(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170108
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】電源装置および自動運転システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20221102BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221102BHJP
B60R 16/03 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H02J7/02 F
H02J7/00 S
H02J7/00 302C
B60R16/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076003
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
(72)【発明者】
【氏名】森下 紗妃
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA11
5G503CC02
5G503DA08
5G503DA13
5G503FA06
5G503FA16
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】異常箇所を特定する処理を加味した充電制御を行うことができる電源装置および自動運転システムを提供すること。
【解決手段】実施形態に係る電源装置の制御部は、第1系統および第2系統が正常である場合には、系統間スイッチを接続するとともに、電源用スイッチを遮断する正常制御を行い、第1系統または第2系統の電源失陥が検出された場合には、系統間スイッチを遮断するとともに、電源用スイッチを接続することで、第1系統または第2系統の異常を検出する異常検出制御を行う。制御部は、異常検出制御により第1系統および第2系統の異常が検出されなかった場合、正常制御に切り替えるとともに、異常検出制御に伴う第2電源の電圧の低下量を記憶部に記憶し、第2電源を充電する場合には、第2負荷を駆動するために必要な駆動電圧に低下量を加えた電圧以上となるまで第2電源を充電する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源の電力が第1負荷に供給される第1系統と、
第2電源の電力が第2負荷に供給される第2系統と、
前記第1系統と前記第2系統とを接続または遮断する系統間スイッチと、
前記第2電源と前記第2系統とを接続または遮断する電源用スイッチと、
前記第1系統および第2系統が正常である場合には、前記系統間スイッチを接続するとともに、前記電源用スイッチを遮断する正常制御を行い、前記第1系統または第2系統の電源失陥が検出された場合には、前記系統間スイッチを遮断するとともに、前記電源用スイッチを接続することで、前記第1系統または前記第2系統の異常を検出する異常検出制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記異常検出制御により前記第1系統および前記第2系統の異常が検出されなかった場合、前記正常制御に切り替えるとともに、前記異常検出制御に伴う前記第2電源の電圧の低下量を記憶部に記憶し、
前記第2電源を充電する場合には、前記第2負荷を駆動するために必要な駆動電圧に前記低下量を加えた電圧以上となるまで前記第2電源を充電すること
を特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記第1負荷および前記第2負荷は、自動運転に関わる負荷を含み、
前記制御部は、
前記異常検出制御により前記第1系統に前記異常が検出された場合、前記第2系統により前記第2負荷へ電力を供給することで前記自動運転時の退避走行制御を行い、
前記第2電源が前記駆動電圧に前記低下量を加えた電圧以上である場合に、車両制御装置へ自動運転を許可する許可通知を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記記憶部は、
前記低下量の初期値を予め記憶しておき、
前記制御部は、
前記異常検出制御を行った場合に計測した前記低下量の実際値に基づいて、前記初期値を更新すること
を特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
請求項1~3に記載の電源装置と、
自動運転に関わる負荷である第1負荷および第2負荷と、
前記第1負荷および前記第2負荷を動作させることで前記自動運転を行う車両制御装置と、
を備え、
前記車両制御装置は、
