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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170007
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】ロータリースイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 19/10 20060101AFI20221102BHJP
   H01H 19/08 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H01H19/10 A
H01H19/10 C
H01H19/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075821
(22)【出願日】2021-04-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000120489
【氏名又は名称】栄通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】増子 淳
【テーマコード(参考)】
5G219
【Fターム(参考)】
5G219HT02
5G219KS03
(57)【要約】
【課題】コンパクトな形状でありながら、接点数を多く設けることが可能なロータリースイッチを提供する。
【解決手段】ロータリースイッチの第1コンタクト4は、回転可能なシャフト3に取り付けられ、COM端子に導通している。固定基板6は、シャフト3の回転方向に沿って並ぶ所定数の出力用端子8を有する。可動基板7は、所定数の出力用端子よりも少ない特定数の第2コンタクト5を有し、シャフト3の軸周りに回転することにより、特定数の第2コンタクト5を所定数の出力用端子8と導通させる。間欠歯車機構は、シャフト3を1回転させると、その回転を伝えて可動基板7を所定の角度分回転させる。そして、シャフト3を回転させると、第1コンタクト4は、特定数の第2コンタクト5と順に接触する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なシャフトと、
前記シャフトに取り付けられ、COM端子に導通した第1コンタクトと、
前記シャフトの回転方向に沿って並ぶ所定数の出力用端子を有する固定基板と、
前記所定数の出力用端子よりも少ない特定数の第2コンタクトを有し、前記シャフトの軸周りに回転することにより、前記特定数の第2コンタクトを前記所定数の出力用端子と導通させる可動基板と、
前記シャフトを1回転させると、その回転を伝えて前記可動基板を所定の角度分回転させる間欠歯車機構と、を備え、
前記シャフトを回転させると、前記第1コンタクトは、前記特定数の第2コンタクトと順に接触する
ロータリースイッチ。
【請求項2】
前記所定数を前記特定数で除算することによって得られる商は、整数である
請求項1に記載のロータリースイッチ。
【請求項3】
前記固定基板は、開口部を有し、
前記可動基板は、前記固定基板の開口部内に配置されている
請求項1又は2に記載のロータリースイッチ。
【請求項4】
前記可動基板は、開口部を有し、
前記シャフトは、前記可動基板の開口部を貫通している
請求項1~3のいずれか1項に記載のロータリースイッチ。
【請求項5】
前記固定基板は、所定数の固定基板側接点ホールと、前記所定数の固定基板側接点ホールと前記所定数の出力用端子を導通させる回路パターンを有し、
前記特定数の第2コンタクトは、前記所定数の固定基板側接点ホールに係合するドーム状の凸部を有する
請求項1~4のいずれか1項に記載のロータリースイッチ。
【請求項6】
前記可動基板は、特定数の可動基板側接点ホールと、前記特定数の可動基板側接点ホールと前記特定数の第2コンタクトを導通させる回路パターンを有し、
前記第1コンタクトは、前記特定数の可動基板側接点ホールに係合するドーム状の凸部を有する
請求項1~5のいずれか1項に記載のロータリースイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1回路のロータリースイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1回路のロータリースイッチは、基板の円周上に接点を配置する。そのため、接点数を多く設けようとした場合は、隣接する接点同士の間隔、すなわちスイッチ切り替え角度が狭くなり、スイッチの切り替え時に接点が短絡してしまう可能性がある。したがって、1枚の基板に配置できる接点数には限界がある。ロータリースイッチとしては、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
