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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170041
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】作業機及びフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/52 20060101AFI20221102BHJP
   A47L 9/10 20060101ALI20221102BHJP
   A47L 9/12 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B01D46/52 C
A47L9/10 Z
A47L9/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075909
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】圓谷 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】羽山 芳雅
(72)【発明者】
【氏名】掛川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】青葉 洋市
【テーマコード(参考)】
3B062
4D058
【Fターム(参考)】
3B062AA08
3B062AA09
3B062AB02
3B062AB32
3B062AC05
3B062AC11
3B062AC21
4D058JA10
4D058KA03
4D058KB11
4D058MA37
4D058QA03
4D058QA21
(57)【要約】
【課題】、集塵性能やメンテナンス性が向上したフィルタを備える作業機を実現する。
【解決手段】集塵機は、電動モータおよびファンを備えるヘッドと、ヘッドが搭載されるタンクと、タンクからヘッドに流入する空気に含まれている塵埃を捕集可能なプレフィルタ31と、を有する。プレフィルタ31は、軸線方向の一端側を閉塞する底面部51と、前記軸線方向の他端側に設けられた開口部52と、底面部51から開口部52に向かって延在する側面部53と、によって袋状に形成される。プレフィルタ31の側面部53には、軸線方向に延在するプリーツ60が周方向に沿って複数設けられる。各プリーツ60は、周方向に折り返され、かつ、径方向に重なり合う複数の折返し部によって形成され、それら折返し部の折り目71a,72aは、前記軸線方向に対して前記周方向に傾斜する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源によって回転駆動されるファンと、
前記駆動源および前記ファンを収容し、吸気口を備えるヘッドと、
吸込口を備え、前記ヘッドが搭載されるタンクと、
前記吸気口を覆うように前記ヘッドに接続され、前記吸込口から吸い込まれて前記吸気口に流入する空気に含まれている塵埃を捕集可能なフィルタと、を有し、
前記フィルタは、軸線方向の一端側を閉塞する底面部と、前記軸線方向の他端側に設けられ、前記吸気口に接続される開口部と、前記底面部から前記開口部に向かって延在する側面部と、によって袋状に形成され、
前記フィルタの前記側面部には、前記底面部と前記開口部との間に延在するプリーツが周方向に沿って複数設けられ、
それぞれの前記プリーツは、前記周方向に折り返され、かつ、径方向に重なり合う複数の折返し部によって形成され、
それぞれの前記プリーツを形成する複数の前記折返し部の少なくとも1つの折り目が、前記軸線方向に対して前記周方向に傾斜している、作業機。
【請求項2】
それぞれの前記プリーツは、複数の前記折返し部の前記底面部の側の端部によって形成される第1重畳部と、複数の前記折返し部の前記開口部の側の端部によって形成される第2重畳部と、を含み、
前記第1重畳部の幅が、前記第2重畳部の幅よりも狭い、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
それぞれの前記プリーツは、複数の前記折返し部の前記底面部の側の端部によって形成される第1重畳部と、複数の前記折返し部の前記開口部の側の端部によって形成される第2重畳部と、を含み、
前記第1重畳部を形成している前記折返し部の前記端部の折り返しの向きと、前記第2重畳部を形成している前記折返し部の前記端部の折り返しの向きとが逆である、請求項1に記載の作業機。
【請求項4】
