(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170074
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】車両整備用リフト装置
(51)【国際特許分類】
B66F 17/00 20060101AFI20221102BHJP
B66F 3/46 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B66F17/00 E
B66F3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075957
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】390018326
【氏名又は名称】株式会社スギヤス
(74)【代理人】
【識別番号】100110744
【弁理士】
【氏名又は名称】藤川 敬知
(72)【発明者】
【氏名】廣田 和久
(72)【発明者】
【氏名】武村 佳祐
(57)【要約】
【課題】複数のリフトが正確に連動して昇降動作することができる車両整備用リフト装置を提供する。
【解決手段】第1~第4リフト10~13はそれぞれ、ラム22cの昇降高さであるリフト高さを検知するワイヤエンコーダ51と、車両が受台30によって支持されている支持状態か支持されていない非支持状態かを検知する支持状態検知部6123と、支持状態検知部6123によって支持状態が検知されたとき、ワイヤエンコーダ51によって検知されたリフト高さHEを第1~第4リフト10~13の基準高さH0として記憶する基準高さ記憶部613aとを備える。車両整備用リフト装置1は、第1~第4リフト10~13の各基準高さH0を基準とする各リフトの移動量に基づいて、車両を略水平姿勢に保持した状態で、第1~第4リフト10~13を連動して昇降動作させる連動制御部6127を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を支持する受台と、床面に凹設されて前後方向に延びるピットに固定される支持体と、前記受台が上端に設けられて前記支持体によって昇降可能に支持される昇降体と、前記昇降体を昇降動作させる駆動源とを備えるリフトを、前記ピット内に複数配置してなる車両整備用リフト装置であって、
前記各リフトはそれぞれ、
前記昇降体の昇降高さであるリフト高さを検知する高さセンサと、
前記車両が前記受台によって支持されている支持状態か支持されていない非支持状態かを検知する支持状態検知部と、
前記支持状態検知部によって前記支持状態が検知されたとき、前記高さセンサによって検知された前記リフト高さを前記リフトの基準高さとして記憶する基準高さ記憶部と、
を備え、
前記車両整備用リフト装置は、
前記各リフトの前記各基準高さを基準とする前記各リフトの移動量に基づいて、前記車両を略水平姿勢に保持した状態で、前記複数のリフトを連動して昇降動作させる連動制御部、
を備える、車両整備用リフト装置。
【請求項2】
前記連動制御部は、前記複数のリフト間における前記移動量の最大差が第1閾値未満の場合、前記複数の全てのリフトの昇降動作を継続させると共に、前記最大差が前記第1閾値以上の場合、前記移動量が最大である特定の前記リフトの昇降動作を停止させ且つ残りの前記各リフトの昇降動作を継続させる、連動補正制御を実行する、請求項1に記載の車両整備用リフト装置。
【請求項3】
前記連動制御部は、前記最大差が前記第1閾値以上の場合に昇降動作を継続する前記残りの各リフトは、その移動量が昇降動作停止中の前記特定のリフトの移動量に到達すると昇降動作を停止する、請求項2に記載の車両整備用リフト装置。
【請求項4】
前記連動制御部は、前記最大差が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上の場合、異常の発生を検知する、請求項2又は3に記載の車両整備用リフト装置。
【請求項5】
前記連動補正制御の開始指令を入力する指令入力部を備え、
前記連動制御部は、前記指令入力部によって前記連動補正制御の開始指令が入力された場合、前記各リフトにおいて前記支持状態検知部により前記支持状態が検知されない間は昇降動作を継続させる準備制御を実行すると共に、前記複数のリフトの全てで前記支持状態検知部により前記支持状態が検知されたことを条件として前記連動補正制御の実行を開始する、請求項2乃至4の何れか一項に記載の車両整備用リフト装置。
【請求項6】
前記各リフトは、シリンダ空間を有するシリンダ部材を備え、
前記駆動源は、前記シリンダ空間へ流体圧を供給する流体圧装置によって構成され、
前記昇降体は、前記流体圧装置から前記シリンダ空間へ流体圧が供給されることにより昇降動作するものであって、
前記支持状態検知部は、前記シリンダ空間の流体圧に基づいて前記支持状態か前記非支持状態かを検知する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の車両整備用リフト装置。
【請求項7】
前記高さセンサは、前記支持体と前記昇降体との間の上下方向距離を検出する複数のセンサを備えて構成され、
前記複数のセンサの検出結果に基づいて、前記複数のセンサの何れかの異常を検知する高さセンサ異常検知部を備える、請求項1乃至6の何れか一項に記載の車両整備用リフト装置。
【請求項8】
前記高さセンサを構成する前記各センサは、互いに前記上下方向距離の検出方式が異なる、請求項7に記載の車両整備用リフト装置。
【請求項9】
前記複数のセンサの一つは、前記昇降体の移動量の検出に基づいて、前記支持体と前記昇降体との間の上下方向距離を検出し、
前記複数のセンサの他の一つは、前記支持体に設けられる所定部位と前記昇降体に設けられて前記所定部位と上下に対向する他の所定部位との空間距離の測定に基づいて、前記支持体と前記昇降体との間の上下方向距離を検出する、請求項8に記載の車両整備用リフト装置。
【請求項10】
前記複数のセンサの一つは、エンコーダ本体からのワイヤの繰り出し量を計測するワイヤエンコーダによって構成され、前記支持体及び前記昇降体の一方に前記エンコーダ本体が配設され且つ他方に前記ワイヤが連結され、
前記複数のセンサの他の一つは、レーザ光を送受光可能なレーザセンサによって構成され、前記支持体及び前記昇降体の一方に前記レーザセンサが配設され且つ他方にレーザ光を反射可能な反射部が配設される、請求項9に記載の車両整備用リフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両整備用リフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大型車両の整備を行うための車両整備用リフト装置として、受台を昇降させるリフトをピット内に前後2台配置し、大型車両の車軸やフレームを各リフトの受台で支持して昇降させる装置が用いられている(例えば、特許文献1、2等参照。)。このような車両整備用リフト装置は、前後2台のリフトを連動して昇降させることにより、大型車両を略水平に保持しながら安全に昇降できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-84226号公報
【特許文献2】特許第5299882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、我が国では連節バスやダブル連結トラックなどの運行が認可される等、様々なタイプの大型車両が運行されるようになっている。このため、車両の全長や下部構造の異なる多様な車両に対応できる車両整備用リフト装置のニーズが高まっており、リフトの昇降動作の連動に関して、より一層の正確性の向上が求められる。
【0005】
本発明は、複数のリフトが正確に連動して昇降動作することができる車両整備用リフト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る車両整備用リフト装置は、車両を支持する受台と、床面に凹設されて前後方向に延びるピットに固定される支持体と、前記受台が上端に設けられて前記支持体によって昇降可能に支持される昇降体と、前記昇降体を昇降動作させる駆動源とを備えるリフトを、前記ピット内に複数配置してなる車両整備用リフト装置である。前記各リフトはそれぞれ、前記昇降体の昇降高さであるリフト高さを検知する高さセンサと、前記車両が前記受台によって支持されている支持状態か支持されていない非支持状態かを検知する支持状態検知部と、前記支持状態検知部によって前記支持状態が検知されたとき、前記高さセンサによって検知された前記リフト高さを前記リフトの基準高さとして記憶する基準高さ記憶部と、を備える。そして、前記車両整備用リフト装置は、前記各リフトの前記各基準高さを基準とする前記各リフトの移動量に基づいて、前記車両を前記各受台で略水平姿勢に支持した状態で、前記複数のリフトを連動して昇降動作させる連動制御部、を備える。
