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特開2022-170063有価媒体処理システム、有価媒体処理装置、有価媒体処理方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170063
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】有価媒体処理システム、有価媒体処理装置、有価媒体処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20221102BHJP
   G07D 11/16 20190101ALI20221102BHJP
【FI】
G06Q40/04
G07D11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075941
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】岸本 奈々
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 秀樹
【テーマコード(参考)】
3E141
5L055
【Fターム(参考)】
3E141AA05
3E141BA06
3E141CB04
3E141EA10
3E141FH05
3E141FJ05
3E141FK06
5L055BB51
(57)【要約】
【課題】手形又は小切手のイメージデータを決済する交換所に接続された外部の装置に依頼したイメージデータによる取引を電話連絡により取り消す場合における有価媒体処理装置をユーザが操作する時間を短縮する。
【解決手段】有価媒体処理システムに、電子交換所で決済する手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータの少なくとも一方を外部装置に送信する送信部と、イメージデータを特定する情報を記憶する記憶部と、イメージデータを特定する情報を印刷する印刷部と、を設ける。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価媒体処理システムであって、
電子交換所で決済する手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータの少なくとも一方を外部装置に送信する送信部と、
前記イメージデータを特定する情報を記憶する記憶部と、
前記情報を印刷する印刷部と、
を有する有価媒体処理システム。
【請求項2】
電子交換所で決済する手形及び小切手の少なくとも一方を含む入金取引処理、及び、当該入金取引処理の取消処理を実行可能な制御部を更に有し、
前記制御部は、前記入金取引処理の取消処理を実行した場合、当該入金取引処理にかかる手形及び小切手の少なくとも一方のイメージデータに対し、取消処理が実行されたことを示す第一フラグを紐づける、
請求項1に記載の有価媒体処理システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記取消処理について外部へ連絡済みであることを示す第二フラグをさらに紐づけ可能となっている、
請求項2に記載の有価媒体処理システム。
【請求項4】
前記イメージデータを特定する前記情報は、ファイル名である、
請求項1に記載の有価媒体処理システム。
【請求項5】
前記ファイル名は、対応するイメージデータに合成されている、請求項4に記載の有価媒体処理システム。
【請求項6】
前記ファイル名は、対応する手形及び小切手の少なくとも一方の現物に印字されている、
請求項4に記載の有価媒体処理システム。
【請求項7】
前記イメージデータには、前記手形又は小切手の表面のイメージデータと、前記手形又は小切手の裏面のイメージデータが含まれ、
前記印刷部は、前記手形又は小切手の表面のイメージデータを特定する第一の情報と、前記手形又は小切手の裏面のイメージデータを特定する第二の情報とを印刷する、
請求項4に記載の有価媒体処理システム。
【請求項8】
前記ファイル名は、複数の属性情報の組み合わせから構成されており、
前記印刷部は、前記複数の属性情報をそれぞれ区別可能に印刷する、
請求項4~7のいずれか1項に記載の有価媒体処理システム。
【請求項9】
制御部と、操作者を認証する認証部を更に有し、
前記制御部は、前記操作者毎に、前記複数の属性情報の印刷有無を切り替える
請求項8に記載の有価媒体処理システム。
【請求項10】
データを処理する装置において実行される有価媒体処理方法において、
電子交換所で決済する手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータの少なくとも一方を外部装置に送信する処理と、
前記イメージデータを特定する情報を記憶部に記憶する処理と、
印刷部を制御して、前記情報を印刷する処理と、
を有する有価媒体処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
電子交換所で決済する手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータの少なくとも一方を外部装置に送信する機能と、
前記イメージデータを特定する情報を記憶部に記憶する機能と、
印刷部を制御して、前記情報を印刷する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項12】
有価媒体処理装置であって、
電子交換所で決済する手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータの少なくとも一方を外部装置に送信する送信部と、
前記イメージデータを特定する情報を記憶する記憶部と、
を有する有価媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価媒体処理システム、有価媒体処理装置、有価媒体処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、手形や小切手を決済したい場合、金融機関は、現物を手形交換所等に持ち込む必要がある。ただし、令和4年以降は、新たに設立される電子交換所に対し、手形や小切手のイメージデータを送信するだけで決済が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-60265号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“電子交換所の設立について”,[online],令和元年6月13日,一般社団法人全国銀行協会,[令和3年3月25日検索],インターネット<URL:https://www.zenginkyo.or.jp/news/2019/n061301/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子交換所の設立後は、金融機関の営業店に設置されたオープン出納機等により手形や小切手のイメージデータを取得し、取得されたイメージデータを、自行の後方センターのサーバ経由で電子交換所に送信する運用や取得されたイメージデータを、電子交換所に直接送信する運用が想定されている。以下では、自行の後方センターのサーバ経由で電子交換所に送信する運用を例に説明する。
ところで、実務上、センター側のサーバへのイメージデータの送信後に電子交換所における決済を取り消したい場合が起こり得る。取引の取り消しは、営業店からのセンター側への電話連絡により運用したいというニーズがある。
しかし、電話連絡による取引の取り消しに際しては、取り消しの対象であるイメージデータを正確に伝達する必要がある。送信されるイメージデータには、送信時にユニークなファイル名等の付与が想定されるが、これらの情報の伝言や確認の作業には時間を要することが容易に想像される。
また、これらの情報は、イメージデータを取り込んだオープン出納機等の操作画面上に表示する仕様の採用が想定されるが、電話連絡による取引の取り消しの間、オープン出納機等が専有されることになると、他の業務への影響が大きくなる。
【0006】
本発明は、手形又は小切手のイメージデータを決済する交換所に接続された外部の装置に依頼したイメージデータによる取引を電話連絡により取り消す場合における有価媒体処理装置をユーザが操作する時間の短縮を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、有価媒体処理システムであって、電子交換所で決済する手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータの少なくとも一方を外部装置に送信する送信部と、前記イメージデータを特定する情報を記憶する記憶部と、前記情報を印刷する印刷部と、を有する有価媒体処理システムである。
請求項2に記載の発明は、電子交換所で決済する手形及び小切手の少なくとも一方を含む入金取引処理、及び、当該入金取引処理の取消処理を実行可能な制御部を更に有し、前記制御部は、前記入金取引処理の取消処理を実行した場合、当該入金取引処理にかかる手形及び小切手の少なくとも一方のイメージデータに対し、取消処理が実行されたことを示す第一フラグを紐づける、請求項1に記載の有価媒体処理システムである。
請求項3に記載の発明は、前記制御部は、前記取消処理について外部へ連絡済みであることを示す第二フラグをさらに紐づけ可能となっている、請求項2に記載の有価媒体処理システムである。
請求項4に記載の発明は、前記イメージデータを特定する前記情報は、ファイル名である、請求項1に記載の有価媒体処理システムである。
