IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛三工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ポンプモジュール 図1
  • 特開-ポンプモジュール 図2
  • 特開-ポンプモジュール 図3
  • 特開-ポンプモジュール 図4
  • 特開-ポンプモジュール 図5
  • 特開-ポンプモジュール 図6
  • 特開-ポンプモジュール 図7
  • 特開-ポンプモジュール 図8
  • 特開-ポンプモジュール 図9
  • 特開-ポンプモジュール 図10
  • 特開-ポンプモジュール 図11
  • 特開-ポンプモジュール 図12
  • 特開-ポンプモジュール 図13
  • 特開-ポンプモジュール 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170019
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】ポンプモジュール
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/04 20060101AFI20221102BHJP
   F02M 25/08 20060101ALI20221102BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20221102BHJP
   F02M 37/06 20060101ALI20221102BHJP
   F16K 15/18 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
F04B43/04 A
F02M25/08 E
F02M37/00 301H
F02M37/06 B
F16K15/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075852
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直亮
【テーマコード(参考)】
3G144
3H058
3H077
【Fターム(参考)】
3G144BA22
3G144BA40
3G144DA02
3G144DA03
3G144DA05
3G144EA65
3G144FA03
3G144FA04
3G144GA02
3G144GA03
3G144GA06
3G144HA02
3H058AA05
3H058BB04
3H058CD05
3H058DD13
3H058EE15
3H077AA03
3H077BB01
3H077CC02
3H077DD05
3H077EE15
3H077FF01
3H077FF12
3H077FF32
3H077FF34
3H077FF57
(57)【要約】
【課題】ダイヤフラムポンプにおいて、ダイヤフラムの移動量を制御可能とすることにより、ポンプの吐出量を制御可能とする。
【解決手段】ダイヤフラム4の周期的な変形に応じて、吸入通路14から一方向弁である吸入弁6を介してポンプ室10に流体を吸入し、ポンプ室10から吐出通路16に一方向弁である吐出弁8を介して流体を吐出するポンプモジュール1であって、ダイヤフラム4を変形させるアクチュエータとして比例ソレノイド17が用いられ、比例ソレノイド17は、ソレノイドコイル18への通電電流の大きさに応じてプランジャ20の移動量をリニアに変化させ、プランジャ20に結合されたダイヤフラム4の変形量を連続的に変化させるものとされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤフラムの周期的な変形に応じて、吸入通路から一方向弁である吸入弁を介してポンプ室に流体を吸入し、該ポンプ室から吐出通路に一方向弁である吐出弁を介して流体を吐出するポンプモジュールであって、
前記ダイヤフラムを変形させるアクチュエータとして比例ソレノイドが用いられ、
該比例ソレノイドは、ソレノイドコイルへの通電電流の大きさに応じてプランジャの移動量をリニアに変化させ、該プランジャに結合された前記ダイヤフラムの変形量を連続的に変化させるものとされている
ポンプモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプモジュールであって、
前記プランジャ又は前記ダイヤフラムは、前記プランジャの移動範囲の端部に対応する位置において、前記吸入弁又は前記吐出弁の少なくとも一方の弁体に当接して前記弁体を弁座に押圧して前記吸入弁又は前記吐出弁の少なくとも一方を閉弁させる
ポンプモジュール。
【請求項3】
請求項2に記載のポンプモジュールであって、
前記吸入弁又は前記吐出弁は、前記プランジャ又は前記ダイヤフラムが前記弁体に当接しない自由状態、且つ前記ダイヤフラムが変形しない静止状態では、開弁状態となるように、前記弁体を前記弁座から離す方向に付勢する弾性体を備え、
前記吸入通路又は前記吐出通路が、他よりも高い圧力又は他よりも低い圧力を保持する圧力源に連通されており、
該圧力源に連通された前記吸入通路又は前記吐出通路の圧力を検出する圧力センサと、
前記プランジャの移動範囲の端部において前記吸入弁又は前記吐出弁を閉弁状態とするための前記弁座に対する前記弁体の押圧力を可及的に小さくするように前記プランジャの移動量を制御する制御手段と、を備え、
該制御手段は、
前記プランジャ又は前記ダイヤフラムを前記吸入弁又は前記吐出弁の前記弁体に当接させて、前記吸入弁又は前記吐出弁を、開弁状態から徐々に閉弁する徐閉手段と、
