(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170049
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】試料採取用濾過装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/04 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
G01N1/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075921
(22)【出願日】2021-04-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)環境DNA学会第3回大会 第36回個体群生態学会 合同大会 ビッグデータ・オープンデータ時代の生態学(オンライン開催) プログラム集、要旨集、ポスター(PP042)にて発表。 (2)ASTMH 69th Annual Meeting(オンライン開催) LATE-BREAKER ABSTRACTS PRESENTATION SCHEDULE、ポスター(LB-5094)にて発表。 (3)第73回日本衛生動物学会(オンライン開催) プログラム、Zoomによるスライド(A08)を用いての口頭発表。
(71)【出願人】
【識別番号】521185767
【氏名又は名称】橋爪 裕宜
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 裕宜
(72)【発明者】
【氏名】星 友矩
(72)【発明者】
【氏名】多賀 優
(72)【発明者】
【氏名】日達 真美
(72)【発明者】
【氏名】金子 聰
(72)【発明者】
【氏名】門司 和彦
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA06
2G052AB20
2G052AC01
2G052AD12
2G052AD26
2G052AD52
2G052BA22
2G052EA03
2G052EA14
2G052EA15
2G052GA29
2G052JA02
2G052JA07
(57)【要約】
【課題】 低コストで流通が行いやすく、野外調査での取り回しが容易であり、汚染リスクが低く、短時間で濾過処理が可能な試料採取用濾過装置を提供する。
【解決手段】 試料を保持するためのフィルター2と、該フィルターを保持するためのフィルターベース30及び排水口32を有するベース部材3と、試料水容器とベース部材とを接続可能なジョイント部材4とを含む濾過装置であって、ジョイント部材は、カバー部41と、フィルター固定部412、容器接続部43、バルブ部44、給気孔45及び通水孔46が設けられた気体供給部42を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持するためのフィルターと、該フィルターを保持するためのフィルターベース及び排水口を有するベース部材と、前記ベース部材に接続可能なジョイント部材とを含む濾過装置であって、
前記ジョイント部材は、ベース接続部とフィルター固定部を有するカバー部と、
試料水容器と接合可能な容器接続部と、逆止弁とバルブからなるバルブ部と、該バルブ部に外部から気体を供給するための給気孔及び、試料水を前記フィルターに供給するための通水孔とが設けられた気体供給部とを備えることを特徴とする試料採取用濾過装置。
【請求項2】
前記ベース部材と、前記ジョイント部材の少なくとも一部が3Dプリンターを用いて印刷により作製されていることを特徴とする請求項1に記載の試料採取用濾過装置。
【請求項3】
前記バルブが自転車用空気バルブであり、逆止弁が虫ゴムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の試料採取用濾過装置。
【請求項4】
前記ベース部材と前記ジョイント部材の間には、パッキンが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の試料採取用濾過装置。
【請求項5】
前記カバー部と、前記気体供給部が別体に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の試料採取用濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料採取用濾過装置に関するものであり、詳しくは、環境DNAに関する試料を採取するために用いる試料採取用濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蚊媒介感染症は、ウィルスや原虫などの病原体を持った蚊が人を刺すことにより生じる感染症であり、主として熱帯・亜熱帯地域を中心に流行している。このような侵略的外来蚊の広がりは世界で報告されており、中でもデング熱を媒介するヤブカ属はヨーロッパや北アメリカで広がっている。
