(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170104
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】光学装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
G03B 17/04 20210101AFI20221102BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20221102BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20221102BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20221102BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20221102BHJP
G03B 17/02 20210101ALN20221102BHJP
【FI】
G03B17/04
G03B5/00 J
G02B7/04 D
H04N5/225 700
H04N5/232 480
G03B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075997
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松久 治可
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 龍功
【テーマコード(参考)】
2H044
2H100
2H101
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2H044BD06
2H100AA31
2H100BB06
2H100BB11
2H100CC07
2H100EE01
2H101BB07
2K005AA04
2K005BA52
2K005CA04
2K005CA14
2K005CA22
2K005CA38
2K005CA44
2K005CA53
5C122DA09
5C122EA41
5C122EA54
5C122FB03
5C122FB08
5C122FC01
5C122GE04
5C122GE06
5C122GE11
5C122GE17
5C122GE18
5C122GE19
5C122HA82
(57)【要約】
【課題】光学装置の小型化を達成する。
【解決手段】アクチュエータが取り付けられるベース部材27と、カメラモジュール11が取り付けられるホルダ枠体23と、光軸方向に移動可能にベース部材27に取り付けられ、ホルダ枠体23を回転可能に支持するケース枠体22と、光軸方向に移動可能にベース部材27に取り付けられ、カメラモジュール11の先端部を覆うフロントカバー25と、光軸交差方向に移動可能にベース部材27に取り付けられ、ケース枠体22およびフロントカバー25にカムを介して係合し、かつアクチュエータに連結されるカム部材と、を有する。カム部材を第1方向に移動させることにより、ケース枠体22およびフロントカバー25はベース部材27に近づく沈胴位置に移動し、カム部材を第2方向に移動させることにより、ケース枠体22およびフロントカバー25はベース部材27から離れる繰出位置に移動する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラモジュールを備える光学装置であって、
アクチュエータが取り付けられるベース部材と、
前記カメラモジュールが取り付けられるホルダ部材と、
光軸方向に移動可能に前記ベース部材に取り付けられ、前記ホルダ部材を回転可能に支持するケース部材と、
光軸方向に移動可能に前記ベース部材に取り付けられ、前記カメラモジュールの先端部を覆うカバー部材と、
光軸交差方向に移動可能に前記ベース部材に取り付けられ、前記ケース部材および前記カバー部材にカムを介して係合し、かつ前記アクチュエータに連結されるカム部材と、
を有し、
前記カム部材を第1方向に移動させることにより、前記ケース部材および前記カバー部材は前記ベース部材に近づく第1位置に移動し、
前記カム部材を前記第1方向とは逆向きの第2方向に移動させることにより、前記ケース部材および前記カバー部材は前記ベース部材から離れる第2位置に移動する、
光学装置。
【請求項2】
前記カメラモジュールに接続されるフレキシブルケーブルは、前記ベース部材または前記カム部材に固定されている、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記ベース部材、前記ケース部材および前記カバー部材の少なくとも何れか1つに取り付けられ、前記ケース部材および前記カバー部材を光軸方向に案内するガイドシャフトを有する、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項4】
前記ケース部材と前記カバー部材との少なくとも何れか一方に当接部が設けられ、
前記ケース部材および前記カバー部材が前記第1位置に移動する場合に、前記当接部を介して前記ケース部材と前記カバー部材とは互いに接触する、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項5】
前記ケース部材および前記カバー部材が前記第1位置に移動する場合に、前記ケース部材と前記カバー部材とは互いに近接する、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項6】
前記ベース部材と前記カム部材との少なくとも何れか1つに取り付けられ、前記カム部材を光軸交差方向に案内するガイドシャフトを有する、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項7】
前記カバー部材に取り付けられ、磁力によって前記カバー部材を前記第2位置に保持する永久磁石を有する、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項8】
前記ケース部材は、ジンバルを介して前記ホルダ部材を回転可能に支持し、前記ジンバルに向けて突出する凸部を備え、
前記ケース部材が前記第1位置に移動する場合に、前記凸部は前記ジンバルの貫通孔に挿入され、
前記ケース部材が前記第2位置に移動する場合に、前記凸部は前記ジンバルの前記貫通孔から抜ける、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項9】
前記カメラモジュールは、レンズを収容するレンズバレルと、前記レンズバレルを保持するハウジングと、を備え、
前記カバー部材が前記第1位置に移動する場合に、前記カバー部材は前記ハウジングに接触する、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項10】
前記カメラモジュールは、レンズを収容するレンズバレルと、前記レンズバレルを保持するハウジングと、を備え、
前記カバー部材が前記第1位置に移動する場合に、前記カバー部材は前記レンズバレルに接触する、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項11】
前記ホルダ部材に取り付けられる永久磁石と、
前記カム部材に取り付けられる磁性部材と、
を有し、
前記カム部材を前記第1方向に移動させることにより、前記永久磁石と前記磁性部材とは互いに対向する、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載の光学装置を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュールを備える光学装置、および光学装置を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやウェアラブルカメラ等の機器には、カメラモジュールを備えた光学装置が設けられている。また、スマートフォン等に設けられる光学装置には、姿勢変化に応じてカメラモジュールを回転させる手振れ補正機構が組み込まれている(特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第111416925号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第111510598号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、手振れ補正機構を備えた光学装置においては、カメラモジュールを所定角度で回転させる必要がある。このため、カメラモジュールの周囲に空きスペースを確保することが必要であり、光学装置の小型化を達成することが困難となっていた。
【0005】
本発明の目的は、光学装置の小型化を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の光学装置は、カメラモジュールを備える光学装置であって、アクチュエータが取り付けられるベース部材と、前記カメラモジュールが取り付けられるホルダ部材と、光軸方向に移動可能に前記ベース部材に取り付けられ、前記ホルダ部材を回転可能に支持するケース部材と、光軸方向に移動可能に前記ベース部材に取り付けられ、前記カメラモジュールの先端部を覆うカバー部材と、光軸交差方向に移動可能に前記ベース部材に取り付けられ、前記ケース部材および前記カバー部材にカムを介して係合し、かつ前記アクチュエータに連結されるカム部材と、を有し、前記カム部材を第1方向に移動させることにより、前記ケース部材および前記カバー部材は前記ベース部材に近づく第1位置に移動し、前記カム部材を前記第1方向とは逆向きの第2方向に移動させることにより、前記ケース部材および前記カバー部材は前記ベース部材から離れる第2位置に移動する。