請求項5に記載の発明は、前記ファイル名は、対応するイメージデータに合成されている、請求項4に記載の有価媒体処理システムである。
請求項6に記載の発明は、前記ファイル名は、対応する手形及び小切手の少なくとも一方の現物に印字されている、請求項4に記載の有価媒体処理システムである。
請求項7に記載の発明は、前記イメージデータには、前記手形又は小切手の表面のイメージデータと、前記手形又は小切手の裏面のイメージデータが含まれ、前記印刷部は、前記手形又は小切手の表面のイメージデータを特定する第一の情報と、前記手形又は小切手の裏面のイメージデータを特定する第二の情報とを印刷する、請求項4に記載の有価媒体処理システムである。
請求項8に記載の発明は、前記ファイル名は、複数の属性情報の組み合わせから構成されており、前記印刷部は、前記複数の属性情報をそれぞれ区別可能に印刷する、請求項4~7のいずれか1項に記載の有価媒体処理システムである。
請求項9に記載の発明は、制御部と、操作者を認証する認証部を更に有し、前記制御部は、前記操作者毎に、前記複数の属性情報の印刷有無を切り替える請求項8に記載の有価媒体処理システムである。
請求項10に記載の発明は、データを処理する装置において実行される有価媒体処理方法において、電子交換所で決済する手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータの少なくとも一方を外部装置に送信する処理と、前記イメージデータを特定する情報を記憶部に記憶する処理と、印刷部を制御して、前記情報を印刷する処理と、を有する有価媒体処理方法である。
請求項11に記載の発明は、コンピュータに、電子交換所で決済する手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータの少なくとも一方を外部装置に送信する機能と、前記イメージデータを特定する情報を記憶部に記憶する機能と、印刷部を制御して、前記情報を印刷する機能と、を実現させるためのプログラムである。
請求項12に記載の発明は、有価媒体処理装置であって、電子交換所で決済する手形のイメージデータ及び小切手のイメージデータの少なくとも一方を外部装置に送信する送信部と、前記イメージデータを特定する情報を記憶する記憶部と、を有する有価媒体処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、手形又は小切手のイメージデータを決済する交換所に接続された外部の装置に依頼したイメージデータによる取引を電話連絡により取り消す場合における有価媒体処理装置をユーザが操作する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1で想定する電子交換所システムの概念構成を示す図である。
図2】金融機関の営業店に設置される有価媒体処理システムの外観例を説明する図である。
図3】有価媒体処理装置の構成例を説明する図である。
図4】印字部によるファイル名の印字を説明する図である。
図5】有価媒体処理装置の機能構成を説明するブロック図である。
図6】制御部に設ける機能の一例を説明する図である。
図7】送信種別設定部で使用する画面の例を示す図である。
図8】記憶部に格納された収容媒体情報DBのデータ例を説明する図である。
図9】入金に関する処理動作例を説明するフローチャートである。
図10】メニュー画面の一例を説明する図である。
図11】入金画面の一例を説明する図である。
図12】入金画面の他の例を説明する図である。
図13】イメージデータの送信に関する処理動作例を説明するフローチャートである。
図14】イメージデータの選択に用いる選択画面の一例を説明する図である。
図15】選択画面で「完了」ボタンが操作された場合の表示例を示す図である。
図16】送信済みイメージデータの確認に関する処理動作例を説明するフローチャートである。
図17】送信済みイメージデータの確認画面の一例を説明する図である。
図18】送信IDに紐付けられている送信済みイメージデータの詳細画面の一例を説明する図である。
図19】イメージデータをセンターに送信した後に取引を取り消す場合の処理動作例を説明するフローチャートである。
図20】個別取引取消画面の一例を説明する図である。
図21】取消の対象であるイメージデータの特定に使用される取消画面の一例を説明する図である。
図22】イメージデータによる取引が取り消された手形や小切手の装置外への取り出しを支援する取出支援画面の一例を説明する図である。
図23】取引取消後の送信済みイメージデータの詳細画面の一例を説明する図である。
図24】「電話連絡用印字」ボタンの操作を受け付けた場合に表示されるプレビュー画面の一例を説明する図である。
図25】レシートの印字例を説明する図である。
図26】電話連絡の後に送信済みイメージデータの詳細画面を表示させた状態を説明する図である。
図27】「連絡済み」ボタンの押下後に表示される送信済みイメージデータの詳細画面の一例を説明する図である。
図28】実施の形態2で想定する有価媒体処理システムの外観例を説明する図である。
図29】有価媒体処理システムの機能構成を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
各実施の形態では、硬貨、紙幣、手形、小切手、配当金領収書、定額小為替等の有価証券を「有価媒体」という。また、硬貨と紙幣を総称する場合、「貨幣」という。
【0011】
<実施の形態1>
<システムの構成>
図1は、実施の形態1で想定する電子交換所システム1の概念構成を示す図である。
本実施の形態で想定する電子交換所システム1は、イメージデータに変換された手形や小切手の交換に使用される。
図1に示す電子交換所システム1は、システムに参加する金融機関システム2A、2B、2Cと、電子交換所3とで構成されている。
【0012】
図1では、金融機関を区別して金融機関A、金融機関B、金融機関Cと表記し、対応するシステムを金融機関システム2A、2B、2Cという。以下では、個々の金融機関システム2A、2B、2Cを区別しない場合、金融機関システム2という。
金融機関システム2では、持ち込まれた手形や小切手のイメージデータへの変換、イメージデータの電子交換所3への送信、電子交換所3からのイメージデータの受信が実行される。
【0013】
電子交換所3は、支払い元である金融機関Cから受信した手形や小切手のイメージデータを、受け取り先である金融機関Aに送信する機能を提供する。この手形や小切手に対応するイメージデータの送受信により、手形や小切手の額面価値の交換、すなわち決済が実現される。
図1の場合、金融機関システム2は、いずれも複数の営業店4と1つのセンター5で構成される。図1では、電子交換所3に接続されたサーバが設置されている施設を「センター」という。ここでのサーバは、手形や小切手のイメージデータの送信先となる外部装置の一例である。
【0014】
電子交換所3に接続されたサーバが設置されている施設は、1つの金融機関に複数あってもよい。その場合、1つの金融機関には、複数のセンター5が設けられる。
営業店4には、手形や小切手の現物が持ち込まれる。営業店4に持ち込まれた手形や小切手は、イメージデータに変換され、センター5に送信される。
センター5は、営業店4から受信されたイメージデータを保管し、予め定めたタイミングで電子交換所3に送信する。
言うまでもなく、金融機関の数は、3つに限らない。また、電子交換所3は、複数存在してもよい。
【0015】
<有価媒体処理システムの構成>
図2は、金融機関の営業店4に設置される有価媒体処理システム10の外観例を説明する図である。実施の形態における有価媒体処理システム10は、例えばオープン出納機である。
図2に示す有価媒体処理システム10は、バラ紙幣処理部100と束紙幣処理部200からなる紙幣処理装置10Aと、バラ硬貨処理部300と包装硬貨処理部400からなる硬貨処理装置10Bと、硬貨処理装置10B等による機械受付ができない損貨および記念硬貨を処理する損貨処理装置500と、紙幣処理装置10A等による機械受付ができない損券、手形、小切手等を処理する有価媒体処理装置600とを備えている。
【0016】
概略直方体形状の紙幣処理装置10A及び硬貨処理装置10Bの上面には、操作表示部700とプリンタ800が、それぞれ配置されている。このプリンタ800は、特許請求の範囲に記載される印刷部の一例である。
操作表示部700は、例えばタッチパネルで構成される。操作者は、操作表示部700を通じて前述した装置を操作する。
また、操作者は、操作表示部700を通じて各種の情報を確認し、必要な情報をプリンタ800から出力させる。
また、有価媒体処理システム10は、例えば同じ施設内の管理コンピュータと通信可能でもよい。ここでの管理コンピュータは、窓口にある窓口端末等の他の装置と接続されている。
【0017】
<有価媒体処理装置の構成例>
図3は、有価媒体処理装置600の構成例を説明する図である。図3には、有価媒体処理装置600の内部構造を示している。
図3の場合、紙面に向かって左側が有価媒体処理装置600の前面又は正面であり、同じく紙面に向かって右側が有価媒体処理装置600の背面である。因みに、操作者は、有価媒体処理装置600の前面又は正面側から有価媒体処理システム10を操作する。
【0018】
図3に示す有価媒体処理装置600には、手形や小切手等の有価媒体を装置内に投入するための投入部610と、機体内に収容された有価媒体を機体外に払い出すための払出部660とが設けられている。
投入部610と払出部660は、有価媒体処理装置600の前面側に設けられている。
投入部610には、繰出機構612が設けられている。繰出機構612は、束の状態で投入部610に投入された有価媒体を、1枚ずつ順番に装置内に繰り出す。搬送部614は、繰出機構612から1枚ずつ繰り出される有価媒体を1枚ずつ搬送する機構である。
