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  • 特開-インモールドラベル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170009
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】インモールドラベル
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/04 20060101AFI20221102BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20221102BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G09F3/04 Z
B32B7/06
B32B27/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075829
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000239563
【氏名又は名称】福島印刷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】石毛 敦
(72)【発明者】
【氏名】川越 陶道
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA08A
4F100AK06B
4F100AK07A
4F100AK52C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100DJ00A
4F100EJ37A
4F100GB90
4F100HB31D
4F100JA04B
4F100JL12B
4F100JL14C
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】使用時には剥がれにくく、使用後は容易に剥離できるインモールドラベルを提供する。
【解決手段】インモールドラベルは、基材層、ヒートシール層及び剥離層をこの順に有する。前記基材層が、プロピレン系樹脂と、20~60質量%の炭酸カルシウムとを含む。前記ヒートシール層の容器と接触する面の面積に対する前記剥離層の面積の割合が、40~80%である。前記剥離層が、シリコン樹脂が添加されたニス由来の成分を含有する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、ヒートシール層及び剥離層をこの順に有するインモールドラベルであって、
前記基材層が、プロピレン系樹脂と、20~60質量%の炭酸カルシウムとを含み、
前記ヒートシール層の容器と接触する面の面積に対する前記剥離層の面積の割合が、40~80%であり、
前記剥離層が、シリコン樹脂が添加されたニス由来の成分を含有する
インモールドラベル。
【請求項2】
前記剥離層の厚みが、0.1~10μmである
請求項1に記載のインモールドラベル。
【請求項3】
前記ヒートシール層が、融点が135℃以下の低融点樹脂を含有し、
前記低融点樹脂が、低密度ポリエチレンを含む
請求項1又は2に記載のインモールドラベル。
【請求項4】
前記基材層が、延伸フィルムである
請求項1~3のいずれか一項に記載のインモールドラベル。
【請求項5】
前記基材層が、多孔質フィルムである
請求項1~4のいずれか一項に記載のインモールドラベル。
【請求項6】
前記基材層の前記ヒートシール層と反対側に印刷層を有する
請求項1~5のいずれか一項に記載のインモールドラベル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールドラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器に貼着されるラベルとしてインモールドラベルが利用されている。インモールドラベルは、容器の成形に用いる金型内にセットされ、成形時の熱によって容器の表面に接着する(例えば、特許文献1参照)。また、商業的な付加価値を得るために一部が剥がれるように工夫されたインモールドラベルも存在する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-258752号公報
【特許文献2】特開2004-264825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境保護の観点から、樹脂製の容器はリサイクルされることが多くなっている。容器のリサイクルのため、ラベル付き容器はラベルを剥がす必要がある。しかし、インモールドラベルは、容器の表面に強力に接着するため、手で剥がすことが困難であった。剥がせたとしても一部が容器の表面に残り、容器のリサイクルを妨げていた。
【0005】
そのため、インモールドラベルは、高温のアルカリ水溶液にラベル付き容器を数十分浸漬することにより、全面を剥離することが通常である。リサイクルのための工程が増えることから、より容易に剥離できるインモールドラベルが望まれていた。
【0006】
本発明は、使用時には剥がれにくく、使用後は容易に剥離できるインモールドラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、接着面に剥離層を設けて接着強度をコントロールすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0008】