1回路のロータリースイッチにおいて、スイッチの切り替え角度を確保しながら接点数を増やしたものとしては、例えば、図10に示すような、多回転ロータリースイッチ101がある。多回転ロータリースイッチ101は、シャフト102と、螺旋形状の基板103と、コンタクト104と、COM端子105を備える。
【0004】
コンタクト104は、シャフト102に移動可能に取り付けられており、シャフト102の軸方向に移動可能である。COM端子105は、シャフト102を回転可能に支持する支持ベース107に固定されている。基板103上には、複数の接点108が周方向に沿って等間隔に配置されている。シャフト102を回転させると、コンタクト104は、基板103上を摺動して、複数の接点108に順番に接触する。これにより、接点108とCOM端子105との導通が次々と切り替わり、1回路における多接点化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-219264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図10に示すような多回転ロータリースイッチ101は、基板103が螺旋形状をしているため、シャフト102の軸方向に広いスペースを確保する必要がある。その結果、接点数を多くするにつれて、ロータリースイッチが大型化してしまうという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、コンパクトな形状でありながら、接点数を多く設けることが可能なロータリースイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のロータリースイッチは、回転可能なシャフトと、第1コンタクトと、固定基板と、可動基板と、間欠歯車機構とを備える。第1コンタクトは、シャフトに取り付けられ、COM端子に導通している。固定基板は、シャフトの回転方向に沿って並ぶ所定数の出力用端子を有する。可動基板は、所定数の出力用端子よりも少ない特定数の第2コンタクトを有し、シャフトの軸周りに回転することにより、特定数の第2コンタクトを所定数の出力用端子と導通させる。間欠歯車機構は、シャフトを1回転させると、その回転を伝えて可動基板を所定の角度分回転させる。そして、シャフトを回転させると、第1コンタクトは、特定数の第2コンタクトと順に接触する。
【発明の効果】
【0009】
上記構成のロータリースイッチによれば、コンパクトな形状でありながら、接点数を多く設けることができる。
なお、上述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るロータリースイッチの外観斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るロータリースイッチの上面図である。
図3図2に示すA-A線に沿う断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るロータリースイッチの分解斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係るロータリースイッチから筐体ケースを取り除いた状態を下方から見た斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係るロータリースイッチの第1コンタクトを示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係るロータリースイッチにおける可動基板の動作を説明する図である。
図8】本発明の一実施形態に係るロータリースイッチにおける可動基板の動作を説明する図である。
図9】本発明の一実施形態に係るロータリースイッチにダイアルを組み合わせる例を説明する図である。
図10】従来の多回転ロータリースイッチの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.ロータリースイッチの構成
以下、本発明の一実施形態に係るロータリースイッチの構成について、図1図6を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0012】
図1は、ロータリースイッチの外観斜視図である。図2は、ロータリースイッチの上面図である。図3は、図2に示すA-A線に沿う断面図である。
【0013】
図1に示すロータリースイッチ1は、1回路30接点のロータリースイッチである。なお、本発明に係るロータリースイッチとしては、30接点に限定されず、接点数を適宜設定することができる。
【0014】
図1図3に示すように、ロータリースイッチ1は、筐体2と、シャフト3と、第1コンタクト4と、10個の第2コンタクト5(図4参照)と、固定基板6と、可動基板7と、30個の出力用端子8と、COM(common)端子9とを備える。なお、出力用端子8の個数である「30」は、本発明に係る所定数に対応し、第2コンタクト5の個数である「10」は、本発明に係る特定数に対応する。