【0003】
このような問題の発生の兆候を察知するとともに、昆虫媒介性の熱帯病の蔓延等を未然に防止する観点から、環境DNAのモニタリング調査は極めて有効な手段であり、近年では、環境DNAを効果的にモニタリングするための新たな技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
一方、このような環境DNAを利用した生態学研究では、DNAを扱うがゆえに繊細な作業が求められる。特に、現地の環境中の試験水を採取した後、DNAの分解をできるだけ防ぎ、また汚染されないように、この試料水を濾過装置に通して環境DNA試料を抽出する作業は繊細かつ重要な作業である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、環境DNAの試料水を採取する環境は、通常、山中など車の移動手段が利用できない不便な場所が多く、特に熱帯地域・農村地域では、実験設備が整っていないことも多い。さらに、通常用いられている環境DNA試料を抽出するための濾過装置は大型であり、また、濾過処理に時間がかかるため、現地で汚染リスクが低い環境で効率的に環境DNA試料を抽出、採取することは困難であった。
【0007】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、DNAの分解を防ぐため調査現場で濾過ができ、低コストで流通しやすく、野外調査での取り回しが容易であり、汚染リスクが低く、短時間で確実に濾過処理が可能な試料採取用濾過装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の試料採取用濾過装置は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであって、以下のことを特徴としている。
第1に、本発明の試料採取用濾過装置は、試料を保持するためのフィルターと、該フィルターを保持するためのフィルターベース及び排水口を有するベース部材と、前記ベース部材に接続可能なジョイント部材とを含む濾過装置であって、
前記ジョイント部材は、ベース接続部とフィルター固定部を有するカバー部と、
試料水容器と接合可能な容器接続部と、逆止弁とバルブからなるバルブ部と、該バルブ部に外部から気体を供給するための給気孔及び、試料水を前記フィルターに供給するための通水孔とが設けられた気体供給部とを備えることを特徴とする。
第2に、上記第1の発明の試料採取用濾過装置において、前記ベース部材と、前記ジョイント部材の少なくとも一部が3Dプリンターを用いて印刷により作製されていることが好ましい。
第3に、上記第1又は第2の発明の試料採取用濾過装置において、前記バルブが自転車用空気バルブであり、逆止弁が虫ゴムであることが好ましい。
第4に、上記第1から第3の発明の試料採取用濾過装置において、前記ベース部材と前記ジョイント部材の間には、パッキンが設けられていることが好ましい。
第5に、上記第1から第4の発明の試料採取用濾過装置において、前記フィルター固定部と、前記気体供給部が別体に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成を採用したことにより、野外調査での取り回しが容易であり、汚染リスクが低く、短時間で確実な濾過処理が可能な試料採取用濾過装置を実現できる。また、本発明の試料採取用濾過装置は、特に環境DNA試料の採取、抽出に好ましく適用することができる。さらに、試料採取用濾過装置を構成する部材を3Dプリンターで印刷して作製することにより、より低コスト化、軽量化、小型化も実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る試料採取用濾過装置の概略断面図である。
【
図2】本発明に係る試料採取用濾過装置に試料水容器を接続した状態の外観実物写真である。
【
図3】バルブ部及びフィルターを除く試料採取用濾過装置の分解斜視図である。
【
図4】バルブ部及びフィルターを除く試料採取用濾過装置の断面斜視図である。
【
図5】(A)は、ベース部材にフィルター及びパッキンを載置した状態を示す実物写真であり、(B)は気体供給部の実物写真である。
【
図7】空気孔にポンプの空気針を嵌合させた状態を示す写真である。
