(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170098
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
A62C 2/00 20060101AFI20221102BHJP
E06B 5/16 20060101ALI20221102BHJP
A62C 2/06 20060101ALI20221102BHJP
E06B 9/15 20060101ALN20221102BHJP
E06B 3/82 20060101ALN20221102BHJP
【FI】
A62C2/00 A
E06B5/16
A62C2/06 501
E06B9/15 A
E06B3/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075991
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】加納 直人
【テーマコード(参考)】
2E016
2E239
【Fターム(参考)】
2E016HA01
2E016HA02
2E016JA11
2E016JC01
2E016JC02
2E016JC03
2E016KA05
2E016LA01
2E016LB01
2E016LB02
2E016LB03
2E016MA11
2E016NA00
2E016NA09
2E016RA00
2E239CA01
2E239CA06
2E239CA12
2E239CA13
2E239CA32
2E239CA42
2E239CA61
(57)【要約】
【課題】火災の消火に寄与可能な建具を提供する。
【解決手段】一方の空間と他方の空間との間の開口部を開閉、若しくは、空間の間仕切りに用いられる建具であって、建具は、一方の空間に面する板状の表面部材と、一方の空間に面する表面部材に対して所定距離離間して設けられ、他方の空間に面する板状の表面部材とを有し、一方の空間に面する表面部材と他方の空間に面する表面部材との間に設けられ、所定温度に達した際に消火薬剤を放出する消火部材と、消火部材から放出された消火薬剤を、一方の空間に面する表面部材と他方の空間に面する表面部材との間から外部に放出する放出部とを備えた構成とした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の空間と他方の空間との間の開口部を開閉、若しくは、空間の間仕切りに用いられる建具であって、
前記建具は、
一方の空間に面する板状の表面部材と、
前記一方の空間に面する表面部材に対して所定距離離間して設けられ、他方の空間に面する板状の表面部材とを有し、
前記一方の空間に面する表面部材と前記他方の空間に面する表面部材との間に設けられ、所定温度に達した際に消火薬剤を放出する消火部材と、
前記消火部材から放出された消火薬剤を、前記一方の空間に面する表面部材と前記他方の空間に面する表面部材との間から外部に放出する放出部と、
を備えたことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記消火部材は、所定温度に達した際に、固体状からエアロゾル状に変化する消火薬剤を固体状にして構成され、前記一方の空間に面する表面部材と前記他方の空間に面する表面部材との間においてエアロゾル状に変化した消火薬剤が前記放出部から外部に放出されることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記消火部材が一方の空間に面する表面部材側に設けられ、
該消火部材と他方の空間に面する表面部材との間に設けられ、他方の空間に面する表面部材の熱を遮断する断熱部材をさらに備え、
前記放出部から放出された消火薬剤が一方の空間に放出されるように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記消火部材が前記一方の空間に面する表面部材側及び前記他方の空間に面する表面部材側に設けられ、
前記一方の空間に面する表面部材側に設けられた消火部材と、前記他方の空間に面する表面部材側に設けられた消火部材との間に設けられ、一方の空間に面する表面部材の熱及び他方の空間に面する表面部材の熱を遮断する断熱部材をさらに備え、