前記第2電源の電圧が前記駆動電圧に前記低下量を加えた電圧以上である場合に、前記自動運転を許可すること
を特徴とする自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置および自動運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行中に電源失陥が発生しても、安全な場所まで退避走行させて停車させることができるように、第1電源と第2電源とを備え、一方の電源系統に地絡等の異常が発生した場合に、他方の電源系統によって車載機器(負荷)へ電力を供給する冗長電源システムがある。
【0003】
冗長電源システムは、第1電源から第1負荷へ電力を供給する第1系統と、第2電源から第1負荷と同一の機能を備える第2負荷へ電力を供給する第2系統と、第1系統および第2系統間を接続切断可能な系統間スイッチとを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、冗長電源システムは、通常時には、系統間スイッチを接続して第1電源から第1負荷および第2負荷へ電力を供給するとともに、第1系統に地絡等の電源失陥が発生すると、系統間スイッチを遮断して第2電源から第2負荷へ電力を供給してバックアップ制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の冗長電源システムでは、第1系統または第2系統の電源失陥が検出された場合に、バックアップ制御を行う前に、系統間スイッチを遮断することで、各電源から各負荷へ電力供給を行うことで異常箇所を特定する処理が行われる場合がある。
【0007】
このため、バックアップ制御に必要な電力量を基準として第2電源を充電した場合、異常箇所を特定する処理に使用した電力によっては、バックアップ制御時の第2電源の電力が枯渇する恐れがあった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、異常箇所を特定する処理を加味した充電制御を行うことができる電源装置および自動運転システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電源装置は、第1系統と、第2系統と、系統間スイッチと、電源用スイッチと、制御部とを備える。前記第1系統は、第1電源の電力が第1負荷に供給される。前記第2系統は、第2電源の電力が第2負荷に供給される。前記系統間スイッチは、前記第1系統と前記第2系統とを接続または遮断する。前記電源用スイッチは、前記第2電源と前記第2系統とを接続または遮断する。前記制御部は、前記第1系統および第2系統が正常である場合には、前記系統間スイッチを接続するとともに、前記電源用スイッチを遮断する正常制御を行い、前記第1系統または第2系統の電源失陥が検出された場合には、前記系統間スイッチを遮断するとともに、前記電源用スイッチを接続することで、前記第1系統または前記第2系統の異常を検出する異常検出制御を行う。前記制御部は、前記異常検出制御により前記第1系統および前記第2系統の異常が検出されなかった場合、前記正常制御に切り替えるとともに、前記異常検出制御に伴う前記第2電源の電圧の低下量を記憶部に記憶し、前記第2電源を充電する場合には、前記第2負荷を駆動するために必要な駆動電圧に前記低下量を加えた電圧以上となるまで前記第2電源を充電する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異常箇所を特定する処理を加味した充電制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電源装置を含む自動運転システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、異常検出制御の動作例を示す図である。
【
図3】
図3は、退避走行制御の動作例を示す図である。
【
図5】
図5は、自動運転の可否通知を行う動作例を示す図である。
【
図6】
図6は、車両制御装置が自動運転の可否判断を行う動作例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る電源装置によって実行される処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係る電源装置によって実行される充電制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電源装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。実施形態に係る電源装置は、自動運転機能を有する車両に搭載され、自動運転制御に関わる負荷へ電力を供給する。
【0013】
