(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170051
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】回転機械システム、回転機械システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20221102BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20221102BHJP
F02C 7/042 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G01H17/00 A
F01D25/00 C
F02C7/042
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075925
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】梅原 隆一
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB27
2G064BA02
2G064BA08
2G064BA21
(57)【要約】
【課題】入口案内翼の振動を検出するセンサーの損傷を抑えメンテナンスを容易にする。
【解決手段】回転機械システムは、ケーシングの内部で動翼列に対して軸線が延びる軸線方向の第一側に配置された入口案内翼部、を備えた回転機械と、入口案内翼部に生じる振動を検出するセンサーと、を備える。入口案内翼部は、径方向に延びる軸部回りに回転可能とされた複数の可動翼と、ケーシングの径方向の外側に設けられて周方向に変位するよう駆動される駆動リングと、一方のリンク端が複数の可動翼の軸部にそれぞれ連結され、他方のリンク端が駆動リングに連結されて、駆動リングが周方向に変位した場合に複数の可動翼を回転させる複数のリンク機構と、を備える。センサーは、ケーシングの径方向の外側に設けられ、複数のリンク機構の少なくとも一つに生じる振動を検出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転するローター軸に固定された動翼列を備えるローター、前記ローターを覆うケーシング、及び、前記ケーシングの内部で前記動翼列に対して前記軸線が延びる軸線方向の第一側に配置された入口案内翼部、を備えた回転機械と、
前記入口案内翼部に生じる振動を検出するセンサーと、を備え、
前記入口案内翼部は、
前記軸線回りの周方向に間隔をあけて配置され、前記軸線を中心とした径方向に延びる軸部回りに回転可能とされた複数の可動翼と、
前記ケーシングの径方向の外側に設けられて前記周方向に連続し、前記周方向に変位するよう駆動される駆動リングと、
前記ケーシングの径方向の外側に設けられ、一方のリンク端が前記複数の可動翼の前記軸部にそれぞれ連結され、他方のリンク端が前記駆動リングに連結されて、前記駆動リングが前記周方向に変位した場合に前記複数の可動翼のそれぞれを前記軸部回りに回転させる複数のリンク機構と、を備え、
前記センサーは、前記ケーシングの径方向の外側に設けられ、前記複数のリンク機構の少なくとも一つに生じる振動を検出する
回転機械システム。
【請求項2】
前記センサーで検出された前記リンク機構における振動の検出結果に基づき、前記回転機械の運転を制御する運転制御部、をさらに備える
請求項1に記載の回転機械システム。
【請求項3】
前記センサーは、前記リンク機構の一軸方向における振動を検出する一軸センサーである
請求項1又は2に記載の回転機械システム。
【請求項4】
前記センサーは、前記リンク機構の互いに異なる複数軸方向における振動を検出する多軸センサーである
請求項1又は2に記載の回転機械システム。
【請求項5】
前記複数のリンク機構は、それぞれ、
前記一方のリンク端と前記他方のリンク端との間に配置された複数のリンク片と、
前記複数のリンク片同士を回動自在に連結するピンと、を備える
請求項1から4の何れか一項に記載の回転機械システム。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の回転機械システムの運転方法であって、
前記ローターを前記軸線回りに回転させて前記回転機械を作動させるステップと、
前記センサーで、前記複数のリンク機構の少なくとも一つに生じる振動を検出するステップと、を含む
回転機械システムの運転方法。
【請求項7】
前記センサーで検出された前記リンク機構における振動の検出結果に基づき、前記回転機械の運転を制御するステップ、をさらに含む
