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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169987
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】吐出ポンプ及びポンプ容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20221102BHJP
   B05B 11/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B05B11/00 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075773
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和寿
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB02
3E084BA02
3E084CA01
3E084CB02
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084GB07
3E084KB01
3E084LB02
3E084LB07
3E084LC01
3E084LD22
(57)【要約】
【課題】簡易に操作することができ、且つ、押下操作部を衛生的に保持することが容易な吐出ポンプ及びポンプ容器を提供する。
【解決手段】内容物を収容する容器本体10の口部11に装着される装着部20と、装着部20に対して軸方向に押下可能に設けられる押下ヘッド40と、押下ヘッド40の押下動作に伴い作動するポンプ機構50と、ポンプ機構50により送出された内容物を吐出するための吐出口31を有する吐出口部30と、吐出口部30を、吐出口31が口部11と同軸方向の第一の向きと、軸方向に交差する方向の第二の向きとに変位可能に押下ヘッド40に保持する回動保持部70と、押下ヘッド40を押下可能な範囲を第一の向きと第二の向きで異なる量に規制する規制部74とを備える吐出ポンプ100aと、当該吐出ポンプ100aを備えたポンプ容器100とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器本体の口部に装着される装着部と、
前記装着部に対して、前記口部の軸方向に沿って押下可能に設けられる押下ヘッドと、
前記押下ヘッドの押下動作に伴い前記容器本体内の内容物を送出するポンプ機構と、
前記ポンプ機構により送出された前記内容物を吐出するための吐出口を有する吐出口部と、
前記吐出口部を、前記吐出口が前記口部と同軸方向を向く第一の向きと、前記軸方向に交差する方向を向く第二の向きとに変位可能に押下ヘッドに保持する保持部と、
前記押下ヘッドを前記軸方向に沿って押下可能な範囲を前記第一の向きと前記第二の向きで異なる量に規制する規制部と、
を備えることを特徴とする吐出ポンプ。
【請求項2】
前記吐出口と同軸となるように配置される開口を有し、前記吐出口に対して所定の距離離間するように配置される開口枠を備え、
当該開口枠は前記保持部に対して前記吐出口と共に前記第一の向きと前記第二の向きとに変位可能に保持されており、
前記吐出口から吐出された前記内容物が前記開口枠の内側を通過して外部に吐出されるよう構成された請求項1に記載の吐出ポンプ。
【請求項3】
前記吐出口部は、前記吐出口を有する吐出筒、及び、前記吐出筒に連通する回動筒を有し、
前記押下ヘッドは、前記回動筒を回動可能に保持する回動筒保持部と、
前記ポンプ機構と前記回動筒とに連通する流路部とを有する請求項1又は請求項2に記載の吐出ポンプ。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の吐出ポンプと、前記容器本体とを備えたことを特徴とする吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体内に収容された内容物をポンプ機構により吐出する吐出ポンプ及びポンプ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、感染症予防又は感染症拡大対策として、手指の消毒が求められている。例えば、事業所、店舗、病院、公共施設等、各種施設の入口には消毒用アルコール等の消毒液が配置され、来訪者に手指の消毒を促している。消毒液は、例えば、特許文献1に開示されるような吐出ポンプを備えたポンプ容器に収容される。当該吐出ポンプは、内容物が吐出されるノズルを有するノズルヘッドと、ポンプ機構とを有し、ノズルヘッドを手のひらなどで押下するといった簡易な操作で、ポンプ機構が作動し、容器本体に収容された内容物が吸引されて所定量の消毒液がノズルから吐出させるように構成されている。