図1は、実施形態に係る電源装置1を含む自動運転システムSの構成例を示す図である。
図1に示すように、自動運転システムSは、電源装置1と、第1電源10と、車両制御装置100と、第1負荷101と、第2負荷102とを備える。
【0014】
第1負荷101は、自動運転に関わる負荷を含む。例えば、第1負荷101は、自動運転中に動作するステアリングモータ、電動ブレーキ装置、車載カメラ、およびレーダ等を含む。なお、第1負荷101は、ディスプレイ、エアコン、オーディオ、ビデオ、各種ライト等の自動運転とは関わりの無い一般負荷が含まれてもよい。
【0015】
第2負荷102は、自動運転に関わる負荷を含む。例えば、第1負荷101は、自動運転中に動作するステアリングモータ、電動ブレーキ装置、車載カメラ、およびレーダ等を含む。
【0016】
車両制御装置100は、第1負荷101および第2負荷102を動作させて、車両の自動運転制御を行う制御装置である。
【0017】
第1電源10は、DC/DCコンバータ11(以下、DC/DC11と記載する)と、鉛バッテリ12(以下、PbB12と記載する)とを含む。なお、第1電源10の電池は、PbB12以外の任意の2次電池であってもよい。
【0018】
DC/DC11は、上流側において、車両の回生エネルギーを電力に変換して発電する発電機に接続され、発電機から入力される入力電圧を変圧して出力する。発電機は、車両がエンジンを備える場合、エンジンの回転力を電力に変換して発電するオルタネータであってもよい。DC/DC11は、PbB12の充電、第1負荷101への電力供給、第2負荷102への電力供給、および後述する第2電源20の充電を行う。
【0019】
電源装置1は、第1負荷101および第2負荷102への電力供給を制御する装置である。
図1に示すように、電源装置1は、第2電源20と、系統間スイッチ4と、制御部31と、記憶部32と、電圧センサ51,52とを備える。
【0020】
第2電源20は、第1電源10による電力供給ができなくなった場合のバックアップ用電源である。第2電源20は、リチウムイオンバッテリ21(以下、「LiB21」と記載する)と、電源用スイッチ22とを備える。電源用スイッチ22は、LiB21と第2負荷102とを接続/切断可能に接続する。なお、第2電源20の電池は、LiB21以外の任意の2次電池であってもよい。
【0021】
また、電源装置1は、第1電源10から第1負荷101へ電力を供給する第1系統110と、第2電源20から第2負荷102へ電力を供給する第2系統120とを備える。
【0022】
系統間スイッチ4は、第1系統110と第2系統120とを接続/切断可能に接続する。
【0023】
電圧センサ51は、第1電源10と第1負荷101との間に接続され、第1系統110の電圧値を検出する。電圧センサ52は、第2電源20と第2負荷102との間に接続され、第2系統120の電圧値を検出する。
【0024】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。なお、制御部31は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。記憶部32は、例えば、不揮発性メモリやデータフラッシュ、ハードディスクドライブといった記憶デバイスで構成される記憶部である。かかる記憶部32には、後述する低下量の情報や、各種プログラムなどが記憶される。
【0025】
制御部31は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより、電源装置1の動作を制御する。制御部31は、電圧センサ51、52から入力される検出結果(電圧値)に基づいて、系統間スイッチ4および電源用スイッチ22をオンオフ制御することで、第1電源10または第2電源20から第1負荷101と第2負荷102とに電力を供給する。
【0026】
図1では、第1系統110および第2系統120に地絡等の異常が発生していない正常時の制御(正常制御)の一例を示している。具体的には、制御部3は、正常制御時には、系統間スイッチ4をオンし、電源用スイッチ22をオフする。
【0027】
これにより、第1電源10から第1系統110を介して第1負荷101へ電力が供給されるとともに、第1電源10から第1系統110、系統間スイッチ4および第2系統120を介して第2負荷102へ電力が供給される。なお、この正常制御は、車両が自動運転および手動運転のいずれの場合でも行われる。
【0028】
ここで、自動運転における正常制御時において、電圧センサ51の電圧値が地絡(異常)判定用の所定の閾値未満まで低下したとする。すなわち、電圧センサ51の電圧値により第1系統110または第2系統120の電源失陥が検出されたとする。かかる場合には、電源装置1は、第1系統110または第2系統120に地絡等の異常が発生している可能性があるため、正常制御から異常箇所を特定するための異常検出制御に切り替える。