該徐閉手段により前記吸入弁又は前記吐出弁が徐々に閉弁している状態で、前記圧力センサによって検出される圧力が設定圧力以上変化したとき、その時点の前記吸入弁又は前記吐出弁の前記ソレノイドコイルへの通電電流を維持して、前記徐閉手段による前記吸入弁又は前記吐出弁の閉弁を停止する開閉停止手段と、を備える
ポンプモジュール。
【請求項4】
請求項2に記載のポンプモジュールであって、
前記吸入弁又は前記吐出弁は、前記プランジャ又は前記ダイヤフラムが前記弁体に当接しない自由状態、且つ前記ダイヤフラムが変形しない静止状態では、開弁状態となるように、前記弁体を前記弁座から離す方向に付勢する弾性体を備え、
前記吸入通路又は前記吐出通路が、他よりも高い圧力又は他よりも低い圧力を保持する圧力源に連通されており、
該圧力源に連通された前記吸入通路又は前記吐出通路の圧力を検出する圧力センサと、
前記プランジャの移動範囲の端部において前記吸入弁又は前記吐出弁を閉弁状態とするための前記弁座に対する前記弁体の押圧力を可及的に小さくするように前記プランジャの移動量を制御する制御手段と、を備え、
該制御手段は、
前記プランジャ又は前記ダイヤフラムにより前記吸入弁又は前記吐出弁の前記弁体を前記弁座に押圧して閉弁状態とする閉弁手段と、
該閉弁手段にて閉弁された前記吸入弁又は前記吐出弁の前記弁体を前記弁座から徐々に離すように、前記プランジャ又は前記ダイヤフラムを前記弁体から離して開弁する徐開手段と、
該徐開手段により徐々に前記吸入弁又は前記吐出弁が開弁されている状態で、前記圧力センサによって検出される圧力が設定圧力以上変化したとき、前記徐開手段による前記吸入弁又は前記吐出弁の開弁を停止して、その時点の前記吸入弁又は前記吐出弁の前記ソレノイドコイルへの通電電流を閉弁側へ予め設定した電流値だけシフトして維持するシフト停止手段と、を備える
ポンプモジュール。
【請求項5】
請求項2に記載のポンプモジュールであって、
前記プランジャ又は前記ダイヤフラムと前記吸入弁又は前記吐出弁の前記弁体との間に、前記プランジャ又は前記ダイヤフラムによる前記吸入弁又は前記吐出弁の前記弁座に対する前記弁体の押圧力を緩和させる弾性体を備える
ポンプモジュール。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のポンプモジュールであって、
燃料タンク内で発生する蒸発燃料を吸着して捕捉するキャニスタと、
該キャニスタに燃料タンク内で発生した蒸発燃料を導入するベーパ通路と、
該ベーパ通路を開閉するベーパ弁と、
前記キャニスタに捕捉された蒸発燃料をパージ処理のため通流させるパージ通路と、
該パージ通路を開閉するパージ弁と、
前記キャニスタを大気に連通する大気通路と、
該大気通路を開閉する大気弁と、を備えた蒸発燃料処理装置を備え、
前記吸入通路及び前記吐出通路は、前記ベーパ通路、前記パージ通路、又は前記大気通路に連通されている
ポンプモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、例えば、車両用燃料タンクで発生した蒸発燃料を送給してパージ処理するために用いられるポンプモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ソレノイドによってダイヤフラムを周期的に変形してポンピング作用を行うダイヤフラムポンプが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-325780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的にダイヤフラムポンプは、ソレノイドによるダイヤフラムの変形量が一定であり、ポンプとしての吐出能力も一定である。そのため、ダイヤフラムポンプにおいては、吐出量を制御するためには、ソレノイドへの通電周期を変えてダイヤフラムの変形周期を変える必要がある。しかし、その場合、吐出量の変化に応じて吐出圧の脈動の周期も変化することになる。そのため、特に吐出量を小さくしたときに吐出圧の脈動の周期が長くなり、脈動が目立って大きくなる問題がある。
【0005】
本明細書が開示する技術の課題は、ダイヤフラムポンプにおいて、ダイヤフラムの移動量を制御可能とすることにより、ダイヤフラムの変形周期を変えないでポンプの吐出量を制御可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本明細書に開示のポンプモジュールは、次の手段をとる。
【0007】
第1の手段は、ダイヤフラムの周期的な変形に応じて、吸入通路から一方向弁である吸入弁を介してポンプ室に流体を吸入し、該ポンプ室から吐出通路に一方向弁である吐出弁を介して流体を吐出するポンプモジュールであって、前記ダイヤフラムを変形させるアクチュエータとして比例ソレノイドが用いられ、該比例ソレノイドは、ソレノイドコイルへの通電電流の大きさに応じてプランジャの移動量をリニアに変化させ、該プランジャに結合された前記ダイヤフラムの変形量を連続的に変化させるものとされている。
【0008】
上記第1の手段によれば、ダイヤフラムを変形させるアクチュエータとして比例ソレノイドを使用する。そのため、ソレノイドコイルへの通電電流を制御することによりダイヤフラムの変形量を連続的に制御することができる。よって、ソレノイドコイルへの通電電流の制御によりポンプの吐出量をリニアに制御することができる。即ち、ダイヤフラムの変形周期を変えず、吐出圧の脈動を変化させずに吐出量を制御することができる。勿論、ダイヤフラムの変形周期を変えて吐出量を制御することもできる。