それぞれの前記プリーツは、複数の前記折返し部の前記底面部の側の端部によって形成される第1重畳部と、複数の前記折返し部の前記開口部の側の端部によって形成される第2重畳部と、を含み、
前記第1重畳部の位置と、前記第2重畳部の位置とが前記周方向にずれている、請求項1に記載の作業機。
【請求項5】
前記フィルタは、前記開口部の形状を保持可能であり、かつ、前記タンクの縁に係止可能な枠部材を備え、
それぞれの前記第1重畳部は、前記底面部に縫い付けられ、
それぞれの前記第2重畳部は、前記枠部材に縫い付けられている、請求項2~4のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項6】
前記第1重畳部の幅は、前記側面部の全長の10%以下である、請求項2~5のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項7】
前記フィルタの内側に配置される復元部材を有し、
前記復元部材は、前記ファンが停止されると、前記ファンの吸引力によって変形していた前記フィルタを復元させる、請求項1~6のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項8】
前記フィルタの内側に配置され、前記フィルタを通過した空気に含まれている塵埃を捕集可能な他のフィルタを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項9】
作業機の吸気口を覆うように前記作業機に接続され、前記吸気口に流入する空気に含まれている塵埃を捕集可能なフィルタであって、
軸線方向の一端側を閉塞する底面部と、前記軸線方向の他端側に設けられ、前記吸気口に接続される開口部と、前記底面部から前記開口部に向かって延在する側面部と、によって袋状に形成され、
前記側面部には、前記底面部と前記開口部との間に延在するプリーツが周方向に沿って複数設けられ、
それぞれの前記プリーツは、前記周方向に折り返され、かつ、径方向に重なり合う複数の折返し部によって形成され、
それぞれの前記プリーツを形成する複数の前記折返し部の少なくとも1つの折り目が、前記軸線方向に対して前記周方向に傾斜している、フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気に含まれる塵埃を捕集するフィルタ及びそれを備えた作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業機の一例である集塵機が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されている集塵機は、回転駆動されるファンと、ファンの吸引力によって空気が吸い込まれるタンクと、タンク内に配置されたフィルタと、を備えている。この集塵機では、タンク内に吸い込まれた空気に含まれる塵埃がフィルタによって捕集される。フィルタによって捕集された塵埃は、フィルタの表面(外面)に付着し、然る後、フィルタ外面から脱落(剥落)してタンク内に貯留される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-186780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような作業機では、フィルタの集塵性能やメンテナンス性の向上が望まれる。より特定的には、フィルタの外寸(体積)を維持しつつ、表面積(ろ過面積)を拡大することが望まれる。また、フィルタに対する塵埃の堆積や蓄積を抑制することが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、集塵性能やメンテナンス性が向上したフィルタを備える作業機を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の作業機は、駆動源と、前記駆動源によって回転駆動されるファンと、前記駆動源および前記ファンを収容し、吸気口を備えるヘッドと、吸込口を備え、前記ヘッドが搭載されるタンクと、前記吸気口を覆うように前記ヘッドに接続され、前記吸込口から吸い込まれて前記吸気口に流入する空気に含まれている塵埃を捕集可能なフィルタと、を有する。前記フィルタは、軸線方向の一端側を閉塞する底面部と、前記軸線方向の他端側に設けられ、前記吸気口に接続される開口部と、前記底面部から前記開口部に向かって延在する側面部と、によって袋状に形成される。前記フィルタの前記側面部には、前記底面部と前記開口部との間に延在するプリーツが周方向に沿って複数設けられる。それぞれの前記プリーツは、前記周方向に折り返され、かつ、径方向に重なり合う複数の折返し部によって形成される。それぞれの前記プリーツを形成する複数の前記折返し部の少なくとも1つの折り目は、前記軸線方向に対して前記周方向に傾斜する。
