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特開2022-170062有価媒体処理システム、有価媒体処理装置、有価媒体処理方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170062
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】有価媒体処理システム、有価媒体処理装置、有価媒体処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20221102BHJP
   G07D 11/16 20190101ALI20221102BHJP
【FI】
G06Q40/04
G07D11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075940
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】岸本 奈々
(72)【発明者】
【氏名】永井 孝和
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 伊吹
(72)【発明者】
【氏名】大坪 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】小熊 直輝
【テーマコード(参考)】
3E141
5L055
【Fターム(参考)】
3E141AA05
3E141BA06
3E141CB04
3E141EA10
3E141FH05
3E141FJ05
3E141FK06
5L055BB51
(57)【要約】
【課題】手形又は小切手のイメージデータの取り込みから外部装置への送信までを効率化する。
【解決手段】有価媒体処理システムに、手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータのうち少なくとも1つを記憶する記憶部と、記憶部に記憶されているイメージデータを外部装置に送信する通信部と、を設ける。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価媒体処理システムであって、
手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータのうち少なくとも1つを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されているイメージデータを外部装置に送信する通信部と、
を有する有価媒体処理システム。
【請求項2】
前記外部装置に送信するイメージデータを選択する選択部を更に有する、
請求項1に記載の有価媒体処理システム。
【請求項3】
操作表示部を更に有し、
前記選択部は、操作者による前記操作表示部の操作に基づき、送信の対象とするイメージデータを選択する、
請求項2に記載の有価媒体処理システム。
【請求項4】
手形又は小切手の種別を識別する識別部を更に有し、
前記種別には、前記通信部による送信の対象とする第一の種別と、前記通信部による送信の対象としない第二の種別が含まれる、
請求項3に記載の有価媒体処理システム。
【請求項5】
前記操作表示部は、操作者が送信の対象に選択したイメージデータに対応する手形又は小切手の種別が前記第二の種別に該当する場合、注意を喚起する表示を行う、
請求項4に記載の有価媒体処理システム。
【請求項6】
前記操作表示部は、送信の対象とするイメージデータを選択する画面において、前記第一の種別に係るイメージデータと前記第二の種別に係るイメージデータとを異なる態様で表示する、
請求項4に記載の有価媒体処理システム。
【請求項7】
前記操作表示部は、前記第二の種別に係るイメージデータを選択できない態様で表示する、
請求項6に記載の有価媒体処理システム。
【請求項8】
手形又は小切手の種別を識別する識別部を更に有し、
前記種別には、前記通信部による送信の対象とする第一の種別と、前記通信部による送信の対象としない第二の種別が含まれ、
前記選択部は、前記第一の種別に係るイメージデータを自動的に選択する、
請求項2に記載の有価媒体処理システム。
【請求項9】
前記第一の種別又は前記第二の種別の少なくとも一方を設定する設定部を更に有する、
請求項4~8のいずれか1項に記載の有価媒体処理システム。
【請求項10】
前記操作表示部は、イメージデータに対応するファイル名を生成して表示する、
請求項4~7のいずれか1項に記載の有価媒体処理システム。
【請求項11】
送信の対象とするイメージデータの特定に使用する前記ファイル名を、手形又は小切手の対応する面に印字する印字部を更に有する、
請求項10に記載の有価媒体処理システム。
【請求項12】
前記通信部は、前記外部装置にイメージデータを送信する場合、一度に送信した1又は複数のイメージデータに対応する手形及び小切手の総枚数と金額の合計値を、イメージデータと一緒に送信する、
請求項1に記載の有価媒体処理システム。
【請求項13】
前記通信部は、手形又は小切手のイメージデータに、緊急度を示す情報を付加する、
請求項1又は12に記載の有価媒体処理システム。
【請求項14】
前記通信部は、送信するイメージデータのファイル名に、緊急度を示す情報を含める、
請求項13に記載の有価媒体処理システム。
【請求項15】
前記記憶部は、一度に送信された1又は複数のイメージデータを、各送信を識別する情報に紐づけて記憶する、
請求項1に記載の有価媒体処理システム。
【請求項16】
イメージデータに対応する手形及び小切手の現物が収容される収容部と、
前記収容部から取り出される現物と、前記外部装置に送信されたイメージデータとを照合する照合部と
を更に有する請求項1~15のいずれか1項に記載の有価媒体処理システム。
【請求項17】
前記収容部から取り出される現物に対応するイメージデータが、送信の対象に選択されているが未送信の場合、操作者に報知する報知部を更に有する、
請求項16に記載の有価媒体処理システム。
【請求項18】
前記外部装置に送信済みのイメージデータに対応する現物が前記収容部からの回収の対象から漏れている場合、操作者に報知する報知部を更に有する、
請求項16に記載の有価媒体処理システム。
【請求項19】
データを処理する装置において実行される有価媒体処理方法において、
手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータのうち少なくとも1つを記憶部に記憶する処理と、
前記記憶部に記憶されているイメージデータを外部装置に送信する処理と、
を有する有価媒体処理方法。
【請求項20】
コンピュータに、
手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータのうち少なくとも1つを記憶部に記憶する機能と、
前記記憶部に記憶されているイメージデータを外部装置に送信する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項21】
有価媒体処理装置であって、
手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータのうち少なくとも1つを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されているイメージデータを外部装置に送信する通信部と、
を有する有価媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価媒体処理システム、有価媒体処理装置、有価媒体処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、手形や小切手を決済したい場合、金融機関は、現物を手形交換所等に持ち込む必要がある。ただし、令和4年以降は、新たに設立される電子交換所に対し、手形や小切手のイメージデータを送信するだけで決済が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-60265号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“電子交換所の設立について”,[online],令和元年6月13日,一般社団法人全国銀行協会,[令和3年3月25日検索],インターネット<URL:https://www.zenginkyo.or.jp/news/2019/n061301/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現行のオープン出納機には、金融機関の営業店に持ち込まれた手形や小切手の現物を一時的に保管する機能が設けられている。また、現行のオープン出納機には、金融機関の営業店に持ち込まれた手形や小切手のイメージデータを取り込む機能を備えるものがある。ただし、その目的は、オープン出納機に取り込まれる手形や小切手の異常のチェックや入金データの取り込み用であり、イメージデータを電子交換所における取引に使用することは想定されていない。
【0006】
本発明は、手形又は小切手のイメージデータの取り込みから外部装置への送信までを効率化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、有価媒体処理システムであって、手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータのうち少なくとも1つを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されているイメージデータを外部装置に送信する通信部と、を有する有価媒体処理システムである。
