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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170055
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】溶融ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/067 20060101AFI20221102BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20221102BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20221102BHJP
【FI】
B23K26/067
B23K26/21 A
B23K26/064 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075930
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】315017775
【氏名又は名称】日本電産マシンツール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】奥田 剛久
(72)【発明者】
【氏名】西谷 裕介
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA37
4E168CB18
4E168EA02
4E168EA07
4E168EA17
4E168EA25
(57)【要約】
【課題】溶融ヘッドからのレーザ出力を高める。
【解決手段】溶融ヘッドは、コリメートレーザ光の一部を第一分割レーザ光として反射すると共に、前記コリメートレーザ光の残りを第二分割レーザ光として直進させる第一平面鏡と、前記第一分割レーザ光が前記第二分割レーザ光と同じ向きに進むよう、前記第一平面鏡からの前記第一分割レーザ光の向きを変える第二平面鏡と、前記第二平面鏡からの前記第一分割レーザ光と前記第二分割レーザ光とを同一領域に集光させる集光光学系と、を備える。前記第一平面鏡は、銅を主成分とする基材と、金を主成分とするコーティング材と、を有する。前記基材は、平坦な反射基面を有する。前記コーティング材は、前記反射基面を覆い、前記反射基面と背合わせの関係にある表面が前記コリメートレーザ光の一部を反射する反射面を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光により溶融対象を溶融させる溶融ヘッドにおいて、
コリメートされたレーザ光であるコリメートレーザ光の光路の一部を遮るように配置され、前記コリメートレーザ光の一部を第一分割レーザ光として反射すると共に、前記コリメートレーザ光の残りを第二分割レーザ光として直進させる第一平面鏡と、
前記第一分割レーザ光が前記第二分割レーザ光と同じ向きに進むよう、前記第一平面鏡からの前記第一分割レーザ光の向きを変える第二平面鏡と、
前記第二平面鏡からの前記第一分割レーザ光と前記第二分割レーザ光とを同一領域に集光させる集光光学系と、
を備え、
前記第一平面鏡は、銅を主成分とする基材と、金を主成分とするコーティング材と、を有し、
前記基材は、平坦な反射基面と、前記反射基面の縁に接続され且つ前記反射基面に対して鋭角な斜面と、を有し、
前記コーティング材は、前記基材の少なくとも前記反射基面を覆い、前記反射基面と背合わせの関係にある表面が前記コリメートレーザ光の一部を反射する反射面を形成し、
前記第一平面鏡は、前記反射基面と前記斜面との角と、前記反射面の少なくとも一部とが前記光路中に位置するよう配置されている、
溶融ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の溶融ヘッドにおいて、
前記コーティング材は、前記基材の前記角及び前記斜面中で前記角の側の部分を覆う、
溶融ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の溶融ヘッドにおいて、
