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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170120
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】カルボジイミド組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/00 20060101AFI20221102BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20221102BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20221102BHJP
   C08G 18/02 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C08L79/00 Z
C08K5/524
C08K5/13
C08G18/02 050
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076025
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】309012122
【氏名又は名称】日清紡ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 奈巳
(72)【発明者】
【氏名】西川 直毅
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CM051
4J002EJ017
4J002EJ027
4J002EJ037
4J002EJ047
4J002EJ067
4J002EW066
4J002FD010
4J002FD076
4J002FD077
4J002GJ01
4J002GM00
4J034AA05
4J034CA13
4J034CA22
4J034CA34
4J034CB01
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC12
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034HA01
4J034HA04
4J034HA07
4J034HA18
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034HD01
4J034JA01
4J034JA02
4J034JA23
4J034JA32
4J034KA01
4J034KB03
4J034KD17
4J034KE02
4J034QA05
4J034QB17
4J034RA08
4J034RA11
4J034RA15
4J034RA17
(57)【要約】
【課題】 成形中の樹脂内での発泡を抑制でき、耐加水分解性の良好な樹脂成形体を与えるカルボジイミド組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)カルボジイミド化合物と、(B)フォスファイト系酸化防止剤と、(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤とからなり、前記(B)フォスファイト系酸化防止剤が、前記(A)カルボジイミド化合物100質量部に対して、1.5質量部以上5質量部以下含まれ、前記(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、前記(A)カルボジイミド化合物100質量部に対して、1.5質量部以上6質量部以下含まれることを特徴とするカルボジイミド組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボジイミド化合物と、(B)フォスファイト系酸化防止剤と、(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤とからなり、
前記(B)フォスファイト系酸化防止剤が、前記(A)カルボジイミド化合物100質量部に対して、1.5質量部以上5質量部以下含まれ、前記(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、前記(A)カルボジイミド化合物100質量部に対して、1.5質量部以上6質量部以下含まれることを特徴とするカルボジイミド組成物。
【請求項2】
質量比で、前記(B)フォスファイト系酸化防止剤1に対し、前記(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤が1以上含まれる請求項1記載のカルボジイミド組成物。
【請求項3】
質量比で、前記(B)フォスファイト系酸化防止剤1に対し、前記(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤が1~2含まれる請求項2記載のカルボジイミド組成物。
【請求項4】
前記カルボジイミド化合物(A)が、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いて得られたものである請求項1~3のいずれか1項記載のカルボジイミド組成物。
【請求項5】
前記(B)フォスファイト系酸化防止剤が、ペンタエリスリトール構造を有する化合物である請求項1~4のいずれか1項記載のカルボジイミド組成物。
【請求項6】
前記(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、ペンタエリスリトール構造を有する化合物である請求項1または2記載のカルボジイミド組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項記載のカルボジイミド組成物と、樹脂を含む樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂が、ポリエステル樹脂である請求項7記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(A)カルボジイミド化合物100質量部と、(B)フォスファイト系酸化防止剤1.5質量部以上5質量部以下と、(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤1.5質量部以上6質量部以下とを配合してカルボジイミド組成物を調製する工程、および
得られたカルボジイミド組成物と、樹脂とを混合する工程を備えることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項7または8記載の樹脂組成物の成形体。
【請求項11】
請求項7記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項12】
フィルムまたはシートである請求項10記載の成形体。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項記載のカルボジイミド組成物からなる樹脂成形用発泡抑制剤。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか1項記載のカルボジイミド組成物を樹脂に配合する樹脂成形時の発泡抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボジイミド組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボジイミド化合物は、分子中に、[-N=C=N-]で表されるカルボジイミド基を有し、活性水素(カルボン酸、アミン、アルコール、チオール等)と反応すること、接着性がよいこと、優れた耐熱性を有すること、さまざまな形態(ワニス、粉末、フィルム等)をとることができるなどの特性を有し、架橋剤、接着剤、樹脂改質剤、断熱材、吸音材、ガスケット等の種々の用途に利用されている。
【0003】
従来、ポリカルボジイミド化合物と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物は多数知られており、いずれにおいても熱可塑性樹脂の耐久性の向上や、機械物性の向上が達成されている。