【0007】
一実施形態の電子機器は、前記光学装置を有する。
【発明の効果】
【0008】
カム部材を第1方向に移動させることにより、ケース部材およびカバー部材はベース部材に近づく第1位置に移動し、カム部材を第1方向とは逆向きの第2方向に移動させることにより、ケース部材およびカバー部材はベース部材から離れる第2位置に移動する。これにより、光学装置の小型化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態である電子機器を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態1である光学装置を示す斜視図である。
【
図4】カメラモジュール、ホルダ枠体およびジンバルを示す斜視図である。
【
図5】(A)はポップアップ機構が沈胴状態に作動したときの光学装置を示す平面図であり、(B)は
図5(A)の矢印5b方向から光学装置を示す側面図である。
【
図6】(A)はポップアップ機構が繰出状態に作動したときの光学装置を示す平面図であり、(B)は
図6(A)の矢印6b方向から光学装置を示す側面図である。
【
図7】ポップアップ機構を構成するケース枠体、フロントカバーおよびカムプレートを示す分解斜視図である。
【
図8】(A)は
図5の8a-8a線に沿ってカムプレートの動作位置を示す図であり、(B)は
図6の8b-8b線に沿ってカムプレートの動作位置を示す図である。
【
図9】カム孔とカムピンとの位置関係を示す図である。
【
図10】(A)および(B)は、カメラモジュールおよびその近傍を示す部分断面図である。
【
図11】本発明の実施形態2である光学装置を示す斜視図である。
【
図13】(A)はポップアップ機構が沈胴状態に作動したときの光学装置を示す平面図であり、(B)は
図13(A)の矢印13b方向から光学装置を示す側面図である。
【
図14】(A)はポップアップ機構が繰出状態に作動したときの光学装置を示す平面図であり、(B)は
図14(A)の矢印14b方向から光学装置を示す側面図である。
【
図15】ポップアップ機構を構成するケース枠体、フロントカバーおよびプレートユニットを示す分解斜視図である。
【
図16】ポップアップ機構を構成するケース枠体、フロントカバーおよびプレートユニットを示す分解斜視図である。
【
図17】(A)は
図13の17a-17a線に沿ってプレートユニットの動作位置を示す図であり、(B)は
図14の17b-17b線に沿ってプレートユニットの動作位置を示す図である。
【
図18】(A)は
図13の18a-18a線に沿ってプレートユニットの動作位置を示す図であり、(B)は
図14の18b-18b線に沿ってプレートユニットの動作位置を示す図である。
【
図19】(A)はカム孔とカムピンとの位置関係を示す図であり、(B)はカム溝とカムピンとの位置関係を示す図である。
【
図20】(A)および(B)は、カメラモジュールおよびその近傍を示す部分断面図である。
【
図21】電子機器の外装部材を内側から示した斜視図である。
【
図22】(A)および(B)は、磁性部材と永久磁石との位置関係を示す図である。
【
図24】(A)はフロントカバーを裏面側から示す斜視図であり、(B)はフロントカバーおよびケース枠体を沈胴位置に移動させたときの部分断面図である。
【
図25】(A)および(B)は、フロントカバーとジンバルとの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一または実質的に同一の構成や要素については、同一の符号を付して繰り返しの説明を省略する。
【0011】
[光学装置を有する電子機器]
図1は本発明の一実施の形態である電子機器300を示す斜視図である。
図1に示すように、スマートフォンである電子機器300には、後述する手振れ補正機構10を備えた光学装置100や光学装置200が設けられている。このように、電子機器300に光学装置100,200を組み込むことにより、電子機器300の姿勢変化に応じて光学装置100,200のカメラモジュール11を回転させることができ、電子機器300によって鮮明な動画や静止画を得ることができる。
【0012】
なお、光学装置100,200を有する電子機器300としては、図示するスマートフォンに限られることはなく、タブレット型PCやノート型PC等の情報端末やモバイル機器であっても良い。また、光学装置100,200を有する電子機器300としては、ウェアラブルカメラ等のウェアラブル端末であっても良い。さらに、光学装置100,200を有する電子機器300としては、他機器との通信機能を備えた情報家電であっても良い。
【0013】
[光学装置:実施形態1]
<全体構成>
図2は本発明の実施形態1である光学装置100を示す斜視図であり、
図3は光学装置100を示す分解斜視図である。なお、
図2において、Z軸方向はカメラモジュール11の光軸方向を示し、X軸方向はヨーイングの回転軸方向を示し、Y軸方向はピッチングの回転軸方向を示している。また、各軸X,Y,Zが交差する点C1は、カメラモジュール11および後述するホルダ枠体23の回転中心である。作図の都合上、
図2において、各軸X,Y,Zはカメラモジュール11およびホルダ枠体23の回転中心から離れた位置に示されている。なお、カメラモジュール11の光軸Oaは、カメラモジュール11の中心軸であり、カメラモジュール11を構成するレンズ14の回転対称軸である。
【0014】
図2および
図3に示すように、光学装置100は、電磁コイル20,21を備えたケース枠体(ケース部材)22と、ケース枠体22に収容されるホルダ枠体(ホルダ部材)23と、ホルダ枠体23に保持されるカメラモジュール11と、を有している。また、ケース枠体22とホルダ枠体23とはジンバル24を介して連結されており、ホルダ枠体23はジンバル24を介してケース枠体22に回転可能に支持されている。なお、他の実施例では、板バネなどの別の連結部材によって、ケース枠体22とホルダ枠体23とが連結されていても良い。
【0015】
ケース枠体22の一端面側には、カメラモジュール11の先端部11aを覆うフロントカバー(カバー部材)25が配置されている。また、ケース枠体22の他端面側には、ステッピングモータ(アクチュエータ)26が取り付けられるベース部材27が配置されている。つまり、カメラモジュール11およびホルダ枠体23が収容されるケース枠体22は、フロントカバー25とベース部材27とに挟まれている。なお、フロントカバー25は、カメラモジュール11の先端部11aを囲むスリーブ30と、スリーブ30を保持するカバー本体31と、スリーブ30の開口端に取り付けられる透明なレンズカバー32と、を有している。
【0016】
ベース部材27には、光軸Oaに平行となる2つのガイドシャフト33,34が設けられている。ガイドシャフト33,34は、ケース枠体22のガイド孔36,37に挿入されるとともに、フロントカバー25のガイド孔38,39に挿入されている。つまり、ベース部材27に取り付けられるケース枠体22は、ガイドシャフト33,34に沿って光軸方向に移動可能となっている。また、ベース部材27に取り付けられるフロントカバー25は、ガイドシャフト33,34に沿って光軸方向に移動可能となっている。換言すれば、ケース枠体22およびフロントカバー25は、ガイドシャフト33,34によってX軸方向やY軸方向への移動が規制されている。なお、ガイドシャフトは、ガイドロッドと言われることもある。
【0017】
ガイドシャフト33にはスプリング41が組み付けられており、スプリング41のバネ力によってケース枠体22はベース部材27から離れる方向に付勢されている。また、ベース部材27には取付シャフト35が設けられており、取付シャフト35はフロントカバー25の貫通孔40に挿入されている。このベース部材27の取付シャフト35にはスプリング42が組み付けられており、スプリング42のバネ力によってフロントカバー25はベース部材27から離れる方向に付勢されている。なお、取付シャフト35と貫通孔40との間には隙間が設けられており、取付シャフト35と貫通孔40とを互いに摺動させずにフロントカバー25を移動させることが可能となっている。
【0018】
図示する例では、ベース部材27に対してガイドシャフト33,34を取り付けているが、これに限られることはない。例えば、フロントカバー25にガイドシャフト33,34を取り付けても良く、ケース枠体22にガイドシャフト33,34を取り付けても良い。すなわち、ガイドシャフト33,34は、ベース部材27、フロントカバー25およびケース枠体22の少なくとも何れか1つに取り付けられていれば良い。なお、図示する例では、樹脂製のベース部材27に金属製のガイドシャフト33,34を嵌合させることにより、ベース部材27に対してガイドシャフト33,34が取り付けられている。また、図示する例では、樹脂製のベース部材27に対して取付シャフト35が一体にモールド成型されている。また、図示する例では、ベース部材27に1つの取付シャフト35を設けているが、これに限られることはなく、ベース部材27に複数の取付シャフト35を設けても良い。また、スプリング保持用の取付シャフト35を用いることなく、他のガイドシャフトに対してスプリング42を組み付けても良い。
【0019】
<ホルダ枠体>
図3に示すように、矩形枠形状に形成されるホルダ枠体23は、互いに対向する一対のホルダ壁23a,23bと、互いに対向する一対のホルダ壁23c,23dと、を有している。また、ホルダ壁23aには永久磁石43が取り付けられており、ホルダ壁23cには永久磁石44が取り付けられている。また、ホルダ壁23a,23cを互いに連結する角部にはホルダ軸受45が取り付けられており、ホルダ壁23b,23dを互いに連結する角部にはホルダ軸受46が取り付けられている。このように、ホルダ枠体23には、ホルダ軸受45,46が対角線上に配置されている。