【0019】
搬送部614には、撮像部616が設けられている。撮像部616は、搬送中の有価媒体を撮像し、イメージデータを取得する。本実施の形態における撮像部616は、有価媒体の表(おもて)面と裏面とを別々に撮像する。このため、1枚の有価媒体について、表(おもて)面のイメージデータと裏面のイメージデータが別々に取得される。1枚の有価媒体の表(おもて)面のイメージデータのファイル名と、裏面のイメージデータのファイル名とは異なっている。
【0020】
もっとも、表(おもて)面のイメージデータと裏面のイメージデータに同じファイル名を付与することも可能である。その場合、表(おもて)面のイメージデータと裏面のイメージデータは、1つのデータファイルの1ページ目と2ページ目を構成する。
本実施の形態の場合、ファイル名は、例えば60桁の文字と数字で構成される。桁数は一例である。本実施の形態の場合、各桁には、記録する情報が対応付けられている。なお、撮像部616には、撮像時に有価媒体の紙面を照明する光源も設けられる。
【0021】
撮像部616を通過した有価媒体は、保留部620に一時的に保留される。
保留部620は、有価媒体をテープに挟んで巻き取る方式(すなわちテープ巻取方式)を採用する。
保留部620は、正逆両方向に回転可能なドラム620aを有している。ドラム620aには、一対のテープが取り付けられており、ドラム620aの回転に応じ、一対のテープがドラム本体に巻き取られたり、送り出されたりする。
【0022】
有価媒体は、一対のテープの間に挟まれた状態で1枚ずつドラム本体に巻き取られて収容される。また、ドラム本体の逆回転により、巻き取られた有価媒体が1枚ずつ繰り出され、搬送部614に送り出される。
本実施の形態の場合、撮像部616から保留部620に至る搬送路上には、印字部617が配置される。印字部617は、撮像部616で読み取られたイメージデータに付与されたファイル名を、搬送中の手形や小切手の表(おもて)面と裏面のそれぞれに対応付けて印字する。ファイル名を印字する部位は、既に印字されている他の文字等を避けるように定められる。
【0023】
ファイル名は、有価媒体処理装置600が入金処理モードで動作する場合に、イメージデータが取得されると発生される。
一方、有価媒体処理装置600が入金処理モード以外で動作する場合、例えば照合モードで動作する場合、撮像部616が投入された手形や小切手等のイメージデータを取得しても、ファイル名は発生されない。
【0024】
本実施の形態の場合、印字部617は、搬送路の両面に配置され、手形や小切手の表(おもて)面と裏面の両方に、各面に対応するファイル名を一度に印字する。
なお、印字部617は、片面側のみに設け、搬送路上で表(おもて)面と裏面の向きを入れ替える前と入れ替えた後のそれぞれにおいてファイル名を印字してもよい。印字部617は、ファイル名を印字する印刷部の一例である。
図4は、印字部617によるファイル名の印字を説明する図である。図中の矢印は、搬送部614による搬送の向きを表している。図4の場合、印字部617の上流側に位置する小切手にはファイル名が印字されていないが、印字部617を通過した小切手の左上隅にはファイル名が印字されている。
【0025】
図3の説明に戻る。
有価媒体処理装置600には、手形や小切手を収容する手形等収容部630と、損券や旧券を収容する損券収容部640、642とが設けられている。
図3の場合、手形等収容部630は、収容部630a、収容部630b及び収容部630cで構成されている。因みに手形等収容部630は、収容部の一例である。
収容部630a、630b及び630cは、集積方式の収容部であり、搬送部614を搬送されてきた手形や小切手は、収容済みの手形や小切手の上に積み重ねられる。
【0026】
手形等収容部630には、収容された手形や小切手を繰り出す機能が設けられている。
手形等収容部630には、手形や小切手以外の有価証券を収容することも可能である。例えば配当金領収書や定額小為替の収容も可能である。
損券収容部640は、集積方式の収容部であり、搬送部614から損券収容部640に送られた損券や旧券は、収容済みの損券や旧券の上に積み重ねられるようにして収容される。
【0027】
損券収容部642は、テープ巻取方式の収容部である。損券収容部642は、保留部620と同様、正逆両方向に回転可能なドラム642aを有している。損券や旧券は、ドラム642aに取り付けられている一対のテープの間に挟まれた状態で1枚ずつドラム本体に巻き取られて収容される。また、ドラム本体の逆回転により、巻き取られた損券や旧券が1枚ずつ繰り出され、搬送部614に送り出される。
【0028】
有価媒体処理装置600には、新券を収容する新券収容部652が設けられている。図3の場合、新券収容部652は、収容部652a、収容部652b、収容部652c及び収容部652dで構成されている。
収容部652a、652b、652c及び652dに収容されている新券は、繰出機構650a、650b、650c及び650dにより、搬送部614に1枚ずつ繰り出される。
【0029】
払出部660には、有価媒体が積み重なるように投出される。払出部660には、羽根車662が設けられている。装置内の有価媒体は、羽根車662の外周面に設けられた羽根と羽根の間に挟まれた状態で払出部660に送られる。図3の場合、羽根車662は、反時計回りに回転することにより、有価媒体を払出部660に投出する。
払出部660にはシャッタ661aが設けられており、操作者は、このシャッタ661aが開放状態のとき、払出部660に集積された有価媒体を取り出すことができる。また、払出部660の底部には、抜き取り検知部661bが設けられている。抜き取り検知部661bは、払出部660に集積された有価媒体の抜き取りを検知する。
【0030】
搬送部614には、搬送部614aと搬送部614bがある。
搬送部614aは、投入部610から投入された有価媒体を保留部620、手形等収容部630、損券収容部640、642に搬送する。
搬送部614bは、新券収容部652に収容された新券を払出部660に搬送する。
搬送部614aの搬送路と搬送部614bの搬送路は、互いに独立である。すなわち、搬送部614aは、図3に示す仮想線Lの右側に設けられ、搬送部614bは、同仮想線Lの左側に設けられる。
【0031】
搬送部614aと搬送部614bとは、接続箇所614pで接続されているが、それ以外の箇所では互いに独立である。
搬送部614bの経路上には、簡易識別部664が設けられている。簡易識別部664は、新券収容部652から繰り出された新券の金種を識別する。
有価媒体処理装置600の前面又は正面には扉618が設けられている。扉618は施錠されており、特定の権限を有する者だけが扉618を開けて装置内部にアクセスできる。
【0032】
図5は、有価媒体処理装置600の機能構成を説明するブロック図である。
図5に示す有価媒体処理装置600には、制御部680が設けられている。
制御部680は、プログラムを実行するCPUと、BIOS等を記憶するROMと、プログラムの作業領域として使用されるRAMとで構成される。
制御部680は、有価媒体処理装置600を構成する各部の動作を制御する。具体的には、制御部680は、搬送部614の搬送動作、投入部610、手形等収容部630、損券収容部640、642、新券収容部652、保留部620、払出部660等の機構の動作、撮像部616の撮像動作、印字部617(図3参照)によるファイル名の印字動作等を制御する。
【0033】
制御部680は、手形等収容部630に収容された手形や小切手、損券収容部640、642に収容された損券、新券収容部652に収容された新券の枚数や金額等のデータも管理する。
制御部680は、手形や小切手のデータイメージのセンター5(図1参照)への送信、送信されたデータイメージの個別取消等も管理する。
【0034】
記憶部682は、各制御に必要な設定値や管理の対象であるデータ等を格納する。記憶部682には、例えば収容媒体情報DB682a、手形や小切手のイメージデータ682b、イメージデータ等の送信ログ682cが格納される。
手形や小切手のイメージデータ682bは、1枚の手形や小切手につき、表(おもて)面と裏面のそれぞれについて格納される。すなわち、イメージデータ682bは、1枚の手形や小切手について少なくとも2つ取得される。
送信ログ682cは、センター5のサーバへのイメージデータ682bの送信の履歴である。収容媒体情報DB682aには、個々のイメージデータ682bに関連付けて送信日時等が記録されるが、送信ログ682cには、送信の成功や失敗を含む情報も記録される。
【0035】
制御部680は、通信部684を通じ、表示部710、操作部720及びプリンタ800と接続される。
本実施の形態の場合、表示部710及び操作部720は、タッチパネルである操作表示部700として実現される。タッチパネルの場合、表示部710は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであり、操作部720は、例えば静電容量式のタッチセンサである。
この他、制御部680は、バラ紙幣処理部100、束紙幣処理部200(図2参照)、バラ硬貨処理部300(図2参照)、包装硬貨処理部400(図2参照)及び損貨処理装置500(図2参照)とも接続される。
【0036】
<制御部の機能構成>
図6は、制御部680に設ける機能の一例を説明する図である。図6には、制御部680が有する機能のうち、手形や小切手のイメージデータのセンター5(図1参照)への送信に関連する機能を表している。