請求項2に記載の発明は、前記外部装置に送信するイメージデータを選択する選択部を更に有する、請求項1に記載の有価媒体処理システムである。
請求項3に記載の発明は、操作表示部を更に有し、前記選択部は、操作者による前記操作表示部の操作に基づき、送信の対象とするイメージデータを選択する、請求項2に記載の有価媒体処理システムである。
請求項4に記載の発明は、手形又は小切手の種別を識別する識別部を更に有し、前記種別には、前記通信部による送信の対象とする第一の種別と、前記通信部による送信の対象としない第二の種別が含まれる、請求項3に記載の有価媒体処理システムである。
請求項5に記載の発明は、前記操作表示部は、操作者が送信の対象に選択したイメージデータに対応する手形又は小切手の種別が前記第二の種別に該当する場合、注意を喚起する表示を行う、請求項4に記載の有価媒体処理システムである。
請求項6に記載の発明は、前記操作表示部は、送信の対象とするイメージデータを選択する画面において、前記第一の種別に係るイメージデータと前記第二の種別に係るイメージデータとを異なる態様で表示する、請求項4に記載の有価媒体処理システムである。
請求項7に記載の発明は、前記操作表示部は、前記第二の種別に係るイメージデータを選択できない態様で表示する、請求項6に記載の有価媒体処理システムである。
請求項8に記載の発明は、手形又は小切手の種別を識別する識別部を更に有し、前記種別には、前記通信部による送信の対象とする第一の種別と、前記通信部による送信の対象としない第二の種別が含まれ、前記選択部は、前記第一の種別に係るイメージデータを自動的に選択する、請求項2に記載の有価媒体処理システムである。
請求項9に記載の発明は、前記第一の種別又は前記第二の種別の少なくとも一方を設定する設定部を更に有する、請求項4~8のいずれか1項に記載の有価媒体処理システムである。
請求項10に記載の発明は、前記操作表示部は、イメージデータに対応するファイル名を生成して表示する、請求項4~7のいずれか1項に記載の有価媒体処理システムである。
請求項11に記載の発明は、送信の対象とするイメージデータの特定に使用する前記ファイル名を、手形又は小切手の対応する面に印字する印字部を更に有する、請求項10に記載の有価媒体処理システムである。
請求項12に記載の発明は、前記通信部は、前記外部装置にイメージデータを送信する場合、一度に送信した1又は複数のイメージデータに対応する手形及び小切手の総枚数と金額の合計値を、イメージデータと一緒に送信する、請求項1に記載の有価媒体処理システムである。
請求項13に記載の発明は、前記通信部は、手形又は小切手のイメージデータに、緊急度を示す情報を付加する、請求項1又は12に記載の有価媒体処理システムである。
請求項14に記載の発明は、前記通信部は、送信するイメージデータのファイル名に、緊急度を示す情報を含める、請求項13に記載の有価媒体処理システムである。
請求項15に記載の発明は、前記記憶部は、一度に送信された1又は複数のイメージデータを、各送信を識別する情報に紐づけて記憶する、請求項1に記載の有価媒体処理システムである。
請求項16に記載の発明は、イメージデータに対応する手形及び小切手の現物が収容される収容部と、前記収容部から取り出される現物と、前記外部装置に送信されたイメージデータとを照合する照合部とを更に有する請求項1~15のいずれか1項に記載の有価媒体処理システムである。
請求項17に記載の発明は、前記収容部から取り出される現物に対応するイメージデータが、送信の対象に選択されているが未送信の場合、操作者に報知する報知部を更に有する、請求項16に記載の有価媒体処理システムである。
請求項18に記載の発明は、前記外部装置に送信済みのイメージデータに対応する現物が前記収容部からの回収の対象から漏れている場合、操作者に報知する報知部を更に有する、請求項16に記載の有価媒体処理システムである。
請求項19に記載の発明は、データを処理する装置において実行される有価媒体処理方法において、手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータのうち少なくとも1つを記憶部に記憶する処理と、前記記憶部に記憶されているイメージデータを外部装置に送信する処理と、を有する有価媒体処理方法である。
請求項20に記載の発明は、コンピュータに、手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータのうち少なくとも1つを記憶部に記憶する機能と、前記記憶部に記憶されているイメージデータを外部装置に送信する機能と、を実現させるためのプログラムである。
請求項21に記載の発明は、有価媒体処理装置であって、手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータのうち少なくとも1つを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されているイメージデータを外部装置に送信する通信部と、を有する有価媒体処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、手形又は小切手のイメージデータの取り込みから外部装置への送信までを効率化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1で想定する電子交換所システムの概念構成を示す図である。
図2】金融機関の営業店に設置される有価媒体処理システムの外観例を説明する図である。
図3】有価媒体処理装置の構成例を説明する図である。
図4】印字部によるファイル名の印字を説明する図である。
図5】有価媒体処理装置の機能構成を説明するブロック図である。
図6】制御部に設ける機能の一例を説明する図である。
図7】送信種別設定部で使用する画面の例を示す図である。
図8】記憶部に格納された収容媒体情報DBのデータ例を説明する図である。
図9】入金に関する処理動作例を説明するフローチャートである。
図10】メニュー画面の一例を説明する図である。
図11】入金画面の一例を説明する図である。
図12】入金画面の他の例を説明する図である。
図13】イメージデータの送信に関する処理動作例を説明するフローチャートである。
図14】イメージデータの選択に用いる選択画面の一例を説明する図である。
図15】送信の対象には選択できない種別のイメージデータが選択された場合の表示例を説明する図である。
図16】選択が許可されていない種別のイメージデータが、選択が可能なイメージデータとは異なる態様で表示される例を説明する図である。
図17】選択画面で「完了」ボタンが操作された場合の表示例を示す図である。
図18】送信済みイメージデータの確認に関する処理動作例を説明するフローチャートである。
図19】送信済みイメージデータの確認画面の一例を説明する図である。
図20】送信IDに紐付けられている送信済みイメージデータの詳細画面の一例を説明する図である。
図21】有価媒体処理装置から手形や小切手の現物を取り出す場合の処理動作例を説明するフローチャートである。
図22】手形や小切手の現物と送信済みのイメージデータとの照合時に表示される照合画面の一例を説明する図である。
図23】ステップで表示されるダイアログボックスの一例を説明する図である。
図24】ステップで表示されるダイアログボックスの一例を説明する図である。
図25】実施の形態2で想定する有価媒体処理システムの外観例を説明する図である。
図26】有価媒体処理システムの機能構成を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
各実施の形態では、硬貨、紙幣、手形、小切手、配当金領収書、定額小為替等の有価証券を「有価媒体」という。また、硬貨と紙幣を総称する場合、「貨幣」という。
【0011】
<実施の形態1>
<システムの構成>
図1は、実施の形態1で想定する電子交換所システム1の概念構成を示す図である。
本実施の形態で想定する電子交換所システム1は、イメージデータに変換された手形や小切手の交換に使用される。
図1に示す電子交換所システム1は、システムに参加する金融機関システム2A、2B、2Cと、電子交換所3とで構成されている。
【0012】
図1では、金融機関を区別して金融機関A、金融機関B、金融機関Cと表記し、対応するシステムを金融機関システム2A、2B、2Cという。以下では、個々の金融機関システム2A、2B、2Cを区別しない場合、金融機関システム2という。
金融機関システム2では、持ち込まれた手形や小切手のイメージデータへの変換、イメージデータの電子交換所3への送信、電子交換所3からのイメージデータの受信が実行される。
【0013】
電子交換所3は、支払い元である金融機関Cから受信した手形や小切手のイメージデータを、受け取り先である金融機関Aに送信する機能を提供する。この手形や小切手に対応するイメージデータの送受信により、手形や小切手の額面価値の交換、すなわち決済が実現される。
図1の場合、金融機関システム2は、いずれも複数の営業店4と1つのセンター5で構成される。図1では、電子交換所3に接続されたサーバが設置されている施設を「センター」という。ここでのサーバは、手形や小切手のイメージデータの送信先となる外部装置の一例である。
【0014】
電子交換所3に接続されたサーバが設置されている施設は、1つの金融機関に複数あってもよい。その場合、1つの金融機関には、複数のセンター5が設けられる。