例えば、特許文献1では、熱可塑性ポリエステルに対し、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物および強化充填剤をそれぞれ所定量で配合してなるポリエステル樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、カルボジイミド化合物中に酸化防止剤が分散したカルボジイミド組成物と、脂肪族ポリエステル樹脂等を含む樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、ポリブチレンテレフタレート樹脂と、カルボジイミド化合物と、アルカリ化合物と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、およびリン系化合物をそれぞれ所定割合で含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が開示されている。
【0004】
しかし、上記特許文献1の技術では、カルボジイミド中に少量含有しているイソシアネート基が、残存するカルボジイミド化触媒と反応して成型中に発泡し、その結果、成型体中に気泡が含まれてしまうという問題がある。
この点、酸化防止剤を含む特許文献2,3の組成物でも、成形中の発泡の抑制や、得られた樹脂成形体の耐加水分解性が十分とは言えず、これらの点で改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56-161452号公報
【特許文献2】特開2005-053870号公報
【特許文献3】国際公開第2017/038864号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、成形中の樹脂内での発泡を抑制でき、耐加水分解性の良好な樹脂成形体を与えるカルボジイミド組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、カルボジイミド化合物および特定の2種類の酸化防止剤をそれぞれ所定量含む組成物が、樹脂に添加した場合に、成形中の樹脂内での発泡を抑制できるうえに、耐加水分解性の良好な樹脂成形体を与えることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. (A)カルボジイミド化合物と、(B)フォスファイト系酸化防止剤と、(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤とからなり、
前記(B)フォスファイト系酸化防止剤が、前記(A)カルボジイミド化合物100質量部に対して、1.5質量部以上5質量部以下含まれ、前記(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、前記(A)カルボジイミド化合物100質量部に対して、1.5質量部以上6質量部以下含まれることを特徴とするカルボジイミド組成物、
2. 質量比で、前記(B)フォスファイト系酸化防止剤1に対し、前記(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤が1以上含まれる1のカルボジイミド組成物、
3. 質量比で、前記(B)フォスファイト系酸化防止剤1に対し、前記(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤が1~2含まれる2のカルボジイミド組成物、
4. 前記カルボジイミド化合物(A)が、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いて得られたものである1~3のいずれかのカルボジイミド組成物、
5. 前記(B)フォスファイト系酸化防止剤が、ペンタエリスリトール構造を有する化合物である1~4のいずれかのカルボジイミド組成物、
6. 前記(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、ペンタエリスリトール構造を有する化合物である1または2のカルボジイミド組成物、
7. 1~6のいずれかのカルボジイミド組成物と、樹脂とを含む樹脂組成物、
8. 前記樹脂が、ポリエステル樹脂である7の樹脂組成物、
9. (A)カルボジイミド化合物100質量部と、(B)フォスファイト系酸化防止剤1.5質量部以上5質量部以下と、(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤1.5質量部以上6質量部以下とを配合してカルボジイミド組成物を調製する工程、および
得られたカルボジイミド組成物と、樹脂とを混合する工程を備えることを特徴とする樹脂組成物の製造方法、
10. 7または8の樹脂組成物の成形体、
11. 7の樹脂組成物の硬化物、
12. フィルムまたはシートである10の成形体、
13. 1~6のいずれかのカルボジイミド組成物からなる樹脂成形用発泡抑制剤、
14. 1~6のいずれかのカルボジイミド組成物を樹脂に配合する樹脂成形時の発泡抑制方法
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のカルボジイミド組成物は、フォスファイト系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを所定割合で含んでいるため、樹脂に配合することで、成形時の発泡を効率的に抑制できるとともに、耐加水分解性、機械的物性に優れ、外観の良好な(気泡の少ない)樹脂成形体を与える。
このような特性を有するカルボジイミド化合物は、シート、フィルム、各種樹脂成形体、樹脂硬化物等の種々の形状を有する樹脂加工品の製造における添加剤として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るカルボジイミド組成物は、(A)カルボジイミド化合物と、(B)フォスファイト系酸化防止剤と、(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤とからなり、(B)フォスファイト系酸化防止剤が、(A)カルボジイミド化合物100質量部に対して、1.5質量部以上5質量部以下含まれ、(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、(A)カルボジイミド化合物100質量部に対して、1.5質量部以上6質量部以下含まれることを特徴とする。
【0011】
[1]カルボジイミド組成物
(A)カルボジイミド化合物
カルボジイミド化合物は、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有するカルボジイミド化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む)であれば、特に限定されるものではなく、各種ポリイソシアネート原料とし、従来公知の手法で製造されたものを用いることができる。
【0012】
カルボジイミド化合物の原料となるイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されるものではなく、従来公知の各種ジイソシアネート化合物等から適宜選択して用いることができる。
その具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロメタンジイソシアネート(HMDI)、水添化トリレンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート,メチレンジフェニル 4,4’-ジイソシアネート(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)等のジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルベンゼン-1,3-ジイルジイソシアネート、o-トリジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;m-キシリレンジイソシアネート(m-キシレンジイソシアネート)等のキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート等や、これらが三量化したヌレート体、アダクト体、ビュウレット体、末端をブロック剤等で封止されたものなどが挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0013】