【0009】
第2の手段は、上述した第1の手段に記載のポンプモジュールであって、前記プランジャ又は前記ダイヤフラムは、前記プランジャの移動範囲の端部に対応する位置において、前記吸入弁又は前記吐出弁の少なくとも一方の弁体に当接して前記弁体を弁座に押圧して前記吸入弁又は前記吐出弁の少なくとも一方を閉弁させる。
【0010】
上記第2の手段によれば、吸入弁又は吐出弁をプランジャ又はダイヤフラムによって強制的に閉弁可能とする。そのため、一方向弁である吸入弁又は吐出弁を開閉弁として使用可能とすることができる。その結果、ポンプ用のアクチュエータと開閉弁用のアクチュエータとを共通化でき、ポンプと開閉弁の両機能を備えたポンプモジュールの構成を簡素化することができる。
【0011】
第3の手段は、上述した第2の手段に記載のポンプモジュールであって、前記吸入弁又は前記吐出弁は、前記プランジャ又は前記ダイヤフラムが前記弁体に当接しない自由状態、且つ前記ダイヤフラムが変形しない静止状態では、開弁状態となるように、前記弁体を前記弁座から離す方向に付勢する弾性体を備え、前記吸入通路又は前記吐出通路が、他よりも高い圧力又は他よりも低い圧力を保持する圧力源に連通されており、該圧力源に連通された前記吸入通路又は前記吐出通路の圧力を検出する圧力センサと、前記プランジャの移動範囲の端部において前記吸入弁又は前記吐出弁を閉弁状態とするための前記弁座に対する前記弁体の押圧力を可及的に小さくするように前記プランジャの移動量を制御する制御手段と、を備え、該制御手段は、前記プランジャ又は前記ダイヤフラムを前記吸入弁又は前記吐出弁の前記弁体に当接させて、前記吸入弁又は前記吐出弁を、開弁状態から徐々に閉弁する徐閉手段と、該徐閉手段により前記吸入弁又は前記吐出弁が徐々に閉弁している状態で、前記圧力センサによって検出される圧力が設定圧力以上変化したとき、その時点の前記吸入弁又は前記吐出弁の前記ソレノイドコイルへの通電電流を維持して、前記徐閉手段による前記吸入弁又は前記吐出弁の閉弁を停止する開閉停止手段と、を備える。
【0012】
上記第3の手段によれば、制御手段により、吸入弁又は吐出弁を開弁状態から徐々に閉弁して、閉弁状態とされた直後に閉弁動作を停止する。そのため、吸入弁又は吐出弁の閉弁状態における弁座に対する弁体の押圧力を可及的に小さくすることができる。従って、閉弁状態を長期間継続しても弁体の経時劣化を抑制することができ、弁体の耐久性を高めることができる。
【0013】
第4の手段は、上述した第2の手段に記載のポンプモジュールであって、前記吸入弁又は前記吐出弁は、前記プランジャ又は前記ダイヤフラムが前記弁体に当接しない自由状態、且つ前記ダイヤフラムが変形しない静止状態では、開弁状態となるように、前記弁体を前記弁座から離す方向に付勢する弾性体を備え、前記吸入通路又は前記吐出通路が、他よりも高い圧力又は他よりも低い圧力を保持する圧力源に連通されており、該圧力源に連通された前記吸入通路又は前記吐出通路の圧力を検出する圧力センサと、前記プランジャの移動範囲の端部において前記吸入弁又は前記吐出弁を閉弁状態とするための前記弁座に対する前記弁体の押圧力を可及的に小さくするように前記プランジャの移動量を制御する制御手段と、を備え、該制御手段は、前記プランジャ又は前記ダイヤフラムにより前記吸入弁又は前記吐出弁の前記弁体を前記弁座に押圧して閉弁状態とする閉弁手段と、該閉弁手段にて閉弁された前記吸入弁又は前記吐出弁の前記弁体を前記弁座から徐々に離すように、前記プランジャ又は前記ダイヤフラムを前記弁体から離して開弁する徐開手段と、該徐開手段により徐々に前記吸入弁又は前記吐出弁が開弁されている状態で、前記圧力センサによって検出される圧力が設定圧力以上変化したとき、前記徐開手段による前記吸入弁又は前記吐出弁の開弁を停止して、その時点の前記吸入弁又は前記吐出弁の前記ソレノイドコイルへの通電電流を閉弁側へ予め設定した電流値だけシフトして維持するシフト停止手段と、を備える。
【0014】
上記第4の手段によれば、制御手段により、吸入弁又は吐出弁を閉弁状態から徐々に開弁して、開弁状態とされた直後に開弁動作を停止して、所定量閉弁側へ弁体を閉じて閉弁状態とする。そのため、吸入弁又は吐出弁の閉弁状態における弁座に対する弁体の押圧力を可及的に小さくすることができる。従って、閉弁状態を長期間継続しても弁体の経時劣化を抑制することができ、弁体の耐久性を高めることができる。
【0015】
第5の手段は、上述した第2の手段に記載のポンプモジュールであって、前記プランジャ又は前記ダイヤフラムと前記吸入弁又は前記吐出弁の前記弁体との間に、前記プランジャ又は前記ダイヤフラムによる前記吸入弁又は前記吐出弁の前記弁座に対する前記弁体の押圧力を緩和させる弾性体を備える。
【0016】
上記第5の手段によれば、吸入弁又は吐出弁をプランジャ又はダイヤフラムによって強制的に閉弁する際、閉弁を維持した状態で、弁座に対する弁体の押圧力が弾性体によって緩和される。そのため、吸入弁又は吐出弁の閉弁状態を長期間継続しても弁体の経時劣化を抑制することができ、弁体の耐久性を高めることができる。
【0017】