【
図8】供給した気体の流れを示す概略断面図である。
【
図9】環境DNAを採取するための構成を示す写真である。
【
図10】(A)~(D)は、環境DNAの採取手順を説明するための写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の試料採取用濾過装置の実施形態について図面に基づいて以下に詳述する。
図1は、本発明の実施形態に係る、環境DNAの試料を採取するための試料採取用濾過装置の概略断面図であり、
図2は外観実物写真、
図3は、バルブ部及びフィルターを除く試料採取用濾過装置の分解斜視図、
図4は、バルブ部及びフィルターを除く試料採取用濾過装置の断面斜視図である。
【0012】
本実施形態の試料採取用濾過装置(以下、濾過装置ともいう)は、試料水容器11に接続して用いられる濾過装置1であって、フィルター2、ベース部材3及びジョイント部材4とを備えている。
【0013】
<試料水容器>
試料水容器11は、採取した試料水を収容するための容器であり、密閉性を有するとともに、内圧がかかっても破損や変形しないものであれば特に限定されるものではなく、例えば金属製容器、ガラス製容器、プラスチック製容器等を例示することができる。これらの中でも、採取した試料水を視認できる点、安価に入手することができる点等から耐圧ペットボトルを好適に用いることができる。
【0014】
また、試料水容器11の容量は、採取する試料水の量に応じて適宜設定することができ、特に限定されるものではないが、通常、500ミリリットル~2リットル程度のものを好適に用いることができる。
【0015】
<濾過装置>
本実施形態の濾過装置1は、
図1に示すように、フィルター2と、ベース部材3及びジョイント部材4から構成されている。
(フィルター)
フィルター2は、試料水中の環境DNAの試料を保持するためのものであり、その種類は、ガラス濾紙フィルター、紙フィルター、不織布フィルター、ポリカーボネートフィルター、セルロースフィルター等の種類のフィルターを例示することができる。これらの中でも、試料水中のDNA保持等の観点から、ガラス濾紙フィルターを好適に用いることができる。フィルター2の通水率は、採取する環境DNAの種類等に応じて適宜設定できるが、通常保持粒子能0.7μmのガラス濾紙フィルターを好適に用いることができる。
【0016】
(ベース部材)
ベース部材3は、フィルター2を保持するためのフィルターベース30と、該フィルターベース30を保持するフィルターベース保持部31と、排水口32を有している。フィルターベース30とフィルターベース保持部31は、ベース部材3にフィルター2を安定して配設することができ、且つ排水口32から効率的に排水可能であればその形状は特に限定されることはなく、例えば、
図3、
図4に示すようなメッシュ状あるいはスリットが設けられたフィルターベース30や、十字型のフィルターベース保持部31を例示することができる。また、ベース部材3の外縁部には、ジョイント部材4との接続を可能とするための雄ネジ33が形成されている。また、ベース部3の最下端部には、ベース部3の内側の排水口32側から外側に貫通する切り欠き状の排水路34が設けられている。排水口34を設けることにより、ベース部材3側を下向きに立設して採取操作を行った場合でも、排水の逆流を防止して効率的に濾過装置1外に排出することが可能となる。
【0017】
(ジョイント部材)
ジョイント部材4は、ベース部材に接続するとともにフィルター2を押さえる部材であり、カバー部41と気体供給部42から構成されている。
【0018】
カバー部41には、ベース部材3との接続を可能とするためのベース接続部411とフィルター2を押さえるフィルター固定部412が設けられている。ベース接続部411は、ベース部材3の外縁部に形成された雄ネジ33と螺合する雌ネジが形成されている。そして、フィルター固定部412は、ベース部材3とジョイント部材4を接続した状態で、フィルター2が移動しないように挟み込み、固定できるようになっている。
【0019】
なお、本発明においては、フィルター2の固定をより確実にするとともに、ベース部材3とジョイント部材4との接合部からの漏水を防止するために、ベース部材3のフィルターベース30と、ジョイント部材4のフィルター固定部412の間にパッキン413を設けるのが好ましい。パッキン413としては
図1、
図5(A)に示すようなOリングを好適に用いることができる。
【0020】
気体供給部42には、試料水容器11との接合を可能とするための容器接続部43と、バルブ部44と、該バルブ部44に外部から気体を供給するための給気孔45及び、試料水をフィルター2に供給するための通水孔46が設けられている。