なお、ポリカルボジイミド化合物の製造においては、冷却等により重合反応を途中で停止させ、適当な重合度に制御することができ、この場合、末端はイソシアネート基となる。
また、イソシアネート基と反応し得る官能基を有する末端封止化合物を用いて、残存する末端イソシアネートの全部、または一部を封止して適当な重合度に制御することもできる。重合度を制御することにより、樹脂への相溶性を向上させたり、ポリカルボジイミド化合物の保存安定性を向上させたりすることができる。
【0014】
末端封止化合物としては、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシ基、および水酸基から選ばれる基を1個有する化合物が好ましい。
末端封止化合物は、疎水性化合物でも、親水性化合物でもよい。
【0015】
アミノ基を1個有する化合物としては、例えば、炭素数1~18の炭化水素基を有するモノアミン類が挙げられる。
その具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、アダマンタンアミン、アリルアミン、アニリン、ジフェニルアミン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、2,2-ジフルオロアミン、フルオロベンジルアミン、トリフルオロエチルアミン、[[4-(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]メチル]アミンおよびこれらの誘導体等が挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
中でも、汎用性等の観点から、シクロヘキシルアミンが好ましい。
なお、アミノ基を1個有する化合物で封止した場合、末端イソシアネート基は、アミノ基との反応によりウレア結合を形成する。
【0016】
イソシアネート基を1個有する化合物としては、例えば、炭素数1~18の炭化水素基を有するモノイソシアネート類が挙げられる。
その具体例としては、ブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、1-アダマンチルイソシアネート、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、アクリル酸2-イソシアナトエチル、イソシアン酸ベンジル、2-フェニルエチルイソシアネート、およびこれらの誘導体等が挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
中でも、反応性等の観点から、シクロヘキシルイソシアネートが好ましい。
なお、イソシアネート基を1個有する化合物で封止した場合、末端イソシアネート基は、末端封止化合物のイソシアネート基との反応によりカルボジイミド結合(カルボジイミド基)を形成する。
【0017】
エポキシ基を1個有する化合物の具体例としては、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、エチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、グリシジルラウリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-[2-(ペルフルオロヘキシル)エトキシ]-1,2-エポキシプロパン、およびこれらの誘導体等が挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、エポキシ基を1個有する化合物で封止した場合、末端イソシアネート基は、エポキシ基との反応によりオキサゾリドン環を形成する。
【0018】
カルボキシ基を1個有する化合物としては、例えば、炭素数1~18の炭化水素基を有するモノカルボン酸類が挙げられる。
その具体例としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、へプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アダマンタン酢酸、フェニル酢酸、安息香酸、ウンデセン酸、およびこれらの誘導体等が挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
カルボキシ基を1個有する化合物で封止した場合、末端イソシアネート基は、カルボキシ基との反応によりアミド結合を形成する。
【0019】
水酸基を1個有する化合物としては、例えば、炭素数1~18の炭化水素基を有するモノアルコール類が挙げられる。
その具体例としては、シクロヘキサノール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、ドデシルアルコール、オクタノール、ヘキサノール、ペンタノール、ブタノール、プロパノール、エタノール等が挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
中でも、反応性や汎用性等の観点から、n-オクタノール、イソプロパノール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールが好ましい。
なお、水酸基を1個有する化合物で封止した場合、末端イソシアネート基は、水酸基との反応によりウレタン結合を形成する。
【0020】
また、モノアルコール類としては、樹脂硬化物の耐水性の観点からは、上述したような化合物が好ましいが、それ以外にも、例えば、アルキレングリコール誘導体であるアルキレングリコールモノエーテル類、アルキレングリコールモノエステル類等を用いることもでき、下記式(1)で表される化合物が好適である。
2(OCHR1CH2mOH (1)
(式中、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は、炭素数1~18の炭化水素基、または炭素数1~18のアシル基を表し、mは、1~6の整数を表す。)
【0021】
炭素数1~18の炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、テキシル、2-エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐、環状のアルキル基が挙げられる。
これらの中でも、炭素数1~7のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
【0022】
炭素数1~18のアシル基の具体例としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、パルミトイル、ベンゾイル基等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数1~7のアシル基が好ましく、1~4のアシル基がより好ましい。
mは、1~6の整数であるが、1~5の整数が好ましく、1~4の整数がより好ましい。
【0023】
式(1)で表される化合物の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、およびこれらの重合体;ポリエチレングリコールグリセリルエーテル、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0024】
上記カルボジイミド化合物は、上記イソシアネート化合物で例示した各種ジイソシアネート化合物を原料とした種々の方法で製造することができ、製法の代表例としては、ジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う脱炭酸縮合反応により、イソシアネート末端カルボジイミド化合物を製造する方法(米国特許第2941956号明細書や特公昭47-33279号公報、J. Org. Chem, 28、2069-2075(1963)、Chemical Review1981、Vol.81, No.4, p619-621等)が挙げられる。末端封止をする場合、カルボジイミド化合物を合成した後、またはその合成と同時に、所定の末端封止化合物と反応させればよい。
なお、ジイソシアネート化合物以外に、3個以上のイソシアネート基を有する化合物を反応原料として用いることもできる。
【0025】
特に、カルボジイミド化合物合成の原料となるジイソシアネート化合物としては、入手容易性やカルボジイミド化合物の合成のし易さ等の観点から、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メチレンジフェニル 4,4’-ジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が好ましい。