【0007】
この構成によれば、各リフトにおいて支持状態検知部によって、車両が受台によって支持されている支持状態が検知されたときのリフト高さである基準高さを基準とする移動量に基づいて、複数のリフトを連動して昇降動作させる。つまり、各リフトで受台の車両への取付け状態にばらつきが生じることなく、車両を複数の受台で略水平姿勢に支持した状態で、複数のリフトを連動して昇降動作させることができる。よって、複数のリフトが正確に連動して昇降動作することができるという効果を奏する。
【0008】
(2)また、前記連動制御部は、前記複数のリフト間における前記移動量の最大差が第1閾値未満の場合、前記複数の全てのリフトの昇降動作を継続させると共に、前記最大差が前記第1閾値以上の場合、前記移動量が最大である特定の前記リフトの昇降動作を停止させ且つ残りの前記各リフトの昇降動作を継続させる、連動補正制御を実行する。
【0009】
この構成によれば、複数のリフト間における移動量の最大差が第1閾値未満の場合、複数の全てのリフトの昇降動作を継続させるので、車両を略水平姿勢に保持した状態で円滑に昇降させることができる。一方、最大差が第1閾値以上の場合、移動量が最大である特定のリフトの昇降動作を停止させ且つ残りの各リフトの昇降動作を継続させるので、リフト間の移動量の差が過大となることを防止して安全性を確保することができる。
【0010】
(3)また、前記連動制御部は、前記最大差が前記第1閾値以上の場合に昇降動作を継続する前記残りの各リフトは、その移動量が昇降動作停止中の前記特定のリフトの移動量に到達すると昇降動作を停止する。
【0011】
この構成によれば、最大差が第1閾値以上の場合に昇降動作を継続する残りの各リフトは、その移動量が昇降動作停止中の特定のリフトの移動量に到達すると昇降動作を停止するので、最終的に全リフトが同一の移動量となって車両を確実に略水平姿勢に支持することができる。
【0012】
(4)また、前記連動制御部は、前記最大差が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上の場合、異常の発生を検知する。
【0013】
この構成によれば、リフト間の最大差が第1閾値よりも大きい第2閾値以上の場合、異常の発生を検知するので、昇降動作を停止して装置の点検や修理を行うことができる。
【0014】
(5)また、前記連動補正制御の開始指令を入力する指令入力部を備え、前記連動制御部は、前記指令入力部によって前記連動補正制御の開始指令が入力された場合、前記各リフトにおいて前記支持状態検知部により前記支持状態が検知されない間は上昇動作を継続させる準備制御を実行すると共に、前記複数のリフトの全てで前記支持状態検知部により前記支持状態が検知されたことを条件として前記連動補正制御の実行を開始する。
【0015】
この構成によれば、指令入力部によって連動補正制御の開始指令が入力されると、各リフトにおいて支持状態検知部により支持状態が検知されない間は上昇動作を継続させる準備制御を実行するので、全リフトを確実に支持状態とすることができる。また、複数のリフトの全てで支持センサにより支持状態が検知されたことを条件として連動補正制御の実行を開始するので、各リフトの各基準高さを基準とする各リフトの移動量に基づいて、車両を略水平姿勢に保持した状態で、複数のリフトを連動して昇降動作させることができる。
【0016】
(6)また、前記各リフトは、シリンダ空間を有するシリンダ部材を備え、前記駆動源は、前記シリンダ空間へ流体圧を供給する流体圧装置によって構成され、前記昇降体は、前記流体圧装置から前記シリンダ空間へ流体圧が供給されることにより昇降動作するものであって、前記支持状態検知部は、前記シリンダ空間の流体圧に基づいて前記支持状態か前記非支持状態かを検知する。
【0017】
この構成によれば、支持状態検知部は、受台が車両を支持する状態か否かで変化するシリンダ空間の流体圧に基づいて、支持状態か非支持状態かを確実に検知することができる。
【0018】
(7)また、前記高さセンサは、前記支持体と前記昇降体との間の上下方向距離を検出する複数のセンサを備えて構成され、前記複数のセンサの検出結果に基づいて、前記複数のセンサの何れかの異常を検知する高さセンサ異常検知部を備える。
【0019】
この構成によれば、高さセンサ異常検知部は、支持体と昇降体との間の上下方向距離を検出する複数のセンサの検出結果に基づいて、複数のセンサの何れかの異常を検知するので、装置の信頼性向上を図ることができる。
【0020】
(8)また、前記高さセンサを構成する前記各センサは、互いに前記上下方向距離の検出方式が異なる。
【0021】
この構成によれば、互いに上下方向距離の検出方式が異なる複数のセンサで上下方向距離を検出するので、より一層、確実に高さセンサの異常を検知して、信頼性向上を図ることができる。
【0022】
(9)また、前記複数のセンサの一つは、前記昇降体の移動量の検出に基づいて、前記支持体と前記昇降体との間の上下方向距離を検出し、前記複数のセンサの他の一つは、前記支持体に設けられる所定部位と前記昇降体に設けられて前記所定部位と上下に対向する他の所定部位との空間距離の測定に基づいて、前記支持体と前記昇降体との間の上下方向距離を検出する。
【0023】
この構成によれば、複数のセンサの一つは、昇降体の移動量の検出に基づいて、支持体と昇降体との間の上下方向距離を高い精度で検出することができる一方、複数のセンサの他の一つは、支持体に設けられる所定部位と昇降体に設けられて所定部位と上下に対向する他の所定部位との空間距離の測定に基づいて、支持体と昇降体との間の上下方向距離を高い信頼性で検出することができる。よって、リフト高さの検出における精度と信頼性の両方を確保することができる。
【0024】
(10)また、前記複数のセンサの一つは、エンコーダ本体からのワイヤの繰り出し量を計測するワイヤエンコーダによって構成され、前記支持体及び前記昇降体の一方に前記エンコーダ本体が配設され且つ他方に前記ワイヤが連結され、前記複数のセンサの他の一つは、レーザ光を送受光可能なレーザセンサによって構成され、前記支持体及び前記昇降体の一方に前記レーザセンサが配設され且つ他方にレーザ光を反射可能な反射部が配設される。
【0025】
この構成によれば、ワイヤエンコーダを用いて支持体と昇降体との間の上下方向距離を高い精度で検出することができ、レーザセンサを用いて支持体と昇降体との間の上下方向距離を高い信頼性で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両整備用リフト装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る車両整備用リフト装置の全体構成を示す平面図である。
【
図3】実施形態に係る車両整備用リフト装置の全体構成を示す側面図である。
【
図4】制御盤及びリモコンの外観を示す正面図である。
【
図5】リフト機構を含む第1リフトの外観を示す斜視図である。
【
図6】リフト機構の内部構造を移動下限位置にて示す断面模式図である。
【
図7】リフト機構の内部構造を移動上限位置にて示す断面模式図である。
【
図8】車両整備用リフト装置全体の電気的構成を示すハードウエアブロック図である。
【
図9】各センサ出力の処理に関する回路的機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図10】リフト高さと油圧変化との関係を模式的に示すグラフである。
【
図11】メイン制御の流れを示すフローチャートである。
【
図12】位置検出異常チェック処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】リフト指令処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】連動補正処理の流れを示すフローチャート(前半)である。