請求項6に記載の回転機械システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械システム、回転機械システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転機械の動翼本体に設けられたシュラウドの外周面の変化を検出するセンサーを備え、動翼の振動を監視する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/221577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成は、動翼の振動を監視するものである。
回転機械において、外部から導入する作動流体の流量を調整するため、入口案内翼(Inlet Guide Vane:IGV)を備えたものがある。入口案内翼は、回転機械のケーシング内における作動流体の流れ方向の最も上流側に配置された動翼列に対し、さらに上流側に配置されている。入口案内翼は、ケーシングの内周面からケーシングの径方向の内側に向かって延びている。入口案内翼は、径方向に延びる軸部回りに回転可能に構成され、軸部回りの角度を変更することで、回転機械の負荷条件等に応じてケーシング内に導入する作動流体の流量を調整する。
このような入口案内翼においては、作動流体の流速が大きい高負荷条件では、入口案内翼にフラッタのような不安定振動が生じることがある。したがって、入口案内翼においても、振動の発生を監視することが望まれている。
【0005】
また、特許文献1に記載の構成では、センサーは、回転機械のケーシングに固定され、ケーシング内のシュラウドの変位を検出する。つまり、センサーは、ケーシング内に設けられている。
回転機械のケーシング内は、回転機械の作動時に高温となる場合がある。そのため、ケーシング内にセンサーを設けると、高温環境下でセンサーの損傷してしまうことがある。また、損傷したセンサーを交換する等、センサーのメンテナンスを行う場合、ケーシング内のセンサーにアクセスするには手間が掛かる。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、入口案内翼の振動を検出するセンサーの損傷を抑えつつ、メンテナンスを容易に行うことができる回転機械システム、回転機械システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る回転機械システムは、回転機械と、センサーと、を備える。前記回転機械は、ローターと、ケーシングと、入口案内翼部と、を備える。前記ローターは、軸線回りに回転するローター軸に固定された動翼列を備える。前記ケーシングは、前記ローターを覆う。前記入口案内翼部は、前記ケーシングの内部で前記動翼列に対して前記軸線が延びる軸線方向の第一側に配置されている。前記センサーは、前記入口案内翼部に生じる振動を検出する。
前記入口案内翼部は、複数の可動翼と、駆動リングと、複数のリンク機構と、を備える。前記複数の可動翼は、前記軸線回りの周方向に間隔をあけて配置されている。前記複数の可動翼は、前記径方向に延びる軸部回りに回転可能とされている。前記駆動リングは、前記ケーシングの径方向の外側に設けられて前記周方向に連続している。前記駆動リングは、前記周方向に変位するよう駆動される。前記複数のリンク機構は、前記ケーシングの径方向の外側に設けられている。前記複数のリンク機構の一方のリンク端が、前記複数の可動翼の前記軸部にそれぞれ連結されている。前記複数のリンク機構の他方のリンク端が、前記駆動リングに連結されている。前記複数のリンク機構は、前記駆動リングが前記周方向に変位した場合に前記複数の可動翼のそれぞれを前記軸部回りに回転させる。
前記センサーは、前記ケーシングの径方向の外側に設けられている。前記センサーは、前記複数のリンク機構の少なくとも一つに生じる振動を検出する。
【0008】
本開示に係る回転機械システムの運転方法は、上記したような回転機械システムの運転方法である。前記回転機械システムの運転方法は、前記ローターを前記軸線回りに回転させて前記回転機械を作動させるステップを含む。