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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170106
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】恒温槽付水晶発振器の温度制御回路
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
H03B5/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075999
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】見留 博之
(72)【発明者】
【氏名】本宮 甲史郎
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA02
5J079CA12
5J079FA02
5J079FA22
5J079FA24
5J079FB01
(57)【要約】
【課題】 水晶振動子の周波数温度特性の極小点温度付近における温度調整の分解能を向上させ、安定した周波数信号を出力させることができる恒温槽付水晶発振器の温度制御回路を提供する。
【解決手段】 電源電圧が一端に供給される第1の抵抗R1と、第1の抵抗R1の他端に一端が接続し、他端が接地するサーミスタTHと、第1の抵抗R1に並列に接続されたデジタルポテンショメーターRpo と、電源電圧が一端に供給される第2の抵抗R2と、第2の抵抗R2の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗R3とを備え、差動増幅器ICの一方の入力端子に、第1の抵抗R1の他端と前記サーミスタTHの一端との間の電圧が入力され、他方の入力端子に、第2の抵抗R2の他端と第3の抵抗R3の一端との間の電圧が入力されて、パワートランジスタのベースに差動増幅器の出力が入力され、コレクタにヒーター抵抗が接続された温度制御回路としている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒温槽付水晶発振器における恒温槽の温度制御回路であって、
電源電圧が一端に接続して発熱するヒーター抵抗と、
電源電圧が一端に供給される第1の抵抗と、
前記第1の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地し、温度に応じて抵抗値を可変とするサーミスタと、
前記第1の抵抗に並列に接続され、抵抗値をデジタル制御で可変にするデジタルポテンショメーターと、
電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、
前記第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗と、
前記第1の抵抗の他端と前記サーミスタの一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、前記第2の抵抗の他端と前記第3の抵抗の一端との間の電圧が、第4の抵抗を介して他方の入力端子に入力され、出力が第5の抵抗を介して前記他方の入力端子に帰還して、前記他方の入力端子に入力される電圧と前記一方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、
前記ヒーター抵抗の他端が接続するコレクタと、前記差動増幅器の出力を入力するベースと、接地するエミッタとを備え、前記差動増幅器からの制御電圧によって前記ヒーター抵抗の発熱を制御するパワートランジスタと、を有することを特徴とする温度制御回路。
【請求項2】
恒温槽付水晶発振器における恒温槽の温度制御回路であって、
電源電圧が一端に接続して発熱するヒーター抵抗と、
電源電圧が一端に供給される第1の抵抗と、
前記第1の抵抗の他端に一端が接続する第6の抵抗と、
前記第6の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地し、温度に応じて抵抗値を可変とするサーミスタと、
前記第6の抵抗に並列に接続され、抵抗値をデジタル制御で可変にするデジタルポテンショメーターと、
電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、
前記第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗と、
前記第1の抵抗の他端と前記第6の抵抗の一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、前記第2の抵抗の他端と前記第3の抵抗の一端との間の電圧が、第4の抵抗を介して他方の入力端子に入力され、出力が第5の抵抗を介して前記他方の入力端子に帰還して、前記他方の入力端子に入力される電圧と前記一方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、
前記ヒーター抵抗の他端が接続するコレクタと、前記差動増幅器の出力を入力するベースと、接地するエミッタとを備え、前記差動増幅器からの制御電圧によって前記ヒーター抵抗の発熱を制御するパワートランジスタと、を有することを特徴とする温度制御回路。
【請求項3】
