【請求項3】
上記移動機構は、上記第1閉位置へ向けて上記カバーを移動させるものであり、
上記ケースの上記開口周りから突出しており、上記第2当接部が上記第2軸から遠ざかる向きへ上記カバーを案内するガイド面を有する請求項1または2に記載の液体貯留装置。
【請求項4】
上記注入口が上記第1軸と平行な方向に沿って並ぶ複数の上記タンクと、
複数の上記タンクの各々に対応する上記キャップ、上記第1当接部、および上記第2当接部と、を備える請求項1から3のいずれかに記載の液体貯留装置。
【請求項5】
上記第1当接部は、複数の上記第2開位置の上記キャップに当接可能であり、
上記第2当接部は、複数の上記第2閉位置付近の上記キャップに当接可能である請求項4に記載の液体貯留装置。
【請求項6】
上記キャップは、上記第2閉位置において上記第2軸から水平方向に沿って延びており、上記第2閉位置から上記第2開位置までの回動角が90°から100°の範囲内である請求項1から5のいずれかに記載の液体貯留装置。







【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注入口から液体を補充可能なタンクを備える液体貯留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクを貯留する貯留室を有するタンクを備えたプリンタが記載されている。貯留室内のインクは、記録ヘッドでの画像記録により消費される。タンクは、貯留室と連通しており、キャップにより封止可能な注入口を有する。ユーザは、貯留室にインクを補充するのに先立ち、インクジェットプリンタのカバーを開いてタンクの注入口を露出させる。その後、ユーザは、注入口からキャップを取り外して、注入口からインクを補充する。ユーザは、インクを補充した後、キャップを注入口に嵌めて、カバーを閉じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-189496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のプリンタでは、ユーザが注入口にキャップを嵌め忘れるおそれがある。その対策として、カバーを閉じる過程で、カバーの一部がキャップに当接して、キャップを注入口に嵌め込むことが考えられる。しかし、キャップを弾性変形させて注入口に嵌め込むには、カバーがキャップを注入口へ十分に押し込むことが必要となる。しかし、カバーとキャップとのオーバーラップを大きくすると、キャップに押し戻されてカバーがケースに対して完全に閉じないおそれがある。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、カバーの回動に伴って、キャップがタンクの注入口へ嵌め込まれ、且つカバーがケースに対して完全に閉じる液体貯留装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明の液体貯留装置は、開口を有するケースと、上記開口を開放する第1開位置、上記開口を閉塞する第1閉位置、および当該第1開位置と当該第1閉位置との間の中間位置に第1軸周りに回動するカバーと、上記ケース内に位置し、上記開口に露出する注入口を有するタンクと、上記注入口を開放する第2開位置および上記注入口を閉塞する第2閉位置に上記第1軸と平行な第2軸周りに回動するキャップと、上記中間位置の上記カバーにおいて上記第2開位置の上記キャップに当接する第1当接部と、上記第1閉位置付近の上記カバーにおいて上記第2閉位置付近の上記キャップに当接する第2当接部と、上記第2当接部を、上記第2軸との距離が変動する方向へ移動させる移動機構と、を備えている。上記第1当接部は、上記カバーが上記中間位置から上記第1閉位置へ回動するに伴って、上記第2開位置の上記キャップを上記第2閉位置へ向けて回動させる。上記第2当接部は、上記カバーが上記第1閉位置へ回動するに伴って、上記キャップを上記第2閉位置へ回動させる。上記キャップは、上記第2閉位置において弾性変形して上記注入口に嵌入する。上記移動機構は、上記カバーが上記第1閉位置へ回動するに伴って、上記第2当接部を上記第2軸からの距離が遠ざかる向きへ移動させる。
【0007】
上記構成によれば、カバーが第1開位置から中間位置へ回動すると、第1当接部が第2開位置のキャップに当接する。カバーが中間位置から第1閉位置へ回動すると、第1当接部が第2開位置のキャップを第2閉位置へ向けて回動させる。カバーが第1閉位置へ回動するに伴って第2当接部がキャップを弾性変形させつつ第2閉位置に回動させる。第1閉位置において、移動機構が第2当接部を第2軸から遠ざかる向きへ移動させているので、第2当接部がキャップから離れて、カバーが第1閉位置へ円滑に回動する。
【0008】
(2) 上記第1当接部は、上記キャップの上記第2軸に近い側の近位部に当接する。上記第2当接部は、上記キャップの上記第2軸に遠い側の遠位部に当接する。
【0009】
第1当接部がキャップを第2開位置から第2閉位置へ向けて回動させやすく、また、第2当接部が第2軸から遠ざかる向きへ移動しやすい。
【0010】
(3) 上記移動機構は、上記第1閉位置へ向けて上記カバーを移動させるものである。上記ケースの上記開口周りから突出しており、上記第2当接部が上記第2軸から遠ざかる向きへ上記カバーを案内するガイド面を有する。
【0011】
上記構成によれば、カバーの移動により第2当接部が第2軸から遠ざかるので、移動機構が簡易に実現できる。
【0012】
(4) 上記液体貯留装置は、上記注入口が上記第1軸と並行な方向に沿って並ぶ複数の上記タンクと、複数の上記タンクの各々に対応する上記キャップ、上記第1当接部、および上記第2当接部と、を備える。
【0013】
(5) 上記第1当接部は、複数の上記第2開位置の上記キャップに当接可能である。上記第2当接部は、複数の上記第2閉位置付近の上記キャップに当接可能である。
【0014】
上記構成によれば、カバーに第1当接部および第2当接部を形成し易い。
【0015】
(6) 上記キャップは、上記第2閉位置において上記第2軸から水平方向に沿って延びており、上記第2閉位置から上記第2開位置までの回動角が90°から100°の範囲内である。