【0007】
一実施形態のフィルタは、作業機の吸気口を覆うように前記作業機に接続され、前記吸気口に流入する空気に含まれている塵埃を捕集可能である。このフィルタは、軸線方向の一端側を閉塞する底面部と、前記軸線方向の他端側に設けられ、前記吸気口に接続される開口部と、前記底面部から前記開口部に向かって延在する側面部と、によって袋状に形成される。前記側面部には、前記底面部と前記開口部との間に延在するプリーツが周方向に沿って複数設けられる。それぞれの前記プリーツは、前記周方向に折り返され、かつ、径方向に重なり合う複数の折返し部によって形成される。それぞれの前記プリーツを形成する複数の前記折返し部の少なくとも1つの折り目は、前記軸線方向に対して前記周方向に傾斜する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、集塵性能やメンテナンス性が向上したフィルタを備える作業機が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】集塵機の外観を示す斜視図である。
図2】集塵機の構造を示す断面図である。
図3】集塵機の構造を示す展開図である。
図4】プレフィルタの平面図である。
図5】プレフィルタの底面図である。
図6】プレフィルタの側面図である。
図7図6中のa-a線に沿うプレフィルタの全体断面図である。
図8図6中のb-b線に沿うプレフィルタの全体断面図である
図9A図6中のa-a線に沿うプレフィルタの部分拡大断面図である。
図9B図6中のb-b線に沿うプレフィルタの部分拡大断面図である。
図10図6中のm-m線に沿うプレフィルタの部分拡大断面図である。
図11】置換可能なプレフィルタの側面図である。
図12A図11中のc-c線に沿うプレフィルタの部分拡大断面図である。
図12B図11中のd-d線に沿うプレフィルタの部分拡大断面図である。
図13図11中のn-n線に沿うプレフィルタの部分拡大断面図である。
図14】置換可能な他のプレフィルタの側面図である。
図15A図14中のe-e線に沿うプレフィルタの部分拡大断面図である。
図15B図14中のf-f線に沿うプレフィルタの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。尚、実施形態を説明するための全ての図面において、同一又は実質的に同一の構成や要素には同一の符号を用い、原則として再度の説明は行わない。
【0011】
<全体構成>
図1は、本実施形態に係る作業機(集塵機)1の外観を示す斜視図である。図2は、図1に示されている集塵機1の構造を示す断面図である。図3は、図1に示されている集塵機1の構造を示す展開図である。
【0012】
図1図3に示されている集塵機1は、タンク10と、タンク10の上に重ねて配置されるヘッド20と、タンク10とヘッド20との間に配置される複数のフィルタ30と、フィルタ30の内側に配置される復元部材40と、を有する。
【0013】
<フィルタおよび復元部材>
フィルタ30には、タンク10の内側に配置される一次フィルタ31と、一次フィルタ31の内側に配置される二次フィルタ32と、二次フィルタ32の内側に配置される三次フィルタ33と、が含まれる。
【0014】
別の見方をすると、一次フィルタ31は二次フィルタ32の外側に設けられ、三次フィルタ33は二次フィルタ32の内側に設けられている。つまり、フィルタ30は三層構造を有している。言い換えれば、一次フィルタ31は、外側フィルタであり、三次フィルタ33は内側フィルタであり、二次フィルタ32は中間フィルタである。
【0015】
一次フィルタ31は、合成繊維や化学繊維等からなる布によって袋状に形成されている。二次フィルタ32は、合成繊維や化学繊維等からなる不織布によって円筒状に形成されている。三次フィルタ33は、ひだ折りされたろ紙等によって円筒状に形成されている。二次フィルタ32の孔径は、一次フィルタ31の孔径よりも小さく、三次フィルタ33の孔径は、二次フィルタ32の孔径よりも小さい。
【0016】
二次フィルタ32は、三次フィルタ33の周囲を覆っており、かつ、三次フィルタ33と一体化されている。もっとも、二次フィルタ32と三次フィルタ33とは、必要に応じて分離させることもできる。
【0017】
復元部材40は、ポリウレタンフォーム等の発泡性樹脂材料によって成形された円筒状弾性体である。復元部材40の成形体密度は、復元部材40に求められる硬さに応じて設定される。復元部材40の成形体密度は、例えば30Kg/m3に設定される。
【0018】