第2の抵抗に並列に接続されるデジタルポテンショメーターの他端に第7の抵抗を直列に接続したことを特徴とする請求項2記載の温度制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高安定の発振周波数を得ることができる恒温槽付水晶発振器(OCXO:Oven Controlled Crystal Oscillator)に係り、特に、恒温槽の温度を水晶の周波数温度特性の極小点温度近辺で安定化させる恒温槽付水晶発振器の温度制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
恒温槽付水晶発振器は、水晶振動子の動作温度を一定に維持することから、周波数温度特性に依存した周波数変化を引き起こすことなく、高安定の発振周波数が得られるものである。
水晶振動子は、恒温槽に収納され、恒温槽は、温度制御回路によってその槽内の温度を一定に保持するよう制御される。
【0003】
[水晶振動子の周波数温度特性:図6
水晶振動子の周波数温度特性について図6を用いて説明する。図6は、水晶振動子の周波数温度特性の例を示す説明図である。
図6に示すように、水晶振動子の周波数温度特性は3次曲線で表され、恒温槽付水晶発振器では、温度に対する周波数変化が小さく、安定している周波数温度特性の極小点温度付近で動作するよう、恒温槽の温度を制御する。
【0004】
図6の例のように、周波数温度特性の極小点温度付近の高温側が低温側に比べて急峻な周波数温度特性である場合には、高温側における温度調整の分解能を高くしておく必要がある。
分解能が十分高くないと、少しの制御量(調整量)で温度が大幅に変化して、水晶振動子の出力周波数が大きく変動してしまう。
【0005】
[従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路:図7
従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路としては、デジタルポテンショメーターを用いたものがあった。
従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路について図7を用いて説明する。図7は、従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路の構成図である。
従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路は、図7に示すように、基本的に、サーミスタTHと、差動増幅器(オペアンプ)ICと、パワートランジスタQと、ヒーター抵抗H1とを有している。
【0006】
[接続関係]
ヒーター抵抗H1の一端には、電源電圧VCCが印加され、ヒーター抵抗H1の他端はパワートランジスタQのコレクタに接続され、パワートランジスタQのエミッタはグランド(GND)に接地されている。
【0007】
また、デジタルポテンショメーターRpoの一端には定電圧(電源電圧)が印加され、デジタルポテンショメーターRpoの他端がサーミスタTHの一端に接続され、サーミスタTHの他端が接地されている。
更に、抵抗R2の一端にも定電圧(電源電圧)が印加され、抵抗R2の他端が抵抗R3の一端に接続され、抵抗R3の他端が接地されている。
【0008】
そして、デジタルポテンショメーターRpoの他端とサーミスタTHの一端との間の点が、差動増幅器ICの一方の端子(+端子)に接続され、抵抗R2の他端と抵抗R3の一端との間の点が、抵抗R4を介して差動増幅器ICの他方の端子(-端子)に接続されている。
【0009】
更に、差動増幅器ICの出力端子と-端子とが、抵抗R5を介して接続されている。
そして、差動増幅器ICの出力端子は、抵抗R6を介してパワートランジスタQのベースに接続されている。
従って、差動増幅器ICは、負帰還の反転増幅器となっている。
【0010】
[各部]
サーミスタTHは、温度によって抵抗値が変化する感温素子であり、水晶振動子の動作温度を検出する。
差動増幅器ICは、一方の入力端子(+端子)と他方の入力端子(-)に入力される電圧の差分を増幅する。
【0011】
パワートランジスタQは、ベースに差動増幅器ICの出力が抵抗R6を介して入力され、ベースへの印加電圧に応じてコレクタとエミッタとの間に電流を流すことで、ヒーター抵抗H1にも電流を流すようになっている。
ヒーター抵抗H1は、流れる電流に応じて発熱する。
ここで、パワートランジスタQとヒーター抵抗H1が熱源となっている。
【0012】
尚、上記構成は、恒温槽内の温度を一定に保つための構成であるが、槽内の温度を変化させるためには、デジタルポテンショメーターRpoの抵抗値を変化させる。
例えば、デジタルポテンショメーターRpoには、64段階(6bit)の設定値に応じて抵抗値が変化するものがあり、設定値が大きくなると抵抗値も大きくなり、設定値が小さくなると抵抗値も小さくなる。
【0013】
[従来の温度制御回路の特性:図8
次に、図7に示した従来の温度制御回路の特性について図8を用いて説明する。図8は、従来の温度制御回路の特性を示す説明図であり、図7の温度制御回路を用いた恒温槽付水晶発振器におけるデジタルポテンショメーターRpoの設定値と水晶振動子の温度との関係を示している。
【0014】
図8に示すように、従来の温度制御回路では、デジタルポテンショメーターRpoの抵抗値が大きくなると、ヒーター抵抗H1に流れる電流が減少して水晶振動子の温度は低下する。