前記回転機械システムの運転方法は、前記センサーで、前記複数のリンク機構の少なくとも一つに生じる振動を検出するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の回転機械システム、回転機械システムの運転方法によれば、入口案内翼の振動を検出するセンサーの損傷を抑えつつ、メンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る回転機械としての圧縮機を備えたガスタービンシステムの概略構成を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る回転機械としての圧縮機の概略構成を示す断面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る圧縮機に備えた入口案内翼部を軸線方向から見た図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る入口案内翼部の可動翼、リンク機構、及び駆動リングの一部を示す斜視図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るガスタービンシステムの制御装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
【
図7】本開示の実施形態に係るガスタービンシステムの運転方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ガスタービンシステムの構成)
以下、本開示の実施形態に係る回転機械について、
図1~
図7を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態における回転機械システムは、例えば圧縮機10を備えたガスタービンシステム1である。
ガスタービンシステム1は、上記回転機械としての圧縮機10と、燃焼器2と、タービン3と、ローター11と、センサー50(
図3、
図4参照)と、制御装置60と、を備えている。圧縮機10は、外部から取り込んだ空気を圧縮して高圧空気を生成する。燃焼器2は、圧縮機10で圧縮された高圧空気と燃料の混合気を燃焼させることで、高温高圧の燃焼ガスを生成する。タービン3は、燃焼器2で生成された燃焼ガスによって駆動される。タービン3の回転駆動力は、ローター11を介して圧縮機10に伝達される。これにより、圧縮機10が駆動される。
【0013】
(圧縮機の構成)
図2に示すように、圧縮機10は、軸線Arを中心として回転するローター11と、ケーシング15と、複数の静翼列17と、入口案内翼部20Aと、を少なくとも備えている。なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸線方向Da、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。また、軸線方向Daの一方側を第一側Da1、その反対側を第二側Da2とする。また、径方向Drで軸線Arに近づく側を径方向Drの内側Dri、その反対側を径方向Drの外側Droとする。
【0014】
ローター11は、ローター軸12と、複数の動翼列13と、を備えている。ローター軸12は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びている。複数の動翼列13は、ローター軸12に取り付けられている。複数の動翼列13は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列13は、周方向Dcに並んでいる複数の動翼を備えている。
【0015】
ケーシング15は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びる筒状を成している。ケーシング15は、ローター11を径方向Drの外側Droから覆っている。
【0016】
複数の静翼列17は、ケーシング15の径方向Drの内側Driに設けられている。複数の静翼列17は、軸線方向Daに間隔をあけて並んでいる。各静翼列17は、複数の動翼列13のそれぞれに対し、軸線方向Daの第二側Da2に配置されている。動翼列13と静翼列17とは、軸線方向Daに交互に配列されている。各静翼列17は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼を備えている。
【0017】
(入口案内翼部の構成)
入口案内翼部20Aは、ケーシング15の内部に配置されている。入口案内翼部20Aは、ケーシング15に形成された吸込口からケーシング15内に取り込まれた空気の流量を調整する。入口案内翼部20Aは、複数の動翼列13に対して、軸線方向Daの第一側Da1に配置されている。入口案内翼部20Aは、軸線方向Daにおいて最も第一側Da1に位置する1段目の動翼列13Aに対し、軸線方向Daの第一側Da1に配置されている。
【0018】
図3に示すように、入口案内翼部20Aは、フレーム21と、複数の可動翼22と、駆動リング25と、複数のリンク機構30と、を備えている。
フレーム21は、円環状をなし、ケーシング15の軸線方向Daの一部を形成する。
図3、
図4に示すように、フレーム21は、複数の翼保持孔21hを有している。複数の翼保持孔21hは、周方向Dcに間隔をあけて形成されている。各翼保持孔21hは、フレーム21を径方向Drに貫通している。