【0016】
上記構成によれば、第1当接部が第2開位置のキャップに当接し易い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カバーの回動に伴って、キャップがタンクの注入口へ嵌め込まれ、且つカバーがケースに対して完全に閉じる液体貯留装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る複合機100を模式的に示す斜視図であり、(A)は、複合機100の筐体カバー32が閉位置P11にあるときを示し、(B)は、複合機100の筐体カバー32が開位置P12にあるときを示す。
図2図1の複合機100の内部構成を模式的に示す縦断面図。
図3】(A)は3色タンク54の正面図、(B)は3色タンク54の側面図。
図4】(A)は、筐体カバー32が閉位置P11にあり且つキャップ544が閉位置P31にあるときの当接部61の姿勢を示す模式図、(B)は、筐体カバー32が開位置P12にあるときの当接部61の姿勢と、開位置P32にあるキャップ544の姿勢とを示す模式図。
図5】(A)は、筐体カバー32が中間位置P13にあるときの当接部61およびキャップ544の各姿勢を示す模式図、(B)は、筐体カバー32が中間位置P13より若干閉位置P11側にあるときの当接部61およびキャップ544の各姿勢を示す模式図、(C)は、筐体カバー32が中間位置P14にあるときの当接部61およびキャップ544の各姿勢を示す模式図。
図6】(A)は、筐体カバー32が閉位置P11にあるときの移動機構71を示す模式図、(B)は、筐体カバー32が閉位置P11から若干開位置P12側に移動したときの移動機構71を示す模式図。
図7】(A)は、筐体カバー32が開位置P12にあるときの移動機構71を示す模式図、(B)は、筐体カバー32が中間位置P14にあるときの移動機構71を示す模式図。
図8】(A)は、第1変形例に係る当接部61,62を示す模式図、(B)は、第2変形例に係る当接部61を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る複合機100について詳説する。実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更可能である。
【0020】
[用語の定義]
以下では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。
【0021】
各図および以下の説明において、上下方向7は、複合機100が使用可能に設置された状態(図1(A)の状態)を基準として定義される。前後方向8は、複合機100において開口31Cがある側が前側として定義される。複合機100を前方から見て左右方向9が定義される。水平面は、前後方向8および左右方向9に平行な面である。実施形態では、鉛直面は、水平面に直交する面のうち、上下方向7および前後方向8に平行な面である。
【0022】
[複合機100の全体構成]
図1において、複合機100は、プリンタ部1(液体貯留装置の一例)と、スキャナ部2と、筐体3と、を備える。複合機100は、プリンタ部1およびスキャナ部2以外にも、ファックス機能等、他の機能を実現するための構成を備えている。しかし、実施形態の要部は、プリンタ部1および筐体3であるため、それら以外の説明については省略または簡素化する。
【0023】
[筐体ケース31,筐体カバー32]
図1において、筐体3は、筐体ケース31(ケースの一例)と、筐体カバー32(カバーの一例)と、を有する。筐体ケース31は、略直方体形状の箱体であり、複数の外壁により内部空間31A(図1(B)を参照)を外部から区画する。内部空間31Aには、主として、プリンタ部1の構成要素(後述)がレイアウトされる。内部空間31Aの上端は、上向きの開口31B(開口の一例)になっている。
【0024】
複数の外壁は、底壁311、左前壁312L、右前壁312R、右壁313および左壁314を含む。左前壁312Lおよび右前壁312Rの各々は、正面視で矩形形状である。筐体3の前端には、前向きの開口31Cが形成されている。筐体カバー32が閉位置P11にあるとき、開口31Cは、正面視で矩形形状である(図1(A)参照)。左前壁312Lは開口31Cの左端を区画し、右前壁312Rは開口31Cの右端を区画する。開口31Cの下端は、排出トレイ18の前上隅により画定される。開口31Cの上端は、閉位置P11にある筐体カバー32により画定される(図1(A)参照)。
【0025】
開口31Cから筐体ケース31の後方へと内部空間31Dが拡がっている。内部空間31Dの後端は、筐体ケース31の内壁315により画定される。内壁315は、排出トレイ18の後端から上方に延出しており、内部空間31A,31Dを互いに区画する。内部空間31Dの左端および右端は、筐体ケース31の内壁316,317によりそれぞれ画定される。
【0026】
筐体カバー32は、偏平な略直方体形状の箱体である。筐体カバー32は、筐体ケース31の後上隅付近に、連結具323(図1(B)を参照)で連結される。筐体カバー32は、連結具323の回転軸A11(第1軸の一例)に対する周方向θ11に、閉位置P11(図1(A)を参照)と、開位置P12(図1(B)参照)との間で回動可能である。閉位置P11(第1閉位置の一例)で、筐体カバー32は、開口31Bや内部空間31A(図1(B)参照)を閉塞し、開位置P12(第1開位置の一例)で、筐体カバー32は、開口31B等を開放する。以下の説明では、特に断り書きが無い場合、「筐体カバー32」という用語は、「閉位置P11にある筐体カバー32」を意味する。
【0027】
筐体カバー32は、筐体ケース31への取り付けのガタつきや連結具323の弾性変形等により、筐体ケース31に対し前後方向8にも若干動く(図6図7参照)。
【0028】
筐体カバー32は、複数の外壁により区画される内部空間(図示せず)にスキャナ部2を収容する。スキャナ部2は、筐体カバー32にセットされた原稿を光学的に読み取り、原稿に記録された画像を示すデータを生成し、コントローラ19(図2参照)に送信する。
【0029】