【0015】
また、ロータリースイッチ1は、間欠歯車機構10を備えている。間欠歯車機構10は、シャフト3の回転を可動基板7に伝えて、可動基板7を間欠的に回転させる。間欠歯車機構10は、駆動フェースギア11と、中間ギア12と、従動フェースギア13とを有する(図3参照)。
【0016】
筐体2は、固定基板6が固定されるケース21と、COM端子9が固定される裏蓋22から構成されている。ケース21は、適当な厚みを有する円板状のベース部24と、ベース部24の下面に連続するシャフト受け部25を有する。ベース部24の中心には、シャフト3が貫通する貫通孔が設けられている。シャフト受け部25は、シャフト3が貫通する筒孔を有する筒状に形成されている。シャフト受け部25の筒孔とベース部の貫通孔は、シャフト用軸受孔21c(図4参照)を形成する。
【0017】
裏蓋22は、有底の筒状に形成されている。裏蓋22は、上端が閉じられている。裏蓋22における下端の開口は、ケース21におけるベース部24の上面に対向する。裏蓋22の上面には、複数の裏蓋固定用ねじ27が貫通する複数の貫通孔が形成されている。裏蓋22は、複数の裏蓋固定用ねじ27を用いてケース21と締結されている。
【0018】
筐体2の内部には、第1コンタクト4、第2コンタクト5(図4参照)、固定基板6、可動基板7、30個の出力用端子8、COM端子9、及び間欠歯車機構10が配置されている。図1に示すように、ケース21の上端と裏蓋22の下端との間には、所定の間隙2aが形成されている。30個の出力用端子8とCOM端子9の一部は、間隙2aからケース21の径方向にそれぞれ突出している。
【0019】
図4は、ロータリースイッチの分解斜視図である。図5は、ロータリースイッチから筐体ケースを取り除いた状態を下方から見た斜視図である。図6は、ロータリースイッチの第1コンタクトを示す斜視図である。
【0020】
図4に示すように、ケース21の上面には、円形の第1の凹部21aが形成されている。また、第1の凹部21aには、円形の第2の凹部21bが形成されている。そして、第2の凹部21bには、上述したシャフト用軸受孔21cと、中間ギア組付け用溝21dが形成されている。
【0021】
中間ギア組付け用溝21dには、間欠歯車機構10の中間ギア12が回転可能に組み込まれる。中間ギア12の回転軸は、ケース21の径方向に延びている。また、第2の凹部21bには、間欠歯車機構10の従動フェースギア13が回転可能に配置される。従動フェースギア13の回転中心は、シャフト3の回転軸と一致する。
【0022】
第1の凹部21aには、固定基板6が配置されている。第1の凹部21aには、複数の位置だしピン21eが設けられている。固定基板6には、位置だしピン21eが嵌合する位置出し孔が設けられている。また、固定基板6には、複数の裏蓋固定用ねじ27が貫通する複数の貫通孔が形成されている。
【0023】
図4及び図5に示すように、固定基板6は、所定の幅を有する円環状に形成されている。固定基板6の内周側には、30個の接点ホール61が設けられている。なお、接点ホール61は、本発明に係る固定基板側接点ホールに対応する。30個の接点ホール61は、周方向に沿って等間隔で並んでいる。すなわち、隣り合う接点ホール61は、12°ずれている(360°÷30個=12°)。
【0024】
図4に示すように、固定基板6の上面には、30個の出力用端子8が取り付けられている。30個の出力用端子8は、30個の接点ホール61と一対一の関係である。各出力用端子8と各接点ホール61は、固定基板6の径方向で対向している。そして、各出力用端子8と各接点ホール61は、固定基板6の径方向に延びる回路パターン62によって導通している。
【0025】
間欠歯車機構10の駆動フェースギア11は、円環状に形成されており、シャフト3に嵌合固定されている。シャフト3は、略円柱状に形成されている。駆動フェースギア11は、シャフト3の軸方向の中間部に配置されている。駆動フェースギア11の外径は、シャフト用軸受孔21cの直径よりも大きい。また、駆動フェースギア11の下面には、中間ギア12に噛み合う複数の突起11a(本実施形態では2個)が形成されている。
【0026】
間欠歯車機構10の従動フェースギア13は、円環状に形成されている。従動フェースギア13は、第2の凹部21bに配置された状態で、固定基板6における中央の開口部に挿入される(図3参照)。したがって、従動フェースギア13の外径は、固定基板6の内径よりも小さい。また、従動フェースギア13における中央の開口部には、駆動フェースギア11が挿入される(図3参照)。したがって、従動フェースギア13の内径は、駆動フェースギア11の外径よりも大きい。
【0027】