【
図15】連動補正処理の流れを示すフローチャート(後半)である。
【
図16】動作モードと連動補正ランプの状態との関係を示す図である。
【
図17】作業の流れの一例において初期状態の様子を模式的に示す説明図である。
【
図18】作業の流れの一例において手動操作による車両への位置決めの様子を模式的に示す説明図である。
【
図19】作業の流れの一例において連動補正準備の様子を模式的に示す説明図である。
【
図20】作業の流れの一例において連動補正(全リフト上昇)の様子を模式的に示す説明図である。
【
図21】作業の流れの一例において連動補正(上昇量最大のリフト上昇停止)の様子を模式的に示す説明図である。
【
図22】作業の流れの一例において連動補正(全リフト上昇再開)の様子を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を適用した車両整備用リフト装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0028】
(1.車両整備用リフト装置1の全体構成)
まず、本実施形態に係る車両整備用リフト装置1の全体構成について、
図1乃至
図4を参照しつつ説明する。
図1は車両整備用リフト装置1の全体構成を示す斜視図、
図2は平面図、
図3は側面図である。
図4は、制御盤60及びリモコン70の外観を示す正面図である。
【0029】
車両整備用リフト装置1は、整備工場の床面に凹設された前後方向に延びるピットP内に、複数のリフト機構を配置し、各リフト機構上端の受台で大型車両等の車両のフレームの前後方向における複数箇所を支持し、ピットP上で車両を昇降させる構造を有する装置である。本実施形態において、車両整備用リフト装置1は、ピットP内に設置された4台のリフト、すなわち、第1リフト10、第2リフト11、第3リフト12、及び第4リフト13と、これらを電気的に制御するための制御盤60と、作業者が操作入力するためのリモコン70とを備えて構成される。
【0030】
車両整備用リフト装置1は、より具体的には、
図1等に示すように、ピットPの前端に固定リフトとしての第1リフト10が固定されると共に、ピットPの第1リフト10後方近傍から後端側へ順に、可動リフトとしての第2リフト11、第3リフト12、及び第4リフト13が配置されて前後方向に移動可能に構成されている。
【0031】
また、ピットP開口端面における前後方向において、第1リフト10と第2リフト11との間、第2リフト11と第3リフト12との間、第3リフト12と第4リフト13との間、及び第4リフト13とピットP後端との間には、カバー板C1やリンク機構により折り重ね自在にキャタピラ状に連結した複数の短冊状のカバー素子C2が架け渡されている。
【0032】
そして、ピットPの長手方向に沿って第2~第4リフト11~13が前後方向に移動するのに連動して、カバー素子C2が繰り出してピットPの開口面を塞ぎ、又はピットP内に蛇腹状に折り重なったり(第1、第2リフト10、11間、及び第4リフト13とピットP後端との間)、カバー板C1の下に重なったりするように(第2、第3リフト11、12間、及び第3、第4リフト12、13間)設けられている。
【0033】
第1リフト10は、ピットP前端に固定される固定リフトであって、リフト機構20と、受台30とを備えて構成される。リフト機構20の構成の詳細については(2.リフト機構20の構成)で後述する。
【0034】
受台30は、車両を支持する部材であって、主台31と、一対のスライド板32,32とを備えて構成される。主台31は、後述する油圧シリンダ22におけるラム22cの外径よりも幅の広い平面視長方形状に形成され、ラム22cの上端に取り付けられている。
【0035】
一対のスライド板32,32は、主台31の上部において、それぞれ左右へスライドさせて両側に張り出すことができるように取り付けられている。各スライド板32の上面には凹部32aが形成され、車両のフレームに係合させて支持可能なアタッチメント(図示せず)を装着可能となっている。
【0036】
第2~第4リフト11~13は、ピットPを前後方向に移動可能に配置され、互いに同一構造を有する可動リフトであって、リフト機構20と、受台30と、ローラー40とをそれぞれ備えて構成される。リフト機構20は、第1リフト10に設けられるものと同一構造を有するものである。リフト機構20の構成の詳細については(2.リフト機構20の構成)で後述する。
【0037】
また、第2~第4リフト11~13に設けられる受台30は、上述した第1リフト10に設けられる受台30と同様の構造を有するので、詳細な説明を省略する。但し、受台30は、第1リフト10に設けられるものと比較して左右方向の長さが小さく設定されている。これは、第1リフト10は、多くの構造物が存在する車両の前部の下面を支持するために使用されるのに対し、第2~第4リフト11~13は主に車両の前後方向中央~後部のフレームを支持するために使用されることが多いことによる。
【0038】
ローラー40は、第2~第4リフト11~13のそれぞれ前後左右に設けられる。各ローラー40がピットPの開口部に設けられた走行レール上を走行することで、第2~第4リフト11~13は、固定リフトとしての第1リフト10と離接する前後方向へ移動可能に構成されている。このように第2~第4リフト11~13を第1リフト10と離接する方向へ移動することで前軸と後軸間が異なる車両でも車両の前軸と後軸を支持することができるため、多くの種類の車両に対応可能となっている。
【0039】
制御盤60は、車両整備用リフト装置1の各部を制御する制御回路61を備える装置であり、
図4に示すように、非常停止ボタン62と、連動補正ランプ付きスイッチ63と、連動補正故障解除スイッチ64と、ブザー65と、連動補正故障ランプ66とを備えている。制御盤60は、ケーブルを介してリモコン70が電気的に接続されている。尚、制御盤60の電気的構成については、後述の(3.車両整備用リフト装置1の電気的構成)で詳細に説明する。
【0040】
リモコン70は、制御盤60へ昇降操作等の指令を行うための操作入力装置である。リモコン70は、
図4に示すように、第1~第4リフト選択ボタン71~74と、上昇ボタン75と、下降ボタン76と、信号通信部79(
図4にて図示せず。
図8参照。)とを有し、押下されたボタンの種類に対応する信号を信号通信部79からケーブルを介して制御盤60へ送信できるようになっている。但し、リモコン70と制御盤60との接続は、ケーブルによる有線接続に限られず、電波や光等による無線接続でも構わない。
【0041】
(2.リフト機構20の構成)
次に、リフト機構20の構成について、
図5乃至
図7を参照しつつ説明する。
図5は、リフト機構20を含む第1リフト10の外観を示す斜視図である。
図6はリフト機構20の内部構造をリフト下限位置にて示す断面模式図、
図7は同じくリフト上限位置にて示す断面模式図である。尚、
図5では外筒21の内部構造を見易くするために、一部の部材の図示を省略している。
【0042】
リフト機構20は、
図5乃至
図7に示すように、外筒21と、油圧シリンダ22と、油圧ユニット23を備えて構成される。
【0043】
外筒21は、鋼製の有底角筒体であって、上縁部がピットP開口縁に固定支持されることによりピットP内に吊り下げ状に配設されている。外筒21は、内部に油圧シリンダ22を収容して底部で支持している。尚、外筒21が本発明の「支持体」を構成するものである。
【0044】
油圧シリンダ22は、
図6及び
図7に示すように、ピストン22aと、シリンダパイプ22bと、ラム22cとを備え、これらが互いに略同一の軸方向長さに形成され且つ同軸に配置されて構成される。
【0045】
ピストン22aは、ピストンロッド22a1と、ピストンヘッド22a2とを備えて構成される。ピストンロッド22a1は、上下方向に延びる中空丸棒であり、下端が閉塞されて外筒21底部に固定されている。ピストンロッド22a1の下部には、圧油管23aが接続され、油圧ユニット23から送出される圧油が圧油管23aを通して中空内に供給されるようになっている。ピストンロッド22a1の中空上端は開放されてシリンダ空間22b1に臨み、シリンダ空間22b1へ圧油を供給する。ピストンヘッド22a2は、ピストンロッド22a1の上部外周に固定されている。
【0046】