これらの中でも、保存安定性の観点から芳香族ジイソシアネートよりも脂肪族、脂環式または芳香脂肪族ジイソシアネートが好ましく、特に、2級または3級ジイソシアネート基をもつHMDI、IPDI、TMXDIがより好ましく、HMDIがより一層好ましい。
【0026】
ジイソシアネート化合物の脱炭酸縮合反応には、通常、カルボジイミド化触媒が用いられる。
カルボジイミド化触媒の具体例としては、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、およびこれらの3-ホスホレン異性体等のホスホレンオキシドなどが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、反応性の点から、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシドが好ましい。
カルボジイミド化触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、ジイソシアネート化合物100質量部に対して0.01~2.0質量部が好ましい。
【0027】
上記脱炭酸縮合反応は、無溶媒で行うことができるが、溶媒を用いてもよい。
使用可能な溶媒の具体例としては、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、ジオキソラン等の脂環式エーテル;1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-プロパノール、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の非プロトン性水溶性溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、パークレン、トリクロロエタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;シクロヘキサノン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
溶媒中で反応を行う場合、ジイソシアネート化合物の濃度は、5~55質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0028】
反応温度は、特に限定されるものではないが、40~250℃が好ましく、80~195℃がより好ましい。また、溶媒中で反応を行う場合、40℃~溶媒の沸点までが好ましい。
反応時間は、0.5~80時間が好ましく、1~70時間がより好ましい。
なお、反応の雰囲気は特に限定されるものではないが、窒素ガス、希ガス等の不活性ガス雰囲気が好ましい。
【0029】
末端封止をする場合において、末端封止化合物がイソシアネート基を1個有する化合物である場合、例えば、カルボジイミド化触媒の存在下、末端封止化合物とジイソシアネート化合物とを、好ましくは40~200℃、より好ましくは80~195℃で、10~70時間程度撹拌混合して、末端封止されたカルボジイミド化合物を得ることができる。
また、末端封止化合物がイソシアネート基を1個有する化合物以外である場合、例えば、イソシアネート末端カルボジイミド化合物に、好ましくは40~250℃、より好ましくは80~195℃で末端封止化合物を添加し、さらに80~200℃程度で、0.5~5時間程度撹拌混合して、末端封止されたカルボジイミド化合物を得ることができる。
【0030】
カルボジイミド化合物の重合度(カルボジイミド基の重合度)は、特に限定されるものではないが、樹脂との相溶性等の観点から、5以上が好ましく、5~30がより好ましく、5~25がより一層好ましく、5~20がさらに好ましい。
なお、本明細書中における「カルボジイミド基の重合度」とは、カルボジイミド化合物中の、ジイソシアネート化合物同士の脱炭酸縮合反応により生成したカルボジイミド基の数を指す。
なお、上記カルボジイミド化合物は、1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0031】
(B)フォスファイト系酸化防止剤
本発明のカルボジイミド組成物に用いられるフォスファイト系酸化防止剤は、従来公知の化合物から適宜選択することができる。
その具体例としては、トリス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト(BASFジャパン(株)製イルガフォス168、(株)ADEKA製アデカスタブ2112等)、ビス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジフォスファイト(BASFジャパン(株)製イルガフォス126、(株)ADEKA製アデカスタブPEP-24G等)、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ビス-(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジフォスファイト)((株)ADEKA製アデカスタブPEP-36)、3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ジステアリル-ペンタエリスリトール-ジフォスファイト)((株)ADEKA製アデカスタブPEP-8、城北化学(株)製JPP-2000PT等)などが挙げられ、これらは1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
これらの中でも、樹脂組成物成形時の発泡の抑制や、樹脂成形体の耐加水分解性向上の点でペンタエリスリトール構造を有するものが好ましく、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンがより好ましい。
【0033】
(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
本発明のカルボジイミド組成物に用いられるヒンダードフェノール系酸化防止剤は、従来公知の化合物から適宜選択することができるが、飛散や揮散の防止、樹脂成形体からのブリードアウトや接触する物品への移行等を防止するとともに、樹脂成形体の耐熱性を向上させることを考慮すると、分子量が400以上のものが好ましく、500以上のものがより好ましい。
【0034】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、4,4’-メチレン-ビス-(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)(MW=420)や、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(MW=531)(BASFジャパン(株)製イルガノックス1076、(株)ADEKA製アデカスタブAO-50)、ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸][2,2-ビス[[1-オキソ-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]メチル]プロパン]-1,3-ジイル(ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-ttert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート])(MW=1178,BASFジャパン(株)製イルガノックス1010、(株)ADEKA製アデカスタブAO-60)、ビス[3-[3-(tert-ブチル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]プロパン酸]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイルビス(2-メチルプロパン-2,1-ジイル)(3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)(MW=741,住友化学(株)製商品名スミライザーGA-80、(株)ADEKA製アデカスタブAO-80)などが挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
