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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170133
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】航空機の飛行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B64D 45/00 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
B64D45/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076050
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】石坂 仁
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 光男
(57)【要約】
【課題】次の飛行動作のために必要な操作を支援して、操縦士による操作の負担を軽減するとともに次の飛行動作を円滑に行う。
【解決手段】操縦士により操作される操縦輪31Aの操作(圧力、回転)を検出し、検出された操作に基づいて水平飛行中の航空機10の次の飛行動作を判断し、飛行部材を制御することで、航空機10に判断された次の飛行動作を実行させる。例えば、次の飛行動作が航空機10の上昇である場合は、エンジン20の出力を所定の割合で増加させる。また、次の飛行動作が航空機10の降下である場合は、エンジン20の出力を所定の割合で減少させる。また、次の飛行動作が航空機10の旋回である場合は、方向舵1802を制御することで航空機10の機首1202を旋回方向に向け、昇降舵1602を制御することで航空機10の機首1202を上に向け、エンジン20の出力を所定の割合で増加させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の飛行部材が設けられた航空機の飛行制御装置であって、
前記航空機の飛行動作を行うために操縦士により操作される操作部材と、
前記操作部材に対する操作を検出する検出部と、
検出された操作に基づいて、水平飛行中の前記航空機の次の飛行動作を判断する動作判断部と、
前記飛行部材を制御することで、判断された前記次の飛行動作を前記航空機に実行させる飛行制御部と、
を備えることを特徴とする航空機の飛行制御装置。
【請求項2】
前記複数の飛行部材は、推力を発生させるエンジンを含み、
前記操作部材は、前記操縦士により把持される把持部を有し、
前記検出部は、前記把持部に設けられ、前記操縦士により把持された際の圧力を検出する圧力センサであって、
前記動作判断部は、検出された圧力のうち、前記航空機の前後方向における前側の圧力が後ろ側の圧力より高くなった場合、前記次の飛行動作が前記航空機の上昇であると判断し、
前記飛行制御部は、前記次の飛行動作が前記航空機の上昇と判断された場合、前記エンジンの出力を予め定めた所定の割合で増加させる、
ことを特徴とする請求項1記載の航空機の飛行制御装置。
【請求項3】
前記飛行制御部は、前記航空機が上昇し、前記航空機の機首が上を向いた後、水平飛行時の速度に戻るよう前記エンジンの出力を調整する、
ことを特徴とする請求項2記載の航空機の飛行制御装置。
【請求項4】
前記航空機が上昇し、前記エンジンの出力を最大にしても前記航空機の速度を保てないほど前記航空機の機首が上を向いた場合、その旨を報知する報知部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項2または3記載の航空機の飛行制御装置。
【請求項5】
前記複数の飛行部材は、推力を発生させるエンジンを含み、
前記操作部材は、前記操縦士により把持される把持部を有し、
前記検出部は、前記把持部に設けられ、前記操縦士により把持された際の圧力を検出する圧力センサであって、
前記動作判断部は、検出された圧力のうち、前記航空機の前後方向における後ろ側の圧力が前側の圧力より高くなった場合、前記次の飛行動作が前記航空機の降下であると判断し、
前記飛行制御部は、前記次の飛行動作が前記航空機の降下と判断された場合、前記エンジンの出力を予め定めた所定の割合で減少させる、
ことを特徴とする請求項1記載の航空機の飛行制御装置。
【請求項6】
前記飛行制御部は、前記航空機が降下し、前記航空機の機首が下を向いた後、水平飛行時の速度に戻るよう前記エンジンの出力を調整する、
ことを特徴とする請求項5記載の航空機の飛行制御装置。
【請求項7】
前記複数の飛行部材は、前記航空機を減速させる減速部材をさらに含み、
前記航空機が降下し、前記エンジンの出力を最小にしても前記航空機の速度を保てないほど前記航空機の機首が下を向いた場合、その旨を報知する報知部をさらに備え、
前記飛行制御部は、前記減速部材を制御することで前記航空機を減速させる、
ことを特徴とする請求項5または6記載の航空機の飛行制御装置。
【請求項8】
前記複数の飛行部材は、推力を発生させるエンジンと、前記航空機の機首を上下方向に変位させる昇降舵と、前記航空機の機首を左右方向に変位させる方向舵とを含み、
前記操作部材は、前記操縦士により把持される把持部と、前記把持部を回転可能に保持する接続部とを有し、
前記検出部は、前記接続部に設けられ、前記把持部の回転を検出する回転センサであって、
前記動作判断部は、前記把持部の回転が検出された場合、前記次の飛行動作が前記航空機の旋回であると判断し、