営業店4には、手形や小切手の現物が持ち込まれる。営業店4に持ち込まれた手形や小切手は、イメージデータに変換され、センター5に送信される。
センター5は、営業店4から受信されたイメージデータを保管し、予め定めたタイミングで電子交換所3に送信する。
言うまでもなく、金融機関の数は、3つに限らない。また、電子交換所3は、複数存在してもよい。
【0015】
<有価媒体処理システムの構成>
図2は、金融機関の営業店4に設置される有価媒体処理システム10の外観例を説明する図である。実施の形態における有価媒体処理システム10は、例えばオープン出納機である。
図2に示す有価媒体処理システム10は、バラ紙幣処理部100と束紙幣処理部200からなる紙幣処理装置10Aと、バラ硬貨処理部300と包装硬貨処理部400からなる硬貨処理装置10Bと、硬貨処理装置10B等による機械受付ができない損貨および記念硬貨を処理する損貨処理装置500と、紙幣処理装置10A等による機械受付ができない損券、手形、小切手等を処理する有価媒体処理装置600とを備えている。
【0016】
概略直方体形状の紙幣処理装置10A及び硬貨処理装置10Bの上面には、操作表示部700とプリンタ800が、それぞれ配置されている。
操作表示部700は、例えばタッチパネルで構成される。操作者は、操作表示部700を通じて前述した装置を操作する。
また、操作者は、操作表示部700を通じて各種の情報を確認し、必要な情報をプリンタ800から出力させる。
また、有価媒体処理システム10は、例えば同じ施設内の管理コンピュータと通信可能でもよい。ここでの管理コンピュータは、窓口にある窓口端末等の他の装置と接続されている。
【0017】
<有価媒体処理装置の構成例>
図3は、有価媒体処理装置600の構成例を説明する図である。図3には、有価媒体処理装置600の内部構造を示している。
図3の場合、紙面に向かって左側が有価媒体処理装置600の前面又は正面であり、同じく紙面に向かって右側が有価媒体処理装置600の背面である。因みに、作業者は、有価媒体処理装置600の前面又は正面側から有価媒体処理システム10を操作する。
【0018】
図3に示す有価媒体処理装置600には、手形や小切手等の有価媒体を装置内に投入するための投入部610と、機体内に収容された有価媒体を機体外に払い出すための払出部660とが設けられている。
投入部610と払出部660は、有価媒体処理装置600の前面側に設けられている。
投入部610には、繰出機構612が設けられている。繰出機構612は、束の状態で投入部610に投入された有価媒体を、1枚ずつ順番に装置内に繰り出す。搬送部614は、繰出機構612から1枚ずつ繰り出される有価媒体を1枚ずつ搬送する機構である。
【0019】
搬送部614には、撮像部616が設けられている。撮像部616は、搬送中の有価媒体を撮像し、イメージデータを取得する。本実施の形態における撮像部616は、有価媒体の表(おもて)面と裏面とを別々に撮像する。このため、1枚の有価媒体について、表(おもて)面のイメージデータと裏面のイメージデータが別々に取得される。1枚の有価媒体の表(おもて)面のイメージデータのファイル名と、裏面のイメージデータのファイル名とは異なっている。
【0020】
もっとも、表(おもて)面のイメージデータと裏面のイメージデータに同じファイル名を付与することも可能である。その場合、表(おもて)面のイメージデータと裏面のイメージデータは、1つのデータファイルの1ページ目と2ページ目を構成する。
本実施の形態の場合、ファイル名は、例えば60桁の文字と数字で構成される。桁数は一例である。本実施の形態の場合、各桁には、記録する情報が対応付けられている。なお、撮像部616には、撮像時に有価媒体の紙面を照明する光源も設けられる。
【0021】
撮像部616を通過した有価媒体は、保留部620に一時的に保留される。
保留部620は、有価媒体をテープに挟んで巻き取る方式(すなわちテープ巻取方式)を採用する。
保留部620は、正逆両方向に回転可能なドラム620aを有している。ドラム620aには、一対のテープが取り付けられており、ドラム620aの回転に応じ、一対のテープがドラム本体に巻き取られたり、送り出されたりする。
【0022】
有価媒体は、一対のテープの間に挟まれた状態で1枚ずつドラム本体に巻き取られて収容される。また、ドラム本体の逆回転により、巻き取られた有価媒体が1枚ずつ繰り出され、搬送部614に送り出される。
本実施の形態の場合、撮像部616から保留部620に至る搬送路上には、印字部617が配置される。印字部617は、撮像部616で読み取られたイメージデータに付与されたファイル名を、搬送中の手形や小切手の表面(ひょうめん)に印字する。ファイル名を印字する部位は、既に印字されている他の文字等を避けるように定められる。
【0023】
ファイル名は、有価媒体処理装置600が入金処理モードで動作する場合に、イメージデータが取得されると発生される。
一方、有価媒体処理装置600が入金処理モード以外で動作する場合、例えば照合モードで動作する場合、撮像部616が投入された手形や小切手等のイメージデータを取得しても、ファイル名は発生されない。
【0024】
本実施の形態の場合、印字部617は、搬送路の両面に配置され、手形や小切手の表(おもて)面と裏面の両方に、各面に対応するファイル名を一度に印字する。
なお、印字部617は、片面側のみに設け、搬送路上で表(おもて)面と裏面の向きを入れ替える前と入れ替えた後のそれぞれにおいてファイル名を印字してもよい。印字部617は、ファイル名を印字する印字部の一例である。
図4は、印字部617によるファイル名の印字を説明する図である。図中の矢印は、搬送部614による搬送の向きを表している。図4の場合、印字部617の上流側に位置する小切手にはファイル名が印字されていないが、印字部617を通過した小切手の左上隅にはファイル名が印字されている。
【0025】
図3の説明に戻る。
有価媒体処理装置600には、手形や小切手を収容する手形等収容部630と、損券や旧券を収容する損券収容部640、642とが設けられている。
図3の場合、手形等収容部630は、収容部630a、収容部630b及び収容部630cで構成されている。因みに手形等収容部630は、収容部の一例である。
収容部630a、630b及び630cは、集積方式の収容部であり、搬送部614を搬送されてきた手形や小切手は、収容済みの手形や小切手の上に積み重ねられる。
【0026】
手形等収容部630には、収容された手形や小切手を繰り出す機能が設けられている。
手形等収容部630には、手形や小切手以外の有価証券を収容することも可能である。例えば配当金領収書や定額小為替の収容も可能である。
損券収容部640は、集積方式の収容部であり、搬送部614から損券収容部640に送られた損券や旧券は、収容済みの損券や旧券の上に積み重ねられるようにして収容される。
【0027】
損券収容部642は、テープ巻取方式の収容部である。損券収容部642は、保留部620と同様、正逆両方向に回転可能なドラム642aを有している。損券や旧券は、ドラム642aに取り付けられている一対のテープの間に挟まれた状態で1枚ずつドラム本体に巻き取られて収容される。また、ドラム本体の逆回転により、巻き取られた損券や旧券が1枚ずつ繰り出され、搬送部614に送り出される。
【0028】
有価媒体処理装置600には、新券を収容する新券収容部652が設けられている。図3の場合、新券収容部652は、収容部652a、収容部652b、収容部652c及び収容部652dで構成されている。
収容部652a、652b、652c及び652dに収容されている新券は、繰出機構650a、650b、650c及び650dにより、搬送部614に1枚ずつ繰り出される。
【0029】
払出部660には、有価媒体が積み重なるように投出される。払出部660には、羽根車662が設けられている。装置内の有価媒体は、羽根車662の外周面に設けられた羽根と羽根の間に挟まれた状態で払出部660に送られる。図3の場合、羽根車662は、反時計回りに回転することにより、有価媒体を払出部660に投出する。
払出部660にはシャッタ661aが設けられており、操作者は、このシャッタ661aが開放状態のとき、払出部660に集積された有価媒体を取り出すことができる。また、払出部660の底部には、抜き取り検知部661bが設けられている。抜き取り検知部661bは、払出部660に集積された有価媒体の抜き取りを検知する。
【0030】
搬送部614には、搬送部614aと搬送部614bがある。
搬送部614aは、投入部610から投入された有価媒体を保留部620、手形等収容部630、損券収容部640、642に搬送する。
搬送部614bは、新券収容部652に収容された新券を払出部660に搬送する。
搬送部614aの搬送路と搬送部614bの搬送路は、互いに独立である。すなわち、搬送部614aは、図3に示す仮想線Lの右側に設けられ、搬送部614bは、同仮想線Lの左側に設けられる。
【0031】
搬送部614aと搬送部614bとは、接続箇所614pで接続されているが、それ以外の箇所では互いに独立である。
搬送部614bの経路上には、簡易識別部664が設けられている。簡易識別部664は、新券収容部652から繰り出された新券の金種を識別する。
有価媒体処理装置600の前面又は正面には扉618が設けられている。扉618は施錠されており、特定の権限を有する者だけが扉618を開けて装置内部にアクセスできる。
【0032】
図5は、有価媒体処理装置600の機能構成を説明するブロック図である。