これらの中でも、樹脂組成物成形時の発泡の抑制や、樹脂成形体の耐加水分解性向上の点で、フォスファイト系酸化防止剤と同様にペンタエリスリトール構造を有するものが好ましく、ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸][2,2-ビス[[1-オキソ-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]メチル]プロパン]-1,3-ジイル、ビス[3-[3-(tert-ブチル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]プロパン酸]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイルビス(2-メチルプロパン-2,1-ジイル)がより好ましい。
【0036】
既に述べたとおり、本発明のカルボジイミド組成物は、(B)フォスファイト系酸化防止剤を、(A)カルボジイミド化合物100質量部に対して、1.5質量部以上5質量部以下の量、好ましくは、1.7~4.9質量部、より好ましくは、1.7~4.5質量部で含み、(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を、(A)カルボジイミド化合物100質量部に対して、1.5質量部以上6質量部以下の量、好ましくは、1.7~4.9質量部、より好ましくは、1.7~4.5質量部で含むものであり、これら2種類の酸化防止剤を上記各添加量で併用することで、樹脂組成物成形時の発泡を効率的に抑制できるとともに、得られた樹脂成形体の耐加水分解性をも向上できる。
特に、(B)フォスファイト系酸化防止剤と、(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤のそれぞれの含有量が1.5質量%未満の場合は樹脂成形時の発泡抑制効果が不十分となり、(B)フォスファイト系酸化防止剤が5質量部超の場合、および(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤が6質量部超の場合は得られた樹脂成形体の加水分解抑制効果が不十分となる。
なお、フォスファイト系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤のどちらか1つでもペンタエリストール構造を持つと、性能がよくなるが、フォスファイト系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤のどちらもペンタエリストール構造を持つ方が、より性能がよくなる。
【0037】
本発明において、(B)フォスファイト系酸化防止剤と、(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤との使用比率は、本発明の所望の効果が発揮される限り特に制限はないが、樹脂成形時の発泡抑制効果および樹脂成形体の耐加水分解性向上効果をより高めることを考慮すると、(C)ヒンダートフェノール系酸化防止剤の使用量を(B)フォスファイト系酸化防止剤の使用量と同じかそれ以上とすること、すなわち、カルボジイミド組成物中に、質量比で、(B)フォスファイト系酸化防止剤1に対し、(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤が1以上含まれることが好ましく、1~2含まれることがより好ましい。
【0038】
本発明のカルボジイミド組成物の製法には特に制限はなく、上述した(A)~(C)成分を任意の順序で混合して調製すればよい。
また、上述の特許文献2に開示されているように、(B)成分および(C)成分の2種類の酸化防止剤を、最終的な組成物中で上述の添加量になるように(A)成分のカルボジイミド化合物を合成する際に予め添加してもよく、このようにすることで、カルボジイミド化合物の合成時の着色を抑えることができる。なおこの場合、酸化防止剤の添加のタイミングは、原料仕込み段階が好ましいが、反応中でもよい。
【0039】
(D)その他の成分
本発明のカルボジイミド組成物は、上述した各種成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、(B)成分および(C)成分以外のその他の酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、消泡剤、濡れ性向上剤等の添加剤を含んでいてもよいが、上記(A)~(C)成分以外のその他の成分は含まないことが好ましい。
【0040】
[2]樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、上述したカルボジイミド組成物と樹脂とを含む。
この樹脂組成物は、上記カルボジイミド組成物を含んでいるため、成形時の発泡が効率的に抑制される結果、内部の気泡が少なく、外観の良好な樹脂成形体を与える。
【0041】
樹脂組成物を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。
熱可塑性樹脂としては特に限定されるものではなく、例えば、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ポリベンズイミダゾール樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリスルフォン樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリエーテルスルフォン樹脂;ポリアリーレンスルフィド樹脂など、従来公知の熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。
【0042】
熱硬化性樹脂としては特に限定されるものではなく、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂など、従来公知の熱硬化性樹脂から適宜選択することができる。
【0043】
本発明の樹脂組成物から得られた樹脂成形体は、カルボジイミド組成物由来の2種類の酸化防止剤を含むため、耐加水分解性を発揮することから、上記樹脂としては、加水分解を起こし易いポリエステル樹脂等のエステル結合を含む樹脂を用いるとより効果的である。
【0044】
樹脂組成物の製造法は特に限定されるものではないが、上述の手法で予め調製したカルボジイミド組成物と、樹脂とを混合する手法が好適である。
この際、必要に応じて溶媒を用いてもよい。
溶媒としては、上記脱水縮合反応で例示した溶媒と同様のものが挙げられる。
【0045】
本発明の樹脂組成物において、カルボジイミド組成物の含有量は、所望の発泡抑制効果および耐加水分解性が発揮される限り特に限定されるものではないが、カルボジイミド組成物中における上記酸化防止剤の配合割合では、熱可塑性樹脂100質量部に対し、カルボジイミド組成物0.01~5質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.5~5質量部がより一層好ましい。
【0046】
なお、本発明の樹脂組成物には、その用途等に応じ、必要であれば各種添加成分、例えば、補強材、クレイ、層状ケイ酸塩、タルク、マイカ、無機や有機フィラー、その他の酸化防止剤、熱安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、滑剤、ワックス類、顔料、染料、着色剤、結晶化促進剤、酸化チタン、デンプン等の分解性を有する有機物などを添加してもよい。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、使用する樹脂に応じて適用可能な各種成形法、例えば、押出成形、射出成形、カレンダー成形、ブロー成形、トランスファー成形、圧縮成形等の各種成形法により、押出成形体、シート、フィルム、射出成形体等の各種成形体としたり、樹脂硬化物としたりすることができる。
この場合、カルボジイミド組成物と樹脂とを別々に成形機内に投入してスクリュー等で混練して樹脂組成物を調製しつつ成形してもよい。
成形時の加熱温度等の各種成形条件は、使用する樹脂に適した条件を選択すればよい。
【実施例0048】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0049】
合成例および実施例で使用した化合物の詳細は、以下のとおりである。