(1)基材層、ヒートシール層及び剥離層をこの順に有するインモールドラベルであって、
前記基材層が、プロピレン系樹脂と、20~60質量%の炭酸カルシウムとを含み、
前記ヒートシール層の容器と接触する面の面積に対する前記剥離層の面積の割合が、40~80%であり、
前記剥離層が、シリコン樹脂が添加されたニス由来の成分を含有する
インモールドラベル。
【0009】
(2)前記剥離層の厚みが、0.1~10μmである
上記(1)に記載のインモールドラベル。
【0010】
(3)前記ヒートシール層が、融点が135℃以下の低融点樹脂を含有し、
前記低融点樹脂が、低密度ポリエチレンを含む
上記(1)又は(2)に記載のインモールドラベル。
【0011】
(4)前記基材層が、延伸フィルムである
上記(1)~(3)のいずれかに記載のインモールドラベル。
【0012】
(5)前記基材層が、多孔質フィルムである
上記(1)~(4)のいずれかに記載のインモールドラベル。
【0013】
(6)前記基材層の前記ヒートシール層と反対側に印刷層を有する
上記(1)~(5)のいずれかに記載のインモールドラベル。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、使用時には剥がれにくく、使用後は容易に剥離できるインモールドラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】インモールドラベルの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のインモールドラベルについて詳細に説明する。以下は本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれに限定されない。
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。
【0017】
[インモールドラベル]
本発明のインモールドラベルは、基材層、ヒートシール層及び剥離層をこの順を有する。本発明において、ヒートシール層の容器と接触する面の面積に対する剥離層の面積の割合は、40~80%である。これにより、使用時には剥がれにくく、使用後は容易に剥離できるインモールドラベルを提供することができる。
【0018】
インモールドラベルは、容器を成形する金型内に設置され、成形時の熱によって溶融したヒートシール層を介して容器の表面に接着する。このように、インモールドラベルは、容器と一体化するように貼着され、その接着強度は高いため、手でラベルを剥がすことは難しい。
【0019】
しかし、本発明のインモールドラベルでは、ヒートシール層と容器との間に剥離層が介在し、この剥離層によりヒートシール層の強い接着強度を調整することができる。すなわち、本発明においては、ヒートシール層の全面ではなく、40~80%の面積割合で剥離層を設けることにより、ヒートシール層の接着強度を、容器の使用時には剥がれにくい十分な接着強度でありながら、使用後は手で容易に剥離することができる接着強度に調整することができる。
【0020】
なお、使用後にはインモールドラベルを全面的に剥離することを想定している。そのため、ヒートシール層の容器と接触する面の面積の40~80%を占める1つの剥離層が局部的に存在するのではなく、剥離層が設けられる領域と設けられない領域とがヒートシール層の全領域にわたって均一に存在するように、領域が分割された剥離層が設けられる。
【0021】
図1は、インモールドラベルの一例を示す。
図1に例示するインモールドラベル10は、基材層1と、基材層1の一方の表面上にヒートシール層2とを有する。ヒートシール層2上には剥離層3が設けられる。基材層1のヒートシール層2と反対側の表面には、印刷によって文字、絵柄等の印刷層4が設けられ得る。
以下、各層について説明する。
【0022】
(基材層)
基材層は、プロピレン系樹脂と20~60質量%の炭酸カルシウムとを含有する。機械的強度に優れたプロピレン系樹脂を含有する基材層は、インモールドラベルに目的の剛度又はコシを付与し、取扱性又は印刷時の搬送性等を高める。
【0023】
<プロピレン系樹脂>
プロピレン系樹脂としては、主なモノマーにプロピレンが用いられるのであれば特に限定されない。例えば、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体又はシンジオタクティック重合体等が挙げられる。また、主成分となるプロピレンと、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、又は1-オクテン等のα-オレフィンとの共重合体である、プロピレン-α-オレフィン共重合体等を使用することもできる。共重合体は、モノマー成分が2元系でも3元系以上の多元系でもよく、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。また、プロピレン単独重合体とプロピレン共重合体とを併用してもよい。
【0024】
プロピレン系樹脂としては、その樹脂フィルムの接着性又は成形性の向上の観点から、そのグラフト変性物を必要に応じて使用することもできる。
グラフト変性には公知の手法を用いることができる。具体的には、グラフトモノマーとして不飽和カルボン酸又はその誘導体を用いたグラフト変性物を挙げることができる。上記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、又はシトラコン酸等を挙げることができる。上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、上記不飽和カルボン酸の酸無水物、エステル化物、アミド化物、イミド化物、又は金属塩等を挙げることができる。