図5に示す有価媒体処理装置600には、制御部680が設けられている。
制御部680は、プログラムを実行するCPUと、BIOS等を記憶するROMと、プログラムの作業領域として使用されるRAMとで構成される。
制御部680は、有価媒体処理装置600を構成する各部の動作を制御する。具体的には、制御部680は、搬送部614の搬送動作、投入部610、手形等収容部630、損券収容部640、642、新券収容部652、保留部620、払出部660等の機構の動作、撮像部616の撮像動作、印字部617(図3参照)によるファイル名の印字動作等を制御する。
【0033】
制御部680は、手形等収容部630に収容された手形や小切手、損券収容部640、642に収容された損券、新券収容部652に収容された新券の枚数や金額等のデータも管理する。
制御部680は、手形や小切手のデータイメージのセンター5(図1参照)への送信、送信されたデータイメージの個別取消等も管理する。
【0034】
記憶部682は、各制御に必要な設定値や管理の対象であるデータ等を格納する。記憶部682には、例えば収容媒体情報DB682a、手形や小切手のイメージデータ682b、イメージデータ等の送信ログ682cが格納される。
手形や小切手のイメージデータ682bは、1枚の手形や小切手につき、表(おもて)面と裏面のそれぞれについて格納される。すなわち、イメージデータ682bは、1枚の手形や小切手について少なくとも2つ取得される。
送信ログ682cは、センター5のサーバへのイメージデータ682bの送信の履歴である。収容媒体情報DB682aには、個々のイメージデータ682bに関連付けて送信日時等が記録されるが、送信ログ682cには、送信の成功や失敗を含む情報も記録される。
【0035】
制御部680は、通信部684を通じ、表示部710、操作部720及びプリンタ800と接続される。
本実施の形態の場合、表示部710及び操作部720は、タッチパネルである操作表示部700として実現される。タッチパネルの場合、表示部710は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであり、操作部720は、例えば静電容量式のタッチセンサである。
この他、制御部680は、バラ紙幣処理部100、束紙幣処理部200(図2参照)、バラ硬貨処理部300(図2参照)、包装硬貨処理部400(図2参照)及び損貨処理装置500(図2参照)とも接続される。
【0036】
<制御部の機能構成>
図6は、制御部680に設ける機能の一例を説明する図である。図6には、制御部680が有する機能のうち、手形や小切手のイメージデータのセンター5(図1参照)への送信に関連する機能を表している。
ここでの機能が、認証部680a、送信対象選択部680bと、種別識別部680cと、送信種別設定部680dと、印字制御部680eと、通信制御部680fと、照合部680gと、報知部680hである。これらの機能は、CPUによるプログラムの実行を通じて実現される。
【0037】
認証部680aは、操作表示部700を操作する操作者を認証する機能部である。認証部680aは、例えばカードリーダで読み取ったIDカードの情報により操作者を認証する。この他、認証部680aは、指紋認証、静脈認証、顔認証等の技術を使用してもよい。
送信対象選択部680bは、センター5のサーバに送信するイメージデータ682b(図5参照)の選択に関する機能に対応する。
【0038】
本実施の形態の場合、送信対象選択部680bは、投入部610から装置内に取り込まれた手形や小切手等に対応するイメージデータのうちセンター5に送信する対象を操作者の指定を通じて受け付ける。
このように、作業者が送信の対象であるイメージデータを個別に選択するモードを、以下「手動選択モード」という。
【0039】
この他、送信対象選択部680bには、事前の設定により、送信の対象であるイメージデータを自動で選択するモード、すなわち「自動選択モード」が用意されている。自動選択モードが有効である場合、送信対象選択部680bは、イメージデータから識別された情報に基づいて、送信の対象とするイメージデータを自動的に選択する。
また手動選択モードに「全選択ボタン」を設けてもよく、該ボタンを押下すると、イメージデータから識別された情報に基づいて、送信の対象とするイメージデータを自動的に全て選択するようにしてもよい。
送信対象選択部680bを、手動選択モードと自動選択モードのいずれで動作させるかは、作業者が操作表示部700(図2参照)を通じて指示する。
【0040】
本実施の形態における送信対象選択部680bには、送信対象とするイメージデータを選択する画面において、送信が許可されていない種別のイメージデータが操作者により選択された場合、注意を喚起する表示を実行する機能も備えられている。
注意を喚起する表示として、例えばダイアログボックスを使用する。注意を喚起するダイアログボックスが表示された後の動作は、事前の設定による。
【0041】
例えば送信種別設定部680dの設定を常に優先する場合、制御部680は、画面上での操作者による選択を無効とし、画面上の表示も選択状態に変更しない。
一方で、操作者による選択を優先する場合には、ダイアログの表示後も操作者による選択が維持されると、送信の対象としての選択を有効とし、画面上の表示も選択状態に変更してもよい。
【0042】
以上の機能は、送信の対象とするイメージデータを選択する画面において、送信が許可されていない種別のイメージデータの表示が、送信が許可されているイメージデータの表示と同じ場合に使用される。
もっとも、送信の対象が可能な種別のイメージデータと送信の対象から除外されている種別のイメージデータとで画面上の表示の態様を異ならせることも可能である。例えば送信の対象から除外されているイメージデータや関連する項目は、グレーアウト表示することで、送信の対象に選択できないことを、操作者に対して視覚的に示してもよい。
【0043】
また、本実施の形態で使用する送信対象選択部680bには、送信の対象とするイメージデータを選択する画面上において、撮像部616(図3参照)により取得されたイメージデータに、対応するファイル名を生成して表示する機能も設けられている。
本実施の形態におけるファイル名は、例えば手形の表(おもて)面に対応するイメージデータと裏面に対応するイメージデータを特定する60桁の文字と数字の組み合わせで与えられる。ファイル名は、イメージデータが読み取られる度に、制御部680が生成する。
【0044】
本実施の形態では、1枚の手形等の表(おもて)面と裏面とで共通のファイル名を発生するが、手形等の表(おもて)面と裏面とで別々のファイル名を発生してもよい。
本実施の形態の場合、画面上にプレビュー表示されるイメージデータのイメージには、対応するファイル名が合成される。イメージデータのイメージにファイル名が合成されることで、表示されているイメージデータのピンポイントでの読み出しや照合が可能になる。送信対象選択部680bは、選択部の一例である。
【0045】
種別識別部680cは、装置内に入金された手形や小切手の種別を識別する機能部である。具体的には、種別識別部680cは、入金された有価媒体に対応するイメージデータを画像処理し、有価媒体の種別、例えば手形、小切手、配当金領収書、定額小為替、付箋付き手形、付箋付き小切手、補箋付き手形、補箋付き小切手のいずれであるかを識別する。種別識別部680cは、識別部の一例である。
【0046】
送信種別設定部680dは、センター5への送信を許可する第一の種別と、センター5への送信を許可しない第二の種別のうち少なくとも一方を設定するための機能部である。送信種別設定部680dは、種別単位で送信の可否を設定する点で、イメージデータ単位で送信の対象を選択する送信対象選択部680bと異なる。
送信種別設定部680dは、設定部の一例である。
【0047】
図7は、送信種別設定部680dで使用する画面711の例を示す図である。画面711は、操作表示部700に表示される。画面711の表示は、メニュー画面等に設けられたボタンの操作を通じて実行される。
図7に示す画面711には、タイトル欄712と、操作者に求める操作を示すガイダンス欄713と、手形や小切手等の種類毎の設定欄714とが設けられている。
図7の場合、ガイダンス欄713には「センター(本店)に送信する手形・小切手の種別を設定します。チェックボックスにチェックを入れてください。」と表示されている。もっとも、この文面は一例である。
【0048】
図7に示す画面711には、イメージデータの送信に関する設定が可能な手形や小切手等の種類として、「手形、小切手」、「配当金領収書」、「定額小為替」、「付箋付き手形、小切手」、「補箋付き手形、小切手」、「傷んだ手形、小切手、定額小為替」、「その他」が示されている。
図7の場合、これらの種別別に送信の対象とする場合にチェックするチェックボックスと、送信の対象から除外する場合にチェックするチェックボックスとが設けられている。
【0049】
本実施の形態の場合、一度入れたチェックを外す場合には、チェックを入れたチェックボックスを再度チェックする。
また、同時に2つのチェックボックスにチェックを入れることは禁止されており、一方のチェックボックスにチェックが入っている状態で他方のチェックボックスがチェックされると、最後のチェックが優先され、先のチェックは取り消される。
【0050】
本実施の形態の場合、センター5に対するイメージデータの送信と、電子交換所3(図1参照)におけるイメージデータの交換とは別である。
このため、図7に示す例では、付箋や補箋が付けられていない手形と小切手、配当金領収書、定額小為替の3種類に対応するイメージデータが、センター5への送信の対象に設定されている。