上述したように、水晶振動子の周波数温度特性の極小点温度付近(約90℃~100℃の範囲)における温度調整を精度よく行う必要があるが、図8に示すように、従来の温度制御回路では、デジタルポテンショメーターRpoの設定値に対する水晶振動子の温度は、傾きの大きい直線となり、設定値を少し調整しただけで水晶振動子の温度が大幅に変化してしまう。
つまり、従来の温度制御回路は、周波数温度特性の極小点温度付近におけるデジタルポテンショメーター設定値の1bitあたりの温度変化量が大きく、調整精度(分解能)が低いものであった。
【0015】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2012-257195号公報「恒温槽付水晶発振器の温度制御回路」(特許文献1)、特開2005-117093号公報「温度制御回路とこれを用いた高安定水晶発振器」(特許文献2)、特開平07-240628号公報「恒温槽の制御回路及びこれを用いた水晶発振器」(特許文献3)がある。
【0016】
特許文献1には、第1のデジタルポテンショメーターが、水晶振動子の温度を頂点付近に調整するために抵抗値を可変とし、第2のデジタルポテンショメーターが、第1のデジタルポテンショメーターの温度傾斜を打ち消すために抵抗値を可変とする恒温槽付水晶発振器の温度制御回路が記載されている。
【0017】
特許文献2には、定電圧素子で生成する定電圧を抵抗と第1のサーミスタとで分圧した電圧を差動オペアンプのプラス側入力に、定電圧を第2のサーミスタと可変抵抗とで分圧した電圧をマイナス側入力に加えて、ヒーター回路を制御する温度制御回路が記載されている。
また、特許文献3には、デジタルポテンショメーターを用い、作業性を良好とし、自動化を可能とする恒温槽の制御回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2012-257195号公報
【特許文献2】特開2005-117093号公報
【特許文献3】特開平07-240628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述したように、従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路では、水晶振動子の周波数温度特性の極小点温度付近において、デジタルポテンショメーターの設定値に対する水晶振動子の温度変化が大きく、温度調整の精度(分解能)が低いという問題点があった。
特に、水晶振動子の周波数温度特性により、周波数温度特性の極小点温度付近の高温領域では周波数の変化が急峻であるため、細かい温度調整が必要であるが、従来の温度制御回路では十分な精度が得られていない。
【0020】
尚、特許文献1~3には、サーミスタに直列に接続されるデジタルポテンショメーターに並列に接続する第1の抵抗を設けた構成の記載はない。
【0021】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、水晶振動子の周波数温度特性の極小点温度付近における温度調整の分解能を向上させ、安定した周波数信号を出力させることができる恒温槽付水晶発振器の温度制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、恒温槽付水晶発振器における恒温槽の温度制御回路であって、電源電圧が一端に接続して発熱するヒーター抵抗と、電源電圧が一端に供給される第1の抵抗と、第1の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地し、温度に応じて抵抗値を可変とするサーミスタと、第1の抵抗に並列に接続され、抵抗値をデジタル制御で可変にするデジタルポテンショメーターと、電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗と、第1の抵抗の他端とサーミスタの一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、第2の抵抗の他端と第3の抵抗の一端との間の電圧が、第4の抵抗を介して他方の入力端子に入力され、出力が第5の抵抗を介して他方の入力端子に帰還して、他方の入力端子に入力される電圧と一方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、ヒーター抵抗の他端が接続するコレクタと、差動増幅器の出力を入力するベースと、接地するエミッタとを備え、差動増幅器からの制御電圧によってヒーター抵抗の発熱を制御するパワートランジスタと、を有することを特徴としている。
【0023】
また、本発明は、恒温槽付水晶発振器における恒温槽の温度制御回路であって、電源電圧が一端に接続して発熱するヒーター抵抗と、電源電圧が一端に供給される第1の抵抗と、第1の抵抗の他端に一端が接続する第6の抵抗と、第6の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地し、温度に応じて抵抗値を可変とするサーミスタと、第6の抵抗に並列に接続され、抵抗値をデジタル制御で可変にするデジタルポテンショメーターと、電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗と、第1の抵抗の他端と第6の抵抗の一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、第2の抵抗の他端と第3の抵抗の一端との間の電圧が、第4の抵抗を介して他方の入力端子に入力され、出力が第5の抵抗を介して他方の入力端子に帰還して、他方の入力端子に入力される電圧と一方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、ヒーター抵抗の他端が接続するコレクタと、差動増幅器の出力を入力するベースと、接地するエミッタとを備え、差動増幅器からの制御電圧によってヒーター抵抗の発熱を制御するパワートランジスタと、を有することを特徴としている。