複数の外壁は、上壁321、下壁322、前壁324、右壁325、および左壁326を含む。図1(A)において、上壁321は、上下方向7において筐体カバー32の上端と同じ位置で、水平面と平行に拡がっている。図1(B)において、下壁322は、上壁321よりも筐体ケース31に近い位置で、上壁321と平行な面内で拡がっている。
【0030】
前壁324は、中央部324C、左側部324L、および右側部324Rを有している。中央部324Cは、左右方向9において左前壁312Lおよび右前壁312Rの間に位置する。図1(A)に示すように、中央部324Cは、筐体カバー32が閉位置P11にあるとき、左前壁312Lおよび右前壁312Rと概ね面一であり、中央部324Cの下端は、開口31Cの上端を区画する。面一は、段差無く平行であることを意味する。左側部324Lおよび右側部324Rは、中央部324Cの上側部分の左右両側に位置する。
【0031】
[プリンタ部1]
図2において、プリンタ部1は、筐体カバー32が閉位置P11にあるとき、インクジェット記録方式でシートSに画像を記録する。シートSは、紙、布、プラスチックシート、OHPシートおよび封筒等である。プリンタ部1は、筐体カバー32に、供給トレイ11を備える。プリンタ部1は、筐体カバー32および内部空間31Aに、画像記録の対象となるシートSの搬送路12を有する。プリンタ部1は、内部空間31Aに、給送ローラ対13と、搬送ローラ対14と、プラテン15と、記録ヘッド16と、排出口17と、排出トレイ18と、コントローラ19と、モータ51と、を備えている。
【0032】
搬送路12は、傾斜部121と、直線部122と、を有する。傾斜部121は、筐体カバー32における後端付近で、上壁321から下壁322へと貫通する。傾斜部121は、上壁321から下壁322に至るまでの間、前方斜め下方に傾斜している。
【0033】
図1(A)において、供給トレイ11は、筐体カバー32に設けられている回転軸A12の周方向に、閉位置P21と、開位置P22とに回動可能である。閉位置P21の供給トレイ11は、実線で示される。開位置P22の供給トレイ11は、破線で示される。閉位置P21で、供給トレイ11は、上壁321の上面と面一になるように筐体カバー32に位置し、傾斜部121(図1(B)や図2参照)の上流端を閉塞する。開位置P22で、供給トレイ11は、筐体カバー32から後方斜め上方に突出し、傾斜部121の上流端を開放する。以下の説明では、特に断り書きが無い場合、「供給トレイ11」という用語は、「開位置P22にある供給トレイ11」を意味する。図2に示すように、供給トレイ11の上面(即ち、前方斜め上方を向く面)は、画像記録の対象となるシートSを支持し、シートSを傾斜部121に供給できるように傾斜部121と連続する。
【0034】
図2において、給送ローラ対13は、駆動ローラ131およびピンチローラ132を有する。駆動ローラ131は、傾斜部121の下流端より若干下方の位置で左右に延び、左右方向9に沿う回転軸A21の周方向に回転可能である。ピンチローラ132は、駆動ローラ131の外周面に前方から当接してニップN1を形成する。ピンチローラ132は、駆動ローラ131に従動して回転する。
【0035】
搬送ローラ対14は、駆動ローラ141およびピンチローラ142を有する。駆動ローラ141は、給送ローラ対13に対し前方斜め下方の位置で左右に延び、回転軸A21に平行な回転軸A22の周方向に回転可能である。ピンチローラ142は、駆動ローラ141の外周面に上方から当接してニップN2を形成する。ピンチローラ142は、駆動ローラ141に従動して回転する。
【0036】
駆動ローラ131および駆動ローラ141は、コントローラ19の制御下でモータ51から伝達される駆動力により回転する。これにより、給送ローラ対13は、供給トレイ11上のシートSを1枚ずつ傾斜部121の下流へと送り出す。搬送ローラ対14は、傾斜部121で搬送されるシートSを、直線部122の下流(即ち、前方)へと送り出す。
【0037】
図2において、プラテン15および記録ヘッド16の各々は、搬送ローラ対14より前方であって、内壁315より後方に位置する。プラテン15は、平面視で、前後左右に拡がり且つ左右に細長い矩形形状である。プラテン15は、上下方向7においてニップN2より若干下方に上面15Aを有する。上面15Aは、直線部122で搬送されるシートSを支持する。即ち、上面15Aは、直線部122の下端を画定する。なお、上面15Aの上下位置は、ニップN2のそれと同じでもよい。
【0038】
記録ヘッド16には、3色タンク54と、ブラックタンク55とにより複数色のインクが供給される。記録ヘッド16は、各色のインクを内部に貯留する。記録ヘッド16は、コントローラ19の制御下で周知のベルト搬送機構161(図1(B)参照)により、プラテン15の上面15Aより若干上方で左右に移動させられる。即ち、記録ヘッド16の下面は、直線部122の上端を画定する。記録ヘッド16は、自身が左右移動している間に、コントローラ19の制御下で内部に貯留する各色のインクを、上面15A上のシートSに向けて吐出する。これにより、シートSには、画像が記録される。このような画像記録の結果、記録ヘッド16の内部に貯留される各色のインクは消費される。
【0039】
排出口17は、内壁315において直線部122と交差する位置に形成される。排出口17は、正面視で左右に細長い矩形形状の貫通孔であり、内壁315を前後に貫通する。画像記録済のシートSは、印刷物Sとして、排出口17から排出され、排出トレイ18により支持される。
【0040】
図1(B)に示すように、プリンタ部1は、内部空間31Aにおける前端付近に、タンク収容部52,53、3色タンク54、およびブラックタンク55を備える。
【0041】
[タンク収容部52,3色タンク54]
図1において、タンク収容部52は、内部空間31Dおよび排出トレイ18の右側に位置する。図1図3(B)において、タンク収容部52は、筐体ケース31の底壁311、前壁312および右壁313等と、上壁521とにより、タンク収容部52の内部空間52Aを外部から区画する。なお、図3(B)では、都合上、右壁313は図示されていない。上壁521は、平面視で略矩形形状であり、開口31Bにおいて右前壁312R、内壁317および右壁313の上端で区画される矩形部分を塞ぎ、水平面内で拡がっている。上壁521には、上壁521を上下に貫通する3つの開口522~524が形成されている。開口522~524は、等間隔をあけて左右に並んでいる。開口522~524の前後位置は概ね同じであり、それらの上下位置も概ね同じである。