【0003】
また、これらの施設ではドアノブや手すりなどの手指が触れる箇所の定期的な消毒、除菌が求められる。さらに、飲食店等ではテーブル等の消毒、除菌が求められる。そのような場合に、例えば、ペーパータオル等に容器から吐出された消毒液を簡易に染み込ませることができるハンドラップ容器や、消毒箇所等に消毒液を直接噴出させるなどスプレー容器等が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-81592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように現時点では用途に応じて、形態の異なる容器に収容された消毒液を複数用意する必要がある。そのため、一つでこれらの種々の用途に適用可能な容器があると好ましい。しかしながら、手指の消毒に要する消毒液量や消毒液の吐出の向きと、テーブル等の消毒等に要する消毒液量や消毒液の吐出の向きとは異なる。従って、種々の用途に応じた適量の消毒液を、用途に応じた向きに吐出することができるなど、用途に応じた使用方法に簡易に切り替えることができると好ましい。
【0006】
そこで、本発明の課題は、用途に応じて種々の使用方法で適量の内容物を吐出させることができ、操作性が良好な吐出ポンプ及びポンプ容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る吐出ポンプは、内容物を収容する容器本体の口部に装着される装着部と、前記装着部に対して、前記口部の軸方向に沿って押下可能に設けられる押下ヘッドと、前記押下ヘッドの押下動作に伴い前記容器本体内の内容物を送出するポンプ機構と、前記ポンプ機構により送出された前記内容物を吐出するための吐出口を有する吐出口部と、前記吐出口部を前記押下ヘッドに対して回動可能に保持し、前記吐出口の向きを前記口部と同軸となる第一の向きと、前記軸方向に交差する向きとなる第二の向きとに変位させる保持部と、前記押下ヘッドを前記軸方向に沿って押下可能な範囲を前記第一の向きと前記第二の向きで異なる量に規制する規制部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る吐出ポンプにおいて、前記吐出口と同軸となるように配置される開口を有し、前記吐出口に対して所定の距離離間するように配置される開口枠を備え、当該開口枠は前記保持部に対して前記吐出口と共に前記第一の向きと前記第二の向きとに変位可能に保持されており、前記第一の向き及び前記第二の向きのそれぞれの位置で前記内容物が前記開口枠の内側を通過して外部に吐出されるよう構成されることも好ましい。
【0009】
本発明に係る吐出ポンプにおいて、前記吐出口部は、前記吐出口を有する吐出筒、及び、前記吐出筒に連通する回動筒を有し、前記押下ヘッドは、前記回動筒を回動可能に保持する回動筒保持部と、前記ポンプ機構と前記回動筒とに連通する流路部とを有するよう構成されることも好ましい。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る吐出容器は、上記吐出ポンプと、上記容器本体とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る吐出ポンプは、吐出口が口部と同軸方向を向く第一の向きと、軸方向に交差する方向を向く第二の向きとに変位可能に吐出口部を押下ヘッドに保持する保持部と、押下ヘッドを軸方向に沿って押下可能な範囲を前記第一の向きと前記第二の向きで異なる量に規制する規制部とを備えている。そのため、吐出口を第一の向きを向くように吐出口部を変位すれば第一の向きに対応付けられた吐出量で内容液が吐出され、吐出口を第二の向きを向くように吐出口部を変位すれば第二の向きに対応付けられた、第一の向きとは異なる量の吐出量で内容液が吐出される。吐出口の向き及び吐出量は、保持部により吐出口部を変位させることで容易に切り替えることができる。これらのことから、本発明によれば、用途に応じて種々の使用方法で適量の内容物を吐出させることができ、操作性が良好な吐出ポンプ及びポンプ容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態の吐出ポンプを備えたポンプ容器の一部断面図である。
図2図1のポンプ容器の上面図(a)及び一部拡大図(b)である。
図3図1に示すポンプ容器において、第一の向きにおいて規制部が装着部に当接した状態を示す図である。
図4図1に示すポンプ容器の第一の向きにおける使用形態を説明するための図である。