【0025】
具体的なグラフトモノマーとしては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸-N-モノエチルアミド、マレイン酸-N,N-ジエチルアミド、マレイン酸-N-モノブチルアミド、マレイン酸-N,N-ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸-N-モノエチルアミド、フマル酸-N,N-ジエチルアミド、フマル酸-N-モノブチルアミド、フマル酸-N,N-ジブチルアミド、マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、(メタ)アクリル酸ナトリウム、又は(メタ)アクリル酸カリウム等を挙げることができる。
【0026】
グラフトモノマーは、プロピレン系樹脂に対して、通常0.005~10質量%、好ましくは0.01~5質量%用いることができる。
【0027】
基材層に用いるプロピレン系樹脂としては、上記の中から1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。成形性、機械的強度又はコスト等の観点からは、プロピレン単独重合体が基材層の主原料として取扱いやすく、好ましい。
【0028】
基材層は、熱可塑性樹脂としてプロピレン系樹脂のみを用いたフィルムであってもよいし、本発明の効果を阻害しない範囲でプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂が配合されていてもよい。併用できる熱可塑性樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-6,6等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートあるいはその共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート又はポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート;アタクティックポリスチレン又はシンジオタクティックポリスチレン等のスチレン系樹脂等が挙げられる。
【0029】
<炭酸カルシウム>
基材層に使用できる炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウム、又は軽質炭酸カルシウム等の粒子が挙げられる。コストの観点からは重質炭酸カルシウムが好ましい。
【0030】
炭酸カルシウムの配合により、基材層の白色度又は不透明度の調整が容易となる。また、基材層内部に空孔が形成されやすく、インモールドラベルの軽量化が可能となる。基材層が多孔質フィルムであると、インモールドラベルの断熱性も向上しやすい。
【0031】
<<炭酸カルシウムの含有量>>
本発明において、基材層における炭酸カルシウムの含有量は、20~60質量%である。これにより、強度を維持しつつ、パルプ紙と同様の白色度又は不透明度を有する基材層を形成することができる。同フィラーの含有量は、白色度又は不透明度を高める観点からは30質量%以上が好ましく、強度低下を抑える観点からは50質量%以下が好ましい。
【0032】
<<粒子径>>
炭酸カルシウムのレーザー回折による粒度分布計で測定した平均粒径は、通常は0.01~15μmであり、空孔形成の観点からは0.1~5μmが好ましい。
【0033】
<その他の成分>
基材層は、必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤、又は核剤等の添加剤をさらに含有することができる。
熱安定剤としては、例えば立体障害フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、又はアミン系酸化防止剤等を、通常0.001~1質量%の範囲内で使用することができる。
光安定剤としては、例えば立体障害アミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤、又はベンゾフェノン系光安定剤を、通常0.001~1質量%の範囲内で使用することができる。
分散剤又は滑剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はそれらの塩等が挙げられる。これらは、例えば炭酸カルシウムを分散させる目的で、通常0.01~4質量%の範囲内で使用することができる。
【0034】
<層構成>
基材層は、単層構造であってもよく、2層又は3層以上の多層構造のものであってもよい。多層化により、機械特性、筆記性、耐擦過性又は2次加工適性等の様々な機能を基材層に付与することが可能となる。
【0035】
基材層は、少なくとも1軸方向に延伸された延伸フィルムを含むことが好ましく、延伸によって内部に空孔を有する多孔質フィルムを含むことがより好ましい。延伸フィルムを含む基材層は、寸法安定性及び機械的強度が高く、厚みの均一性に優れているため、後加工性に優れたインモールドラベルを得ることができる。
基材層が多層構造である場合、各層の延伸軸数は、1軸/1軸、1軸/2軸、2軸/1軸、1軸/1軸/2軸、1軸/2軸/1軸、2軸/1軸/1軸、1軸/2軸/2軸、2軸/2軸/1軸、又は2軸/2軸/2軸であってもよい。
【0036】
<空孔率>
