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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169991
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】成型拡散積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20221102BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20221102BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221102BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20221102BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G02B5/02 A
G02B5/00
B32B7/023
C08J7/04 Z CFD
C08J5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075781
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000125978
【氏名又は名称】株式会社きもと
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100118991
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 聡二郎
(72)【発明者】
【氏名】橘 和寿
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 龍哉
【テーマコード(参考)】
2H042
4F006
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
2H042AA01
2H042BA02
2H042BA12
2H042BA15
2H042BA18
2H042BA20
4F006AA36
4F006AB16
4F006AB24
4F006AB64
4F006AB65
4F006CA05
4F006CA08
4F006DA04
4F071AA50
4F071AF30Y
4F071AH12
4F071AH16
4F071AH19
4F100AA37C
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK45A
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA13C
4F100DE01B
4F100DJ00B
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100GB41
4F100JB14C
4F100JK08
4F100JL10C
4F100JN01
4F100JN01C
4F100JN06B
(57)【要約】
【課題】隠蔽性及び意匠性に優れる、新たな設計思想の成型拡散積層フィルム等を提供する。
【解決手段】基材フィルム11と、基材フィルム11の一方の面11a側に設けられた成型拡散層21と、基材フィルム11の他方の面11b側に設けられた着色層31と、を少なくとも有する積層体を備え、成型拡散層21は、第1樹脂バインダー22と第1樹脂バインダー22中に分散された光拡散粒子23とを少なくとも含有し、層内部に空隙Vを有し、成型拡散層21の平均膜厚Tと光拡散粒23子の平均粒子径tとの比(T/t)が3.0以上であり、着色層31は、第2樹脂バインダーと第2樹脂バインダー中に分散された着色剤とを少なくも含有する、成型拡散積層フィルム100。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面側に設けられた成型拡散層と、前記基材フィルムの他方の面側に設けられた着色層と、を少なくとも有する積層体を備え、
前記成型拡散層は、第1樹脂バインダーと前記第1樹脂バインダー中に分散された光拡散粒子とを少なくとも含有し、層内部に空隙を有し、前記成型拡散層の平均膜厚Tと前記光拡散粒子の平均粒子径tとの比(T/t)が3.0以上であり、
前記着色層は、第2樹脂バインダーと前記第2樹脂バインダー中に分散された着色剤とを少なくも含有する、
成型拡散積層フィルム。
【請求項2】
ヘイズ(JIS K7361-1準拠)が90%以上である
請求項1に記載の成型拡散積層フィルム。
【請求項3】
全光線透過率(JIS K7361-1準拠)が30~70%であり、
前記着色層の全光線透過率(JIS K7361-1準拠)が60~90%である
請求項1又は2に記載の成型拡散積層フィルム。
【請求項4】
前記積層体の伸長率40%における半値角H40が、伸長前の半値角H0の値よりも25%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも25%高い値以下の範囲内である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【請求項5】
前記着色層側から測定した550nm反射率が10.0%以下である
請求項1~4のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【請求項6】
前記光拡散粒子が、0.5~10.0μmの平均粒子径tを有する
請求項1~5のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【請求項7】
前記成型拡散層が、1.5~30μmの平均膜厚Tを有する
請求項1~6のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【請求項8】
前記光拡散粒子の含有割合が、前記成型拡散層の固形分総量に対して、30質量%以上80質量%以下である
請求項1~7のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【請求項9】
前記着色剤は、0.01~2.0μmの平均粒子径D50を有するカーボンブラックを含む
請求項1~8のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【請求項10】
前記着色剤の含有割合が、前記着色層中の全樹脂成分100質量部に対する固形分換算で0.1~10.0質量部である
請求項1~9のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【請求項11】
前記着色層は、マット剤をさらに含有する
請求項1~10のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【請求項12】
前記マット剤の含有割合が、前記着色層中の全樹脂成分100質量部に対する固形分換算で1~15質量部である
請求項11に記載の成型拡散積層フィルム。
【請求項13】
反射防止層、前記着色層、前記基材フィルム、及び前記成型拡散層をこの順に少なくとも有する
請求項1~12のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隠蔽性及び意匠性に優れる成型拡散積層フィルム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、省電力で高いエネルギーの光を発光できる発光装置として、発光ダイオード(LED)を用いる装置が知られている。LEDから発せられる光は、強い指向性を有するため、その光を高く分散させることが求められる。発光ダイオードを用いる装置としては、自動車用ライト、冷蔵庫、電子レンジ、室内光等のLED照明装置として用いられる。LED照明装置では、特に高度な分散性が求められる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-041638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年の照明用途においては、間接照明の採用におるインテリアデザインの強化が検討されている。例えば、車内空間、客室空間、サニタリー空間、寝室空間、オフィス空間、ロビー空間、レストラン、シアタールーム、ライブハウス等において、アンビエントライト、タスクライト、タスクアンビエントライト、コープライト、エリアライト等の間接照明の採用が検討されている。このような照明用途においても、光電素子を用いた光電部材、例えばLED点光源、導光棒、導光ファイバー、導光チューブ、導光リング、導光板、照明パネル等が採用されている。これらの間接照明は、発光ダイオード(LED)等の強い指向性を有する光を高拡散させることで、直接照明に比して、眩しさやギラツキを抑え、やわらかい光により空間の圧迫感を低減させ、落ち着いた雰囲気を創造し、或いは、高級感を創造し、ないしはロマンチックな雰囲気を創造する。そして今後は、このような間接照明の用途においても、インテリアデザインの強化の観点から、周囲のデザインとの統一感のある意匠の実現と、内部隠蔽性との両立が求められる。
【0005】
また、黒色系の家電用途、黒色系の情報通信端末用途、黒色系の内装材が多く用いられている近年の車載用途やシアタールーム用途等において、この傾向が顕著となっている。実際、これらの用途において、外装パネル、操作パネルやディスプレイ等の周囲のパネル、インテリアパネル、ダッシュボード等には、ピアノブラック調や黒色メタル調等の、黒色系の内装材や外装材が多用されている。
【0006】
一方、近年の車両や輸送機器等の先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance Systems)或いは自動運転(AD:Automated Driving)システムの一部として、車両の置かれた状況をセンシングするために、車載カメラ、赤外線レーダー、ミリ波レーダー、超音波センサー、LiDAR(Light Detection and Ranging)等の採用が進展している。LiDARは、近赤外光、可視光、紫外線等の光を対象物に照射し、その反射光を受光素子で捉えて距離を測定するリモートセンシング(離れた位置からセンサーを使って感知する)方式である。これらに用いられるセンサーは、光電素子、発信機、受光素子、アンテナ等がモジュール化されたものであり、このセンサーモジュール表面においても、ハードコートフィルムや拡散フィルム等の適用が検討されている。このようなセンシング用途においても、今後、ハードコートフィルムや拡散フィルム等を設置する場合には、周囲のデザインとの統一感のある意匠の実現と、ハードコートフィルムや拡散フィルム等で覆った部分の内部隠蔽性との両立が求められる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、隠蔽性及び意匠性に優れる、新たな設計思想の成型拡散積層フィルム等を提供することにある。
【0008】
また、本発明の一態様では、光電素子等の光源の消灯時において内部隠蔽性に優れ、また、光電素子等の光源の点灯時であっても消灯時であっても高級感のあるデザインを示し、周囲の内装材や外装材等のデザインとの意匠性の統一感を高め得る、成型拡散積層フィルム等を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明の別態様では、アンビエントライト等の間接照明において、光電素子等の光源の消灯時において内部隠蔽性に優れ、また、光電素子等の光源の点灯時であっても消灯時であっても高級感のあるデザインを示し、周囲の内装材や外装材等のデザインとの意匠性の統一感を高め得る、成型拡散積層フィルム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、所定の着色層と所定の成型拡散層とを備える成型拡散積層フィルムを新たに設計し、これを用いることで上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