【0029】
ここで、
図2を用いて、異常検出制御について説明する。
図2は、異常検出制御の動作例を示す図である。電源装置1の制御部31は、正常制御時において、電圧センサ51の電圧値が所定の閾値未満まで低下した場合、系統間スイッチ4をオフし、電源用スイッチ22をオンする。
【0030】
この結果、第1系統110および第2系統120の系統間の接続が切断されることで、第1負荷101への電力供給は、第1電源10によって行われ、第2負荷102への電力供給は、第2電源20によって行われる。
【0031】
そして、制御部31は、電圧センサ51、52の電圧値に基づいて、第1系統110および第2系統120それぞれに異常が生じているか否かを検出する。具体的には、制御部31は、電圧センサ51の電圧値に基づいて、第1系統110に異常が生じているか否かを検出し、電圧センサ52の電圧値に基づいて、第2系統120に異常が生じているか否かを検出する。つまり、制御部31は、異常検出制御により、異常が発生している箇所が第1系統110であるか第2系統120であるか(あるいは双方であるか)を特定する。
【0032】
例えば、
図2に示すように、制御部31は、第1系統110および第2系統120双方に異常が発生していない場合には、系統間スイッチ4をオンし、電源用スイッチ22をオフする。すなわち、異常検出制御から正常制御に復帰させる。
【0033】
このように、制御部31は、正常制御時に、電圧センサ51の電圧値が低下した場合には、
図2に示すように、電源用スイッチ22を一時的にオンすることで、第2電源20の電力を使って第2系統120の異常の有無を確認する。本開示では、第2系統120の異常確認による第2電源20の電力の低下量を記憶し、記憶した低下量の情報を充電制御等の各種制御に用いるが、かかる点の詳細については後述する。
【0034】
なお、異常検出制御において、第1系統110のみに異常が発生していた場合には、異常検出制御から
図3に示す退避走行制御に切り替わることとなる。
【0035】
図3は、退避走行制御の動作例を示す図である。退避走行制御とは、第1系統110または第2系統120に異常が発生した場合には、自動運転における電力供給の冗長性が担保されなくなるため、自動運転中の車両を路肩等の安全な場所へ退避して停止させるための走行制御である。
【0036】
図3に示すように、制御部31は、第1系統110に異常が発生した場合には、系統間スイッチ4を継続してオフするとともに、電源用スイッチ22を継続してオンする。そして、制御部31は、第1電源10から第1負荷101への電力供給を停止させ、第2電源20から第2負荷102への電力供給を継続して行う。つまり、制御部31は、第1系統110に異常が発生した場合には、第2電源20の電力のみで退避走行制御を行うこととなる。
【0037】
このため、第2電源20の蓄電残量は、退避走行制御に必要な電力量を確保する必要があるが、
図2で示したように、第2電源20は、異常検出制御にも電力を消費するため、異常検出制御による第2電源20の電力の低下量によっては、退避走行制御に必要な電力量を下回ってしまうおそれがあった。
【0038】
そこで、
図2に示すように、実施形態に係る電源装置1は、異常検出制御による第2電源20の電力の低下量を記憶部32に記憶する。具体的には、制御部31は、異常検出制御において第1系統110および第2系統120の双方に異常が発生していない場合に、第2電源20の電力の低下量を記憶する。例えば、制御部31は、異常検出制御を開始してから正常制御に復帰するまでの電圧センサ52の電圧の低下量を記憶する。具体的には、制御部31は、異常検出制御開始に伴って電源用スイッチ22がオンされてから、正常制御復帰に伴って電源用スイッチ22がオフされるまでの電圧センサ52の電圧の低下量を記憶する。
【0039】
図2に示す例では、第2電源20の蓄電残量(SOC:State Of Charge)が80%から77%に低下した場合、SOCにおける80%に対応する電圧値と77%に対応する電圧値との差分値を低下量として記憶する。また、低下量の情報は、電圧値の差分値に限らず、SOCの差分値であってもよい。
【0040】
なお、低下量の情報が記憶される記憶部32は、電源装置1に内蔵された記憶部32であってもよく、電源装置1に接続された外部の記憶部であってもよい。そして、制御部31は、記憶した低下量の情報を用いて、
図4に示す第2電源20の充電制御を行う。
【0041】
図4は、充電制御の動作例を示す図である。充電制御は、上述した発電機から第1電源10のDC/DC11を介して第2電源20のLiB21を充電する制御である。