【0042】
3色タンク54は、内部空間52A(図3(B)参照)に使用姿勢で据え置かれている。即ち、3色タンク54は、筐体ケース31内に位置する。3色タンク54やブラックタンク55が据え置かれるとは、それら自体がユーザによって交換されることが予定されておらず、3色タンク54やブラックタンク55が筐体ケース31に固定された状態を意味する。3色タンク54やブラックタンク55内のインクは、ユーザにより補充される。
【0043】
図3に示すように、3色タンク54は、タンク本体541~543(タンクの一例)と、キャップ544~546と、を備えている。タンク本体541,542,543は、この記載順で右から左に内部空間52A(図3(B)参照)内で並んでいる。
【0044】
[タンク本体541]
タンク本体541は、略直方体形状の箱体であり、複数の外壁により、内部空間541Aを外部から区画する。複数の外壁は、底壁5411、前壁5412、左壁5413、右壁5414、後壁5415、および上壁5416を含む。タンク本体541は、隔壁5417をさらに有している。
【0045】
タンク本体541の外壁および隔壁5417は、透明の樹脂材料(例えば、ポリプロピレン)で作製されている。タンク本体541の外壁および隔壁5417は、前壁312に形成された貫通孔31Fを通じて貯留室541B内のインクを外部から視認可能な程度の透光性を有する。タンク本体541は、樹脂材料の射出成型により一体成型されてもよいし、複数の部材が組み合わさって成型されてもよい。
【0046】
[貯留室541B,バッファ室541C]
隔壁5417は、図2および図3(A)に示すように、内部空間541Aにおいて底壁5411および上壁5416の間の上下位置で後壁5415から前方に向かって延出し、左壁5413および右壁5414の間で水平面内で拡がっている。隔壁5417により、内部空間541Aは、イエロのインクが貯留される貯留室541Bと、バッファ室541Cとに区画される。実施形態では、貯留室541Bは、隔壁5417より下方の空間であり、バッファ室541Cは、隔壁5417より上方の空間である。しかし、これに限らず、貯留室541Bは、バッファ室541Cより上方にあってもよい。
【0047】
隔壁5417は、前後方向8において、後壁5415と、前壁5412から後方に離れた位置との間で拡がっている。即ち、隔壁5417の前端(即ち、延出端)と、前壁5412との間は、ギャップになっている。このギャップは、貯留室541Bおよびバッファ室541Cを互いに連通する連通路5418をなす。
【0048】
バッファ室541C(より詳細には、後壁5415において隔壁5417より上方の位置)には、大気連通孔5419(図2参照)が形成されている。実施形態では、バッファ室541Cは、タンク本体541の外壁と、隔壁5417とにより区画された空間である。しかし、これに限らず、バッファ室541Cには、所謂ラビリンス構造をなすための隔壁(図示せず)により、細い大気連通路が形成されていてもよい。
【0049】
[注入口5420(注入口の一例)]
図2および図3に示すように、タンク本体541は、上壁5416において前端付近に、注入口5420を有する。注入口5420は、上壁5416から上下に突出する筒体である。注入口5420において上壁5416より下方の部分は、バッファ室541Cおよび連通路5418を通って、貯留室541Bに至る。注入口5420において上壁5416より上方の部分は、上壁521の開口524(図1(B)参照)を通って、上壁521より上方に突出する。即ち、注入口5420は、開口31Bに露出する。注入口5420の筒体には、上端から下端まで貫通する貫通孔が形成されている。即ち、注入口5420の上端には、上向きの開口が形成され、注入口5420の下端には、下向きの開口が形成されている。なお、図1(B)には、都合上、注入口5420等、タンク本体541の構成に参照符号を付していない。
【0050】
注入口5420は、タンク本体541のタンク収容部52への取り付けのガタつきやタンク本体541自体の弾性変形等により、タンク収容部52に対し少なくとも矢印B11(図3(B)参照)で示す前後方向8に若干動く。
【0051】
図2において、貯留室541Bの後壁5415において底壁5411付近には、貯留室541Bから記録ヘッド16へインクを供給するための流出口5421が形成されている。流出口5421には、イエロ用のインクチューブ561の一方端が接続されている。インクチューブ561の他方端は、記録ヘッド16に接続されている。貯留室541Bのインクは、インクチューブ561を介して記録ヘッド16に供給される。
【0052】
[キャップ544(キャップの一例)]
図3において、キャップ544は、ゴムなどの弾性体で作製され、注入口5420に上方から嵌合されることによって、注入口5420を液密に封止する。また、注入口5420のキャップ544は、ユーザにより上方へ引き上げられることによって、注入口5420から離脱可能である。
【0053】
図3(B)の一点鎖線の枠内に示すように、キャップ544は、大径面5441、小径面5442、円柱面5443、テーパ面5444、およびゴム部5445を有する。キャップ544において、大径面5441、小径面5442、円柱面5443、およびテーパ面5444で区画される部分は、アーム部材548と同じ硬質の樹脂材料で作製される。大径面5441および小径面5442の各々の平面形状は円形である。大径面5441の径は、小径面5442の径より大きい。大径面5441および小径面5442は、互いに平行であり、中心軸を共有する。キャップ544が閉位置P31にあるとき、大径面5441は下端面をなし、小径面5442は上端面をなす。円柱面5443は、大径面5441の外周から延出し、大径面5441および小径面5442の間の中間位置に至る。テーパ面5444は、円柱面5443の延出端と、小径面5442とを繋ぐ傾斜面である。ゴム部5445は、注入口5420の開口よりも僅かに大径の円柱形状であり、ゴム等の弾性体で作製される。ゴム部5445は、大径面5441と中心軸を共有するように、大径面5441から突出する。