軽量化又は白色化等の観点からは、基材層の空孔率は、10%以上である一方、60%以下が好ましく、40%以下がより好ましい。空孔率が60%以下であれば、強度を維持しやすい。
上記空孔率は、電子顕微鏡で観察したフィルムの断面の一定領域において、空孔が占める面積の比率より求めることができる。
【0037】
(ヒートシール層)
ヒートシール層は、インモールドラベルにヒートシール性を付与する。ヒートシール層を介してインモールドラベルを容器等の成形体に接着することができる。
【0038】
ヒートシール層の材料としてはヒートシール性を付与できるのであれば特に限定されないが、ヒートシールを容易にする観点からは低融点樹脂を用いることが好ましい。低融点樹脂は、135℃以下の融点を有する熱可塑性樹脂である。低融点樹脂の融点は、120℃以下であることが好ましい。融点が135℃以下であれば、成形温度が低い場合でも十分な強度で接着しやすい。夏場の高温条件でヒートシール層が軟化して、保管時におけるインモールドラベル同士のブロッキングを抑える観点からは、低融点樹脂の融点が60℃以上であることが好ましい。
【0039】
融点が135℃以下であれば、使用できる低融点樹脂としては特に限定されないが、具体的な例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン、又はオクテンに代表されるオレフィン類の単独重合体、これらオレフィン類の2種以上による共重合体、これらオレフィン類の1種類以上とオレフィン類と共重合可能なコモノマーの1種類以上との共重合体、又はそれらの金属塩が挙げられる。オレフィン類と共重合可能なコモノマーとしては、例えばスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、又はブチル安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニル類;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はアクリロニトリル等のアクリル酸類等が挙げられる。
【0040】
基材層との密着性の観点からは、上記のなかでも、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、又はメタロセン触媒系ポリプロピレンのようなメタロセン触媒系ポリオレフィン等のオレフィン系樹脂が好ましい。低融点かつ良好な成形性の観点からは、低密度ポリエチレン又はメタロセン触媒系ポリオレフィンがより好ましい。
【0041】
ヒートシール層は、その機能を阻害しない範囲で、融点が135℃以下ではない熱可塑性樹脂を含有してもよい。ヒートシール加工の観点からは、ヒートシール層は、低融点樹脂からなる樹脂フィルムであることが好ましい。
【0042】
(剥離層)
剥離層は、ヒートシール層の接着強度を調整する機能を有する。
【0043】
<面積割合>
使用後のラベルの剥離を容易にする観点からは、ヒートシール層の容器と接触する面の面積に対する剥離層の面積割合は、40%以上であり、60%以上が好ましい。使用時のラベルの剥がれを抑える観点からは、同剥離層の面積割合は、80%以下である。
【0044】
このような剥離層は、例えばヒートシール層上に剥離剤を用いて印刷することにより、形成することができる。剥離層の面積割合が上記特定の範囲となるように、網点又は格子状等のパターンが印刷されてもよい。また、剥離層は、剥離剤を含む塗工液をヒートシール層上に塗工することによって、形成することもできる。塗工時には剥離層の面積割合が上記特定の範囲となるようにマスキングが行われてもよい。
【0045】
剥離剤としては、各種印刷用インク、剥離ニス又はワックス等を使用することができる。インクとしては、例えばオフセットインク、UVオフセットインク、グラビアインク、シルクスクリーンインク、フレキソインク、又はUVフレキソインク等が挙げられる。剥離ニスとしては、例えばシリコン樹脂が添加されたニス、フッ素化合物が添加されたニス等が挙げられる。剥離性の観点からは、剥離層は、ニス由来の成分を含有することが好ましく、なかでもシリコン樹脂が添加されたニス由来の成分を含有することがより好ましい。
【0046】
(印刷層)
印刷層は、基材層のヒートシール層と反対側の表面に、文字、図画等の印刷を施すことによって設けられる。印刷層は、印刷により転写されたインク成分からなる層である。
【0047】
[インモールドラベルの特性]
(厚み)
基材層の厚みは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上がより好ましい。基材層の厚みが上記下限値以上であれは、目的の剛度やコシのインモールドラベルが得られやすい傾向がある。一方で、基材層の厚みは、300μm以下であることが好ましく、150μm以下がより好ましい。基材層の厚みが上記上限値以下であれば、インモールドラベルの柔軟性が高まりやすく、容器の形状に追従しやすい。
【0048】
ヒートシール層の厚みは、1μm以上であることが好ましい。ヒートシール層の厚みが上記下限値以上であれば、十分な接着強度が得られやすい。一方で、ヒートシール層の厚みは、50μm以下であることが好ましい。ヒートシール層の厚みが上記上限値以下であれば、ベタツキが減るとともに、インモールドラベルをカットしやすくなるため、インモールドラベルの加工性が高まる傾向がある。
【0049】