第6の手段は、上述した第1~第5の手段のいずれかに記載のポンプモジュールであって、燃料タンク内で発生する蒸発燃料を吸着して捕捉するキャニスタと、該キャニスタに燃料タンク内で発生した蒸発燃料を導入するベーパ通路と、該ベーパ通路を開閉するベーパ弁と、前記キャニスタに捕捉された蒸発燃料をパージ処理のため通流させるパージ通路と、該パージ通路を開閉するパージ弁と、前記キャニスタを大気に連通する大気通路と、該大気通路を開閉する大気弁と、を備えた蒸発燃料処理装置を備え、前記吸入通路及び前記吐出通路は、前記ベーパ通路、前記パージ通路、又は前記大気通路に連通されている。
【0018】
上記第6の手段によれば、蒸発燃料処理装置のベーパ通路、パージ通路、又は大気通路にポンプモジュールが適用される。ポンプモジュールがプランジャの移動範囲の端部で吸入弁又は吐出弁を閉弁させる機能を備える場合には、蒸発燃料処理装置のベーパ通路、パージ通路、又は大気通路に一つのポンプモジュールを設けるのみで、ポンプと開閉弁の両機能を設けることができる。そのため、蒸発燃料処理装置の漏れ診断及び蒸発燃料のパージアシストを簡素な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の構成説明図である。
図2】第1実施形態の制御系のブロック回路図である。
図3】第1実施形態の作動説明図であり、ポンプ室に流体を吸入した状態を示す。
図4図3と同様の作動説明図であり、ポンプ室から流体を吐出した状態を示す。
図5図3と同様の作動説明図であり、吸入弁を強制閉弁した状態を示す。
図6】第1実施形態における吸入弁の強制閉弁時の制御内容を示すフローチャートである。
図7】第1実施形態における吸入弁の強制閉弁時の制御内容を説明するタイムチャートである。
図8】第2実施形態における吸入弁の強制閉弁時の制御内容を示すフローチャートである。
図9】第2実施形態における吸入弁の強制閉弁時の制御内容を説明するタイムチャートである。
図10】第3実施形態の構成説明図である。
図11図10の吸入弁付近の拡大図である。
図12】第4実施形態の構成説明図であり、第1実施形態を示す図1からの変更部分のみを示す。
図13】第4実施形態の作動説明図であり、図12と対応する部分のみを示す。
図14】第1~第4実施形態のポンプモジュールが適用される車両用燃料タンクの蒸発燃料処理装置を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態の全体構成>
図1は、ポンプモジュールの第1実施形態を示す。第1実施形態のポンプモジュールは、アクチュエータとして比例ソレノイドを用いたダイヤフラムポンプ1により構成されている。
【0021】
ポンプモジュールであるダイヤフラムポンプ1は、一つの容器であるポンプケース2を備える。ポンプケース2は、一枚のダイヤフラム4により2つの部屋に仕切られている。一方の部屋は、ポンプ室10とされ、他方の部屋は、ダイヤフラム室12とされている。ポンプ室10は、吸入通路14及び吐出通路16に連通されている。ダイヤフラム室12は、大気開放とされている。
【0022】
ポンプ室10が吸入通路14に連通される部分には、吸入弁6が設けられている。また、ポンプ室10が吐出通路16に連通される部分には、吐出弁8が設けられている。吸入弁6及び吐出弁8は、いずれも一方向弁である。吸入弁6は、吸入通路14からポンプ室10へ向かう流体の流れは許容するが、反対方向の流体の流れは阻止する。吐出弁8は、ポンプ室10から吐出通路16へ向かう流体の流れは許容するが、反対方向の流体の流れは阻止する。吸入弁6及び吐出弁8によって許容される流体の流れる方向が図1において矢印により示されている。
【0023】
吸入弁6の吸入通路14側には、吸入弁6の弁体6Aと吸入通路14の内壁面との間に圧縮ばね6Cが固定されている。圧縮ばね6Cは、弁体6Aが他の部材に拘束されない自由状態で、且つダイヤフラム4が変形動作しない静止状態では、弁体6Aを押圧して、弁座6Bから弁体6Aを離し、吸入通路14とポンプ室10とを連通状態としている。弁体6Aは、圧縮ばね6Cにより吸入通路14の内壁に連結されているため、弁体6Aが弁座6Bから大きく離れて移動することが防止されている。弁座6Bは、吸入通路14とポンプ室10との接続部分に設けられている。また、吸入通路14には、後述の圧力センサ32が接続されている。圧力センサ32は、吸入通路14における流体圧を検出している。
【0024】
吐出弁8の吐出通路16側には、吐出弁の弁体8Aと吐出通路16の内壁面との間に引張ばね8Cが固定されている。引張ばね8Cは、弁体8Aが他の部材に拘束されない自由状態で、且つダイヤフラム4が変形動作しない静止状態では、弁体8Aを引っ張って、弁座8Bから弁体8Aを離し、吐出通路16とポンプ室10とを連通状態としている。弁体8Aは、引張ばね8Cにより吐出通路16の内壁に連結されているため、弁体8Aが弁座8Bから大きく離れて移動することが防止されている。弁座8Bは、吐出通路16とポンプ室10との接続部分に設けられている。
【0025】
ダイヤフラムポンプ1は、アクチュエータとして比例ソレノイド17を備える。比例ソレノイド17は、ソレノイドコイル18と、ソレノイドコイル18への通電電流の大きさに応じて可動磁極(図示略)と共に移動量をリニアに変化させるプランジャ20と、を備える。プランジャ20は、ソレノイドコイル18の中空部を貫通して両端が突出する長さの棒状体であり、ソレノイドコイル18から突出する一方の端部20Aがダイヤフラム4の面内の中央部に結合されている。そのため、ソレノイドコイル18が通電されてプランジャ20のソレノイドコイル18からの突出量(移動量)が変化すると、ダイヤフラム4がプランジャ20の移動量に応じて変形される。また、プランジャ20の他方の端部は、フランジ部20Bとされている。プランジャ20の他方の端部において、フランジ部20Bより一方の端部20A側の外周上には、圧縮ばね22を備える。圧縮ばね22は、ソレノイドコイル18の外壁とフランジ部20Bとの間に弾発力を付与している。圧縮ばね22は、ソレノイドコイル18の通電によるプランジャ20の動きに対して抗力を発生している。図1は、ソレノイドコイル18が通電されていない状態を示す。