前記飛行制御部は、前記次の飛行動作が前記航空機の旋回と判断された場合、前記方向舵を制御することで前記航空機の機首を前記把持部の回転方向である旋回方向に向け、前記昇降舵を制御することで前記航空機の機首を上に向け、前記エンジンの出力を予め定めた所定の割合で増加させる、
ことを特徴とする請求項1記載の航空機の飛行制御装置。
【請求項9】
前記複数の飛行部材は、推力を発生させるエンジンと、前記航空機の機首を上下方向に変位させる昇降舵と、前記航空機の機首を左右方向に変位させる方向舵とを含み、
前記操作部材は、前記操縦士により把持される把持部を有し、
前記検出部は、前記把持部に設けられ、前記操縦士により把持された際の圧力を検出する圧力センサであって、
前記動作判断部は、検出された前記航空機の左右方向における左側の圧力および右側の圧力のうち、一方の圧力が他方の圧力より高くなった場合、前記次の飛行動作が前記航空機の旋回であると判断し、
前記飛行制御部は、前記次の飛行動作が前記航空機の旋回と判断された場合、前記方向舵を制御することで前記航空機の機首を圧力が低い側の方向である旋回方向に向け、前記昇降舵を制御することで前記航空機の機首を上に向け、前記エンジンの出力を予め定めた所定の割合で増加させる、
ことを特徴とする請求項1記載の航空機の飛行制御装置。
【請求項10】
前記飛行制御部は、前記航空機が旋回を始めた場合、水平飛行時の速度に戻るよう前記エンジンの出力を調整する、
ことを特徴とする請求項8または9記載の航空機の飛行制御装置。
【請求項11】
前記航空機が旋回し、前記エンジンの出力を最大にしても前記航空機の速度を保てないほど前記航空機の機体が傾いた場合、その旨を報知する報知部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項8~10のいずれか一項記載の航空機の飛行制御装置。
【請求項12】
前記飛行制御部は、前記航空機の機体の傾きが所定の角度を超えた場合、前記方向舵を制御することで前記航空機の機首を前記旋回方向と反対方向に向け、
前記報知部は、前記航空機の機体の傾きが前記所定の角度を超えた旨を報知する、
ことを特徴とする請求項11記載の航空機の飛行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の飛行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機の操縦は、複数の操縦士(一般には機長および副操縦士の2名)が航空機に搭乗し、交代で操縦業務を行っている。
例えば、下記特許文献1は、航空機におけるパイロット・ワークロードを軽減することを目的とした情報伝達システムであり、伝達情報決定部、出力装置及び振動装置を有する。伝達情報決定部は、航空機のパイロットへの伝達情報を決定する。出力装置は、伝達情報をメッセージ、音声、音又は光として前記パイロットに伝達する。振動装置は、伝達情報がパイロットに伝達される際、パイロットに振動を伝播させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-038349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
航空機には様々な操縦部材が設けられており、これらを操縦士が操縦することにより航空機に設けられた複数の飛行部材(エンジンや補助翼等)が動作し、上昇や降下、旋回など各種の飛行動作を実施する。操縦士は航空機周辺の状況を総合的に判断して操縦部材の操作を行っているが、頻繁にエンジンの出力を調整したり、補助翼などの飛行部材の姿勢を調整しなければならないため操作が煩雑である。
したがって、水平飛行中の航空機に次の飛行動作を実行させる際、操縦士の技量不足や不注意などによって次の飛行動作のために必要な操縦部材の操作が適切に行なわれない場合がある。例えば、操縦部材の操作タイミングが早すぎる、もしくは遅すぎる場合、操縦部材の操作量が過剰である、もしくは過小である場合、操縦部材の操作に誤りがある場合などが考えられる。このように操縦部材の操作が適切に行われない場合、航空機の次の飛行動作が円滑に行なわれないことが懸念されている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、次の飛行動作のために必要な操作を支援することで、操縦士による操作の負担を軽減するとともに次の飛行動作を円滑に行う航空機の飛行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため本発明の一実施形態は、複数の飛行部材が設けられた航空機の飛行制御装置であって、前記航空機の飛行動作を行うために操縦士により操作される操作部材と、前記操作部材に対する操作を検出する検出部と、検出された操作に基づいて、水平飛行中の前記航空機の次の飛行動作を判断する動作判断部と、前記飛行部材を制御することで、判断された前記次の飛行動作を前記航空機に実行させる飛行制御部とを備えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記複数の飛行部材は、推力を発生させるエンジンを含み、前記操作部材は、前記操縦士により把持される把持部を有し、前記検出部は、前記把持部に設けられ、前記操縦士により把持された際の圧力を検出する圧力センサであって、前記動作判断部は、検出された圧力のうち、前記航空機の前後方向における前側の圧力が後ろ側の圧力より高くなった場合、前記次の飛行動作が前記航空機の上昇であると判断し、前記飛行制御部は、前記次の飛行動作が前記航空機の上昇と判断された場合、前記エンジンの出力を予め定めた所定の割合で増加させることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記飛行制御部は、前記航空機が上昇し、前記航空機の機首が上を向いた後、水平飛行時の速度に戻るよう前記エンジンの出力を調整することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記航空機が上昇し、前記エンジンの出力を最大にしても前記航空機の速度を保てないほど前記航空機の機首が上を向いた場合、その旨を報知する報知部をさらに備えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記複数の飛行部材は、推力を発生させるエンジンを含み、前記操作部材は、前記操縦士により把持される把持部を有し、前記検出部は、前記把持部に設けられ、前記操縦士により把持された際の圧力を検出する圧力センサであって、前記動作判断部は、検出された圧力のうち、前記航空機の前後方向における後ろ側の圧力が前側の圧力より高くなった場合、前記次の飛行動作が前記航空機の降下であると判断し、前記飛行制御部は、前記次の飛行動作が前記航空機の降下と判断された場合、前記エンジンの出力を予め定めた所定の割合で減少させることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記飛行制御部は、前記航空機が降下し、前記航空機の機首が下を向いた後、水平飛行時の速度に戻るよう前記エンジンの出力を調整することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記複数の飛行部材は、前記航空機を減速させる減速部材をさらに含み、前記航空機が降下し、前記エンジンの出力を最小にしても前記航空機の速度を保てないほど前記航空機の機首が下を向いた場合、その旨を報知する報知部をさらに備え、前記飛行制御部は、前記減速部材を制御することで前記航空機を減速させることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記複数の飛行部材は、推力を発生させるエンジンと、前記航空機の機首を上下方向に変位させる昇降舵と、前記航空機の機首を左右方向に変位させる方向舵とを含み、前記操作部材は、前記操縦士により把持される把持部と、前記把持部を回転可能に保持する接続部とを有し、前記検出部は、前記接続部に設けられ、前記把持部の回転を検出する回転センサであって、前記動作判断部は、前記把持部の回転が検出された場合、前記次の飛行動作が前記航空機の旋回であると判断し、前記飛行制御部は、前記次の飛行動作が前記航空機の旋回と判断された場合、前記方向舵を制御することで前記航空機の機首を前記把持部の回転方向である旋回方向に向け、前記昇降舵を制御することで前記航空機の機首を上に向け、前記エンジンの出力を予め定めた所定の割合で増加させることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記複数の飛行部材は、推力を発生させるエンジンと、前記航空機の機首を上下方向に変位させる昇降舵と、前記航空機の機首を左右方向に変位させる方向舵とを含み、前記操作部材は、前記操縦士により把持される把持部を有し、
前記検出部は、前記把持部に設けられ、前記操縦士により把持された際の圧力を検出する圧力センサであって、前記動作判断部は、検出された前記航空機の左右方向における左側の圧力および右側の圧力のうち、一方の圧力が他方の圧力より高くなった場合、前記次の飛行動作が前記航空機の旋回であると判断し、前記飛行制御部は、前記次の飛行動作が前記航空機の旋回と判断された場合、前記方向舵を制御することで前記航空機の機首を圧力が低い側の方向である旋回方向に向け、前記昇降舵を制御することで前記航空機の機首を上に向け、前記エンジンの出力を予め定めた所定の割合で増加させることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記飛行制御部は、前記航空機が旋回を始めた場合、水平飛行時の速度に戻るよう前記エンジンの出力を調整することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記航空機が旋回し、前記エンジンの出力を最大にしても前記航空機の速度を保てないほど前記航空機の機体が傾いた場合、その旨を報知する報知部をさらに備えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記飛行制御部は、前記航空機の機体の傾きが所定の角度を超えた場合、前記方向舵を制御することで前記航空機の機首を前記旋回方向と反対方向に向け、前記報知部は、前記航空機の機体の傾きが前記所定の角度を超えた旨を報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、操縦士による操作部材に対する操作を検出し、検出された操作に基づいて水平飛行中の航空機の次の飛行動作を判断し、飛行部材を制御することで、航空機に判断された次の飛行動作を実行させる。このため、水平飛行中の航空機に次の飛行動作を実行させる際、操縦士の技量不足や不注意などによって次の飛行動作のために必要な操縦部材の操作が適切に行なわれない場合でも、操縦士による操作部材に対する操作に追随して次の飛行動作のために必要な操作を支援することで、操縦士による操作の負担を軽減するとともに次の飛行動作を円滑に行う上で有利となる。