ここでの機能が、認証部680a、送信対象選択部680bと、種別識別部680cと、送信種別設定部680dと、印字制御部680eと、通信制御部680fと、取消受付部680gである。これらの機能は、CPUによるプログラムの実行を通じて実現される。
【0037】
認証部680aは、操作表示部700を操作する操作者を認証する機能部である。認証部680aは、例えばカードリーダで読み取ったIDカードの情報により操作者を認証する。この他、認証部680aは、指紋認証、静脈認証、顔認証等の技術を使用してもよい。
送信対象選択部680bは、センター5のサーバに送信するイメージデータ682b(図5参照)の選択に関する機能に対応する。
【0038】
本実施の形態の場合、送信対象選択部680bは、投入部610から装置内に取り込まれた手形や小切手等に対応するイメージデータのうちセンター5に送信する対象を操作者の指定を通じて受け付ける。
このように、操作者が送信の対象であるイメージデータを個別に選択するモードを、以下「手動選択モード」という。
【0039】
この他、送信対象選択部680bには、事前の設定により、送信の対象であるイメージデータを自動で選択するモード、すなわち「自動選択モード」が用意されている。自動選択モードが有効である場合、送信対象選択部680bは、イメージデータから識別された情報に基づいて、送信の対象とするイメージデータを自動的に選択する。
また手動選択モードに「全選択ボタン」を設けてもよく、該ボタンを押下すると、イメージデータから識別された情報に基づいて、送信の対象とするイメージデータを自動的に全て選択するようにしてもよい。
送信対象選択部680bを、手動選択モードと自動選択モードのいずれで動作させるかは、操作者が操作表示部700(図2参照)を通じて指示する。
【0040】
本実施の形態における送信対象選択部680bには、送信対象とするイメージデータを選択する画面において、送信が許可されていない種別のイメージデータが操作者により選択された場合、注意を喚起する表示を実行する機能も備えられている。
注意を喚起する表示として、例えばダイアログボックスを使用する。注意を喚起するダイアログボックスが表示された後の動作は、事前の設定による。
【0041】
例えば送信種別設定部680dの設定を常に優先する場合、制御部680は、画面上での操作者による選択を無効とし、画面上の表示も選択状態に変更しない。
一方で、操作者による選択を優先する場合には、ダイアログの表示後も操作者による選択が維持されると、送信の対象としての選択を有効とし、画面上の表示も選択状態に変更してもよい。
【0042】
以上の機能は、送信の対象とするイメージデータを選択する画面において、送信が許可されていない種別のイメージデータの表示が、送信が許可されているイメージデータの表示と同じ場合に使用される。
もっとも、送信の対象が可能な種別のイメージデータと送信の対象から除外されている種別のイメージデータとで画面上の表示の態様を異ならせることも可能である。例えば送信の対象から除外されているイメージデータや関連する項目は、グレーアウト表示することで、送信の対象に選択できないことを、操作者に対して視覚的に示してもよい。
【0043】
また、本実施の形態で使用する送信対象選択部680bには、送信の対象とするイメージデータを選択する画面上において、撮像部616(図3参照)により取得されたイメージデータに、対応するファイル名を合成して表示する機能も設けられている。
本実施の形態におけるファイル名は、例えば60桁の文字と数字の組み合わせで与えられる。ファイル名は、イメージデータが読み取られる度に、制御部680が発生する。
【0044】
本実施の形態では、1枚の手形等の表(おもて)面と裏面とで共通のファイル名を発生させているが、手形等の表(おもて)面と裏面とで別々のファイル名を発生させてもよい。
本実施の形態の場合、画面上にプレビュー表示されるイメージデータのイメージには、対応するファイル名が合成される。イメージデータのイメージにファイル名が合成されることで、表示されているイメージデータのピンポイントでの読み出しや照合が可能になる。送信対象選択部680bは、選択部の一例である。
【0045】
種別識別部680cは、装置内に入金された手形や小切手の種別を識別する機能部である。具体的には、種別識別部680cは、入金された有価媒体に対応するイメージデータを画像処理し、有価媒体の種別、例えば手形、小切手、配当金領収書、定額小為替、付箋付き手形、付箋付き小切手、補箋付き手形、補箋付き小切手のいずれであるかを識別する。種別識別部680cは、識別部の一例である。
【0046】
送信種別設定部680dは、センター5への送信を許可する第一の種別と、センター5への送信を許可しない第二の種別のうち少なくとも一方を設定するための機能部である。送信種別設定部680dは、種別単位で送信の可否を設定する点で、イメージデータ単位で送信の対象を選択する送信対象選択部680bと異なる。
送信種別設定部680dは、設定部の一例である。
【0047】
図7は、送信種別設定部680dで使用する画面711の例を示す図である。画面711は、操作表示部700に表示される。画面711の表示は、メニュー画面等に設けられたボタンの操作を通じて実行される。
図7に示す画面711には、タイトル欄712と、操作者に求める操作を示すガイダンス欄713と、手形や小切手等の種類毎の設定欄714とが設けられている。
図7の場合、ガイダンス欄713には「センター(本店)に送信する手形・小切手の種別を設定します。チェックボックスにチェックを入れてください。」と表示されている。もっとも、この文面は一例である。
【0048】
図7に示す画面711には、イメージデータの送信に関する設定が可能な手形や小切手等の種類として、「手形、小切手」、「配当金領収書」、「定額小為替」、「付箋付き手形、小切手」、「補箋付き手形、小切手」、「傷んだ手形、小切手、定額小為替」、「その他」が示されている。
図7の場合、これらの種別別に送信の対象とする場合にチェックするチェックボックスと、送信の対象から除外する場合にチェックするチェックボックスとが設けられている。
【0049】
本実施の形態の場合、一度入れたチェックを外す場合には、チェックを入れたチェックボックスを再度チェックする。
また、同時に2つのチェックボックスにチェックを入れることは禁止されており、一方のチェックボックスにチェックが入っている状態で他方のチェックボックスがチェックされると、最後のチェックが優先され、先のチェックは取り消される。
【0050】
本実施の形態の場合、センター5に対するイメージデータの送信と、電子交換所3(図1参照)におけるイメージデータの交換とは別である。
このため、図7に示す例では、付箋や補箋が付けられていない手形と小切手、配当金領収書、定額小為替の3種類に対応するイメージデータが、センター5への送信の対象に設定されている。
【0051】
図7の例の場合、「送信する」のチェックボックスにチェックが入っている「手形、小切手」、「配当金領収書」、「定額小為替」が、送信の対象とする第一の種別の一例である。
一方、「送信しない」のチェックボックスにチェックが入っている「付箋付き手形、小切手」、「補箋付き手形、小切手」、「傷んだ手形、小切手、定額小為替」、「その他」が、送信の対象としない第二の種別の一例である。
【0052】
図6の説明に戻る。
印字制御部680eは、印字部617(図3参照)の制御を通じ、搬送路を搬送される手形や小切手の表(おもて)面と裏面のそれぞれに、各イメージデータに対応するファイル名を印字する。具体的には、手形や小切手の表(おもて)面に対応するファイル名と、裏面に対応するファイル名が個別に印字される。
【0053】
通信制御部680fは、操作者により選択されたイメージデータのセンター5(図1参照)への送信を制御する。
本実施の形態における通信制御部680fは、一度に送信する1又は複数のイメージデータに対応する手形や小切手の総枚数と金額の合計値を、送信データの付属データとして一緒に送信する機能を有している。
【0054】
通信制御部680fは、イメージデータがセンター5に送信された送信回を特定する情報を、収容媒体情報DB682aの管理データとして管理する機能も備えている。個々の送信は、例えば送信の日時、送信毎に付与される通し番号で構成される。
個々のイメージデータに対応する送信回を特定する情報を紐付けることで、特定の送信回に関連するイメージデータの抽出を容易に実現できる。
通信制御部680fは、送信部の一例である。
【0055】
取消受付部680gは、センター5に送信済みのイメージデータによる取引の取消を受け付ける機能部である。イメージデータによる取引の取消は、イメージデータの送信を受け付けた有価媒体処理装置600(図2参照)の管理データの取り消しだけでなく、イメージデータによる取引を依頼されたセンター5側における管理データの取消が必要になる。
本実施の形態で想定する金融機関の場合、営業店4の担当者からセンター5の担当者に対する電話連絡により、センター5で受け付けたイメージデータによる取引の取消を可能とする。
【0056】
取消受付部680gは、この電話連絡の支援や電話連絡の進捗の管理を支援する機能も提供する。具体的には、取消受付部680gは、取消の対象であるイメージデータを特定するファイル名を含む関連情報の印刷を、操作画面を通じて受け付ける機能、操作対象の装置における取消の状況を操作画面に表示する機能、センター5の担当者への電話連絡の状況を操作画面に表示する機能等を提供する。
【0057】
<収容媒体情報DBのデータ例>
図8は、記憶部682に格納された収容媒体情報DB682aのデータ例を説明する図である。
図8には、収容媒体情報DB682aに格納される情報のうち、手形等収容部630に関する情報を示している。