【0026】
<第1実施形態の制御回路>
図2は、ダイヤフラムポンプ1の制御回路を示す。ソレノイドコイル18は、電流コントローラ24により通電電流を制御されている。電流コントローラ24は、ポンプ作動スイッチ26、吐出量設定部28、強制閉弁スイッチ30、及び圧力センサ32からそれぞれ信号を受けるように接続されている。
【0027】
ポンプ作動スイッチ26がオン操作されると、吐出量設定部28によって設定された吐出量となるように電流コントローラ24がソレノイドコイル18に通電する。この通電は、予め決められた周期で行われ、通電時の電流は、パルス幅変調(PWM)により行われ、パルス幅により通電電流が調整される。
【0028】
強制閉弁スイッチ30がオン操作されると、プランジャ20がソレノイドコイル18の通電電流によって決まる移動範囲の端部まで移動する。その結果、プランジャ20の一方の端部20Aが吸入弁6の弁体6Aに当接して、吸入弁6を閉弁する。吸入弁6の閉弁に際しては、後述のように圧力センサ32の圧力に基づいて、プランジャ20の一方の端部20Aが吸入弁6の弁体6Aに当接する強さ(押圧力)を可及的に小さくするように、電流コントローラ24はソレノイドコイル18の通電電流を制御している。吸入弁6の弁体6Aは、弾性変形可能な合成ゴム製であり、吸入弁6が閉弁状態を維持するための弁体6Aの押圧力には幅があり、弁体6Aのダメージを少なくするためには、吸入弁6が閉弁状態を維持する際の弁体6Aの押圧力は可及的に小さい方が好ましい。なお、吐出弁8の弁体8Aも、弁体6Aと同様、弾性変形可能な合成ゴム製である。
【0029】
<第1実施形態の作用>
図3及び図4は、ダイヤフラムポンプ1がポンプとして作用している様子を示す。図3では、プランジャ20が矢印で示すように、図3にて上方に引き上げられている。このとき、ダイヤフラム4の中央部が図3にて上方へ向けて変形することにより、図3に矢印で示すように、ポンプ室10内に吸入弁6を介して吸入通路14から流体が吸入される。同時に、吐出弁8は、弁体8Aがポンプ室10の負圧によりポンプ室10側へ吸い込まれて閉弁される。
【0030】
図4では、プランジャ20が矢印で示すように、図4にて下方に押し下げられている。このとき、ダイヤフラム4の中央部が図4にて下方へ向けて変形することにより、図4に矢印で示すように、ポンプ室10内の流体が吐出弁8を介して吐出通路16へ吐出される。同時に、吸入弁6は、弁体6Aがポンプ室10の正圧によりポンプ室10から吸入通路14側へ押し出されて閉弁される。
【0031】
ソレノイドコイル18の通電電流が時間経過と共に大小に周期的に変化されることにより、プランジャ20及びダイヤフラム4が図3及び図4のように交互に移動及び変形されて、ダイヤフラムポンプ1がポンプとして機能する。このとき、図3及び図4に示すように、プランジャ20の一方の端部20Aは、吸入弁6の弁体6Aに当接しないように移動されている。これにより、ダイヤフラムポンプ1がポンプとして機能するとき、吸入弁6の弁体6Aにダメージを与えないようにしている。
【0032】
図5は、吸入弁6が強制閉弁された状態を示す。図5では、プランジャ20が矢印で示すように、図5にて下方に押し下げられている。このとき、プランジャ20は、移動範囲の端部まで押し下げられている。その結果、プランジャ20の一方の端部20Aが吸入弁6の弁体6Aに当接して弁座6Bに押し付け、吸入弁6を閉弁状態とする。プランジャ20の押し下げに伴うダイヤフラム4の変形によりポンプ室10内の圧力が高くなるため、ポンプ室10内の流体は、図5の矢印で示すように吐出弁8を介して吐出通路16に吐出される。
【0033】
このように吸入弁6が強制閉弁されることにより、吸入弁6は開閉弁として機能する。そのため、ポンプ室10を介して吸入通路14から吐出通路16に至る通路が吸入弁6により閉鎖可能とされている。しかも、開閉弁をポンプの吸入弁6を強制閉弁することにより構成しているため、開閉弁をポンプと別に設ける場合に比べて全体としての構成を簡素化することができる。
【0034】
<第1実施形態の強制閉弁制御>
図6及び図7は、吸入弁6の強制閉弁を行うに当たり、弁座6Bに対する弁体6Aの押圧力を可及的に小さくするようにプランジャ20の移動量を制御するための制御内容を示す。係る制御は、電流コントローラ24内のデジタルコンピュータにより行われる。
【0035】
コンピュータにおいて、図6の吸入弁の強制閉弁制御ルーチンが実行されると、ステップS10にて吸入弁6が最大移動量にて閉弁される。このときの吸入弁6の作動状況、圧力センサ32の検出圧P、プランジャ20の移動量、及びソレノイドコイル18の電流値が、図7のT1のタイミングで示されている。なお、吸入通路14は、所定の正圧を保持する圧力源、例えば、燃料タンク36(図14参照)に連通されている。次のステップS12では、吸入弁6を徐々に開弁する。そのため、図7のT1~T2で示すように、ソレノイドコイル18の電流値が徐々に小さくされる。その結果、プランジャ20は、徐々に開弁側に移動される。吸入弁6の弁体6Aは、圧縮ばね6Cの付勢力及び吸入通路14における流体圧を受けて、プランジャ20の移動と共に開弁側に移動される。