(1)ジイソシアネート化合物
ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI、東京化成工業(株)製)
テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI、東京化成工業(株)製)
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、ルプラネートMI、2,4-MDI/4,4-MDI=3/7、BASF INOAC ポリウレタン(株)製
イソホロンジイソシアネート(IPDI、東京化成工業(株)製)
トリレンジイソシアネート(TDI、東京化成工業(株)製)
m-キシリレンジイソシアネート(XDI、東京化成工業(株)製)
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、東京化成工業(株)製)
(2)末端封止化合物
シクロヘキシルアミン(CHA、東京化成工業(株)製)
ジブチルアミン(DBA、東京化成工業(株)製)
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル220(MPEG、関東化学(株)製)
1-オクタノール(OA、東京化成工業(株)製)
シクロヘキシルイソシアネート(CHI、東京化成工業(株)製)
(3)カルボジイミド化触媒
3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド(東京化成工業(株)製)
(4)フォスファイト系酸化防止剤
3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(フォスファイト系化合物BA、(株)ADEKA製アデカスタブPEP-36)
3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(フォスファイト系化合物BB、(株)ADEKA製アデカスタブPEP-8)
トリスノニルフェニルホスファイト(フォスファイト系化合物BC、(株)ADEKA製アデカスタブ2112)
(5)ヒンダートフェノール系酸化防止剤
ビス[3-[3-(tert-ブチル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]プロパン酸]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイルビス(2-メチルプロパン-2,1-ジイル)(ヒンダートフェノール系化合物CA、(株)ADEKA製アデカスタブAO-60)
ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸][2,2-ビス[[1-オキソ-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]メチル]プロパン]-1,3-ジイル(ヒンダートフェノール系化合物CB、(株)ADEKA製アデカスタブAO-80)
オクタデシル 3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(ヒンダートフェノール系化合物CC、(株)ADEKA製アデカスタブAO-50)
(6)溶剤
シクロヘキサノン(東京化成工業(株)製)
(7)その他の化合物
テトラキス[3-(ドデシルチオ)プロピオン酸]ペンタエリトリトール(チオエーテル系化合物、(株)ADEKA製アデカスタブAO-412S)
【0050】
[1]ポリカルボジイミド組成物の調製
以下において、赤外吸収(IR)スペクトルは、(株)島津製作所製FTIR-8200PCを用いて測定した。
また、下記合成例におけるカルボジイミド基の重合度は、合成方法に応じて、以下のようにして求めた。
(1)ジイソシアネート化合物および末端封止化合物を同時に配合してポリカルボジイミド化合物を合成した場合は、カルボジイミド基の重合度は計算に基づく値である。
(2)ジイソシアネート化合物のポリカルボジイミド化反応によりイソシアネート末端ポリカルボジイミドを合成した後、末端封止化合物を用いて末端イソシアネート基の封止反応を行い、ポリカルボジイミド化合物を合成した場合は、イソシアネート末端ポリカルボジイミドについて、電位差滴定法によりカルボジイミド基の重合度を求めた(使用装置:自動滴定装置「COM-900」、平沼産業(株)製)。具体的には、カルボジイミド化反応により得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミドに、既知濃度のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液を混合して、末端イソシアネート基とジ-n-ブチルアミンとを反応させ、残存するジ-n-ブチルアミンを塩酸標準液で中和滴定し、イソシアネート基の残存量(末端NCO量[質量%])を算出した。この末端NCO量から、カルボジイミド基の重合度を求めた。
【0051】
[合成例1]
HMDI262質量部およびカルボジイミド化触媒2.6質量部を、還流管および撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、170℃で18時間撹拌し、両末端にイソシアネート基を有するイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物(末端イソシアネート基量3.43質量%)を得た。IRスペクトル測定により波数2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した(カルボジイミド化合物の重合度10)。
得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物を150℃で溶解し、これに、末端封止化合物としてシクロヘキシルアミン18.0質量部を添加し、180℃まで加熱して撹拌しながら2時間反応させた。その後、フォスファイト系化合物BA4.0質量部およびヒンダートフェノール系化合物CA4.0質量部を添加して、0.5時間混合した。反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド組成物(1)を得た(理論カルボジイミド基濃度14.6%)。
【0052】
[合成例2~9、23~28]
合成例1において、カルボジイミド化合物(A)の重合度、末端封止化合物、カルボジイミド化触媒、フォスファイト系化合物、ヒンダートフェノール系化合物およびその他の化合物を表1に従って変更し、ポリカルボジイミド組成物(2)~(9)および(23)~(28)をそれぞれ得た。
【0053】
[合成例10]
HMDI262質量部およびカルボジイミド化触媒2.6質量部を、還流管および撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、170℃で24時間撹拌し、両末端にイソシアネート基を有するイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物(末端イソシアネート基量1.81質量%)を得た。IRスペクトル測定により波数2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した(カルボジイミド化合物の重合度20)。
得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物にフォスファイト系化合物BA10.0質量部およびヒンダートフェノール系化合物CA10.0質量部を添加して、0.5時間混合した。反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド組成物(10)を得た(理論カルボジイミド基濃度15.8%)。
【0054】
[合成例11~15,29]
合成例10において、カルボジイミド化合物(A)の重合度、カルボジイミド化触媒、フォスファイト系化合物およびヒンダートフェノール系化合物を表1,2に従って変更し、ポリカルボジイミド組成物(11)~(15)および(29)をそれぞれ得た。
【0055】
[合成例16]