シリンダパイプ22bは、円筒体であって、上端がシリンダキャップ22dで閉塞されると共に、下端から内周にピストン22aが挿入され、内周面がピストンヘッド22a2外周に上下に摺動するようになっている。そして、シリンダパイプ22bの内周面と、ピストンヘッド22a2上端面と、シリンダキャップ22d下端面とで囲まれた円筒状の内部空間がシリンダ空間22b1となっている。
【0047】
ラム22cは、シリンダパイプ22bよりもひと回り大径(直径が2倍程度)の円筒体であって、シリンダパイプ22bの外周に同軸に配置され、上下両端でシリンダパイプ22bに固定されて一体化されている。ラム22cの上端には、受台30が取り付けられる。また、ラム22cの外側面には、軸方向に沿って一定間隔毎に複数個の切り欠きを設けた降下止め用のラック22eが固定されている。車両の昇降を行わない時、ラック22eの切り欠きに降下止め安全装置に設けた切り欠きに係合する降下止め爪を係合させてラム22cの降下を防止するようになっている。また、ラム22cの下端には、反射板22fが側方へ張り出すように取り付けられている。反射板22fは、レーザ光を反射可能な表面の平坦な金属板である。さらに、ラム22cの下端において、反射板22fとは周方向に異なる位置に、上下限検出用のドック22gが側方へ突設されている。
【0048】
油圧ユニット23は、外筒21の外側面に取り付けられ、圧油管23aを通してシリンダパイプ22b内に圧油を供給する。シリンダパイプ22bによって導かれた圧油は、上端の開口からシリンダ空間22b1に送り込まれ、シリンダパイプ22bと一体化されたラム22cを油圧力により上昇させる。
【0049】
リフト機構20は、さらに、ラム22cの昇降高さを検知する高さセンサとして、互いに検出方式の異なるワイヤエンコーダ51及びレーザセンサ52を備えている。
【0050】
ワイヤエンコーダ51は、エンコーダ本体51aと、ワイヤ51bとを備えて構成される。エンコーダ本体51aは、回転角に応じてパルス信号を出力するロータリエンコーダを内蔵し、外筒21上部の外側面に取り付けられる。ワイヤ51bは、エンコーダ本体51aから繰り出し巻き取り自在にロータリエンコーダと同軸に巻回されている。エンコーダ本体51aから繰り出されたワイヤ51bは、プーリを介して外筒21内を下方へ案内されて、その先端がラム22c下端の反射板22fに固定されている。ワイヤエンコーダ51は、ラム22cの昇降に伴ってワイヤ51bを介してロータリエンコーダが回転することで回転角に応じてパルス信号が出力され、パルス数のカウントによりラム22cの移動量を高精度に検出することができる。
【0051】
レーザセンサ52は、レーザ光を発光及び受光可能な非接触式の距離センサである。レーザセンサ52は、外筒21上部の内側面において、ラム22c下端に取り付けられた反射板22fに対向する位置で、レーザ光の受発光部を下向き姿勢にして取り付けられる。レーザセンサ52は、反射板22f上面との間の往復時間に基づいて、レーザセンサ52と反射板22fとの間の空間距離を計測することができる。ワイヤエンコーダ51が上下方向距離を相対値としての移動量で計測する方式であるのに対し、レーザセンサ52は上下方向距離を絶対値としての空間距離で計測する方式である。つまり、ワイヤエンコーダ51は計測精度の点でより有利である一方、レーザセンサ52は機械的な不具合に起因して大きな計測誤差が生じることがないため信頼性の点でより有利である。
【0052】
リフト機構20は、さらに、下限リミットスイッチ53と、上限リミットスイッチ54とを備えている。下限リミットスイッチ53は、ラム22cが移動下限位置にあることを検知して下限LS信号を出力する回動式リミットスイッチであり、外筒21下部の内側面に設けられる。下限リミットスイッチ53は、ラム22cが移動下限以外の位置にあるときは上向き傾斜姿勢となるように取り付けられている。そして、ラム22cが移動下限位置にあるときは、ドック22gが下限リミットスイッチ53の先端に当接し、時計回りに回動して水平姿勢となって下限LS信号が出力される。
【0053】
上限リミットスイッチ54は、ラム22cが移動上限位置にあることを検知して上限LS信号を出力する回動式リミットスイッチであり、外筒21上部の内側面に設けられる。上限リミットスイッチ54は、ラム22cが移動上限以外の位置にあるときは下向き傾斜姿勢となるように取り付けられている。そして、ラム22cが移動上限位置にあるときは、ドック22gが上限リミットスイッチ54の先端に当接し、反時計回りに回動して水平姿勢となって上限LS信号が出力される。
【0054】
(3.車両整備用リフト装置1の電気的構成)
次に、車両整備用リフト装置1の電気的構成について
図8を参照しつつ説明する。
図8は、車両整備用リフト装置1全体の電気的回路構成を示すハードウエアブロック図である。車両整備用リフト装置1は、
図8に示すように、第1~第4リフト10~13内の各部と、制御盤60と、リモコン70とを備える。
【0055】
第1~第4リフト10~13は、ワイヤエンコーダ51と、レーザセンサ52と、下限リミットスイッチ53と、上限リミットスイッチ54とが外筒21に設けられ、上昇駆動部24と、下降駆動部25と、圧力センサ26とが油圧ユニット23に設けられて構成される。外筒21に設けられる各部(ワイヤエンコーダ51等)については説明済みであるので、説明を省略する。
【0056】
上昇駆動部24は、モータ(図示せず)をオンにして一定回転でモータを駆動することによってホンプPMを作動して、ポンプPMの吐出圧油を油圧シリンダ22に供給することにより、第1~第4リフト10~13を上昇動作させる。また、上昇駆動部24は、モータをオフしてポンプPMを非作動にすることにより、第1~第4リフト10~13の上昇動作を停止させる。
【0057】
下降駆動部25は、リフトバルブ(図示せず) を開いて、油圧シリンダ22に供給された作動油をオイルタンク(図示せず)へ戻すことにより、第1~第4リフト10~13を下降動作させる。また、下降駆動部25は、リフトバルブを閉じることにより、第1~第4リフト10~13の下降動作を停止させる。
【0058】
圧力センサ26は、流体圧を検出可能な公知のセンサであって、ポンプPMとシリンダパイプ22bとの間に設けられる圧油供給管よりピストンロッド22a1を経てシリンダ空間22b1へ導入された圧油の流体圧を測定する。圧力センサ26の油圧測定値が所定の判定閾値OPth以上になると、後述する支持状態検知部6123によって、受台30が車両を支持する支持状態であることが検知される。
【0059】
制御盤60は、制御回路61と、非常停止ボタン62と、連動補正ランプ付きスイッチ63と、連動補正故障解除スイッチ64と、ブザー65と、連動補正故障ランプ66とを備えて構成される。
【0060】
制御回路61は、センサ入力部611と、演算部612と、記憶領域613とを備えて構成される。センサ入力部611は、ワイヤエンコーダ51、レーザセンサ52及び圧力センサ26から送られた信号を演算部612へ入力するための電気電子回路であり、詳しくは後述する。演算部612及び記憶領域613は、中央演算部としてのCPUと、ROM及びRAM等とを備える公知のマイコン(マイクロコンピュータ)によって構成される。記憶領域613は、後述する基準高さH0を記憶する基準高さ記憶部613aをRAM上に備える。
【0061】
非常停止ボタン62は、第1~第4リフト10~13の昇降動作を非常停止するための操作ボタンである。非常停止ボタン62が押下されると、演算部612を介して第1~第4リフト10~13へ非常停止指令が出力され、第1~第4リフト10~13の昇降動作が直ちに停止する。
【0062】
連動補正ランプ付きスイッチ63は、第1~第4リフト10~13の連動補正を開始するための操作ボタンであって、公知のLED(発光ダイオード)からなる連動補正ランプ63aを備えている。連動補正ランプ付きスイッチ63は、初期状態ではLEDが消灯しており、消灯中に連動補正ランプ付きスイッチ63が押下されると点灯し、第1~第4リフト10~13の連動補正準備動作が開始される。第1~第4リフト10~13のすべてで車両の支持状態が検知されると、連動補正準備動作が終了し、LEDが点滅して連動補正動作が開始される。つまり、連動補正ランプ63aは、「消灯」が手動操作により動作する手動操作モード(リモコン70の操作により各リフトを個別に昇降動作させる状態)を、「点灯」が連動補正準備モードを、「点滅」が連動補正モードをそれぞれ示している(