図8に示す収容媒体情報DB682aは、読み取りID、券種、入金日時、入金者ID、金額、収容部ID、送信ID、送信日時、ファイル名、取消フラグ、連絡済みフラグ、イメージデータの項目で構成される。
【0058】
読み取りIDは、例えば読み取り順に発行される。
券種には、手形、小切手、配当金領収書、定額小為替等の情報が記録される。なお、券種は、入金画面で指定してもよいし、撮像部616(図3参照)で撮像されたイメージデータから画像認識の技術を用いて認識された結果を記録してもよい。
入金者IDは、手形や小切手等を入金した操作者のカードから読み取られるIDである。
金額は、手形や小切手等の額面であり、入金取引の画面で手入力される、又は、画像認識の技術により自動で入力される。
【0059】
収容部IDは、入金された手形や小切手等が収容された手形等収容部630を特定するIDである。具体的には、収容部630a、630b、630cを特定するIDが記録される。収容部IDは、装置内に収容されている手形や小切手等の取り出し時に必要になる。
送信IDは、イメージデータのセンター5(図1参照)への送信を識別する情報である。
ファイル名は、撮像部616で撮像された個々のイメージデータに付与される管理データである。本実施の形態におけるファイル名は、60桁で与えられる。なお、各桁には、意味が割り当てられている。
【0060】
図8の場合、ファイル名の欄には、表(おもて)面のイメージデータを特定するファイル名と、裏面のイメージデータを特定するファイル名の両方が記録される。
もっとも、表(おもて)面のイメージデータと裏面のイメージデータを異なる行で管理する場合、ファイル名の欄には、対応するイメージデータのファイル名が1つだけ記録される。
【0061】
取消フラグは、個別取引取消モードが選択された状態で、操作者が操作画面上で取引の取消を入力した場合に、対応する手形や小切手について記録される。図8の例では、取引が取り消された状態を「○」で示し、取引が取り消されていない状態を「x」で示す。この取消フラグは、第一フラグの一例である。
連絡済みフラグは、券面イメージ送信済み確認モードが選択された状態で、操作者が操作画面上で連絡済みを入力した場合に、対応する手形や小切手について記録される。図8の例では、連絡済みの入力があった状態を「○」で示し、連絡済みが入力されていない状態を「x」で示す。この連絡済みフラグは、第二フラグの一例である。
【0062】
図8の場合、読み取りIDの「10002」に対応する小切手の取引は取り消されているが、センター5への連絡は完了していない。このため、取消フラグにだけ「○」が記録され、連絡済みフラグには「x」が記録されている。
一方、読み取りIDの「10003」に対応する手形の取引は取り消し済みであり、センター5への連絡も完了している。このため、取消フラグと連絡済みフラグの両方に「○」が記録されている。
【0063】
<処理動作>
<入金処理>
図9は、入金に関する処理動作例を説明するフローチャートである。図中に示す記号のSはステップを意味する。
なお、図9に示す処理動作は、制御部680(図5参照)がプログラムの実行を通じて実現する。
また、図9では、手形や小切手のイメージデータの取り込みとセンター5(図1参照)への送信について説明する。なお、図9に示す処理動作は、入金された手形や小切手を装置内に収容する場合を想定している。
【0064】
まず、制御部680は、カードリーダから操作者が所有するIDカードのIDを読み取る(ステップ101)。カードリーダは、例えば操作表示部700の近辺に設置されている。制御部680は、読み取ったIDに基づいて、操作者の権限等を確認する。
次に、制御部680は、操作表示部700のメニュー画面を通じ、操作者の選択した動作モードの情報を取得する。本実施の形態では、入金処理モードが選択される(ステップ102)。
【0065】
図10は、メニュー画面721の一例を説明する図である。
図10に示すメニュー画面721には、入金処理モードに対応する入金ボタン722と、イメージデータの送信モードに対応する券面イメージ送信ボタン723と、送信済みイメージデータの確認モードに対応する券面イメージ送信済み確認ボタン724と、個別取引取消ボタン725が設けられている。
ここでは、入金ボタン722が操作者により操作される。
【0066】
図11は、入金画面731の一例を説明する図である。
図11に示す入金画面731のタイトル欄732には「入金」と表示されている。
入金画面731の左側には、表示項目の選択欄733が配置され、選択欄733の下には、完了ボタン736が配置されている。
また、入金画面731の右側上には、選択欄733で選択された項目に関する情報が表示される内容欄734が配置され、内容欄734の下には、テンキー欄735が配置されている。
【0067】
図11の場合、選択欄733には、伝票の種別の欄と、各伝票に関する明細欄が表示されている。図11では、「入金伝票」の項目の背景色が他の項目と異なる。この表示は、「入金伝票」の選択状態を表している。
内容欄734には、有価媒体処理装置600(図5参照)が取り扱った入出金の一覧が表示されている。
ここで、選択欄733で選択状態のタブを「他店券」に切り替えると、操作表示部700の表示は、図12に切り替わる。
【0068】
図12は、入金画面731の他の例を説明する図である。図12には、図11との対応部分に対応する符号を付して示している。
図12に示す選択欄733では、他店券の背景色が他の項目と異なり、選択状態である。
図12の場合、選択欄733の右側には、モード選択欄737が配置される。モード選択欄737の最上段には、入金情報を手入力とする場合に操作する「手入力」ボタンと、入金情報をイメージデータから読み取る場合に操作する「読取」ボタンが並んでいる。図12では、「読取」ボタンが選択状態である。
【0069】
「手入力」ボタンと「読取」ボタンの下には、読取りモードの選択欄が表示される。図12の例では、キャリアシートなしの読取モードを表す「証票」、キャリアシートありの読取モードを表す「証票(キャリアシート)」、補箋付き手形の読取モードを表す「補箋付手形」が表示されている。
なお、モード選択欄737の右側には、読取モードの説明欄738が配置されている。
キャリアシートとは、付箋付きや破れ、汚れがある手形や小切手を挟み込むために用いる透明なファイルである。
図12においては、いずれかの読取モードが選択された状態で完了ボタン736が押下されることで、有価媒体を投入する準備が完了する。
【0070】
図9の説明に戻る。
前述したように、読取モードが選択され、有価媒体を投入する準備が完了すると、制御部680は、投入部610(図3参照)への有価媒体の投入を検知する(ステップ103)。図9では、有価媒体として手形や小切手を想定する。投入された手形や小切手等の有価媒体は、繰出機構612により1枚ずつ装置内に取り込まれ、搬送部614により搬送される。手形や小切手を含む有価媒体のイメージデータは、撮像部616の通過中に撮像される。
制御部680は、撮像されたイメージデータに基づいて搬送異常の有無を判定する(ステップ104)。ここでの搬送異常には、例えば斜行や二重送りがある。
【0071】
ステップ104で異常がないと判定された場合、制御部680は、イメージデータを記憶部682に記憶する(ステップ107)。なお、対応する有価媒体は、保留部620に搬送され、一時的に保留される(ステップ108)。
一方、ステップ104で異常があると判定された場合、制御部680は、この小切手を払出部660に搬送し、機体外に返却する(ステップ105)。続いて、制御部680は、次の有価媒体があるか否かを判定する(ステップ106)。因みに、ステップ106で肯定結果が得られた場合、制御部680は、ステップ103に戻る。一方、ステップ106で否定結果が得られた場合、制御部680は、処理を終了する。
【0072】
ステップ108の説明に戻る。
手形や小切手が保留部620に一時的に保留されると、制御部680は、操作表示部700に、取得したイメージデータを表示する(S109)。
次に、制御部680は、表示されたイメージデータに対応する手形や小切手の入金データを入力する(ステップ110)。
ここでの入金データの入力は、操作者が手入力する場合と制御部680が画像認識により自動入力する場合がある。
手入力の場合、操作者は、操作表示部700に表示されたイメージデータを目視し、印字されている金額等を手入力する。
自動入力の場合、制御部680は、イメージデータの中から金額等の領域を抽出し、文字認識により特定された金額等を入力する。
【0073】
本実施の形態における入金データは、有価媒体の券種や価値等を示すデータをいう。本実施形態の場合、入金データには、電子交換所3(図1参照)を特定する番号が含まれてもよい。
自動入力された金額等は、操作表示部700に表示される。操作者は、操作表示部700上で、自動入力された金額等をイメージデータとの比較により確認する。また、操作者は、誤りを見つけた場合、操作表示部700を通じ、誤りを修正する。
【0074】
次に、制御部680は、次の有価媒体があるか否かを判定する(ステップ111)。因みに、ステップ111で肯定結果が得られた場合、制御部680は、ステップ103に戻る。なお、ステップ111で肯定結果が得られている間、装置内に投入された手形や小切手は、保留部620に一時保留されている。
やがて、ステップ111で否定結果が得られると、制御部680は、操作表示部700に入金データの確定を求める旨を表示する。
表示と同時に、制御部680は、入金データの確定か否かを判定する(ステップS112)。具体的には、制御部680は、操作表示部700が確定の指示を受け付けたか否かを判定する。
【0075】
