(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170031
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】超音波プローブおよび超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075878
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 徹
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD03
4C601DE01
4C601EE13
4C601GB22
4C601HH01
(57)【要約】
【課題】バッファ部を備える高圧送信回路と低圧送信回路とが併用される場合であっても、リーク電流を抑制することができる超音波プローブおよび超音波診断装置を提供する。
【解決手段】比較的高い電圧を送信する高圧送信回路と、比較的低い電圧を送信する低圧送信回路と、前記高圧送信回路と前記低圧送信回路とから選択的に電圧が送信される振動子を備える超音波プローブであって、前記高圧送信回路は、設定信号に基づいて出力する電流と引き込む電流を変化させる電流源部と、前記電流源部が出力する電流と引き込む電流に応じて前記振動子を駆動するバッファ部と、前記バッファ部の入力端と出力端に接続されるインピーダンス制御部を有することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
比較的高い電圧を送信する高圧送信回路と、
比較的低い電圧を送信する低圧送信回路と、
前記高圧送信回路と前記低圧送信回路とから選択的に電圧が送信される振動子と、
を備える超音波プローブであって、
前記高圧送信回路は:
設定信号に基づいて出力する電流と引き込む電流を変化させる電流源部と、
前記電流源部が出力する電流と引き込む電流に応じて前記振動子を駆動するバッファ部と、
前記バッファ部の入力端と出力端に接続されるインピーダンス制御部と、
を有することを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波プローブであって、
前記インピーダンス制御部は、抵抗であることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波プローブであって、
前記バッファ部がN型MOSトランジスタとP型MOSトランジスタを含み、
前記N型MOSトランジスタと前記P型MOSトランジスタの出力抵抗がro、前記電流源部の出力インピーダンスがZoutであるときに、前記抵抗の抵抗値Rzctlは、ro≦Rzctl<<Zoutの範囲であることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波プローブであって、
前記振動子が受信したエコー信号を増幅する受信回路をさらに備え、
前記振動子と前記低圧送信回路及び前記受信回路との間には高圧スイッチが設けられ、
前記高圧送信回路から電圧が送信されるときに前記高圧スイッチはオフになることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波プローブであって、
前記低圧送信回路から電圧が送信されるときに前記高圧スイッチはオンになり、前記受信回路はオフになることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項6】
請求項4に記載の超音波プローブであって、
前記高圧スイッチ及び前記低圧送信回路と前記受信回路との間には低圧スイッチが設けられ、
前記低圧送信回路から電圧が送信されるときに前記低圧スイッチはオフになることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項7】
請求項1に記載の超音波プローブを備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
比較的高い電圧を送信する高圧送信回路と、
比較的低い電圧を送信する低圧送信回路と、
前記高圧送信回路と前記低圧送信回路とから選択的に電圧が送信される振動子と、