HMDI262質量部、CHI41.7質量部およびカルボジイミド化触媒2.6質量部を、還流管および撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、180℃で47時間撹拌して反応させ、IRスペクトル測定にて、波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収ピークと波数2000~2200cm-1のカルボジイミド基の吸収ピークの比率が0.05以下に減少したことを確認した。その後、フォスファイト系化合物BA5.0質量部およびヒンダートフェノール系化合物CA5.0質量部を添加して、0.5時間混合した。反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド組成物(16)を得た(理論カルボジイミド基濃度17.8%)。
【0056】
[合成例17]
TMXDI244質量部およびカルボジイミド化触媒2.4質量部を、還流管および撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、170℃で18時間撹拌混合して、カルボジイミド化反応を行い、両末端にイソシアネート基を有するイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物(末端イソシアネート基量3.74質量%)を得た。IRスペクトル測定により波数2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した(カルボジイミド化合物の重合度10)。
得られたイソシアネート末端ポリカルボジイミド化合物を150℃で溶解し、これに、末端封止化合物としてジブチルアミン23.5質量部を添加し、180℃まで加熱して撹拌しながら2時間反応させた。その後、フォスファイト系化合物BA6.0質量部およびヒンダートフェノール系化合物CA4.0質量部を添加して、0.5時間混合した。反応容器から取り出し、室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド組成物(17)を得た(理論カルボジイミド基濃度15.3%)。
【0057】
[合成例18]
MDI252質量部、カルボジイミド化触媒2.5質量部、末端封止化合物としてジブチルアミン43.4質量部および溶媒としてシクロヘキサノン190質量部を、還流管および撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、120℃で5時間撹拌混合して反応させ、IRスペクトル測定にて、波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収ピークと波数2000~2200cm-1のカルボジイミド基の吸収ピークの比率が0.05以下に減少したことを確認した。その後、フォスファイト系化合物BA6.0質量部およびヒンダートフェノール系化合物CA4.0質量部を添加して、0.5時間混合した。
混合終了後、溶媒を減圧留去し、反応生成物を反応容器から取り出して室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド組成物(18)を得た(理論カルボジイミド基濃度12.5%)。
【0058】
[合成例19]
IPDI222質量部、末端封止化合物としてジブチルアミン43.4質量部およびカルボジイミド化触媒2.2質量部を、還流管および撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、150℃で24時間撹拌混合して反応させ、IRスペクトル測定にて、波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収ピークと波数2000~2200cm-1のカルボジイミド基の吸収ピークの比率が0.05以下に減少したことを確認した。
その後、フォスファイト系化合物BA3.0質量部およびヒンダートフェノール系化合物CA4.0質量部を添加して、0.5時間混合した。
混合終了後、反応容器から取り出して室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド組成物(19)を得た(理論カルボジイミド基濃度17.1%)。
【0059】
[合成例20]
TDI175質量部、末端封止化合物としてジブチルアミン43.3質量部、カルボジイミド化触媒1.8質量部および溶媒としてシクロヘキサノン205質量部を、還流管および撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、150℃で4時間撹拌混合して反応させ、IRスペクトル測定にて、波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収ピークと波数2000~2200cm-1のカルボジイミド基の吸収ピークの比率が0.05以下に減少したことを確認した。
その後、フォスファイト系化合物BA3.0質量部およびヒンダートフェノール系化合物CA4.0質量部を添加して、0.5時間混合した。混合終了後、溶媒を減圧留去し、反応生成物を反応容器から取り出して室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド組成物(20)を得た(理論カルボジイミド基濃度17.8%)。
【0060】
[合成例21]
XDI188質量部、末端封止化合物としてジブチルアミン43.0質量部、カルボジイミド化触媒1.9質量部および溶媒としてシクロヘキサノン205質量部を、還流管および撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、100℃で4時間撹拌混合して反応させ、IRスペクトル測定にて、波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収ピークと波数2000~2200cm-1のカルボジイミド基の吸収ピークの比率が0.05以下に減少したことを確認した。
その後、フォスファイト系化合物BA3.0質量部およびヒンダートフェノール系化合物CA4.0質量部を添加して、0.5時間混合した。
混合終了後、溶媒を減圧留去し、反応生成物を反応容器から取り出して室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド組成物(21)を得た(理論カルボジイミド基濃度16.5%)。
【0061】
[合成例22]
HDI168質量部、末端封止化合物としてジブチルアミン43.0質量部、カルボジイミド化触媒1.7質量部および溶媒としてシクロヘキサノン205質量部を、還流管および撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、150℃で18時間撹拌混合して反応させ、IRスペクトル測定にて、波数2200~2300cm-1のイソシアネート基の吸収ピークと波数2000~2200cm-1のカルボジイミド基の吸収ピークの比率が0.05以下に減少したことを確認した。
その後、フォスファイト系化合物BA3.0質量部およびヒンダートフェノール系化合物CA4.0質量部を添加して、0.5時間混合した。
混合終了後、溶媒を減圧留去し、反応生成物を反応容器から取り出して室温(25℃)まで冷却し、ポリカルボジイミド組成物(22)を得た(理論カルボジイミド基濃度18.4%)。
【0062】
上記合成例のまとめを表1,2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
[2]樹脂組成物の調製
以下において、各種樹脂組成物は樹脂100質量部に対して、得られたポリカルボジイミド組成物の理論カルボジイミド基濃度を用いて、得られたポリカルボジイミド組成物中のカルボジイミド基が0.15質量部入るように調製した。
[実施例1]
PBAT樹脂(BASF社製 ecoflex F Blend C1200、以下同様)100質量部をラボミキサーにより160℃の条件下で溶融させた後、混合しながら合成例1で得られたポリカルボジイミド組成物(1)1.0質量部を加えて3分間混練し、PBAT樹脂組成物を得た。
【0066】
[実施例2~22、比較例1~7]
表3,4に示されるように、ポリカルボジイミド組成物(1)を合成例2~29で得られたポリカルボジイミド組成物(2)~(29)に変更し、表3,4の配合量とした以外は、実施例1と同様にしてPBAT樹脂組成物を得た。なお、表3,4中、空白は添加量0を示す。
【0067】
[比較例8]
表4に示されるように、PBAT樹脂100質量部をラボミキサーにより160℃の条件下で溶融させた後、混合しながら合成例22で得られたポリカルボジイミド組成物(22)1.0質量部、フォスファイト系化合物BA0.04質量部、ヒンダートフェノール系化合物CA0.04質量部を加えて3分間混練し、PBAT樹脂組成物を得た。