【0054】
図3(B)において、上壁521において注入口5420から後方に離れた位置には、左右方向9に平行な回転軸A23を有する軸受547が設けられている。軸受547は、キャップ544を、閉位置P31(第2閉位置の一例)と、開位置P32(第2開位置の一例)とに、回転軸A11に平行な回転軸A23(第2軸の一例)の周方向θ23に移動可能に、アーム部材548を介して支持する。アーム部材548は、軸受547からキャップ544に至る細長い棒状形状である。アーム部材548は、キャップ544が開位置P32に位置するとき、その重さにより曲がらない程度の硬質な樹脂材料で作製される。閉位置P31は、ゴム部5445が注入口5420に完全に嵌入しきった時のキャップ544の位置である。開位置P32は、閉位置P31から周方向θ23に90°から100°程度回転した位置である。
【0055】
[筐体ケース31の貫通孔31F]
図1図3に示すように、筐体ケース31の前壁312において、タンク本体541の前壁5412と前方で対向する矩形領域には、前後に貫通するインク残量の確認用の貫通孔31Fが形成されている。貫通孔31Fには、透明な板状部材がはめ込まれていてもよい。ユーザは、貯留室541Bにおけるインクを貫通孔31Fを通じて視認し、インクの残量を確認する。
【0056】
[3色タンク54(その他)]
図3において、タンク本体542,543は、タンク本体541と比較すると、各々が設置される左右位置、および内部に貯留されるインクの色において相違する。キャップ545,546は、キャップ544と比較すると、各々が設置される左右位置が異なる点で相違する。そのため、タンク本体542,543、キャップ545,546の詳細な説明を控える。なお、例えば、タンク本体542はシアンのインクを、タンク本体543はマゼンタのインクを貯留する。図1において、筐体ケース31の前壁312には、前後に貫通するインク残量の確認用の貫通孔31G,31H(図1参照)が、タンク本体542,543(図3参照)の前壁と対向するように形成されている。
【0057】
[タンク収容部52,ブラックタンク55(タンクの一例)]
図1において、タンク収容部53は、タンク収容部53と比較すると、内部空間31Dや排出トレイ18の左側に位置する点と、1つのタンク(即ち、ブラックタンク55)が据え付けられる点とにおいて相違する。そのため、タンク収容部53の詳細な説明を控える。
【0058】
ブラックタンク55は、3色タンク54と比較すると、タンク本体541およびキャップ544と概ね左右対称な形状のタンク本体と、キャップと、を備えている点で相違する。ブラックタンク55は、ブラックのインクを貯留する点でも、3色タンク54と相違する。
【0059】
[当接部61,62]
図1において、プリンタ部1は、筐体カバー32の下壁322に設けられた当接部61,62をさらに備える。当接部61,62の各々は、下壁322と一体である。よって、当接部61,62の姿勢は、筐体カバー32の周方向θ11における位置に応じて変わる。
【0060】
当接部61は、下壁322における右前隅に位置する。図1図4(A)に示すように、当接部61は、下壁322の外表面に対し上方に凹んでいる。なお、図4では、実施形態の要部以外の構成(右壁325等)の図示を省略している。当接部61は、左右方向9において、キャップ544~546の全てに当接可能な寸法を有する。当接部61は、前後方向8において、キャップ544の前端から軸受547の後端までの範囲R12(図4(A)参照)より若干広い範囲を占める。
【0061】
当接部61は、第1当接面(第1当接部の一例)611および第2当接面(第2当接部の一例)612を有している。図4(A)において、第1当接面611は、軸受547の上方斜め後方で傾斜する平坦面である。第1当接面611は、下方から上方に向かうにつれて後方から前方に向かうように傾斜している。第2当接面612は、キャップ544の上方斜め前方で傾斜する平坦面である。第2当接面612は、下方から上方に向かうにつれて前方から後方に向かうように傾斜している。筐体カバー32が閉位置P11にあるとき、当接部61は、キャップ544、軸受547、およびアーム部材548等に上方から覆いかぶさるような姿勢(以下、「第1姿勢」とも称す)をとる。移動機構71の作用(詳細は後述)により、筐体カバー32が閉位置P11にあるとき、第2当接面612の下端は、キャップ544のテーパ面5444の前端より前方に位置する。
【0062】
実施形態では、当接部61の鉛直面に沿う断面形状は、当接部61の左端から右端までの範囲内で同じである。
【0063】
図4(A)において、ユーザは、インクをタンク本体541に補充する場合(以下、単に「インク補充」とも称す)、まず、閉位置P11の筐体カバー32に手を掛け、前壁324を上方に持ち上げる。これにより、筐体カバー32は、図4(B)に示すように、周方向θ11に回動し始め、開位置P12に至る。このような筐体カバー32の回動により、当接部61の姿勢は、第1姿勢から、閉位置P11および開位置P12の間の角度だけ周方向θ11に回動した第2姿勢へと変化する。
【0064】
次に、ユーザは、キャップ544に指を掛けて、キャップ544を注入口5420から取り外す。これにより、キャップ544は、図4に示すように、閉位置P31から開位置P32に周方向θ23に移動する。次に、ユーザは、インクボトル(図示せず)を注入口5420に挿通し、インクボトル内のインクを貯留室541Bに補充する。その後、ユーザは、インクボトルを注入口5420から抜去させる。
【0065】
インク補充が終わると、ユーザは、筐体カバー32の前壁324を手で支えつつ、前壁324に概ね下向きの力を加える。これにより、筐体カバー32は、図4(B)に示すように、周方向θ11において開位置P12から閉位置P11に向けて回動し始め、当接部61は、第2姿勢から第1姿勢へと戻り始める。
【0066】