図5図1に示すポンプ容器の第二の向きにおける使用形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る吐出ポンプ及びポンプ容器の実施の形態を説明する。
図1は本実施の形態の吐出ポンプ100aの一部断面図である。図1に示すように、ポンプ容器100は、容器本体10と、容器本体10の口部11に装着される吐出ポンプ100aとを備えている。本実施の形態では容器本体10に内容物として消毒用アルコールや消毒用の次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の消毒液が収容される場合を想定して説明する。しかしながら、本発明においてポンプ容器の容器本体には消毒液に限らず各種液体を収容することができる。
【0014】
吐出ポンプ100aは、容器本体10の口部11に装着される装着部20と、内容物を外部に吐出するため吐出口31を有する吐出口部30と、口部11の軸方向に沿って容器本体10側に押下可能に装着部20に設けられる押下ヘッド40と、押下ヘッド40の押下動作に伴い作動するポンプ機構50と、開口枠61を有する吐出カバー60と、吐出口31及び開口枠61が第一の向き(図1図3図4)と、第二の向き(図5参照)とに変位するように、吐出口部30及び吐出カバー60を押下ヘッド40に回動可能に保持する回動保持部70(保持部)とを備えている。ここで、第一の向きでは吐出口31は口部11と同軸方向を向き、第二の向きでは吐出口31は口部11と軸方向に交差する方向を向く。また、本実施の形態では、軸方向に交差する向きは軸方向に略直交する向きを意味するものとする。本実施の形態のポンプ容器100では吐出口31及び開口枠61が第一の向き及び第二の向きに位置するとき、それぞれの位置に応じた量の内容物が吐出口31から吐出されるよう構成されている。
【0015】
以下、各部の具体的な構成を説明する。なお、以下において、「上」、「下」は相対的な位置関係を示すものであり、容器本体10を図1に示す正立姿勢に配置した状態で、吐出ポンプ100aを容器本体10の口部11に装着したときに、容器本体10が位置する側を「下」、押下ヘッド40が位置する側を「上」と称するものとする。また、「軸方向」とは、容器本体10の口部11の中心軸Oの軸方向を意味する。また、中心軸Oに対して直交する方向を径方向といい、中心軸O周りに周回する方向を周方向という。
【0016】
容器本体10は、図1に示すように、底部12、胴部13、肩部14及び上記口部11を備え、これらは一体に構成されている。図示例では、胴部13は底部12から肩部14に向かって徐々に縮径されている。口部11は胴部13よりも小径であり、肩部14により、口部11と胴部13とが連設されている。口部11の外周面には雄ねじ11aが設けられている。
【0017】
装着部20は、口部11に着脱可能に装着されるキャップ部21と、キャップ部21の外側を被覆する外筒22とを備え、これらは中心軸Oと同軸に配設されている。キャップ部21はその内周面に雌ねじ21aを備え、この雌ねじ21aが上記口部11に設けられた雄ねじ11aに螺合する。キャップ部21の天壁面は環状を呈し、その中央部分はポンプ機構50のステム52等が挿入される挿通孔21bとなっている。キャップ部21の天壁面により口部11の上端開口縁が被覆される。
【0018】
外筒22は全体が略筒状に形成されており、軸方向下方から上方に向けて順に下部外筒22aと、連設部22bと、上部外筒22cとを備えている。下部外筒22aは、キャップ部21の外周面の外側を被覆する。連設部22bは下部外筒22aと上部外筒22cとを連設する。また、連設部22bの内側においてキャップ部21が連設されている。上部外筒22cの上端はキャップ部21の天壁面よりも上方に配置される。上部外筒22cに対して押下ヘッド40が軸方向に沿って上下に移動可能に挿入される。
【0019】
吐出口部30は、液体を霧状にして吐出口31から吐出するスプレーノズルとして構成されている。本実施の形態では、吐出口部30は、吐出口31を有する吐出筒32と、吐出筒32に連通する回動筒33と、回動筒33に隔壁34を介して連設される摺動軸部35とを備えている。
【0020】
図1及び図2(b)に示すように吐出筒32の中心軸と回動筒33の中心軸とは略直交している。吐出筒32の下端は回動筒33と連通し、吐出筒32と回動筒33とにより、図2(b)において矢印e及び矢印fで示すように略L字状の流路を構成している。回動筒33の下流端側は拡径されており、後述する流路部45(図1)の上流路部(矢印dで示す流路(図2(b)))が内挿されている。回動筒33と摺動軸部35とは同軸に口部11の径方向に並んで配置されている。そのため、回動筒33及び摺動軸部35と、吐出筒32とによって、T字管のような外観を呈する。
【0021】