【0068】
[実施例23]
PBSA樹脂(三菱ケミカル(株)製 FD92PM、以下同様)100質量部をラボミキサーにより130℃の条件下で溶融させた後、混合しながら合成例1で得られたポリカルボジイミド組成物(1)1.0質量部を加えて3分間混練し、PBSA樹脂組成物を得た。
【0069】
[実施例24、比較例9]
表5に示されるように、ポリカルボジイミド組成物(1)を合成例10,22で得られたポリカルボジイミド組成物(10),(22)にそれぞれ変更した以外は、実施例23と同様にしてPBSA樹脂組成物を得た。なお、表5中、空白は添加量0を示す。
【0070】
[比較例10]
表5に示されるように、PBSA樹脂100質量部をラボミキサーにより130℃の条件下で溶融させた後、混合しながら合成例22で得られたポリカルボジイミド組成物(22)1.0質量部、フォスファイト系化合物BA0.04質量部、ヒンダートフェノール系化合物CA0.04質量部を加えて3分間混練し、PBSA樹脂組成物を得た。
【0071】
[実施例25]
PLA樹脂(ネイチャーワークス社製4032D、以下同様)100質量部をラボミキサーにより200℃の条件下で溶融させた後、混合しながら合成例1で得られたポリカルボジイミド組成物(1)1.0質量部を加えて3分間混練し、PLA樹脂組成物を得た。
【0072】
[実施例26、比較例11]
表5に示されるように、ポリカルボジイミド組成物(1)を合成例10,22で得られたポリカルボジイミド組成物(10),(22)にそれぞれ変更した以外は、実施例25と同様にしてPLA樹脂組成物を得た。
【0073】
[比較例12]
PLA樹脂100質量部をラボミキサーにより200℃の条件下で溶融させた後、混合しながら合成例22で得られたポリカルボジイミド組成物(22)1.0質量部、フォスファイト系化合物BA0.04質量部、ヒンダートフェノール系化合物CA0.04質量部を加えて3分間混練し、PLA樹脂組成物を得た。
【0074】
[実施例24]
PET樹脂(中国石油化工社製、以下同様)100質量部をラボミキサーにより270℃の条件下で溶融させた後、混合しながら合成例1で得られたポリカルボジイミド組成物(1)0.5質量部を加えて3分間混練し、PET樹脂組成物を得た。
【0075】
[実施例25、比較例13]
表5に示されるように、ポリカルボジイミド組成物(1)を合成例10,22で得られたポリカルボジイミド組成物(10),(22)にそれぞれ変更した以外は、実施例24と同様にしてPET樹脂組成物を得た。
【0076】
[比較例14]
PET樹脂100質量部をラボミキサーにより270℃の条件下で溶融させた後、混合しながら合成例22で得られたポリカルボジイミド組成物(22)0.5質量部、フォスファイト系化合物BA0.02質量部、ヒンダートフェノール系化合物CA0.02質量部を加えて3分間混練し、PET樹脂組成物を得た。
【0077】
上記各実施例および比較例のまとめを表3~5に示す。
また、上記実施例および比較例で得られた各樹脂組成物について、下記手法により、耐加水分解性試験、シート中の発泡の確認を行った。結果を併せて表3~5に示す。
【0078】
(1)耐加水分解性試験(PBAT)
溶融混練した樹脂を、軟化点以上の温度で平板プレスし、厚み約300μmのシートを作製し、該シートから幅10mm長さ70mmの短冊シートを作製した。次いで、引張試験機(INSTRON社製、製品名「INSTRON3365」、以下同様)にて、作製した短冊シートの引張強度を測定し、これを初期強度とした。引張強度の測定は、引張試験機を用いて、室温(20℃±5℃)にて各サンプル5点(短冊シート5枚)ずつ行い、その測定値(N=5)の平均値を、そのサンプルの引張強度とした(以下同様)。さらに、作製した短冊シートを湿熱試験装置(エスペック社製、恒温恒湿器)に入れ、80℃、95%Rhの条件下で、240hr経過後にサンプルを取出し、引張試験機にて、短冊シートの引張強度を測定した。[湿熱試験後の引張強度]/[湿熱試験前の引張強度]の比(強度保持率)を耐加水分解性の評価指標として求めた。
<評価基準>
A:強度変化率15%未満
B:強度変化率15%以上30%未満
C:強度変化率30%以上45%未満
D:強度変化率45%以上
また、実施例1の初期引張強度を100とし、以下の基準にて引張強度の性能低下率を確認した。
<評価基準>
A:低下率3%未満
B:低下率3%以上、5%未満
C:低下率5%以上、10%未満
D:低下率10%以上
【0079】
(2)耐加水分解性試験(PBSA)
溶融混練した樹脂を、軟化点以上の温度で平板プレスし、厚み約300μmのシートを作製し、該シートから幅10mm長さ70mmの短冊シートを作製した。次いで、引張試験機にて、作製した短冊シートの引張強度を測定し、これを初期強度とした。さらに、作製した短冊シートを湿熱試験装置(エスペック社製、恒温恒湿器)に入れ、70℃、90%Rhの条件下で、168hr経過後にサンプルを取出し、引張試験機にて、短冊シートの引張強度を測定した。[湿熱試験後の引張強度]/[湿熱試験前の引張強度]の比(強度保持率)を耐加水分解性の評価指標として求めた。
<評価基準>
A:強度変化率15%未満
B:強度変化率15%以上30%未満
C:強度変化率30%以上45%未満
D:強度変化率45%以上
また、実施例19の初期引張強度を100とし、以下の基準にて引張強度の性能低下率を確認した。
<評価基準>
A:低下率3%未満
B:低下率3%以上、5%未満
C:低下率5%以上、10%未満
D:低下率10%以上
【0080】
(3)耐加水分解性試験(PLA)
溶融混練した樹脂を、軟化点以上の温度で平板プレスし、厚み約300μmのシートを作製し、該シートから幅10mm長さ70mmの短冊シートを作製した。次いで、引張試験機にて、作製した短冊シートの引張強度を測定し、これを初期強度とした。さらに、作製した短冊シートを湿熱試験装置(エスペック社製、恒温恒湿器)に入れ、80℃、95%Rhの条件下で、75hr経過後にサンプルを取出し、引張試験機にて、短冊シートの引張強度を測定した。[湿熱試験後の引張強度]/[湿熱試験前の引張強度]の比(強度保持率)を耐加水分解性の評価指標として求めた。
<評価基準>
A:強度変化率15%未満
B:強度変化率15%以上30%未満
C:強度変化率30%以上45%未満
D:強度変化率45%以上
また、実施例19の初期引張強度を100とし、以下の基準にて引張強度の性能低下率を確認した。
<評価基準>
A:低下率3%未満
B:低下率3%以上、5%未満
C:低下率5%以上、10%未満
D:低下率10%以上
【0081】
(4)耐加水分解性試験(PET)
溶融混練した樹脂を、軟化点以上の温度で平板プレスし、厚み約300μmのシートを作製し、該シートから幅10mm長さ70mmの短冊シートを作製した。次いで、引張試験機にて、作製した短冊シートの引張強度を測定し、これを初期強度とした。さらに、作製した短冊シートをPCT試験装置(エスペック社製、ハストチャンバー)に入れ、121℃、100%Rhの条件下で、40hr経過後にサンプルを取出し、引張試験機にて、短冊シートの引張強度を測定した。[PCT試験後の引張強度]/[PCT試験前の引張強度]の比(強度保持率)を耐加水分解性の評価指標として求めた。
<評価基準>
A:強度変化率15%未満
B:強度変化率15%以上30%未満
C:強度変化率30%以上45%未満
D:強度変化率45%以上
また、実施例23の初期引張強度を100とし、以下の基準にて引張強度の性能低下率を確認した。
<評価基準>
A:低下率3%未満
B:低下率3%以上、5%未満
C:低下率5%以上、10%未満
D:低下率10%以上
【0082】
(5)シート中の発泡
上記引張試験後のサンプルの延伸破断部位を目視にて確認し、確認できる気泡の平均数をカウントした。
<評価基準>
A:平均気泡数0個
B:平均気泡数1個以上2個以下
C:平均気泡数3個以上5個以下
D:平均気泡数6個以上
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
表3~5に示されるように、本発明のカルボジイミド組成物は、これを用いて作製したシート中の発泡が少なく外観に優れるだけでなく、耐加水分解性にも優れることがわかる。また、発泡が少ないことにより湿熱試験前の引張強度も良好であることがわかる。