具体的には、例えば、水平飛行中の航空機に次の飛行動作を実行させる際、操縦部材の操作タイミングが早すぎた、もしくは遅すぎた場合、操縦部材の操作量が過剰であった、もしくは過小であった場合、操縦部材の操作に誤りがあった場合でも、次の飛行動作のために必要な操作を支援して、操縦士による操縦部材の誤操作を防止することで、航空機の安全性を向上させることができる。
例えば、操縦士により操作部材を把持された際の圧力を検出し、検出された圧力のうち、航空機の前後方向における前側の圧力が後ろ側の圧力より高くなった場合、次の飛行動作が航空機の上昇であると判断し、エンジンの出力を予め定めた所定の割合で増加させる。これにより、航空機を上昇させるための必要な操作を支援することで、操縦士による操作の負担を軽減するとともに、航空機の上昇を円滑に行う上で有利となる。
また、航空機が上昇し、航空機の機首が上を向いた後、水平飛行時の速度に戻るようエンジンの出力を調整することで、水平飛行時に近い速度を維持しながら航空機を上昇させることができる。
また、航空機が上昇し、エンジンの出力を最大にしても航空機の速度を保てないほど航空機の機首が上を向いた場合、その旨を報知することで、操縦士に不安定な飛行状態を改善するよう促して注意喚起を行うことができ、航空機の上昇を円滑に行う上で有利となる。
また、例えば、操縦士により操作部材を把持された際の圧力を検出し、検出された圧力のうち、航空機の前後方向における後ろ側の圧力が前側の圧力より高くなった場合、次の飛行動作が航空機の降下であると判断し、エンジンの出力を予め定めた所定の割合で減少させる。これにより、航空機を降下させるための必要な操作を支援することで、操縦士による操作の負担を軽減するとともに、航空機の降下を円滑に行う上で有利となる。
また、航空機が降下し、航空機の機首が下を向いた後、水平飛行時の速度に戻るようエンジンの出力を調整することで、水平飛行時に近い速度を維持しながら航空機を降下させることができる。
また、航空機が降下し、エンジンの出力を最小にしても航空機の速度を保てないほど航空機の機首が下を向いた場合、その旨を報知し、さらに減速部材を制御することで航空機を減速させることで、操縦士に不安定な飛行状態を改善するよう促して注意喚起を行うとともに航空機を減速させることができ、航空機の降下を円滑に行う上で有利となる。
また、例えば、操縦士により操作部材を操作された際の把持部の回転が検出された場合、次の飛行動作が航空機の旋回であると判断し、方向舵を制御することで航空機の機首を旋回方向に向け、昇降舵を制御することで航空機の機首を上に向け、エンジンの出力を予め定めた所定の割合で増加させる。これにより、航空機を旋回させるための必要な操作を支援することで、操縦士による操作の負担を軽減するとともに、航空機の旋回を円滑に行う上で有利となる。
また、航空機が旋回を始めた場合、水平飛行時の速度に戻るようエンジンの出力を調整することで、水平飛行時に近い速度を維持しながら航空機を旋回させることができる。
また、航空機の機体の傾きが所定の角度を超えた場合、方向舵を制御することで航空機の機首を旋回方向と反対方向に向け、その旨を報知することで、航空機の傾きを修正するとともに操縦士に不安定な飛行状態を改善するよう促して注意喚起を行うことができ、航空機の旋回を円滑に行う上で有利となる。
また、例えば、操縦士により操作部材を把持された際の圧力を検出し、検出された左側の圧力および右側の圧力のうち、一方の圧力が他方の圧力より高くなった場合、次の飛行動作が航空機の旋回であると判断し、方向舵を制御することで航空機の機首を旋回方向に向け、昇降舵を制御することで航空機の機首を上に向け、エンジンの出力を予め定めた所定の割合で増加させる。これにより、航空機を旋回させるための必要な操作を支援することで、操縦士による操作の負担を軽減するとともに、航空機の旋回を円滑に行う上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態にかかる航空機の平面図である。
図2】航空機のコックピット内の構成を示す平面図である。
図3】第1の実施の形態にかかる航空機の飛行制御装置の構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施の形態の操縦輪の構成を示す正面図である。
図5】第1の実施の形態の操縦輪の構成を示す側面図である。
図6】第1の実施の形態のラダーペダルの構成を示す側面図であり、(A)はラダーペダルが踏み込まれる前の状態を示し、(B)はラダーペダルが踏み込まれた状態を示している。
図7】第1の実施の形態のスラストレバー、スピードブレーキレバー、およびフラップレバーの構成を示す側面図である。
図8】第1の実施の形態にかかる航空機の飛行制御装置による上昇動作処理および降下動作処理の流れを示すフローチャートである。
図9】第1の実施の形態にかかる航空機の飛行制御装置による旋回動作処理の流れを示すフローチャートである。
図10】第2の実施の形態の操縦桿の構成を示す正面図である。
図11】第2の実施の形態の操縦桿の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施の形態にかかる航空機の外観図である。
図1に示すように、航空機10は、機体12と、主翼14と、水平尾翼16と、垂直尾翼18と、エンジン20と、コックピット30とを備えている。
図1に示すように、本実施の形態では、符号FRは航空機10の前方方向(機首側)、符号RRは航空機10の後方方向、符号Lは航空機10の左方向、符号Rは航空機10の右方向を示している。
【0010】
機体12は、操縦士を含む乗員および乗客(または貨物)を収容するものであり、前方方向(進行方向)の先端部分が機首1202である。