回動筒33は押下ヘッド40内において、回動筒33の中心軸を回動軸として回動可能に配置される。吐出口31の向きが第一の向きとなるように吐出筒32が配置されているときに吐出筒32を傾倒させると、押下ヘッド40内で回動筒33が回動し、吐出口31の向きが第二の向きに変位する。その逆も同様であり、吐出口31の向きが第二の向きとなるように吐出筒32が配置されているときに、吐出筒32をその下端を回動中心として押し上げられると、回動筒33が回動し、吐出口31の向きが第一の向きに変位する。このように回動筒33は、押下ヘッド40に設けられる回動筒支持部44により、回動可能に下方から支持される。なお、図4及び図5に示すように、摺動軸部35は、押下ヘッド40の天壁部43bから垂設される摺動軸保持部47に挟まれて、摺動軸保持部47内で回動可能に保持される。すなわち、回動筒支持部44及び摺動軸保持部47により本発明にいう回動筒保持部が構成される。
【0022】
押下ヘッド40は、図1に示すように、軸方向下方から上方に向けて順に、保持台座部41と、下部ヘッド部42と、上部ヘッド部43と、上記回動筒支持部44と、流路部45と、嵌挿筒46と、上記摺動軸保持部47とを備えている。
【0023】
保持台座部41は下部ヘッド部42の内側に収容保持されると共に、ポンプ機構50のステム52等を保持する。保持台座部41の天壁面には、厚み方向に貫通するように嵌挿筒46が挿通されている。嵌挿筒46の下端側はステム52の内側に嵌挿されており、ステム52内の流路と連通している。また、嵌挿筒46の上端側は流路部45に連通している。
【0024】
下部ヘッド部42は短筒状に形成されている。下部ヘッド部42は保持台座部41を内側に収容保持した状態で、装着部20の外筒22内を軸方向上下に移動可能に構成されている。
【0025】
上部ヘッド部43は、角筒状の周壁部43aと、周壁部43aの上部を覆う天壁部43bとを備えている。図4及び図5に示すように、天壁部43bにおいて中心軸Oと交差する位置から周壁部43aに向かって、案内溝孔43cが形成されている。この案内溝孔43cに、吐出口部30の吐出筒32が挿入される。また、天壁部43bには、案内溝孔43cの溝端部分から上方に立設された立設壁43dが設けられている。吐出口31が第一の向きを向くように吐出口部30が配置されたとき、吐出口部30の吐出筒32と立設壁43dとは当接し、立設壁43dの上端と回動保持部70の天壁面71の下面とが当接している(図4参照)。また、周壁部43aには、図1に示す正面視においてその両側方に径方向外側に突出する一対の回動軸部43eが設けられている。この回動軸部43eは回動保持部70の側面部72に形成された軸受孔72aに挿入される。
【0026】
回動筒支持部44は、保持台座部41に連設される。回動筒支持部44は回動筒33及び摺動軸部35がこの回動筒支持部44により、回動筒33の中心軸を回転軸として回動可能に支持される。回動筒支持部44に支持されることで、吐出口部30は押下ヘッド40の軸方向の移動に伴って軸方向に移動する。
【0027】
流路部45は、嵌挿筒46の上端に連通する下流路部(図2(b)において矢印bで表す流路を構成する部分)と、回動筒33に連通する上流路部(図2(b)において矢印dで表す流路を構成する部分)と、下流路部(矢印b)と上流路部(矢印d)とを接続する中流路部(図2(b)において矢印cで表す流路を構成する部分)とを有する。下流路部(矢印b)及び上流路部(矢印d)は、軸方向に略直交する方向の流路を形成し、中流路部(矢印c)は軸方向と同じ方向の流路を形成する。すなわち、流路部45はこれらによって略コ字状の流路を形成する。上述のとおり、上流路部(矢印d)は回動筒33に内挿されており、上流路部と回動筒33との流路は連通している。つまり、コ字状の流路部45の上流端に、L字状の流路を有する吐出口部30の下流端(回動筒33の下流端)が接続されている。当該構成を採用することで、吐出口部30は流路部45に対して回動可能に接続される。
【0028】
摺動軸保持部47は、上部ヘッド部43の天壁部43bの下面から1対垂設され、摺動軸保持部47の外周面を挟み込むようにして、摺動軸部35を回動可能に保持する。
【0029】
次に、ポンプ機構50について説明する。ポンプ機構50は、図1に示すように、シリンダ51、ステム52、コイルスプリング53等を備え、シリンダ51内には図示しないピストンなどが配置される。但し、ポンプ機構50の構成は特に限定されるものではなく、従来公知のもの含め、押下ヘッド40の押下動作に伴って容器本体10内の内容物を吐出口部30側に送出することができるものであれば、どのような構成であってもよい。
【0030】