【0019】
フレーム21の径方向Drの内側Driには、センターハブ26が設けられている。センターハブ26は、軸線方向Daに延びる円筒状をなしている。センターハブ26の外周面には、複数の翼保持凹部26aが形成されている。複数の翼保持凹部26aは、周方向Dcに間隔をあけて形成されている。各翼保持凹部26aは、センターハブ26の外周面から径方向Drの内側Driに窪んでいる。
【0020】
複数の可動翼22は、フレーム21の径方向Drの内側Driに設けられている。複数の可動翼22は、周方向Dcに間隔をあけて複数設けられている。各可動翼22は、翼本体23と、軸部24と、を一体に備えている。
【0021】
翼本体23は、いわゆる入口案内翼(IGV:Inlet Guide Vane)である。翼本体23は、その翼長方向と径方向Drとを一致させた姿勢で配置されている。翼本体23の径方向Drの内側Driに位置する翼長方向の一端部23aは、センターハブ26に形成された翼保持凹部26aに挿入されて、軸部24の中心軸Cs回りに回動自在に支持されている。
【0022】
軸部24は、翼本体23において、径方向Drの外側Droに位置する翼長方向の他端部23bに一体に設けられている。軸部24は、翼本体23の他端部23bから中心軸Cs方向に沿って径方向Drの外側Droに延びる略円柱状をなしている。軸部24は、フレーム21に形成された翼保持孔21hに挿入され、中心軸Cs回りに回転自在に支持されている。軸部24の径方向Drの外側Droの先端部24sは、フレーム21の径方向Drの外側Droに向かって突出している。
【0023】
駆動リング25は、ケーシング15の径方向Drの外側Droに設けられている。駆動リング25は、軸線Arを中心として周方向Dcに連続する円環状で、ケーシング15に、周方向Dcに変位可能に支持されている。駆動リング25は、周方向Dcに複数に分割されていてもよい。駆動リング25は、アクチュエータ(図示なし)により、周方向Dcに沿って変位するように駆動される。
【0024】
リンク機構30は、ケーシング15の径方向Drの外側Droに設けられている。リンク機構30は、複数の可動翼22のそれぞれに対応づけられている。これら複数のリンク機構30は、複数の可動翼22のそれぞれを軸部24の中心軸Cs回りに回転させる。各リンク機構30は、複数のリンク片31と、複数のピン32と、を備えている。本実施形態において、各リンク機構30は、複数のリンク片31として、第一リンク片33と、第二リンク片34と、を備えている。本実施形態において、各リンク機構30は、複数のピン32として、第一ピン35と、第二ピン36と、を備えている。
【0025】
図4に示すように、第一リンク片33の一端部33aは、軸部24に中心軸Cs回りに回動不能に固定されている。第一リンク片33の他端部33bは、第一ピン35を介して第二リンク片34の一端部34aに回動自在に連結されている。これにより、第一リンク片33と第二リンク片34とは、第一ピン35回りに回動可能に連結されている。
【0026】
第二リンク片34の他端部34bは、第二ピン36を介して駆動リング25に連結されている。第二リンク片34は、駆動リング25に、第二ピン36回りに回動自在に支持されている。
【0027】
このようにして、各リンク機構30の一方のリンク端30aを形成する第一リンク片33の一端部33aは、各可動翼22の軸部24にそれぞれ連結されている。各リンク機構30の他方のリンク端30bを形成する第二リンク片34の他端部34bは、駆動リング25に連結されている。
【0028】
このような入口案内翼部20Aにおいて、駆動リング25は、アクチュエータ(図示なし)によって軸線Ar(
図3参照)回りに旋回されことで、周方向Dcに変位する。駆動リング25が周方向にDcに変位すると、その変位が第二リンク片34、第一リンク片33を介して軸部24に伝達される。第一リンク片33が軸部24を中心として揺動すると、軸部24と一体に可動翼22の翼本体23が中心軸Cs回りに回転する。これによって、ケーシング15の径方向Drの内側Driにおける流体の流れ中において、翼本体23の角度(開度)が変わり、ケーシング15内に取り入れられる流体の流量が調整される。
【0029】
(センサーの構成)
センサー50は、入口案内翼部20Aに生じる振動を検出する。センサー50は、ケーシング15の径方向Drの外側Droに設けられている。つまり、センサー50は、ケーシング15の外部に設けられている。センサー50は、複数のリンク機構30の少なくとも一つに生じる振動を検出する。本実施形態において、センサー50は、例えば、複数のリンク機構30のうちの一つに設けられている。
【0030】