以下の説明では、一次フィルタ31を“プレフィルタ31”と呼び、二次フィルタ32を“クロスフィルタ32”と呼び、三次フィルタ33を“粉塵フィルタ33”と呼ぶ場合がある。また、復元部材40を“フィルタダンパ40”と呼ぶ場合がある。
【0019】
<タンク>
タンク10は、側面に吸込口11が設けられ、上面に略正方形の開口部12が設けられた有底容器である。別の見方をすると、タンク10は、略正方形の平面形状を有する有底容器である。タンク10の吸込口11には、不図示のホースが接続される。例えば、ホースの一端に設けられている接続プラグが吸込口11に挿入され、係止される。尚、ホースの他端には、クリーナヘッドやノズル等が接続される。
【0020】
タンク10の底には、4つのキャスタ13が設けられている。4つのキャスタ13は、タンク10の四隅に1つずつ配置され、回転自在に支持されている。尚、1つ又は2つ以上のキャスタ13がストッパを備える実施形態もある。
【0021】
タンク10の対向する2つの側面には、クランプ14がそれぞれ設けられている。それぞれのクランプ14の一端(基端)は、タンク10に回転可能に連結されており、それぞれのクランプ14の他端(先端)には、爪状の係止部が形成されている。
【0022】
<ヘッド>
ヘッド20は、ヘッドカバー21と、ヘッドカバー21の内側に収容され、固定された電動モータ22と、電動モータ22によって回転駆動されるファン23と、を有する。つまり、電動モータ22はファン23の駆動源である。
【0023】
ヘッドカバー21には、ヘッド20の内外と連通する吸気口21aおよび排気口21bが設けられている。吸気口21aはフィルタ30を介してタンク10と連通し、排気口21bは外部と連通する。
【0024】
ヘッド20は、タンク10の開口部12に、当該開口部12を塞ぐように搭載される。ヘッド20をタンク10の開口部12に搭載した上で、タンク10に設けられているクランプ14の係止部をヘッドカバー21に係止させると、ヘッド20がタンク10に固定される。つまり、ヘッド20はタンク10に着脱可能である。
【0025】
上記のようにしてヘッド20がタンク10に固定されると、ヘッド20とタンク10とによってプレフィルタ31および粉塵フィルタ33が挟持される。この結果、タンク10とヘッド20との間に、プレフィルタ31,クロスフィルタ32および粉塵フィルタ33がこの順で介在する。別の見方をすると、タンク10とヘッド20とが塵埃を捕集可能な複数のフィルタ30(プレフィルタ31,クロスフィルタ32,粉塵フィルタ33)によって仕切られる。
【0026】
<基本動作>
ヘッド20に内蔵されている電動モータ22によってファン23が回転駆動されると、タンク10の吸込口11に接続されたホースを介してタンク10内に空気が吸い込まれる。尚、ヘッドカバー21の上面に設けられている電源ボタンが操作されると、電動モータ22が作動してファン23が回転駆動される。また、ヘッドカバー21の上面に設けられている操作パネルによって、電動モータ22の回転数を段階的に変更することができる。
【0027】
ファン23の吸引力によってタンク10内に吸い込まれた空気は、プレフィルタ31,クロスフィルタ32および粉塵フィルタ33をこの順で通過した後、吸気口21aからヘッド20内に流入する。空気がプレフィルタ31,クロスフィルタ32および粉塵フィルタ33を通過する過程で、空気中の塵埃がこれらフィルタ31,32,33によって捕集される。具体的には、空気に含まれている粉塵は、まずプレフィルタ31によって捕集される。次に、プレフィルタ31を通過した塵埃がクロスフィルタ32によって捕集される。最後に、クロスフィルタ32を通過した小さな塵埃が粉塵フィルタ33によって捕集される。全てのフィルタ31,32,33を通過してヘッド20内に流入した空気は、排気口21bからヘッド20外に排気される。
【0028】
<プレフィルタ>
次に、図2図3に示されているプレフィルタ31の詳細について説明する。図4はプレフィルタ31の平面図、図5はプレフィルタ31の底面図、図6はプレフィルタ31の側面図である。尚、図6中に一点鎖線で示されている直線Xは、プレフィルタ31の軸線を示している。つまり、直線Xの延在方向は、プレフィルタ31の軸線方向と一致している。
【0029】
図7は、図6中のa-a線に沿うプレフィルタ31の全体断面図である。図8は、図6中のb-b線に沿うプレフィルタ31の全体断面図である。もっとも、図7図8に示されているプレフィルタ31の断面は、作図の便宜上の理由により単純化されている。
【0030】