ステップ112で肯定結果が得られると、制御部680は、保留部620に一時的に保留された手形や小切手等を、搬送部614により、1枚ずつ手形等収容部630に搬送し収容する(S113)。
この際、手形や小切手等は、投入順や種別に応じ、収容部630a、630b及び630cのいずれかに収容される。
なお、制御部680は、入力された入金データを記憶部682に記憶する(S114)。この後、制御部680は、例えば入金明細が印字された入金レシートを発行する。
【0076】
操作者が入金データを確定しなかった場合、制御部680は、ステップ112で否定結果を得る。
ステップ112で否定結果が得られた場合、制御部680は、入金データの修正か否かを判定する(ステップ115)。
ステップ115で否定結果が得られた場合、制御部680は、保留部620に保留されている手形や小切手等を払出部660に搬送し、機体外に返却する(ステップ116)。これにより、入金処理が終了する。
一方、ステップ115で肯定結果が得られた場合、制御部680は、入金データを修正し(ステップ117)、ステップ112に戻る。この後、制御部680は、前述した処理を繰り返す。
【0077】
<イメージデータの送信処理>
図13は、イメージデータの送信に関する処理動作例を説明するフローチャートである。
まず、制御部680は、カードリーダから操作者が所有するIDカードのIDを読み取る(ステップ201)。
次に、制御部680は、操作表示部700のメニュー画面を通じ、操作者の選択した動作モードの情報を取得する。本実施の形態では、券面イメージ送信モードが選択される(ステップ202)。
具体的には、メニュー画面721(図10参照)において、券面イメージ送信ボタン723(図10参照)が操作者により操作される。
【0078】
次に、制御部680は、センター5に送信するイメージデータを選択する操作を受け付ける(ステップ203)。図13の例は、送信対象とするイメージデータを操作者が手動で指定する場合を想定している。
図14は、イメージデータの選択に用いる選択画面741の一例を説明する図である。
図14に示す選択画面741のタイトル欄742には「券面イメージ選択」と表示されている。
【0079】
選択画面741の左側には、上から下に順番に、送信対象の選択状態を示す概要欄743、選択可能なイメージデータの候補欄744、「完了」ボタン745が配置されている。
また、選択画面741の右側には、選択された候補のイメージデータの拡大表示欄746と、選択を解除するための「選択解除」ボタン747が配置されている。
図14の例では、候補欄744に表示される候補のうち上から1番目と2番目が既に送信の対象に選択済みである。このため、各候補の右側には、墨付きカッコ付きの「選択済」が表示されている。
また、その選択状態を反映して、概要欄743の送信合計枚数に「2」、送信合計金額として、選択されたイメージデータに対応する手形等の金額の合計額が表示されている。
【0080】
図14では、拡大表示欄746に、候補欄744で選択されている候補のイメージデータが拡大表示されている。なお、本実施の形態の場合、拡大表示欄746に表示されるイメージデータには、撮像部616で有価媒体を撮像した際に付与されたファイル名が合成されている。
画像処理により合成されるファイル名は、操作者の既読性を妨げないように、イメージデータのうち文字や図形が存在しない領域部分にファイル名が配置される。図14では、左上隅に、ファイル名が合成されている。なお、ファイル名は60桁と長い。このため、ファイル名を1行で配置できない場合、ファイル名は、複数行に分割して配置される。
【0081】
図13の説明に戻る。
続いて、制御部680は、「完了」ボタン745(図14参照)の操作か否かを判定する(ステップ204)。
ステップ204で否定結果が得られている間、制御部680は、ステップ204の判定を繰り返す。
なお、選択画面741の左上隅の「取消」ボタンの操作が検知された場合、制御部680は、メニュー画面721に戻る。
【0082】
因みに、手形や小切手の種別の情報と事前の設定に基づいて、送信の対象であるイメージデータを自動で選択する自動選択モードが有効である場合、ステップ203をスキップして、ステップ204に移行する。
ステップ204で肯定結果が得られると、制御部680は、送信の対象であるイメージデータの選択を確定し、確定されたイメージデータの送信の可否を確認する(ステップ205)。
【0083】
図15は、選択画面741で「完了」ボタン745(図14参照)が操作された場合の表示例を示す図である。図15には、図14との対応部分に対応する符号を付して示している。
図15に示す選択画面741の場合、選択が完了した段階であるので、候補欄744には、送信の対象に確定された4つの候補だけが表示されている。
そして、選択画面741の画面中央には、送信の確認を求めるダイアログボックス751が表示される。また、「完了」ボタン745に代えて、「送信」ボタン748が表示される。なお、「選択解除」ボタン747は、表示されない。
【0084】
図15に示すダイアログボックス751には、確定した選択の情報と、送信の確認を求める文が表示される。具体的には、「合計枚数:4枚」、「合計金額:809,876円」、「イメージ送信します よろしいですか?」との文が表示されている。
また、ダイアログボックス751内には、操作者が送信を指示する場合に操作する「はい」ボタン752と、送信を取りやめる場合に操作する「いいえ」ボタン753が表示されている。
【0085】
図13の説明に戻る。
ダイアログボックス751(図15参照)が選択画面741に表示されると、制御部680は、送信の実行か否かを判定する(ステップ206)。
ステップ206で「いいえ」の場合、制御部680は、「完了」ボタン745が操作される前の段階に戻る。すなわち、イメージデータの選択が可能な状態に戻る。
一方、ステップ206で「はい」の場合、制御部680は、イメージデータの送信を実行する(ステップ207)。
【0086】
センター5(図1参照)へのイメージデータの送信後、制御部680は、送信ログを更新し(ステップ208)、同時に、収容媒体情報DB682a(図8参照)を更新する(ステップ209)。
具体的には、収容媒体情報DB682aに、送信ID、送信日時等が追記される。なお、機器トラブルや通信エラーによりイメージデータが送信されないまま、送信の指示が発生した時刻から予め定めた時間が経過した場合や日付が変わった場合、緊急フラグが自動的に付与される。当然ながら、この場合には、送信日時や送信IDは、収容媒体情報DB682aに記録されない。なお、送信ログには、送信が失敗に終わった送信イベントに関する情報が記録される。
【0087】
<送信済みイメージの確認処理>
図16は、送信済みイメージデータの確認に関する処理動作例を説明するフローチャートである。
まず、有価媒体処理装置600は、カードリーダから操作者が所有するIDカードのIDを読み取る(ステップ301)。
次に、制御部680は、操作表示部700のメニュー画面を通じ、操作者の選択した動作モードの情報を取得する。本実施の形態では、券面イメージ送信済み確認モードが選択される(ステップ302)。
具体的には、メニュー画面721(図10参照)において、券面イメージ送信済み確認ボタン724(図10参照)が操作者により操作される。
【0088】
次に、制御部680は、送信IDの一覧を表示する(ステップ303)。ここで、制御部680は、収容媒体情報DB682a(図8参照)にアクセスして送信IDを取得し、一覧表として表示する。
図17は、送信済みイメージデータの確認画面761の一例を説明する図である。
図17に示す確認画面761のタイトル欄762には「券面イメージ送信済み確認」と表示されている。
【0089】
タイトル欄762の下には、送信IDに関する情報が表示される概要欄763が配置される。
図17の場合、概要欄763は、番号、送信時間、送信合計枚数、送信合計金額、状況の各項目で構成される。
番号には、送信IDが記載される。図17の場合、2つの送信IDが記載されている。
送信IDの「0001」の送信時間は、「2020/09/15 10:10」であり、送信合計枚数は16枚、送信合計金額は「1,234,567,890」である。
送信IDの「0002」の送信時間は、「2020/09/15 15:20」であり、送信合計枚数は4枚、送信合計金額は「809,876」である。
ここでの送信合計枚数とは、イメージデータの数ではなく、イメージデータに対応する手形や小切手の枚数の総数である。
【0090】
図16の説明に戻る。
確認画面761(図17参照)が表示されると、制御部680は、送信IDの選択か否かを判定する(ステップ304)。
ステップ304で否定結果が得られている間、制御部680は、ステップ304の判定を繰り返す。
ステップ304で肯定結果が得られると、制御部680は、選択された送信IDの詳細を表示する(ステップ305)。
【0091】
図18は、送信IDに紐付けられている送信済みイメージデータの詳細画面771の一例を説明する図である。
図18に示す詳細画面771のタイトル欄772にも「券面イメージ送信済み確認」と表示されている。
詳細画面771の左側には、上から下に順番に、選択された送信IDに紐付けられている送信済みイメージデータの概要欄773、送信IDに紐付けられている送信済みイメージデータの情報欄774が配置されている。また、詳細画面771の右側には、情報欄774で選択されたイメージデータの拡大表示欄775が配置されている。
【0092】
図18に示す詳細画面771は、図17の確認画面761において送信IDの「0002」が選択された場合に対応する。このため、送信されたイメージデータの送信合計枚数は4枚である。