【0020】
<カメラモジュール>
図3に示すように、ホルダ枠体23の内側にはカメラモジュール11のハウジング13が嵌合しており、ホルダ枠体23によってカメラモジュール11が保持されている。カメラモジュール11は、レンズ14を収容するレンズバレル12と、レンズバレル12を光軸方向に駆動するオートフォーカス機構が収容されるハウジング13と、ハウジング13の下部に設けられる電子回路基板15と、を有している。
【0021】
電子回路基板15にはフレキシブルケーブル16が接続されており、このフレキシブルケーブル16は複数回に亘って折り曲げられた形状を有している。これにより、カメラモジュール11が回転してフレキシブルケーブル16に力が作用した場合であっても、フレキシブルケーブル16を容易に変形させてカメラモジュール11の回転運動に追従させることができる。なお、フレキシブルケーブル16とは、薄膜状の絶縁フィルムに導体箔を貼り合わせたフレキシブル配線基板である。また、カメラモジュール11の電子回路基板15には、CCD等の撮像素子が実装される。
【0022】
また、カメラモジュール11に接続されるフレキシブルケーブル16は、ベース部材27から延びるハンガー部47に接着剤等を用いて固定されている。これにより、カメラモジュール11が回転してフレキシブルケーブル16に力が作用した場合であっても、電子機器300内の図示しないコネクタに接続されるケーブル端16aの変位を抑えることができる。つまり、カメラモジュール11が回転した場合であっても、ケーブル端16aを静止状態に保持することができ、コネクタに対するフレキシブルケーブル16の接続状態を適切に保持することができる。
【0023】
<ケース枠体>
図3に示すように、矩形枠形状に形成されるケース枠体22は、互いに対向する一対のケース壁22a,22bと、互いに対向する一対のケース壁22c,22dと、を有している。ケース壁22aには電磁コイル20が取り付けられており、ケース壁22cには電磁コイル21が取り付けられている。また、
図3に符号βで示すように、電磁コイル20,21は折り曲げられたフレキシブル配線基板48に設けられており、フレキシブル配線基板48にはフロントカバー25の位置を検出する光スイッチ49が取り付けられている。なお、光スイッチ49は、発光素子49aと受光素子49bとを備えた所謂フォトインタラプタ(Photointerrupter)である。また、ケース壁22a,22dを互いに連結する角部にはケース軸受50が取り付けられており、ケース壁22b,22cを互いに連結する角部にはケース軸受51が取り付けられている。このように、ケース枠体22には、ケース軸受50,51が対角線上に配置されている。
【0024】
<支持機構>
続いて、手振れ補正機構10を構成する支持機構52について説明する。前述したように、ホルダ枠体23には、ホルダ軸受45,46が対角線上に配置されている。また、ケース枠体22には、ケース軸受50,51が対角線上に配置されている。さらに、ケース枠体22とホルダ枠体23とを連結するジンバル24は、カメラモジュール11の先端部11aが貫通する環状本体部53と、環状本体部53から径方向外側に延びる複数のアーム部54~57と、を有している。また、ジンバル24の環状本体部53には、一対の貫通孔58,59が形成されている。
【0025】
図3に示すように、ジンバル24のアーム部54,55は、ホルダ枠体23のホルダ軸受45,46に対して回転可能に取り付けられている。また、ジンバル24のアーム部56,57は、ケース枠体22のケース軸受50,51に対して回転可能に取り付けられている。このように、ケース枠体22およびホルダ枠体23にはジンバル24が取り付けられており、ホルダ枠体23はジンバル24を介してケース枠体22に回転可能に支持されている。
【0026】
図4はカメラモジュール11、ホルダ枠体23およびジンバル24を示す斜視図である。なお、
図4にはケース枠体22のケース軸受50,51が示されており、ケース枠体22については省略して図示している。
図4に示すように、カメラモジュール11を保持するホルダ枠体23は、回転軸A1を中心軸としてケース枠体22に回転可能に支持されるとともに、回転軸A2を中心軸としてケース枠体22に回転可能に支持される。すなわち、ケース枠体22とホルダ枠体23とをジンバル24を介して連結することにより、ホルダ枠体23およびこれに取り付けられるカメラモジュール11を、様々な方向に所定角度で回転させることができる。つまり、回転軸A1,A2の交点を回転中心C1として、ホルダ枠体23はジンバル24を介してケース枠体22に回転可能に支持されている。
【0027】
なお、ホルダ軸受45,46およびケース軸受50,51にはボール45a,46a,50a,51aが設けられており、これらのボール45a,46a,50a,51aに対してジンバル24のアーム部54~57が回転可能に係合している。前述した回転軸A1は、ホルダ軸受45,46のボール45a,46aとジンバル24のアーム部54,55との接触点を結ぶ回転軸であり、回転軸A2は、ケース軸受50,51のボール50a,51aとジンバル24のアーム部56,57との接触点を結ぶ回転軸である。また、回転軸A1,A2の交点である回転中心C1には、カメラモジュール11の光軸Oaが交差している。つまり、回転軸A1,A2および光軸Oaの交点を回転中心C1として、ホルダ枠体23はケース枠体22に対して回転可能となっている。
【0028】
<駆動機構>
続いて、手振れ補正機構10を構成する駆動機構60について説明する。
図4に示すように、永久磁石43,44には、永久磁石43,44の短手方向の一方側と他方側とにおいて、互いに異なる磁極が表面に現れるように着磁されている。例えば、永久磁石43,44の上部表面がN極に着磁されている場合には、永久磁石43,44の下部表面がS極に着磁されている。なお、
図4に示す破線は、永久磁石43,44の着磁領域の境界を示す仮想線である。
【0029】
図3に示すように、ケース枠体22の電磁コイル20は、ホルダ枠体23の永久磁石43に対向するように配置されており、ケース枠体22の電磁コイル21は、ホルダ枠体23の永久磁石44に対向するように配置されている。このように、電磁コイル20,21と永久磁石43,44とは互いに対向することから、電磁コイル20,21の通電状態を制御することにより、ホルダ枠体23の回転位置を制御することができる。
【0030】
つまり、電磁コイル20の通電方向を切り替えることにより、永久磁石43に作用する推力の方向(F1a,F1b)を切り替えることができ、電磁コイル21の通電方向を切り替えることにより、永久磁石44に作用する推力の方向(F2a,F2b)を切り替えることができる。さらに、電磁コイル20の通電電流を制御することにより、永久磁石43に作用する推力F1a(またはF1b)の大きさを制御することができ、電磁コイル21の通電電流を制御することにより、永久磁石44に作用する推力F2a(またはF2b)の大きさを制御することができる。
【0031】
このように、ホルダ枠体23の永久磁石43,44に作用する推力の向きや大きさを制御することにより、ホルダ枠体23を回転軸A1,A2を中心に回転させることができる。このため、ホルダ枠体23に保持されるカメラモジュール11を、様々な方向に向けて傾動つまり所定角度で回転させることができる(
図2および
図4の矢印α方向)。換言すれば、ホルダ枠体23に保持されるカメラモジュール11を、ヨーイングの回転軸であるX軸を中心に回転させることができ、ピッチングの回転軸であるY軸を中心に回転させることができる。
【0032】
なお、電磁コイル20,21の通電制御は、例えば、ジャイロセンサの検出信号に基づき実行することが可能である。つまり、電磁コイル20,21の通電制御を実行する図示しない電子制御ユニットは、回転制御の一例として、ジャイロセンサによって光学装置100つまりケース枠体22の姿勢変化を検出し、この姿勢変化を打ち消すようにケース枠体22に対してホルダ枠体23を回転させることが可能である。
【0033】
<ポップアップ機構>
光学装置100が備えるポップアップ機構70について説明する。このポップアップ機構70とは、フロントカバー25およびカメラモジュール11を格納する沈胴状態と、フロントカバー25およびカメラモジュール11を突出させる繰出状態と、に作動する機構である。
図5(A)はポップアップ機構70が沈胴状態に作動したときの光学装置100を示す平面図であり、
図5(B)は
図5(A)の矢印5b方向から光学装置100を示す側面図である。また、
図6(A)はポップアップ機構70が繰出状態に作動したときの光学装置100を示す平面図であり、
図6(B)は
図6(A)の矢印6b方向から光学装置100を示す側面図である。なお、
図5(B)および
図6(B)には、光学装置100が組み込まれる電子機器300の外装部材301,302が示されている。
【0034】
図5(A)に示すように、ベース部材27には、ステッピングモータ26を備えた直動ユニット71が取り付けられている。直動ユニット71は、減速ギヤボックス72を備えたステッピングモータ26と、減速ギヤボックス72の出力軸であるネジ軸73と、ネジ軸73に取り付けられるナット74と、を有している。また、直動ユニット71にはネジ軸73に平行となるガイドシャフト75が設けられており、このガイドシャフト75をナット74に通すことでナット74の回転が防止されている。なお、ネジ軸73はリードスクリューと言われることもある。
【0035】
図5(A)に示すように、ステッピングモータ26によってネジ軸73を回転させ、ナット74を矢印A1方向(第1方向)に移動させることにより、