従動フェースギア13の上面には、可動基板用凹部13aが形成されている。可動基板用凹部13aには、可動基板7が固定されている。可動基板用凹部13aには、複数の位置だしピン13bが設けられている。可動基板7には、位置だしピン13bが嵌合する位置出し孔が設けられている。また、可動基板7には、複数の可動基板固定用ねじ77が貫通する複数の貫通孔が形成されている。可動基板7は、複数の可動基板固定用ねじ77を用いて従動フェースギア13と締結されている。
【0028】
図5に示すように、従動フェースギア13の下面には、複数の歯部13cが設けられている。複数の歯部13cは、従動フェースギア13の周方向に並んでおり、従動フェースギア13の孔の周りを一周している。複数の歯部13cは、中間ギア12に噛み合う。駆動フェースギア11の複数の突起11aが中間ギア12に噛み合うとき、駆動フェースギア11の回転が中間ギア12を介して従動フェースギア13に伝わる。その結果、従動フェースギア13は、間欠的に回転する。本実施形態では、駆動フェースギア11(シャフト3)が360°回転する度に、従動フェースギア13が12°回転する。
【0029】
図4に示すように、可動基板7は、所定の幅を有する円環状に形成されている。可動基板7は、従動フェースギア13に取り付けられた状態で固定基板6における中央の開口部に配置されている(図3参照)。可動基板7には、10個の接点ホール71が設けられている。なお、接点ホール71は、本発明に係る可動基板側接点ホールに対応する。10個の接点ホール71は、周方向に沿って等間隔で並んでいる。すなわち、隣り合う接点ホール71は、36°ずれている(360°÷10個=36°)。
【0030】
可動基板7の上面には、10個の第2コンタクト5が取り付けられている。10個の第2コンタクト5は、10個の接点ホール71と一対一の関係である。各第2コンタクト5と各接点ホール71は、可動基板7の径方向で対向している。そして、各第2コンタクト5と各接点ホール71は、可動基板7の径方向に延びる回路パターン72によって導通している。
【0031】
10個の第2コンタクト5は、ばね性を有する金属部材である。各第2コンタクト5の先端部は、適度なばね力で固定基板6の上面に付勢されている。従動フェースギア13と一緒に可動基板7が回転すると、各第2コンタクト5の先端部は、固定基板6の上面において、30個の接点ホール61を結ぶ円上を摺動する。これにより、各第2コンタクト5の先端部は、30個の接点ホール61に順番に係合する。
【0032】
シャフト3は、止め輪溝3aを有している。シャフト3がケース21のシャフト用軸受孔21cを貫通した状態において、止め輪溝3aは、シャフト受け部25(図3参照)の下方に配置される。止め輪溝3aには、止め輪31が係合する。これにより、シャフト3は、ケース21に回転可能に取り付けられる。なお、シャフト3が軸方向にガタつく場合は、止め輪31とケース21との間に介在させる調整ワッシャの厚さや枚数を調整して、ガタツキを無くすとよい。
【0033】
シャフト3の軸方向の上端部には、スライド絶縁部32を介して第1コンタクト4が取り付けられている。シャフト3の軸方向の上端部は、上方から見た形状が略楕円形に形成されている。スライド絶縁部32は、シャフト3の軸方向の上端部に嵌合する筒孔を有する略円筒状に形成されている。スライド絶縁部32の筒孔は、シャフト3の軸方向の上端部に見合った略楕円形に形成されている。これにより、シャフト3に対してスライド絶縁部32が回転しないようにすることができる。
【0034】
スライド絶縁部32は、シャフト3と共に可動基板7における中央の開口部を貫通する(図3参照)。したがって、スライド絶縁部32の外径は、可動基板7の内径よりも小さい。スライド絶縁部32には、外周面から内周面まで到達する複数のねじ貫通孔が形成されている。スライド絶縁部32の複数のねじ貫通孔には、複数の絶縁部取付用ねじ37がそれぞれ貫通する。スライド絶縁部32は、複数の絶縁部取付用ねじ37を用いてシャフト3と締結されている。
【0035】
第1コンタクト4は、スライド絶縁部32の上部に熱カシメにより取付けられている。なお、第1コンタクト4のスライド絶縁部32への固定方法は、熱カシメに限定されず、例えば、ねじを用いた固定や、その他の固定方法を採用することができる。
【0036】
第1コンタクト4は、ばね性を有する金属部材である。図6に示すように、第1コンタクト4は、円環状の固定部41と、固定部41の内周面に連続する第1接点42と、固定部41の外周面に連続する第2接点43とを有している。固定部41は、スライド絶縁部32の上部に固定される。固定部41には、カシメ部材が貫通する複数の貫通孔が形成されている。
【0037】
第1接点42は、略U字状の板体からなり、湾曲部分が固定部41の内周面に連続している。第1接点42は、固定部41から斜め上方に突出している。上方から見ると、第1接点42は、固定部41の中央の孔と重なる。第1接点42の2つの先端部は、上に凸となるようなドーム状に形成されている。第1接点42の2つの先端部は、適度なばね力でCOM端子9に付勢されている。
【0038】