主翼14は、機体12の略中央部から機体12の左右方向に延び、機体12を上昇させる揚力を発生させる。主翼14は、機体12に対して固定されている。
【0011】
主翼14の上面の中央部付近には、主翼14によって発生する揚力を減殺(スポイル)するスポイラー1402が設けられている。
スポイラー1402は、通常時は主翼14の表面と同一面になるよう伏した状態であるが、後述するスピードブレーキレバー34を操作すると、主翼14の表面に対して垂直方向に立ち上がる。これにより、それまで主翼14の表面に沿って流れていた気流が乱され、主翼14の表面から剥れることによって、揚力が減殺されるとともに抗力が増加し、この抗力により航空機10が減速する。スポイラー1402は、着陸時に急降下する際などに用いられる。スポイラー1402は、航空機10を減速させる減速部材として設けられている。
【0012】
また、主翼14の後縁のうち、主翼14の延在方向中央部には、フラップ1404が設けられている。
フラップ1404は、通常時は主翼14に沿って延びているが、後述するフラップレバー35を操作すると、フラップ1404が主翼14の前後方向の延在方向に対して下側(地表側)に傾き、機体12の揚力が増す。フラップ1404は、離着陸時など低速時において高い揚力を得られるように設けられた高揚力装置である。
【0013】
また、主翼14の後縁のうち、主翼14の延在方向先端部には、補助翼(エルロン)1406が設けられており、機体12の左右の傾き、つまりロール方向の姿勢を制御する。
補助翼1406は、通常時は主翼14に沿って延びているが、後述する操縦輪31Aを操作すると、左右の補助翼1406が主翼14の前後方向の延在方向に対して下側(地表側)または上側(上空側)にそれぞれ傾き、機体12をロール方向に変位させる。
【0014】
水平尾翼16は、機体12の後端部付近から左右方向に延び、機体12のピッチ方向の姿勢を安定させる。水平尾翼16は、機体12に対して固定されている。
水平尾翼16の後縁部には上下方向に移動可能な昇降舵(エレベータ)1602が設けられており、機体12のピッチ方向の姿勢を制御する。
昇降舵1602は、通常時は水平尾翼16の前後方向に沿って延びているが、後述する操縦輪31Aを前後方向に操作すると、水平尾翼16の延在方向に対して上下に傾き、航空機10の機首1202を上下方向(ピッチ方向)に変位させる。
【0015】
垂直尾翼18は、機体12の後端部付近から垂直に立設し、機体12のヨー方向の姿勢を安定させる。垂直尾翼18は、機体12に対して固定されている。
垂直尾翼18の後縁部には左右方向に移動可能な方向舵(ラダー)1802が設けられており、機体12のヨー方向の姿勢を制御する。
方向舵1802は、通常時は垂直尾翼18に沿って延びているが、後述するラダーペダル32を操作すると、垂直尾翼18に対して左右に傾き、航空機10の機首1202を左右方向(ヨー方向)に変位させることで、機体12の進行方向を左右方向に変化させる。
【0016】
エンジン20は、航空機10が飛行するために必要な推力を発生させる。本実施の形態では、左右の主翼14に各1つ、合計2つのエンジン20が設けられている。
また、本実施の形態では、エンジン20は、燃料の熱エネルギーをピストンの往復運動に変換し、回転運動として出力するレシプロエンジンであるものとする。
エンジン20の前方にはプロペラ22が配置されており、プロペラ22は、エンジン20から出力された回転運動により回転し、航空機10の飛行に必要な推力を発生させる。
なお、エンジン20は、レシプロエンジン以外のものを用いてもよく、例えば、燃料と空気の混合気を燃焼させることで後方側に向けて推力を発生させるターボファンエンジンなど、公知の他のエンジンを用いて構成してもよい。
【0017】
本実地の形態では、スポイラー1402、フラップ1404、補助翼1406、昇降舵1602、方向舵1802、エンジン20などが航空機10を飛行させるための複数の飛行部材として設けられている。
【0018】
これら航空機10の構成は、図3に示すように、航空機制御部50によってその挙動が制御される。航空機制御部50は、航空機10全体の挙動を司るコンピュータであり、後述する操縦部材31、32、33、34、35に対する操作に基づいて、航空機10の各構成部の挙動を制御する。
【0019】
コックピット30は、機体12の内部前端部に設けられ、航空機10の操縦部材が設けられている。
図2は、コックピット内の構成を示す図である。
また、図3は、航空機の飛行制御装置の構成を示すブロック図である。
コックピット30には、2人の操縦士(機長および副操縦士)がそれぞれ着席する2つの操縦席300と、モニタや各種計器類等が設けられたコントロールパネル302と、複数の操縦部材を構成する操縦輪31A、ラダーペダル32(32A、32B)、スラストレバー33、スピードブレーキレバー34、フラップレバー35が設けられている。
【0020】
複数の操縦部材31、32、33、34、35は、航空機10の複数の飛行部材を制御するために操縦士によって操縦される部材である。
なお、操縦輪31A(31)およびラダーペダル32は、機長および副操縦士用にそれぞれ設けられている。
また、コックピット30には、図2に挙げた操縦部材の他にも、例えば車輪格納用レバーなど、様々な操縦部材が設けられているが、本実施の形態では代表的な操縦部材について説明する。
【0021】
図3に示すように、航空機10には、図1に示した複数の飛行部材であるスポイラー1402、フラップ1404、補助翼1406、昇降舵1602、方向舵1802、エンジン20、図2に示した操縦部材である操縦輪31A、ラダーペダル32(32A、32B)、スラストレバー33(33A、33B)、スピードブレーキレバー34、フラップレバー35の他、各操縦部材に対する操縦士による操作(圧力、回転)および操作量を検出する第1~第7検出部41~47および航空機制御部50を備える。