図5(B)に示すように、フロントカバー25およびケース枠体22を光軸方向に沿って矢印B1方向に移動させることができる。つまり、フロントカバー25およびケース枠体22を、ベース部材27に近づく沈胴位置(第1位置)に移動させることができる。また、
図5(B)の拡大部分等に示すように、フロントカバー25のガイド孔38,39の周囲には、ケース枠体22に向けて突出する当接部98,99が設けられている。そして、フロントカバー25およびケース枠体22が沈胴位置に移動する場合に、フロントカバー25の当接部98,99はケース枠体22に対して接触する。つまり、当接部98,99を介してフロントカバー25とケース枠体22とを互いに接触させることにより、フロントカバー25およびケース枠体22は沈胴位置に位置決めされている。
【0036】
図示する例では、フロントカバー25に当接部98,99を設けているが、これに限られることはなく、ケース枠体22に当接部を設けても良い。つまり、当接部は、フロントカバー25とケース枠体22との少なくとも何れか一方に設けられていれば良い。また、当接部としては、図示する形状に限られることはなく、突起状の当接部を設けても良く、所定範囲の平面からなる当接部を設けても良い。また、前述の説明では、フロントカバー25およびケース枠体22が沈胴位置に移動する場合に、当接部98,99を介してフロントカバー25とケース枠体22とが互いに接触しているが、これに限られることはない。例えば、他の実施例では、フロントカバー25およびケース枠体22が沈胴位置に移動する場合であっても、フロントカバー25とケース枠体22とを互いに接触させることなく、フロントカバー25とケース枠体22とを互いに近接させても良い。また、その他の実施例では、フロントカバー25およびケース枠体22の間に、板金部材等の別部材を介在させ、間接的に接触・近接させるようにしても良い。なお、フロントカバー25およびケース枠体22が沈胴位置に移動したときに、フロントカバー25とケース枠体22とが互いに近接するということは、沈胴位置におけるフロントカバー25とケース枠体22との間隔が、繰出位置におけるフロントカバー25とケース枠体22との間隔よりも狭いことを意味している。
【0037】
図6(A)に示すように、ステッピングモータ26によってネジ軸73を回転させ、ナット74を矢印A2方向(第2方向)に移動させることにより、
図6(B)に示すように、フロントカバー25およびケース枠体22を光軸方向に沿って矢印B2方向に移動させることができる。つまり、矢印A1方向とは逆向きの矢印A2方向にナット74を移動させることにより、フロントカバー25およびケース枠体22を、ベース部材27から離れる繰出位置(第2位置)に移動させることができる。
【0038】
図7はポップアップ機構70を構成するケース枠体22、フロントカバー25およびカムプレート80を示す分解斜視図である。また、
図8(A)は
図5の8a-8a線に沿ってカムプレート80の動作位置を示す図であり、
図8(B)は
図6の8b-8b線に沿ってカムプレート80の動作位置を示す図である。
図8(A)にはフロントカバー25およびケース枠体22が沈胴位置に移動した状態が示されており、
図8(B)にはフロントカバー25およびケース枠体22が繰出位置に移動した状態が示されている。
【0039】
図7に示すように、直動ユニット71のナット74には、カム孔81,82を備えたカムプレート(カム部材)80が取り付けられている。つまり、ベース部材27には直動ユニット71を介してカムプレート80が取り付けられており、このカムプレート80は光軸Oaに直交する光軸直交方向(光軸交差方向)に移動可能となっている。また、カムプレート80のカム孔81には、フロントカバー25の側面から突出するカムピン83が収容され、カムプレート80のカム孔82には、ケース枠体22の側面から突出するカムピン84が収容される。このように、カムプレート80は、フロントカバー25およびケース枠体22に対し、カム孔81,82およびカムピン83,84からなるカムを介して係合している。なお、図示する例では、カムプレート80が、光軸直交方向に移動可能にベース部材27に取り付けられているが、これに限られることはない。例えば、カムプレート80が、光軸Oaに交差する光軸交差方向に移動可能にベース部材27に取り付けられていても良い。つまり、光軸Oaとカムプレート80の移動方向とのなす角度が、90°に設定されていても良く、90°を上回る角度に設定されていても良く、90°を下回る角度に設定されていても良い。
【0040】
図8(A)に示すように、カムプレート80を矢印A1方向に移動させることにより、フロントカバー25およびケース枠体22はベース部材27に近づく沈胴位置に移動する。つまり、フロントカバー25のカムピン83はカムプレート80のカム孔81に沿って矢印B1a方向に移動し、ケース枠体22のカムピン84はカムプレート80のカム孔82に沿って矢印B1b方向に移動する。一方、
図8(B)に示すように、カムプレート80を矢印A2方向に移動させることにより、フロントカバー25およびケース枠体22はベース部材27から離れる繰出位置に移動する。つまり、フロントカバー25のカムピン83はカムプレート80のカム孔81に沿って矢印B2a方向に移動し、ケース枠体22のカムピン84はカムプレート80のカム孔82に沿って矢印B2b方向に移動する。
【0041】
図9はカム孔81,82とカムピン83,84との位置関係を示す図である。
図9には、実線を用いて沈胴位置のカムピン83,84が示されており、破線を用いて繰出位置のカムピン83,84が示されている。
図9に示すように、フロントカバー25の移動量を制御するカム孔81は、ケース枠体22の移動量を制御するカム孔82よりも大きく曲げられている。つまり、カムプレート80の移動方向(矢印A1,A2)に対して、カム孔81はカム孔82よりも大きく傾斜するように曲げられている。これにより、フロントカバー25およびケース枠体22を沈胴位置から繰出位置に移動させる際に、フロントカバー25はストロークS1で押し出され、ケース枠体22はストロークS1よりも小さなストロークS2で押し出される。つまり、フロントカバー25およびケース枠体22を沈胴位置から繰出位置に移動させる際に、ケース枠体22よりもフロントカバー25を大きく押し出すことができる。
【0042】
図10(A)および(B)は、カメラモジュール11およびその近傍を示す部分断面図である。
図10(A)にはフロントカバー25およびケース枠体22が沈胴位置に移動した状態が示されており、
図10(B)にはフロントカバー25およびケース枠体22が繰出位置に移動した状態が示されている。
【0043】
前述したように、フロントカバー25およびケース枠体22を沈胴位置から繰出位置に移動させる際に、フロントカバー25はストロークS1で押し出され、ケース枠体22はストロークS1よりも小さなストロークS2で押し出される。このため、
図10(A)および(B)に示すように、フロントカバー25およびケース枠体22を沈胴位置から繰出位置に移動させることにより、外装部材302とカメラモジュール11との間に、ストロークS2に相当する隙間G1を確保することができる。また、フロントカバー25とカメラモジュール11との間に、ストロークS1からストロークS2を減算した値に相当する隙間G2を確保することができる。
【0044】
このように、カメラモジュール11の周囲に隙間G1,G2を確保することができるため、カメラモジュール11をフロントカバー25や外装部材302に接触させることなく、手振れ補正機構10によってカメラモジュール11を適切に回転させることができる。換言すれば、
図10(A)に示すように、フロントカバー25およびケース枠体22を沈胴位置に移動させる場合には、手振れ補正機構10によってカメラモジュール11を回転させることがないため、カメラモジュール11の周囲から隙間を無くすようにフロントカバー25およびケース枠体22を格納することができる。これにより、手振れ補正機構10の機能を確保しつつ、光学装置100の小型化を達成することができる。
【0045】
図10(A)に示すように、フロントカバー25およびケース枠体22を沈胴位置に移動させる場合には、フロントカバー25のカバー本体31とスリーブ30との間の開口部85から、ジンバル24の一部がレンズカバー32側に突出している。これにより、フロントカバー25をケース枠体22に対して更に近づけることができ、光学装置100の更なる小型化を達成することができる。
【0046】
<直動ユニットの保護>
図9に示すように、カムプレート80のカム孔81の幅寸法は、カムピン83の直径寸法よりも大きく形成されている。また、前述したように、ベース部材27とフロントカバー25との間にはスプリング42が組み付けられており、フロントカバー25のカムピン83はスプリング42によって矢印Fs方向に付勢されている。このため、フロントカバー25のカムピン83は、カム孔81を構成する一方のカム面81aに接触する一方、カム孔81を構成する他方のカム面81bから離れている。つまり、カムピン83とカム面81bとの間には、ハッチングで示すように所定の隙間G3が設けられている。
【0047】
これにより、
図8(B)に白抜きの矢印で示すように、フロントカバー25が利用者によって押された場合などであっても、カムプレート80を動かすことなく隙間G3分だけカムピン83を退避させことができる。つまり、フロントカバー25に入力された推力が、カムプレート80から直動ユニット71に伝達されることを防ぐことができ、ステッピングモータ26等を保護することができる。なお、図示する例では、カム面81aおよびカム面81bのアウトラインは互いに傾斜しているが、これに限られることはなく、カム面81aおよびカム面81bのアウトラインが互いに平行であっても良い。
【0048】
<光スイッチ>
図5(B)および