図9Aは、図6中のa-a線に沿うプレフィルタ31の部分拡大断面図である。より特定的には、図9Aは、図7中のA部を示す拡大断面図である。図9Bは、図6中のb-b線に沿うプレフィルタ31の部分拡大断面図である。より特定的には、図9Bは、図8中のB部を示す拡大断面図である。また、図10は、図6中のm-m線に沿うプレフィルタ31の部分拡大断面図である。
【0031】
これらの図面から分かるように、プレフィルタ31は、軸線方向の一端側(下側)が閉塞され、軸線方向の他端側(上側)が開口された有底袋状である。より特定的には、プレフィルタ31の軸線方向一端側は、底面部51によって閉塞されている。一方、プレフィルタ31の軸線方向他端側には、開口部52が設けられている。さらに、底面部51と開口部52との間には、底面部51から開口部52に向かって延在する側面部53が設けられている。
【0032】
<プリーツ>
主に図6図8に示されるように、側面部53には、底面部51と開口部52との間に延在する複数のプリーツ60が設けられている。つまり、それぞれのプリーツ60は、プレフィルタ31の軸線方向に延在している。言い換えれば、それぞれのプリーツ60は、上下方向に延在している。また、複数のプリーツ60は、プレフィルタ31の周方向に沿って所定間隔で並んでいる。これらプリーツ60は、プレフィルタ31の外寸(体積)を増大させることなく、プレフィルタ31の表面積(ろ過面積)を拡大させている。
【0033】
図9A図9Bを参照する。それぞれのプリーツ60は、側面部53に設けられた複数の折返し部70によって形成されている。具体的には、それぞれのプリーツ60は、互いに重なり合う2つの折返し部71,72によって形成されている。
【0034】
折返し部71,72は、プレフィルタ31の周方向に折り返された(ひだ折りされた)側面部53の一部である。2つの折返し部71,72は、プレフィルタ31の径方向に重なり合っており、これによりプレフィルタ31が3層に折り重なっている。より特定的には、折返し部71が折返し部72の下(内側)に入り込んでいる。別の見方をすると、折返し部72が折返し部71の上(外側)に被さっている。そこで、以下の説明では、折返し部71を“内側折返し部71”と呼び、折返し部72を“外側折返し部72”と呼ぶ場合がある。
【0035】
尚、折返し部71,72は、共通部分を有している。つまり、内側折返し部71の一部は外側折返し部72の一部でもあり、外側折返し部72の一部は内側折返し部71の一部でもある。
【0036】
上記のとおり、図9Aは、図6中のa-a線に沿うプレフィルタ31の部分拡大断面図である。よって、図9Aには、プリーツ60を形成している折返し部71,72の底面部51の側の端部が示されている。つまり、図9Aには、折返し部71,72の下方端部の断面が示されている。
【0037】
一方、図9Bは、図6中のb-b線に沿うプレフィルタ31の部分拡大断面図である。よって、図9Bには、プリーツ60を形成している折返し部71,72の開口部52の側の端部が示されている。つまり、図9Bには、折返し部71,72の上方端部の断面が示されている。
【0038】
以下の説明では、図9Aに示されている折返し部71,72の下方端部を“第1重畳部81”と呼んで折返し部71,72の他の部分と区別する場合がある。また、図9Bに示されている折返し部71,72の上方端部を“第2重畳部82”と呼んで折返し部71,72の他の部分と区別する場合がある。
【0039】
それぞれの第1重畳部81は、図5に示されているプレフィルタ31の底面部51の周縁に縫い付けられている。一方、それぞれの第2重畳部82は、図6に示されている枠部材54に縫い付けられている。
【0040】
別の見方をすると、それぞれのプリーツ60の上端は、枠部材54に縫い付けられることで、2つの折り返し部71,72が重なり合った状態で拘束され、それぞれのプリーツ60の下端は、底面部51に縫い付けられることで、2つの折り返し部71,72が重なり合った状態で拘束されている。一方、上端及び下端を除くプリーツ60の他の部分は拘束されていない。よって、プリーツ60の全長の大部分の領域において、2つの折返し部71,72は、離間しているか、少なくとも離間可能である。例えば、図10に示されているプリーツ60の長手方向中央領域では、2つの折返し部71,72が最も大きく離間している。或いは、図10に示されているプリーツ60の長手方向中央領域では、2つの折返し部71,72が最も離間しやすい。
【0041】
<枠部材>
図4に示されるように、枠部材54は、合成樹脂によって略矩形に形成されており、プレフィルタ31の開口部52の形状を保持可能である。図3に示されるように、枠部材54には、タンク10の開口部12の縁に係止可能なフランジ部54aが一体成形されている。図2に示されるように、枠部材54のフランジ部54aをタンク10の開口部12の縁に係止させると、プレフィルタ31がタンク10内に吊られる。