【0024】
また、本発明は、上記温度制御回路において、第2の抵抗に並列に接続されるデジタルポテンショメーターの他端に第7の抵抗を直列に接続したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、恒温槽付水晶発振器における恒温槽の温度制御回路であって、電源電圧が一端に接続して発熱するヒーター抵抗と、電源電圧が一端に供給される第1の抵抗と、第1の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地し、温度に応じて抵抗値を可変とするサーミスタと、第1の抵抗に並列に接続され、抵抗値をデジタル制御で可変にするデジタルポテンショメーターと、電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗と、第1の抵抗の他端とサーミスタの一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、第2の抵抗の他端と第3の抵抗の一端との間の電圧が、第4の抵抗を介して他方の入力端子に入力され、出力が第5の抵抗を介して他方の入力端子に帰還して、他方の入力端子に入力される電圧と一方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、ヒーター抵抗の他端が接続するコレクタと、差動増幅器の出力を入力するベースと、接地するエミッタとを備え、差動増幅器からの制御電圧によってヒーター抵抗の発熱を制御するパワートランジスタと、を有する温度制御回路としているので、デジタルポテンショメーターの抵抗値が小さい領域における制御の分解能を向上させ、水晶振動子の周波数温度特性の極小点温度付近の高温領域において、温度調整を高精度に行って出力周波数信号を安定させることができる効果がある。
【0026】
また、本発明によれば、恒温槽付水晶発振器における恒温槽の温度制御回路であって、電源電圧が一端に接続して発熱するヒーター抵抗と、電源電圧が一端に供給される第1の抵抗と、第1の抵抗の他端に一端が接続する第6の抵抗と、第6の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地し、温度に応じて抵抗値を可変とするサーミスタと、第6の抵抗に並列に接続され、抵抗値をデジタル制御で可変にするデジタルポテンショメーターと、電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗と、第1の抵抗の他端と第6の抵抗の一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、第2の抵抗の他端と第3の抵抗の一端との間の電圧が、第4の抵抗を介して他方の入力端子に入力され、出力が第5の抵抗を介して他方の入力端子に帰還して、他方の入力端子に入力される電圧と一方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、ヒーター抵抗の他端が接続するコレクタと、差動増幅器の出力を入力するベースと、接地するエミッタとを備え、差動増幅器からの制御電圧によってヒーター抵抗の発熱を制御するパワートランジスタと、を有する温度制御回路としているので、デジタルポテンショメーターの抵抗値が大きい領域における制御の分解能を向上させ、水晶振動子の周波数温度特性の極小点温度付近の高温領域において、温度調整を高精度に行って出力周波数信号を安定させることができる効果がある。
【0027】
また、本発明によれば、第2の抵抗に並列に接続されるデジタルポテンショメーターの他端に第7の抵抗を直列に接続した上記温度制御回路としているので、水晶振動子の周波数温度特性の極小点温度付近の高温領域だけでなく低温領域における温度調整の分解能も向上させて、極小点温度付近全体に亘って精度よく温度調整を行うことができ、出力周波数信号を一層安定させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1の温度制御回路の構成ブロック図である。
図2】第1の温度制御回路の特性を示す説明図である。
図3】第2の回路の構成ブロック図である。
図4】第4の温度制御回路の特性を示す説明図である。
図5】第3の温度制御回路の構成ブロック図である。
図6】水晶振動子の周波数温度特性の例を示す説明図である。
図7】従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路の構成図である。