センサー50としては、例えば、リンク機構30の一軸方向における振動を検出する一軸センサー51を用いることができる。一軸センサー51は、例えば、リンク機構30の一軸方向に生じる加速度を検出する。一軸センサー51を用いる場合、一軸センサー51は、リンク機構30における、周方向Dcの振動を検出するように設けてもよい。このように一軸センサー51を設けることにより、可動翼22の曲げねじり振動にともなって生じる、リンク機構30の曲げ方向の振動を効率良く検出できる。
【0031】
センサー50は、例えば、リンク機構30を構成するリンク片31、及びピン32の少なくとも一方の振動を検出する。センサー50は、可動翼22から伝達される振動を効率良く検出できるよう、リンク機構30において、振動が生じやすい部分で振動を検出するのが好ましい。本実施形態では、センサー50は、例えば、第一リンク片33の振動を検出するように設けられている。
【0032】
(制御装置の構成)
制御装置60は、ガスタービンシステム1の動作を制御する。制御装置60は、センサー50の検出結果に基づいて、圧縮機10の動作を制御する。
【0033】
(ハードウェア構成図)
図5に示すように、制御装置60は、CPU61(Central Processing Unit)、ROM62(Read Only Memory)、RAM63(Random Access Memory)、HDD64(Hard Disk Drive)、信号送受信モジュール65を備えるコンピュータである。信号送受信モジュール65は、センサー50からの検出信号を受信する。信号送受信モジュール65は、制御装置60からの制御信号を、ガスタービンシステム1の各部に送信する。
【0034】
(機能ブロック図)
図6に示すように、制御装置60のCPU61は予め自装置で記憶するプログラムを実行することにより、信号入力部70、振動状態判定部71と、運転制御部72と、出力部75の各構成を備える。
信号入力部70は、ハードウェア的には信号送受信モジュール65であり、センサー50からの検出信号を受信する。
【0035】
振動状態判定部71は、センサー50で検出されたリンク機構30における振動の検出結果に基づき、検出された振動の状態が、異常振動であるか否かを判定する。
【0036】
運転制御部72は、センサー50で検出されたリンク機構30における振動の検出結果に基づき、圧縮機10の運転を制御する。運転制御部72は、振動状態判定部71における判定結果に基づいて、異常振動が生じていると判定された場合、異常振動を収束させるように回転機械である圧縮機10の運転を制御する。
【0037】
出力部75は、ハードウェア的には信号送受信モジュール65であり、運転制御部72によって、ガスタービンシステム1の各部を制御するための制御信号を出力する。
【0038】
(ガスタービンシステム1の運転方法の手順)
図7に示すように、本開示の実施形態に係るガスタービンシステム(回転機械システム)1の運転方法S10は、圧縮機10を作動させるステップS11と、振動を検出するステップS12と、振動状態を判定するステップS13と、圧縮機10の運転を制御するステップS14と、を含んでいる。ガスタービンシステム1の運転方法S10では、制御装置60が予め記憶されたプログラムに基づいた処理を実行することで、自動的に行われる。
【0039】
圧縮機10を作動させるステップS11では、ガスタービンシステム1を通常通り運転させ、ローター11を軸線Ar回りに回転させて圧縮機10を作動させる。
【0040】
振動を検出するステップS12では、リンク機構30に生じる振動をセンサー50により検出する。このステップS12は、ガスタービンシステム1の運転中、予め設定した時間間隔毎に繰り返し実行される。センサー50によって検出されたリンク機構30における振動の検出信号は、制御装置60に出力される。そして、このセンサー50から出力された検出信号が信号入力部70で受信される。
【0041】
振動状態を判定するステップS13では、センサー50で検出されたリンク機構30における振動の検出結果に基づき、検出された振動の状態が、異常振動であるか否かを判定する。より具体的には、振動状態を判定するステップS13では、例えば、振動状態判定部71によって、センサー50で検出されたリンク機構30における振動レベルが、予め設定された振動レベルを超えている場合に異常振動が生じていると判定する。その一方で、振動状態を判定するステップS13では、振動状態判定部71によって、センサー50で検出されたリンク機構30における振動レベルが、予め設定された振動レベルを超えていない場合には、異常振動が生じていないと判定する。
【0042】