第2接点43は、略I字状の板体からなり、長手方向の一端部が固定部41の外周面に連続している。第2接点43は、固定部41から斜め下方に突出している。第2接点43の長手方向の他端部は、下に凸となるようなドーム状に形成されている。
【0039】
第2接点43の他端部は、適度なばね力で可動基板7の上面に付勢されている。第2接点43の他端部は、可動基板7が回転した際の10個の接点ホール71が描く軌跡(円)上に配置されている。したがって、可動基板7が回転すると、第2接点43の他端部は、10個の接点ホール71に順番に係合する。すなわち、シャフト3が回転すると、第1コンタクト4の第2接点43と可動基板7上の10個の接点ホール71との接触が順番に切り替わる。
【0040】
図4に示すように、COM端子9は、略I字状の板体からなる。COM端子9の長手方向の一端部は、COM端子取付用ピン97を用いて裏蓋22の内面(上面と反対側の面)に固定されている。COM端子9の長手方向の一端部は、裏蓋22の側周面に設けられた切欠き22aから裏蓋22の外側へ突出している(図1参照)。
【0041】
COM端子9の長手方向の一端部には、円環状の接触部91が形成されている。COM端子9の接触部91には、第1コンタクト4における第1接点42の2つの先端部が常に接触している。すなわち、第1コンタクト4とCOM端子9は、常に電気的導通がとれている状態になる。
【0042】
2.ロータリースイッチの動作
次に、ロータリースイッチ1の動作について、図7及び図8を参照して説明する。
図7及び図8は、ロータリースイッチ1における可動基板7の動作を説明する図である。
【0043】
図7は、シャフト3を操作する前の固定基板6及び可動基板7を示している。ここで、シャフト3の軸まわりの回転方向の一方をCW方向とし、他方をCCW方向とする。また、10個の第2コンタクト5を、第2コンタクト5(1)~5(10)とする。10個の接点ホール71を、接点ホール71(1)~71(10)とする。30個の出力用端子8を、出力用端子8(1)~8(30)とする。そして、30個の接点ホール61を、接点ホール61(1)~61(30)とする。第2コンタクト5、接点ホール71、出力用端子8、及び接点ホール61は、()内の番号が小さい方から順にCW方向に並んでいる。
【0044】
図7に示す状態おいて、第1コンタクト4の第2接点43は、可動基板7上の接点ホール71(1)~71(10)の何れにも接触していない。一方、第2コンタクト5(1)~5(10)は、出力用端子8(1)、8(4)、8(7)、8(10)、8(13)、8(16)、8(19)、8(22)、8(25)、8(28)と接触している。
【0045】
図7に示す状態からシャフト3をCW方向に回転させて、第1コンタクト4の第2接点43を、可動基板7上の接点ホール71(1)に接触させると、出力用端子8(1)がCOM端子9と導通する。このとき、シャフト3と一緒に回転する駆動フェースギア11の複数の突起11a(図5参照)は、中間ギア12に噛み合わない。したがって、従動フェースギア13及び可動基板7は、回転しない。
【0046】
シャフト3をCW方向にさらに回転させると、第1コンタクト4の第2接点43が、可動基板7上の接点ホール71(2)に接触する。これにより、出力用端子8(4)が、COM端子9と導通する。このとき、駆動フェースギア11の複数の突起11a(図5参照)は、中間ギア12に噛み合わない。
【0047】
このように、シャフト3をCW方向に回転させて、第1コンタクト4の第2接点43を、可動基板7上の接点ホール71(1)~71(10)に順に接触させていくと、出力用端子8(1)、8(4)、8(7)、8(10)、8(13)、8(16)、8(19)、8(22)、8(25)、8(28)が順にCOM端子9と導通する。すなわち、COM端子9と導通する出力用端子は、8(1)、8(4)、8(7)、8(10)、8(13)、8(16)、8(19)、8(22)、8(25)、8(28)の順に切り替えられる。
【0048】
シャフト3をCW方向に1回転させると、駆動フェースギア11の複数の突起11a(図5参照)は、中間ギア12に噛み合って、シャフト3の回転が中間ギア12を介して従動フェースギア13に伝わる。その結果、従動フェースギア13と一体になった可動基板7は、CCW方向に12°(出力用端子1個分)回転する。これにより、固定基板6と可動基板7の位置関係は、図8に示す状態になる。
【0049】
図8に示す状態おいて、第2コンタクト5(1)~5(10)は、出力用端子8(30)、8(3)、8(6)、8(9)、8(12)、8(15)、8(18)、8(21)、8(24)、8(27)と接触している。そして、第1コンタクト4の第2接点43は、可動基板7上の接点ホール71(1)に接触する。これにより、出力用端子8(30)が、COM端子9と導通している。
【0050】