図示したポンプ機構50の構成は概略次のようになっている。シリンダ51は口部11から容器本体10の内側に垂下されている。シリンダ51の下端開口には下方に向けて延びる取付筒51aが配設されている。取付筒51aには容器本体10に収容された内容物を吸い上げるための吸上筒51bが挿嵌されている。ステム52はコイルスプリング53により上方付勢された状態で軸方向に上下に移動可能に配設される。コイルスプリング53は、内側にステム52が挿入されている。コイルスプリング53は、ステム52を上方付勢状態で下方移動可能に支持する。コイルスプリング53の下端部は、シリンダ51の上端部内に挿入されている。また、コイルスプリング53の上端部は、ステム52の上部に配設された挟持部54に挟持されている。
【0031】
吐出カバー60は、上記開口枠61と、開口枠61を回動保持部70に対して所定の距離離間するように支持する支持部62とを備えている。吐出口31が第一の向きとなるように吐出口部30が配置されているとき(図1)、吐出カバー60に手を当てるなどして、吐出カバー60を軸方向下方に押下することで、押下ヘッド40を軸方向下方に押下することができる。
【0032】
開口枠61は、図2(a)に示すように、上面視においてリング状を呈する。開口枠61の中心部には吐出口31と同心円状の開口61aを有する。また、正面視(図1等)及び側面視(図4図5)において開口枠61は平板状ではなく波形状に上方に突出する凸部61bを複数有している。
【0033】
開口枠61の材料は、ポリプロピレン樹脂(PP)、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂(POM(ポリオキシメチレン樹脂))、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)などを好適に用いることができる。これら列挙した各樹脂は強度が高いため、開口枠61(及び吐出カバー60全体)をこれらの樹脂で形成することにより、開口枠61を使用時の繰り返しの押下操作に耐える耐久性を付与することができる。
【0034】
支持部62は、図2(a)に示すように、本実施の形態では4本の板状部材62aから構成されている。各板状部材62aの下端は回動保持部70の側面部72に取り付けられ、上端は開口枠61に取り付けられている。また、図1及び図2(a)に示すように、各板状部材62aは2本ずつ側面部72に取り付けられており、回動保持部70の前面側と背面部73側において、互いに隣接する板状部材62aの間が大きく開口するようになっている。吐出口31及び開口枠61が第二の向きを向くとき、この板状部材62aの間の開口は軸方向上下に位置する。第二の向きでは、吐出口31から吐出された内容物をこの板状部材62aの間の開口から吐出カバー60の外部に吐出されるようにしてもよい(図5参照)。
【0035】
回動保持部70は、図1及び図2(a)に示すように、吐出口部30が挿入される挿入孔71aを有する天壁面71と、天壁面71から垂設される側面部72と、両側面部72の間に設けられる背面部73とを備え、前面部分は開口している。
【0036】
図1に示すように、側面部72には上記軸受孔72aが設けられている。上述のとおり軸受孔72aには回動軸部43eが挿入されている。回動保持部70はこの回動軸部43eを回動中心として、図1に示す第一の向きに対応する向きから図5に示す第二の向きまで略90度回動可能に上部ヘッド部43に取り付けられている。また、図5に示すように、回動保持部70が第二の向きに対応する向きまで回動したとき、天壁面71の端部が下部ヘッド部42の天壁面に当接し、それ以上の回動が規制される。また、第二の向きにおいて、背面部73は口部11の軸方向上方に配置される。また、背面部73は、第二の向きにおいて、上部ヘッド部43の天壁部43bの全面を覆うことができる程度の面積を有する。さらに、第二の向きでは、立設壁43dの上端と天壁面71との間は離間している。
【0037】
回動保持部70には、さらに、押下ヘッド40の押下可能な範囲を第一の向きと第二の向きで異なる量に規制する規制部74が設けられている。図1及び図2(a)に示すように、規制部74は側面部72の下端から径方向に突出する当接片として形成されている。本実施の形態では、押下ヘッド40は装着部20の上部外筒22c内を軸方向に移動可能に設けられている。規制部74は、吐出口31及び開口枠61が第一の向きであるとき、回動保持部70が軸方向下方に移動すると装着部20の上部外筒22cの上端に当接し、押下ヘッド40の軸方向下方へのそれ以上の移動を規制する(図3図4参照)。
【0038】