剥離層の厚みは、使用後のラベルの剥離を容易にする観点からは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上がより好ましい。使用時のラベルの剥がれを減らす観点からは、剥離層の厚みは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0050】
[インモールドラベルの製造方法]
本発明のインモールドラベルの製造方法は特に限定されない。例えば、本発明のインモールドラベルは、基材層及びヒートシール層のフィルムを形成して積層した後、ヒートシール層上に剥離剤を印刷又は塗工することにより製造することができる。
【0051】
(基材層及びヒートシール層の形成)
基材層及びヒートシール層のフィルムの成形方法としては、例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等を用いることができる。樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物を、キャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去することにより、フィルムが成形されてもよい。
【0052】
フィルムの積層方法としては、共押出法、押出ラミネーション法、塗工法等が挙げられ、これらを組み合わせることもできる。共押出法は、別々の押出機において溶融混練された各層の樹脂組成物をフィードブロック又はマルチマニホールド内で積層して押し出し、フィルム成形と積層を並行に行う。押出ラミネーション法は、予め形成されたフィルム上に樹脂組成物を押出してもう1つのフィルムを形成及び積層する。塗工法は、樹脂の溶液、エマルジョン又はディスパージョンをフィルム上に塗工して乾燥することにより、もう1つのフィルムを形成及び積層する。
【0053】
(延伸)
各層は、積層前に個別に延伸されていてもよいし、積層後にともに延伸されてもよい。また、無延伸層と延伸層とが積層された後に再び延伸されてもよい。
【0054】
使用できる延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
【0055】
延伸を実施するときの延伸温度は、フィルムに使用する熱可塑性樹脂が、非結晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、具体的には熱可塑性樹脂の融点よりも2~60℃低い温度が好ましい。
【0056】
延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20~350m/分の範囲内であることが好ましい。
また、延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。例えば、プロピレンの単独重合体又はその共重合体を含む樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、その延伸倍率は、通常は1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、通常は12倍以下であり、好ましくは10倍以下である。二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で、通常は1.5倍以上であり、好ましくは10倍以上である一方、通常は60倍以下であり、好ましくは50倍以下である。
【0057】
(剥離層の形成)
ヒートシール層上に剥離剤を印刷又は塗工することにより、剥離層を形成することができる。
剥離剤の印刷方法には特に制限はなく、凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、又はスクリーン印刷等の印刷方法が使用可能である。塗工方法についても特に制限はなく、公知の塗工装置を用いて、必要に応じてマスキングすればよい。
【0058】
(印刷層の形成)
基材層のヒートシール層と反対側の表面に印刷を施すことにより、印刷層を形成することができる。
使用できる印刷方式としては、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、インクジェット記録方式、感熱記録方式、熱転写記録方式、又は電子写真記録方式等種々の公知の手法を用いることが可能である。これらのなかでも、耐候性と耐水性が優れた印刷物を得やすいオフセット印刷、グラビア印刷、又はフレキソ印刷方式が好ましく、パッケージ用途としてはグラビア印刷が好ましい。さらに印刷インクとしては、油性インク、水性インク又は紫外線硬化型インク等を用いることが可能である。
【0059】
(インモールドラベルの加工)
本発明のインモールドラベルは、カット又は打抜き等により、容器への貼着に必要な形状又はサイズに加工されてもよい。
【実施例0060】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
【0061】
[原料]
実施例及び比較例にて使用した原料は以下のとおりである。
(基材層)
<プロピレン系樹脂(a1)>
プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FY-4、日本ポリプロ社製、MFR:5.0g/10min(230℃、2.16kg荷重)、融点:164℃(DSCピーク温度)、密度:0.9g/cm
<炭酸カルシウム(a2)>
重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1800(備北粉化学工業社製)、平均粒径:1.2μm)
【0062】
(ヒートシール層)
<低融点樹脂(b)>