なお、拡大表示欄775には、情報欄774で選択されたイメージデータにファイル名が合成された状態で表示される。
拡大表示欄775の表示の内容は、情報欄774で選択されたイメージデータの選択に応じて変化する。
【0093】
なお、詳細画面771の左上隅の「取消」ボタンが操作されると、メニュー画面721(図10参照)に戻り、「戻る」ボタンが操作されると、送信IDを選択する確認画面761(図17参照)に戻る。
図16の説明に戻る。
制御部680は、「取消」ボタンの操作か否かを判定する(ステップ306)。ステップ306で否定結果が得られた場合、制御部680は、ステップ304に戻る。一方、ステップ306で肯定結果が得られた場合、制御部680は、一連の処理を終了する。
【0094】
<イメージデータによる取引の個別取消処理>
営業店4(図1参照)からイメージデータを受信したセンター5(図1参照)のサーバは、例えば受信日の翌日に一括して電子交換所3にイメージデータを送信し、対応する手形や小切手の決済を実行する。
ところで、運用上は、イメージデータをセンター5に送信した後に、手形や小切手の取引を取りやめたいことがある。
このため、本実施の形態における有価媒体処理装置600(図2参照)には、イメージデータによる取引を個別に取り消すためのモードが用意されている。
【0095】
図19は、イメージデータをセンター5に送信した後に取引を取り消す場合の処理動作例を説明するフローチャートである。
まず、有価媒体処理装置600は、カードリーダから操作者が所有するIDカードのIDを読み取る(ステップ401)。
【0096】
次に、制御部680は、操作表示部700のメニュー画面721(図10参照)を通じ、操作者の選択した動作モードの情報を取得する。本実施の形態では、個別取引取消モードが選択される(ステップ402)。
具体的には、メニュー画面721(図10参照)において、個別取引取消ボタン725(図10参照)が操作者により操作される。
【0097】
個別取引取消ボタン725が操作されると、制御部680は、個別取引取消用の画面(以下「個別取引取消画面」という)を表示し(ステップ403)、取消対象に対応する通番を受付ける(ステップ404)。
図20は、個別取引取消画面781の一例を説明する図である。
図20に示す個別取引取消画面781のタイトル欄782には「個別取引取消」と表示されている。
図20の場合、タイトル欄782の下には、画面左側にモード選択欄783と「完了」ボタン784が配置され、画面右側に通番入力欄785が配置されている。
【0098】
図20に示すモード選択欄783には、「締内」と「締後」の2つのモードが用意されている。図20の場合、「締内」が選択されている。また、「通番」が選択状態である。通番は、取引を特定するために用いる番号であり、取引順に発行される。本実施の形態の場合、通番は、1つ又は複数の送信IDに紐付けられている。
図20の通番入力欄785は、通番入力用のテンキーと、入力された数値の表示部とが設けられている。
図20の場合、通番として「1」が入力されている。
因みに、「完了」ボタン784が操作されると、入力された通番が確定する。
【0099】
図19の説明に戻る。
取消対象である通番が確定すると、制御部680は、取引を取り消す手形や小切手のイメージデータを受付ける(ステップ405)。
図21は、取消の対象であるイメージデータの特定に使用される取消画面791の一例を説明する図である。
図21に示す取消画面791のタイトル欄792は「個別取引取消」である。
【0100】
図21の場合、取消画面791の左側には、取消対象の選択欄793が配置される。図21の場合、選択欄793には、上から下に順番に、「入金伝票」、「出金伝票」、「入金枚数合計」、「明細」、「現金」、「損券損貨」、「当店券」、「他店券」、「その他」、「差額」が表示されている。なお、図21に示す金額は、仮想値であり、項目間の整合性は無視している。
図21では、選択欄793の「他店券」が選択されている。
【0101】
図21に示す取消画面791の真ん中の列には、有価媒体処理装置600に取り込まれている他店券のイメージデータのうち、センター5に送信済みイメージデータの一覧表示欄794が表示される。
図21の場合、一覧表示欄794の最上段には、「読取」ボタンと「手入力」ボタンが配置され、その下段に3枚のイメージデータが配置されている。
図21の例では、最上段のイメージデータが選択されている。
【0102】
このため、一覧表示欄794の右隣の拡大表示欄795には、選択されたイメージデータが拡大表示されている。なお、イメージデータには、ファイル名が合成されて表示されている。
また、拡大表示欄795の下には、対応する手形や小切手の情報欄796が配置されている。
なお、取消画面791の下に配置される「完了」ボタン797が押下されると、有価媒体処理装置600内で管理するデータ上の取消が確定する。
【0103】
図19の説明に戻る。
取消対象であるイメージデータの選択が確定すると、制御部680は、対象とする手形や小切手の保管位置を表示する(ステップ406)。
図22は、イメージデータによる取引が取り消された手形や小切手の装置外への取り出しを支援する取出支援画面801の一例を説明する図である。
図22に示す取出支援画面801のタイトル欄802にも「個別取引取消」と表示されている。
【0104】
図22に示す取出支援画面801の左側には、取り出し対象である手形や小切手のイメージと取り出し位置を示す案内欄803が表示され、取出支援画面801の右側には、装置内の保管場所を示す案内図804が表示されている。
図22の場合、案内欄803には、2枚の小切手のイメージデータが上下2段に表示されている。
図22の場合、いずれの小切手も案内図804の最上段の棚に収容されていることが示されている。図22に示す案内図804は、実際の写真に保管位置を示す表示が合成されている。なお、図22の例では、最上段の棚の位置に、案内欄803の記載と同じ符号が表示されている。
【0105】
なお、案内図804には、操作者に求める作業も記載されている。具体的には、「表示されているすべての小切手を抜取り、「確認」ボタンを押してください。」と記載されている。
この作業の指示に従い、手形や小切手の抜取り後に「確認」ボタン805を操作者が操作すると、ステップ406(図19参照)が終了する。
具体的には、制御部680が、「確認」ボタン805が操作されたか否かを判定する(ステップ407)。
【0106】
ステップ407で否定結果が得られている間、制御部680は、ステップ407の判定を繰り返す。
「確認」ボタン805の操作が確認された場合、制御部680は、ステップ407で肯定結果を得る。
ステップ407で肯定結果が得られると、制御部680は、メニュー画面721(図10参照)を表示する(ステップ408)。
【0107】
本実施の形態で使用する有価媒体処理装置600には、自装置で受け付けた取消に関する情報をセンター5(図1参照)側の管理データと同期する機能が設けられていない。
もっとも、センター5の管理データに取引の取り消しを自動的に反映する機能を搭載することも、メールやメッセージ等により担当者に取引の取り消しを通知する機能を搭載することは可能である。
いずれにしても、本実施の形態で想定する金融機関では、手形や小切手のイメージデータをセンター5に送信した後に、特定の取引が営業店4側で取り消された場合、センター5の担当者に電話連絡することで、イメージデータの電子交換所3への送信スケジュールを取り消す運用を採用する。
【0108】
この電話連絡では、イメージデータを特定するファイル名等の連絡が必要となる。
本実施の形態では、制御部680は、操作表示部700のメニュー画面721を通じ、操作者の選択した動作モードの情報を取得する。本実施の形態では、券面イメージ送信済み確認モードが選択される(ステップ409)。
具体的には、メニュー画面721において、券面イメージ送信済み確認ボタン724(図10参照)が操作者により操作される。
【0109】
操作を検知した制御部680は、送信済みイメージデータの確認画面761(図17参照)を通じ、送信IDの選択を受付ける。
この後、制御部680は、選択された送信IDに紐付けられている送信済みイメージデータの詳細画面771(図18参照)を操作表示部700に表示する。
図23は、取引取消後の送信済みイメージデータの詳細画面771の一例を説明する図である。図23には、図18との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0110】
図23の場合も、概要欄773に示す4つのイメージデータのうち最上段のイメージデータが選択されている。図23の場合、選択されているイメージデータは、取引が取り消されている。
このため、図23の詳細画面771では、最上段のイメージデータの欄に「取消」776の文字が追加されている。「取消」776の表示の確認により、操作者は、画面上で容易に取引を取り消したイメージデータを見つけ出すことができる。
【0111】
一方で、このイメージデータの欄には、後述する「連絡済」779A(図27参照)は表示されていない。
このため、表示を見た操作者は、取引の取り消しの連絡が済んでいないことを確認できる。
拡大表示欄775には、取引が取り消されたイメージデータがファイル名付きで拡大表示されている。このため、拡大表示欄775を確認しながら、センター5側の担当者に電話連絡することも可能である。
【0112】
ただし、操作表示部700に詳細画面771を表示させた状態で、センター5側の担当者に電話連絡し、取引の取り消しを伝える手法は、連絡が終わるまで、操作者による有価媒体処理装置600(図2参照)の占有状態が継続される。