図16参照)。
【0063】
連動補正故障解除スイッチ64は、連動補正故障が発生した後、修理作業によって故障が解消された場合に故障モードを解除するための操作スイッチである。連動補正故障モード中に連動補正故障解除スイッチ64が押下されると、演算部612によって連動補正故障モードが解除され、第1~第4リフト10~13の連動補正動作が再開される。
【0064】
ブザー65は、公知のブザー装置からなり、連動補正故障が発生した場合に、演算部612からの指令により警報音を発生させる。連動補正故障ランプ66は、公知のLEDからなり、連動補正故障が発生した場合に、演算部612からの指令により点灯する。
【0065】
(4.各センサ出力の処理に関する機能的回路構成)
次に、車両整備用リフト装置1に設けられる各センサの機能的回路構成について
図8を参照しつつ説明する。
図9は、各センサ出力の処理に関する機能的回路構成を示すブロック図である。
図10は、リフト高さと油圧変化との関係を模式的に示すグラフである。
【0066】
制御回路61は、センサ入力部611と、演算部612と、記憶領域613とを備えている。センサ入力部611は、I/V変換部6111と、A/D変換部6112と、高速カウンタ6113とを備える。I/V変換部6111は、電流/電圧変換を行う電気電子回路であって、レーザセンサ52から出力される電流信号を電圧信号に変換する。A/D変換部6112は、アナログ信号をデジタル信号へ変換する電気電子回路であって、I/V変換部6111によって電圧に変換されたレーザセンサ52のアナログ信号をデジタル信号に変換して演算部612に入力する。
【0067】
高速カウンタ6113は、パルス信号の発生数(以下、パルス数)を高速に計測する電気電子回路であって、ワイヤエンコーダ51のパルス数を計測して演算部612に入力する。
【0068】
演算部612は、レーザセンサ・リフト高さ換算部6121と、ワイヤエンコーダ・リフト高さ換算部6122と、支持状態検知部6123と、センサ間差分算出部6124と、リフト間差分算出部6125と、高さセンサ異常検知部6126と、連動制御部6127とを備える。
【0069】
レーザセンサ・リフト高さ換算部6121は、レーザセンサ52によって検出された空間距離(レーザセンサ52と反射板22fとの間の距離を表す絶対値)を、リフト高さに換算して算出する。尚、本実施形態において、「リフト高さ」は、ラム22cの移動下限位置を基準(0)としたときの高さ位置を意味する。ワイヤエンコーダ・リフト高さ換算部6122は、ワイヤエンコーダ51によって検出された移動量(移動下限位置からの移動量を表す相対値)をリフト高さに換算して算出する。
【0070】
支持状態検知部6123は、圧力センサ26によって測定された油圧に基づいて、車両が受台30によって支持されている支持状態か、受台30によって支持されていない非支持状態かを所定時間間隔で検知する。具体的には、支持状態検知部6123は、油圧が所定の判定閾値OPth以上の場合は支持状態と検知し、判定閾値OPth未満以上の場合は非支持状態と検知する。そして、ラム22cの上昇中に圧力センサ26によって測定された油圧が上昇して判定閾値OPth未満から判定閾値OPth以上になったと判定されたとき、換言すれば、支持状態検知部6123によって非支持状態から支持状態になったことが検知されたとき、ワイヤエンコーダ・リフト高さ換算部6122により算出されたリフト高さHEの値が、基準高さH0として記憶領域613に記憶される。
【0071】
以下、
図10を参照しながら、リフト高さの上昇に伴う油圧変化の一例を示しつつ、基準高さH0を記憶領域613に記憶する流れについて説明する。ラム22cが下端に位置するリフト高さ0の状態で、油圧ユニット23からシリンダ空間22b1へ圧油が送り込まれると、ラム22cの昇降高さ、すなわちリフト高さが上昇していく。受台30が車両の下面に当接していない間、圧力センサ26で測定される油圧は、略一定の最小値OPminで推移する。このとき、油圧OPminは判定閾値OPth未満であるので、支持状態検知部6123は非支持状態であると検知する。
【0072】
ラム22cがさらに上昇して受台30が車両の下面に当接すると、リフト高さの上昇と共に油圧が上昇していく。そして、油圧が判定閾値OPth以上になると、支持状態検知部6123は支持状態であると検知し、その時点のリフト高さHthから移動距離の監視(すなわち計測)が開始される。次に、リフト高さHthから一定のバッファ距離BD上昇した後、再度、支持状態検知部6123は、油圧が判定閾値OPth以上か否かの判定に基づいて、支持状態か非支持状態かを検知する。バッファ距離BDは、全リフトに同一の値、例えば、20~30mm程度の所定値に予め設定されている。
【0073】
リフト高さHthからバッファ距離BD上昇後に、再度、支持状態検知部6123によって油圧が判定閾値OPth以上と判定された場合、その時点でワイヤエンコーダ・リフト高さ換算部6122により算出されたリフト高さの値HEが、基準高さH0として記憶領域613の基準高さ記憶部613aに記憶される。このように油圧が最初に判定閾値OPth以上と判定された後、バッファ距離BD上昇後に油圧が再び判定閾値OPth以上であると判定されたときのリフト高さを基準高さH0とするので、車両の支持状態が確定した時点のリフト高さを基準高さH0とすることができる。基準高さ記憶部613aに記憶された基準高さH0は、連動制御部6127における制御に使用される。つまり、本実施形態において、本発明の「前記支持状態検知部によって前記非支持状態から前記支持状態となったことが検知されたとき」とは、油圧が最初に判定閾値OPth以上と判定された時のリフト高さHthからバッファ距離BD上昇後、再度、油圧が判定閾値OPth以上と判定されて支持状態が確定した時を意味する。尚、
図10では、リフト高さHthからバッファ距離BD上昇後の油圧が最大値OPmax(≧OPth)となっている例を示している。
【0074】
一方、リフト高さHthからバッファ距離BD上昇した後、油圧が判定閾値OPth未満となった場合、移動距離の監視を終了する。そして、油圧が上昇して判定閾値OPth以上になると、再度、リフト高さHthからの移動距離の監視及び基準高さH0の記憶のやり直しが行われる。例えば、当該リフトと他のリフトとのリフト高さの相対変化に起因して当該リフトにおける車両下面への当接状態が変化して、一旦は判定閾値OPth以上まで上昇した油圧が途中で判定閾値OPth未満まで低下する現象が発生した場合、上述した移動距離の監視及び基準高さH0の記憶のやり直しが行われる。
【0075】
センサ間差分算出部6124は、ワイヤエンコーダ・リフト高さ換算部6122により算出されたリフト高さHEと、レーザセンサ・リフト高さ換算部6121により算出されたリフト高さHLとの差分(HE-HL)を算出する。リフト間差分算出部6125は、ワイヤエンコーダ・リフト高さ換算部6122により算出されたリフト高さHEと記憶領域613の基準高さ記憶部613aに記憶される基準高さH0との差分(HE-H0)、すなわち基準高さH0の高さ位置を基準(0)とする現在の高さ位置(上昇量)を算出する。
【0076】
高さセンサ異常検知部6126は、センサ間差分算出部6124により算出された差分(HE-HL)の値に基づいて位置検出異常の発生をチェックする。連動制御部6127は、第1~第4リフト10~13の各基準高さH0を基準とする各リフトの移動量に基づいて、車両を略水平姿勢に保持した状態で、第1~第4リフト10~13を連動して昇降動作させる。尚、制御回路61に含まれるCPUは、後述する位置検出異常チェック処理S3を実行することによって高さセンサ異常検知部6126として機能すると共に、連動補正処理S50を実行することによって連動制御部6127として機能する。
【0077】
(5.メインルーチンの流れ)
次に、制御盤60によって実行されるメインルーチンの流れについて、
図11を参照しつつ説明する。
図11は、メインルーチン全体の流れを示すフローチャートである。メインルーチンでは、ステップ1(以下、S1と略記する。他のステップも同様。)で、システムを初期化した後、接点入力処理S2、位置検出異常チェック処理S3、及びリフト指令処理S4を順に繰り返し実行する無限ループとなっている。以下、接点入力処理S2~リフト指令処理S4の各処理内容について説明する。