低密度ポリエチレン(商品名:ノバテックLD LC540(日本ポリエチレン社製)、融点:112℃)
【0063】
(剥離層)
<剥離剤(c)>
シリコン樹脂添加のニス(商品名:FV-IML―S、T&KTOKA製)
【0064】
[インモールドラベルの製造]
(実施例1)
80質量部のプロピレン系樹脂(a1)(ノバテックPP FY-4)と、20質量部の炭酸カルシウム(a2)(ソフトン1800)とからなる樹脂組成物を、230℃に設定した押出機にて溶融混練した。その後、250℃に設定した押出ダイに供給してシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸し、基材層を形成した。
【0065】
次いで、100質量部の低融点樹脂(b)(ノバテックLD LC540)を250℃に設定した押出機において溶融混練した後、基材層上にシート状に押し出して、ヒートシール層を形成した。これにより、ヒートシール層/基材層の順に積層された2層シートを得た。この2層シートを冷却装置により60℃まで冷却した後、テンターオーブンを用いて約150℃に加熱し、横方向に8.5倍延伸した。次いで、160℃まで加熱して熱処理を行った後、60℃まで冷却し、耳部をスリットした。これをロール巻取装置により巻き取り、延伸が施された、ヒートシール層/基材層の順に積層された2層シートを得た。
【0066】
次いで、2層シートを巻き出し、シリコン樹脂を添加した剥離剤(c)(FV-IML-S)を用いて、接着面となるヒートシール層の表面に網点パターンを印刷し、剥離層を形成した。印刷にはオフセット印刷機を用いた。網点パターンは、剥離層の厚みが0.7μm、剥離層の面積がヒートシール層の表面積の80%の割合となるように印刷した。剥離剤(c)のヒートシール層との接着性は良好であった。
【0067】
これにより、剥離層(C)/ヒートシール層(B)/基材層(A)の順に積層された積層シート(全層厚み:80.7μm、各層厚み:0.7μm/60μm/20μm、各層の延伸軸数:-/1軸/2軸)を得た。この積層シートを、11cm×9cm のサイズに打抜き、実施例1のインモールドラベルを得た。
【0068】
(実施例2~4及び比較例1)
剥離層の面積割合又は厚みを下記表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして各実施例2~4及び比較例1のインモールドラベルを得た。
【0069】
[評価]
各実施例及び比較例のインモールドラベルについて、ブリスター抑制、剥離強度及び剥離時の裂け抑制を次のようにして評価した。
【0070】
<ラベル付き容器の製造>
各インモールドラベルを、真空を利用してブロー成形用割型の一方に固定した。このとき、基材層側が金型と接するようにインモールドラベルを固定した。一方、高密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHD HB330、日本ポリケム社製、融点134℃)を200℃ で溶融押出してパリソンを形成した。このパリソンを用いて割型を型締めし、4.2kg/cmの圧空をパリソン内に供給した。これによりパリソンを膨脹させて容器状に賦形するとともにインモールドラベルと熱融着させた。成形後、該型を冷却し、型開きをして内容量1000mlの中空状のラベル付き樹脂容器を得た。
【0071】
<ブリスター抑制>
上記ラベル付き樹脂容器のインモールドラベルが設けられた部分において、ラベルが剥がれることで生じる浮き又はふくれの有無を目視にて確認し、以下の基準にしたがってブリスター抑制について評価した。
○(良):ブリスターが全く発生していない
△(可):直径0.5mm以下の小さなブリスターが少量発生
×(不可):直径0.5mmを超えるブリスターが発生、又は上記小さなブリスターが大量発生
【0072】
<剥離強度>
上記ラベル付き樹脂容器の、インモールドラベルが貼り付いている部分を、ラベルおよび容器を一体としてカッターで切り取り、長さ12cm及び幅15mmの測定用サンプルを採取した。次に、測定用サンプルの端部からラベルを丁寧に約1cm剥がして、掴み代を形成した。JIS K6854-2:1999に基づき、引張試験機(島津製作所社製オートグラフAGS-5kNJ)に測定用サンプルをセットして、剥離速度300mm/minの条件で180度剥離試験を実施した。剥離長さ25mm~75mm間の剥離強度の平均値を、剥離強度とした。剥離強度の単位は、N/15mmとした。
【0073】
<剥離時の裂け抑制>
上記ラベル付き樹脂容器から、インモールドラベルを剥離角度180°の条件で剥がした。このとき、ラベルがどのように剥がれるのかを確認し、以下の基準にしたがって剥離時の裂け抑制について評価した。
○(良):インモールドラベルを全て容器から剥がすことができ、容器にラベル由来の破片等が残らなかった
×(不可):容器にラベル由来の破片等が残った
【0074】
表1は、評価結果を示す。
【表1】
【0075】
剥離層が特定の厚み及び面積割合で設けられた実施例1~4によれば、剥離時にラベルが裂けることなく、ラベルを剥がすことができている。剥離強度も300gf/15mm以下と小さく、容易に剥がすことができた。実施例1~4を対比すると、剥離層の厚み又は面積割合が大きくなるほど、剥離が容易になることが分かる。一方、剥離層を100%の面積割合で設けた比較例1のラベルは剥離を開始してすぐに裂けた。
【符号の説明】
【0076】
10・・・インモールドラベル、1・・・基材層、2・・・ヒートシール層、3・・・剥離層、4・・・印刷層

図1