【0022】
操縦輪31Aは、航空機10の補助翼1406および昇降舵1602の姿勢を調整するための機構である。
本実施の形態の操縦輪31Aは、航空機10の飛行動作を行うために操縦士により把持されながら操縦される操作部材として設けられている。
図4および図5は、操縦輪の構成を示す図であり、図4は操縦席に着席した操縦士から見た正面図、図5は左側面図である。
操縦輪31Aは、床面Fから立設する揺動軸3100と、揺動軸3100の先端に設けられた接続部3104と、接続部3104の左右両側から突出する左右一対の把持部3102とを備える。
一対の把持部3102は、接続部3104内の後述する第1回転軸3106から左右に延びる一対の第1アーム3102Aと、各第1アーム3102Aの先端から上方に延びる一対の第2アーム3102Bとを備える。各第2アーム3102Bは、円弧状を呈しており、より詳細には一対の第1アーム3102Aの先端間を結ぶ直径の仮想円の円周上を延在している。
【0023】
操縦士が航空機10の操縦を行う際には、一対の把持部3102の一対の第2アーム3102Bを把持して操作を行う。
本実施の形態では、一対の把持部3102の一対の第2アーム3102Bに、図3に示す第1検出部41として圧力を検出する圧力センサが設けられている。第1検出部41(圧力センサ)は、一対の第2アーム3102Bが操縦士により把持された際の圧力を検出し、航空機制御部50に出力する。
【0024】
また、一対の把持部3102は、接続部3104内に設けられた前後方向に延在する第1回転軸3106を中心に回転可能に保持されている。すなわち、接続部3104は、一対の把持部3102を第1回転軸3106周りに回転可能とする回転部として機能し、一対の把持部3102は右方向(時計周り)または左方向(反時計周り)に回転可能である。
本実施の形態では、接続部3104に、図3に示す第2検出部42として回転を検出する回転センサが設けられている。第2検出部42(回転センサ)は、操縦士により把持された一対の把持部3102の回転および回転された際の回転状態を検出し、航空機制御部50に出力する。
【0025】
一対の把持部3102を右方向に回転させると、航空機制御部50は、航空機10の右側の主翼14の補助翼1406を上げるとともに、航空機10の左側の主翼14の補助翼1406を下げる。これにより、機体12は重心を中心として右側に傾き、航空機10は右旋回する。
また、一対の把持部3102を左方向させると、航空機制御部50は、航空機10の左側の主翼14の補助翼1406を上げるとともに、航空機10の右側の主翼14の補助翼1406を下げる。これにより、機体12は重心を中心として左側に傾き、航空機10は左旋回する。
すなわち、操縦輪31Aは、航空機10のロール方向の姿勢を調整する操縦部材として機能する。
【0026】
また、図5に示すように、操縦輪31Aの揺動軸3100は、床面Fから機体12の前後方向に揺動可能である。
本実施の形態では、揺動軸3100に、図3に示す第3検出部43として揺動を検出する揺動センサが設けられている。第3検出部43(揺動センサ)は、操縦士により一対の把持部3102が把持され揺動軸3100が揺動された際の揺動状態を検出し、航空機制御部50に出力する。
一対の把持部3102を前方向に移動させて(押し出して)揺動軸3100を前側に傾けると、航空機制御部50は、昇降舵1602の後方側を下げる。これにより、航空機10の機首1202が下がる。
また、一対の把持部3102を後ろ方向に移動させて(引き寄せて)揺動軸3100を後ろ側に傾けると、航空機制御部50は、昇降舵1602の前方側を下げる。これにより、航空機10の機首1202が上がる。
すなわち、操縦輪31Aは、航空機10のピッチ方向の姿勢を調整する操縦部材としても機能する。
【0027】
ラダーペダル32は、方向舵1802の姿勢を調整するための機構である。
図6は、ラダーペダルの構成を示す側面図であって、(A)は操縦士によりラダーペダルが踏み込まれる前の状態を示し、(B)は操縦士によりラダーペダルが踏み込まれた状態を示している。
ラダーペダル32は、操縦席300近傍の床面F近くに設けられる。ラダーペダル32は、操縦士の足裏が当節するペダル踏面部3200と、ペダル踏面部3200の裏面(足裏が当接する面と反対側の面)に一端を固定されたペダルアーム3202と、床面Fに固定された基台3206と、基台3206とペダルアーム3202の他端とを接続する回転軸3204とを備える。ラダーペダル32の踏み込み量は、回転軸3204の回転量として図3に示す第4検出部44(回転センサ)によって検出され、航空機制御部50に出力される。
【0028】
図1に示すように、ラダーペダル32は、操縦輪31Aの左右に一つずつ設けられている。操縦士から見て右側に位置する右側ラダーペダル32Aを踏み込むと、航空機制御部50は、垂直尾翼18の方向舵1802に右側に傾ける。これにより、機体12が右側に旋回する。また、操縦士から見て左側に位置する左側ラダーペダル32Bを踏み込むと、航空機制御部50は、垂直尾翼18の方向舵1802を左側に傾ける。これにより、機体12が左側に旋回する。
すなわち、ラダーペダル32は、航空機10のヨー方向の姿勢を調整する操縦部材として機能する。
【0029】