一方、規制部74は側面部72に設けられているため、回動保持部70が第一の向きに対応する向きから第二の向きに対応する向きに回動すると、規制部74の位置も略90°回動する。そのため、第二の向きでは、規制部74の位置は第一の向きよりも上方に移動する。また、その際、規制部74は上部外筒22cの内側に位置し、上部外筒22cとは干渉しない位置となる(図5参照)。第二の向きにおける押下ヘッド40の押下可能量(最大ストローク量S1)は、押下ヘッド40に対して軸方向下方への力が負荷されていない状態から、下部ヘッド部42の下端がキャップ部21の天面に当接するまでに押下ヘッド40が軸方向へ移動する距離で表される。
【0039】
これに対して、規制部74を回動保持部70の側面部72の下端に設けることで、第一の向きでは、図3及び図4に示すように、押下ヘッド40が第二の向きにおける最大ストローク量S1に達する前に、規制部74が上部外筒22cの上端に当接する。そのため、第一の向きにおける押下ヘッド40の最大ストローク量S2は第二の向きと比べると短くなる。ポンプ機構50により送出される内容物量は押下ヘッド40の押下量によって変化する。規制部74を回動保持部70に設け、第二の向きでは規制部74の位置を上方及び/又は上部外筒22cと干渉しない位置へ移動させることで、押下ヘッド40の最大ストローク量を変化させて、第一の向き及び第二の向きにおいて異なる量の内容物を吐出させることができる。
【0040】
次に、図1図5を参照して当該吐出ポンプ100aの動作を説明する。なお、図4及び図5は容器本体10の表示及び一部の符号を省略している。
【0041】
(第一の向き)
図4を参照して、吐出口31及び開口枠61が第一の向きとなるように吐出口部30及び吐出カバー60が配置されたときの、吐出ポンプ100aによる吐出動作について説明する。
【0042】
第一の向きでは、開口枠61(吐出カバー60)が第一の押下操作部として機能する。手のひら等を開口枠61に当てて、開口枠61を軸方向に押下すると、図4(a)に示すように、支持部62を介して回動保持部70に負荷された力は天壁面71に当接する立設壁43dの上端を介して押下ヘッド40に伝達される。その結果、押下ヘッド40が軸方向下方に移動する。その状態を示したのが図3及び図4(b)である。
【0043】
押下ヘッド40が移動すると、ステム52が軸方向下方に移動し、ポンプ機構50が作動する。ポンプ機構50により吸い上げられた内容物はステム52、嵌挿筒46(矢印a)により軸方向上方に送出される(図2(b)参照)。そして、内容物は嵌挿筒46の上端から軸方向に交差する下流路部(矢印b)に流入し、中流路部(矢印c)、上流路部(矢印d)の順に、流路部45内におけるコ字状の流路を通過して、回動筒33(矢印e)側に流入する。回動筒33に流入した内容物は吐出筒32(矢印f)内を吐出口31に向かって軸方向上方に送出される。
【0044】
吐出口31と開口枠61とは同軸に配置されている。また、ポンプ機構50により所定の勢いが付与された状態で内容物が吐出口31から吐出される。そのため、内容物は吐出口31から吐出されたときよりも拡径しながら上方に向かって噴霧される。そして、噴霧された内容物は開口枠61の開口61aの内側を通過しつつ、開口枠61の上方(外部)に吐出され、開口枠61を押下した手のひら等に内容物が付着する。このとき、規制部74により押下ヘッド40の最大ストローク量は上述のとおりS2に規定されている。従って、手のひら等に付着する内容物は第一の向きにおける最大ストローク量S2に応じた量となる。
【0045】
(第二の向き)
次に、図5を参照して、吐出口31及び開口枠61が第二の向きとなるように吐出口部30及び吐出カバー60が配置されたときの、吐出ポンプ100aによる吐出動作について説明する。
【0046】
第二の向きでは、背面部73が第二の押下操作部として機能する。例えば、指等で背面部73を軸方向に押下すると、天壁面71の端部が下部ヘッド部42の天壁面に当接しているため、回動保持部70に負荷された力は下部ヘッド部42を介して押下ヘッド40に伝達される。その結果、押下ヘッド40が押し下げられる。押下ヘッド40が押し下げられると、第一の向きの場合と同様に、容器本体10内から内容物がポンプ機構50により吐出口部30側に送出されて、吐出口31から吐出される。吐出口31は軸方向に交差する方向を向いているため、内容物も当該方向に吐出される。
【0047】
第二の向きでは、吐出口31と開口枠61との間の距離や、内容物が吐出される際の勢いを調整することで、吐出口31から吐出された内容物が開口枠61の内側を通過して、吐出カバー60の外部に吐出されるようにすることもできるし、吐出された内容物の一部又は全てが板状部材62aの間の開口から吐出カバー60の外部に吐出させるようにすることができる。また、上述のとおり、第二の向きでは、規制部74は上部外筒22cとは干渉しない位置に移動している。そのため、押下ヘッド40の最大ストローク量は上述のとおりS1に規定されている。従って、第二の向きでは、第一の向きにおける吐出量よりも多く内容物を吐出することができる。