図4に示すように、制御部31は、充電制御を行う場合、系統間スイッチ4をオンするとともに、電源用スイッチ22をオンする。これにより、第1電源10から第2電源20へ電力供給が行われ、LiB21が充電される。
【0042】
また、制御部31は、上記した低下量の情報と、退避走行制御時に第2負荷102の駆動に必要な駆動電力である必要電力とに基づいて決定した蓄電残量までLiB21を充電する。
図4に示す例では、第2負荷102の必要電力が80%であり、異常検出制御時の低下量が3%であったとする。
【0043】
かかる場合、制御部31は、第2負荷102の必要電力が80%に低下量の3%を加えた83%まで少なくとも充電するよう制御する。具体的には、制御部31は、電圧センサ52の電圧値がSOCにおける83%に対応する電圧値以上となるまで充電制御を行う。
【0044】
このように、異常検出制御時の電力の低下量を加味して充電しておくことで、異常検出制御から退避走行制御に切り替わった場合であっても、退避走行時にLiB21の電力不足が生じることなく確実に退避走行制御を行うことができる。すなわち、実施形態に係る電源装置1によれば、異常箇所を特定する処理(異常検出制御)を加味した第2電源20の充電制御を行うことができる。
【0045】
なお、制御部31は、異常検出制御の際に計測された低下量の情報を記憶部32に記憶して充電制御に用いる場合を示したが、例えば、実験等により予め取得した低下量を初期値として記憶部32に記憶しておき、初期値を更新するようにしてもよい。具体的には、制御部31は、異常検出制御を行った場合に計測した低下量の実際値に基づいて、初期値を更新する。例えば、制御部31は、初期値と実際値との単純平均値や加重平均値を最終的な低下量として記憶しておく。あるいは、制御部31は、初期値を実際値に置き換えて記憶する。制御部31は、このような更新処理を実際値が計測される都度行う。
【0046】
これにより、記憶部32の経年による低下量の変化や、異常検出制御の使用電力の変化を低下量に加味できるため、記憶される低下量の精度を高めることができる。さらに、低下量の初期値を記憶しておくことで、異常検出制御による実際値が計測される前であっても、低下量(初期値)を加味した充電制御を行うことができる。
【0047】
次に、
図5を用いて、上記した低下量の情報に基づいて車両制御装置100に対して自動運転の可否通知を行う例について説明する。
【0048】
図5は、自動運転の可否通知を行う動作例を示す図である。
図5では、現在のLiB21の蓄電残量が82%であり、必要電力および低下量の合算値が83%であることとする。
【0049】
つまり、
図5に示す例では、LiB21の現在の蓄電残量が、必要電力および低下量の合算値未満であるため、異常検出制御から第2電源20を用いた退避走行制御に切り替わった場合に、電力不足により退避走行制御を完了できないおそれがある。
【0050】
このため、制御部31は、LiB21の現在の蓄電残量が、必要電力および低下量の合算値未満である場合には、車両制御装置100に対して自動運転による制御を行えない旨の不可通知を行う。
【0051】
なお、制御部31は、その後の充電制御により、LiB21の現在の蓄電残量が83%以上となった場合には、車両制御装置100に対して自動運転による制御を行える旨の許可通知を行う。つまり、制御部31は、第2電源20が駆動電圧(必要電力に応じた電圧)に低下量を加えた電圧以上である場合に、車両制御装置100へ自動運転を許可する許可通知を行う。これにより、車両制御装置100は、電源装置1から許可通知を受けた場合に限り自動運転を行うことで、自動運転時の退避走行制御が電力不足により完了できなくなる状況を高精度に回避することができる。
【0052】
また、
図5では、車両制御装置100に対して自動運転の可否通知を行う例、すなわち、電源装置1側で自動運転の可否を判断して通知する例を示したが、車両制御装置100側で自動運転の可否を判断させるようにしてもよい。かかる点について、
図6を用いて説明する。
【0053】
図6は、車両制御装置100が自動運転の可否判断を行う動作例を示す図である。
図6に示すように、制御部31は、車両制御装置100に対して低下量の情報を通知する。また、車両制御装置100は、退避走行制御時の必要電力を予め把握しておく。そして、車両制御装置100は、LiB21の蓄電残量を検出(または制御部31から取得)し、検出した蓄電残量、必要電力および低下量の情報に基づいて、自動運転の可否を判断する。
【0054】
これにより、制御部31が自動運転の可否判断を行う必要がなくなるため、制御部31の処理負荷を軽減することができる。
【0055】
次に、
図7を用いて、実施形態に係る電源装置1において実行される処理の手順について説明する。