〔1〕基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面側に設けられた成型拡散層と、前記基材フィルムの他方の面側に設けられた着色層と、を少なくとも有する積層体を備え、前記成型拡散層は、第1樹脂バインダーと前記第1樹脂バインダー中に分散された光拡散粒子とを少なくとも含有し、層内部に空隙を有し、前記成型拡散層の平均膜厚Tと前記光拡散粒子の平均粒子径tとの比(T/t)が3.0以上であり前記着色層は、第2樹脂バインダーと前記第2樹脂バインダー中に分散された着色剤とを少なくも含有する、成型拡散積層フィルム。
【0012】
〔2〕ヘイズ(JIS K7361-1準拠)が90%以上である〔1〕に記載の成型拡散積層フィルム。
【0013】
〔3〕全光線透過率(JIS K7361-1準拠)が30~70%であり、前記着色層の全光線透過率(JIS K7361-1準拠)が60~90%である〔1〕又は〔2〕に記載の成型拡散積層フィルム。
【0014】
〔4〕前記積層体の伸長率40%における半値角H40が、伸長前の半値角H0の値よりも25%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも25%高い値以下の範囲内である、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【0015】
〔5〕前記着色層側から測定した550nm反射率が10.0%以下である〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【0016】
〔6〕前記光拡散粒子が、0.5~10.0μmの平均粒子径tを有する〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【0017】
〔7〕前記成型拡散層が、1.5~30μmの平均膜厚Tを有する〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【0018】
〔8〕前記光拡散粒子の含有割合が、前記成型拡散層の固形分総量に対して、30質量%以上80質量%以下である〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【0019】
〔9〕前記着色剤は、0.01~2.0μmの平均粒子径D50を有するカーボンブラックを含む〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【0020】
〔10〕前記着色剤の含有割合が、前記着色層中の全樹脂成分100質量部に対する固形分換算で0.1~10.0質量部である〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【0021】
〔11〕前記着色層は、マット剤をさらに含有する〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【0022】
〔12〕前記マット剤の含有割合が、前記着色層中の全樹脂成分100質量部に対する固形分換算で1~15質量部である〔11〕に記載の成型拡散積層フィルム。
【0023】
〔13〕反射防止層、前記着色層、前記基材フィルム、及び前記成型拡散層をこの順に少なくとも有する〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載の成型拡散積層フィルム。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、隠蔽性及び意匠性に優れる、新たな設計思想の成型拡散積層フィルム及びこれを用いた照明装置等を提供することができる。そして、本発明の成型拡散積層フィルム等を用いることで、例えば光電素子等の光源の点灯時であっても消灯時であっても高級感のあるデザインを実現することができ、周囲の内装材や外装材等のデザインとの意匠性の統一感を高めることができる。そのため、この成型拡散積層フィルム等を用いることで、例えば車内空間、客室空間、サニタリー空間、寝室空間、オフィス空間、ロビー空間、レストラン、シアタールーム、ライブハウス等において、多種多様なデザインを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】成型拡散積層フィルム100を示す模式断面図である。
図2】成型拡散層21を示す模式断面図である。
図3】伸長されたときの成型拡散層21を示す模式断面図である。
図4】さらに伸長されたときの成型拡散層21を示す模式断面図である。
図5】従来の光拡散フィルムを伸長したときの作用を示す模式断面図である。
図6】成型拡散積層フィルム101を示す模式断面図である。
図7】伸長率0%における成型拡散層21の断面のSEM写真である。
図8】伸長率40%における成型拡散層21の断面のSEM写真である。
図9】伸長率80%における成型拡散層21の断面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。但し、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、例えば「1~100」との数値範囲の表記は、その下限値「1」及び上限値「100」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0027】
<成型拡散積層フィルム>
図1は、本発明の一実施形態の成型拡散積層フィルム100の概略構成を示す模式断面図である。本実施形態の成型拡散積層フィルム100は、基材フィルム11と、この基材フィルム11の一方の面11a側に設けられた成型拡散層21と、基材フィルム11の他方の面11b側に設けられた着色層31とを少なくとも有する積層体を備える。そして、この成型拡散積層フィルム100は、光電素子であるLED素子を備える発光部材200上に設けられている。
【0028】
本実施形態の成型拡散積層フィルム100は、成型拡散層21、基材フィルム11、及び着色層31が、少なくともこの順に配列された積層構造(3層構造)を有する。この積層構造において、着色層31は、成型拡散積層フィルム100の表側の最表面に配置されており、成型拡散積層フィルム100の最表面に露出した状態で配置されている。また、成型拡散層21は、成型拡散積層フィルム100の裏側の最表面に配置されており、成型拡散積層フィルム100の最表面に露出した状態で配置されている。なお、成型拡散層21や着色層31の表面は、必要に応じて、帯電防止処理や防汚処理や抗菌処理や反射防止処理等の任意の表面処理が施されていてもよい。また、成型拡散層21や着色層31の表面には、必要に応じて、帯電防止層や保護層や防汚層や抗菌層や反射防止膜や印刷層等の任意の層が設けられていてもよい。
【0029】
ここで本明細書において、「~の一方(他方)の面側に設けられた」とは、本実施形態のように基材フィルム11の表面(例えば面11aや面11b)に成型拡散層21や着色層31が直接載置された態様のみならず、基材フィルム11の面11aと成型拡散層21との間や、基材フィルム11の面11bと着色層31との間に、図示しない任意の層(例えばプライマー層、接着層等)が介在して成型拡散層21や着色層31が基材フィルム11から離間して配置された態様を包含する意味である。また、成型拡散層21及び着色層31を少なくとも備える積層構造とは、成型拡散層21及び着色層31のみが基材フィルム11上に直接積層した構造のみならず、3層構造の層間に上述したような任意の層をさらに設けた構造を包含する意味である。
【0030】
(基材フィルム)
基材フィルム11は、成型拡散層21及び着色層31を支持するものである。基材フィルム11の構成素材としては、成型拡散層21及び着色層31を支持可能なものである限り、その種類は特に限定されない。寸法安定性、機械的強度及び軽量化等の観点から、合成樹脂フィルムが好ましく用いられ、より好ましくは熱可塑性樹脂フィルムである。合成樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステルフィルム、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ナイロン系、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリウレタン系、トリアセチルセルロース等のセルロース系、ノルボルネン系、ポリスルホン系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリエーテルスルホン系、ポリエーテルエーテルケトン系のフィルムを用いることもできる。これらは1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。また、これらを任意の組み合わせで用いた積層フィルムも好適に用いることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリルの双方を含む概念である。これらの中でも、基材フィルム11としては、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、(メタ)アクリル系フィルム、及びこれらを任意に組み合わせた積層フィルムが好適に用いられる。
【0031】
成型拡散積層フィルム100を延伸加工する場合には、基材フィルム11は、延伸加工、特に二軸延伸加工のされていない無延伸フィルムであることが好ましい。ここで、例えば製造時に基材フィルム11がロール状に巻き取られる場合には、その過程において延伸がわずかにかかることもある。しかしながら、本明細書においては、基材フィルム11が延伸加工又は2軸延伸加工されていない場合には、本明細書における無延伸フィルムに該当するものとする。基材フィルム11の樹脂のガラス転移温度は、好ましくは100~200℃であり、より好ましくは120~180℃であり、さらに好ましくは140~155℃である。基材フィルム11の樹脂のガラス転移温度が当該範囲であることで加熱条件下での延伸加工が行いやすくなる。
【0032】
基材フィルム11の樹脂のガラス転移温度は、特に限定されないが、100~200℃が好ましく、より好ましくは120~180℃、さらに好ましくは140~155℃である。基材フィルム11の樹脂のガラス転移温度が当該範囲であることで、加熱条件下での延伸加工が行いやすくなる。
【0033】
基材フィルム11の外観は、透明、半透明、無色、着色のいずれであってもよく、特に限定されないが、透光性が高いものが好ましい。具体的には、基材フィルム11の厚み方向からの垂直入射、すなわち入射角0°での全光線透過率Tt(JIS K7361-1準拠)が80%以上の透明樹脂フィルムが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上である。なお、本明細書において、全光線透過率Ttは、ヘイズメーター(例えば、NDH4000(日本電色工業社製))で測定される値を意味する。
【0034】
基材フィルム11の厚みは、要求性能及び用途に応じて適宜設定でき、特に限定されない。軽量化及び薄膜化の観点からは、基材フィルム11の厚みは、10μm以上が好ましく、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは80μm以上、特に好ましくは100μm以上であり、上限側は、2mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは500μm以下、特に好ましくは300μm以下である。なお、着色層31や成型拡散層21との接着性を向上させる観点から、必要に応じて、基材フィルム11表面にアンカー処理やコロナ処理等の各種公知の表面処理を行うこともできる。また、同様の観点から、基材フィルム11は、表面に易接着層が設けられた基材フィルムであってもよい。
【0035】
(成型拡散層)
図2に示すように、成型拡散層21は、第1樹脂バインダー22と、この第1樹脂バインダー22中に分散された平均粒子径tを有する光拡散粒子23とを少なくとも含有する。また、上述した隠蔽性及び意匠性を具備させるため、成型拡散層21の平均膜厚Tと光拡散粒子23の平均粒子径tとの比(T/t、以降において、単に「T/t比」と称する場合がある。)が3.0以上とされていることで、成型拡散層21の層内部は多数の空隙Vが形成されている。なお、本実施形態においては、基材フィルム11の一方の面11a上のみに成型拡散層21を設けたものを例示したが、基材フィルム11の一方の面11a側及び他方の面11b側の双方に成型拡散層21を設けてもよい。