前記放出部から放出された消火薬剤が一方の空間、若しくは他方の空間に選択的に放出されるように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関し、特に、開口部を開閉する扉やシャッター、間仕切り等の空間を区画する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空間を仕切る建具として扉やシャッターなどが知られている。例えば、扉やシャッターは、ビル等の建物への人の出入りを可能にする出入口や、建物内に区画された部屋と通路等との区画に設けられている。
このような扉やシャッターには、火災時の延焼の抑制を目的とした特許文献1に開示される防火扉や、特許文献2に開示される防火シャッターのような耐火性を有するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7-38571号公報
【特許文献2】特開2017-115511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の防火扉や、防火シャッターは、火災の延焼を抑制することをできるものの、火災に対して能動的に作用するものではなく、消火に役立つものではない。従来、このような防火扉や防火シャッターが設けられる場合、防火扉や防火シャッターにより区画される空間への火災時の対策は、スプリンクラーやミスト等の消火設備の設置に依存しているのが現状である。
【0005】
本発明は、上記課題を解消すべく、火災の消火に寄与可能な建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る建具は、一方の空間と他方の空間との間の開口部を開閉、若しくは、空間の間仕切りに用いられる建具であって、前記建具は、一方の空間に面する板状の表面部材と、前記一方の空間に面する表面部材に対して所定距離離間して設けられ、他方の空間に面する板状の表面部材とを有し、前記一方の空間に面する表面部材と前記他方の空間に面する表面部材との間に設けられ、所定温度に達した際に消火薬剤を放出する消火部材と、前記消火部材から放出された消火薬剤を、前記一方の空間に面する表面部材と前記他方の空間に面する表面部材との間から外部に放出する放出部とを備えたことを特徴とする構成とした。
本構成によれば、一方の空間と他方の空間との間の開口部を開閉、若しくは、空間の間仕切りに用いられる建具によって区画された空間において火災があった場合でも、火災による熱が所定温度に達することで消火部材から消火薬剤が放出部から、建具によって区画された空間に(外部)に放出されることで、この空間における火災の消火に寄与することができる。
また、前記消火部材は、所定温度に達した際に固体状からエアロゾル状に変化する消火薬剤を固体状にして構成され、前記一方の空間に面する表面部材と前記他方の空間に面する表面部材との間においてエアロゾル状に変化した消火薬剤が前記放出部から外部に放出されることを特徴とする構成とした。
本構成によれば、一方の空間と他方の空間との間の開口部を開閉、若しくは、空間の間仕切りに用いられる建具によって区画された空間において火災があった場合でも、火災によって生じた熱によって、一方の空間に面する板状の表面部材、若しくは、他方の空間に面する板状の表面部材が熱せられ、この熱が一方の空間に面する板状の表面部材と他方の空間に面する板状の表面部材との間に設けられた消火部材に伝達され、消火部材の温度が所定温度に達した際に、固体状からエアロゾル状に変化し、エアロゾル状に変化した消火薬剤が放出部から、建具によって区画された空間に(外部)に放出されることで、この空間における火災の消火に寄与することができる。
また、前記消火部材が、一方の空間に面する表面部材側に設けられ、該消火部材と他方の空間に面する表面部材との間に設けられ、他方の空間に面する表面部材の熱を遮断する断熱部材をさらに備え、前記放出部から放出された消火薬剤が一方の空間に放出されるように構成されたことを特徴とする構成とした。
本構成によれば、他方の空間において火災が生じたときには、消火部材と他方の空間に面する表面部材との間に設けられた断熱部材が他方の空間に面する表面部材の熱を遮断することにより、その熱が消火薬剤に伝達されないので、一方の空間において火災が生じたときにのみ消火薬剤が一方の空間に放出されるように動作させることができる。