【0021】
容器接続部43は、試料水容器11として例えばペットボトルを用いる場合、ペットボトルのスクリューキャップ部に設けられた雄ネジと螺合する雌ネジが形成されている。これにより、市販のペットボトルを試料水容器11として使用することが可能となる。
【0022】
バルブ部44は、試料水容器11に気体を導入するために設けられるものであり、ノズル状のバルブ441と逆止弁442から構成されている。バルブ441は、強度等の観点から市販のバルブ441を接続するのが好ましく、具体的には、
図5(B)に示すように、自転車のタイヤチューブに用いられる自転車用空気バルブを用いるのが好ましい。また、バルブ441として自転車用空気を用いる場合の逆止弁442としては虫ゴムを用いるのが好ましい。なお、バルブ441として自転車用空気バルブを用いる場合には、気体供給部42の本体に、自転車用空気バルブにバルブナットと螺合させるために設けられている雄ネジと螺合する雌ネジ部を設けることにより、容易かつ確実にバルブ441を取り付けることが可能となる。
【0023】
また、気体供給部42には、外部からバルブ部44を通して試料水容器11に気体を供給するための給気孔45が設けられている。給気孔45は、気体供給部42本体の側部からバルブ441の下端部に通じるように貫通して設けられており、給気孔45の外部開孔部は、例えば
図7に示すような球技用ボールの空気入れに用いる空気針が嵌合する形状や、自転車用空気入れのアダプターが接続可能な形状に形成されている。なお、給気孔45からの気体の供給は、自転車用空気入れや小型ボンベ等により行うことができるが、空気の供給量を調整できる等の観点から自転車用空気入れを好適に用いることができる。
【0024】
さらに、気体供給部42には、試料水容器11中の試料水をフィルター2に供給するための通水孔46が設けられている。通水孔46の数や大きさは気体供給部42の設計に応じて適宜設定することができる。
【0025】
本実施形態では、濾過装置1の低コスト化を図るため、ベース部材3及びジョイント部材4の少なくとも一部を3Dプリンターで印刷し、組み立てが可能な構造とすることができる。3Dプリンターとしては、作製する濾過装置1の重さや強度、耐久性等を考慮して通常入手可能な方式のものであれば特に限定させず、熱溶解積層方式、光造形方式、インクジェット方式、粉末燃結方式、粉末固着方式等を適宜選択して使用することができる。
【0026】
3Dプリンターにより作製する濾過装置1の各部材は、材質としての最適な素材(ABS樹脂やASA樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、PET樹脂、エポキシ樹脂等)を選択的に用て製造することができる。本発明の濾過装置1の各構造部材は、3Dプリンターにより作製できるため、3Dプリンターの設備があれば、設計データを持ち運び、また、インターネット等を介して受信することにより、遠隔地や国を跨いで何処ででも本発明の濾過装置1を印刷して製造し、組み立てることが可能となる。
【0027】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明によれば、上記実施形態に限定されることなく、種々の変形、変更が可能である。
【0028】
例えば、上記実施形態では、3Dプリンターによる作製を前提として、ジョイント部材4におけるカバー部41と気体供給部42を別体に作製して接合する構成としているが、カバー部41と気体供給部42を一体に成形してジョイント部材4としてもよい。また、フィルターベース30を別体としているが、ベース部材3と一体に成形することもできる。なお、この場合にはフィルターベース保持部31を省略することができる。
【0029】
また、上記実施形態では、バルブ441として自転車のタイヤチューブに用いられる自転車用空気バルブを用いているが、強度が確保できる構成であれば3Dプリンターにより一体に成形することもできる。
【0030】
上記構成の本発明の濾過装置1によれば、野外調査での取り回しが容易であり、汚染リスクが低く、短時間で濾過処理が可能であり、構成する部材を3Dプリンターで印刷して作製することにより、より低コスト化が図れ、軽量化、小型化も実現することが可能となる。
【0031】
次に、上記構成の実施形態の濾過装置1の濾過の機序について説明する。
まず、
図6に示すように、ベース部材3、フィルター2及びジョイント部材4を一体に接合した濾過装置1に、環境DNA採取対象の試料水を入れた試料水容器11を接続し、