【0051】
図7の例の場合、「送信する」のチェックボックスにチェックが入っている「手形、小切手」、「配当金領収書」、「定額小為替」が、送信の対象とする第一の種別の一例である。
一方、「送信しない」のチェックボックスにチェックが入っている「付箋付き手形、小切手」、「補箋付き手形、小切手」、「傷んだ手形、小切手、定額小為替」、「その他」が、送信の対象としない第二の種別の一例である。
【0052】
図6の説明に戻る。
印字制御部680eは、印字部617の制御を通じ、搬送路を搬送される手形や小切手の表(おもて)面と裏面のそれぞれに、イメージデータに対応するファイル名を印字する。具体的には、手形や小切手の表(おもて)面と裏面のそれぞれに共通のファイル名が印字される。
通信制御部680fは、操作者により選択されたイメージデータのセンター5(図1参照)への送信を制御する。
本実施の形態における通信制御部680fは、一度に送信する1又は複数のイメージデータに対応する手形や小切手の総枚数と金額の合計値を、送信データの付属データとして一緒に送信する機能を有している。
【0053】
通信制御部680fは、送信を急ぐ又は決済を急ぐ必要がある特定の手形や小切手に対応するイメージデータについて、その旨を示す専用のフラグ(以下では「緊急フラグ」という)を付加する機能も有している。
緊急フラグは、対応するイメージデータと一緒にセンター5に送信される他、収容媒体情報DB682a(図5参照)にも記録される。
もっとも、送信を急ぐ又は決済を急ぐ必要があることを示す情報は、対応するイメージデータのファイル名に含めることも可能である。例えば60桁のうちの特定の桁に緊急フラグを割り当ててもよい。
【0054】
通信制御部680fは、イメージデータがセンター5に送信された送信回を特定する情報を、収容媒体情報DB682aの管理データとして管理する機能も備えている。個々の送信は、例えば送信の日時、送信毎に付与される通し番号で構成される。
個々のイメージデータに対応する送信回を特定する情報を紐付けることで、特定の送信回に関連するイメージデータの抽出を容易に実現できる。
通信制御部680fは、通信部の一例である。
【0055】
照合部680gは、手形等収容部630から取り出される現物と、センター5に送信されたイメージデータとを照合する機能部である。具体的には、照合部680gは、投入部610に投入された手形や小切手の現物を撮像したイメージデータと、収容媒体情報DB682aに記憶されている送信済みのイメージデータとを照合する。
手形や小切手の現物から取得されたイメージデータに合致するイメージデータが収容媒体情報DB682aから見つかると、見つかったイメージデータに紐付けられている様々な情報の読み出しも可能になる。
【0056】
報知部680hは、手形等収容部630(図3参照)に収容されている手形や小切手の現物を装置内から取り出す場合に、取り出した手形や小切手に対応するイメージデータのうちセンター5に送信されていないイメージデータの存在を操作者に報知する機能を有している。
更に、報知部680hには、手形等収容部630(図3参照)に収容されている手形や小切手の現物を装置内から取り出す場合に、送信済みのイメージデータに対応する取り出した手形や小切手が装置内に残っていることを操作者に報知する機能も有している。
ここでの報知部680hは、報知部の一例である。
【0057】
本実施の形態の場合、手形や小切手の現物の取り出しは、手形等収容部630単位で実行される。また、個々の手形や小切手に対応するイメージデータは、収容された手形等収容部630を特定するID(以下「収容部ID」という)と紐付けられている。
このため、特定の収容部IDに収容されている手形や小切手の現物が装置外に取り出される場合、報知部680hは、収容部IDを通じて取り出された手形や小切手に対応するイメージデータが送信済みか否かを知ることができる。
【0058】
<収容媒体情報DBのデータ例>
図8は、記憶部682に格納された収容媒体情報DB682aのデータ例を説明する図である。
図8には、収容媒体情報データベース682aに格納される情報のうち、手形等収容部630に関する情報を示している。
図8に示す収容媒体情報データベース682aは、読み取りID、券種、入金日時、入金者ID、金額、収容部ID、送信ID、送信日時、ファイル名、緊急フラグ、イメージデータの項目で構成される。
【0059】
読み取りIDは、例えば読み取り順に発行される。
券種には、手形、小切手、配当金領収書、定額小為替等の情報が記録される。なお、券種は、入金画面で指定してもよいし、撮像部616(図3参照)で撮像されたイメージデータから画像認識の技術を用いて認識された結果を記録してもよい。
入金者IDは、手形や小切手等を入金した操作者のカードから読み取られるIDである。
金額は、手形や小切手等の額面であり、入金取引の画面で手入力される、又は、画像認識の技術により自動で入力される。
【0060】
収容部IDは、入金された手形や小切手等が収容された手形等収容部630を特定するIDである。具体的には、収容部630a、630b、630cを特定するIDが記録される。収容部IDは、装置内に収容されている手形や小切手等の取り出し時に必要になる。
送信IDは、イメージデータのセンター5(図1参照)への送信を識別する情報である。
ファイル名は、撮像部616で撮像された個々のイメージデータに付与される管理データである。本実施の形態におけるファイル名は、60桁で与えられる。なお、各桁には、意味が割り当てられている。
【0061】
図8の場合、ファイル名の欄には、表(おもて)面のイメージデータと裏面のイメージデータの両方を特定するファイル名が記録される。
もっとも、表(おもて)面のイメージデータと裏面のイメージデータを異なる行で管理する場合、ファイル名の欄には、対応するイメージデータのファイル名が1つだけ記録される。
緊急フラグは、機器トラブルや通信エラーにより送信が指示されたイメージデータが送信されないまま、送信の指示が発生した時刻から予め定めた時間が経過した場合や日付が変わった場合に自動的に付与される。
【0062】
また、緊急フラグは、操作者が手動で入力可能でもよい。例えば即座の決済が求められる場合等、イメージデータのセンター5への送信を急ぐために使用される。
なお、緊急フラグは、ファイル名に含めることも可能である。ファイル名に緊急フラグを含める場合、例えば既存のファイル名のうち緊急フラグに対応する桁の情報が書き換えられる。
【0063】
<処理動作>
<入金処理>
図9は、入金に関する処理動作例を説明するフローチャートである。図中に示す記号のSはステップを意味する。
なお、図9に示す処理動作は、制御部680(図5参照)がプログラムの実行を通じて実現する。
また、図9では、手形や小切手のイメージデータの取り込みとセンター5(図1参照)への送信について説明する。なお、図9に示す処理動作は、入金された手形や小切手を装置内に収容する場合を想定している。
【0064】
まず、制御部680は、カードリーダから操作者が所有するIDカードのIDを読み取る(ステップ101)。カードリーダは、例えば操作表示部700の近辺に設置されている。制御部680は、読み取ったIDに基づいて、操作者の権限等を確認する。
次に、制御部680は、操作表示部700のメニュー画面を通じ、操作者の選択した動作モードの情報を取得する。本実施の形態では、入金処理モードが選択される(ステップ102)。
【0065】
図10は、メニュー画面721の一例を説明する図である。
図10に示すメニュー画面721には、入金処理モードに対応する入金ボタン722と、イメージデータの送信モードに対応する券面イメージ送信ボタン723と、送信済みイメージデータの確認モードに対応する券面イメージ送信済み確認ボタン724が設けられている。
ここでは、入金ボタン722が操作者により操作される。
【0066】
図11は、入金画面731の一例を説明する図である。
図11に示す入金画面731のタイトル欄732には「入金」と表示されている。
入金画面731の左側には、表示項目の選択欄733が配置され、選択欄733の下には、完了ボタン736が配置されている。
また、入金画面731の右側上には、選択欄733で選択された項目に関する情報が表示される内容欄734が配置され、内容欄734の下には、テンキー欄735が配置されている。
【0067】
図11の場合、選択欄733には、伝票の種別の欄と、各伝票に関する明細欄が表示されている。図11では、「入金伝票」の項目の背景色が他の項目と異なる。この表示は、「入金伝票」の選択状態を表している。
内容欄734には、有価媒体処理装置600(図5参照)が取り扱った入出金の一覧が表示されている。
ここで、選択欄733で選択状態のタブを「他店券」に切り替えると、操作表示部700の表示は、図12に切り替わる。
【0068】
図12は、入金画面731の他の例を説明する図である。図12には、図11との対応部分に対応する符号を付して示している。
図12に示す選択欄733では、他店券の背景色が他の項目と異なり、選択状態である。
図12の場合、選択欄733の右側には、モード選択欄737が配置される。モード選択欄737の最上段には、入金情報を手入力とする場合に操作する「手入力」ボタンと、入金情報をイメージデータから読み取る場合に操作する「読取」ボタンが並んでいる。図12では、「読取」ボタンが選択状態である。
【0069】