【0036】
図7のT2のタイミングでは、吸入弁6が開弁状態となる。その結果、圧力センサ32により検出される圧力Pが低下する。これは、吸入弁6が開弁状態となって、吸入通路14の流体がポンプ室10及び吐出通路16に流れるためである。T3のタイミングで、圧力低下の変化分ΔPが予め設定した設定圧力TP以上となると、図6のステップS14が肯定判断され、ステップS20にて吸入弁6を徐々に閉弁する。そのため、図7のT3~T4で示すように、ソレノイドコイル18の電流値が徐々に大きくされる。その結果、プランジャ20は、徐々に閉弁側に移動される。吸入弁6の弁体6Aは、プランジャ20の一方の端部20Aに押圧されて、プランジャ20の移動と共に閉弁側に移動される。
【0037】
図7のT4のタイミングでは、吸入弁6が閉弁状態となる。その結果、圧力センサ32により検出される圧力Pが上昇する。これは、吸入弁6が閉弁状態となって、吸入通路14の流体がポンプ室10及び吐出通路16に流れなくなるためである。T5のタイミングで、圧力上昇の変化分ΔPが予め設定した設定圧力TP以上となると、図6のステップS22が肯定判断され、ステップS24にて吸入弁6の開閉動作を停止する。即ち、図7のT5のタイミングで、ソレノイドコイル18の電流値を、その時点の電流値に固定する。その結果、プランジャ20は、その位置で停止される。吸入弁6の弁体6Aも、そのときの位置が維持され、吸入弁6は閉弁状態が維持される。
【0038】
このようにプランジャ20の移動量を制御することにより、吸入弁6の弁座6Bに対する弁体6Aの押圧力を可及的に小さくして吸入弁6を閉弁状態とすることができる。その結果、吸入弁6を閉弁状態としている間の弁体6Aの変形量を小さくして、弁体6Aの経時劣化を抑制することができる。
【0039】
図6の吸入弁の強制閉弁制御ルーチンの処理は、全体として制御手段に相当し、ステップS20の処理は、徐閉手段に相当し、ステップS22及びステップS24の処理は、開閉停止手段に相当する。
【0040】
この実施形態では、吸入弁6を閉弁した状態から徐々に開弁し、吸入弁6が開弁状態となる瞬間を確認した後に、再び徐々に閉弁して、閉弁状態に到達したところで閉弁を停止して、可及的に小さい押圧力での閉弁状態を実現している。これに対し、最初の閉弁状態を経ずに、開弁状態からいきなり徐々に閉弁して、可及的に小さい押圧力での閉弁状態を実現することもできる。しかし、後者の場合、最初の開弁状態の開弁度合が大きいと、徐々に閉弁して閉弁状態に到達するまでに長時間を要することが懸念される。即ち、可及的に小さい押圧力での閉弁状態を実現するための時間が長くなる恐れがある。
【0041】
ところで、可及的に小さい押圧力での閉弁状態を実現するための時間を短くするために、吸入弁6の強制閉弁制御に学習制御を取り入れることが考えられる。即ち、吸入弁6を徐々に開弁し、開弁状態となる瞬間(図7のT3のタイミングに相当)を学習値として記憶しておき、学習後の強制閉弁制御では、弁体6Aの位置を学習値の位置から徐々に閉弁する制御を開始する。このようにすれば、可及的に小さい押圧力での閉弁状態を実現するための時間を大幅に短くすることができる。
【0042】
<第2実施形態>
図8及び図9は、第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して相違する点は、吸入弁6の強制閉弁を行うに当たり、弁座6Bに対する弁体6Aの押圧力を可及的に小さくするためのプランジャ20の移動量制御の制御内容を変更した点である。その他の構成は、第2実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。図8及び図9は、第1実施形態における図6及び図7に対応するフローチャート及びタイムチャートである。
【0043】
図8のステップS10~ステップS14は、図6のステップS10~ステップS14と同一である。従って、図9のT1のタイミングでソレノイドコイル18の電流が徐々に小さくされ、プランジャ20が徐々に開弁される。そして、T2のタイミングで吸入弁6が開弁状態となり、第1実施形態の場合と同様に、T3のタイミングでステップS14が肯定判断されると、ステップS16にて吸入弁6の開弁動作が停止される。そして、ステップS18にて吸入弁6を所定量閉弁させる。そのため、図9のT3のタイミングで示すように、ソレノイドコイル18の電流がΔIだけ大きくされる。その結果、プランジャ20も設定量だけ閉弁側にシフトされ、吸入弁6が閉弁状態とされる。
【0044】
このように、第2実施形態においても第1実施形態と同様に、吸入弁6の弁座6Bに対する弁体6Aの押圧力を可及的に小さくして吸入弁6を閉弁状態とすることができる。その結果、吸入弁6を閉弁状態としている間の弁体6Aの変形量を小さくして、弁体6Aの経時劣化を抑制することができる。
【0045】
図8の吸入弁の強制閉弁制御ルーチンの処理は、全体として制御手段に相当し、ステップS10の処理は、閉弁手段に相当し、ステップS12の処理は、徐開手段に相当し、ステップS14、ステップS16、及びステップS18の処理は、シフト停止手段に相当する。
【0046】
<第3実施形態>
図10及び図11は、第3実施形態を示す。第3実施形態が第1実施形態に対して相違する点は、吸入弁6の弁体6Aとプランジャ20の一方の端部20Aとの間にばね(弾性体に相当)34を介在させた点である。その他の構成は、第3実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0047】