図8に示すように、試料水容器11の開口を下向きにして、下に接続した濾過装置1に試料水が来るように載置する。なお、この状態では、試料水容器11が密閉状態であり、また、ジョイント部材4のバルブ部44の逆止弁442が機能しているため、試料水が濾過装置1の給気孔45から漏れ出すことはない。
【0032】
次に、
図8の破線矢印で示すように、ジョイント部材4側部の給気孔45から気体を供給すると、気体はバルブ部44を介して試料水容器11内に導入され、試料水容器11の内圧を上昇させる。そして、内圧が上昇した試料水容器11内の試料水は導入された気体に押されて、ジョイント部材4の通水孔46を通してフィルター2を通過する。これにより、フィルター2の表面に試料水中の環境DNAの試料が捕獲され採取することができる。なお、フィルター2を通過した濾過後の試料水は排水口32を通して廃棄される。また、濾過後の試料水は、ベース部3の最下端部に設けられ排水路34からも排出されるため、例えば、本発明の濾過装置1を立設させて採取操作を行った場合であっても、試験水は濾過装置の下に溜まることがなく効率的に排水処理がなされる。このように、外部からの気体の供給により、試料水を強制的にフィルター2を通過させ、濾過することにより、容易かつ確実に環境DNAの試料を採取することが可能となる。
【0033】
次に、本発明の濾過装置1を用いた環境DNA試料採取の具体的な方法について説明する。
【0034】
まず、清浄な環境で、ベース部材3のフィルターベース30にフィルター2を載置し、フィルター2の縁部上にパッキン413のOリングを載置する。この状態でジョイント部材4のカバー部41をベース部材3に接続し、ベース部材3、フィルター2及びジョイント部材4を一体に接合して濾過装置1を組み立てる。なお、フィルター2はベース部材3のフィルターベース30とOリング(パッキン413)及びジョイント部材4のフィルター固定部412の押圧により撓まないようにしっかりと固定される。このように組み上げた濾過装置1を、コンタミネーションを防止する目的で、
図10(A)に示すように清浄されたビニール袋などに入れて試料水を採取する現場まで運ぶ。
【0035】
次に、現場において、環境DNAを検査する試料水を試料水容器11のペットボトルに入れる。なお、この際、落葉等の比較的大きな異物がある場合には、
図10(B)に示すように、約110μm程度のメッシュに通してプレ濾過を行うことが好ましい。次に、先に準備した濾過装置1を試料水を入れた試料水容器11のペットボトルと接合する(
図10(C))。この接合は、ペットボトルのスクリューキャップ部に設けられた雄ネジと、ジョイント部材4の容器接続部43に設けられた雌ネジとを螺合することにより容易に接合することができる。
【0036】
ペットボトル11と濾過装置1との接合が完了したら、ペットボトル11を上側に、濾過装置1を下側にして載置する(
図9、
図10(D))。そして、自転車用空気入れ5に空気針を接続して、該空気針を濾過装置1の空気孔に差し込み、空気入れ5を操作して空気をペットボトル11内に供給する。これにより、ペットボトル11内の試料水は供給した気体に押し出され、フィルター2を通過し、フィルター2表面に環境DNAの試料を残して排出口から排出される。
【0037】
そして、ペットボトル11内の試料水が全て排出された段階で、ペットボトル11を濾過装置1から分離し、コンタミネーションを考慮して、表面に環境DNAを保持したフィルター2を内設した状態の濾過装置1をビニール袋やケースに戻して持ち帰る。以上の手順により、簡便に目的の環境DNAの試料を採取することができる。
【0038】
上記構成を有する本発明の試料採取用濾過装置は、軽量、小型であるため野外調査での取り回しが容易であり、汚染リスクが低く、短時間で環境DNAの試料を採取が可能となる。また、本発明の試料採取用濾過装置は、上記環境DNA試料の採取等、生体分野以外の環境分野、例えば、環境水中の浮遊物質量や海洋マイクロプラスチックの汚染状況の調査、研究に対して使用することができる。また、災害時における生活用水の確保等にも使用が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 試料採取用濾過装置
11 試料水容器(ペットボトル)
2 フィルター
3 ベース部材
30 フィルターベース
31 フィルターベース保持部
32 排水口
33 雄ネジ
34 排水路
4 ジョイント部材
41 カバー部
411 ベース接続部
412 フィルター固定部
413 パッキン(Oリング)
42 気体供給部
43 容器接続部
44 バルブ部
441 バルブ
442 逆止弁(虫ゴム)
45 給気孔
46 通水孔
5 空気入れ