図5(A)に示すように、筐体カバー32は、閉位置P11に移動する過程で、中間位置P13(中間位置の一例)に到達する。中間位置P13は、周方向θ11において、閉位置P11および開位置P12の間の位置である。筐体カバー32が中間位置P13に到達したとき、当接部61の第1当接面611の下端が、開位置P32のキャップ544におけるテーパ面5444の上端付近の部分(以下、「近位部」とも称す)に上方斜め後方から当接する。なお、上記に限らず、筐体カバー32が中間位置P13に到達したとき、第1当接面611の下端付近が近位部に当接してもよいし、第1当接面611の下端付近がキャップ544の上端付近に当接してもよい。
【0067】
筐体カバー32は、中間位置P13から閉位置P11に向けて周方向θ11に移動する。この間、第1当接面611は、前向きの成分を含む力をテーパ面5444の近位部に加える。これにより、第1当接面611は、キャップ544を、周方向θ23において開位置P32から閉位置P31に向けて移動させ始める。ここで、テーパ面5444の近位部は、キャップ544が開位置P544付近に位置する間、後方斜め上方を向いているため、キャップ544は、第1当接面611から加えられる力により前方に移動し易い。
【0068】
キャップ544が概ね前方に移動する過程で、キャップ544の重心が回転軸A23よりも前方に到達すると、キャップ544は、図5(B)に示すように、第1当接面611から離れ、自重により閉位置P31へと移動し始め、注入口5420に上方から当接する。キャップ544において、ゴム部5445は、注入口5420の開口より僅かに大径であるため、重力だけでは注入口5420に嵌入せずに、周方向θ23において閉位置P31より若干開位置P32寄りの中間位置P33で、注入口5420の開口に対し傾いた状態で停止する。
【0069】
キャップ544が筐体カバー32から離れた後も、筐体カバー32は、閉位置P11に向けて周方向θ11に移動する。図5(C)に示すように、筐体カバー32が閉位置P11付近の中間位置P14に到達したとき、当接部61の第2当接面612の下端は、注入口5420上のキャップ544におけるテーパ面5444の前端付近の部分(以下、「遠位部」とも称す)に概ね上方から当接する。遠位部は、キャップ544において上述の近位部よりも回転軸A11から離れた部分である。なお、上記に限らず、筐体カバー32が中間位置P14に到達したとき、第2当接面612の下端付近が遠位部に当接してもよいし、第2当接面612の下端付近がキャップ544の小径面5442の前端付近に当接してもよい。
【0070】
筐体カバー32は、第2当接面612が遠位部に当接した後も、閉位置P11に向けて移動する。この移動により、第2当接面612は、テーパ面5444に下向きの成分を含む力を加え続け、その結果、キャップ544のゴム部5445は注入口5420に圧入され、キャップ544は、図4(A)に示すように、閉位置P31に戻る。即ち、キャップ544においてゴム部5445は、弾性変形しつつタンク本体541の注入口5420に完全に嵌入する。実施形態では、キャップ544が閉位置P31に戻ったとき、筐体カバー32は閉位置P11に戻る。第2当接面612は、下壁322において回転軸A11から最も離れた位置付近に形成される。そのため、第2当接面612には大きなモーメントが発生し、テーパ面5444に大きな力を加えることができる。即ち、ユーザは、ゴム部5445を注入口5420に完全に嵌入させるために、筐体カバー32の前端に過度に大きな力を加えなくともよい。
【0071】
第2当接面612は、自身がキャップ544に当接してから筐体カバー32が閉位置P11に戻るまでの間、移動機構71により前方に移動させられる。移動機構71の詳細については後述する。
【0072】
上述のように、タンク本体542およびキャップ545の組み、およびタンク本体543およびキャップ546の組みは、タンク本体541およびキャップ544の組みから左方に平行移動した位置にある。即ち、タンク本体541~543の各注入口は、回転軸A11に平行な方向に沿って並んでいる。当接部61は、左右方向9において、キャップ544~546の全てに当接可能であり、当接部61の鉛直面に沿う断面形状は、当接部61の左端から右端までの範囲内で同じである。よって、キャップ545,546は、キャップ544と同様に、当接部61により、タンク本体542,543の注入口に完全に嵌入させることができる。
【0073】
当接部62は、図1に示すように、当接部61と比較すると、下壁322における左前隅に位置する点と、左右方向9において、ブラックタンク55のキャップに当接可能な寸法を有する点とにおいて相違する。ブラックタンク55のキャップは、キャップ544と同様に、当接部62により、ブラックタンク55の注入口に完全に嵌入させることができる。
【0074】
[移動機構71]
図1(B)において、プリンタ部1は、筐体カバー32および筐体ケース31に移動機構71をさらに備える。移動機構71は、ガイド部711、およびスライド部712を有する。
【0075】
図1(B)において、ガイド部711は、前後方向8において内壁315より前方に位置する。ガイド部711は、筐体ケース31の開口31Bの周縁から前方に突出している。ガイド部711は、左右方向9において内壁316,317の間に位置する。ガイド部711は、上下方向7において、筐体ケース31の上端と、筐体ケース31の上端および下端の間の位置との間に位置する。ガイド部711は、図1(B),図6(A)に示すように、傾斜面7111および前面7112を有している。傾斜面7111および前面7112はガイド面の一例である。
【0076】
図1(B),図6(A)において、傾斜面7111は、下記の上端位置から下端位置へと前方斜め下方へと拡がる矩形形状の平坦面である。傾斜面7111の上端は、上下方向7において内壁316,317の上端と同じ位置にあり、ガイド部711の上端でもある。傾斜面7111の上端は、前後方向8において、内壁315の前端と同じ位置にあり、前面7112よりも後方に位置する。なお、内壁316,317、左前壁312L、右前壁312R、および上壁521の各上端の上下位置は互いに同じである。内壁316,317、左前壁312L、右前壁312R、および上壁521の各前端の前後位置は互いに同じである。