図8に示す状態からシャフト3をCW方向に回転させると、第1コンタクト4の第2接点43が、可動基板7上の接点ホール71(2)に接触する。これにより、出力用端子8(3)が、COM端子9と導通する。
【0051】
このように、シャフト3をCW方向に回転させて、第1コンタクト4の第2接点43を、可動基板7上の接点ホール71(1)~71(10)に順に接触させていくと、COM端子9と導通する出力用端子は、8(30)、8(3)、8(6)、8(9)、8(12)、8(15)、8(18)、8(21)、8(24)、8(27)の順に切り替えられる。そして、図8に示す状態から、シャフト3をさらに1回転させると、上述した駆動フェースギア11等を含む間欠歯車機構10が作動し、COM端子9と導通する出力用端子が、CCW方向に1つずつずれる。
【0052】
全ての出力用端子8を順にCOM端子9と導通させるまでのシャフト3の回転数は、(出力用端子の数)÷(可動基板の接点ホール数(第2コンタクト数))により算出できる。なお、可動基板の接点ホール数は、出力用端子数を整数で割り切れる数となる。本実施形態では、出力用端子8が30個であり、可動基板7の接点ホール71が10個である。したがって、本実施形態では、シャフト3が3(30÷10)回転する度に、図7に示す状態に戻る。
【0053】
一般的なロータリースイッチでは、スイッチの切り替え角度を36°に設定すると、接点数を10個設けることができる。一方、本実施形態のロータリースイッチ1では、スイッチの切り替え角度を36°に設定した場合に、30個の接点数を設けることが可能となる。したがって、本実施形態のロータリースイッチ1は、コンパクトな形状でありながら、接点数を多く設けることができる。
【0054】
なお、本実施形態では、可動基板7がシャフト3と反対方向(CCW方向)に回転する構造である。そのため、可動基板7がCCW方向へ回転した直後の接点切り替わり角度は、その他の切替わり角度よりも小さくなるが、実用上の問題はない。なお、本発明に係る間欠歯車機構としては、可動基板の回転方向を、シャフトの回転方向と同じにするものであってもよい。
【0055】
本実施形態では、第1コンタクト4における第2接点43の接触部分をドーム状に形成し、第2接点43が接触する可動基板7の接点ホール71をスルーホール形状にした。これにより、第1コンタクト4が接点ホール71に係合する際に、クリック感を生じさせることができる。また、第1コンタクト4が接点ホール71に係合した状態(導通した状態)を適当な抵抗感で維持することができる。
【0056】
また、本実施形態では、第2コンタクト5の接触部分をドーム状に形成し、第2コンタクト5が接触する固定基板6の接点ホール61をスルーホール形状にした。これにより、第2コンタクト5が接点ホール61に係合する際に、クリック感を生じさせることができる。また、第2コンタクト5が接点ホール61に係合した状態(導通した状態)を適当な抵抗感で維持することができる。
【0057】
3.使用例
次に、ロータリースイッチ1の使用例について、図9を参照して説明する。
図9は、ロータリースイッチにダイアルを組み合わせる例を説明する図である。
【0058】
ロータリースイッチ1は、シャフト3の回転数及び回転角度を認識しづらい。そこで、ロータリースイッチ1は、シャフト3に接続するダイアル30を備えていてもよい。図9に示すように、ダイアル30は、ベース34と、ベース34に回転可能に支持された操作摘み35とを有する。
【0059】
ベース34は、有底の筒状に形成されており、ケース21に固定される。操作摘み35は、シャフト3に接続される。ベース34には、シャフト3の回転角度を示す目盛り36と、シャフト3の回転数を表示する回転数表示部37を有している。回転数表示部37は、例えば、操作摘み35の回転が伝わる間欠歯車機構を用いることで実現することができる。
【0060】
このように、ダイアル30を備えることにより、使用者にシャフト3の回転数と回転角度を容易に認識させることができる。可動基板7の固定基板6に対する位置は、シャフト3の回転数から判別できる。また、第1コンタクト4の第2接点43の位置は、シャフト3の回転角度から判別できる。そして、可動基板7の固定基板6に対する位置と、第1コンタクト4の第2接点43の位置が分かると、COM端子9に導通している出力用端子8を判別することができる。
【0061】
本実施形態では、ダイアル30がシャフト3の回転数と回転角度を表示する構成にした。しかし、本発明に係るダイアルとしては、例えば、COM端子9に導通している出力用端子8を表示するものであってもよい。導通している出力用端子8の表示としては、例えば、各出力用端子8に固有の番号、記号、文字等を割り当てて、その固有の番号、記号、文字等を表示するようにしてもよい。
【0062】
4.まとめ