前記振動子が受信したエコー信号を増幅する受信回路と、
を備える超音波プローブであって、
前記振動子と前記低圧送信回路及び前記受信回路との間には高圧スイッチが設けられ、
前記高圧送信回路から電圧が送信されるときに前記高圧スイッチはオフになることを特徴とする超音波プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の超音波プローブおよび超音波診断装置に関し、特に超音波プローブの各振動子を駆動する送信回路に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、被検体に送信された超音波のエコー信号を受信することにより、被検体の断層画像や、血流分布を画像化したドプラ画像を撮像する装置である。超音波を送信する超音波プローブの各振動子には、断層画像の撮像時に100V程度の比較的高い電圧が印加されるのに対し、ドプラ画像の撮像時に数V程度の比較的低い電圧が連続的に印加される。また断層画像やドプラ画像の空間分解能を向上させるには、各振動子のサイズをより小さくするとともに、各振動子に電圧を印加して個別に駆動する増幅回路の小型化が必要である。
【0003】
特許文献1には、増幅回路を小型化するために、設定信号に基づいて、出力する電流と引き込む電流を変化させる電流源部と、電流源部が出力する電流と引き込む電流に応じて振動子を駆動するバッファ部を備える増幅回路及び超音波プローブが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の増幅回路を断層画像の撮像用の高圧送信回路とし、高圧送信回路とは別にドプラ画像の撮像用の低圧送信回路を設けた場合、バッファ部にリーク電流が発生することがある。すなわち、バッファ部を備える高圧送信回路の出力インピーダンスが比較的低いことにより、低圧送信回路から送信される信号に対して、リーク電流が発生する場合がある。
【0006】
そこで本発明は、バッファ部を備える高圧送信回路と低圧送信回路とが併用される場合であっても、リーク電流を抑制することができる超音波プローブおよび超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、比較的高い電圧を送信する高圧送信回路と、比較的低い電圧を送信する低圧送信回路と、前記高圧送信回路と前記低圧送信回路とから選択的に電圧が送信される振動子を備える超音波プローブであって、前記高圧送信回路は、設定信号に基づいて出力する電流と引き込む電流を変化させる電流源部と、前記電流源部が出力する電流と引き込む電流に応じて前記振動子を駆動するバッファ部と、前記バッファ部の入力端と出力端に接続されるインピーダンス制御部を有することを特徴とする超音波プローブである。
【0008】
また本発明は、前記超音波プローブを備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バッファ部を備える高圧送信回路と低圧送信回路とが併用される場合であっても、リーク電流を抑制することができる超音波プローブおよび超音波診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】本発明の超音波プローブが有する送信回路の構成図。
【
図4】送信回路の中の高圧送信回路の具体例を示す図。
【
図5】振動子制御ユニットの中の配置の一例を示す図。
【
図6】振動子制御ユニットの中の配置の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の超音波診断装置及び超音波プローブの実施の形態を図面に従い説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0012】
また便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0013】
図1を用いて、本発明の超音波診断装置100の一例について説明する。超音波診断装置100は、被検体に送信された超音波のエコー信号を受信することにより、被検体の断層画像や血流分布を画像化したドプラ画像を撮像する装置であり、超音波プローブ104と本体101とがケーブル105によって電気的に接続されて構成される。
【0014】