前記第一平面鏡は、前記角が前記コリメートレーザ光の光軸と交差するように配置されている、
溶融ヘッド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の溶融ヘッドおいて、
前記基材には、冷却媒体が流れる媒体通路が内部に形成されている、
溶融ヘッド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の溶融ヘッドにおいて、
さらに、外部からのレーザ光をコリメートして、前記コリメートレーザ光にするコリメート光学系を備える、
溶融ヘッド。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の溶融ヘッドにおいて、
さらに、前記溶融対象を前記領域に供給可能な溶融対象供給機を備える、
溶融ヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載の溶融ヘッドにおいて、
前記溶融対象供給機は、前記溶融対象としての溶加材を前記領域に供給可能な溶加材供給機である、
溶融ヘッド。
【請求項8】
請求項6に記載の溶融ヘッドにおいて、
前記溶融対象供給機は、前記溶融対象としての造形材料を前記領域に供給可能な造形材料供給機である、
溶融ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ光により溶融対象を溶融させる溶融ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光により溶融対象を溶融させる溶融ヘッドとしては、溶加材や溶接対象金属を溶融される溶接ヘッドや、造形材料を溶融される3Dプリンタヘッド等がある。
【0003】
溶融ヘッドの一種である溶接ヘッドとしては、例えば、以下の特許文献1に記載されている溶接ヘッドがある。この溶接ヘッドは、レーザ光により溶接対象金属を溶融させるものである。この溶接ヘッドは、コリメート光学系と、第一平面鏡と、第二平面鏡と、集光光学系と、を備える。コリメート光学系は、外部からのレーザ光をコリメートして、コリメートレーザ光にする。第一平面鏡は、コリメートレーザ光の光路の一部を遮るように配置され、コリメートレーザ光の一部を第一分割レーザ光として反射すると共に、コリメートレーザ光の残りを第二分割レーザ光として直進させる。第二平面鏡は、第一平面鏡からの第一分割レーザ光が第二分割レーザ光と同じ向きに進むよう、第一分割レーザ光の向きを変える。集光光学系は、第二分割レーザ光と第二平面鏡からの第一分割レーザ光とを同一領域に集光させる。この溶接ヘッドでは、この領域内に溶接対象金属中の溶接位置を配置することで、この溶接位置中の溶接対象金属を溶融させる。
【0004】
第一平面鏡は、反射面と、反射面の縁に接続されて、反射面に対して鋭角な斜面と、を有する。この第一平面鏡は、反射面と斜面との角がコリメートレーザ光の光軸と交差し、反射面の少なくとも一部がコリメートレーザ光の光路中に位置するよう、配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-262183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の溶融ヘッドにおける第一平面鏡は、レーザ光の出力を高めると、レーザ光により損傷する可能性が高い。特に、第一平面鏡における反射面と斜面との角を含む角近傍は、第一平面鏡の他の部分に比べて体積が小さく、レーザ光の照射により、第一平面鏡の他の部分より高温化し易い。このため、この角近傍が損傷し易い。そこで、上記特許文献1に記載の溶融ヘッドでは、第一平面鏡の損傷を抑えるために、レーザ出力を抑える必要がある。
【0007】
そこで、本開示は、レーザ出力を高めることができる溶融ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための一態様としての溶融ヘッドは、レーザ光により溶融対象を溶融させる溶融ヘッドである。