圧縮機10の運転を制御するステップS14では、センサー50で検出されたリンク機構30における振動の検出結果に基づき、圧縮機10の運転を制御する。具体的には、この圧縮機10の運転を制御するステップS14では、振動状態を判定するステップS13によって異常振動が生じていないと判定された場合、圧縮機10の運転状態を変更せず、運転をそのまま継続する。一方で、振動状態を判定するステップS13によって異常振動が生じていると判定された場合、圧縮機10の運転を制御するステップS14では、異常振動を収束させるように回転機械の10の運転を制御する。異常振動を収束させるように回転機械の10の運転を制御する場合、運転制御部72は、例えば、入口案内翼部20Aのアクチュエータ(図示なし)を制御して駆動リング25を周方向Dcに移動させることで、複数の可動翼22の中心軸Cs回りの角度を変更させて、ケーシング15内への空気取り込み量を調整する。また、運転制御部72は、例えば、燃焼器2への燃料供給量を制御するようにしてもよい。
【0043】
(作用効果)
上記実施形態のガスタービンシステム1では、複数の可動翼22のそれぞれを回転させるための複数のリンク機構30が、ケーシング15の径方向Drの外側Droに設けられている。これにより、圧縮機10の運転時に入口案内翼部20Aを構成する可動翼22に生じた振動が、ケーシング15の外部のリンク機構30に伝達される。センサー50は、複数のリンク機構30の少なくとも一つに生じる振動を検出する。これにより、入口案内翼部20Aの可動翼22に生じた振動を、ケーシング15の外部で検出することができる。
さらに、センサー50は、ケーシング15の径方向Drの外側Droに設けられている。そのため、センサー50が受ける、ケーシング15の内部の熱の影響を抑えることができる。また、センサー50のメンテナンスを行う際も、ケーシング15の外部で作業を行うことができる。したがって、入口案内翼部20Aの振動を検出するセンサー50の損傷を抑えつつ、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0044】
上記実施形態によれば、運転制御部72が、センサー50で検出されたリンク機構30の振動の検出結果に基づいて圧縮機10の運転を制御している。そのため、入口案内翼部20Aの可動翼22の振動を抑えつつ、圧縮機10を効率良く運転することができる。
【0045】
上記実施形態によれば、更に、リンク機構30の振動を検出するセンサー50を一軸センサー51としている。そのため、簡易な構成でガスタービンシステム1を構成することができる。
【0046】
上記実施形態によれば、センサー50により、リンク機構30を構成する複数のリンク片31やピン32の振動を検出している。これにより、入口案内翼部20Aの可動翼22の振動を検出することができる。
【0047】
上記実施形態のガスタービンシステム1の運転方法S10では、センサー50により、複数のリンク機構30の少なくとも一つに生じる振動を検出している。これにより、入口案内翼部20Aの可動翼22に生じた振動を、ケーシング15の外部で検出することができる。したがって、入口案内翼部20Aの振動を検出するセンサー50の損傷を抑えつつ、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0048】
(実施形態の変形例)
上記実施形態では、センサー50として、一軸センサー51を用いるようにしたが、これに限られない。例えば、センサー50として、多軸センサー52(
図3、
図4参照)を用いるようにしてもよい。ここで、多軸センサー52は、リンク機構30の互いに異なる複数軸方向における振動を検出する。多軸センサー52は、例えば、リンク機構30の、径方向Dr、軸線方向Da、周方向Dcの3軸方向の振動を検出するようにしてもよい。
【0049】
センサー50として多軸センサー52を用いることで、入口案内翼部20Aの可動翼22の振動状態を、より詳細に検出することができる。例えば、多軸センサー52で、複数軸方向の振動を検出することで、可動翼22に由来する振動と、ノイズ等の外部要因に由来する振動とを区別しやすくなる。例えば、多軸センサー52での検出結果が、周方向Dcにおける加速度が大きく、他方向の加速度が小さい場合、可動翼22に由来する振動であると判定することができる。また、多軸センサー52で、径方向Dr、軸線方向Da、周方向Dcの全方向で振動が検出されている場合、外部からのノイズに起因する振動であると推定することができる。また、多軸センサー52で検出される各方向の振動の検出結果に基づいて、ノイズの影響を除去し、可動翼22に由来する振動を、より高感度で検出することもできる。