「手入力」ボタンと「読取」ボタンの下には、読取りモードの選択欄が表示される。図12の例では、キャリアシートなしの読取モードを表す「証票」、キャリアシートありの読取モードを表す「証票(キャリアシート)」、補箋付き手形の読取モードを表す「補箋付手形」が表示されている。
なお、モード選択欄737の右側には、読取モードの説明欄738が配置されている。
キャリアシートとは、付箋付きや破れ、汚れがある手形や小切手を挟み込むために用いる透明なファイルである。
図12においては、いずれかの読取モードが選択された状態で完了ボタン736が押下されることで、有価媒体を投入する準備が完了する。
【0070】
図9の説明に戻る。
前述したように、読取モードが選択され、有価媒体を投入する準備が完了すると、制御部680は、投入部610(図3参照)への有価媒体の投入を検知する(ステップ103)。図9では、有価媒体として手形や小切手を想定する。投入された手形や小切手等の有価媒体は、繰出機構612により1枚ずつ装置内に取り込まれ、搬送部614により搬送される。手形や小切手を含む有価媒体のイメージデータは、撮像部616の通過中に撮像される。
制御部680は、撮像されたイメージデータに基づいて搬送異常の有無を判定する(ステップ104)。ここでの搬送異常には、例えば斜行や二重送りがある。
【0071】
ステップ104で異常がないと判定された場合、制御部680は、イメージデータを記憶部682に記憶する(ステップ107)。なお、対応する有価媒体は、保留部620に搬送され、一時的に保留される(ステップ108)。
一方、ステップ104で異常があると判定された場合、制御部680は、この小切手を払出部660に搬送し、機体外に返却する(ステップ105)。続いて、制御部680は、次の有価媒体があるか否かを判定する(ステップ106)。因みに、ステップ106で肯定結果が得られた場合、制御部680は、ステップ103に戻る。一方、ステップ106で否定結果が得られた場合、制御部680は、処理を終了する。
【0072】
ステップ108の説明に戻る。
手形や小切手が保留部620に一時的に保留されると、制御部680は、操作表示部700に、取得したイメージデータを表示する(S109)。
次に、制御部680は、表示されたイメージデータに対応する手形や小切手の入金データを入力する(ステップ110)。
ここでの入金データの入力は、操作者が手入力する場合と制御部680が画像認識により自動入力する場合がある。
手入力の場合、操作者は、操作表示部700に表示されたイメージデータを目視し、印字されている金額等を手入力する。
自動入力の場合、制御部680は、イメージデータの中から金額等の領域を抽出し、文字認識により特定された金額等を入力する。
【0073】
本実施の形態における入金データは、有価媒体の券種や価値等を示すデータをいう。本実施形態の場合、入金データには、電子交換所3(図1参照)を特定する番号が含まれてもよい。
自動入力された金額等は、操作表示部700に表示される。操作者は、操作表示部700上で、自動入力された金額等をイメージデータとの比較により確認する。また、操作者は、誤りを見つけた場合、操作表示部700を通じ、誤りを修正する。
【0074】
次に、制御部680は、次の有価媒体があるか否かを判定する(ステップ111)。因みに、ステップ111で肯定結果が得られた場合、制御部680は、ステップ103に戻る。なお、ステップ111で肯定結果が得られている間、装置内に投入された手形や小切手は、保留部620に一時保留されている。
やがて、ステップ111で否定結果が得られると、制御部680は、操作表示部700に入金データの確定を求める旨を表示する。
表示と同時に、制御部680は、入金データの確定か否かを判定する(S112)。具体的には、制御部680は、操作表示部700が確定の指示を受け付けたか否かを判定する。
【0075】
ステップ112で肯定結果が得られると、制御部680は、保留部620に一時的に保留された手形や小切手等を、搬送部614により、1枚ずつ手形等収容部630に搬送し収容する(S113)。
この際、手形や小切手等は、投入順や種別に応じ、収容部630a、630b及び630cのいずれかに収容される。
なお、制御部680は、入力された入金データを記憶部682に記憶する(S114)。この後、制御部680は、例えば入金明細が印字された入金レシートを発行する。
【0076】
操作者が入金データを確定しなかった場合、制御部680は、ステップ112で否定結果を得る。
ステップ112で否定結果が得られた場合、制御部680は、入金データの修正か否かを判定する(ステップ115)。
ステップ115で否定結果が得られた場合、制御部680は、保留部620に保留されている手形や小切手等を払出部660に搬送し、機体外に返却する(ステップ116)。これにより、入金処理が終了する。
一方、ステップ115で肯定結果が得られた場合、制御部680は、入金データを修正し(ステップ117)、ステップ112に戻る。この後、制御部680は、前述した処理を繰り返す。
【0077】
<イメージデータの送信処理>
図13は、イメージデータの送信に関する処理動作例を説明するフローチャートである。
まず、制御部680は、カードリーダから操作者が所有するIDカードのIDを読み取る(ステップ201)。
次に、制御部680は、操作表示部700のメニュー画面を通じ、操作者の選択した動作モードの情報を取得する。本実施の形態では、券面イメージ送信モードが選択される(ステップ202)。
具体的には、メニュー画面721(図10参照)において、券面イメージ送信ボタン723(図10参照)が操作者により操作される。
【0078】
次に、制御部680は、センター5に送信するイメージデータを選択する操作を受け付ける(ステップ203)。図13の例は、送信対象とするイメージデータを操作者が手動で指定する場合を想定している。
図14は、イメージデータの選択に用いる選択画面741の一例を説明する図である。
図14に示す選択画面741のタイトル欄742には「券面イメージ選択」と表示されている。
【0079】
選択画面741の左側には、上から下に順番に、送信対象の選択状態を示す概要欄743、選択可能なイメージデータの候補欄744、「完了」ボタン745が配置されている。
また、選択画面741の右側には、選択された候補のイメージデータの拡大表示欄746と、選択を解除するための「選択解除」ボタン747が配置されている。
図14の例では、候補欄744に表示される候補のうち上から1番目と2番目が既に送信の対象に選択済みである。このため、各候補の右側には、墨付きカッコ付きの「選択済」が表示されている。
また、その選択状態を反映して、概要欄743の送信合計枚数に「2」、送信合計金額として、選択されたイメージデータに対応する手形等の金額の合計額が表示されている。
【0080】
図14では、拡大表示欄746に、候補欄744で選択されている候補のイメージデータが拡大表示されている。なお、本実施の形態の場合、拡大表示欄746に表示されるイメージデータには、撮像部616で有価媒体を撮像した際に付与されたファイル名が合成されている。
画像処理により合成されるファイル名は、操作者の既読性を妨げないように、イメージデータのうち文字や図形が存在しない領域部分にファイル名が配置される。図14では、左上隅に、ファイル名が合成されている。なお、ファイル名は60桁と長い。このため、ファイル名を1行で配置できない場合、ファイル名は、複数行に分割して配置される。
【0081】
図13の説明に戻る。
続いて、制御部680は、選択不可の種別を選択しているか否かを判定する(ステップ204)。選択不可の種別は、画面711(図7参照)で、「送信しない」にチェックが入れられている種別である。例えば付箋付きの手形や小切手のイメージデータは、送信の対象に選択することが許されていない。
【0082】
選択されたイメージデータに対応する手形や小切手の種別に選択不可の種別が含まれる場合、制御部680は、ステップ204で肯定結果を得る。
ステップ204で肯定結果が得られた場合、制御部680は、操作者に注意を喚起する(ステップ205)。例えば制御部680は、操作表示部700に注意を喚起するダイアログボックスを表示する。ダイアログボックスの表示は、文字による注意の喚起であるが、例えば選択されたイメージデータに関する表示を点滅させる、表示色を赤色に変更してもよい。なお、注意の喚起は、音声でも可能である。
注意を喚起した後、制御部680は、ステップ204に戻る。
【0083】
図15は、送信の対象には選択できない種別のイメージデータが選択された場合の表示例を説明する図である。図15には、図14との対応部分に対応する符号を付して示している。
図15の場合、操作者は、上から3番目の補箋付き手形のイメージデータを送信の対象に選択している。しかし、補箋付き手形は、画面711(図7参照)において、「送信しない」のチェックボックスにチェックが入っている。
【0084】
このため、図15の選択画面741では、画面中央に、操作者の注意を喚起するダイアログボックス751が表示されている。
図15に示すダイアログボックス751には、「注意」とのタイトルが付され、続いて「補箋付き手形はイメージデータによる送信が認められていません。送信の対象としますか?」との文が表示されている。
図15の例は、注意を喚起されても、操作者が送信を望む場合には、送信が可能である。このため、送信したい場合に操作する「はい」ボタン752と、注意に従い送信しない場合に操作する「いいえ」ボタン753が表示されている。
【0085】
なお、選択したイメージデータを送信する選択肢がない場合、ダイアログボックス751には、例えば「補箋付き手形はイメージデータによる送信が認められていません。選択を取り消します。」との文と、「はい」ボタンのみが表示される。