【0048】
(切替動作)
次に、吐出口31及び開口枠61の向き及び内容物の吐出量の切替動作について説明する。本実施の形態のポンプ容器100では、押下ヘッド40に対して回動保持部70が回動軸部43eを回動中心として回動可能に保持されている。従って、開口枠61が第一の向きとなるように吐出カバー60が配置されているとき、開口枠61を指等により押して吐出カバー60を前側に傾倒させると、回動保持部70が回動軸部43eを回動中心として回動する。このとき、吐出口部30は回動保持部70の天壁面71に設けられた挿入孔71aに挿入されているため、吐出筒32の外周面が挿入孔71aの内面に押されて、吐出カバー60と共に吐出口部30が回動する。また、規制部74は回動保持部70の側面部72に設けられているため、回動保持部70と共に回動し上部外筒22cと干渉しない位置に移動する。このように開口枠61を指等で押すなどの動作により、吐出カバー60を傾倒させることで、吐出口31の向き及び押下ヘッド40の最大ストローク量を簡易に切り替えることができる。
【0049】
以上説明した本実施の形態の吐出ポンプ100aによれば、吐出カバー60を第一の向きになるように配置した場合、開口枠61を使用者の手のひら等で容器本体10側に押下するという簡易な動作で、手のひら等に内容物を付着させることができる。また、手のひら等に付着しなかった余剰の内容物は開口枠61等に落下する。よって、内容物として消毒液等を収容すれば、使用の都度、吐出カバー60側には消毒液が落下し、吐出カバー60を衛生的に保持することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、開口枠61を回動保持部70に対して支持する支持部62が4本の板状部材62aから構成されており、各板状部材62aの間は開口している。そのため、吐出口31から吐出された内容物が吐出カバー60内に貯留することがない。従って、開口枠61を押下した際に手のひら側から落下した内容物が吐出カバー60内に貯留されることがなく、吐出カバー60を衛生的に維持することができる。
【0051】
さらに、本実施の形態では、吐出カバー60が回動保持部70により第一の向きと第二の向きとに変位可能に押下ヘッド40に取り付けられている。そのため、使用形態に応じて、第一の向きと第二の向きに変位させて使用可能な2way容器として使用することができる。例えば、第一の向きでは、上述したように開口枠61に手のひら等を当てて押下操作することで、手のひら等に直接内容物を付着させることができる。また、第二の向きでは、当該ポンプ容器100を例えば頭部を押下すると、軸方向と交差する方向に内容物が噴霧されるスプレー容器のように使用することができる。
【0052】
また、本実施の形態では吐出カバー60を第二の向きに変位させたときに、平板状の背面部73が口部11の上方に配置されるようにし、当該背面部73を第二の押下操作部として機能するため、第二の向きの場合も押下ヘッド40の押下操作が容易である。
【0053】
さらに、本実施の形態では上述のとおり支持部62を4本の板状部材62aにより構成し、それらを回動保持部70の側面部72に二本ずつ取り付けている。そのため、第二の姿勢の際には軸方向下方に広い開口を確保することができる。そのため、第二の向きで押下ヘッド40を押下させた際に、吐出口31から内容物を噴霧する際の噴霧範囲を広くしたときに、支持部62に遮られることなく、開口枠61の中央部分の開口に加えて板状部材62aの間の開口からも内容物を外部に噴霧することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、上部ヘッド部43に案内溝孔43cを設け、吐出口部30を案内溝孔43cに沿って移動させることで簡易に内容物が吐出される方向を切り替えることができる。その際、本実施の形態では、吐出カバー60を傾斜させて回転させるという簡易な操作で吐出口部30を案内溝孔43cに沿って移動させることができる。そのため、従来の2way仕様の吐出容器のように、例えば、吐出口31を複数設けて、使用しない吐出口31をシール部材により塞ぐ必要がなく、簡易な構成とすることができる。
【0055】