超音波プローブ104は、被検体に超音波を送信するとともに、被検体からのエコー信号を受信する装置であり、振動子ユニット107と制御IC(Integrated Circuit)106を有する。制御IC106は、例えば、一つの半導体チップで構成される。超音波プローブ104の詳細構成は
図2を用いて後述される。
【0015】
本体101は、超音波プローブ104に超音波を送信するための電力を供給するとともに、超音波プローブ104が受信したエコー信号に基づいて断層画像やドプラ画像を生成し、表示する装置であり、制御部103と表示部102を有する。制御部103は、CPU(Central Processor Unit)や、DSP(Digital Signal Processor)、記憶装置、通信インタフェース、ユーザインタフェース等を備え、超音波プローブに供給する電力を制御したり、エコー信号に基づいて断層画像等が生成したりする。表示部102は、例えば液晶ディスプレイであり、制御部103によって生成された断層画像等を表示する。断層画像等の撮像条件は、キーボードやマウス、表示部102に表示されるタッチパネル等のユーザインタフェースを介して操作者によって設定される。
【0016】
図2を用いて、超音波プローブ104の一例について説明する。前述のように、超音波プローブ104は振動子ユニット107と制御IC106を有する。振動子ユニット107は、被検体に超音波を送信するとともに、被検体からのエコー信号を受信する複数の振動子2を有する。複数の振動子2は、例えば行方向であるX方向にm個、列方向であるY方向にn個が配列され、n行m列の2次元配置とされる。
【0017】
制御IC106は、複数の振動子制御ユニット110と、行周辺回路115、列周辺回路116、メモリ120を有する。振動子制御ユニット110は、個々の振動子2と配線3によって電気的に接続され、送信回路1と、送信信号生成回路9、受信回路111、可変遅延回路91を有する。
【0018】
送信回路1は、振動子2に電圧を印加することにより、超音波が送信されるように振動子2を駆動する回路であり、撮像される画像に応じて振動子2に印加する電圧を制御する。例えば、断層画像の撮像時には100V程度の比較的高い電圧が印加され、ドプラ画像の撮像時には数V程度の比較的低い電圧が連続的に印加される。送信回路1の詳細構成は
図3を用いて後述される。
【0019】
送信信号生成回路9は、送信回路1が振動子2を駆動するタイミングを制御する回路である。例えば、複数の振動子2から送信される超音波が被検体内で重なり合うポイントが走査されるように送信信号生成回路9はタイミングを制御する。
【0020】
受信回路111は、振動子2が受信したエコー信号を増幅する回路である。可変遅延回路91は、被検体に送信された超音波が重なり合うポイントから各振動子2までの距離に応じた遅延時間をエコー信号に設定する回路である。遅延時間が設定されたエコー信号は、制御部103に送信され、断層画像等の生成に用いられる。
【0021】
行周辺回路115は、n組の行制御信号117により各々の振動子制御ユニット110を行単位で制御する。また列周辺回路116は、m組の列制御信号118により各々の振動子制御ユニット110を列単位で制御する。行制御信号117や列制御信号118は、特定の振動子2を選択するための信号や、個々の振動子2の遅延時間を定めるための信号等の設定信号を含み、設定情報121としてメモリ120に格納される。
【0022】
図3を用いて、送信回路1の一例について説明する。送信回路1は高圧送信回路10と低圧送信回路16を有し、撮像される画像に応じて高圧送信回路10と低圧送信回路16のいずれかを選択的に動作させる。
【0023】
高圧送信回路10は、断層画像の撮像時に動作し、比較的高い電圧を振動子2に印加する回路であり、高圧制御部11と、レベルシフタ12、高圧ドライバ部13、バッファ部14、インピーダンス制御部15を有する。高圧制御部11は、送信信号生成回路9から送信される高圧送信信号に従って制御され、レベルシフタ12に送信する信号を生成する。レベルシフタ12は、高圧制御部11から送信される信号の電圧レベルを変換する。高圧ドライバ部13は、レベルシフタ12によって電圧レベルが変換された信号を振動子2へバッファ部14を介して出力する。