【0077】
傾斜面7111の下端は、上下方向7において、内壁316,317の上端より下方に位置し、且つ内壁316,317の上端および排出トレイ18の上面の間において内壁316,317の上端寄りに位置する。傾斜面7111の下端は、前後方向8において、内壁316,317の前端より後方に位置し、傾斜面7111の上端よりも前方に位置する。
【0078】
前面7112は、傾斜面7111の下端から下方に延出し、左前壁312Lおよび右前壁312Rと平行に拡がる平坦面である。前面7112は、上下方向7において、排出トレイ18の上面より上方の位置まで延びる。前面7112の下端は、ガイド部711の下端でもある。
【0079】
スライド部712は、前壁324の中央部324Cの後下隅である。図7(A)に示すように、スライド部712は、筐体カバー32が開位置P12にあるとき、回転軸A11から距離D11だけ離間する。図6(A)において、スライド部712は、筐体カバー32が閉位置P11にあるとき、回転軸A11から距離D12だけ離間する。距離D11は、距離D12より若干長い。距離D12は、回転軸A11および前面7111の間の前後距離である。
【0080】
図6(A)において、筐体カバー32が閉位置P11にあるとき、スライド部712は、前面7112の前方に位置する。即ち、スライド部712は、前面7112と接触し、前面7112に係止されている。この時、筐体カバー32の取り付けのガタつきや連結具323の弾性変形等により、スライド部712は、回転軸A11から距離D12だけ前方に離れて位置し、第2当接面612の下端は、図4(A)に示すように、キャップ544のテーパ面5444の前端より前方に位置する。ここで、タンク本体541のタンク収容部52への取り付けのガタつきやタンク本体541自体の弾性変形等も、第2当接面612がテーパ面5444より前方に位置する要因である。
【0081】
インク補充のために、ユーザが、閉位置P11の筐体カバー32を持ち上げると、スライド部712はまず、前面7112によってガイドされつつ上方に移動する。スライド部712が上方に移動する間、筐体カバー32および第2当接面612は、スライド部712と平行移動する。
【0082】
スライド部712は、前面7112の上端を下方から上方へ超えた後、傾斜面7111によってガイドされつつ傾斜面7111に沿って、上方斜め後方に移動し始める。この間、連結具323やタンク本体541の弾性変形が元に戻り始め、スライド部712と回転軸A11との間の距離は、距離D12よりも短くなり始める。この間、第2当接面612の下端は、図4(A)に示すように、キャップ544のテーパ面5444上でガイドされつつテーパ面5444に沿って上方斜め後方に移動する。
【0083】
筐体カバー32が開位置P12に向けて周方向θ11に移動すると、スライド部712はやがて、図6(B)に示すように、傾斜面7111から概ね上方に離れる。その後、スライド部712および当接部61は、筐体カバー32とともに周方向θ11に移動する。スライド部712が傾斜面7111から離れている場合、スライド部712と回転軸A11との間の距離は、距離D11である。図7(A)において、筐体カバー32が開位置P12に到達すると、ユーザは、前述の通り、インクの補充、およびインクボトルの抜去を行う。
【0084】
次に、筐体カバー32は、図4(B)に示すように、ユーザ操作により、周方向θ11において開位置P12から閉位置P11に向けて回動し始め、当接部61は、第2姿勢から第1姿勢へと戻り始める。筐体カバー32は、閉位置P11に移動する過程で、中間位置P13を通過し(図5(A)参照)、その後、中間位置P14に到達する(図5(C)参照)。
【0085】
筐体カバー32が中間位置P14に到達したときに、スライド部712は、傾斜面7111に当接する。スライド部712が傾斜面7111に当接した後、図7(B)に示すように、傾斜面7111によってガイドされつつ傾斜面7111に沿って下方斜め前方に移動し始める。この間、連結具323やタンク本体541の弾性変形等し始める。これにより、スライド部712と回転軸A11との間の距離は、距離D11から延び始める。これに伴い、第2当接面612と回転軸A23との間の距離も変化し始める。即ち、移動機構71は、第2当接面612と回転軸A23との間の距離が変動する方向へと筐体カバー32を移動させている。
【0086】
スライド部712が傾斜面7111に当接した後、筐体カバー32が閉位置P11に向かう過程で、第2当接面612は、キャップ544のゴム部5445を注入口5420に嵌入させ始める(図5(C)参照)。即ち、この過程で、第2当接面612は、キャップ544を中間位置P33から閉位置P31へと周方向θ23に回動させる。第2当接面612は、スライド部712が回転軸A11から離れる向きに移動するため、キャップ544のテーパ面5444を下方に押圧しつつ、テーパ面5444に沿って回転軸A11から離れる向きに移動する。
【0087】
図6(A)と同様に、スライド部712は、前面7112の上端を上方から下方へ超えた後、筐体カバー32が閉位置P11に到達するまで、前面7112に沿って下方に移動する。即ち、移動機構71は、筐体カバー32を閉位置P11に移動させるものである。この間、筐体カバー32および第2当接面612は、スライド部712の下方への移動と同様に下方に移動する。これにより、キャップ544は、弾性変形しつつタンク本体541の注入口5420に完全に嵌入する。
【0088】
他の色のインクを他のタンク本体に補充する際の移動機構71の動作については、上述と同様であるため、それぞれの説明を控える。
【0089】
[当接部61,62および移動機構71の作用効果]
プリンタ部1によれば、移動機構71は、スライド部712が傾斜面7111に当接した後、筐体カバー32が閉位置P11に向かう過程で、当接部61をキャップ544に対し前方斜め下方と移動させる。即ち、当接部61は、回転軸A23から離れる向きへと移動させられる。そのため、当接部61において第2当接面612は、筐体カバー32が閉位置P11に戻る際に、キャップ544と干渉しない。これにより、キャップ544をタンク本体541の注入口5420に当接部61により嵌入させつつ、筐体カバー32を閉位置P11へと円滑に回動させることができる。その結果、筐体カバー32が筐体ケース31を完全に閉じる。