【0078】
接点入力処理S2では、制御盤60に設けられる非常停止ボタン等の各種ボタン、リモコン70に設けられる上昇ボタン等の各種ボタン、第1リフト10~第4リフト13に設けられる下限リミットスイッチ53等に接点入力状態をマイクロコンピュータである演算部612のI/Oポートから読み取り、内部の接点入力情報として保持する。
【0079】
位置検出異常チェック処理S3では、ワイヤエンコーダ51の出力及びレーザセンサ52の出力に基づいて、高さ位置検出における異常の有無をチェックする処理を行う。
【0080】
リフト指令処理S4では、制御盤60やリモコン70における各種ボタンの入力に応じて第1~第4リフト10~13へ各種動作を指令し、接点入力処理S2によって作成された接点入力情報に基づいて、上昇、下降、停止等の動作に関する処理を行う。リフト指令処理S4では、連動補正動作などの処理も行う。リフト指令処理S4の内容は、後述の(7.リフト指令処理S4の流れ)で詳細に説明する。
【0081】
(6.位置検出異常チェック処理の流れ)
次に、位置検出異常チェック処理S3の流れについて、
図12を参照しつつ説明する。
図12は、位置検出異常チェック処理全体の流れを示すフローチャートである。位置検出異常チェック処理S3は、第1~第4リフト10~13における高さ位置の検出異常の有無をチェックする処理をする。
【0082】
位置検出異常チェック処理S3が開始されると、
図12に示すように、S30でワイヤエンコーダ51からリフト高さHEの取込みを行う。続いて、S31でレーザセンサ52からリフト高さHLの取り込みを行う。次に、S32でリフト高さHEとリフト高さHLとの差分(HE-HL)を算出する(
図9のセンサ間差分算出部6124に対応)。
【0083】
次に、S33で、差分(HE-HL)から正負を除いた差分の絶対値|HE-HL|が、所定の異常閾値Hth以上か否かを判定する。
【0084】
差分の絶対値|HE-HL|が異常閾値Hth以上の場合(S33:Yes)、S34でセンサ異常出力が行われる。すなわち、ワイヤエンコーダ51に異常が発生している場合であるため、センサ異常の発生を報知する。S34の後、S35へ進む。
【0085】
一方、差分の絶対値|HE-HL|が異常閾値Hth未満の場合(S33:No)、ワイヤエンコーダ51は正常であるとして、そのままS35へ進む。
【0086】
次に、S35でリフト高さHE又はリフト高さHLが下限位置を示し且つ下限リミットスイッチ53がオフであるという条件を満たすか否かを判定する。
【0087】
S35の条件を満たす場合(S35:Yes)、S36で下限検出異常出力が行われる。すなわち、リフト高さHE又はリフト高さHLが下限位置を示すにもかかわらず下限リミットスイッチ53がオンになっていない場合、或いは、リフト高さHE又はリフト高さHLが下限位置を示していないにもかかわらず下限リミットスイッチ53がオンである場合、下限検出異常の発生を報知する。S36の後、位置検出異常チェック処理を終了する。
【0088】
一方、S35の条件を満たさない場合(S35:No)、下限検出に異常の発生は認められないとして、そのまま位置検出異常チェック処理を終了する。
【0089】
(7.リフト指令処理S4の流れ)
次に、リフト指令処理S4の流れについて、
図13及び
図16を参照しつつ説明する。
図13は、リフト指令処理全体の流れを示すフローチャートである。
図16は、動作モードと連動補正ランプ63aの状態との関係を示す図である。リフト指令処理S4は、制御盤60やリモコン70における各種ボタンの入力に応じて信号通信部79及びケーブルを介して、第1~第4リフト10~13へ各種動作を指令し、接点入力処理S2によって作成された接点入力情報に基づいて、上昇、下降、停止等の動作に関する処理を行う。
【0090】
リフト指令処理S4が開始されると、
図13に示すように、最初にS40で位置検出異常が発生しているか否かを判定する。位置検出異常が発生している場合(S40:Yes)、そのままリフト指令処理S4を終了する。
【0091】
位置検出異常が発生していない場合(S40:No)、S41で連動補正ランプ63aが点灯中か否かを判定する。連動補正ランプ63aが点灯中でない場合(S41:No)、S42で連動補正ランプ63aが点滅中か否かを判定する。
【0092】
連動補正ランプ63aが点滅中でない、すなわち消灯中の場合(S42:No)、S43で第1~第4リフト10~13の全リフトで下限が検出されたか否かを判定する。尚、連動補正ランプ63aの消灯は、現在の動作モードが手動操作モードであることを示している(
図16参照)。全リフトで下限が検出されていない場合(S43:No)、S44で手動操作モードを継続し、本ルーチンを終了する。
【0093】
第1~第4リフト10~13の全リフトで下限が検出された場合(S43:Yes)、S45で連動補正ランプ付きスイッチ63が押下されたか否かを判定する。連動補正ランプ付きスイッチ63が押下されていない場合(S45:No)、S44で手動操作モードを継続し、本ルーチンを終了する。
【0094】
連動補正ランプ付きスイッチ63が押下された場合(S45:Yes)、S46で連動補正準備を開始し、S47で第1~第4リフト10~13の全リフトを同時に上昇させる。次に、S48で、第1~第4リフト10~13の全リフトで支持状態が検出されたか否かを判定する。第1~第4リフト10~13のいずれかで支持状態が検出されていない場合(S48:No)、本ルーチンを終了する。
【0095】
第1~第4リフト10~13の全リフトで支持状態が検出された場合(S48:Yes)、S49で連動補正処理を開始し、S50で連動補正処理を実行して本ルーチンを終了する。S50の連動補正処理の詳細については後述する。
【0096】
一方、S42において、連動補正ランプ63aが点滅中の場合(S42:Yes)、S50へ進んで連動補正処理を継続する。尚、連動補正ランプ63aの点滅は、現在の動作モードが連動補正モードであることを示している(
図16参照)。
【0097】
また、S41において、連動補正ランプ63aが点灯中の場合(S41:Yes)、S47へ進んで連動補正準備処理としてリフト上昇を継続する。尚、連動補正ランプ63aの点灯は、現在の動作モードが連動補正準備モードであることを示している(
図16参照)。
【0098】
(8.連動補正処理S50の流れ)
次に、連動補正処理S50の流れについて、
図14及び
図15を参照しつつ説明する。
図14は連動補正処理S50の流れを示すフローチャートの前半であり、
図15はその後半である。連動補正処理S50は、第1~第4リフト10~13の全リフトを、リフト間の移動量に過大な差が生じないように補正しながら、連動して昇降させる処理である。
【0099】
連動補正処理S50が開始されると、最初にS51で、第1~第4リフト10~13の何れかのリフトで上限検出されたか否かを判定する。各リフトの上限リミットスイッチ54がオンである場合、上限検出される。何れかのリフトで上限検出された場合(S51:Yes)、S52で第1~第4リフト10~13の全リフトの上昇を禁止して、本ルーチンを終了する。
【0100】
第1~第4リフト10~13の何れのリフトでも上限検出されない場合(S51:No)、S53で第1~第4リフト10~13の何れかのリフト高さが基準高さH0未満か否かを判定する。何れかのリフト高さが基準高さH0未満でない、換言すれば、全リフトが基準高さH0に到達している場合(S53:No)、S54で各リフトの基準高さH0からの移動量の最大差が第1閾値以上か否かを判定する。第1閾値は、装置の仕様に応じて、例えば、30mm~70mmの間の所定値に予め設定されている。ここで、各リフトの基準高さH0からの移動量の最大差は、第1~第4リフト10~13の各リフトの基準高さH0からの移動量(4つ)のうち、最大の値と最小の値との差である。各リフトの基準高さH0からの移動量の最大差が第1閾値未満の場合(S54:No)、すなわち移動量の最大値が車両を略水平に保持可能な範囲内である場合、S55で第1~第4リフト10~13の全リフトについて昇降処理を実行し、本ルーチンを終了する。
【0101】