また、前記消火部材は、前記一方の空間に面する表面部材側及び前記他方の空間に面する表面部材側に設けられ、前記一方の空間に面する表面部材側に設けられた消火部材と、前記他方の空間に面する表面部材側に設けられた消火部材との間に設けられ、一方の空間に面する表面部材の熱及び他方の空間に面する表面部材の熱を遮断する断熱部材をさらに備え、前記放出部から放出された消火薬剤が一方の空間、若しくは他方の空間に選択的に放出されるように構成されたことを特徴とする構成とした。
本構成によれば、断熱部材を介在させて一方の空間に面する表面部材側及び他方の空間に面する表面部材側に消火薬剤を設けたことにより、一方の空間、若しくは他方の空間において生じた火災に対して選択的に消火薬剤を、該火災の生じた側の空間に放出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】扉における消火部材の他の配置の形態を示す図である。
【
図6】スラット式シャッター装置の平面図、及びスラットの断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本実施形態に係る開き戸装置の外観斜視図及び平面図である。
開き戸装置1は、異なる空間への出入口として空間の区画に用いられる建具であって、建物内において壁などにより区画された2つの空間、例えば、部屋と部屋の間に設けられ、部屋から部屋への人の出入りを可能にしつつ部屋と部屋との連通状態の遮断及び開放を可能に設けられる。
【0009】
ここでいう部屋とは、住居等の建物内部において壁、間仕切り、襖、床、天井などの建具により隔てられた空間の区画をいい、生活や仕事の場等として用いられる居室等の空間に限定されず、車庫、厩舎、物置部屋、玄関、廊下、風呂、便所等の空間を含む。
以下の説明では、開き戸装置1は、居室と、廊下との間に設けられているものとして説明する。
【0010】
図1に示すように、開き戸装置1は、概略、扉枠10と扉20とで構成され、扉枠10を建物内の壁に設けられた開口部に取り付け、ヒンジ30を介して扉枠10に扉20が取り付けられる。ここでは、扉枠10の右側部(右枠)にヒンジ30を介して取り付けられ、当該ヒンジ30を回転中心として扉20が居室側に回動可能に取り付けられているものとした。
【0011】
なお、開口部の前側及び後側は、居室側及び廊下側のうちのいずれかであるが、以下の説明では、開口部の前側を廊下側、開口部の後側を居室側とし、図中矢印で示す方向により、前後、左右、上下として方向を定義する。
【0012】
扉枠10は、開口部の下側に取り付けられる下枠12と、開口部の左右に取り付けられ、下枠12の左右の端部から上方に向けて延長する左枠14;右枠16と、開口部の上方に取り付けられ、左枠14;右枠16の各上端部を結ぶように延長する上枠18とにより形成された四方枠からなる。
【0013】
扉枠10を構成する上下左右の各枠12;14;16;18には、扉20を閉じた状態において、扉20の小口面(以下、端面という)と対向する囲い面12a、14a、16a、18aと、扉の意匠面に対向する戸当たり面12b、14b、16b、18bとが形成される。また、各枠12;14;16;18において形成された囲い面12a、14a、16a、18a及び戸当たり面12b、14b、16b、18bは、互いに直交する面として形成される。
なお、上述の扉枠10の構成は、一例であって、四方枠に限定されず三方枠等であってもよい。
【0014】
扉20は、閉じた状態において、居室側及び廊下側に面する表面部材22;24、及び、扉枠10に面する下端面、左端面、右端面、上端面を構成する下端面部材26、左端面部材27、右端面部材28、上端面部材29(以下、これらを総じて単に端面部材という場合がある)を有する中空の矩形状に形成される。表面部材22;24及び端面部材26;27;28;29は、板材により構成され、所定距離隔てて対向して設けられた表面部材22;24の周囲を結ぶように、下端面部材26、左端面部材27、右端面部材28、上端面部材29が設けられる。
【0015】
本実施形態では、表面部材22;24は、ガラリや窓等の開口のない一枚の平面状として説明する。