【0090】
当接部61において、第1当接面611はキャップ544の近位部に当接することで、キャップ544を開位置P32から中間位置P33へと簡単かつ円滑に回動させることができる。また、第2当接面612はキャップ544の遠位部に当接するため、当接部61をキャップ544に対し前方斜め下方へと移動させ易い。もし、第2当接面612が遠位部よりも回転軸A23寄りの部分に当接させると、当接部61をキャップ544に対し下方に移動させるには前方へと長い距離移動させる必要が生じる。
【0091】
移動機構71は、モータ等の電動部品やギヤやカム等の機械要素を必要とせずに簡単な構成で、筐体カバー32の周方向θ11への回動により、当接部61をキャップ544に対して前方斜め下方に移動させることができる。
【0092】
開位置P32は、閉位置P31から周方向θ23に90°から100°程度回転した位置である。そのため、キャップ544は、小さな外力で、開位置P32から閉位置P31へと倒れさせることができる。
【0093】
[変形例]
以下、実施形態の変形例として、第1変形例および第2変形例を説明する。各変形例の説明では、実施形態との相違点について説明する。実施形態との共通点については、説明を省略または簡素化する。
【0094】
実施形態では、当接部61,62は、下壁322の外表面に対し上方に凹んでいた。しかし、これに限らず、第1変形例において、当接部61,62は、図8(A)に示すように、下壁322の外表面から突出していてもよい。
【0095】
第1変形例では、当接部61は、左右方向9において、キャップ544~546の全てに当接可能な寸法を有していた。しかし、これに限らず、第2変形例では、図8(B)に示すように、当接部61は、左右方向9において、キャップ544~546に個別に当接可能な寸法を有していてもよい。この場合、プリンタ部1は、複数のタンク本体541~543の各々に対応して、左右方向9に並ぶ3つの当接部61を備える。右端の当接部61は、キャップ544に当接する第1当接面611および第2当接面612を有する。左端の当接部61は、キャップ546に当接する第1当接面611および第2当接面612を有する。中間の当接部61は、キャップ545に当接する第1当接面611および第2当接面612を有する。
【0096】
[その他の変形例]
実施形態では、ブラックタンク55のタンク本体は、タンク本体541と左右対称な形状であると説明した。しかし、これに限らず、ブラックタンク55のタンク本体は、タンク本体541と左右非対称な形状でもよい。例えば、ブラックタンク55は、タンク本体541より大容量であってもよい。
【0097】
実施形態では、プリンタ部1は、2つのタンク、即ち、3色タンク54およびブラックタンク55を備えていた。しかし、プリンタ部1は、例えばブラックタンク55のみ等、少なくとも1つのタンクを備えていればよい。
【0098】
実施形態では、3色タンク54およびブラックタンク55は、筐体ケース31の左右両側に分けてレイアウトされていた。しかし、これに限らず、3色タンク54およびブラックタンク55が左右に隣り合うようにレイアウトされてもよい。
【0099】
実施形態では、3色タンク54およびブラックタンク55には、インクが貯留されていた。しかし、これに限らず、3色タンク54およびブラックタンク55の少なくとも一方が、前処理液や水を貯留してもよい。前処理液は、例えば、インクによる画像記録に先立ちシートSに吐出され、インク中の成分を凝集または析出させる処理液である。
【0100】
実施形態では、スライド部712が傾斜面7111に当接したことに応じて、第2当接面612がキャップ544を中間位置P33から閉位置P31へと嵌入させ始めていた。しかし、これに限らず、スライド部712が傾斜面7111に当接する時点で、第2当接面612は、キャップ544を閉位置P31に嵌入させ終わっていてもよい。
【0101】
実施形態では、筐体カバー32を前後に移動させるために、連結具323の弾性変形や筐体カバー32の取り付けのガタつきが利用されていた。しかし、連結具323に代えて、筐体カバー32は、回転軸および軸受により筐体ケース31に対して回動可能であってもよい。筐体カバー32が前後に移動させるため、軸受けは、回転軸の径より大きな軸孔(例えば長円形の軸孔)により、回転軸を支持する。回転軸は、バネなどの付勢部材により後方に付勢されてもよい。
【0102】
実施形態では、移動機構71は、筐体3の前寄りに位置していた。しかし、これに限らず、移動機構71は、筐体ケース31において右壁313や左壁314の上端にレイアウトされてもよい。
【0103】
実施形態では、筐体カバー32にスライド部712が設けられ、筐体ケース31にガイド部711が設けられていた。しかし、これに限らず、筐体カバー32にガイド部711が設けられ、筐体ケース31にスライド部712が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0104】
100・・・複合機
1・・・プリンタ部(液体貯留装置)
3・・・筐体
31・・・筐体ケース(ケース)
31B・・・開口
32・・・筐体カバー(カバー)
P11・・・閉位置(第1閉位置)
P12・・・開位置(第1開位置)
P13・・・中間位置
A11・・・回転軸(第1軸)
54・・・3色タンク
541,542,543・・・タンク本体(タンク)
5420・・・注入口
55・・・ブラックタンク(タンク)
544,545,546・・・キャップ
P31・・・閉位置(第2閉位置)
P32・・・開位置(第2開位置)
P33・・・中間位置
A23・・・回転軸(第2軸)
61,62・・・当接部
611・・・第1当接面(第1当接部)
612・・・第2当接面(第2当接部)
71・・・移動機構
711・・・ガイド部
7111・・・傾斜面(ガイド面)
7112・・・前面(ガイド面)
712・・・スライド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8