図6(B)の拡大部分に示すように、フロントカバー25にはケース枠体22側に突出するセンサピン86が設けられている。このセンサピン86はケース枠体22の外周部に設けられる光スイッチ49に案内されている。
図5(B)に示すように、フロントカバー25およびケース枠体22が沈胴位置に移動した場合には、センサピン86が光スイッチ49の発光素子49aと受光素子49bとの間に挿入され、発光素子49aからの光がセンサピン86によって遮断される。一方、
図5(B)に示すように、フロントカバー25およびケース枠体22が繰出位置に移動した場合には、センサピン86が光スイッチ49の発光素子49aと受光素子49bとの間から抜かれ、発光素子49aからの光が受光素子49bによって検出される。つまり、光スイッチ49の受光素子49bによって光を検出することにより、フロントカバー25およびケース枠体22が適切に繰出位置に移動したことを判定することができる。
【0049】
すなわち、フロントカバー25に固定されたセンサピン86とケース枠体22に固定された光スイッチ49とを用いることにより、光スイッチ49によってフロントカバー25とケース枠体22との相対位置を適切に検出することができる。これにより、フロントカバー25およびケース枠体22が繰出位置まで移動したことを、光スイッチ49によって精度良く判定することができる。つまり、手振れ防止機構を制御する図示しない電子制御ユニットは、光スイッチ49の検出信号に基づきカメラモジュール11の周囲に隙間G1,G2が確保されたことを適切に判定することができる。
【0050】
しかも、光スイッチ49は、電磁コイル20,21と共通のフレキシブル配線基板48に設けられている。これにより、ケース枠体22に光スイッチ49を取り付ける場合であっても、光スイッチ49の取付コストを抑制することができる。なお、図示する例では、フロントカバー25にセンサピン86を設けるとともにケース枠体22に光スイッチ49を設けているが、これに限られることはなく、フロントカバー25に光スイッチ49を設けるとともにケース枠体22にセンサピン86を設けても良い。また、図示する例では、非接触型の光スイッチ49を用いているが、これに限られることはなく、接触によってセンサピン86の位置を検出する位置検出センサを用いても良い。
【0051】
<各部材間の摺動抵抗>
図7に示すように、フロントカバー25の側面には複数の突起部90が形成されており、ケース枠体22の側面にはレール部91が形成されている。これらの突起部90およびレール部91をカムプレート80に接触させることにより、カムプレート80とフロントカバー25との摺動抵抗を低減することができ、カムプレート80とケース枠体22との摺動抵抗を低減することができる。また、カムプレート80とベース部材27との摺動抵抗を低減するため、カムプレート80にはレール部92が形成されている。さらに、
図3に示すように、カムプレート80とベース部材27との摺動抵抗を低減するため、カムプレート80の下面に接触するレール部93がベース部材27に形成されている。このように、カムプレート80とこれに接触する部材との摺動抵抗を低減することができるため、ポップアップ機構70の耐久性を高めることができるだけでなく、ステッピングモータ26の小型化および低コスト化を達成することができる。なお、図示する例では、各部材を互いに摺動させているが、これに限られることはなく、各部材間にボールやローラ等の転動体を配置しても良い。
【0052】
[光学装置:実施形態2]
<全体構成>
図11は本発明の実施形態2である光学装置200を示す斜視図であり、
図12は光学装置200を示す分解斜視図である。なお、以下の説明において、実施形態1の光学装置100を構成する部材や部品と、同一または実質的に同一の部材や部品については、同一の符号を付して繰り返しの説明を省略する。
【0053】
図11および
図12に示すように、光学装置200は、電磁コイル20,21を備えたケース枠体(ケース部材)110と、ケース枠体110に収容されるホルダ枠体(ホルダ部材)23と、ホルダ枠体23に保持されるカメラモジュール11と、を有している。また、ケース枠体110とホルダ枠体23とはジンバル24を介して連結されており、ホルダ枠体23はジンバル24を介してケース枠体110に回転可能に支持されている。また、ケース枠体110の一端面には、ストッパプレート111が取り付けられている。
【0054】
ケース枠体110の一端面側には、カメラモジュール11の先端部11aを覆うフロントカバー(カバー部材)112が配置されており、ケース枠体110の他端面側には、ステッピングモータ(アクチュエータ)26が取り付けられたベース部材113が配置されている。つまり、カメラモジュール11およびホルダ枠体23が収容されるケース枠体110は、フロントカバー112とベース部材113とに挟まれている。なお、フロントカバー112は、カメラモジュール11の先端部11aを囲むスリーブ114と、スリーブ114を保持するカバー本体115と、スリーブ114の開口端に取り付けられる透明なレンズカバー116と、を有している。
【0055】
また、カメラモジュール11に接続されるフレキシブルケーブル16は、ベース部材113から延びるハンガー部117に接着剤等を用いて固定されている。これにより、カメラモジュール11が回転してフレキシブルケーブル16に力が作用した場合であっても、電子機器300内の図示しないコネクタに接続されるケーブル端16aの変位を抑えることができる。つまり、カメラモジュール11が回転した場合であっても、ケーブル端16aを静止状態に保持することができ、コネクタに対するフレキシブルケーブル16の接続状態を適切に保持することができる。また、フレキシブルケーブル16が固定されるハンガー部117には、放熱用の冷却フィン118が取り付けられている。これにより、フレキシブルケーブル16の熱を冷却フィン118から放出させることができ、カメラモジュール11の温度を下げることができる。なお、ハンガー部117と冷却フィン118とを別部材として形成しても良く、ハンガー部117と冷却フィン118とを1つの部材として一体に形成しても良い。また、ハンガー部117や冷却フィン118は、熱伝導樹脂材料を用いて成形しても良く、金属材料を用いて成形しても良い。
【0056】
<ケース枠体>
図12に示すように、矩形枠形状に形成されるケース枠体110は、互いに対向する一対のケース壁110a,110bと、互いに対向する一対のケース壁110c,110dと、を有している。ケース壁110aには電磁コイル(コイル)20が取り付けられており、ケース壁110cには電磁コイル(コイル)21が取り付けられている。なお、電磁コイル20,21は折り曲げられたフレキシブル配線基板48に設けられている。また、ケース壁110a,110dを互いに連結する角部にはケース軸受50が取り付けられており、ケース壁110b,110cを互いに連結する角部にはケース軸受51が取り付けられている。このように、ケース枠体110には、ケース軸受50,51が対角線上に配置されている。
【0057】
<ポップアップ機構>
光学装置200に設けられるポップアップ機構120について説明する。このポップアップ機構120とは、フロントカバー112およびカメラモジュール11を格納する沈胴状態と、フロントカバー112およびカメラモジュール11を突出させる繰出状態と、に作動する機構である。
図13(A)はポップアップ機構120が沈胴状態に作動したときの光学装置200を示す平面図であり、
図13(B)は
図13(A)の矢印13b方向から光学装置200を示す側面図である。また、
図14(A)はポップアップ機構120が繰出状態に作動したときの光学装置200を示す平面図であり、
図14(B)は
図14(A)の矢印14b方向から光学装置200を示す側面図である。なお、
図13(B)および
図14(B)には、光学装置200が組み込まれる電子機器300の外装部材301,302が示されている。
【0058】
図13(A)に示すように、ベース部材113には、ステッピングモータ26を備えた直動ユニット71が取り付けられている。ステッピングモータ26によってネジ軸73を回転させ、ナット74を矢印A1方向(第1方向)に移動させることにより、
図13(B)に示すように、フロントカバー112およびケース枠体110を光軸方向に沿って矢印B1方向に移動させることができる。つまり、フロントカバー112およびケース枠体110を、ベース部材113に近づく沈胴位置(第1位置)に移動させることができる。
【0059】
一方、
図14(A)に示すように、ステッピングモータ26によってネジ軸73を回転させ、ナット74を矢印A2方向(第2方向)に移動させることにより、
図14(B)に示すように、フロントカバー112およびケース枠体110を光軸方向に沿って矢印B2方向に移動させることができる。つまり、矢印A1方向とは逆向きの矢印A2方向にナット74を移動させることにより、フロントカバー112およびケース枠体110を、ベース部材113から離れる繰出位置(第2位置)に移動させることができる。
【0060】
図15および
図16は、ポップアップ機構120を構成するケース枠体110、フロントカバー112およびプレートユニット121を示す分解斜視図である。なお、
図15および
図16に示す一点鎖線は、互いに係合する部位の位置関係を示している。
図17(A)は
図13の17a-17a線に沿ってプレートユニット121の動作位置を示す図であり、
図17(B)は
図14の17b-17b線に沿ってプレートユニット121の動作位置を示す図である。さらに、
図18(A)は
図13の18a-18a線に沿ってプレートユニット121の動作位置を示す図であり、
図18(B)は
図14の18b-18b線に沿ってプレートユニット121の動作位置を示す図である。なお、発明の理解を容易にするため、
図17および
図18に示したプレートユニット121にはハッチングを付している。
【0061】