上述のように、操縦輪31Aの一対の把持部3102を左右方向に回転させることによっても補助翼1406の作用により左右に旋回するが、操縦輪31Aまたはラダーペダル32(方向舵1802)のいずれかのみを用いた旋回は、旋回方向の加速度が大きくなり、搭乗者に不快を与えることになる。よって、旋回時には、操縦輪31Aの左右回転操作およびラダーペダル32の踏み込み操作をバランスよく組み合わせることが必要となる。
【0030】
スラストレバー33は、エンジン20の出力を調整するための機構である。
一般に、スラストレバー33はエンジン20の数だけ設けられている。
本実施の形態では、エンジン20が2つ設けられているため、スラストレバー33も2つ設けられている。操縦士から見て右側に位置するスラストレバー33Aは右側の主翼14に取り付けられたエンジン20用のスラストレバーであり、操縦士から見て左側に位置するスラストレバー33Bは左側の主翼14に取り付けられたエンジン20用のスラストレバーである。
【0031】
図7は、スラストレバーの構成を示す図である。
スラストレバー33は、左右の操縦席300の間に設けられたセンターコンソール304に設けられている。スラストレバー33は、センターコンソール304に設けられた切り欠き304Aからコックピット30側に突出し、機体12の前方向に揺動可能に設けられた揺動軸3300と、揺動軸3300の先端に設けられ手により把持される把持部3302とを備えている。切り欠き304Aは、揺動軸3300の揺動方向に沿って設けられている。
【0032】
スラストレバー33は、中立位置から機体12の前方の範囲に傾倒可能に設けられている。スラストレバー33の揺動状態は、図3に示す第5検出部45(揺動センサ)によって検出され、航空機制御部50に出力される。
航空機制御部50は、スラストレバー33の前傾が大きくなるほど(基準位置からの揺動角度が大きくなるほど)、エンジン20の出力を大きくする。これにより、航空機10の飛行速度が速くなる。また、航空機制御部50は、スラストレバー33の前傾が小さくなるほど(基準位置からの揺動角度が小さくなるほど)、エンジン20の出力を小さくする。
【0033】
スピードブレーキレバー34は、スポイラー1402の姿勢を調整するための機構である。
スピードブレーキレバー34の構成は、スラストレバー33と略同一の機構であるため、図7を用いて説明する。
スピードブレーキレバー34は、スラストレバー33と同様にセンターコンソール304(操縦パネル)に設けられている。スピードブレーキレバー34は、センターコンソール304に設けられた切り欠き304Bからコックピット30側に突出し、機体12の後方向に揺動可能に設けられた揺動軸3400と、揺動軸3400の先端に設けられ手により把持される把持部3402とを備えている。切り欠き304Bは、揺動軸3400の揺動方向に沿って設けられている。
【0034】
スピードブレーキレバー34は、中立位置から機体12の後方の範囲に傾倒可能に設けられている。すなわち、スピードブレーキレバー34の傾倒方向はスラストレバー33と逆になる。スピードブレーキレバー34の揺動状態は、図3に示す第6検出部46(揺動センサ)によって検出され、航空機制御部50に出力される。
航空機制御部50は、スピードブレーキレバー34が引かれると、その傾斜角度に比例して、主翼14上に設けられたスポイラー1402を立ち上げる。これにより、航空機10にかかる空気抵抗が増し、航空機10の飛行速度が遅くなる。
【0035】
フラップレバー35は、フラップ1404の姿勢を調整するための機構である。
フラップレバー35の構成は、スラストレバー33と略同一の機構であるため、図7を用いて説明する。
フラップレバー35は、スラストレバー33と同様にセンターコンソール304に設けられている。フラップレバー35は、センターコンソールに設けられた切り欠き304Cからコックピット30側に突出し、機体12の後方向に揺動可能に設けられた揺動軸3500と、揺動軸3500の先端に設けられ手により把持される把持部3502とを備えている。切り欠き304Cは、揺動軸3500の揺動方向に沿って設けられている。
【0036】
フラップレバー35は、中立位置から機体12の後方の範囲に傾倒可能に設けられている。すなわち、フラップレバー35の傾倒方向はスラストレバー33と逆になる。フラップレバー35の揺動状態は、図3に示す第7検出部47(揺動センサ)によって検出され、航空機制御部50に出力される。
航空機制御部50は、フラップレバー35が引かれると、その傾斜角度に比例して主翼14の後端部に設けられたフラップ1404を地面方向に下げる。これにより、航空機10の揚力が増し、例えば着陸のために航空機10の飛行速度を落とした際にも揚力を維持することが可能となる。
【0037】
航空機制御部50は、CPU(Central Processing Unit)などの制御装置、制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)や制御プログラムの作動領域としてのRAM(Random Access Memory)などの記憶装置、表示装置やスピーカなどの出力装置、入力装置、および第1~第7検出部41~47および航空機各部との通信を行う通信I/F(interface)などを含む通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっており、CPUがROMに格納された制御プログラムを実行することにより、動作判断部52、飛行制御部54、報知部56として機能する。
【0038】
動作判断部52は、操縦輪31Aの一対の把持部3102に設けられた第1検出部41(圧力センサ)および操縦輪31Aの接続部3104に設けられた第2検出部42(回転センサ)により検出された操作に基づいて、水平飛行中の航空機10の次の飛行動作を判断する。