各リフトの基準高さH0からの移動量の最大差が第1閾値以上の場合(S54:Yes)、S57で各リフトの基準高さH0からの移動量の最大差が第2閾値以上か否かを判定する。尚、第2閾値は、第1閾値よりも大きい値であって、装置の仕様に応じて、例えば、80mm~100mmの間の所定値に予め設定されている。各リフトの基準高さH0からの移動量の最大差が第2閾値以上の場合(S57:Yes)、S67でリフト段差異常を出力して本ルーチンを終了する。リフト段差異常が出力されると、連動補正故障モードに入ってブザー65が警報音を発生させると共に連動補正故障ランプ66が点灯する。そして、修理作業が終了した後、連動補正故障解除スイッチ64を押下することにより、連動補正故障モードが解除される。
【0102】
各リフトの基準高さH0からの移動量の最大差が第2閾値未満の場合(S57:No)、S58で、上昇中か、或いは下降中かを判定する。S58で上昇中と判定された場合、S59で、移動量最大のリフトは上昇を停止し、残りのリフトは上昇を継続する。
【0103】
続いて、S60において、上昇を継続する残りのリフトのうち、S59で最初に上昇停止したリフトの移動量に到達したリフトは、上昇を停止する。次に、S61で、全リフトの移動量が同一になったかを判定する。全リフトの移動量が同一になった場合(S61:Yes)、S62で全リフトの上昇を許可し、本ルーチンを終了する。つまり、全リフトの上昇が再開される。
【0104】
全リフトの上昇量が同一になっていない場合(S61:No)、そのまま本ルーチンを終了する。つまり、最初に上昇停止したリフトの移動量に到達していないリフトの上昇が継続する。
【0105】
一方、S58で下降中と判定された場合、S63で、下降量最大のリフトは下降を停止し、残りのリフトは下降を継続する。続いて、S64において、下降を継続する残りのリフトのうち、S63で最初に下降停止したリフトの下降量に到達したリフトは、下降を停止する。次に、S65で、全リフトの下降量が同一になったかを判定する。全リフトの下降量が同一になった場合(S65:Yes)、S66で全リフトの下降を許可し、本ルーチンを終了する。
【0106】
全リフトの下降量が同一になっていない場合(S65:No)、そのまま本ルーチンを終了する。つまり、最初に下降停止したリフトの移動量に到達していないリフトの下降が継続する。
【0107】
(9.作業の流れの一例)
次に、車両整備用リフト装置1における作業の流れの一例について、
図17乃至
図22を中心に参照しつつ説明する。
図17は作業の流れの一例において初期状態の様子を、
図18は手動操作による車両への位置決めの様子を、
図19は連動補正準備の様子を、
図20は連動補正(全リフト上昇)の様子を、
図21は連動補正(上昇量最大のリフト上昇停止)の様子を、
図22は連動補正(全リフト上昇再開)の様子を、それぞれ模式的に示す説明図である。尚、以下の説明において、リフト指令処理S4又は連動補正処理S50の各フローチャートにおける該当するステップを括弧書きにて示す。
【0108】
まず、整備対象の車両を車両整備工場のフロア内でピットPが真下となる位置に駐車させる。初期状態では、
図17に示すように、第1~第4リフト10~13は、ピットP内のリフト下限位置で停止している。
【0109】
次に、
図18に示すように、第1~第4リフト10~13をそれぞれ個別に手動操作で上昇させ、車両の下面に位置決めする。車両下面の高さは前後方向位置によって異なるため、第1~第4リフト10~13のリフト高さも互いに異なっている。
【0110】
次に、連動補正ランプ付きスイッチ63を押下すると(S45)、
図19に示すように、連動補正準備が開始され(S46)、第1~第4リフト10~13が同時に上昇する(S47)。第1~第4リフト10~13では、それぞれ圧力センサ26の出力に基づいて支持状態検知部6123によって車両の非支持状態から支持状態になったことが検知されると、ワイヤエンコーダ51によって検出されたリフト高さが基準高さとして記憶領域613の基準高さ記憶部613aに記憶される。
【0111】
次に、第1~第4リフト10~13の全リフトで支持状態が検出されると(S48:Yes)、
図20に示すように、連動補正処理が開始され(S49)、連動補正処理が実行される(S50)。
【0112】
次に、連動補正処理中に第1~第4リフト10~13の基準高さH0からの移動量の最大差が第1閾値以上となった場合(S54:Yes)、上昇量最大のリフト(
図21では第4リフト13)が上昇停止すると共に残りのリフト(
図21では第1~第3リフト10~12)は上昇を継続し(S58:上昇中、S59)、最初に停止したリフトの上昇量に到達したリフトから順に上昇を停止する(S60)。
【0113】
そして、
図22に示すように、第1~第4リフト10~13の全リフトの移動量が同一になった場合(S61:Yes)、全リフトの上昇が許可されて同時上昇が再開される(S62)。尚、下降時における連動補正処理については、上述した上昇時の処理と移動方向が異なる点を除いて同様の流れであるので(S58:下降中、S63~S66)、説明を省略する。
【0114】
(10.まとめ)
本実施形態の車両整備用リフト装置1は、車両を支持する受台30と、床面に凹設されて前後方向に延びるピットPに固定される支持体としての外筒21と、受台30が上端に設けられて外筒21によって昇降可能に支持される昇降体としての油圧シリンダ22のラム22cと、ラム22cを昇降動作させる駆動源としての油圧ユニット23とを備える第1~第4リフト10~13を、ピットP内に複数配置してなる装置である。第1~第4リフト10~13はそれぞれ、ラム22cの昇降高さであるリフト高さを検知する高さセンサとしてのワイヤエンコーダ51と、車両が受台30によって支持されている支持状態か支持されていない非支持状態かを検知する支持状態検知部6123と、支持状態検知部6123によって支持状態が検知されたとき、ワイヤエンコーダ51によって検知されたリフト高さHEを第1~第4リフト10~13の基準高さH0として記憶する基準高さ記憶部613aと、を備える。そして、車両整備用リフト装置1は、第1~第4リフト10~13の各基準高さH0を基準とする各リフトの移動量に基づいて、車両を略水平姿勢に保持した状態で、第1~第4リフト10~13を連動して昇降動作させる連動制御部6127を備える。
【0115】
この構成によれば、第1~第4リフト10~13の各リフトにおいて支持状態検知部6123によって、車両が受台30によって支持されている支持状態が検知されたときのリフト高さである基準高さH0を基準とする移動量に基づいて、第1~第4リフト10~13からなる複数のリフトを連動して昇降動作させる。つまり、各リフトで受台30の車両への取付け状態にばらつきが生じることなく、車両を複数の受台30で略水平姿勢に支持した状態で、第1~第4リフト10~13からなる複数のリフトを連動して昇降動作させることができる。よって、複数のリフトが正確に連動して昇降動作することができるという効果を奏する。
【0116】
また、連動制御部6127は、第1~第4リフト10~13間における移動量の最大差が第1閾値未満の場合、第1~第4リフト10~13の全ての昇降動作を継続させると共に、最大差が第1閾値以上の場合、移動量が最大である特定のリフトの昇降動作を停止させ且つ残りの各リフトの昇降動作を継続させる、連動補正処理S50を実行する。
【0117】
この構成によれば、連動補正処理S50の実行により、第1~第4リフト10~13間における移動量の最大差が第1閾値未満の場合、第1~第4リフト10~13の全てのリフトの昇降動作を継続させるので、車両を略水平姿勢に保持した状態で円滑に昇降させることができる。一方、最大差が第1閾値以上の場合、移動量が最大である特定のリフトの昇降動作を停止させ且つ残りの各リフトの昇降動作を継続させるので、第1~第4リフト10~13間の移動量の差が過大となることを防止して安全性を確保することができる。
【0118】
また、連動制御部6127は、最大差が第1閾値以上の場合に昇降動作を継続する残りの各リフトは、その移動量が昇降動作停止中の特定のリフトの移動量に到達すると昇降動作を停止する。
【0119】
この構成によれば、最大差が第1閾値以上の場合に昇降動作を継続する残りの各リフトは、その移動量が昇降動作停止中の特定のリフトの移動量に到達すると昇降動作を停止するので、最終的に第1~第4リフト10~13の全リフトが同一の移動量となって車両を確実に略水平姿勢に支持することができる。
【0120】