【0036】
このように構成された成型拡散層21は、光拡散粒子23が成型拡散層21の厚み方向に積み重なるように形成されており、これにより高い光散乱性を実現し、その結果、成型拡散積層フィルム100の隠蔽性及び意匠性を向上させている。すなわち、この成型拡散層21は、高いヘイズを示すので光の拡散性が高く、また、高い半値角を示すため、例えば高い曲率半径を有する曲面や成型時に高い伸長率となる平面に加工される等の、高い伸長率の加工を受けた後であっても、成型拡散層2に凹凸形成がされて、伸長後の半値角の低下が抑制され、これにより高い伸長率の加工後の光の拡散性が高く維持される。なお、半値角(度)は、光源に対する角度0度の正面光が成型拡散層21を透過する際の強度I0に対して、その半分の強度I1/2になるときの角度である。
【0037】
成型拡散層21を構成する素材としては、公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。一般的には、第1樹脂バインダー22と光拡散粒子23とを少なくとも含有する樹脂組成物の硬化物として成型拡散層21を構成することができる。
【0038】
第1樹脂バインダー22は、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であってもよいが、好ましくは熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としては、例えば、ABS樹脂、ノルボルネン樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、スルフォン樹脂、イミド樹脂、フッ素樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリエチレングリコール樹脂等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。第1樹脂バインダー22は、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、及びフッ素樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0039】
第1樹脂バインダー22のガラス転移温度は、所望性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、基材フィルム11の樹脂のガラス転移温度より低い温度であることが好ましく、より好ましくは80~200℃であり、さらに好ましくは90~150℃であり、特に好ましくは100~120℃である。
【0040】
第1樹脂バインダー22の含有割合は、所望性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、成型拡散層21の固形分総量に対して、25質量%以上70質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは32質量%以上35質量%以下である。なお、熱可塑性樹脂を使用する場合、熱可塑性樹脂の含有割合は、所望性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、第1樹脂バインダー22の総量に対して、60質量%以上100質量%以下が好ましくは、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0041】
光拡散粒子23は、成型拡散層21中で光を拡散するために配合される。本実施形態において、光拡散粒子23は、平均粒子径tが0.4μm以上である粒子を意味する。光拡散粒子23の平均粒子径tは、0.5~10.0μmが好ましく、より好ましくは1.0~8.0μm、さらに好ましくは1.0~5.0μm、特に好ましくは1.0~3.0μmである。光拡散粒子23の平均粒子径tが当該範囲内であることで、成型拡散層21の半値角が向上し、平均粒子径tが1.0~3.0μmの範囲内であることで、成型拡散層21の半値角が特に高くなる。なお、本明細書における光拡散粒子の平均粒子径tとは、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製、商品名「SALD-7000」等)で測定される、体積基準のメジアン径(D50)を意味する。また、メジアン径(D50)は、粒子分布において小粒子径側から累積計算して50体積%となるときの粒子径を意味する。
【0042】
光拡散粒子23の構成素材としては、公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。一般的には、基材フィルム11の樹脂のガラス転移温度より高いガラス転移温度を有する粒子が好ましく、より好ましくは前述したガラス転移温度を持つ熱可塑性樹脂粒子又は熱硬化性樹脂粒子である。熱可塑性樹脂粒子を用いる場合、熱可塑性樹脂粒子の溶融温度は、基材フィルム11の樹脂のガラス転移温度より20℃高い温度が好ましく、より好ましくは同40℃高い温度であり、さらに好ましくは同50℃高い温度である。光拡散粒子23を用いることで、成型拡散層21を加熱温度条件下で延伸した場合に、光拡散粒子23の形状を維持することができ、延伸後の半値角の維持率を高めることができる。
【0043】
光拡散粒子23に用いる樹脂としては、例えば、ベンゾグアナミン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、チオフェン樹脂等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。これらの中でも、ベンゾグアナミン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、メラミン樹脂が好ましい。また、光拡散粒子は、中実粒子であってもよく、中空粒子であってもよい。また、光拡散粒子23は、多孔質シリカ等のシリカ類、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の無機酸化物、紫外線吸収剤、他の成分を構成成分として含有していてもよい。
【0044】
光拡散粒子23は、高屈折率であっても、低屈折率であってもよい。高屈折率の場合、光拡散粒子23の屈折率は、1.40~1.70が好ましく、より好ましくは1.50~1.70、さらに好ましくは1.55~1.70である。低屈折率の場合、光拡散粒子23の屈折率は、1.26~1.36が好ましく、より好ましくは1.28~1.34、さらに好ましくは1.30~1.32である。
【0045】
なお、光拡散粒子23の屈折率Ipと第1樹脂バインダー22の屈折率Irとの差|Ip-Ir|は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、0.01~0.50が好ましく、より好ましくは0.05~0.40、さらに好ましくは0.10~0.30である。当該差|Ip-Ir|を高めることで、成型拡散層21における内部拡散を高めることができるため、想定される伸長率と、その伸長率における表面拡散の程度に応じて、伸長前後で半値角が維持されるように、差|Ip-Ir|の値を適宜設定すればよい。なお、屈折率Ipは、屈折率Irよりも高い値であることが好ましい。
【0046】
光拡散粒子23の含有割合は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、成型拡散層21の固形分総量に対して、30質量%以上80質量%以下が好ましく、より好ましくは50質量%以上75質量%以下、さらに好ましくは65質量%以上70質量%以下、特に好ましくは65質量%以上68質量%以下である。光拡散粒子23の含有割合が当該範囲であることで、成型拡散層21中に多くの光拡散粒子23が充填され、この成型拡散層23が伸長された際に、成型拡散層21の表面に凹凸が形成されやすくなり、高い半値角が維持されやすくなる。
【0047】
光拡散粒子23の含有割合は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、第1樹脂バインダー22の固形分100質量部に対して、40質量部以上400質量部以下が好ましく、より好ましくは100質量部以上300質量部以下、さらに好ましくは180質量部以上240質量部以下、特に好ましくは200質量部以上240質量部以下である。光拡散粒子23の含有割合が当該範囲であることで、成型拡散層21中に多くの光拡散粒子23が充填され、この成型拡散層23が伸長された際に成型拡散層21の表面に凹凸が形成されやすくなり、高い半値角が維持されやすくなる。
【0048】
なお、成型拡散層21は、平均粒子径0.4μm未満の無機粒子(以降において、単に「無機微粒子」と称する場合がある。)を含んでいてもよい。ここで平均粒子径は、前述の光拡散粒子23の平均粒子径tと同様の方法で測定できる。なお、平均粒子径が0.4μm未満であることで光拡散性への寄与がほとんどなくなる。無機微粒子は、好ましくは、無機酸化物微粒子である。無機酸化物としては、例えば、ヒドロオキシ炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2)(屈折率1.94~2.09)、酸化チタン(屈折率2.71)、酸化ジルコニウム(屈折率2.4)、酸化亜鉛(屈折率1.95)、酸化アルミニウム(屈折率1.76)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0049】
無機微粒子は、例えば、屈折率の調整のために使用される。その場合、無機微粒子の屈折率は、1.9以上が好ましく、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.3以上である。これらのうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0050】
無機微粒子は、白色を呈するものであってもよい。白色を呈する無機微粒子を用いることにより、成型拡散層21が白色を呈し、バックライト装置の光源付近の輝度ムラやLED照明のLED照明を低減し、光漏れが目立たなくなる。白色を呈する無機微粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。これらの中でも、酸化ジルコニウム及び酸化チタンが好ましい。
【0051】
なお、無機微粒子の一次粒子径は、特に限定されないが、好ましくは10~50nmである。このようなnmオーダーの粒子は、成型拡散層21に分散された状態ではほとんどが凝集体として成型拡散層21に含まれる。
【0052】
無機微粒子の含有量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、第1樹脂バインダー22の固形分100質量部に対して、40~500質量部が好ましく、より好ましくは120~300質量部、さらに好ましくは160~240質量部である。
【0053】
なお、成型拡散層21は、本発明の効果を過度に阻害しない程度であれば、当業界で公知の各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、表面調整剤、滑剤、蛍光増白剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、界面活性剤、分散剤、貯蔵安定剤、架橋剤、シランカップリング剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。滑剤としては、ポリエチレン、パラフィン、ワックス等の炭化水素系滑剤;ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸系滑剤;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等のアミド系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド等のエステル系滑剤;アルコール系滑剤;金属石鹸、滑石、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤;シリコーン樹脂粒子、ポリテトラフッ化エチレンワックス、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂粒子等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、特に有機系滑剤が好ましく用いられる。また、バインダー樹脂として、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を用いる場合には、例えばn-ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン等の増感剤や紫外線吸収剤等を用いてもよい。これらの含有割合は、特に限定されないが、成型拡散層21中に含まれる全樹脂成分に対する固形分換算で、一般的にはそれぞれ0.01~5質量%であることが好ましい。