この溶融ヘッドは、コリメートされたレーザ光であるコリメートレーザ光の光路の一部を遮るように配置され、前記コリメートレーザ光の一部を第一分割レーザ光として反射すると共に、前記コリメートレーザ光の残りを第二分割レーザ光として直進させる第一平面鏡と、前記第一分割レーザ光が前記第二分割レーザ光と同じ向きに進むよう、前記第一平面鏡からの前記第一分割レーザ光の向きを変える第二平面鏡と、前記第二平面鏡からの前記第一分割レーザ光と前記第二分割レーザ光とを同一領域に集光させる集光光学系と、を備える。前記第一平面鏡は、銅を主成分とする基材と、金を主成分とするコーティング材と、を有する。前記基材は、平坦な反射基面と、前記反射基面の縁に接続され且つ前記反射基面に対して鋭角な斜面と、を有する。前記コーティング材は、前記基材の少なくとも前記反射基面を覆い、前記反射基面と背合わせの関係にある表面が前記コリメートレーザ光の一部を反射する反射面を形成する。前記第一平面鏡は、前記反射基面と前記斜面との角と、前記反射面の少なくとも一部とが前記光路中に位置するよう配置されている。
【0009】
本態様の第一平面鏡における基材中で角を含む角近傍は、第一平面鏡の他の部分に比べて体積が小さく、レーザ光の照射により、第一平面鏡の他の部分より高温化し易い。本態様の基材は、他の金属に比べて熱伝導率の高い銅を主成分としている。このため、レーザ照射により、角近傍が加熱されても、角近傍の熱を他の部分へ伝え易く、角近傍の高温化を抑制できる。また、金は、銅に対して濡れ性の高い材料である。このため、本態様では、銅を主成分とする基材の表面に対する、金を主成分とするコーティング材の接合強度を高めることができる。このため、本態様では、第一平面鏡が高温化しても、基材からコーティング材の剥離を抑制できる。
【0010】
以上のことから、本態様では、第一平面鏡の損傷を抑えることができ、結果として、レーザ出力を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様における溶融ヘッドでは、レーザ出力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示に係る一実施形態における溶融ヘッドの断面図である。
図2】本開示に係る一実施形態における第一平面鏡及び第一鏡枠の断面図である。
図3】本開示に係る一実施形態の第一変形例における第一平面鏡及び第一鏡枠の断面図である。
図4】本開示に係る一実施形態の第二変形例における溶融ヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る溶融ヘッドの実施形態及び各種変形例について、図面を参照して説明する。
【0014】
「実施形態」
本実施形態の溶融ヘッドについて、図1及び図2を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の溶融ヘッドHは、ワイヤ状の溶加材(溶融対象)3を溶融する溶接ヘッドである。この溶融ヘッドHは、コリメート光学系10と、第一平面鏡20と、第二平面鏡40と、集光光学系50と、溶加材供給機(溶融対象供給機)60と、これらを覆うケーシング70と、を有する。
【0016】
ケーシング70は、光ファイバ取付部71と、出射口72と、を有する。光ファイバ取付部71には、レーザ発振器1に接続されている光ファイバ2が取り付けられる。このレーザ発振器1は、例えば、ファイバレーザ発振器である。
【0017】
コリメート光学系10は、光ファイバ2からのレーザ光をコリメートして、コリメートレーザ光L0にする。このコリメートレーザ光L0の光軸AL0は、光ファイバ2から出射されたレーザ光の光軸上に位置する。コリメート光学系10は、図示されていない枠を介して、ケーシング70内に固定されている。
【0018】
第一平面鏡20は、図2に示すように、銅を主成分とする基材21と、金を主成分とするコーティング材26と、を有する。ここで、基材21の主成分とは、基材21中で50wt%以上の成分である。基材21には、主成分である銅の他、例えば、鉄、ニッケル、亜鉛、リン、マンガン等のいずれかが含まれてもよい。また、コーティング材26の主成分とは、コーティング材26中で50wt%以上の成分である。コーティング材26には、主成分である金の他、例えば、銅、鉄、アルミニウム、アンチモン、パラジウム、ガリウム等のいずれかが含まれてもよい。なお、銅は、基材21の95wt%以上であることが好ましく、99.9wt%以上であることがより好ましい。また、金は、コーティング材26の95wt%以上であることが好まく、99.9wt%以上であることがより好ましい。