図8】従来の温度制御回路の特性を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の第1の温度制御回路(第1の温度制御回路)は、電源電圧が一端に供給される第1の抵抗と、第1の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地するサーミスタと、第1の抵抗に並列に接続されたデジタルポテンショメーターと、電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗とを備え、差動増幅器の一方の入力端子に、第1の抵抗の他端と前記サーミスタの一端との間の電圧が入力され、他方の入力端子に、第2の抵抗の他端と第3の抵抗の一端との間の電圧が入力されて、パワートランジスタのベースに差動増幅器の出力が入力され、コレクタにヒーター抵抗が接続された温度制御回路としており、デジタルポテンショメーターの抵抗値が小さい領域における制御の分解能を向上させ、水晶振動子の周波数温度特性の極小点温度(頂点温度)付近の高温領域(高温側)においてデジタルポテンショメーターの設定値に対する水晶振動子の温度変化量を小さくして、温度調整を高精度に行うことができるものである。
【0030】
また、本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の第2の温度制御回路(第2の温度制御回路)は、電源電圧が一端に供給される第1の抵抗と、第1の抵抗の他端に一端が接続する第6の抵抗と、第6の抵抗の他端に接続するサーミスタと、第6の抵抗に並列に接続されたデジタルポテンショメーターと、電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗とを備え、差動増幅器の一方の入力端子に、第1の抵抗の他端と第6の抵抗の一端との間の電圧が入力され、他方の入力端子に、第2の抵抗の他端と第3の抵抗の一端との間の電圧が入力されて、パワートランジスタのベースに差動増幅器の出力が入力され、コレクタにヒーター抵抗が接続された温度制御回路としており、デジタルポテンショメーターの抵抗値が大きい領域における制御の分解能を向上させ、水晶振動子の周波数温度特性の極小点温度付近の高温領域(高温側)においてデジタルポテンショメーターの設定値に対する水晶振動子の温度変化量を小さくして、温度調整を高精度に行うことができるものである。
できるものである。
【0031】
本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の第3の温度制御回路(第3の温度制御回路)は、第2の温度制御回路において、第2の抵抗に並列に接続されるデジタルポテンショメーターの他端に、第7の抵抗を直列に接続したものであり、水晶振動子の周波数温度特性の極小点温度付近の高温領域だけでなく低温領域における分解能も向上させて、極小点温度付近全体に亘って精度よく温度調整を行うことができるものである。
【0032】
[第1の温度制御回路:図1
第1の温度制御回路の構成について図1を参照しながら説明する。図1は、第1の温度制御回路の構成ブロック図である。
図1に示すように、第1の温度制御回路は、デジタルポテンショメーターRpoと、サーミスタTHと、差動増幅器(オペアンプ)ICと、パワートランジスタQと、ヒーター抵抗H1とを有し、基本的には図7に示した従来の温度制御回路と同様に接続されている。
【0033】
そして、第1の温度制御回路の特徴として、デジタルポテンショメーターRpoに並列に、第1の抵抗R1が接続されている。
第1の抵抗R1の抵抗値は、デジタルポテンショメーターRpoの抵抗値とほぼ同等か若干大きくしている。
これにより、デジタルポテンショメーターRpoにおいて、抵抗値の設定値が変化した(調整された)場合でも、ヒーター抵抗に急激な電流変化が生じないものである。
【0034】
[第1の温度制御回路の特性:図2
次に、第1の温度制御回路の特性について図2を用いて説明する。図2は、第1の温度制御回路の特性を示す説明図であり、図1の温度制御回路を用いた恒温槽付水晶発振器におけるデジタルポテンショメーターRpoの設定値と水晶振動子の温度との関係を示している。
【0035】
図2に示すように、第1の温度制御回路の特性は、従来の温度制御回路と同様に、デジタルポテンショメーターRpoの抵抗値が大きくなると、ヒーター抵抗H1に流れる電流が減少して水晶振動子の温度は低下する。
但し、従来の温度制御回路の特性が直線的な変化であり、傾きが一定であったのに対し、第1の温度制御回路の特性は、曲線となっており、傾きが温度によって変化することがわかる。
【0036】
特に、デジタルポテンショメーターRpoに設定された抵抗値が小さく、水晶振動子の温度が高温となる領域においては、設定値に対する温度の変化は極めてなだらかである。つまり、1bitあたりの温度調整量が小さく、分解能は十分高いものとなっている。
しかし、設定された抵抗値が大きくなり、水晶振動子の温度が低温になる領域では、設定値に対する温度の変化は急峻であり、分解能はあまり大きくない。
【0037】
つまり、第1の温度制御回路は、デジタルポテンショメーターRpoの抵抗値が小さい状態での制御に適しており、水晶振動子の周波数温度特性の極小点温度付近の高温側で精度の高い温度調整を可能とするものである。
【0038】
[第1の温度制御回路の効果]
第1の温度制御回路によれば、サーミスタTHに直列に接続されるデジタルポテンショメーターRpoに並列に接続する第1の抵抗R1を設けているので、デジタルポテンショメーターRpoの抵抗値が小さく、水晶振動子の温度が周波数温度特性の極小点温度付近の高温側となる領域において、分解能を向上させ、精度の高い温度調整を行って安定した周波数信号を出力させることができる効果がある。