【0050】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、センサー50は、複数のリンク機構30に対し、複数設けるようにしてもよい。例えば、センサー50は、複数のリンク機構30のうち、周方向Dcに適宜間隔をあけた一部のリンク機構30に設けるようにしてもよい。センサー50は、複数のリンク機構30の全てに対し、それぞれ設けるようにしてもよい。このように、複数のセンサー50を備えた場合、複数のセンサー50間で、リンク機構30における振動の検出結果を比較したり、相殺したりすることで、例えば、センサー50に混入するノイズの影響を除去することができる。
【0051】
また、センサー50は、ケーシング15の径方向Drの外側Droに設けられるのであれば、例えば、リンク機構30の一方のリンク端30aに接続された軸部24の先端部24sや、リンク機構30の他方のリンク端30bに接続される駆動リング25の振動を検出するようにしてもよい。
【0052】
また、センサー50で検出されたリンク機構30における振動の検出結果に基づき、制御装置60で圧縮機10の運転を制御するようにしたが、これに限られない。例えば、センサー50で検出されたリンク機構30における振動の検出結果に基づき、異常振動が生じていると判定された場合、ガスタービンシステム1の制御装置60でアラーム信号等を出力するようにしてもよい。この場合、アラーム信号の出力を認識したガスタービンシステム1のオペレーターが、手動操作によって、圧縮機10の運転状態を変更するようにしてもよい。
【0053】
また、上記のガスタービンシステム1の運転方法S10の手順は適宜順番を入れ替えることが可能である。
【0054】
<付記>
実施形態に記載の回転機械システム1、回転機械システム1の運転方法S10は、例えば以下のように把握される。
【0055】
(1)第1の態様に係る回転機械システム1は、軸線Ar回りに回転するローター軸12に固定された動翼列13を備えるローター11、前記ローター11を覆うケーシング15、及び、前記ケーシング15の内部で前記動翼列13に対して前記軸線Arが延びる軸線方向Daの第一側Da1に配置された入口案内翼部20A、を備えた回転機械10と、前記入口案内翼部20Aに生じる振動を検出するセンサー50と、を備え、前記入口案内翼部20Aは、前記軸線Ar回りの周方向Dcに間隔をあけて配置され、前記軸線Arを中心とした径方向Drに延びる軸部24回りに回転可能とされた複数の可動翼22と、前記ケーシング15の径方向Drの外側Droに設けられて前記周方向Dcに連続し、前記周方向Dcに変位するよう駆動される駆動リング25と、前記ケーシング15の径方向Drの外側Droに設けられ、一方のリンク端30aが前記複数の可動翼22の前記軸部24にそれぞれ連結され、他方のリンク端30bが前記駆動リング25に連結されて、前記駆動リング25が前記周方向Dcに変位した場合に前記複数の可動翼22のそれぞれを前記軸部24回りに回転させる複数のリンク機構30と、を備え、前記センサー50は、前記ケーシング15の径方向Drの外側Droに設けられ、前記複数のリンク機構30の少なくとも一つに生じる振動を検出する。
回転機械10の例としては、ガスタービンの圧縮機、遠心圧縮機、ターボチャージャーが挙げられる。
【0056】
この回転機械システム1は、複数の可動翼22のそれぞれを回転させるための複数のリンク機構30が、ケーシング15の径方向Drの外側Droに設けられている。これにより、回転機械10の運転時に入口案内翼部20Aを構成する可動翼22に生じた振動が、ケーシング15の外部のリンク機構30に伝達される。センサー50は、複数のリンク機構30の少なくとも一つに生じる振動を検出する。これにより、入口案内翼部20Aの可動翼22に生じた振動を、ケーシング15の外部で検出することができる。
センサー50は、ケーシング15の径方向Drの外側Droに設けられている。そのため、センサー50が受けるケーシング15の内部の熱の影響を抑えることができる。また、センサー50のメンテナンスを行う際も、ケーシング15の外部で作業を行うことができる。したがって、入口案内翼部20Aの振動を検出するセンサー50の損傷を抑えつつ、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0057】
(2)第2の態様に係る回転機械システム1は、(1)の回転機械システム1であって、前記センサー50で検出された前記リンク機構30における振動の検出結果に基づき、前記回転機械10の運転を制御する運転制御部72、をさらに備える。
【0058】
このようにセンサー50で検出されたリンク機構30の振動の検出結果に基づき、回転機械10の運転を制御することで、入口案内翼部20Aの可動翼22の振動を抑えつつ、回転機械10を効率良く運転することができる。