【0019】
基材21は、平坦な反射基面22と、反射基面22の縁に接続され且つ反射基面22に対して鋭角な斜面23と、を有する。この斜面23は、反射基面22に対して、例えば、45°の角度を成している。コーティング材26は、反射基面22、反射基面22と斜面23との角24と、斜面23中で角24の側の部分とを覆う。このコーティング材26の厚さは、ミクロンオーダーの厚さである。このコーティング材26中で、反射基面22と背合わせの関係にある平坦な表面が、第一平面鏡20の平坦な反射面27を形成する。
【0020】
第一平面鏡20は、コリメートレーザ光L0の光路PL0の一部を遮るように配置されている。具体的に、第一平面鏡20は、基材21の角24と反射面27の少なくとも一部とがコリメートレーザ光L0の光路PL0中に位置するよう、配置されている。第一平面鏡20の反射面27は、コリメートレーザ光L0の光軸AL0に対して、45°の角度で傾斜している。このため、基材21の斜面23は、コリメートレーザ光L0の光軸AL0が延びている方向に広がっている。
【0021】
この第一平面鏡20は、第一鏡枠30を介して、ケーシング70内に固定されている。この第一鏡枠30は、例えば、アルミニウム等の熱伝導性の高い材料で形成され、ヒートシンクとしての機能も有する。
【0022】
第一平面鏡20は、コリメートレーザ光L0の一部を第一分割レーザ光L1として反射すると共に、コリメートレーザ光L0の残りを第二分割レーザ光L2として直進させる。前述したように、本実施形態において、第一平面鏡20の反射面27がコリメートレーザ光L0の光軸AL0に対して45°の角度である。このため、本実施形態において、第一平面鏡20で反射された第一分割レーザ光L1の光軸AL1は、コリメートレーザ光L0の光軸AL0に対して90°の角度を成す。一方、第二分割レーザ光L2の光軸AL2は、コリメートレーザ光L0の光軸AL0と平行である。
【0023】
第一分割レーザ光L1の光量と第二分割レーザ光L2の光量とが実質的に同じになるように、第一平面鏡20は、基材21の角24がコリメートレーザ光L0の光軸AL0と交差するように配置されることが好ましい。
【0024】
第二平面鏡40は、図示されていないが、この第二平面鏡40も基材とコーティング材とを有する。このコーティング材の表面が平坦な反射面47を成す。基材は、例えば、合成石英で形成されている。コーティング材は、反射コーティング材で形成されている。なお、第二平面鏡40も、第一平面鏡20と同様に、銅を主成分とする基材と、金を主成分とするコーティング材とで形成されてもよい。
【0025】
第二平面鏡40は、第二平面鏡40の反射面47の少なくとも一部が第一平面鏡20からの第一分割レーザ光L1の光路PL1中に位置するよう配置されている。第二平面鏡40の反射面47は、第一平面鏡20からの第一分割レーザ光L1の光軸AL1に対して、45°の角度で傾斜している。このため、第二平面鏡40の反射面47で反射された第一分割レーザ光L1は、第二分割レーザ光L2と同じ向きに進む。
【0026】
この第二平面鏡40は、第二鏡枠49を介して、ケーシング70内に固定されている。
【0027】
集光光学系50は、第一平面鏡20からの第一分割レーザ光L1と第二平面鏡40からの第二分割レーザ光L2とをケーシング70外の同一領域(集光領域とする)Rに集光させる。この集光光学系50は、図示されていない枠を介して、ケーシング70内に固定されている。
【0028】
ケーシング70の出射口72は、ケーシング70内からケーシング70外に貫通した開口である。集光光学系50を通過した第一分割レーザ光L1及び第二分割レーザ光L2は、いずれもこの出射口72を通過して、ケーシング70外で集光する。
【0029】