【0054】
上述した成型拡散層21の製造方法は、当業界で公知の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、上述した第1樹脂バインダー22及び光拡散粒子23、並びに必要に応じて溶剤を含む樹脂組成物(塗布液)を、基材フィルム11の一方の面11a側にドクターコート、ディップコート、ロールコート、バーコート、ダイコート、ブレードコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、スピンコート等の従来公知の塗布方法で塗布し、必要に応じて乾燥した後に硬化処理を行う等することで、基材フィルム11上に成型拡散層21を設けることができる。ここで使用する塗布液は、常法にしたがい各種溶媒を配合することができる。溶媒としては、水;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエーテル系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、並びにこれらの混合溶媒等、当業界で公知のものを用いることができる。このように塗布された塗膜に、必要に応じて電離放射線処理、熱処理、及び/または加圧処理等を施すことにより、成型拡散層21を製膜することができる。
【0055】
また、熱可塑性樹脂、上述した第1樹脂バインダー22及び光拡散粒子23、並びに必要に応じて溶剤を含む樹脂組成物(塗布液)を基材フィルム11上に成型加工することにより、基材フィルム11上に成型拡散層21が設けられた成型加工物としての積層体を得ることもできる。成型加工方法としては、公知の方法を適用することができ、特に限定されない。例えば、プレス成型、絞り加工成型、圧空成形、真空成型、インサート成形、フィルムインサート成形等の公知の成型方法を適用して、基材フィルム11上に樹脂組成物を供給し硬化させることで、成型加工物としての上記積層体を得ることができる。このとき、着色層31や反射防止層等も同様に成型加工することができ、或いは、基材フィルム11と成型拡散層21の成型加工物の成型加工後に着色層31や反射防止層等を設けることもできる。一例を挙げると、基材フィルム11の一方の面11a上に成型拡散層21を成膜し、次いで、基材フィルム11の他方の面11b上に着色層31を成膜し、必要に応じで着色層31上に反射防止層等をさらに成膜し、得られた積層体(反射防止層等、着色層31、基材フィルム11、成型拡散層21及び印刷層等をこの順に有する積層体)をインサート成形する等して、所定形状に成形された成型加工物を得ることができる。
【0056】
ここで、成型拡散層21の平均膜厚Tは、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、1.5~30μmが好ましく、より好ましくは3~20μm、さらに好ましくは5~15μmである。成型拡散層21の平均膜厚Tが当該範囲に含まれることで、高い伸長率の加工による半値角の低下をより抑制することができる。なお、本明細書における平均膜厚Tの測定方法は、実施例に記載の測定方法による。
【0057】
そして、成型拡散層21の平均膜厚Tと光拡散粒子23の平均粒子径tの比(T/t)は3.0以上である。当該T/t比を有することで、高い伸長率の加工後であっても半値角の低下を抑制することのできる成型拡散層21を実現できる。T/t比は、より好ましくは3.3以上であり、さらに好ましくは3.8以上である。T/t比が当該下限値以上であることで、成型拡散層21中で光拡散粒子23が重なり合いやすくなり、成型拡散層21を伸長した場合であっても、高い半値角が維持されやすくなる傾向にある。T/t比は、その上限値は特に限定されないが、20.0以下が好ましく、より好ましくは15.0以下、さらに好ましくは10.0以下である。T/t比が当該上限値以下であることで、成型拡散層21を形成しやすくなるとともに、伸長した場合であっても、高い半値角を維持しやすくなる。
【0058】
続いて、成型拡散層21の作用について説明する。本実施形態の成型拡散積層フィルム100は、例えば、光電素子を有するディスプレイやLED照明装置等の表面に設けることができる。また、加熱条件下で成型拡散積層フィルム100を伸長させる等の成形加工をすることもできる。そして、成型拡散積層フィルム100の設置時には、被着面が高い曲率半径を有する曲面や複雑な形状であったり、成型拡散積層フィルム100を伸長させながら取り付ける平面が存在することがある。このように被着面の曲面形状や取付方法に応じて成型拡散積層フィルム100を被着面に設ける場合、成型拡散積層フィルム100が部分的に或いは全体が伸長し得る。例えば、アンビエントライト等の導光棒、導光ファイバー、導光チューブ、導光リング、導光チューブ等を被覆するにはその曲面形状にあわせて、加熱条件下で成形加工されるので成型拡散積層フィルム100が部分的に或いは全体が伸長する。このような成型加工の際、曲面の形状に応じて成型拡散積層フィルム100が伸長する。本実施形態の成型拡散積層フィルム100は、成型拡散層21が設けられているため、当該伸長によっても、成型拡散積層フィルム100は高い半値角を維持することができる。すなわち、本実施形態の成型拡散積層フィルム100は、成型拡散層21が設けられていることにより、高い伸長率の加工後であっても半値角の低下を抑制することができる。以下、詳述する。
【0059】
図2に示されるように、成型拡散積層フィルム100を伸長しない場合には、成型拡散層21において、光拡散粒子23、空隙V及び表面の界面により光が拡散される。この場合、光拡散に寄与する程度は、成型拡散層21内の光拡散粒子23が比較的に大きい。
【0060】
図3は、成型拡散積層フィルム100が伸長されたときの成型拡散層21を示す模式断面図である。成型拡散層21が伸長されると、成型拡散層21の膜厚が小さくなり、光拡散粒子23による光拡散の寄与が若干低下するが、成型拡散層21の内部の空隙Vが拡大し、界面での光拡散の寄与が相対的に大きくなる。すなわち、伸長率が高くなるにつれて、光拡散粒子23による光拡散の寄与は相対的に小さくなるが、伸長率が高くなるにつれて、空隙Vが大きくなり、界面での光拡散の寄与が大きくなる。このように、成型拡散層21が伸長されても、伸長前後の光拡散性が従来に比して高く維持される。
【0061】
図4は、成型拡散積層フィルム100がさらに伸長されたときの成型拡散層21を示す模式断面図である。成型拡散層21がさらに伸長されると、成型拡散層21の膜厚が小さくなり、光拡散粒子23による光拡散の寄与がさらに低下するが、成型拡散層21の内部の空隙Vの拡大に加えて、図示はしないが空隙Vの数が増えることもあり、さらには成型拡散層21の表面に凹部Sが形成される。当該凹部Sは、成型拡散層21の崩壊によって凹部Sが形成される。このとき、T/t比が上述した所定値以上であることで、光拡散粒子23の露出による表面の荒れや、凹部Sの形成による表面の荒れが形成されるため、光拡散性の増大に寄与する。このように、成型拡散層21がさらに伸長されても、光拡散性が低くなる要素と光拡散性の高くなる要素とが混在しているため、伸長前後の光拡散性が従来に比して高く維持される。
【0062】
図5は、従来技術の光拡散フィルムC1を伸長したときの作用を示す模式断面図である。ここでは、従来技術として、上述したT/t比が所定値未満の光拡散フィルムC1について説明する。光拡散フィルムC1は、光拡散粒子C31及び樹脂バインダー32を含有する光拡散層C3を備える。光拡散フィルムC1は、伸長されると、光拡散粒子C31による光拡散の寄与が小さくなる。伸長により凹部の大きさが拡大されるが、当該凹部による光拡散の寄与は小さい。その上、光拡散粒子C31の膜厚が厚くないので、光拡散層C3内の空隙がほとんど形成されておらず、伸長されたとしても空隙の拡大による光拡散の寄与も小さい。以上の理由から、従来技術の拡散フィルムC1によれば、伸長によって光拡散に寄与する各要素の寄与が小さくなるため、伸長前後で、光拡散性が格別に小さくなる。
【0063】
ここで、光の拡散性を評価する指標として、ヘイズが広く用いられている。しかしながら実際には、高いヘイズを示す光拡散フィルムであっても、例えばLED照明装置等では、満足な光拡散性が得られない場合があった。そこで、本明細書では、光拡散性の指標としてヘイズとともに半値角を用いている。これは、高い曲率半径を有する場合や高い伸長率となる部分へ適用する際には成型拡散層21が伸長され、このときヘイズの低下がわずかであっても、半値角は大きく低下しやすいことに着目したものである。そして、本明細書における成型拡散積層フィルム100の伸長率とは、以下の式(1)で表される比率である。
伸長率(%)=[伸長後の長さ-伸長前の長さ]/[伸長前の長さ]×100 (1)
本明細書における伸長条件及び半値角(度)は、実施例に記載の試験方法による。
【0064】
ここで、伸長率0%における半値角H0は、特に限定されないが、10度以上が好ましく、より好ましくは20度以上、さらに好ましくは30度以上であり、特に好ましくは40度以上である。このときの半値角H0の上限値は、特に限定されないが、例えば、70度以下であってもよく、60度以下であってもよい。
【0065】
伸長率40%における半値角H40は、特に限定されないが、10度以上が好ましく、より好ましくは20度以上、さらに好ましくは30度以上、特に好ましくは40度以上である。このときの半値角H40の上限値は、特に限定されないが、例えば、70度以下であってもよく、60度以下であってもよい。
【0066】
伸長率60%における半値角H60は、特に限定されないが、10度以上が好ましく、より好ましくは20度以上、さらに好ましくは30度以上、特に好ましくは40度以上である。このときの半値角H60の上限値は、特に限定されないが、例えば、70度以下であってもよく、60度以下であってもよい。
【0067】
伸長率80%における半値角H80は、特に限定されないが、10度以上が好ましく、より好ましくは20度以上、さらに好ましくは30度以上、特に好ましくは40度以上である。このときの半値角H80の上限値は、特に限定されないが、例えば、70度以下であってもよく、60度以下であってもよい。
【0068】
伸長率120%における半値角H120は、特に限定されないが、10度以上が好ましく、より好ましくは20度以上、さらに好ましくは30度以上、特に好ましくは40度以上である。このときの半値角H120の上限値は、特に限定されないが、例えば、70度以下であってもよく、60度以下であってもよい。
【0069】
伸長率40%における半値角H40は、特に限定されないが、伸長前の半値角H0の値よりも25%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも25%高い値以下の範囲内が好ましく、より好ましくは伸長前の半値角H0の値よりも20%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも20%高い値以下の範囲内、さらに好ましくは伸長前の半値角H0の値よりも15%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも20%高い値以下の範囲内、特に好ましくは伸長前の半値角H0の値よりも10%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも20%高い値以下の範囲内である。
【0070】