【0024】
低圧送信回路16は、ドプラ画像の撮像時に動作し、比較的低い電圧を振動子2に印加する回路であり、低圧制御部17と低圧ドライバ部18を有する。低圧制御部17は、送信信号生成回路9から送信される低圧送信信号に従って、低圧ドライバ部18に送信する信号を生成する。低圧ドライバ部18は低圧制御部17から送信される信号を振動子2へ出力する。
【0025】
前述のように、振動子2には高圧送信回路10と低圧送信回路16が接続される。バッファ部14を有する高圧送信回路10の出力インピーダンスが比較的低いことにより、低圧送信回路16から送信される信号に対して、バッファ部14にリーク電流が発生する場合がある。そこで、
図3の高圧送信回路10には、バッファ部14の入力端と出力端に接続されるインピーダンス制御部15が設けられる。高圧送信回路10にインピーダンス制御部15が設けられることにより、入出力が同電位となるバッファ部14においてリーク電流が抑制される。なお、高圧制御部11と、レベルシフタ12、高圧ドライバ部13は、設定信号に基づいて出力する電流と引き込む電流を変化させる可変電流源部として機能する。
【0026】
図4を用いて、高圧制御部11、レベルシフタ12、高圧ドライバ部13、バッファ部14、インピーダンス制御部15を有する高圧送信回路10の具体例について説明する。
【0027】
高圧制御部11は、スイッチ30とスイッチ31とを有する。スイッチ30は一端に基準信号Aが入力され、他端にレベルシフタ12が有するN型MOSトランジスタ20のゲート端子が接続される。スイッチ31は一端に基準信号Bが入力され、他端にレベルシフタ12が有するP型MOSトランジスタ24のゲート端子が接続される。基準信号Aと基準信号Bは例えば1VとVDD-1Vである。スイッチ30とスイッチ31のオン・オフは、送信信号生成回路9から送信される高圧送信信号である制御信号Aと制御信号Bによってそれぞれ制御される。
【0028】
レベルシフタ12は、N型MOSトランジスタ20、N型高圧MOSトランジスタ21、P型MOSトランジスタ22、P型MOSトランジスタ24、P型高圧MOSトランジスタ25、N型MOSトランジスタ26を有する。
【0029】
N型MOSトランジスタ20は、ゲート端子がスイッチ30に、ソース端子が接地電位に、ドレイン端子がN型高圧MOSトランジスタ21のソース端子に接続される。N型高圧MOSトランジスタ21は、ゲート端子にバイアス電圧VbiasAが入力され、ソース端子がN型MOSトランジスタ20のドレイン端子に、ドレイン端子がP型MOSトランジスタ22のドレイン端子およびゲート端子に接続される。P型MOSトランジスタ22は、ドレイン端子およびゲート端子がN型高圧MOSトランジスタ21のドレイン端子に、ソース端子が高圧の正側配線であるHVDDに接続される。
【0030】
P型MOSトランジスタ24は、ゲート端子がスイッチ31に、ソース端子が低圧の正側配線であるVDDに、ドレイン端子がP型高圧MOSトランジスタ25のソース端子に接続される。P型高圧MOSトランジスタ25は、ゲート端子にバイアス電圧VbiasBが入力され、ソース端子がP型MOSトランジスタ24のドレイン端子に、ドレイン端子がN型MOSトランジスタ26のドレイン端子およびゲート端子に接続される。N型MOSトランジスタ26は、ドレイン端子およびゲート端子がP型高圧MOSトランジスタ25のドレイン端子に、ソース端子が高圧の負側配線であるHVSSに接続される。
【0031】
制御信号Aによりスイッチ30がオンになると、基準信号AがN型MOSトランジスタ20のゲート端子に印加され、N型MOSトランジスタ20のドレイン端子から基準信号Aに応じた電流が流れる。N型MOSトランジスタ20のドレイン端子から電流が流れるとき、N型高圧MOSトランジスタ21を介してP型MOSトランジスタ22に、制御信号Aの電圧レベルが変換された信号が伝送される。すなわち、N型MOSトランジスタ20、N型高圧MOSトランジスタ21、P型MOSトランジスタ22は、スイッチ30をオン・オフ制御する制御信号Aの電圧レベルを変換するレベルシフタ12として機能する。なお、P型MOSトランジスタ24、P型高圧MOSトランジスタ25、N型MOSトランジスタ26も同様に、スイッチ31をオン・オフ制御する制御信号Bの電圧レベルを変換するレベルシフタ12として機能する。