図11のように、ばね34は、圧縮ばねであり、弁体6Aに固定され、プランジャ20の一方の端部20Aには固定されていない。ばね34は、吸入弁6を強制閉弁する際に機能する。即ち、吸入弁6を強制閉弁するため、プランジャ20の一方の端部20Aが弁体6Aを押圧するとき、その押圧力を弁体6Aは、ばね34を介して受ける。そのため、プランジャ20の一方の端部20Aからの押圧力を、ばね34と弁体6Aの両者が押圧方向に重なった状態で受ける。それにより、一方の端部20Aが同じ量だけ移動してもばね34が弾性変形する分だけ弁体6Aに対する押圧力は小さくなり、弾性変形量も小さくなる。従って、吸入弁6を閉弁状態とするための吸入弁6の弁座6Bに対する弁体6Aの押圧力を維持しつつ、その力を緩和することができる。その結果、吸入弁6を閉弁状態としている間の弁体6Aの変形量を小さくして、弁体6Aの経時劣化を抑制することができる。
【0048】
<第4実施形態>
図12及び図13は、第4実施形態を示す。第4実施形態が第1実施形態に対して相違する点は、ダイヤフラムポンプ1の吐出弁8を開閉弁として使用するために強制閉弁可能とした点である。その他の構成は、第4実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。図12及び図13では、吐出弁8とその周辺構成のみを示すが、第1実施形態を示す図1において吸入弁6の上方にあるソレノイドコイル18、プランジャ20、及びダイヤフラム4は、第4実施形態では吐出弁8の上方に位置している。
【0049】
図12のように、吐出弁8の弁体8Aは、プランジャ20の一方の端部20Aに紐9により連結されている。紐9は、引張方向への延びは小さく、自在に撓むことが可能な素材により構成されている。紐9は、吐出弁8を強制閉弁する際に、図13のように、プランジャ20の一方の端部20Aによって弁体8Aを弁座8Bに向けて引っ張るようにしている。ダイヤフラムポンプ1をポンプとして使用する際は、図13のように、紐9は引っ張られた状態とはならず、図12のように撓んだ状態となるため、吐出弁の開閉動作に紐9が悪影響を与えることはない。
【0050】
第1実施形態では、吸入弁6を強制閉弁する際は、プランジャ20の一方の端部20Aにより吸入弁6の弁体6Aを押圧した。それに対し、第4実施形態の場合、吐出弁8を強制閉弁する際は、プランジャ20の一方の端部20Aにより吐出弁8の弁体8Aを弁座8Bに向けて引っ張るようにする。
【0051】
<蒸発燃料処理装置への適用>
図14は、第1実施形態~第4実施形態で説明したダイヤフラムポンプ1を適用可能な車両用蒸発燃料処理装置を示す。
【0052】
図14のように、燃料タンク36の上部には、燃料タンク36内に燃料ポンプ37をセットする際に、それを挿入するための開口(図示略)が形成されている。この開口には、セットプレート39が被せて設けられており、セットプレート39により開口が閉鎖されている。
【0053】
キャニスタ38は、内部に収容した活性炭で燃料タンク36内の気相に発生する蒸発燃料を吸着して捕捉するようにベーパ通路40を介して燃料タンク36内に連通されている。ベーパ通路40は、セットプレート39を貫通して配設されている。ベーパ通路40の途中には、ステップモータ駆動の封鎖弁42(ベーパ弁に相当)が設けられており、封鎖弁42によりベーパ通路40を開閉するようにされている。また、封鎖弁42を備えたベーパ通路40に対し、ポンプ通路44が並列接続されている。従って、キャニスタ38は、ベーパ通路40を通じて燃料タンク36の気相空間に連通されると共に、ポンプ通路44を通じても燃料タンク36の気相空間に連通されている。ポンプ通路44の途中には、遮断弁付きポンプ46が設けられている。
【0054】
キャニスタ38には、パージ通路48及び大気通路52が連通されている。パージ通路48の先端は、パージ処理のためエンジンの吸気管(図示略)に連通されている。パージ通路48の途中には、電磁弁であるパージ弁50が設けられている。従って、パージ弁50によりパージ通路48は開閉可能とされている。一方、大気通路52の先端は、エアフィルタ56に連通されている。大気通路52の途中には、電磁弁である大気弁54が設けられている。従って、大気弁54により大気通路52は開閉可能とされている。
【0055】
上記遮断弁付きポンプ46は、第1実施形態~第4実施形態で説明したダイヤフラムポンプ1を適用可能である。遮断弁付きポンプ46にダイヤフラムポンプ1が適用されるとき、吸入通路14がポンプ通路44の燃料タンク36側に連通され、吐出通路16がポンプ通路44のキャニスタ38側に連通される。
【0056】
<蒸発燃料処理装置の作用>
燃料タンク36への給油時、封鎖弁42及び大気弁54が開弁状態とされ、パージ弁50が閉弁状態とされている。また、遮断弁付きポンプ46であるダイヤフラムポンプ1の開閉弁は強制閉弁されている。そのため、燃料タンク36内で発生する蒸発燃料は、封鎖弁42を介してキャニスタ38に導入され、キャニスタ38内の活性炭により吸着される。蒸発燃料が吸着され、除去された残りの空気は、大気弁54を介してエアフィルタ56から大気中に放出される。
【0057】
エンジンが作動されると、キャニスタ38に吸着されていた蒸発燃料は、エンジンの吸気負圧によってエンジンの燃焼室に吸入されて燃焼される。そのため、封鎖弁42は閉弁状態とされ、パージ弁50及び大気弁54は開弁状態とされる。その結果、キャニスタ38の蒸発燃料はパージ処理される。係るパージ処理時にダイヤフラムポンプ1を作動することにより、エンジンの吸気負圧が弱い場合でもパージ処理を促進することができる。この場合、ダイヤフラムポンプ1のアクチュエータとして比例ソレノイドを使用しているため、必要に応じてダイヤフラムポンプ1の吐出量を調整することができる。