溶加材供給機60は、ワイヤ状の溶加材3を保持し、この溶加材3をケーシング70外の集光領域R中に供給する装置である。
【0030】
本実施形態では、レーザ発振器1からのレーザ光をコリメート光学系10によりコリメートする。コリメートされたレーザ光であるコリメートレーザ光L0の一部は、第一分割レーザ光L1として第一平面鏡20により反射される。また、このコリメートレーザ光L0の残りは、第二分割レーザ光L2として直進する。第一平面鏡20からの第一分割レーザ光L1は、第二分割レーザ光L2と同じ向きに進むよう、第二平面鏡40により、その進行方向が変えられる。第二分割レーザ光L2と第二平面鏡40からの第一分割レーザ光L1とは、いずれも、集光光学系50により、同一集光領域Rで集光される。この集光領域Rには、溶加材供給機60から溶加材3が供給される。この溶加材3には、第一分割レーザ光L1及び第二分割レーザ光L2が照射されて加熱される。この結果、この溶加材3が溶融され、溶融した溶加材3により、二つの溶接対象金属が溶接される。
【0031】
本実施形態の第一平面鏡20における基材21中で角24を含む角近傍は、第一平面鏡20の他の部分に比べて体積が小さく、レーザ光の照射により、第一平面鏡20の他の部分より高温化し易い。さらに、コリメートレーザ光L0の光軸AL0にこの角近傍が交差するので、この角近傍にエネルギー密度の高いレーザ光が照射され、第一平面鏡20の他の部分より高温化し易い。本実施形態の基材21は、他の金属に比べて熱伝導率の高い銅を主成分としている。このため、レーザ照射により、角近傍が加熱されても、角近傍の熱を他の部分へ伝え易く、角近傍の高温化を抑制できる。しかも、本実施形態では、第一平面鏡20がヒートシンクとして機能する第一鏡枠30により支持されているため、第一平面鏡20からの熱を容易に第一鏡枠30に逃すことができる。
【0032】
また、金は、銅に対して濡れ性の高い材料である。このため、銅を主成分とする基材21の表面に対する、金を主成分とするコーティング材26の接合強度を高めることとができる。このため、第一平面鏡20が高温化しても、基材21からコーティング材26の剥離を抑制できる。
【0033】
以上のことから、本実施形態では、第一平面鏡20の損傷を抑えることができ、結果として、レーザ出力を高めることができる。
【0034】
「第一変形例」
上記実施形態における溶融ヘッドの第一変形例について、図3を参照して、説明する。
【0035】
本変形例における溶融ヘッドHaの構造は、上記実施形態における溶融ヘッドHの構造と基本的に同じである。但し、図3に示すように、本変形例における溶融ヘッドHaの第一平面鏡20aの内部構造が、上記実施形態における溶融ヘッドHの第一平面鏡20の内部構造と異なる。
【0036】
本変形例における第一平面鏡20aの基材21aには、水等の冷却媒体が流れる媒体通路25が内部に形成されている。また、第一平面鏡20aを支持する第一鏡枠30aには、基材21aの媒体通路25の一端に接続可能な媒体供給通路31と、基材21aの媒体通路25の他端に接続可能な媒体排出通路32と、が形成されている。媒体供給通路31には、冷却媒体を媒体供給通路31に導ける媒体供給チューブ33が接続されている。媒体排出通路32には、媒体排出通路32からの冷却媒体を外部に排出可能な媒体排出チューブ34が接続されている。
【0037】
本変形例では、第一平面鏡20aの基材21a内に冷却媒体を流すことができるので、この冷却媒体により、第一平面鏡20aを積極的に冷却することができる。このため、本変形例では、上記実施形態よりも、第一平面鏡20aの損傷を抑えることができ、結果として、レーザ出力を高めることができる。
【0038】
「第二変形例」
上記実施形態における溶融ヘッドの第二変形例について、図4を参照して、説明する。
【0039】