【0032】
高圧ドライバ部13は、P型高圧MOSトランジスタ23とN型高圧MOSトランジスタ27を有する。P型高圧MOSトランジスタ23は、ゲート端子に制御信号Aの電圧レベルが変換された信号が印加され、ソース端子がHVDDに、ドレイン端子がバッファ部14のN型高圧MOSトランジスタ28のゲート端子に接続される。N型高圧MOSトランジスタ27は、ゲート端子に制御信号Bの電圧レベルが変換された信号が印加され、ソース端子がHVSSに、ドレイン端子がバッファ部14のP型高圧MOSトランジスタ29のゲート端子に接続される。
【0033】
P型高圧MOSトランジスタ23のゲート端子に制御信号Aの電圧レベルが変換された信号が印加されると、ゲート端子に印加された電圧に応じた電流がドレイン端子から流れる。すなわち、P型高圧MOSトランジスタ23は、電圧レベルが変換された信号を出力する高圧ドライバ部13として機能する。なお、N型高圧MOSトランジスタ27も同様に、電圧レベルが変換された信号を出力する高圧ドライバ部13として機能する。
【0034】
バッファ部14は、N型高圧MOSトランジスタ28とP型高圧MOSトランジスタ29を有する。N型高圧MOSトランジスタ28は、ゲート端子がP型高圧MOSトランジスタ23のドレイン端子に、ドレイン端子がHVDDに、ソース端子が振動子2に接続される。P型高圧MOSトランジスタ29は、ゲート端子がN型高圧MOSトランジスタ27のドレイン端子に、ドレイン端子がHVSSに、ソース端子が振動子2に接続される。すなわちN型高圧MOSトランジスタ28とP型高圧MOSトランジスタ29のソース端子はバッファ部14の出力端となる。またN型高圧MOSトランジスタ28のゲート端子とP型高圧MOSトランジスタ29のゲート端子が接続されてバッファ部14の入力端となる。
【0035】
高圧ドライバ部13のP型高圧MOSトランジスタ23とN型高圧MOSトランジスタ27のドレイン端子から流れる電流は、N型高圧MOSトランジスタ28とP型高圧MOSトランジスタ29のゲート端子の電圧を上昇させる。ゲート端子の電圧が上昇すると、上昇した電圧と同等レベルの電圧がN型高圧MOSトランジスタ28とP型高圧MOSトランジスタ29のソース端子から出力され、ソース端子から出力される電圧によって振動子2が駆動される。すなわち、N型高圧MOSトランジスタ28とP型高圧MOSトランジスタ29は、高圧制御部11と、レベルシフタ12、高圧ドライバ部13を有する電流源部が出力する又は引き込む電流に応じて振動子2を駆動するバッファ部14として機能する。
【0036】
インピーダンス制御部15は、例えばバッファ部14と並列に接続される抵抗32によって構成される。
図4に示す送信回路1において、低圧送信回路16によって振動子2を駆動するとき、振動子2とともに高圧送信回路10の出力端にも低圧送信回路16から電圧が印加されるものの、低圧送信回路16の動作中は、高圧送信回路10は停止中であり高圧ドライバ部13がオフ状態であるため、抵抗32によってバッファ部14の入力端の過渡的な電圧変化を出力端と同電位にできる。これによって、N型高圧MOSトランジスタ28とP型高圧MOSトランジスタ29のゲート・ソース間電圧が同電位となる。その結果、バッファ部14で発生するリーク電流を抑制することができる。なお、抵抗32の抵抗値は、高圧ドライバ部13の出力インピーダンスよりも十分に低く、N型高圧MOSトランジスタ28とP型高圧MOSトランジスタ29のドレイン・ソース間抵抗と同程度であることが好ましい。
【0037】
抵抗32の抵抗値Rzctlの適切な範囲は、二つの制約条件から決定することができる。一つ目の制約条件は、高圧送信回路10のバッファ部14による振動子2の駆動を抵抗32が阻害しないようにすること、つまりバッファ部14の入力信号Vinと出力信号Voutの比である増幅率Anを1に近づけることである。バッファ部14の増幅率Anは次式で表される。
【0038】
【0039】
ここで、gmはN型高圧MOSトランジスタ28とP型高圧MOSトランジスタ29のトランスコンダクタンス係数、roはN型高圧MOSトランジスタ28とP型高圧MOSトランジスタ29の出力抵抗である。なおN型高圧MOSトランジスタ28とP型高圧MOSトランジスタ29のトランスコンダクタンス係数は同じ値とする。またN型高圧MOSトランジスタ28とP型高圧MOSトランジスタ29の出力抵抗も同じ値とする。