上端面部材29には、表面部材22;24の間に中空状に形成された空間に連通する放出部32が複数設けられる。なお、放出部32が設けられる位置は、上端面部材29に限定されず、下端面部材26、左端面部材27、右端面部材28に設けてもよい。また、放出部32の形状や数量は適宜設定すればよい。
また、扉20には、ドアノブ34や図外の施錠装置等が設けられている。
【0016】
扉20および扉枠10は、例えば、鋼板やアルミニウム板等の金属板等により構成される。
【0017】
図2は、
図1(a)における扉20のA-A(長手方向)断面図である。
扉20の内部には、消火部材36及び断熱部材38が設けられる。本実施形態では、消火部材36が居室側、断熱部材38が廊下側に配置されるものとして説明する。消火部材36は、居室の熱が該居室側の表面部材22を介して伝達されるように、居室側の表面部材22の背面22aに接するように設けられる。
【0018】
消火部材36は、所定の温度(以下、動作温度という)に達したときに消火成分を空間に噴出可能に構成された消火薬剤を固めて所定の形状の固形状に形成される。ここでいう固形状とは、高剛性の固体状態や、可撓性を有する固体状態等を含むものとする。本実施形態では、消火部材36は、例えば、表面部材22の背面22a全体を被覆可能な大きさを有する矩形の平板状に形成されるものとした(
図2参照)。また、消火部材36の厚みは、消火対象とされる空間の消火に必要とされる消火能力、例えば、居室の広さに基づいて設定するとよい。
【0019】
消火部材36を構成する消火薬剤には、例えば、カリウム化合物をエアロゾル化したものを利用することが利用できる。そして、エアロゾル化したカリウム化合物を、前述のように平板状、或いはシート状等の所定形状に固形化(固体状)して形成すればよい。消火部材36をカリウム化合物で構成した場合、消火部材36の近傍における周囲(雰囲気)の温度が火災時の放射熱により300℃以上となることで固形化されたカリウム化合物がエアロゾル化する。このエアロゾル化にともなって消火薬剤が爆発的(急速)に膨張する。
【0020】
消火部材36は、例えば、接着剤等の固定手段により表面部材22の背面22aに固定すればよい。接着剤には、経年により表面部材から脱落しないことに加え、消火部材36の動作温度に達する前に、火災時の熱によって消火部材36が表面部材22から脱落しないように耐熱性を有するものを用いるとよい。
【0021】
なお、消火部材36は、接着剤を介して表面部材22に直接的に取り付けられることに限定されず、例えば、表面部材22を構成する素材と同じ、若しくはそれ以上の熱伝導率を有する素材が介在していてもよい。
【0022】
断熱部材38は、居室側の表面部材22から廊下側の表面部材24、或いは、廊下側の表面部材24から居室側の表面部材22への熱の伝達を遮断することを目的とし、廊下側に面する表面部材24と消火部材36との間に配置される。
【0023】
本実施形態では、断熱部材38は、例えば、廊下側の表面部材24の背面全体を被覆可能な大きさを有するように平板状とされる。
断熱部材38の厚みは、断熱能力に応じて適宜設定すればよく、例えば、廊下側の表面部材24と消火部材36との間を充填するように設定してもよく、また、廊下側の表面部材24と消火部材36との間の距離(寸法)よりも薄くてもよい。
【0024】
なお、断熱部材38の厚みが、廊下側の表面部材24と消火部材36との間の距離(寸法)よりも薄い場合、断熱部材38を廊下側に面する表面部材24の背面24aに接するように取り付けるか、若しくは、消火部材36に接するように重ねて取り付けてもよい。この場合、断熱部材38は、消火部材36の固定に使用した、耐熱性を有する接着剤等の固定手段を用いることで表面部材24又は消火部材36に取り付ければよい。
【0025】
図3は、消火部材の作用を示す図である。
扉20を閉じた状態において居室内で火災が生じたとする。そして、火災により居室側の表面部材22の温度が、消火薬剤の動作温度に達すると、扉20の内部において消火薬剤が固形状からエアロゾル状に変化する。この固形状からエアロゾル状への変化は、急激な容積の膨張をともない、扉20において唯一、上端面部材29に設けられた複数の放出部32から扉20の外部、上枠18と扉20の隙間へと放出される。扉20は、表面部材24が戸当たり面18bに密着、若しくは、上端面部材29と囲い面18aとの隙間よりも狭い隙間に設定されるため、上枠18と扉20の隙間に放出された消火薬剤は、上端面部材29と囲い面18aの間から