図15に示すように、直動ユニット71のナット74には、一対のカムプレート122,123を備えたプレートユニット(カム部材)121が取り付けられている。プレートユニット121のカムプレート122にはカム溝130,131が形成されており、カム溝130,131にはケース枠体110のケース壁110cから突出するカムピン140,141が収容される。また、ケース枠体110のカムピン140,141は、カムプレート122のカム溝130,131を通過するとともに、ベース部材113に形成されるガイド孔150,151に収容される。さらに、カムプレート122にはカムピン132が設けられており、カムピン132はフロントカバー112に形成されるカム孔162に収容される。さらに、カムプレート122にはガイドピン133a,133bが設けられており、ガイドピン133a,133bはベース部材113に形成されるガイド孔153a,153bに収容される。さらに、フロントカバー112にはガイドピン165が設けられており、ガイドピン165はベース部材113に形成されるガイド孔155に収容される。
【0062】
図16に示すように、プレートユニット121のカムプレート123にはカム溝136が形成されており、このカム溝136にはケース枠体110のケース壁110dから突出するカムピン146が収容される。また、ケース枠体110のカムピン146は、カムプレート123のカム溝136を通過するとともに、ベース部材113に形成されるガイド孔156に収容される。さらに、カムプレート123にはカムピン137,138が設けられており、カムピン137,138はフロントカバー112に形成されるカム孔167,168に収容される。さらに、カムプレート123にはガイドピン139a,139bが設けられており、ガイドピン139a,139bはベース部材113に形成されるガイド孔159a,159bに収容される。さらに、ケース枠体110のケース壁110bにはガイドピン143,144が設けられており、ガイドピン143,144はフロントカバー112に形成されるガイド溝163,164に収容される。
【0063】
このように、プレートユニット121のカムプレート122は、フロントカバー112およびケース枠体110に対し、カムピン140,141,132、カム溝130,131およびカム孔162からなるカムを介して係合している。同様に、プレートユニット121のカムプレート123は、フロントカバー112およびケース枠体110に対し、カムピン137,138,146、カム溝136およびカム孔167,168からなるカムを介して係合している。
【0064】
図15および
図16に示すように、ベース部材113にはX軸方向に伸びるガイド孔153a,153b,159a,159bが形成されており、これらのガイド孔153a,153b,159a,159bにはプレートユニット121のガイドピン133a,133b,139a,139bが収容される。これにより、プレートユニット121は、ガイド孔153a,153b,159a,159bに沿ってX軸方向に移動可能となっている。つまり、ベース部材113に取り付けられるプレートユニット121は、光軸Oaに直交する光軸直交方向(光軸交差方向)に移動可能となっている。換言すれば、プレートユニット121は、ガイド孔153a,153b,159a,159bによってY軸方向やZ軸方向への移動が規制されている。なお、図示する例では、プレートユニット121が、光軸直交方向に移動可能にベース部材113に取り付けられているが、これに限られることはない。例えば、プレートユニット121が、光軸Oaに交差する光軸交差方向に移動可能にベース部材113に取り付けられていても良い。つまり、光軸Oaとプレートユニット121の移動方向とのなす角度は、90°に設定されていても良く、90°を上回る角度に設定されていても良く、90°を下回る角度に設定されていても良い。
【0065】
また、ベース部材113に形成される貫通孔170,171には、光軸Oaに直交するX軸に対して平行にガイドシャフト172が取り付けられている。また、ベース部材113に対してガイドシャフト172を取り付ける際には、ガイドシャフト172がプレートユニット121の貫通孔173に対して挿入されている。これにより、プレートユニット121は、ガイドシャフト172に沿ってX軸方向に移動可能となっている。つまり、ベース部材113に取り付けられるプレートユニット121は、光軸Oaに直交する光軸直交方向(光軸交差方向)に移動可能となっている。換言すれば、プレートユニット121は、ガイドシャフト172によってY軸方向やZ軸方向への移動が規制されている。なお、図示する例では、ベース部材113に対してガイドシャフト172を取り付けているが、これに限られることはなく、プレートユニット121に対してガイドシャフト172を取り付けても良い。
【0066】
図示する例では、ガイド孔153a,153b,159a,159bおよびガイドシャフト172を用いて、プレートユニット121を光軸直交方向(光軸交差方向)に案内しているが、これに限られることはない。例えば、ガイド孔153a,153b,159a,159bだけを用いてプレートユニット121を光軸直交方向(光軸交差方向)に案内しても良く、ガイドシャフト172だけを用いてプレートユニット121を光軸直交方向(光軸交差方向)に案内しても良い。また、ガイド孔153a,153b,159a,159bの個数やガイドシャフト172の本数として、図示する数に限られることはなく、必要に応じて適宜増減させることが可能である。なお、図示する例では、光軸Oaに直交するX軸に平行にガイドシャフト172が取り付けられており、光軸Oaに直交するX軸に平行にガイド孔153a,153b,159a,159bが形成されているが、これに限られることはない。つまり、設計されたプレートユニット121の移動方向によっては、X軸に傾斜するようにガイドシャフト172を取り付けても良く、X軸に傾斜するようにガイド孔153a,153b,159a,159bを形成しても良い。
【0067】
さらに、フロントカバー112にはY軸方向に伸びるガイド溝163,164が形成されており、これらのガイド溝163,164にはケース枠体110のガイドピン143,144が収容される。さらに、ベース部材113にはY軸方向に伸びるガイド孔150,151,156が形成されており、これらのガイド孔150,151,156にはケース枠体110のカムピン140,141,146が収容される。さらに、ベース部材113にはY軸方向に伸びるガイド孔155が形成されており、このガイド孔155にはフロントカバー112のガイドピン165が収容される。これにより、フロントカバー112およびケース枠体110は、ガイド溝163,164やガイド孔150,151,155,156に沿ってZ軸方向に移動可能となっている。つまり、ベース部材113に取り付けられるフロントカバー112およびケース枠体110は、光軸方向に移動可能となっている。換言すれば、フロントカバー112およびケース枠体110は、ガイド溝163,164やガイド孔150,151,155,156によってX軸方向やY軸方向への移動が規制されている。
【0068】
図17(A)および
図18(A)に示すように、プレートユニット121を矢印A1方向に移動させることにより、フロントカバー112およびケース枠体110はベース部材113に近づく沈胴位置に移動する。つまり、プレートユニット121のカムピン132,137,138が矢印A1方向に移動するため、カムピン132,137,138が収容されるカム孔162,167,168を備えたフロントカバー112は、沈胴位置に向けて矢印B1方向に移動する。また、プレートユニット121のカム溝130,131,136が矢印A1方向に移動するため、カム溝130,131,136に収容されるカムピン140,141,146を備えたケース枠体110は、沈胴位置に向けて矢印B1方向に移動する。
【0069】
一方、
図17(B)および
図18(B)に示すように、プレートユニット121を矢印A2方向に移動させることにより、フロントカバー112およびケース枠体110はベース部材113から離れる繰出位置に移動する。つまり、プレートユニット121のカムピン132,137,138が矢印A2方向に移動するため、カムピン132,137,138が収容されるカム孔162,167,168を備えたフロントカバー112は、繰出位置に向けて矢印B2方向に移動する。また、プレートユニット121のカム溝130,131,136が矢印A2方向に移動するため、カム溝130,131,136に収容されるカムピン140,141,146を備えたケース枠体110は、繰出位置に向けて矢印B2方向に移動する。
【0070】
図19(A)はカム孔162とカムピン132との位置関係を示す図であり、
図19(B)はカム溝130とカムピン140との位置関係を示す図である。
図19(A)および(B)には、実線を用いて沈胴位置のカムピン132,140が示されており、破線を用いて繰出位置のカムピン132,140が示されている。
図19(A)および(B)に示すように、フロントカバー112の移動量を制御するカム孔162は、ケース枠体110の移動量を制御するカム溝130よりも大きく傾斜している。つまり、プレートユニット121の移動方向(矢印A1,A2)に対して、カム孔162はカム溝130よりも大きく傾斜している。これにより、フロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置から繰出位置に移動させる際に、フロントカバー112はストロークS1で押し出され、ケース枠体110はストロークS1よりも小さなストロークS2で押し出される。つまり、フロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置から繰出位置に移動させる際に、ケース枠体110よりもフロントカバー112を大きく押し出すことができる。