【0040】
一般的な半導体プロセスによればgm・ro>1であるため、増幅率Anを1に近づけるには、Rzctlがroと同程度以上であれば良い。つまりRzctl≧roが一つ目の制約条件となる。
【0041】
二つ目の制約条件は、高圧送信回路10の出力から信号が印加されたときに、バッファ部14の出力と入力の電位差を無くすことである。高圧ドライバ部13の出力インピーダンスがZoutであるとき、バッファ部14の入力信号Vinと出力信号Voutの関係は次式で表される。
【0042】
【0043】
上式においてVin/Vout=1とするには、Zout>>Rzctlであれば良く、これが二つ目の制約条件となる。よって二つの制約条件から、抵抗32の抵抗値Rzctlの適切な範囲は、ro≦Rzctl<<Zoutとなる。抵抗値Rzctlが適切な範囲であるとき、高圧送信回路10の動作は阻害されず、バッファ部14におけるリーク電流を抑制することができる。
【0044】
図5を用いて、振動子制御ユニット110の中の配置の一例について説明する。
図5では、高圧スイッチ40が低圧送信回路16及び受信回路111と振動子2との間に配置される。高圧スイッチ40は、高圧送信回路10と低圧送信回路16との動作に応じてオン・オフ制御される。すなわち高圧スイッチ40は、高圧送信回路10の動作中はオフになり、低圧送信回路16の動作中はオンになる。このようなオン・オフ制御により、高圧送信回路10から出力される比較的高い電圧による低圧送信回路16及び受信回路111の破壊を防ぐことができる。
【0045】
なお高圧送信回路10と低圧送信回路16は、送信信号生成回路9から送信される高圧送信信号と低圧送信信号により、選択的に動作させられる。また低圧送信回路16の動作中は受信回路111がオフになる。さらにエコー信号の受信時には高圧スイッチ40がオンになり、低圧送信回路16がオフになる。
【0046】
図6を用いて、振動子制御ユニット110の中の配置の他の例について説明する。
図6では、
図5の配置に対して、低圧スイッチ42と低圧スイッチ43、クランプダイオード44が追加される。低圧スイッチ42は、高圧スイッチ40及び低圧送信回路16と受信回路111との間に配置される。低圧スイッチ42は、エコー信号の受信時にオンになり、低圧送信回路16の動作中にオフになる。クランプダイオード44は低圧スイッチ42と受信回路111との間に接続される。低圧スイッチ43は一端が高圧スイッチ40と低圧スイッチ42との間に接続され、他端が出力端に接続される。
【0047】
低圧スイッチ42により、受信回路111を低圧送信回路16から分離することができる。さらにクランプダイオード44により、受信回路111への過大入力を抑制できる。また低圧スイッチ43により受信回路111を介すことなくエコー信号を出力することができる。
【0048】
以上、説明した実施の形態にはさまざまなバリエーションがあっても良い。例えば、前述の「比較的低い電圧」と「比較的高い電圧」は必ずしも数Vと100Vである必要はなく、「比較的低い電圧」<「比較的高い電圧」であればよい。
【符号の説明】
【0049】
1:送信回路、2:振動子、3:配線、9:送信信号生成回路、10:高圧送信回路、11:高圧制御部、12:レベルシフタ、13:高圧ドライバ部、14:バッファ部、15:インピーダンス制御部、16:低圧送信回路、17:低圧制御部、18:低圧ドライバ部、20、26:N型MOSトランジスタ、21、27、28:N型高圧MOSトランジスタ、22、24:P型MOSトランジスタ、23、25、29:P型高圧MOSトランジスタ、30、31:スイッチ、32:抵抗、40:高圧スイッチ、42、43:低圧スイッチ、91:可変遅延回路、100:超音波診断装置、101:本体、102:表示部、103:制御部、104:超音波プローブ、105:ケーブル、106:制御IC、107:振動子ユニット、110:振動子制御ユニット、111:受信回路、115:行周辺回路、116:列周辺回路、117:行制御信号、118:列制御信号、120:メモリ、121:設定情報