伸長率60%における半値角H60は、特に限定されないが、伸長前の半値角H0の値よりも25%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも25%高い値以下の範囲内が好ましく、より好ましくは伸長前の半値角H0の値よりも20%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも20%高い値以下の範囲内、さらに好ましくは伸長前の半値角H0の値よりも15%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも20%高い値以下の範囲内、特に好ましくは伸長前の半値角H0の値よりも10%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも20%高い値以下の範囲内である。
【0071】
伸長率80%における半値角H80は、特に限定されないが、伸長前の半値角H0の値よりも25%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも25%高い値以下の範囲内が好ましく、より好ましくは伸長前の半値角H0の値よりも20%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも20%高い値以下の範囲内、さらに好ましくは伸長前の半値角H0の値よりも15%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも20%高い値以下の範囲内、特に好ましくは伸長前の半値角H0の値よりも10%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも20%高い値以下の範囲内である。
【0072】
伸長率120%における半値角H120は、特に限定されないが、伸長前の半値角H0の値よりも25%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも25%高い値以下の範囲内が好ましく、より好ましくは伸長前の半値角H0の値よりも20%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも20%高い値以下の範囲内、さらに好ましくは伸長前の半値角H0の値よりも15%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも20%高い値以下の範囲内、特に好ましくは伸長前の半値角H0の値よりも10%低い値以上、且つ、伸長前の半値角H0の値よりも20%高い値以下の範囲内である。
【0073】
なお、伸長率0%における成型拡散層21の全光線透過率Tt(JIS K7361-1準拠)、すなわち成型拡散層21の厚み方向からの垂直入射、すなわち入射角0°での全光線透過率Ttは、特に限定されないが、上述した成型拡散積層フィルム100の全光線透過率Ttを実現する観点から、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上である。伸長率0%における成型拡散層21の全光線透過率Ttの上限値は、特に限定されないが、例えば、99%未満であってもよく、95%未満であってもよく、85%未満であってもよく、80%未満であってもよい。なお、全光線透過率Ttは、JIS K7361-1:1997に準拠した方法により測定可能である。
【0074】
伸長率120%における成型拡散層21の全光線透過率Tt(JIS K7361-1準拠)、すなわち成型拡散層21の厚み方向からの垂直入射、すなわち入射角0°での全光線透過率Ttは、特に限定されないが、上述した成型拡散積層フィルム100の全光線透過率Ttを実現する観点から、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上である。伸長率120%における成型拡散層21の全光線透過率Ttの上限値は、特に限定されないが、例えば、99%未満であってもよく、95%未満であってもよく、90%未満であってもよく、85%未満であってもよく、80%未満であってもよく、70%未満であってもよい。
【0075】
伸長率0%における成型拡散層21のヘイズは、特に限定されないが、90%以上が好ましく、より好ましく95%以上、さらに好ましくは96%以上、特に好ましくは97%以上である。伸長率0%における成型拡散層21のヘイズの上限値は、特に限定されないが、例えば、100%未満であってもよい。なお、ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠した方法により測定可能である。また、本明細書において、ヘイズは、ヘイズメーター(例えば、NDH4000(日本電色工業社製))で測定される値を意味する。
【0076】
伸長率120%における成型拡散層21のヘイズは、特に限定されないが、90%以上が好ましく、より好ましく95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上である。伸長率120%における成型拡散層21のヘイズの上限値は、特に限定されないが、例えば、100%未満であってもよい。
【0077】
伸長率0%における成型拡散層21の算術平均粗さ(Ra)は、特に限定されないが、1000nm以下が好ましく、より好ましくは800nm以下、さらに好ましくは600nm以下である。伸長率0%における成型拡散層21の算術平均粗さの下限値は、特に限定されないが、200nmであってもよい。この範囲の算術平均粗さ(Ra)を持つことで、表面の拡散と内部の拡散のバランスが良好に保たれ、半値角を維持しやすくなる。なお、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601:2001に準拠した測定方法で、原子間力顕微鏡「Nanocuteシステム」(製品名、株式会社日立ハイテクサイエンス製、プローブ:Si単結晶プローブ、測定モード:DFMモード、画像処理:フラット処理(XY)1回)にて求めることができる。
【0078】
伸長率120%における成型拡散層21の算術平均粗さ(Ra)は、特に限定されないが、1500nm以下が好ましく、より好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。伸長率120%における成型拡散層21の算術平均粗さの下限値は、特に限定されないが、300nmであってもよい。この範囲の算術平均粗さ(Ra)を持つことで、表面の拡散と内部の拡散のバランスが良好に保たれ、半値角を維持しやすくなる。
【0079】
(着色層)
本実施形態の着色層31は、上述した隠蔽性及び意匠性を具備させるため、第2樹脂バインダーと、この第2樹脂バインダー中に分散された着色剤とを少なくも含有する。なお、本実施形態においては、基材フィルム11の一方の面11b上のみに着色層31を設けたものを例示したが、基材フィルム11の一方の面11b側及び他方の面11a側の双方に着色層31を設けてもよい。
【0080】
着色層31を構成する素材としては、公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。一般的には、第2樹脂バインダーと着色剤とを少なくとも含有する樹脂組成物の硬化物として着色層31を構成することができる。第2樹脂バインダーとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の公知の樹脂を用いることができる。これらの樹脂を用いて着色層31を形成することにより、基材フィルム11の表面硬度を高め、耐擦傷性や耐摩耗性を向上し、基材フィルム11の表面平滑性を高める、ハードコートフィルムとして、着色層31を機能させ得る。
【0081】
熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、飽和又は不飽和のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0082】
電離放射線硬化性樹脂としては、電離放射線(紫外線又は電子線)の照射によって硬化する光重合性プレポリマーを用いることができる。また、光重合性プレポリマーは単独でも使用可能であるが、架橋硬化性の向上や、硬化収縮の調整等、種々の性能を付与或いは向上させる観点から、光重合性モノマーを併用することが好ましい、さらに必要に応じて、光重合開始剤、光重合促進剤、増感剤(例えば、紫外線増感剤)等の助剤を用いてもよい。
【0083】
光重合性プレポリマーは、一般的に、カチオン重合型とラジカル重合型に大別される。カチオン重合型光重合性プレポリマーとしては、エポキシ系樹脂やビニルエーテル系樹脂などが挙げられる。エポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノール系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。ラジカル重合型光重合性プレポリマーとしては、アクリル系プレポリマー(硬質プレポリマー)が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。これらの中でも、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマー(硬質プレポリマー)が、ハードコート性の観点から好ましい。
【0084】
アクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリフルオロアルキルアクリレート、シリコーンアクリレート等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0085】
ウレタンアクリレート系プレポリマーとしては、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸との反応でエステル化したものが挙げられるが、これに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0086】
ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したものが挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0087】
エポキシアクリレート系プレポリマーとしては、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラックエポキシ樹脂のオキシラン環と、(メタ)アクリル酸との反応でエステル化したものが挙げられるが、これに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0088】
光重合性モノマーとしては、単官能アクリルモノマー(例えば2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等)、2官能アクリルモノマー(例えば1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等)、3官能以上のアクリルモノマー(例えばジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレートの双方を含む概念である。
【0089】
光重合開始剤としては、ラジカル重合型光重合性プレポリマーや光重合性モノマーに対しては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-(4-モルフォリニル)-1-プロパン、α-アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられるが、これらに特に限定されない。カチオン重合型光重合性プレポリマーに対する光重合開始剤としては、例えば芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオンなどのオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネートなどの陰イオンとからなる化合物が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0090】