【0039】
[第2の温度制御回路:図3
第2の温度制御回路の構成について図3を参照しながら説明する。図3は、第2の回路の構成ブロック図である。
図3に示すように、第2の温度制御回路の基本的な構成は、上述した第1の温度制御回路と同様であるが、電源電圧に第1の抵抗R1の一端が接続し、第1の抵抗R1の他端に第6の抵抗R11の一端が接続し、第6の抵抗R11の他端にサーミスタの一端が接続し、他端が接地されている。
【0040】
そして、第6の抵抗R11に並列にデジタルポテンショメーターRpoが接続され、第1の抵抗R1と第6の抵抗R11との間の点が、差動増幅器の一方の入力端子に接続されている。
他の構成は、第1の温度制御回路と同様である。
【0041】
[第2の温度制御回路の特性:図4
次に、第2の温度制御回路の特性について図4を用いて説明する。図4は、第4の温度制御回路の特性を示す説明図であり、図3の温度制御回路を用いた恒温槽付水晶発振器におけるデジタルポテンショメーターRpoの設定値と水晶振動子の温度との関係を示している。
【0042】
図4に示すように、第2の温度制御回路の特性は、第1の温度制御回路とは逆に、デジタルポテンショメーターRpoの抵抗値が小さい場合に水晶振動子の温度が低く、抵抗値が大きい場合に水晶振動子の温度が高くなる。
そして、デジタルポテンショメーターRpoに設定された抵抗値が大きく、水晶振動子の温度が周波数温度特性の極小点温度付近の高温側になる領域において、特性曲線がなだらかとなり、十分高い分解能が得られることがわかる。
【0043】
逆に、設定された抵抗値が小さく、水晶振動子の温度が周波数温度特性の極小点温度付近の高温側になる領域においては、特性の傾きは大きくなり、分解能が低くなっている。
【0044】
つまり、第2の温度制御回路は、デジタルポテンショメーターRpoの抵抗値が大きい状態での制御に適しており、水晶振動子の周波数温度特性の極小点温度付近の高温側で精度の高い温度調整を可能とするものである。
【0045】
[第2の温度制御回路の効果]
第2の温度制御回路によれば、差動増幅器の一方の入力端子に接続される構成として、電源電圧が一端に供給される第1の抵抗R1と、第1の抵抗R1の他端に一端が接続する第6の抵抗R6と、第6の抵抗R6の他端に接続するサーミスタTHと、第6の抵抗R6に並列に接続されたデジタルポテンショメーターRpoと、電源電圧が一端に供給される第2の抵抗R2と、第2の抵抗R2の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗R3とを備え、第1の抵抗R1の他端と第6の抵抗R6の一端との間の電圧が差動増幅器ICの一方の入力端子に入力される温度制御回路としているので、デジタルポテンショメーターRpo の抵抗値が大きく、水晶振動子の温度が周波数温度特性の極小点温度付近の高温側となる領域において、分解能を向上させ、精度の高い温度調整を行って安定した周波数信号を出力させることができる効果がある。
【0046】
[第3の温度制御回路:図5
第3の温度制御回路について、図5を用いて説明する。図5は、第3の温度制御回路の構成ブロック図である。
図5に示すように、第3の温度制御回路は、図3に示した第2の温度制御回路において、第6の抵抗R11に並列に設けられたデジタルポテンショメーターRpo とサーミスタとの間に第7の抵抗R12を設けた構成であり、更に微調整を可能とするものである
【0047】
[第3の温度制御回路の特性]
第3の温度制御回路の特性の図示は省略するが、図4に示した第2の温度制御回路の特性と同様の傾向であり、右肩上がりの曲線となる。
但し、図4の特性では、デジタルポテンショメーターRpoの抵抗値が小さく水晶振動子の温度が低い領域(図の左側)において、十分な分解能が得られていないが、第3の温度制御回路の特性では、低温領域の特性をよりなだらかにして、分解能を向上させている。
【0048】
具体的には、デジタルポテンショメーターRpoの設定値が「0」の状態において、図4に示した第2の温度制御回路の特性では、水晶振動子の温度は90℃であるが、第3の温度制御回路の特性では、それより高く、例えば94℃程度となる。
つまり、第3の温度制御回路は、水晶振動子の周波数温度特性の極小点温度付近の低温側における分解能を向上させることができるものである。
【0049】
[第3の温度制御回路の効果]
第3の温度制御回路によれば、第2の温度制御回路において、第2の抵抗R2に並列に接続されるデジタルポテンショメーターRpoの他端に、第7の抵抗R12を直列に接続した構成としているので、水晶振動子の周波数温度特性の極小点温度付近の高温側における分解能だけでなく、低温側における分解能も向上させて、極小点温度付近全体に亘って精度の高い温度調整を行って安定した周波数信号を出力させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、恒温槽の温度を水晶の周波数温度特性の極小点温度近辺で安定化させる恒温槽付水晶発振器の温度制御回路に適している。
【符号の説明】
【0051】
R1,R2,R3,R4,R5,R6,R11,R12…抵抗、 IC…差動増幅器、 H1…ヒーター抵抗、 TH…サーミスタ、 Rpo …デジタルポテンショメーター、 Q…パワートランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8