換言すると、他のスタッフは取り消しの連絡が終わるまで、有価媒体処理装置600を使用することができない。つまり、有価媒体処理装置600を使用する業務への影響が懸念される。
【0113】
そこで、図23に示す詳細画面771の右上付近には、「電話連絡用印字」ボタン777が配置されている。
この電話連絡用印字ボタン777は、拡大表示欄775に表示されているイメージデータ、すなわち情報欄774で選択されているイメージデータに関する情報の印字の指示に用いられる。
図19の説明に戻る。
制御部680は、詳細画面771(図23参照)上でイメージデータの選択を受付けると(ステップ410)、電話連絡用印字ボタン777の操作であるか否かを判定する(ステップ411)。
【0114】
ステップ411で否定結果が得られている間、制御部680は、ステップ411の判定を繰り返す。
一方、ステップ411で肯定結果が得られた場合、制御部680は、プリンタ800にレシートの印字を指示する(ステップ412)。
図24は、「電話連絡用印字」ボタン777(図23参照)の操作を受け付けた場合に表示されるプレビュー画面811の一例を説明する図である。
図24に示すプレビュー画面811のタイトル欄812には「電話連絡用印字」と表示されている。
タイトル欄812の下には、レシートの印刷イメージ813が表示されている。また、プレビュー画面811の右下付近には「印字」ボタン814が表示されている。ここでの「印字」ボタン814が操作されると、レシートの印字が開始される。
【0115】
図25は、レシート820の印字例を説明する図である。
本実施の形態の場合、1枚の手形や小切手の表(おもて)面のイメージデータと裏面のイメージデータが別々に取得されるため、レシート820にも、表面の送信ファイル名821と裏面の送信ファイル名822が別々に印字されている。また、読み手が誤らないように、送信ファイル名には、それぞれ表(おもて)面と裏面を区別する文字が印字されている。
また、送信ファイル名821及び822の下側には、処理の対象である手形や小切手に紐付けて収容媒体情報DB682aに記憶されている情報823がレイアウトされている。
情報823には、手形や小切手の金額だけでなく、手形や小切手を扱った有価媒体処理装置600を特定する情報も含まれる。
【0116】
図25に示すレシート820には、センター5側の担当者との間で、取消の対象であるイメージデータを特定するのに必要な情報が全て含まれている。
このため、レシート820がプリンタ800から出力されると、操作者は、有価媒体処理装置600を離れ、例えば自席等からイメージデータによる取引の取り消しをセンター5側の担当者に連絡することが可能になる。
この結果、イメージデータの取引の取り消しの連絡のために有価媒体処理装置600が専有される時間の大幅な短縮が可能になる。
【0117】
ところで、取り消しの連絡が済んだことを有価媒体処理装置600に残さないと、取り消しの連絡済みの取引と取り消しの連絡前の取引とが操作画面上で区別できなくなる。そのため、取り消しの連絡済みのイメージデータについて、重複した電話連絡が発生する可能性が生じる。
そこで、本実施の形態で使用する有価媒体処理装置600には、連絡済みであることを記録し、画面に表示する機能が設けられている。
【0118】
図26は、電話連絡の後に送信済みイメージデータの詳細画面771を表示させた状態を説明する図である。図26には、図23との対応部分に対応する符号を付して示している。
電話連絡後は、詳細画面771の下段に配置された「連絡済み」ボタン778と「連絡済解除」ボタン779を使用する。なお、これらのボタンは、図23の詳細画面771にも表示されている。
図26では、情報欄774に示す4つのイメージデータのうちの最上段のイメージデータを選択した状態で、「連絡済み」ボタン778が押下されている。
【0119】
図27は、「連絡済み」ボタン778の押下後に表示される送信済みイメージデータの詳細画面771の一例を説明する図である。図27には、図26との対応部分に対応する符号を付して示している。
図27に示す詳細画面771では、「連絡済み」ボタン778が押下された後の画面であるので、情報欄774に示す4つのイメージデータのうちの最上段のイメージデータの欄に「連絡済」779Aとの表示が追加されている。
この表示を確認することにより、操作者は、センター5への電話連絡の必要性を容易に判断できる。また、連絡済みであるのに重ねてセンター5の担当者に電話する可能性を低減できる。
【0120】
なお、誤って「連絡済み」ボタン778を操作してしまった場合には、「連絡済解除」ボタン779を操作することにより、画面上から「連絡済」の表示を消すことができる。
ところで、本実施の形態の場合、センター5の担当者へのイメージデータによる取引の取り消しは、有価媒体処理装置600から離れた場所で実行される。
このため、操作者が連絡済みを有価媒体処理装置600に記録するのを忘れる可能性もある。
そこで、本実施の形態では、「電話連絡用印字」ボタン777が操作されてレシート820(図25参照)が出力されてから予め定めた時間が経過しても「連絡済み」ボタン778の操作が記録されない場合には、連絡済みの確認を促す表示を操作表示部700に出力する機能を用意する。もっとも、確認を促す表示は、レシート820の印字を指示した操作者の次回の認証時に実行してもよい。
【0121】
<実施の形態2>
本実施の形態の場合も、電子交換所システム1(図1参照)の概念構成は、実施の形態1と同じである。
ただし、金融機関の営業店4において、有価媒体のイメージデータの取り込みと送信に用いる端末が、実施の形態1と相違する。
図28は、実施の形態2で想定する有価媒体処理システム1000の外観例を説明する図である。本実施の形態で使用する有価媒体処理システム1000は、スキャナとプリンタを一体化した紙葉類処理装置を想定する。
【0122】
本実施の形態における有価媒体処理システム1000は、単体の装置で構成される。このため、有価媒体処理システム1000は、有価媒体処理装置の一例でもある。
図28に示す有価媒体処理システム1000は、ADF(=Auto Document Feeder)1010又はフラットヘッド1011を利用して手形や小切手をスキャンするスキャナと、ADF1010から取り込んだ手形や小切手にファイル名を印刷するプリンタ1012と、各種の設定データの登録や処理を指示する操作を行うためのタッチパネル式の操作表示部1013と、外部装置と通信するためにデータを記憶する記憶部1014とを有している。
【0123】
図29は、有価媒体処理システム1000の機能構成を説明するブロック図である。図29には、図5との対応部分に対応する符号を付して示している。
有価媒体処理システム1000は、ADF1010、フラットヘッド1011と、プリンタ1012と、操作表示部1013と、記憶部1014と、制御部1020と、通信部1040を有している。
制御部1020は、プログラムを実行するCPUと、BIOS等を記憶するROMと、プログラムの作業領域として使用されるRAMとで構成される。
【0124】
制御部1020が実行する機能は、実施の形態1における制御部680(図5参照)と同じである。すなわち、制御部1020は、認証部680a(図6参照)、送信対象選択部680b(図6参照)と、種別識別部680c(図6参照)と、送信種別設定部680d(図6参照)と、印字制御部680e(図6参照)と、通信制御部680f(図6参照)と、取消受付部680g(図6参照)として機能する。
また、記憶部1014には、実施の形態1と同じく、収容媒体情報DB682a、手形や小切手のイメージデータ682b、イメージデータ等の送信ログ682cを記憶する。
【0125】
実施の形態2で使用する有価媒体処理システム1000の処理動作は、実施の形態1で説明した有価媒体処理装置600(図2参照)と同じである。このため、有価媒体処理システム1000の処理動作の説明は省略する。
なお、本実施の形態で想定する有価媒体処理システム1000は、実施の形態1で想定する有価媒体処理システム10(図2参照)に比して設置スペースが少なく済む。
【0126】
<他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は前述した実施の形態に記載の範囲に限定されない。前述した実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0127】
前述の実施の形態では、営業店に設置される有価媒体処理システム10(図2参照)又は1000(図28参照)からイメージデータの送信を受けたセンター5(図1参照)が電子交換所3(図1参照)に接続されているが、有価媒体処理システム10(図2参照)又は1000(図28参照)を電子交換所3に直接接続する運用も可能である。
また、イメージデータの送信先であるセンター5側のサーバは、電子交換所3に接続されているが、イメージデータの送信先であるセンター5側のサーバは、電子交換所3に接続されるサーバとは別でもよい。
【符号の説明】
【0128】
1…電子交換所システム、2、2A…金融機関システム、3…電子交換所、4…営業店、5…センター、10、1000…有価媒体処理システム、10A…紙幣処理装置、10B…硬貨処理装置、100…バラ紙幣処理部、200…束紙幣処理部、300…バラ硬貨処理部、400…包装硬貨処理部、500…損貨処理装置、600…有価媒体処理装置
図1
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図5
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