光重合促進剤としては、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどが挙げられる。紫外線増感剤としては、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0091】
これら助剤の配合量は、特に限定されないが、通常、上述した光重合性プレポリマー及び光重合性モノマーの合計100質量部に対して、0.2~10質量部の範囲内で適宜設定すればよい。
【0092】
或いは、着色層31として、電離放射線硬化性有機無機ハイブリットハードコート剤(以下、単に「ハイブリットハードコート剤」とも称する。)の硬化膜を用いることもできる。ハイブリットハードコート剤としては、特に限定されないが、少なくとも表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」とも称する。)を含むものが挙げられる。ここで、光重合反応性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基等を挙げることができる。また、ハイブリットハードコート剤として、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。これらのハイブリットハードコート剤は、上述した反応性シリカ粒子や重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を公知の溶剤と混合或いは溶解させた液状混合物として用いることができる。
【0093】
反応性シリカ粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、0.001~0.1μmであることが好ましく、より好ましくは0.001~0.01μmである。このような反応性シリカ粒子としては、例えば、母体となる粉体状シリカ或いはコロイダルシリカに対し、分子中に加水分解性シリル基、重合性不飽和基、下記一般式(1)で表わされる基及び(2)で表わされる基を有する化合物(以下、「重合性不飽和基修飾加水分解性シラン」とも称する。)が、シリルオキシ基を介して化学的に結合しているものを用いることができる。すなわち、重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。なお、加水分解性シリル基としては、アルコキシリル基、アセトキシリル基等のカルボキシリレートシリル基、クロシリル基等のハロゲン化シリル基、アミノシリル基、オキシムシリル基、ヒドリドシリル基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、重合性不飽和基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニイル基、シンナモイル基、マレート基、アクリルアミド基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0094】
【化1】
(式中、Xは、-NH-、酸素原子又は硫黄原子を表し、Yは、酸素原子又は硫黄原子を表し、但し、Xが酸素原子のときYは硫黄原子である。)
【0095】
【化2】
【0096】
重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、或いは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
【0097】
ここで、多価不飽和有機化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0098】
また、単価不飽和有機化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0099】
ハイブリットハードコート剤の硬化膜は、反応性シリカ粒子や光重合反応可能な化合物の他に、上述した光重合開始剤、光重合促進剤、増感剤(例えば、紫外線増感剤)等の助剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を含有していてもよい。これらの好ましい素材や配合量については上述したとおりであるため、ここでの重複した説明は省略する。
【0100】
着色層31の第2樹脂バインダー中には、着色剤が分散されている。この着色剤は、成型拡散積層フィルム100を任意の色調に着色するとともに全光線透過率Tt(JIS K7361-1準拠)を所定範囲内に調整するためのものである。ここで用いる着色剤としては、所望性能に応じて公知の着色剤から適宜選択することができ、その種類は特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0101】
着色剤としては、着色層31や成型拡散積層フィルム100の色調を落ち着いた高級感のある暗色系(黒色系)に調整できる等の観点から、黒色粒子が好ましく用いられる。黒色粒子としては、例えば、マグネタイト系ブラック、銅・鉄・マンガン系ブラック、チタンブラック、カーボンブラック、アニリンブラック等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、黒色樹脂粒子、チタンブラック、カーボンブラック、アニリンブラックが好ましく、より好ましくはカーボンブラック、アニリンブラックである。カーボンブラックとしては、オイルファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ガスファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック等、各種公知の製法で作製されたものが知られているが、その種類は特に制限されない。導電性を付与し或いは静電気による帯電を防止する観点から、導電性カーボンブラックが特に好ましく用いられる。カーボンブラックの歴史は古く、例えば三菱化学株式会社、旭カーボン株式会社、御国色素株式会社、レジノカラー工業株式会社、Cabot社、DEGUSSA社等から、各種グレードのカーボンブラック単体及びカーボンブラック分散液が市販されており、要求性能や用途に応じて、これらの中から適宜選択すればよい。
【0102】
着色剤の粒子サイズは、全光線透過率Tt、分散性、製膜性、取扱性等の観点から、要求性能等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、平均粒子径D50が0.01~2.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.05~0.1.0μm、さらに好ましくは0.08~0.5μmである。例えば、0.01~2.0μmの平均粒子径D50を有するカーボンブラック着色剤として好ましく用いられる。粒子サイズが大きな着色剤を用いると全光線透過率Ttが低くなる傾向にあり、また、粒子サイズが小さな着色剤を用いると全光線透過率Ttが高くなる傾向にある。
【0103】
同様に、着色剤の含有量(総量)も、全光線透過率Tt、分散性、製膜性、取扱性等の観点から、要求性能等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、上述した他の必須成分及び任意成分との配合バランスの観点から、着色層31に含まれる全樹脂成分100質量部に対する固形分換算で、0.1~10.0質量部が好ましく、より好ましくは0.5~8.0質量部、さらに好ましくは1.0~6.0質量部である。着色剤の使用量が多いと全光線透過率Ttが低くなる傾向にある。
【0104】
また、防眩性を向上させる観点から、着色層31は、上述した第2樹脂バインダー及び着色剤以外に、多孔質シリカ等のシリカ類、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等のマット剤を含有していてもよい。マット剤を配合することにより、550nm反射率を調整でき、また、着色層31や成型拡散積層フィルム100の色調(質感)を暗色系から透明系(クリア系)に調整することもできる。マット剤の粒子サイズは、全光線透過率Ttや550nm反射率、分散性、製膜性、取扱性等の観点から、要求性能等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、平均粒子径D50が1~20μmが好ましく、より好ましくは1~15μm、さらに好ましくは2~10μmである。また、マット剤として、平均粒子径D50がナノノーダーサイズの小粒径のものを含んでいてもよい。マット剤の配合量は、必要に応じて適宜調整でき、特に限定されないが、着色層31に含まれる全樹脂成分100質量部に対する固形分換算で、1~15質量部が好ましく、1~13質量部がより好ましく、1~10質量部がさらに好ましい。
【0105】
なお、着色層31は、本発明の効果を過度に阻害しない程度であれば、当業界で公知の各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、表面調整剤、滑剤、蛍光増白剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、界面活性剤、分散剤、貯蔵安定剤、架橋剤、シランカップリング剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。滑剤としては、ポリエチレン、パラフィン、ワックス等の炭化水素系滑剤;ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸系滑剤;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等のアミド系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド等のエステル系滑剤;アルコール系滑剤;金属石鹸、滑石、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤;シリコーン樹脂粒子、ポリテトラフッ化エチレンワックス、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂粒子等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、特に有機系滑剤が好ましく用いられる。また、バインダー樹脂として、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を用いる場合には、例えばn-ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン等の増感剤や紫外線吸収剤等を用いてもよい。これらの含有割合は、特に限定されないが、着色層31中に含まれる全樹脂成分に対する固形分換算で、一般的にはそれぞれ0.01~5質量%であることが好ましい。
【0106】
着色層31の厚みは、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、0.1~20μmが好ましく、より好ましくは0.5~15μm、さらに好ましくは2~12μmである。
【0107】
また、着色層31の表面硬度も、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、ハードコート性が求められる場合には、好ましくはHB以上、より好ましくはF以上、さらに好ましくはH以上である。なお、本明細書において、着色層31の表面硬度の値は、JIS-K5600(1999)に準拠した方法で測定した鉛筆引っかき値(鉛筆硬度)で表される値とする。
【0108】
着色層31の製造方法は、当業界で公知の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、上述した第2樹脂バインダー及び着色剤を含む樹脂組成物(塗布液)を、基材フィルム11の一方の面11b側にドクターコート、ディップコート、ロールコート、バーコート、ダイコート、ブレードコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、スピンコート等の従来公知の塗布方法で塗布し、必要に応じて乾燥した後に硬化処理を行う等することで、基材フィルム11上に着色層31を設けることができる。ここで使用する塗布液は、常法にしたがい各種溶媒を配合することができる。溶媒としては、水;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエーテル系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、並びにこれらの混合溶媒等、当業界で公知のものを用いることができる。このように塗布された塗膜に、必要に応じて電離放射線処理、熱処理、及び/または加圧処理等を施すことにより、着色層31を製膜することができる。