【0071】
図20(A)および(B)は、カメラモジュール11およびその近傍を示す部分断面図である。
図20(A)にはフロントカバー112およびケース枠体110が沈胴位置に移動した状態が示されており、
図20(B)にはフロントカバー112およびケース枠体110が繰出位置に移動した状態が示されている。
【0072】
前述したように、フロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置から繰出位置に移動させる際に、フロントカバー112はストロークS1で押し出され、ケース枠体110はストロークS1よりも小さなストロークS2で押し出される。このため、
図20(A)および(B)に示すように、フロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置から繰出位置に移動させることにより、外装部材302とカメラモジュール11との間に、ストロークS2に相当する隙間G1を確保することができる。また、フロントカバー112とカメラモジュール11との間に、ストロークS1からストロークS2を減算した値に相当する隙間G2を確保することができる。
【0073】
このように、カメラモジュール11の周囲に隙間G1,G2を確保することができるため、カメラモジュール11をフロントカバー112や外装部材302に接触させることなく、手振れ補正機構10によってカメラモジュール11を適切に回転させることができる。換言すれば、
図20(A)に示すように、フロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置に移動させる場合には、手振れ補正機構10によってカメラモジュール11を回転させることがないため、カメラモジュール11の周囲から隙間を無くすようにフロントカバー112およびケース枠体110を格納することができる。これにより、手振れ補正機構10の機能を確保しつつ、光学装置200の小型化を達成することができる。
【0074】
図20(A)に示すように、フロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置に移動させる場合には、フロントカバー112のカバー本体115とスリーブ114との間の開口部180から、ジンバル24の一部がレンズカバー116側に突出している。これにより、フロントカバー112をケース枠体110に対して更に近づけることができ、光学装置200の更なる小型化を達成することができる。
【0075】
図20(A)および(B)に示すように、外装部材301の開口部303とフロントカバー112のスリーブ114との間にはOリング181が組み付けられている。これにより、スマートフォン等の電子機器300に対する埃等の進入を防止することができ、電子機器300を適切に機能させることができる。また、フロントカバー112のスリーブ114にはフランジ182,183が形成されており、フロントカバー112を沈胴位置や繰出位置に移動させた場合には、スリーブ114のフランジ182,183によってOリング181を適度に圧縮することができる。
【0076】
また、Oリング181は外装部材301に対して一体に取り付けられており、フロントカバー112の沈胴・繰出動作が行われる場合であっても、Oリング181はスリーブ114の外周面で摺動する。このように、Oリング181がスリーブ114の外周面で摺動することから、フロントカバー112の沈胴位置または繰出位置に移動する過程であっても、動作が行われる場合であっても、スマートフォン等の電子機器300に対する埃等の進入を防止することができる。また、図示する例では、Oリング181を用いているが、これに限られることはなく、同様のシーリング機能を備えたパッキン、シート材、弾性接着剤、エラストマー等のシール部材を用いても良い。また、Oリング181等のシール部材を、外装部材301に対して接着や溶着等によって固定しても良い。さらに、二色成形や一体成型等を用いることにより、外装部材301に対してシール部材を一体に設けても良い。
【0077】
<保持機構A>
光学装置200を有する電子機器300は、フロントカバー112を繰出位置に保持する保持機構を有している。
図21は電子機器300の外装部材301を内側から示した斜視図である。まず、
図11に示すように、フロントカバー112のカバー本体115には、円筒形状のボス部209と、永久磁石210aを備えた円筒形状のボス部210と、が設けられている。また、
図21に示すように、外装部材301の内側には、ボス部209に対向する受け部304と、ボス部210に対向する電磁石305と、が設けられている。なお、電磁石305は、磁性体305aおよびコイル305bによって構成されている。電磁石305の磁性体305aは、純鉄、パーマロイ、炭素鋼等の磁性材料を用いて形成される。このように、フロントカバー112には永久磁石210aが取り付けられており、フロントカバー112に対向する外装部材301には電磁石305が取り付けられている。
【0078】
図20(B)に示すように、フロントカバー112が繰出位置に押し出されると、フロントカバー112に設けられるボス部210が、外装部材301に設けられる電磁石305に近接する。これにより、コイル305bが無通電状態であっても、磁性体305aと永久磁石210aとは磁力によって互いに引き合い、フロントカバー112と外装部材301とが互いに引き合うことから、フロントカバー112を繰出位置に保持することができる。さらに、より強力にフロントカバー112を繰出位置で保持する必要がある場合には、コイル305bに通電を行うことにより、保持力を増強することもできる。そして、フロントカバー112を繰出位置から沈胴位置に移動させる場合には、ボス部210に対して電磁石305が反発するように、図示しない電子制御ユニットによって電磁石305のコイル305bに対する通電制御を実行する。このように、電磁石305の磁力によって外装部材301からフロントカバー112を離すことができ、フロントカバー112を繰出位置から沈胴位置に移動させることができる。
【0079】
なお、フロントカバー112が繰出位置に移動したときに、ボス部210が電磁石305に近接するということは、フロントカバー112が繰出位置に移動したときのボス部210と電磁石305との間隔が、フロントカバー112が沈胴位置に移動したときのボス部210と電磁石305との間隔よりも狭いことを意味している。また、前述の説明では、フロントカバー112を繰出位置に移動させた場合に、ボス部210と電磁石305との接触を回避し、ボス部209と受け部304との接触を回避しているが、これに限られることはない。例えば、フロントカバー112を繰出位置に移動させた場合に、ボス部210と電磁石305とを互いに接触させても良く、ボス部209と受け部304とを互いに接触させても良い。
【0080】
<保持機構B>
光学装置200は、フロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置に保持する保持機構を有している。
図16に示すように、プレートユニット121のカムプレート122には磁性部材211が取り付けられており、この磁性部材211はプレートユニット121の作動位置によってホルダ枠体23に取り付けられた永久磁石44に対向する。ここで、
図22(A)および(B)は磁性部材211と永久磁石44との位置関係を示す図である。
図22(A)にはフロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置に移動させたときのプレートユニット121が示されており、
図22(B)にはフロントカバー112およびケース枠体110を繰出位置に移動させたときのプレートユニット121が示されている。なお、磁性部材は211、純鉄、パーマロイ、炭素鋼等の磁性材料を用いて形成される。
【0081】
図22(A)および(B)に示すように、フロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置に移動させるため、プレートユニット121を矢印A1方向に移動させると、プレートユニット121の磁性部材211がホルダ枠体23の永久磁石44に対向する。一方、フロントカバー112およびケース枠体110を繰出位置に移動させるため、プレートユニット121を矢印A2方向に移動させると、プレートユニット121の磁性部材211がホルダ枠体23の永久磁石44から離れる。これにより、フロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置に移動させた場合には、プレートユニット121の停止位置を磁力によって保持することができ、フロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置に保持することができる。
【0082】
<保持機構C>
光学装置200は、フロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置と繰出位置とに保持する保持機構を有している。
図23は光学装置200の一部を拡大する斜視図である。
図23に示すように、プレートユニット121には永久磁石212が取り付けられており、この永久磁石212に対向するようにベース部材113の裏面には板状の磁性部材213が取り付けられる。なお、磁性部材213は、純鉄、パーマロイ、炭素鋼等の磁性材料を用いて形成される。
【0083】