図3の拡大図の矢印fで示すように居室に向けて放出される。居室に放出された消火薬剤は、居室内を浮遊することで、火災の消火に寄与する。
【0026】
上記実施形態によれば、居室に他の消火設備がなくても居室における火災の消火設備の一つとして動作させることができ、例えば、居室に人が不在であっても、居室における火災の初期消火に寄与させることができる。
また、通路側に断熱部材38が設けられているため、通路側において火災が生じた場合であっても、居室への消火薬剤の放出を防止することができる。つまり、居室に人がいる場合に、通路側の火災に起因して、居室にいる人に向けて消火薬剤を放出することを回避することができる。
【0027】
図4は、消火薬剤の他の放出形態を示す図である。
上記実施形態では、扉20の上端面部材29に形成した放出部32を放出口とし、扉20の上端面部材29と扉枠10の上枠18との間から居室に消火薬剤を放出するものとしたがこれに限定されず、適宜、扉20や扉枠10に加工を施して、消火薬剤が目的とする方向に放出されるように構成すればよい。
【0028】
例えば、
図4に示すように、居室側の表面部材22に放出部32を構成する開口を設け、通常(非火災)時には開口を閉鎖し、火災時には開口を開放する小扉40を表面部材22に取り付ければよい。小扉40は、例えば、表面部材22にヒンジ等を介して取り付ける等すればよい。小扉40の開閉は、火災による温度を自動的に検知し、温度に応じて機械的に動作をするものにより制御可能に構成するとよい。このように、小扉40を取り付けることで、扉20の意匠性を損なうことなく、扉20に消火機能を付与することができる。
なお、小扉40の開閉は、ヒンジに限定されず、スライド式等でもよい。
【0029】
なお、前述のようにヒンジにより小扉40を回転させる場合、好ましくは、放出部32を構成する開口の下側にヒンジを取り付け、小扉40の上側が開くようにするとよい。 このように小扉40を取り付けることで、扉20内おいてエアロゾル状となった消火薬剤を居室や廊下の上方に向けて噴出させることができる。
火災では立ち上る炎により天井側の温度が床側の温度よりも高くなる。このため、小扉40の上側が開くように、扉20内おいてエアロゾル化した消火薬剤を上方に向けて放出することで、火災の消火や延焼により寄与させることができる。
各表面部材22;24において小扉20を設ける位置は、できるだけ扉の上方側に設けるとよい。また、小扉20の形状は、適宜設定すればよく、居室側及び通路側において異なる形状としてもよい。
また、放出部32は、上述のものに限定されず、スリットやパンチングホール等の開口により構成してもよい。
【0030】
図5は、扉における消火部材の他の配置の形態を示す図である。
上記実施形態では、居室の火災に対応するものとして説明したがこれに限定されず、居室又は通路の火災に選択的に対応するように扉20を構成してもよい。
図5に示すように、居室側及び廊下側の両方の表面部材22;24の背面22a;22bそれぞれに消火部材36を取り付け、その間に断熱部材38を設けることで、居室又は通路の火災に選択的に対応させることができる。
【0031】
この場合、居室側及び廊下側の両方の表面部材22;24の背面に接するように消火部材36;36を固定し、その間を断熱部材38を隔壁として設け、扉20内においてエアロゾル化した消火薬剤が居室や廊下に選択的に噴出されるように、例えば、居室側の表面部材や廊下側の表面部材22;24のそれぞれに前述のように動作する小扉40;40を設ければよい。
【0032】
また、上記実施形態では、消火部材36を扉20を構成する表面部材22の背面22aや表面部材24の背面24aの全面を被覆するように設けるものとして説明したが、これに限定されず、適宜変更すればよい。
例えば、扉20の内部に補強部材が設けられている場合がある。このような場合、補強部材を避けて、表面部材22の背面22aや表面部材24の背面24aを部分的に覆うようにすればよい。
【0033】
上記実施形態では、本発明に係る建具の一例として開き戸装置を用いて説明したが、これに限定されない。例えば、引き戸装置の扉や、間仕切り等であってもよい。