図7は、実施形態に係る電源装置1によって実行される処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0056】
図7に示すように、まず、制御部31は、自動運転における正常制御を行っているとする(ステップS101)。
【0057】
つづいて、制御部31は、電圧センサ51、52の電圧値に基づいて、第1電源10または第2電源20の電圧異常(電圧低下)、すなわち、第1系統110または第2系統120の電源失陥が発生したか否かを判定する(ステップS102)。制御部31は、第1電源10および第2電源20の電圧異常(電圧低下)が発生していない場合(ステップS102:No)、ステップS101に移行する。
【0058】
また、制御部31は、第1電源10または第2電源20の電圧異常(電圧低下)が発生した場合(ステップS102:Yes)、系統間スイッチ4をオフ、電源用スイッチ22をオンすることで正常制御から異常検出制御に切り替える(ステップS103)。
【0059】
つづいて、制御部31は、異常検出制御により第1系統110および第2系統120のどちらの系統で異常が有ったかを判定する(ステップS104)。
【0060】
制御部31は、第1系統110および第2系統120の一方の系統に異常が有った場合(ステップS104:Yes)、異常検出制御から正常な他方の系統を用いた退避走行制御に切り替えて(ステップS105)、処理を終了する。
【0061】
一方、制御部31は、第1系統110および第2系統120の双方に異常が無かった場合(ステップS104:No)、系統間スイッチ4をオン、電源用スイッチ22をオフすることで正常制御に復帰させ(ステップS106)、異常検出制御による第2電源20の電圧の低下量を記憶部32に記憶し(ステップS107)、ステップS101に戻る。
【0062】
次に、
図8を用いて、実施形態に係る電源装置1において実行される充電制御処理の手順について説明する。
図8は、実施形態に係る電源装置1によって実行される充電制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0063】
図8に示すように、制御部31は、充電制御を行っているとする(ステップS201)。つづいて、制御部31は、電圧センサ52の電圧値が、上記した低下量を加味した電圧に到達したか否かを判定する(ステップS202)。具体的には、制御部31は、第2負荷102の必要電力に低下量を加えた合算値に対応した電圧に到達したか否かを判定する。
【0064】
制御部31は、低下量を加味した電圧に到達した場合(ステップS202:Yes)、車両制御装置100に対して自動運転の許可通知を行い(ステップS203)、処理を終了する。
【0065】
一方、制御部31は、低下量を加味した電圧に到達していない場合(ステップS202:No)、車両制御装置100に対して自動運転の不可通知を行い(ステップS204)、ステップS202を再度実行する。
【0066】
上述してきたように、実施形態に係る電源装置1は、第1系統110と、第2系統120と、系統間スイッチ4と、電源用スイッチ22と、制御部31とを備える。第1系統110は、第1電源10の電力が第1負荷101に供給される。第2系統120は、第2電源20の電力が第2負荷102に供給される。系統間スイッチ4は、第1系統110と第2系統120とを接続または遮断する。電源用スイッチ22は、第2電源20と第2系統120とを接続または遮断する。制御部31は、第1系統110および第2系統120が正常である場合には、系統間スイッチ4を接続するとともに、電源用スイッチ22を遮断する正常制御を行い、第1系統110または第2系統120の電源失陥が検出された場合には、系統間スイッチ4を遮断するとともに、電源用スイッチ22を接続することで、第1系統110または第2系統120の異常を検出する異常検出制御を行う。制御部31は、異常検出制御により第1系統110および第2系統120の異常が検出されなかった場合、正常制御に切り替えるとともに、異常検出制御に伴う第2電源20の電圧の低下量を記憶部32に記憶し、第2電源20を充電する場合には、第2負荷102を駆動するために必要な駆動電圧に低下量を加えた電圧以上となるまで第2電源20を充電する。これにより、異常箇所を特定する処理を加味した充電制御を行うことができる。
【0067】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 電源装置
3 制御部
4 系統間スイッチ
10 第1電源
11 DC/DCコンバータ
12 鉛バッテリ
20 第2電源
21 リチウムイオンバッテリ
22 電源用スイッチ
31 制御部
32 記憶部
51、52 電圧センサ
100 車両制御装置
101 第1負荷
102 第2負荷
110 第1系統
120 第2系統
S 自動運転システム