【0058】
なお、ダイヤフラムポンプ1は、パージ弁50の代わり、若しくは大気弁54の代わりに設けることもできる。その場合、ポンプ通路44は不要となる。パージ弁50の代わりにダイヤフラムポンプ1を用いる場合は、パージ通路48内で、吸入通路14がキャニスタ38側に連通され、吐出通路16がエンジン側に連通される。また、大気弁54の代わりにダイヤフラムポンプ1を用いる場合は、大気通路52内で、吸入通路14がエアフィルタ56側に連通され、吐出通路16がキャニスタ38側に連通される。パージ弁50の代わり、若しくは大気弁54の代わりにダイヤフラムポンプ1を用いた場合でも、パージ処理時にダイヤフラムポンプ1を作動して、エンジンの吸気負圧が弱いときにパージ処理を促進する機能は同様である。また、ダイヤフラムポンプ1の吸入弁6又は吐出弁8を強制閉弁することにより、パージ通路48又は大気通路52を閉鎖することもできる。
【0059】
<蒸発燃料処理装置の漏れ診断>
蒸発燃料処理装置には、上述のように蒸発燃料が流れる。そのため、蒸発燃料処理装置内に孔があって蒸発燃料が大気中に漏れるのは好ましくない。そこで、蒸発燃料処理装置では、漏れ診断を行うことが義務付けられている。図14のシステムにおいて、漏れ診断は次のように行われる。
【0060】
封鎖弁42、パージ弁50、及び大気弁54を全て閉じた状態で、ダイヤフラムポンプ1を作動して、燃料タンク36の気相空間からキャニスタ38に空気を送る。その結果、燃料タンク36の気相空間が負圧、キャニスタ38内が正圧となる。この状態で、ダイヤフラムポンプ1の吸入弁6又は吐出弁8を強制閉弁してポンプ通路44を遮断する。その後、燃料タンク36の気相空間の負圧、並びにキャニスタ38内の正圧がどのように変化するか、変化しないかを監視することにより燃料タンク36及びキャニスタ38の漏れ診断を行うことができる。
【0061】
漏れ診断は、負圧又は正圧の変化を監視することにより行うため、漏れ以外の原因による圧力変動は少ないことが望ましい。比例ソレノイドをアクチュエータとしたダイヤフラムポンプ1では、プランジャ20の移動量を自在に制御することができるため、ポンプ作動時のプランジャ20の移動量を小さくし、作動周期を短くすることにより、吐出圧の脈動を小さくすることができる。そのため、漏れ診断を行うまでの待機時間を短くすることができる。
【0062】
パージ弁50の位置、若しくは大気弁54の位置にダイヤフラムポンプ1を設置した場合には、ダイヤフラムポンプ1の作動によりキャニスタ38及び燃料タンク36を共に負圧、若しくは正圧として漏れ診断を行うことができる。パージ弁50の位置に設置したダイヤフラムポンプ1によりキャニスタ38及び燃料タンク36を共に負圧とする場合は、大気弁54は閉じ、封鎖弁42を開いた状態とする。また、大気弁54の位置に設置したダイヤフラムポンプ1によりキャニスタ38及び燃料タンク36を共に正圧とする場合は、パージ弁50は閉じ、封鎖弁42を開いた状態とする。
【0063】
<その他の実施形態>
以上、本明細書に開示の技術を特定の実施形態について説明したが、その他各種の形態で実施可能なものである。例えば、一方向弁は、ボールを用いたもの、スイング式など公知の各種のものを用いることができる。上記実施形態では、吸入弁6及び吐出弁8を個別に強制閉弁するものを示したが、それらの両方を同時に強制閉弁するようにしてもよい。また、上記実施形態では、強制閉弁する際にプランジャ20の一方の端部20Aにより弁体6A又は弁体8Aを弁座6B又は8Bに向けて押圧するようにしたが、ダイヤフラム4により弁体6A又は弁体8Aを弁座6B又は8Bに向けて押圧するようにしてもよい。更に、上記実施形態では、弁体6A、弁体8Aを付勢する弾性体を圧縮ばね6C、引張ばね8Cとしたが、他の弾性体を用いてもよい。
【0064】
上記実施形態では、吸入弁6を強制閉弁する際の吸入通路14の圧力は、正圧としたが、負圧としてもよい。また、吸入通路14の圧力源は、燃料タンク以外の圧力源としてもよい。更に、上記実施形態では、プランジャ20の一方の端部20Aと弁体6Aとの間に介在する弾性体をばね34としたが、他の弾性体を用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 ダイヤフラムポンプ(ポンプモジュール)
2 ポンプケース
4 ダイヤフラム
6 吸入弁
8 吐出弁
6A、8A 弁体
6B、8B 弁座
6C 圧縮ばね(弾性体)
8C 引張ばね(弾性体)
9 紐
10 ポンプ室
12 ダイヤフラム室
14 吸入通路
16 吐出通路
17 比例ソレノイド
18 ソレノイドコイル
20 プランジャ
20A 一方の端部
20B フランジ部
22 圧縮ばね
24 電流コントローラ
26 ポンプ作動スイッチ
28 吐出量設定部
30 強制閉弁スイッチ
32 圧力センサ
34 ばね(弾性体)
36 燃料タンク(圧力源)
37 燃料ポンプ
38 キャニスタ
39 セットプレート
40 ベーパ通路
42 封鎖弁(ベーパ弁)
44 ポンプ通路
46 遮断弁付きポンプ
48 パージ通路
50 パージ弁
52 大気通路
54 大気弁
56 エアフィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14