本発明に係る技術を間仕切りに適用する場合、床から天井に達するような間仕切りでは、上記実施形態で説明したように、間仕切りの内部に消火部材や断熱部材及び消火薬剤を放出するための開口を設ければよい。好ましくは、該間仕切りによって区画される2つの空間に対して選択的に消火機能が作用するように、各空間に面する表面部材に対応して消火部材を設ければよい。なお、消火部材の間に断熱部材を介在させることは言うまでもない。
【0034】
また、間仕切りが天井に達しない高さの場合には、該間仕切りによって区画される2つの空間に面する表面部材の間に消火部材や断熱部材及び消火薬剤を放出するための開口を設ければよい。なお、この場合、間仕切りにより区画される空間は天井側で一つであるため、断熱部材をなくして表面部材の間に消火部材のみを設け、表面部材の間においてエアロゾル化した消火薬剤が外部に放出されるように開口を設ければよい。
【0035】
また、前述の開き戸装置の扉、引き戸装置の扉や間仕切り等の建具は、これらによって区画される各空間に面する2枚の表面部材を備えているがこれに限定されない。例えば、シャッター装置等の建具では、一枚の鋼板を所定の形状にプレス加工したスラットを組み合わせることで一つの開閉体が構成されているが、このような構成であっても本発明に係る技術を適用することができる。以下、シャッター装置に本発明に係る技術を適用する場合について説明する。
【0036】
図6は、スラット式シャッター装置の平面図、及びスラットの断面図を示す図である。
図6に示すように、スラット式シャッター装置(以下、単にシャッター装置という)である。構造物躯体に形成された開口部に設置される。構造物躯体とは、例えば住宅やビル、倉庫、工場等の構造物の内外を仕切る外壁や、構造物の内部において内部空間を仕切る内壁等である。開口部は、構造物躯体に開設され、該構造物躯体により区画される2つの空間を連通する空間として形成される。
【0037】
シャッター装置100は、概略、開口部120の幅方向の両側に互いに離間して立設されるガイドレール200;200と、ガイドレール200;200の長手方向に沿って移動し、開口部120を開放又は閉鎖する開閉体としてのシャッターカーテン300と、開口部120及びガイドレール200;200の上方に設けられるシャッターケース140と、シャッターケース140の内部の収容空間に設置される巻取り機構500とを備える。
【0038】
なお、幅方向とは、シャッターカーテン300の開閉(上下)方向と直交する方向(左右方向)を示し、「奥行方向」とは、シャッターカーテン300の厚み(前後)方向を意味する。また、「巻取り方向」とは、シャッターカーテン300がガイドレール200に沿って上昇し、開口部120が開放する方向を示し、「繰出し方向」とは、シャッターカーテン300がガイドレール200に沿って降下し、開口部120が閉鎖する方向を示すものとする。
【0039】
図6に示すように、ガイドレール200,200は、構造物躯体110に対して長手方向が垂直となるように、構造物躯体110に一部が埋設された状態で立設される。ガイドレール200;200は、横断面略コ字状の内部構造を有する中空状の部材である。ガイドレール200;200同士は、コ字状の開口が互いに向き合うように配設される。ガイドレール200;200には、後述するシャッターカーテン300の幅方向両端部が挿入される。これにより、シャッターカーテン300の幅方向端部は、ガイドレール200;200によって開閉方向(上下方向)に案内される。
【0040】
シャッターカーテン300は、複数のスラット310により構成される。各スラット310は、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウム等の金属からなり、開口部120の幅方向に沿って延在する板状の部材である。各スラット310における巻取り方向の端部(上端部)と繰出し方向の端部(下端部)には、それぞれ湾曲形状のカール部320;330が形成される。
【0041】
カール部320は、巻取り機構500を構成する円筒状のホイール520の径方向内側に向けて湾曲し、巻取り方向に隣接するスラット310に形成されたカール部330と係合する。カール部330は、ホイール520の径方向内側に湾曲し、繰出し方向に隣接するスラット310に形成されたカール部320と係合する。これにより、互いに上下に隣接するスラット310同士は、回転自在に連結される。