この場合、ダイアログボックス751を閉じるには、「はい」ボタンを操作するしかないので、操作者の直前の選択が取り消される。この例であれば、「補箋付き手形」の選択状態が解除される。
【0086】
なお、本実施の形態では、送信の対象に選択できないイメージデータの候補も選択可能な場合を想定しているが、選択自体を行えない選択画面741を用意することも可能である。
図16は、選択が許可されていない種別のイメージデータが、選択が可能なイメージデータとは異なる態様で表示される例を説明する図である。図16にも、図14との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0087】
図16の例では、上から3番目の補箋付き手形と同じく4番目のキャリアシート付きの証票がグレーアウト状態で表示されている。この表示例の場合、図13におけるステップ204とステップ205は不要となる。因みに、選択できないことが操作者に伝われば良いので、文字をグレーや赤とする等、選択が可能な候補とは区別が可能な態様で表示してもよい。また、選択できない候補は点滅で表示してもよい。
【0088】
図13の説明に戻る。
選択されたイメージデータに対応する手形や小切手の種別に選択不可の種別が含まれない場合、制御部680は、ステップ204で否定結果を得る。
ステップ204で否定結果が得られた場合、制御部680は、「完了」ボタン745(図14参照)の操作か否かを判定する(ステップ206)。
ステップ206で否定結果が得られている間、制御部680は、ステップ206の判定を繰り返す。
なお、選択画面741の左上隅の「取消」ボタンの操作が検知された場合、制御部680は、メニュー画面721に戻る。
【0089】
因みに、手形や小切手の種別の情報と事前の設定に基づいて、送信の対象であるイメージデータを自動で選択する自動選択モードが有効である場合、ステップ203~ステップ205をスキップして、ステップ206に移行する。
ステップ206で肯定結果が得られると、制御部680は、送信の対象であるイメージデータの選択を確定し、確定されたイメージデータの送信の可否を確認する(ステップ207)。
【0090】
図17は、選択画面741(図14参照)で「完了」ボタン745(図14参照)が操作された場合の表示例を示す図である。図17には、図14との対応部分に対応する符号を付して示している。
図17に示す選択画面741の場合、選択が完了した段階であるので、候補欄744には、送信の対象に確定された4つの候補だけが表示されている。
そして、選択画面741の画面中央には、送信の確認を求めるダイアログボックス761が表示される。また、「完了」ボタン745に代えて、「送信」ボタン748が表示される。なお、「選択解除」ボタン747は、表示されない。
【0091】
図17に示すダイアログボックス761には、確定した選択の情報と、送信の確認を求める文が表示される。具体的には、「合計枚数:4枚」、「合計金額:809,876円」、「イメージ送信します よろしいですか?」との文が表示されている。
また、ダイアログボックス761内には、操作者が送信を指示する場合に操作する「はい」ボタン762と、送信を取りやめる場合に操作する「いいえ」ボタン763が表示されている。
【0092】
図13の説明に戻る。
ダイアログボックス761(図17参照)が選択画面741に表示されると、制御部680は、送信の実行か否かを判定する(ステップ208)。
ステップ208で「いいえ」の場合、制御部680は、「完了」ボタン745が操作される前の段階に戻る。すなわち、イメージデータの選択が可能な状態に戻る。
一方、ステップ208で「はい」の場合、制御部680は、イメージデータの送信を実行する(ステップ209)。
【0093】
センター5(図1参照)へのイメージデータの送信後、制御部680は、送信ログを更新し(ステップ210)、同時に、収容媒体情報DB682a(図8参照)を更新する(ステップ211)。
具体的には、収容媒体情報DB682aに、送信ID、送信日時等が追記される。なお、機器トラブルや通信エラーによりイメージデータが送信されないまま、送信の指示が発生した時刻から予め定めた時間が経過した場合や日付が変わった場合、緊急フラグが自動的に付与される。当然ながら、この場合には、送信日時や送信IDは、収容媒体情報DB682aに記録されない。なお、送信ログには、送信が失敗に終わった送信イベントに関する情報が記録される。
【0094】
<送信済みイメージの確認処理>
図18は、送信済みイメージデータの確認に関する処理動作例を説明するフローチャートである。
まず、有価媒体処理装置600は、カードリーダから操作者が所有するIDカードのIDを読み取る(ステップ301)。
次に、制御部680は、操作表示部700のメニュー画面を通じ、操作者の選択した動作モードの情報を取得する。本実施の形態では、券面イメージ送信済み確認モードが選択される(ステップ302)。
具体的には、メニュー画面721(図10参照)において、券面イメージ送信済み確認ボタン724(図10参照)が操作者により操作される。
【0095】
次に、制御部680は、送信IDの一覧を表示する(ステップ303)。ここで、制御部680は、収容媒体情報DB682a(図8参照)にアクセスして送信IDを取得し、一覧表として表示する。
図19は、送信済みイメージデータの確認画面771の一例を説明する図である。
図19に示す確認画面771のタイトル欄772には「券面イメージ送信済み確認」と表示されている。
【0096】
タイトル欄772の下には、送信IDに関する情報が表示される概要欄773が配置される。
図19の場合、概要欄773は、番号、送信時間、送信合計枚数、送信合計金額、状況の各項目で構成される。
番号には、送信IDが記載される。図19の場合、2つの送信IDが記載されている。
送信IDの「0001」の送信時間は、「2020/09/15 10:10」であり、送信合計枚数は16枚、送信合計金額は「1,234,567,890」である。
送信IDの「0002」の送信時間は、「2020/09/15 15:20」であり、送信合計枚数は4枚、送信合計金額は「809,876」である。
ここでの送信合計枚数とは、イメージデータの数ではなく、イメージデータに対応する手形や小切手の枚数の総数である。
【0097】
図18の説明に戻る。
確認画面771(図19参照)が表示されると、制御部680は、送信IDの選択か否かを判定する(ステップ304)。
ステップ304で否定結果が得られている間、制御部680は、ステップ304の判定を繰り返す。
ステップ304で肯定結果が得られると、制御部680は、選択された送信IDの詳細を表示する(ステップ305)。
【0098】
図20は、送信IDに紐付けられている送信済みイメージデータの詳細画面781の一例を説明する図である。
図20に示す詳細画面781のタイトル欄782にも「券面イメージ送信済み確認」と表示されている。
詳細画面781の左側には、上から下に順番に、選択された送信IDに紐付けられている送信済みイメージデータの概要欄783、送信IDに紐付けられている送信済みイメージデータの情報欄784が配置されている。また、詳細画面781の右側には、情報欄784で選択されたイメージデータの拡大表示欄785が配置されている。
【0099】
図20に示す詳細画面781は、図19の確認画面771において送信IDの「0002」が選択された場合に対応する。このため、送信されたイメージデータの送信合計枚数は4枚である。
なお、拡大表示欄785には、情報欄784で選択されたイメージデータにファイル名が合成された状態で表示される。
拡大表示欄785の表示の内容は、情報欄784で選択されたイメージデータの選択に応じて変化する。
【0100】
なお、詳細画面781の左上隅の「取消」ボタンが操作されると、メニュー画面721(図10参照)に戻り、「戻る」ボタンが操作されると、送信IDを選択する確認画面771(図19参照)に戻る。
図18の説明に戻る。
制御部680は、「取消」ボタンの操作か否かを判定する(ステップ306)。ステップ306で否定結果が得られた場合、制御部680は、ステップ304に戻る。一方、ステップ306で肯定結果が得られた場合、制御部680は、一連の処理を終了する。
【0101】
<現物取り出し時の処理>
有価媒体処理装置600から、手形や小切手の現物を取り出したい場合、操作者は、例えば扉618を解錠して特定の手形等収容部630にアクセスし、収容されている手形や小切手の現物を装置の外に取り出す。
また例えば操作者は、手形等収容部630の番号を指定し、収容されている手形や小切手の現物の払出しを指示することにより、収容されている手形や小切手の現物を装置の外に取り出す。
【0102】
図21は、有価媒体処理装置600から手形や小切手の現物を取り出す場合の処理動作例を説明するフローチャートである。
図21に示す処理動作は、券面イメージ送信済み確認モード中に、送信済みイメージデータと装置内から取り出した現物との照合が指示された場合に実行される。
まず、制御部680は、記憶部682に記憶されているイメージデータを照合用のマスタデータとして取得する(ステップ401)。ここでのイメージデータは、例えば詳細画面781の情報欄784に表示されているイメージデータである。
【0103】
図22は、手形や小切手の現物と送信済みイメージデータとの照合時に表示される照合画面791の一例を説明する図である。
図22に示す照合画面791のタイトル欄792も「券面イメージ送信済み確認」である。