以上説明したように、上述した実施形態に係るロータリースイッチ1は、回転可能なシャフト3と、第1コンタクト4と、固定基板6と、可動基板7と、間欠歯車機構10とを備える。第1コンタクト4は、シャフト3に取り付けられ、COM端子9に導通している。固定基板6は、シャフト3の回転方向に沿って並ぶ所定数(例えば、30個)の出力用端子8を有する。可動基板7は、所定数の出力用端子8よりも少ない特定数(例えば、10個)の第2コンタクト5を有し、シャフト3の軸周りに回転することにより、特定数の第2コンタクト5を所定数の出力用端子8と導通させる。間欠歯車機構10は、シャフト3を1回転させると、その回転を伝えて可動基板7を所定の角度(例えば、12°)分回転させる。そして、シャフト3を回転させると、第1コンタクト4は、特定数の第2コンタクトと順に接触する。これにより、スイッチの切り替え角度を確保しながら、接点数を増やすことができる。その結果、コンパクトな形状でありながら、接点数を多く設けることができる。
【0063】
また、上述した実施形態に係る所定数(例えば、30個)を特定数(例えば、10個)で除算することによって得られる商は、整数である。これにより、シャフト3の回転数から可動基板7の固定基板6に対する位置を判別することができる。
【0064】
また、上述した実施形態に係る固定基板6は、開口部を有し、可動基板7は、固定基板6の開口部内に配置されている。これにより、ロータリースイッチ1の厚み方向の長さ(シャフト3の軸方向と平行な方向の長さ)を短くすることができる。その結果、ロータリースイッチ1を小型化することができる。
【0065】
また、上述した実施形態に係る可動基板7は、開口部を有し、シャフト3は、可動基板7の開口部を貫通している。これにより、第1コンタクト4を可動基板7の上方に配置し、間欠歯車機構10を可動基板7の下方に配置することができる。その結果、第1コンタクト4と間欠歯車機構10が干渉しないようにしながら、ロータリースイッチ1の小型化を図ることができる。
【0066】
また、上述した実施形態に係る固定基板6は、所定数の接点ホール(固定基板側接点ホール)61と、所定数の接点ホール61と所定数の出力用端子8を導通させる回路パターン62を有する。そして、特定数の第2コンタクト5は、所定数の接点ホール61に係合するドーム状の凸部を有する。これにより、第2コンタクト5が接点ホール61に係合する際に、クリック感を生じさせることができる。また、第2コンタクト5が接点ホール61に係合した状態(導通した状態)を適当な抵抗感で維持することができる。
【0067】
また、上述した実施形態に係る可動基板7は、特定数の接点ホール(可動基板側接点ホール)71と、特定数の接点ホール71と特定数の第2コンタクト5を導通させる回路パターン72を有する。そして、第1コンタクト4は、特定数の接点ホール71に係合するドーム状の凸部を有する。これにより、第1コンタクト4が接点ホール71に係合する際に、クリック感を生じさせることができる。また、第1コンタクト4が接点ホール71に係合した状態(導通した状態)を適当な抵抗感で維持することができる。
【0068】
以上、本発明のロータリースイッチについて、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明のロータリースイッチは、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0069】
例えば、本発明に係る間欠歯車機構の駆動フェースギア、従動フェースギア、及び中間ギアは、固定基板の出力用端子数及び可動基板の接点ホール数に合せた適切なサイズ及び歯数にすることができる。また、上述した実施形態では、固定基板6及び可動基板7を円環状に形成した。しかし、本発明に係る固定基板及び可動基板の形状は、適宜設定することができる。なお、固定基板は、可動基板が配置される開口部を有することが好ましい。また、可動基板は、シャフトが貫通する開口部を有することが好ましい。
【0070】
また、上述した実施形態では、出力用端子8を30個に設定し、第2コンタクト5を10個に設定した。しかし、本発明に係る出力用端子の個数(所定数)及び第2コンタクトの個数(特定数)は、所定数を特定数で除算した場合の商が整数になれば、適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…ロータリースイッチ、 2…筐体、 3…シャフト、 4…第1コンタクト、 5…第2コンタクト、 6…固定基板、 7…可動基板、 8…出力用端子、 9…COM端子、 10…間欠歯車機構、 11…駆動フェースギア、 12…中間ギア、 13…従動フェースギア、 21…ケース、 22…裏蓋、 30…ダイアル、 31…止め輪、 32…スライド絶縁部、 34…ベース、 35…操作摘み、 36…目盛り、 37…回転数表示部、 41…固定部、 42…第1接点、 43…第2接点、 61,71…接点ホール、 62,72…回路パターン、 91…接触部
図1
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図10