【0042】
図6(b)に示すように、各スラット310の平坦面として形成された後面310B側には、空間形成体400が接着剤や溶接等の図外の固定手段によって固定される。空間形成体400は、例えばスラット310と同一の素材からなり、幅寸法がスラット310と略同程度に設定され、その両端部がガイドレール200;200の内に飲み込まれる。
【0043】
空間形成体400は、上下寸法がスラット310の上下寸法よりも短く設定され、スラット310の後面310Bと対向する本体部430と、本体部430の上下両端側から奥行方向前側に延在し、カール部330の奥行寸法と同程度の奥行寸法に設定される上下の水平部420;420と、水平部420;420の奥行方向前側の端部から上下方向に僅かに延長し、スラット310の後面310Bに対して固定される上下の固定部410;410とにより構成され、全体として断面形状が略C字状である。
【0044】
したがって、空間形成体400がスラット310の後面310Bに固定されることにより、スラット310の後面310Bと本体部430の前面430Aとが水平部420;420の奥行寸法だけ離間し、スラット310と空間形成体400の本体部430との間に空間Sを形成する。つまり、本実施形態では、スラット310及び空間形成体400が本発明に係る表面部材に対応する。
【0045】
そして、スラット310と空間形成体400により形成された空間Sに前述の、消火部材36や断熱部材38を設ければよい。例えば、シャッター装置100では、スラット310の前面側が屋外、後面側が屋内に向けて設けられることから、
図6(b)では、空間Sにおいてスラット310側に断熱部材38、空間形成体400側に消火部材36を配置して示した。
【0046】
この場合、例えば、空間形成体400の本体部430等に、空間Sに連通する図外の開口を設けることで、空間S内においてエアロゾル状となった消火薬剤を屋内に向けて放出することができる。また、スラット310と消火部材36の間に断熱部材38が設けられているため、屋外において生じた火災によって、不要に消火部材36が動作することを防止できる。
【0047】
なお、スラット式のシャッター装置に限定されず、パネル式のシャッター装置等の建具にも適用することができる。
即ち、従来のシャッター装置100のスラット310のように、本発明における表面部材に相当する部材が一枚の建具であっても、それに対して所定距離離間して空間を形成する板状の部材(他方の表面部材)を設け、形成された空間に消火部材や断熱部材等を収容し、その空間からエアロゾル化した消火薬剤が所望の方向に放出されるように、いずれかの表面部材に放出口を形成すればよい。
【0048】
以上説明したように。一方の空間と他方の空間との間の開口部を開閉、若しくは、空間の間仕切りに用いられる建具が、消火部材を備えることにより、人がいない場合や、他の消火設備がない場合でも火災に対して自動的に消火活動をさせることができる。
【0049】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態
に何ら限定されることはなく、実施形態を組み合わせて多様な変更、改良を行い得ること
が当業者において明らかである。また、そのような多様な変更、改良を加えた形態も本発
明の技術的範囲に含まれ得ることが特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0050】
例えば、上記実施形態では、消火部材を構成する消火薬剤に、固体状からエアロゾル状に変化するものを用いるとして説明したがこれに限定されない。消火薬剤には、例えば、粉末状消火薬剤、泡状消火薬剤、液体状消火薬剤、不活性ガスや二酸化炭素等の気体状の消火薬剤等であってもよい。なお、これらの消火薬剤を用いる場合、建材を構成する2舞の表面部材の間に配置可能な容器に加圧状態で収容し、建材に設けられた放出部から消火薬剤を該建材により区画される空間に放出可能に消火部材を構成すればよい。
【符号の説明】
【0051】
1 開き戸装置、22;24 表面部材、32 放出部、36 消火部材、
38 断熱部材。