【0109】
また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、及び電離放射線硬化性有機無機ハイブリットハードコート剤よりなる群から選択される1種以上と着色剤とを少なくとも含有する樹脂組成物を基材フィルム11上に成型加工することにより、基材フィルム11上に着色層31が設けられた成型加工物としての積層体を得ることもできる。成型加工方法としては、公知の方法を適用することができ、特に限定されない。例えば、プレス成型、絞り加工成型、圧空成形、真空成型、インサート成形、フィルムインサート成形等の公知の成型方法を適用して、基材フィルム11上に樹脂組成物を供給し硬化させることで、成型加工物としての上記積層体を得ることができる。このとき、成型拡散層21や反射防止層等も同様に成型加工することができ、或いは、基材フィルム11と着色層31の成型加工物の成型加工後に成型拡散層21や反射防止層等を設けることもできる。一例を挙げると、基材フィルム11の一方の面11b上に着色層31を成膜し、必要に応じで着色層31上に反射防止層等をさらに成膜し、次いで、基材フィルム11の他方の面11a上に成型拡散層21を成膜し、得られた積層体(反射防止層等、着色層31、基材フィルム11、及び成型拡散層21等をこの順に有する積層体)をインサート成形する等して、所定形状に成形された成型加工物を得ることができる。
【0110】
電離放射線照射において使用する光源は、特に限定されない。例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、電子線加速器等を用いることができる。また、このときの照射量も、使用する光源の種類や出力性能等に応じて適宜設定でき、特に限定されない、紫外線の照射量は、一般的には積算光量100~6,000mJ/cm2程度が目安とされる。
【0111】
また、熱処理において使用する熱源も、特に限定されない。接触式及び非接触式のいずれであっても好適に使用することができる。例えば、遠赤外線ヒーター、短波長赤外線ヒーター、中波長赤外線ヒーター、カーボンヒーター、オーブン、ヒートローラ等を用いることができる。熱処理における処理温度は、特に限定されないが、一般的には80~200℃であり、好ましくは100~150℃である。
【0112】
なお、伸長率0%における着色層31の全光線透過率Tt、すなわち着色層31の厚み方向からの垂直入射、すなわち入射角0°での全光線透過率Tt(JIS K7361-1準拠)は、特に限定されないが、上述した成型拡散積層フィルム100の全光線透過率Ttを実現する観点から、60~90%が好ましく、より好ましくは65~85%、さらに好ましくは67~83%である。なお、全光線透過率Ttは、JIS K7361-1:1997に準拠した方法により測定可能である。
【0113】
伸長率120%における着色層31の全光線透過率Tt、すなわち着色層31の厚み方向からの垂直入射、すなわち入射角0°での全光線透過率Tt(JIS K7361-1準拠)は、特に限定されないが、上述した成型拡散積層フィルム100の全光線透過率Ttを実現する観点から、60~90%が好ましく、より好ましくは65~85%、さらに好ましくは67~83%である。
【0114】
伸長率0%における着色層31のヘイズは、特に限定されないが、1~20%が好ましく、より好ましく2~15%、さらに好ましくは3~12%である。なお、ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠した方法により測定可能である。
【0115】
伸長率120%における着色層31のヘイズは、特に限定されないが、1~20%が好ましく、より好ましく2~15%、さらに好ましくは3~12%である。
【0116】
(他の任意の層)
必要に応じて設けられる反射防止層は、可視光域において透明性を有し、且つ層界面による光の干渉作用を利用して反射光を打ち消し合う性能(以下、反射防止性という)を有する層である。このように反射防止層をさらに設けることで、外光や外部影像の映り込みを防止乃至低減することができる。このような反射防止性を有する反射防止層としては、透明性の高い低屈折率層を、特定波長(反射防止を目的とする主波長)に対して光学膜厚として特定波長の1/4と等しくなるような膜厚に設ける単層反射防止層の他、この低屈折率層に特定波長に基づいた光学膜厚の高屈折率層や中屈折率層を適宜一層以上積層した多層反射防止層が採用できる。なお、ここでいう光学膜厚とは、膜の屈折率nと機械的な膜厚dとの積ndによって求められる膜厚のことである。
【0117】
反射防止層を構成する素材は、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。例えば、低屈折率層を構成する材料としては、Siの酸化物やLi、Na、Mg、Al、Ca等のフッ化物が知られている。また、高屈折率層を構成する材料としては、Ti、Cr、Zr、Ni、Mb等の単体やTi、Zn、Y、Zr、In、Sn、Sb、Hf、Ta、Ce、Pr、Nd等の酸化物が知られている。さらに、中屈折率層を構成する材料としては、La、Nd、Pb等のフッ化物が知られている。反射防止層を形成する方法としては、上述した低、高或いは中屈折率層を構成する材料等を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜法により設ける方法が知られている。また、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等の珪素アルコキシドを加水分解して調製した酸化珪素ゾルや、ジルコニアプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタンイソプロポキシド等の珪素以外の金属アルコキシドを加水分解して調製した金属酸化物ゾル等を適宜選択して、ブレードコータ法、ロッドコータ法、グラビアコータ法などの塗布法により形成することもできる。さらに、フッ素含有樹脂、フッ素系高分子、アルコキシシラン加水分解物を利用したアルコキシシラン系樹脂等の反射防止塗料を塗布する液体塗布法により設ける方法も採用できる。
【0118】
反射防止層の厚みは、可視光域の反射防止を好適に行うに際して、その構成中の低・高・中屈折率層の光学膜厚が0.01~0.8μm、好ましくは0.01~0.4μm範囲で適宜選択した低・高・中屈折率層を必要に応じて積層した厚みとすることができる。なお、反射を防止しようとする光の中心波長は可視光域となるので、λを一般的に可視光域といわれる波長の中心波長である550nmとし、無機薄膜として酸化珪素を用いた場合には屈折率nは1.40程度となるため、反射防止層の厚みdは約0.1μmとなる。
【0119】
必要に応じて設けられる印刷層は、美麗な外観イメージや識別性を与えるため等の目的で設けられるものであり、線、枠、文字、記号、模様、絵柄、商品名、説明等を表示する加飾層である。印刷層は、水性インク、油性インク、昇華性インク等を用いて、グラビア印刷、ロール印刷、スプレー印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷方法で形成することができる。印刷層は、単色印刷であっても多色印刷であってもよく、また、スクリーン印刷でもベタ印刷でもよい。
【0120】
印刷層の厚みは、常法にしたがい適宜調整することができ、特に限定されない。一般的には0.01~200μmが好ましく、より好ましくは0.05~150μm、さらに好ましくは0.1~100μmである。
【0121】
(成型拡散積層フィルムの諸物性)
以上のとおり構成された本実施形態の成型拡散積層フィルム100は、基材フィルム11と、この基材フィルム11の一方の面11a側に設けられた成型拡散層21と、基材フィルム11の他方の面11b側に設けられた着色層31とを少なくとも有する積層体を備える。
【0122】
ここで、本実施形態の成型拡散積層フィルム100の伸長率0%における全光線透過率Tt(JIS K7361-1準拠)、すなわち伸長率0%における成型拡散積層フィルム100の厚み方向からの垂直入射、すなわち入射角0°での全光線透過率Ttは、特に限定されないが、30~70%が好ましく、より好ましくは35~65%、さらに好ましくは40~60%、特に好ましくは45~55%である。
【0123】
また、本実施形態の成型拡散積層フィルム100の伸長率120%における全光線透過率Tt(JIS K7361-1準拠)、すなわち伸長率120%における成型拡散積層フィルム100の厚み方向からの垂直入射、すなわち入射角0°での全光線透過率Ttは、特に限定されないが、30~70%が好ましく、より好ましくは35~65%、さらに好ましくは40~60%、特に好ましくは45~55%である。
【0124】
一方、本実施形態の成型拡散積層フィルム100の伸長率0%におけるヘイズは、特に限定されないが、90%以上が好ましく、より好ましく95%以上、さらに好ましくは96%以上、特に好ましくは97%以上である。伸長率0%における成型拡散積層フィルム100のヘイズの上限値は、特に限定されないが、例えば、100%未満であってもよい。実際には、測定機器の検出限界により定まることがある。なお、ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠した方法により測定可能である。また、本明細書において、ヘイズは、ヘイズメーター(例えば、NDH4000(日本電色工業社製))で測定される値を意味する。
【0125】
また、本実施形態の成型拡散積層フィルム100の伸長率120%におけるヘイズは、特に限定されないが、90%以上が好ましく、より好ましく95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上である。伸長率120%における成型拡散積層フィルム100のヘイズの上限値は、特に限定されないが、例えば、100%未満であってもよい。実際には、測定機器の検出限界により定まることがある。
【0126】
他方、本実施形態の成型拡散積層フィルム100は、着色層31側から測定したSCI方式における550nm反射率が10.0%以下であることが好ましく、より好ましくは9.0%以下、さらに好ましくは8.0%以下、特に好ましくは7.0%以下である。なお、本明細書において、550nm反射率は、分光測色計(例えばCM-700d(コニカミノルタ社製)でSCI方式にて測定される値を意味する。このように低反射な表面とすることで、内部隠蔽性がより高められ、また、光電素子等の光源の点灯時であっても消灯時であっても高級感のあるデザインを示し、周囲の内装材や外装材等のデザインとの意匠性の統一感が高められる。なお、550nm反射率の測定の際には、測定対象となる成型拡散積層フィルム100が置かれた載置面からの反射光の影響を抑制するため、裏面側(成型拡散層21上)に黒ビニルテープ(ニチバン社製、VT386)を気泡や異物等が入らないようにスキージ等で均一に貼り付けた状態で測定を行うものとする。着色層31そのものの550nm反射率の測定の際も同様とし、着色層31の裏面側に黒ビニルテープ(ニチバン社製、VT386)を気泡や異物等が入らないようにスキージ等で均一に貼り付けた状態で測定を行うものとする。
【0127】
より高い意匠性を得る観点から、本実施形態の成型拡散積層フィルム100は、照明機器やディスプレイ等の被着体の表面に設けられた状態において、着色層31側から測定したSCI方式における550nm反射率が6%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは4%以下、特に好ましくは3%以下である。
【0128】
<成型拡散積層フィルムの使用方法>
本実施形態の成型拡散積層フィルム100の使用方法としては、常法にしたがって行えばよく、特に限定されない。例えば、