【0042】
図3に示されるように、粉塵フィルタ33には、プレフィルタ31のフランジ部54aと同様のフランジ部33aが設けられている。図2に示されるように、粉塵フィルタ33のフランジ部33aは、タンク10の開口部12の縁に係止されているプレフィルタ31のフランジ部54aに重ねられ、フランジ部54aとともに開口部12の縁に係止される。さらに、開口部12の縁に係止されたフランジ部54aおよびフランジ部33aは、タンク10とヘッド20(ヘッドカバー21)との間に挟まれる。
【0043】
<重畳部の幅>
再び図9A図9Bを参照する。第1重畳部81の幅W1は、第2重畳部82の幅W2よりも狭い。尚、第1重畳部81の幅W1は、周方向に沿った第1重畳部81の長さに相当する。また、第2重畳部82の幅W2は、周方向に沿った第2重畳部82の長さに相当する。
【0044】
別の見方をすると、それぞれのプリーツ60の下側の幅は、上側の幅よりも狭い。より特定的には、それぞれのプリーツ60の幅は、上側(プレフィルタ31の開口部側)から下側(プレフィルタ31の底面部側)に向かって次第に狭くなっている(図6参照)。
【0045】
第1重畳部81の幅W1を第2重畳部82の幅W2よりも狭くすると、折返し部70の折り目が軸線方向に対して周方向に傾斜する。本実施形態では、図6に示されるように、折返し部71の折り目71aおよび折返し部72の折り目72aの両方が軸線方向に対して周方向に傾斜している。より特定的には、折り目71aと折り目72aとは、軸線方向に対して互いに逆向きに傾斜しており、底面部51に近づくに連れて互いに近接する。
【0046】
ここで、図2に示されるファン23が作動すると、プレフィルタ31およびフィルタダンパ40は、ファン23の吸引力によって変形(収縮)する。一方、ファン23が停止すると、プレフィルタ31およびフィルタダンパ40は、復元(膨張)する。本実施形態では、プレフィルタ31に設けられている各プリーツ60の下側の幅と上側の幅とが異なる。具体的には、各プリーツ60を形成している折返し部71,72の第1重畳部81の幅W1と第2重畳部82の幅W2とが異なる。このため、ファン23の吸引力によってプレフィルタ31が変形(収縮)したときに、プレフィルタ31の外面に多数の細かい皺が形成されやすい。プレフィルタ31の外面に形成された細かい皺は、プレフィルタ31の復元(膨張)に伴って伸びる。この結果、プレフィルタ31の外面に付着していた塵埃が落下(剥落)しやすくなる。つまり、塵埃がプレフィルタ31の外面に堆積したり、蓄積したりし難い。従って、プレフィルタ31の集塵性能が長期間に亘って維持されるともに、プレフィルタ31の清掃や交換の頻度が低減される。尚、プレフィルタ31の外面から落下(剥落)した塵埃は、タンク10内に貯留される。
【0047】
さらに、本実施形態では、第1重畳部81の幅W1が第2重畳部82の幅W2よりも狭いので、プレフィルタ31の外面から落下(剥落)した塵埃が第1重畳部81の内側に堆積したり、蓄積したりし難い。より特定的には、上方から落ちてくる塵埃が第1重畳部81に捕捉される確率が低い。従って、プレフィルタ31の清掃や交換の頻度がさらに低減される。
【0048】
上記のような集塵性能やメンテナンス性の向上の観点からは、図10に示されているプリーツ60の長手方向中央領域において、2つの折返し部71,72が十分離間し、プレフィルタ31の表面積(ろ過面積)を拡大できることが好ましい。具体的には、図9Aに示されている第1重畳部81の幅W1は、図6に示されている側面部53の全長Lの10%以下であることが好ましい。ここで、側面部53の全長Lは、軸線方向に沿った側面部53の長さに相当する。尚、本実施形態における側面部53の全長Lは210mmであり、第1重畳部81の幅W1は12mmである。
【0049】
<プレフィルタの変形例1>
図11は、プレフィルタ31と置換可能な他のプレフィルタ31aの側面図である。図12Aは、図11中のc-c線に沿うプレフィルタ31aの部分拡大断面図であり、図12Bは、図11中のd-d線に沿うプレフィルタ31aの部分拡大断面図である。また、図13は、図11中のn-n線に沿うプレフィルタ31aの部分拡大断面図である。
【0050】
つまり、図12Aには、プリーツ60を形成している折返し部71,72の下方端部の断面が示されている。一方、図12Bには、プリーツ60を形成している折返し部71,72の上方端部の断面が示されている。また、図13には、プリーツ60を形成している折返し部71,72の長手方向中央領域の断面が示されてる。