上記実施形態における溶融ヘッドHは、前述したように、ワイヤ状の溶加材3を溶融する溶接ヘッドである。一方、本変形例における溶融ヘッドHbは、溶接対象金属を溶融する溶接ヘッドである。この溶融ヘッドHbは、上記実施形態の溶融ヘッドHと基本的な構造が同じである。すなわち、本変形例に溶融ヘッドHbも、上記実施形態の溶融ヘッドHと同様、第一平面鏡20を有し、この第一平面鏡20が銅を主成分とする基材21と金を主成分とするコーティング材26とで形成されている。但し、この溶融ヘッドHbは、上記実施形態における溶加材供給機(溶融対象供給機)60の替りに、アーク溶接用の電極80が設けられている。この電極80には、この電極80に電圧を印加するアーク制御器5が接続されている。このワイヤ状の電極80は、集光領域Rの近傍まで延びている。
【0040】
この溶融ヘッドHbでは、集光光学系50を通過した第一分割レーザ光L1及び第二分割レーザ光L2を二つの溶接対象金属における溶接領域に照射する。さらに、電極80と二つの溶接対象金属における溶接領域との間にアークを発生させる。この結果、二つの溶接対象金属における溶接領域が溶融して、二つの溶接対象金属が溶接される。
【0041】
なお、本変形例において、溶加材供給機(溶融対象供給機)60のみならず、電極80を備えていなくてもよい。この場合、集光光学系50を通過した第一分割レーザ光L1及び第二分割レーザ光L2のみで、二つの溶接対象金属における溶接領域が溶融されることになる。
【0042】
「その他の変形例」
上記実施形態における溶融ヘッドHは、前述したように、ワイヤ状の溶加材3を溶融する溶接ヘッドである。しかしながら、溶融ヘッドは、ワイヤ状の造形材料を溶融する3Dプリンタヘッドであってもよい。この場合、溶融対象供給機は、ワイヤ状の造形材料を保持し、この造形材料をケーシング70外の集光領域R中に供給する造形材料供給機である。
【0043】
なお、この変形例の溶融ヘッド及び第二変形例の溶融ヘッドHbにおいても、第一変形例と同様に、第一平面鏡の基材に媒体通路を形成してもよい。
【0044】
上記実施形態及び以上の各変形例における溶融ヘッドは、いずれも、コリメート光学系10を備える。しかしながら、溶融ヘッドが外部からコリメートレーザ光L0を受光できる場合には、この溶融ヘッドには、コリメート光学系が不要である。
【0045】
「付記」
以上の実施形態における溶融ヘッドは、例えば、以下のように把握される。
【0046】
(1)第一態様における溶融ヘッドは、レーザ光により溶融対象を溶融させる溶融ヘッドである。この溶融ヘッドは、コリメートされたレーザ光であるコリメートレーザ光の光路L0の一部を遮るように配置され、前記コリメートレーザ光L0の一部を第一分割レーザ光L1として反射すると共に、前記コリメートレーザ光L0の残りを第二分割レーザ光L2として直進させる第一平面鏡20,20aと、前記第一分割レーザ光L1が前記第二分割レーザ光L2と同じ向きに進むよう、第一平面鏡20,20aからの前記第一分割レーザ光L1の向きを変える第二平面鏡40と、前記第二平面鏡40からの前記第一分割レーザ光L1と前記第二分割レーザ光L2とを同一領域Rに集光させる集光光学系50と、を備える。前記第一平面鏡20,20aは、銅を主成分とする基材21,21aと、金を主成分とするコーティング材26と、を有する。前記基材21,21aは、平坦な反射基面22と、前記反射基面22の縁に接続され且つ前記反射基面22に対して鋭角な斜面23と、を有する。前記コーティング材26は、前記基材21,21aの少なくとも前記反射基面22を覆い、前記反射基面22と背合わせの関係にある表面が前記コリメートレーザ光L0の一部を反射する反射面27を形成する。前記第一平面鏡20,20aは、前記反射基面22と前記斜面23との角24と、前記反射面27の少なくとも一部とが前記光路PL0中に位置するよう配置されている。
【0047】
本態様の第一平面鏡20,20aにおける基材21,21a中で角24を含む角近傍は、第一平面鏡20,20aの他の部分に比べて体積が小さく、レーザ光の照射により、第一平面鏡20,20aの他の部分より高温化し易い。本態様の基材21,21aは、他の金属に比べて熱伝導率の高い銅を主成分としている。このため、レーザ照射により、角近傍が加熱されても、角近傍の熱を他の部分へ伝え易く、角近傍の高温化を抑制できる。また、金は、銅に対して濡れ性の高い材料である。このため、本態様では、銅を主成分とする基材21,21aの表面に対する、金を主成分とするコーティング材26の接合強度を高めることができる。このため、本態様では、第一平面鏡20,20aが高温化しても、基材21,21aからコーティング材26の剥離を抑制できる。