図22(A)および(B)に示すように、フロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置に移動させるため、プレートユニット121を矢印A1方向に移動させた場合には、プレートユニット121の永久磁石212はベース部材113の磁性部材213に対向する。また、フロントカバー112およびケース枠体110を繰出位置に移動させるため、プレートユニット121を矢印A2方向に移動させた場合にも、プレートユニット121の永久磁石212はベース部材113の磁性部材213に対向する。このように、フロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置に移動させた場合だけでなく、フロントカバー112およびケース枠体110を繰出位置に移動させた場合においても、プレートユニット121の停止位置を磁力によって保持することができる。これにより、フロントカバー112およびケース枠体110を、沈胴位置と繰出位置との双方に保持することができる。
【0084】
<ロック機構A>
光学装置200は、フロントカバー112が沈胴位置に移動したときにカメラモジュール11を拘束するロック機構を有している。
図24(A)はフロントカバー112を裏面側から示す斜視図であり、
図24(B)はフロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置に移動させたときの部分断面図である。また、
図24(B)においてはカメラモジュール11の内部構造を省略して図示しているが、図示するカメラモジュール11は
図20に示した構造を有している。つまり、
図20に示すように、カメラモジュール11は、レンズ14を収容するレンズバレル12と、レンズバレル12を光軸方向に駆動するオートフォーカス機構220が収容されるハウジング13と、レンズバレル12の下方に位置する撮像素子221を備えた電子回路基板15と、を有している。
【0085】
図24(A)に示すように、フロントカバー112を構成するスリーブ114の内周面には、径方向内側に延びるロック爪230が設けられている。また、フロントカバー112を構成するスリーブ114の下端面には、ベース部材113側に突出するロックピン231が設けられている。
図24(B)に示すように、フロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置に移動させると、フロントカバー112のロック爪230はレンズバレル12に接触するとともに、フロントカバー112のロックピン231はハウジング13に接触する。このように、フロントカバー112によってレンズバレル12およびハウジング13を拘束することにより、フロントカバー112およびカメラモジュール11を格納する沈胴状態においては、レンズバレル12やハウジング13の動きを抑えることができる。
【0086】
図24(B)に示した例では、フロントカバー112のロック爪230をレンズバレル12に接触させ、フロントカバー112のロックピン231をハウジング13に接触させているが、これに限られることはない。つまり、他の実施例として、フロントカバー112およびケース枠体110を沈胴位置に移動させた場合に、フロントカバー112のロック爪230をレンズバレル12に近接させても良く、フロントカバー112のロックピン231をハウジング13に近接させても良い。この場合でも、フロントカバー112によってレンズバレル12およびハウジング13をほぼ拘束することができ、フロントカバー112およびカメラモジュール11を格納する沈胴状態においては、レンズバレル12やハウジング13の動きをほぼ抑えることができる。なお、フロントカバー112およびケース枠体110が沈胴位置に移動したときに、ロック爪230がレンズバレル12に近接するということは、沈胴位置におけるロック爪230とレンズバレル12との間隔が、繰出位置におけるロック爪230とレンズバレル12との間隔よりも狭いことを意味している。同様に、フロントカバー112およびケース枠体110が沈胴位置に移動したときに、ロックピン231がハウジング13に近接するということは、沈胴位置におけるロックピン231とハウジング13との間隔が、繰出位置におけるロックピン231とハウジング13との間隔よりも狭いことを意味している。
【0087】
これにより、カメラモジュール11に組み込まれたオートフォーカス機構220を保護することができる。また、カメラモジュール11の動きを抑えることにより、手振れ補正機構10の動きを抑えることができるため、手振れ補正機構10を保護することができ、異音の発生を防止することができる。なお、図示する例では、フロントカバー112によってレンズバレル12とハウジング13との双方を押さえているが、これに限られることはない。例えば、フロントカバー112によってレンズバレル12だけを押さえても良く、フロントカバー112によってハウジング13だけを押さえても良い。
【0088】
<ロック機構B>
光学装置200は、フロントカバー112が沈胴位置に移動したときにジンバル24を拘束するロック機構を有している。
図25(A)および(B)は、フロントカバー112とジンバル24との位置関係を示す図である。
図25(A)にはフロントカバー112を繰出位置に移動させたときの状況が示され、
図25(A)にはフロントカバー112を沈胴位置に移動させたときの状況が示されている。
【0089】
前述したように、フロントカバー112を構成するスリーブ114の下端面には、ベース部材113側に突出するロックピン(凸部)231が設けられている。
図25(A)に示すように、フロントカバー112のロックピン231はジンバル24の貫通孔58,59に対向しており、フロントカバー112を繰出位置に移動させた場合には、ジンバル24の貫通孔58,59からロックピン231が抜かれた状態となる。一方、
図25(B)に示すように、フロントカバー112を沈胴位置に移動させた場合には、ジンバル24の貫通孔58,59にロックピン231が挿入された状態となる。このように、フロントカバー112のロックピン231をジンバル24の貫通孔58,59に挿入することにより、ロックピン231によってジンバル24の傾動動作を拘束することができる。これにより、フロントカバー112およびカメラモジュール11を格納する沈胴状態においては、手振れ補正機構10の動きを抑えることができるため、手振れ補正機構10を保護することができ、異音の発生を防止することができる。
【0090】
<各部材間の摺動抵抗>
図15および
図16に示すように、プレートユニット121にはベース部材113に対向するレール部240が形成されており、ベース部材113にはプレートユニット121の下面に対向するレール部241が形成されている。プレートユニット121のレール部240をベース部材113に接触させ、ベース部材113のレール部241をプレートユニット121に接触させることにより、プレートユニット121とベース部材113との摺動抵抗を低減することができる。このように、プレートユニット121とこれに接触する部材との摺動抵抗を低減することができるため、ポップアップ機構120の耐久性を高めることができるだけでなく、ステッピングモータ26の小型化および低コスト化を達成することができる。なお、図示する例では、各部材を互いに摺動させているが、これに限られることはなく、各部材間にボールやローラ等の転動体を配置しても良い。
【0091】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、カメラモジュール11は、ヨーイング方向又はピッチング方向の何れかの方向にのみ回転可能に支持されていても良い。また、カメラモジュール11は、ヨーイング方向、ピッチング方向および第3の方向(例えば、ローリング方向)に回転可能に支持されていても良い。図示する例では、電磁コイル20,21として、電線を巻いた空芯コイルを用いているが、これに限られることはない。例えば、他の実施の形態として、導線がプリントされたプリント基板からなる基板コイルなど、他の種類のコイルを使用しても良い。
【0092】
前述の説明では、ポップアップ機構70,120によって1つのカメラモジュール11を移動させているが、これに限られることはなく、ポップアップ機構70,120によって複数のカメラモジュール11を移動させても良い。例えば、
図11等に示した光学装置200において、ベース部材113、プレートユニット121およびフロントカバー112等をX軸方向に延ばすことにより、ポップアップ機構120に対して2つ以上のカメラモジュール11を組み込むことが可能である。図示する例では、直動ユニット71のアクチュエータとして、モータロータの位置決めが可能なステッピングモータ26を用いているが、これに限られることはなく、モータロータの位置決めを行うことができない電動モータをアクチュエータとして用いても良い。また、直動ユニット71のアクチュエータとして、電磁力によってプッシュロッドを往復動させるようにしたプランジャ型のアクチュエータを用いても良い。
【符号の説明】
【0093】
11…カメラモジュール、11a…先端部、12…レンズバレル、13…ハウジング、14…レンズ、16…フレキシブルケーブル、20,21…電磁コイル(コイル)、22…ケース枠体(ケース部材)、23…ホルダ枠体(ホルダ部材)、24…ジンバル、25…フロントカバー(カバー部材)、26…ステッピングモータ(アクチュエータ)、27…ベース部材、33,34…ガイドシャフト、43,44…永久磁石、58,59…貫通孔、75…ガイドシャフト、80…カムプレート(カム部材)、81…カム孔(カム)、83,84…カムピン(カム)、98,99…当接部、100…光学装置、110…ケース枠体(ケース部材)、112…フロントカバー(カバー部材)、121…プレートユニット(カム部材)、130,131,136…カム溝(カム)、132,137,138,140,141,146…カムピン(カム)、162,167,168…カム孔(カム)、172…ガイドシャフト、200…光学装置、210a…永久磁石、211…磁性部材、231…ロックピン(凸部)、300…電子機器