【0051】
図12A図12Bに示されるように、プレフィルタ31aの各プリーツ60を形成している折返し部70は、その上下で折り返しの向きが逆である。具体的には、第1重畳部81(図12A)を形成している折返し部71,72の下方端部の折返しの向きと、第2重畳部82(図12B)を形成している折返し部71,72の上方端部の折返しの向きとが逆である。
【0052】
この結果、図11に示されるように、折返し部72の折り目72aが軸線方向に対して周方向に傾斜している。一方、折返し部71の折り目71aは、軸線方向に対して平行である。つまり、プリーツ60を形成している複数の折返し部70のうち、少なくとも1つの折返し部70の折り目が軸線方向に対して周方向に傾斜している。
【0053】
また、図13に示されている折返し部71,72(プリーツ60)の長手方向中央領域では、軸線方向に対して傾斜している折返し部72の折り目72aが立ち上がり、折返し部71,72の重なり合いが解かれている。
【0054】
尚、図12Aに示されている第1重畳部81の幅W3と、図12Bに示されている第2重畳部82の幅W4とは同一である。
【0055】
上記のように、プレフィルタ31aには、上下で折り返しの向きが反転するプリーツ60が複数設けられている。このため、プレフィルタ31と同じく、変形(収縮)したときに外面に多数の細かい皺が形成されやすい。
【0056】
<プレフィルタの変形例2>
図14は、プレフィルタ31と置換可能な他のプレフィルタ31bの側面図である。図15Aは、図14中のe-e線に沿うプレフィルタ31bの部分拡大断面図であり、図15Bは、図14中のf-f線に沿うプレフィルタ31bの部分拡大断面図である。つまり、図15Aには、プリーツ60を形成している折返し部71,72の下方端部の断面が示されている。一方、図15Bには、プリーツ60を形成している折返し部71,72の上方端部の断面が示されている。
【0057】
図15A図15Bに示されている折返し部71,72の第1重畳部81の幅W5と、第2重畳部82の幅W6とは同一である。また、第1重畳部81および第2重畳部82の折返しの向きは同一である。つまり、プレフィルタ31bの各プリーツ60を形成している折返し部71,72は、折り返しの幅も向きも同じである。
【0058】
しかし、図14に示されるように、プレフィルタ31bの各プリーツ60を形成している折返し部71,72の第1重畳部81と第2重畳部82とは、周方向の位置が異なっている。より特定的には、第1重畳部81の位置と、第2重畳部82の位置とが周方向にずれている。
【0059】
この結果、折返し部71の折り目71aおよび折返し部72の折り目72aの両方が軸線方向に対して周方向に傾斜している。もっとも、折り目71a,72aは、互いに平行である。
【0060】
上記のように、プレフィルタ31bには、上端位置と下端位置とが周方向にずれているプリーツ60が複数設けられている。このため、プレフィルタ31と同じく、変形(収縮)したときに外面に多数の細かい皺が形成されやすい。また、上方から落ちてくる塵埃がプリーツ60の下端(第1重畳部81)に捕捉される確率が低い。
【0061】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、第1重畳部81の幅W1や第2重畳部82の幅W2は任意に変更することができる。また、図9Aに示されている第1重畳部81の幅W1と、図9Bに示されている第2重畳部82の幅W2との比率は任意に変更することができる。
【0062】
折り目71aや折り目72aの軸線方向に対する傾斜角度は、任意に変更することができる。例えば、図14に示されている第1重畳部81と第2重畳部82との位置を更にずらすと、折り目71a,72aの軸線方向に対する傾斜角度が増加する。
【符号の説明】
【0063】
1…作業機(集塵機)、10…タンク、11…吸込口、12…開口部、13…キャスタ、14…クランプ、20…ヘッド、21…ヘッドカバー、21a…吸気口、21b…排気口、22…電動モータ、23…ファン、30…フィルタ、31,31a,31b…一次フィルタ(プレフィルタ)、32…二次フィルタ(クロスフィルタ)、33…三次フィルタ(粉塵フィルタ)33a…フランジ部、40…復元部材(フィルタダンパ)、51…底面部、52…開口部、53…側面部、54…枠部材、54a…フランジ部、60…プリーツ、70,71,72…折返し部、71a,72a…折り目、81…第1重畳部、82…第2重畳部、L…全長、W1,W2,W3,W4,W5,W6…幅、X…直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B