さらに、本実施の形態では、吐出口部30を回動筒33と吐出筒32とを備え、L字状の流路とし、ポンプ機構50のステム52と、コ字状の流路を有する流路部45により接続している。さらに、回動筒33を押下ヘッド40内で回動可能に支持させている。当該構成を採用することで、ステム52の上端と吐出口部30との下端との間の距離を小さくすることができる。例えば、可撓性のチューブ等によりステム52と吐出口部30とを連結した場合は、吐出口部30の向きを変位させたときにチューブが曲がる等の機械的ストレスが負荷され、チューブが潰れるなどして内容物を円滑に吐出することができなくなったり、チューブの劣化が生じたりすることも想定される。しかしながら、本実施の形態では、上述の構成を採用することで、流路の一部が潰れたるおそれがなく、当該吐出ポンプ100a及びポンプ容器100を長期間にわたって良好に使用することができる。
【0056】
上記実施の形態は本発明に係る吐出ポンプ及びポンプ容器の一例であり、本発明に係る吐出ポンプ及びポンプ容器は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施の形態では、円形の開口を有する円環状の平板部材からなる開口枠61を上記第一の押下操作部とした。しかしながら、本発明に係る吐出ポンプでは、上記開口枠61を、上記吐出カバー60が所定の向きに取り付けられたときに、吐出口31の軸方向上方が開口し、当該開口の矩形、多角形、不定形等、各種形状の枠状に形成された開口枠に置換し、当該開口枠を上記第一の押下操作部として機能させてもよい。このとき、開口枠は、開口形状と外形状とが相似形である必要はない。つまり、本発明にいう開口枠は開口形状と外形状とは異なる形状であってもよく、開口枠の具体的な形状が限定される訳ではない。また、開口枠61の一部は切り欠かれていてもよく、開口枠61の形状は閉図形形状に限られるものではない。
【0057】
また、上記実施の形態では、吐出カバー60を4本の板状部材62aにより構成し、互いに隣接する板状部材62aの間を開口としたが、板状部材62aの数は4本に限定されるものではない。上記実施の形態のように支持部62を複数の板状部材62aにより構成し、隣接する板状部材62aの間を開口とすれば、吐出カバー60内に内容物が貯留されるのを抑制することができる。しかしながら、例えば、回動保持部70の天壁面71,支持部62及び開口枠61を一体に形成したカップ状或いは皿状に形成し、例えば、第一の向きでは当該ポンプ容器100をいわゆるハンドラップ容器のようにしてもよい。
【0058】
さらに、吐出口部30の構成やポンプ機構50等の具体的な構成は特に限定されるものではなく、適宜、従来公知の構成を採用することができる。また、上記実施の形態において、吐出カバー60を、押下ヘッド40に対して回動保持部70により簡易に脱着可能な構成としてもよい。ユーザが吐出カバー60を押下ヘッド40から簡易に脱着可能な構成とすることで、所望のタイミングで吐出カバー60を洗浄することができる。そのため、操作押下部としての吐出カバー60を衛生的に保持することができる。
【0059】
また、当該ポンプ容器100及び吐出ポンプ100aは容器包装材として用いられる各種樹脂材料(例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)等のポリエチレン樹脂(PE)の他、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)等)を適宜採用することができる。また、抗菌剤が練り込まれた樹脂材料等により吐出ポンプ100a及びポンプ容器100が構成されていてもよいし、表面に抗菌コート等が施されていてもよい。さらに、容器本体10は樹脂製に限らず、硝子製、金属製等でもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 :容器本体
11 :口部
11a :雄ねじ
12 :底部
13 :胴部
14 :肩部
20 :装着部
21 :キャップ部
21a :雌ねじ
21b :挿通孔
22 :外筒
22a :下部外筒
22b :連設部
22c :上部外筒
30 :吐出口部
31 :吐出口
32 :吐出筒
33 :回動筒
34 :隔壁
35 :摺動軸部
40 :押下ヘッド
41 :保持台座部
42 :下部ヘッド部
43 :上部ヘッド部
43a :周壁部
43b :天壁部
43c :案内溝孔
43d :立設壁
43e :回動軸部
44 :回動筒支持部
45 :流路部
46 :嵌挿筒
47 :摺動軸保持部
50 :ポンプ機構
51 :シリンダ
51a :取付筒
51b :吸上筒
52 :ステム
53 :コイルスプリング
54 :挟持部
60 :吐出カバー
61 :開口枠
61a :開口
61b :凸部
62 :支持部
62a :板状部材
70 :回動保持部(保持部)
71 :天壁面
71a :挿入孔
72 :側面部
72a :軸受孔
73 :背面部
74 :規制部
100 :ポンプ容器
100a:吐出ポンプ
O :中心軸
S1 :最大ストローク量(第二の向き)
S2 :最大ストローク量(第一の向き)
図1
図2
図3
図4
図5