【0048】
以上のことから、本態様では、第一平面鏡20,20aの損傷を抑えることができ、結果として、レーザ出力を高めることができる。
【0049】
(2)第二態様における溶融ヘッドは、
前記第一態様の溶融ヘッドにおいて、前記コーティング材26は、前記基材21,21aの前記角24及び前記斜面23中で前記角24の側の部分を覆う。
【0050】
本態様では、基材21,21aの反射基面22のみならず、角24及び斜面23中で角24側の部分も、コーティング材26で覆われているので、基材21,21aの角24の損傷を抑制することができる。
【0051】
(3)第三態様における溶融ヘッドは、
前記第一態様又は前記第二態様における溶融ヘッドにおいて、前記第一平面鏡20,20aは、前記角24が前記コリメートレーザ光L0の光軸AL0と交差するように配置されている。
【0052】
(4)第四態様における溶融ヘッドは、
前記第一態様から前記第三態様のいずれか一態様における溶融ヘッドにおいて、前記基材21aには、冷却媒体が流れる媒体通路25が内部に形成されている。
【0053】
本態様では、基材21aの媒体通路25に冷却媒体を流すことで、第一平面鏡20aを積極的に冷却することができる。このため、本態様で、第一平面鏡20aの損傷を抑えることができ、結果として、レーザ出力を高めることができる。
【0054】
(5)第五態様における溶融ヘッドは、
前記第一態様から前記第四態様のいずれか一態様における溶融ヘッドにおいて、さらに、外部からのレーザ光をコリメートして、前記コリメートレーザ光L0にするコリメート光学系10を備える。
【0055】
(6)第六態様における溶融ヘッドは、
前記第一態様から前記第五態様のいずれか一態様における溶融ヘッドにおいて、さらに、前記溶融対象を前記領域Rに供給可能な溶融対象供給機60を備える。
【0056】
本態様では、第一分割レーザ光L1と第二分割レーザ光L2とが集光する領域R内で、溶融対象供給機60からの溶融対象を溶融することができる。
【0057】
(7)第七態様における溶融ヘッドは、
前記第六態様における溶融ヘッドにおいて、前記溶融対象供給機60は、前記溶融対象としての溶加材3を前記領域Rに供給可能な溶加材供給機である。
【0058】
本態様では、一分割レーザ光と第二分割レーザ光L2とが集光する領域R内で、溶融対象供給機60としての溶加材供給機からの溶加材3を溶融することで、溶融した溶加材3により、二つの溶接対象金属を溶接することができる。
【0059】
(8)第八態様における溶融ヘッドは、
前記第六態様における溶融ヘッドにおいて、前記溶融対象供給機60は、前記溶融対象としての造形材料を前記領域Rに供給可能な造形材料供給機である。
【0060】
本態様では、一分割レーザ光と第二分割レーザ光L2とが集光する領域R内で、溶融材供給機としての造形材料供給機からの造形材料を溶融することで、溶融した造形材料により、目的の形状を作ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1:レーザ発振器
2:光ファイバ
3:溶加材(溶融対象)
5:アーク制御器
10:コリメート光学系
20,20a:第一平面鏡
21,21a:基材
22:反射基面
23:斜面
24:角
25:媒体通路
26:コーティング材
27:反射面
30,30a:第一鏡枠
31:媒体供給通路
32:媒体排出通路
33:媒体供給チューブ
34:媒体排出チューブ
40:第二平面鏡
47:反射面
49:第二鏡枠
50:集光光学系
60:溶加材供給機(溶融対象供給機又は造形材料供給機)
70:ケーシング
71:光ファイバ取付部
72:出射口
80:電極
H,Ha,Hb:溶融ヘッド
L0:コリメートレーザ光
L1:第一分割レーザ光
L2:第二分割レーザ光
PL0:コリメートレーザ光の光路
PL1:第一分割レーザ光の光路
AL0:コリメートレーザ光の光軸
AL1:第一分割レーザ光の光軸
AL2:第二分割レーザ光の光軸
R:領域(又は集光領域)
図1
図2
図3
図4