(a)被着体の表面に成型拡散積層フィルム100を圧着させるプレフォーム法、
(b)金型内部に成型拡散積層フィルム100を配置し、その内部に樹脂を流し込み成形するインサートモールド成型法、
(c)減圧条件下で、被着体の片面側に成型拡散積層フィルム100を非接触方式で加圧することによって、被着体に積層する3次元表面加飾成型法
等の公知の方法が適用可能である。3次元表面加飾成型法は、例えば、TOM成形機「NGF-5012-RS」(布施真空株式会社製)により行うことができる。これらの中でも、(b)インサートモールド成型法又は(c)3次元表面加飾成型法が好ましく、(b)インサートモールド成型法がより好ましい。
【0129】
本実施形態において、成型拡散積層フィルム100を被着体に積層させる際の温度(例えば、加飾成型機の成型室の温度)は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、70~200℃であることが好ましい。上記温度は、より好ましくは100~160℃であり、さらに好ましくは130~160℃である。上記温度範囲内で成型を行うことにより、被着体の表面に追従し、成型拡散積層フィルム100が伸長される。成型拡散積層フィルム100の伸長率が80%以上ないしは120%以上となるような形状を被着体が有していたとしても、本実施形態お成型拡散積層フィルム100であれば、当該成型による半値角の低下を抑制することができる。
【0130】
<変形例>
なお、本発明の成型拡散積層フィルムは、成型拡散層21、基材フィルム11、及び着色層31が少なくともこの順に配列された積層構造を有する限り、種々の態様で実施可能である。
【0131】
例えば、図6に示すように、反射防止層41、成型拡散層21、基材フィルム11、及び着色層31が少なくともこの順に配列された積層構造の成型拡散積層フィルム101の形態で実施することもできる。
【0132】
そして、本発明の成型拡散積層フィルムは、光電素子を備える各種部材の成型拡散フィルムとして、幅広い用途で使用可能である。典型的には、発光ダイオード(LED)等の強い指向性を有する光を高拡散させる、車載用光拡散用途、照明用光拡散用途等が挙げられるが、その用途はこれらに特に限定されない。本発明の成型拡散積層フィルムの適用対象としては、例えば、タッチパネル、車載センサー、車載カメラ、赤外線レーダー、ミリ波レーダー、超音波センサー、LiDAR等の光電素子を用いた各種機器の成型拡散フィルムとして使用することができる。また、LED光源、導光棒、導光ファイバー、導光チューブ、導光リング、導光板、照明パネル等の光電素子を備える照明機器、例えばアンビエントライト、タスクライト、タスクアンビエントライト、コープライト、エリアライト等の間接照明の成型拡散フィルムとして、例えば車内空間、客室空間、サニタリー空間、寝室空間、オフィス空間、ロビー空間、レストラン、シアタールーム、ライブハウス等において使用することができる。
【実施例0133】
以下に試験例、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらによりなんら限定されるものではない。すなわち、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい上限値又は好ましい下限値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0134】
[測定方法]
<成型拡散層の平均膜厚T>
積層フィルムの断面をSEM(Scanning Electron Microscope(走査型電子顕微鏡))で、2,000倍の倍率にて5か所の断面を確認し、それぞれ10か所、合計50か所の平均値を算出し、この平均値を成型拡散層の平均膜厚Tとした。
【0135】
<半値角>
光学散乱測定器「MiniDiff V2」(製品名、Light Tec社製)により測定を行った。透過光源の上に成型拡散層が入光面となる様に積層フィルムを静置し、その上に受光部を乗せる。入射光源はG(525nm)、入射光の角度は積層フィルムに対して垂直となる測定条件を使用し、測定視野(-75度~75度)における透過光の強度を測定した。正面光の強度I0に対して、その半分の強度I1/2になる角度を計測し、半分以上の強度を放射する角度範囲を算出し、半値角(度)とした。
【0136】
<全光線透過率Tt及びヘイズ>
全光線透過率TtをJIS K7361-1:1997に準拠した測定方法で、ヘイズ(Haze)をJIS K7136:2000に準拠した測定方法で、それぞれヘイズメーター「NDH4000」(製品名、日本電色工業株式会社製)を用いて、各積層フィルムの成型拡散層を入光面として、各積層フィルムの全光線透過率Tt及びヘイズ(Haze)を測定した。
【0137】
[積層フィルムの製造]
<実施例1~7及び比較例1>
表1に示すように、光拡散粒子、樹脂バインダー、及び適量の有機溶剤を混合及び撹拌し、成型拡散層用塗布液を得た後、厚み250μm、ガラス転移温度150℃のポリカーボネートフィルムからなる基材フィルム上に、乾燥後の厚みが表1に示す値となるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して成型拡散層(光拡散層)を形成し、実施例1~7及び比較例1の積層フィルムを得た。また、実施例5の積層フィルムの断面のSEM写真を図7~9に示した。図7は、伸長率0%における成型拡散層の断面のSEM写真である。図8は、伸長率40%における成型拡散層の断面のSEM写真である。図9は、伸長率80%における成型拡散層の断面のSEM写真である。
【0138】
<参考例1>
下記処方の成型拡散層用塗布液R1を混合し撹拌した後、厚み250μmのポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラーT60」(製品名、東レ株式会社製)からなる基材フィルム上に、乾燥後の厚みが5μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して光拡散層を形成した。次いで、当該基材フィルム上の成型拡散層が形成された面とは反対面に、下記処方のバックコート層用塗布液を乾燥後の厚みが5μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して、バックコート層を形成し、参考例1の積層フィルムを得た。
(成型拡散層塗膜用塗布液R1)
・アクリルポリオール樹脂(固形分50%、Tg96℃、屈折率1.51) 6質量部
・アクリルポリオール樹脂(固形分50%、Tg19℃、屈折率1.49)14質量部
・ポリイソシアネート(固形分60%) 4質量部
・アクリル樹脂粒子(平均粒子径2~3μm、屈折率1.49) 11質量部
・希釈溶剤 適量
(バックコート層用塗布液)
・アクリルポリオール樹脂(固形分50%、Tg65℃、屈折率1.49)10質量部
・ポリイソシアネート(固形分60%) 2質量部
・アクリル樹脂粒子(平均粒子径5μm、屈折率1.49) 0.1質量部
・希釈溶剤 適量
【0139】
[評価]
<伸長試験>
形状追従性の評価としてJIS K7127:1999に準じて引張試験を行い、各積層フィルムの伸長率を測定した。長さ100mm×幅25mmの短形に切り出してサンプルを作製した。次に、両端部を除いた、サンプルの中央部付近に長さ50mm間隔でマーキングを行い、引張試験機「AGS-1kNX」(商品名、株式会社島津製作所製)に温度調節機構を設置した装置に、チャックにてマーキング部を挟まないようにサンプルを設置し、サンプルを160℃に設定し、チャック間距離50mm、引張速度200mm/minで、引張試験を行い、伸長率0%、40%、60%、80%、及び120%で前述の半値角、伸長率0%、及び120%で全光線透過率Tt、伸長率0%、及び120%でヘイズをそれぞれ測定し、表1に示した。
【0140】
【表1】
【0141】
(光拡散粒子)
A-1:ベンゾグアナミン粒子(平均粒子径(D50)2μm,屈折率n=1.67,比重1.4g/cm3,融点225℃以上)
A-2:スチレン粒子(平均粒子径(D50)4μm,屈折率n=1.59,比重1.1g/cm3,分解温度250~270℃)
A-3:アクリル粒子(平均粒子径(D50)5μm,屈折率n=1.49,比重1.1g/cm3,分解温度250~270℃)
A-4:アクリル粒子(平均粒子径(D50)2μm,屈折率n=1.49,比重1.1g/cm3,分解温度250~270℃)
(樹脂バインダー)
B-1:アクリル樹脂(屈折率n=1.49,比重1.1g/cm3,ガラス転移温度100℃)
B-2:アクリル熱硬化樹脂(屈折率n=1.49,比重1.1g/cm3
【0142】
以上、実施例及び比較例の結果から、本発明に係る成型拡散層によれば、高い伸長率の加工後であっても半値角の低下を抑制することができることがわかる。また、実施例1と比較例1との対比によれば、T/t比が所定の範囲内であることで、高い伸長率の加工後であっても半値角の低下を抑制することができることがわかる。実施例1~実施例5の結果から、広い範囲の光拡散粒子の含有量において、伸長加工によっても半値角が維持されることがわかる。実施例6及び7によれば、スチレン樹脂又はアクリル樹脂を含有する光拡散粒子であっても、本実施形態に係る積層フィルムによれば、高い伸長率の加工後であっても半値角の低下を抑制することができることがわかる。
【0143】
次に、表2に示すように、UV硬化性樹脂、重合性モノマー、重合開始剤、着色剤として250nmの平均粒子径D50を有するカーボンブラック、及び適量の有機溶剤を混合及び撹拌し、着色層用塗布液を得た。得られた着色層用塗布液を、実施例5又は参考例1の積層フィルムの基材フィルム上の、成型拡散層が形成された面とは反対面に、乾燥後の厚みが3.5μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して着色層をそれぞれ形成し、図1と同等構造を有する積層フィルムをそれぞれ作製した。得られた実施例5-1及び実施例5-2並びに参考例2の積層フィルムの、着色層側から測定した全光線透過率Tt、ヘイズ、及び550nm反射率をそれぞれ測定し、表2に示した。なお、表2において「phr」は、着色層中に含まれる全樹脂成分100質量部に対する固形分換算の質量部を示す。
【0144】
【表2】
【0145】
本発明に相当する実施例5-1及び実施例5-2の成型拡散積層フィルムは、光源を隠蔽しつつ広域の光量を確保し、且つ、光源の消灯時に光源が成型拡散積層フィルムを介して視認し難く、周囲の統一感のあるデザインを呈していた。また、実施例5-1及び実施例5-2の成型拡散積層フィルムは、消灯時であっても高級感のあるデザインを示し、周囲の内装材や外装材等のデザインとの意匠性の統一感に優れていた。これに対し、参考例2の成型拡散積層フィルムは、光源の隠蔽性に劣り、光源の消灯時に成型拡散積層フィルムを介して視認され、周囲と統一感のないデザインを呈するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明の成型拡散積層フィルム等は、隠蔽性及び意匠性に優れ、光電素子等の光源の点灯時であっても消灯時であっても高級感のあるデザインを実現することができ、周囲の内装材や外装材等のデザインとの意匠性の統一感を高めることができるため、光電素子を備える各種部材の成型拡散フィルムとして、広く且つ有効に利用可能であり、例えば発光ダイオード(LED)等の強い指向性を有する光を高拡散させる、車載用光拡散成型拡散積層フィルム、照明用光拡散成型拡散積層フィルム、ディスプレイ用光拡散成型拡散積層フィルム等として殊に有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0147】
100 ・・・成型拡散積層フィルム
11 ・・・基材フィルム
11a・・・面
11b・・・面
21 ・・・成型拡散層
22 ・・・第1樹脂バインダー
23 ・・・光拡散粒子
31 ・・・着色層
41 ・・・反射防止層
51 ・・・印刷層
101 ・・・成型拡散積層フィルム
200 ・・・発光部材
B ・・・凹部
V ・・・空隙
Tt ・・・全光線透過率
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9