また、連動制御部6127は、最大差が第1閾値よりも大きい第2閾値以上の場合、異常の発生を検知する。
【0121】
この構成によれば、リフト間の最大差が第1閾値よりも大きい第2閾値以上の場合、異常の発生を検知するので、昇降動作を停止して装置の点検や修理を行うことができる。
【0122】
また、連動補正処理S50の開始指令を入力する指令入力部としての連動補正ランプ付きスイッチ63を備え、連動制御部6127は、連動補正ランプ付きスイッチ63によって連動補正制御の開始指令が入力された場合、第1~第4リフト10~13の各リフトにおいて支持状態検知部6123により支持状態が検知されない間は昇降動作を継続させる連動補正準備(S46~S48)を実行すると共に、第1~第4リフト10~13の全てで支持状態検知部6123により支持状態が検知されたことを条件として(S48;Yes)、連動補正処理の実行を開始する(S50)。
【0123】
この構成によれば、連動補正ランプ付きスイッチ63によって連動補正制御の開始指令が入力されると、第1~第4リフト10~13の各リフトにおいて支持状態検知部6123により支持状態が検知されない間は上昇動作を継続させる準備制御(S46~S48)を実行するので、全リフトを確実に支持状態とすることができる。また、第1~第4リフト10~13の全てで支持状態が検知されたことを条件として連動補正制御の実行を開始するので、各リフトの各基準高さを基準とする各リフトの移動量に基づいて、車両を略水平姿勢に保持した状態で、複数のリフトを連動して昇降動作させることができる。
【0124】
また、第1~第4リフト10~13は、シリンダ空間22b1を有するシリンダ部材としてのシリンダパイプ22bを備え、駆動源は、シリンダ空間22b1へ流体圧を供給する流体圧装置としての油圧ユニット23によって構成され、昇降体としてのラム22cは、油圧ユニット23からシリンダ空間22b1へ流体圧としての油圧が供給されることにより昇降動作するものであって、支持状態検知部6123は、圧力センサ26により測定されたシリンダ空間22b1の油圧に基づいて受台30における車両の支持状態を検知する。
【0125】
この構成によれば、支持状態検知部6123は、受台30が車両を支持する状態か否かで変化するシリンダ空間22b1の油圧に基づいて、支持状態か非支持状態かを確実に検知することができる。
【0126】
また、高さセンサとして、外筒21と油圧シリンダ22のラム22cとの間の上下方向距離を検出する複数のセンサとしてワイヤエンコーダ51及びレーザセンサ52を備えて構成され、複数のセンサの検出結果に基づいて、複数のセンサの何れか(本実施形態ではワイヤエンコーダ51)の異常を検知する高さセンサ異常検知部6126を備える。
【0127】
この構成によれば、高さセンサ異常検知部6126は、外筒21と油圧シリンダ22のラム22cとの間の上下方向距離を検出する複数のセンサ(ワイヤエンコーダ51及びレーザセンサ52)の検出結果に基づいて、複数のセンサの何れか(ワイヤエンコーダ51)の異常を検知するので、装置の信頼性向上を図ることができる。
【0128】
また、高さセンサとしてのワイヤエンコーダ51及びレーザセンサ52は、互いに上下方向距離の検出方式が異なる。
【0129】
この構成によれば、互いに上下方向距離の検出方式が異なる複数のセンサで上下方向距離を検出するので、より一層、確実に高さセンサの異常を検知して、信頼性向上を図ることができる。
【0130】
また、複数のセンサの一つであるワイヤエンコーダ51は、油圧シリンダ22のラム22cの移動量の検出に基づいて、外筒21と油圧シリンダ22のラム22cとの間の上下方向距離を検出し、複数のセンサの他の一つであるレーザセンサ52は、外筒21に設けられる所定部位と油圧シリンダ22のラム22cに設けられて所定部位と上下に対向する他の所定部位(反射板22f)との空間距離の測定に基づいて、外筒21と油圧シリンダ22のラム22cとの間の上下方向距離を検出する。
【0131】
この構成によれば、複数のセンサの一つであるワイヤエンコーダ51は、油圧シリンダ22のラム22cの移動量の検出に基づいて、外筒21と油圧シリンダ22のラム22cとの間の上下方向距離を高い精度で検出することができる一方、複数のセンサの他の一つであるレーザセンサ52は、外筒21に設けられる所定部位(上部内側面のレーザセンサ52取付位置)と油圧シリンダ22のラム22cに設けられて所定部位と上下に対向する他の所定部位(下面に設けられる反射板22f)との空間距離の測定に基づいて、外筒21と油圧シリンダ22のラム22cとの間の上下方向距離を高い信頼性で検出することができる。よって、リフト高さの検出における精度と信頼性の両方を確保することができる。
【0132】
また、複数のセンサの一つは、エンコーダ本体51aからのワイヤ51bの繰り出し量を計測するワイヤエンコーダ51によって構成され、外筒21と油圧シリンダ22のラム22cの一方にエンコーダ本体51aが配設され且つ他方にワイヤ51bが連結され、複数のセンサの他の一つは、レーザ光を送受光可能なレーザセンサ52によって構成され、外筒21と油圧シリンダ22のラム22cの一方にレーザセンサ52が配設され且つ他方にレーザ光を反射可能な反射部としての反射板22fが配設される。
【0133】
この構成によれば、ワイヤエンコーダ51を用いて外筒21と油圧シリンダ22のラム22cとの間の上下方向距離を高い精度で検出することができると共に、レーザセンサ52を用いて油圧シリンダ22のラム22cとの間の上下方向距離を高い信頼性で検出することができる。
【0134】
(11.変形例)
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変更を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、第1~第4リフト10~13に、互いに上下方向距離の検出方式の異なるワイヤエンコーダ51及びレーザセンサ52をそれぞれ設ける構成を示したが、これには限られない。例えば、第1~第4リフト10~13に、検出方式が同一のワイヤエンコーダ51を2つずつ設ける構成としてもよい。
【0135】
また、高さセンサとして、ワイヤエンコーダやレーザセンサ以外のセンサを用いる構成としてもよい。さらに、上記実施形態では、圧力センサ26により計測された流体圧に基づいて、支持状態検知部6123により受台30が車両を支持する支持状態を検知する構成としたが、受台30に荷重センサを設けて荷重の変化を検出することにより支持状態を検知する構成としてもよい。
【0136】
また、上記実施形態では、連動補正ランプ付きスイッチ63が押下された場合に連動補正準備を開始し、第1~第4リフト10~13の全リフトを同時に上昇させる例を示したが、リモコン70において第1~第4リフト選択ボタン71~74及び上昇ボタン75を用いた手動操作で第1~第4リフト10~13を個別に上昇させる場合にも、各リフトで支持状態検知部6123により車両の支持状態を検知して、当該リフトの基準高さH0を基準高さ記憶部613aに記憶させるようにしてもよい。
【0137】
また、上記実施形態の構成に加えて、第1~第4リフト10~13の下降時に当該リフトの基準高さH0を基準高さ記憶部613aに記憶させるようにしてもよい。例えば、第1~第4リフト10~13が既に支持状態となっている場合において、バッファ距離BD下降後に再度、支持状態検知部6123により支持状態が検知されたときのリフト高さを基準高さH0として基準高さ記憶部613aに記憶するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0138】
1 車両整備用リフト装置
10 第1リフト(リフト)
11 第2リフト(リフト)
12 第3リフト(リフト)
13 第4リフト(リフト)
20 リフト機構
21 外筒(支持体)
22 油圧シリンダ(昇降体)
22b シリンダパイプ(シリンダ部材)
22b1 シリンダ空間
22c ラム(昇降体)
22f 反射板(反射部)
23 油圧ユニット(駆動源)
30 受台
51 ワイヤエンコーダ(高さセンサ)
51a エンコーダ本体
51b ワイヤ
52 レーザセンサ(高さセンサ)
63 連動補正ランプ付きスイッチ(指令入力部)
6123 支持状態検知部
6126 高さセンサ異常検知部
6127 連動制御部
613a 基準高さ記憶部
P ピット