【0059】
(3)第3の態様に係る回転機械システム1は、(1)又は(2)の回転機械システム1であって、前記センサー50は、前記リンク機構30の一軸方向における振動を検出する一軸センサー51である。
【0060】
このようにリンク機構30の振動を検出するセンサー50を一軸センサー51とすることで、簡易な構成で回転機械システム1を構成することができる。
【0061】
(4)第4の態様に係る回転機械システム1は、(1)又は(2)の回転機械システム1の運転方法S10であって、前記センサー50は、前記リンク機構30の互いに異なる複数軸方向における振動を検出する多軸センサー52である。
【0062】
このようにリンク機構30の振動を検出するセンサー50を多軸センサー52とすることで、入口案内翼部20Aの可動翼22の振動状態を、より詳細に検出することができる。
【0063】
(5)第5の態様に係る回転機械システム1は、(1)から(4)の何れか一つの回転機械システム1であって、前記複数のリンク機構30は、それぞれ、前記一方のリンク端30aと前記他方のリンク端30bとの間に配置された複数のリンク片31と、前記複数のリンク片31同士を回動自在に連結するピン32と、を備える。
【0064】
このようにセンサー50により、リンク機構30を構成する複数のリンク片31やピン32の振動を検出することによって、入口案内翼部20Aの可動翼22の振動を検出することができる。
【0065】
(6)第6の態様に係る回転機械システム1の運転方法S10は、(1)から(5)の何れか一つの回転機械システム1の運転方法S10であって、前記ローター11を前記軸線Ar回りに回転させて前記回転機械10を作動させるステップS11と、前記センサー50で、前記複数のリンク機構30の少なくとも一つに生じる振動を検出するステップS12と、を含む。
【0066】
このようにすることで、センサー50により、複数のリンク機構30の少なくとも一つに生じる振動を検出することができる。したがって、入口案内翼部20Aの可動翼22に生じた振動を、ケーシング15の外部で検出することができる。
さらに、このような運転方法S10により運転される回転機械システム1のセンサー50は、ケーシング15の径方向Drの外側Droに設けられている。そのため、センサー50が受けるケーシング15の内部の熱の影響を抑えることができる。また、センサー50のメンテナンスを行う際も、ケーシング15の外部で作業を行うことができる。したがって、入口案内翼部20Aの振動を検出するセンサー50の損傷を抑えつつ、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0067】
(7)第7の態様に係る回転機械システム1の運転方法S10は、(6)の回転機械システム1の運転方法S10であって、前記センサー50で検出された前記リンク機構30における振動の検出結果に基づき、前記回転機械10の運転を制御するステップS14をさらに含む。
【0068】
このようにセンサー50で検出されたリンク機構30の振動の検出結果に基づき、回転機械10の運転を制御することで、入口案内翼部20Aの可動翼22の振動を抑えつつ、回転機械10を効率良く運転することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…ガスタービンシステム(回転機械システム)
2…燃焼器
3…タービン
10…圧縮機(回転機械)
11…ローター
12…ローター軸
13…動翼列
13A…動翼列
15…ケーシング
16…メインバーナ
17…静翼列
20A…入口案内翼部
21…フレーム
21h…翼保持孔
22…可動翼
23…翼本体
23a…一端部
23b…他端部
24…軸部
24s…先端部
25…駆動リング
26…センターハブ
26a…翼保持凹部
30…リンク機構
30a…一方のリンク端
30b…他方のリンク端
31…リンク片
32…ピン
33…第一リンク片
33a…一端部
33b…他端部
34…第二リンク片
34a…一端部
34b…他端部
35…第一ピン
36…第二ピン
50…センサー
51…一軸センサー
52…多軸センサー
60…制御装置
61…CPU
62…ROM
63…RAM
64…HDD
65…信号送受信モジュール
70…信号入力部
71…振動状態判定部
72…運転制御部
75…出力部
Ar…軸線
Cs…中心軸
Da…軸線方向
Da1…第一側
Da2…第二側
Dc…周方向
Dr…径方向
Dri…内側
Dro…外側
S10…ガスタービンシステムの運転方法(回転機械システムの運転方法)
S11…圧縮機を作動させるステップ
S12…振動を検出するステップ
S13…振動状態を判定するステップ
S14…圧縮機の運転を制御するステップ