照合画面791の場合、左側の一番上の段には、操作者に求める操作を説明する説明文793が表示される。図22の場合、「画面を確認しながら小切手をセットしてください」と表示されている。
【0104】
ここでの、セットとは、投入部610(図3参照)への手形や小切手等の投入のことである。
説明文793で「小切手」を特定しているのは、詳細画面794で選択されている送信済みのイメージデータが小切手だからである。
なお、照合画面791の右側には、イメージデータの拡大表示欄795が配置されている。
【0105】
図21の説明に戻る。
照合画面791が表示されると、制御部680は、撮像部616で手形等を読み取ったか否かを判定する(ステップ402)。
ステップ402で否定結果が得られている間、制御部680は、ステップ402の判定を繰り返す。
一方、ステップ402で肯定結果が得られた場合、制御部680は、撮像部616で読み取った手形等のイメージデータとマスタデータとを照合する(ステップ403)。
【0106】
本実施の形態の場合、現物である手形や小切手等には、ファイル名が印刷済みである。
一方のマスタデータは、手形や小切手が投入部610に初めて投入された時に取得されるので、ファイル名は含まれていない。なお、拡大表示欄795に表示されているイメージデータに含まれるファイル名は、画像処理により合成された情報である。
そこで、制御部680は、新たに取得されたイメージデータのうちファイル名を除き、マスタデータとの照合を実行する、又は、拡大表示欄795に表示されている画像をマスタデータを用いて照合を実行する。なお、照合の場合、投入部610に投入された小切手は、手形等収容部630に収容されることなく、そのまま払出部660から払い出される。
【0107】
続いて、制御部680は、両者が一致するか否かを判定する(ステップ404)。
ステップ404で肯定結果が得られた場合、制御部680は、投入部610に投入された手形等の一致を照合画面791に表示する(ステップ405)。
一方、ステップ404で否定結果が得られた場合、制御部680は、投入部610に投入された手形等の不一致を照合画面791に表示する(ステップ406)。
その後、制御部680は、照合画面791に手形等の交換を指示する(ステップ407)。
【0108】
次に、制御部680は、投入された手形等のイメージデータが送信済みか否かを判定する(ステップ408)。機器トラブルや通信エラーの他、予定された送信時刻の前に現物が取り出される場合、マスタデータと一致しても、イメージデータのセンター5(図1参照)への送信が完了していない場合がある。
ステップ408で否定結果が得られた場合、制御部680は、送信の確認を求めるダイアログボックスを表示する(ステップ409)。
【0109】
図23は、ステップ409で表示されるダイアログボックス801の一例を説明する図である。
図23の場合、操作表示部700にダイアログボックス801が表示されている。ダイアログボックス801には、「注意」とのタイトルと、「取り出された手形又は小切手のイメージデータは未送信の状態です。送信しますか?」との文が表示されている。
図23の例は、送信したい場合に操作する「はい」ボタン802と、送信しない場合に操作する「いいえ」ボタン803が表示されている。
【0110】
図21の説明に戻る。
ステップ408で肯定結果が得られた場合、又は、ステップ409の実行後、制御部680は、全ての読み取りの終了か否かを判定する(ステップ410)。この判定は、例えば操作者に対する問い合わせにより実行する。
ステップ410で否定結果が得られた場合、制御部680は、ステップ402に戻る。
一方、ステップ410で肯定結果が得られた場合、制御部680は、読み取られていない送信済みイメージがあるか否かを判定する(ステップ411)。
ステップ411で肯定結果が得られた場合、制御部680は、取り残しを表示する(ステップ412)。
【0111】
図24は、ステップ412で表示されるダイアログボックス811の一例を説明する図である。
図24の場合、操作表示部700にダイアログボックス811が表示されている。ダイアログボックス811には、「注意」とのタイトルと、「イメージデータが送信済みの手形又は小切手が収納庫に残っています。収納庫の番号はNo.003です。」との文が表示されている。
本実施の形態の場合、送信済みのイメージデータに対応する手形や小切手等の現物は、センター5に事後的に配送する運用を想定している。このため、配送漏れを防ぐ目的で、注意を喚起する。
【0112】
<実施の形態2>
本実施の形態の場合も、電子交換所システム1(図1参照)の概念構成は、実施の形態1と同じである。
ただし、金融機関の営業店4において、有価媒体のイメージデータの取り込みと送信に用いる端末が、実施の形態1と相違する。
図25は、実施の形態2で想定する有価媒体処理システム1000の外観例を説明する図である。本実施の形態で使用する有価媒体処理システム1000は、スキャナとプリンタを一体化した紙葉類処理装置を想定する。
【0113】
本実施の形態における有価媒体処理システム1000は、単体の装置で構成される。このため、有価媒体処理システム1000は、有価媒体処理装置の一例でもある。
図25に示す有価媒体処理システム1000は、ADF(=Auto Document Feeder)1010又はフラットヘッド1011を利用して手形や小切手をスキャンするスキャナと、ADF1010から取り込んだ手形や小切手にファイル名を印刷するプリンタ1012と、各種の設定データの登録や処理を指示する操作を行うためのタッチパネル式の操作表示部1013と、外部装置と通信するためにデータを記憶する記憶部1014とを有している。
【0114】
図26は、有価媒体処理システム1000の機能構成を説明するブロック図である。図26には、図5との対応部分に対応する符号を付して示している。
有価媒体処理システム1000は、ADF1010、フラットヘッド1011と、プリンタ1012と、操作表示部1013と、記憶部1014と、制御部1020と、通信部1040を有している。
制御部1020は、プログラムを実行するCPUと、BIOS等を記憶するROMと、プログラムの作業領域として使用されるRAMとで構成される。
【0115】
制御部1020が実行する機能は、実施の形態1における制御部680(図5参照)と同じである。すなわち、制御部1020は、認証部680a(図6参照)、送信対象選択部680b(図6参照)と、種別識別部680c(図6参照)と、送信種別設定部680d(図6参照)と、印字制御部680e(図6参照)と、通信制御部680f(図6参照)と、照合部680g(図6参照)と、報知部680h(図6参照)として機能する。
また、記憶部1014には、実施の形態1と同じく、収容媒体情報DB682a、手形や小切手のイメージデータ682b、イメージデータ等の送信ログ682cを記憶する。
【0116】
実施の形態2で使用する有価媒体処理システム1000の処理動作は、実施の形態1で説明した有価媒体処理装置600(図2参照)と同じである。このため、有価媒体処理システム1000の処理動作の説明は省略する。
なお、本実施の形態で想定する有価媒体処理システム1000は、実施の形態1で想定する有価媒体処理システム10(図2参照)に比して設置スペースが少なく済む。
【0117】
<他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は前述した実施の形態に記載の範囲に限定されない。前述した実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0118】
前述の実施の形態では、営業店に設置される有価媒体処理システム10(図2参照)又は1000(図25参照)からイメージデータの送信を受けたセンター5(図1参照)が電子交換所3(図1参照)に接続されているが、有価媒体処理システム10(図2参照)又は1000(図25参照)を電子交換所3に直接接続する運用も可能である。
また、イメージデータの送信先であるセンター5側のサーバは、電子交換所3に接続されているが、イメージデータの送信先であるセンター5側のサーバは、電子交換所3に接続されるサーバとは別でもよい。
【0119】
前述の実施の形態では、機器トラブルや通信エラー等でイメージデータが送信できない場合に、予め定めた条件を満たすと、緊急フラグが付与される例を説明したが、操作者の指示で緊急フラグを付与できるようにしてもよい。
例えば送信を急ぐ場合や決済を急ぐ場合には、操作者の指示によりイメージデータを送信できることが望ましい。また、緊急フラグは、イメージデータに紐づけてセンター5に送信する仕組みとすることにより、イメージデータの決済が期日に遅れる事故を回避できる。
【0120】
前述の実施の形態では、入金処理時に、撮像部616を通過した手形や小切手にファイル名が印字される例を説明したが、照合処理の時点で、イメージデータとの一致が確認された手形や小切手をプリンタ800に挿入してファイル名を印字してもよい。
【符号の説明】
【0121】
1…電子交換所システム、2、2A…金融機関システム、3…電子交換所、4…営業店、5…センター、10、1000…有価媒体処理システム、10A…紙幣処理装置、10B…硬貨処理装置、100…バラ紙幣処理部、200…束紙幣処理部、300…バラ硬貨処理部、400…包装硬貨処理部、500…損貨処理装置、600…有価媒体処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26