具体的には、操縦士により操縦輪31Aが把持されて操作されることで、第1検出部41により圧力が検出された場合、動作判断部52は、検出された圧力のうち、航空機10の前後方向における前側の圧力が後ろ側の圧力より高くなった場合、次の飛行動作が航空機10の上昇であると判断する。
すなわち、操縦士が一対の把持部3102を握って後ろ側(操縦士からみて手前側)に移動させて操縦輪31Aを後ろ側に傾ける場合、一対の把持部3102を引き寄せて前側(操縦士からみて奥側)を主に押圧するため、一対の把持部3102には後ろ側の圧力より前側の圧力の方が高くなる。このように、操縦輪31Aを後ろ側に傾けると、昇降舵1602の前方側が下げられ、航空機10の機首1202が上がるため、動作判断部52は、次の飛行動作が航空機10の上昇であると判断する。
【0039】
また、動作判断部52は、検出された圧力のうち、航空機10の前後方向における後ろ側の圧力が前側の圧力より高くなった場合、次の飛行動作が航空機10の降下であると判断する。
すなわち、操縦士が一対の把持部3102を握って前側(操縦士からみて奥側)に移動させて操縦輪31Aを前側に傾ける場合、一対の把持部3102を押し出して後ろ側(操縦士からみて手前側)を主に押圧するため、一対の把持部3102には前側の圧力より後ろ側の圧力の方が高くなる。このように、操縦輪31Aを前側に傾けると、昇降舵1602の後方側が下げられ、航空機10の機首1202が下がるため、動作判断部52は、次の飛行動作が航空機10の降下であると判断する。
【0040】
さらに、操縦士により操縦輪31Aが把持されて操作されることで、第2検出部42により一対の把持部3102の回転が検出された場合、動作判断部52は、次の飛行動作が航空機10の旋回であると判断する。
このとき、第2検出部42により一対の把持部3102の左回転が検出された場合、航空機10の左側の補助翼1406が上がるとともに右側の補助翼1406が下がるため、機体12は重心を中心として左側に傾き、動作判断部52は、次の飛行動作が航空機10の左旋回であると判断する。
一方、第2検出部42により一対の把持部3102の右回転が検出された場合、航空機10の右側の補助翼1406が上がるとともに左側の補助翼1406が下がるため、機体12は重心を中心として右側に傾き、動作判断部52は、次の飛行動作が航空機10の右旋回であると判断する。
なお、動作判断部52は、後ろ側の圧力と前側の圧力とがほぼ等しく、一対の把持部3102がほぼ回転していない場合、水平飛行を維持していると判断する。
【0041】
飛行制御部54は、第2~第7検出部42~47で検出された各操縦部材の操作量を、航空機10の飛行部材の移動量の指令情報に変換し、航空機10に設けられた複数の飛行部材を制御することで、航空機10を飛行させる。
すなわち、飛行制御部54は、第2検出部42で検出された操縦輪31Aの一対の把持部3102の回転量に基づいて補助翼1406を上げ下げし、この結果、航空機10のロール方向の姿勢が調整される。
また、飛行制御部54は、第3検出部43で検出された操縦輪31Aの揺動軸3100の揺動量に基づいて昇降舵1602を上げ下げし、この結果、航空機10のピッチ方向の姿勢が調整される。
また、飛行制御部54は、第4検出部44で検出されたラダーペダル32の踏み込み量に基づいて方向舵1802を左右に傾け、この結果、航空機10のヨー方向の姿勢が調整される。
また、飛行制御部54は、第5検出部45で検出されたスラストレバー33の揺動量に基づいてエンジン20の出力を増減させ、この結果、航空機10の飛行速度が調整される。
また、飛行制御部54は、第6検出部46で検出されたスピードブレーキレバー34の揺動量に基づいてスポイラー1402を上げ下げし、この結果、航空機10の飛行速度が調整される。
また、飛行制御部54は、第7検出部47で検出されたフラップレバー35の揺動量に基づいてフラップ1404を上げ下げし、この結果、航空機10の揚力が調整される。
【0042】
また、飛行制御部54は、動作判断部52により水平飛行中の航空機10の次の飛行動作が判断された場合、飛行部材を制御することで、判断された次の飛行動作を航空機10に実行させる。
具体的には、飛行制御部54は、動作判断部52により次の飛行動作が航空機10の上昇と判断された場合、エンジン20の出力を予め定めた所定の割合、例えば10%増加させる。そして、飛行制御部54は、航空機10が上昇し、航空機10の機首1202が上を向いた後、水平飛行時の速度に戻るようエンジン20の出力を調整する。
これは、航空機10が上昇するときは速度が低下するため、エンジン20の出力を増加させて速度の低下を抑制する。すなわち、水平飛行中に操縦士により操縦輪31Aが後ろ側に傾けられることで航空機10が上昇する場合、昇降舵1602の前方側が下げられて航空機10の機首1202が上がるため、航空機10の迎え角が大きくなる。迎え角が大きくなると揚力が増加するが、このとき同時に航空機10に対する抗力も大きくなるため、航空機10の速度の低下を抑制するには、エンジン20の出力を増加させる必要がある。
【0043】
また、飛行制御部54は、動作判断部52により次の飛行動作が航空機10の降下と判断された場合、エンジン20の出力を予め定めた所定の割合、例えば10%減少させる。そして、飛行制御部54は、航空機10が降下し、航空機10の機首1202が下を向いた後、水平飛行時の速度に戻るようエンジン20の出力を調整する。
これは、航空機10が降下するときは速度が上昇するため、エンジン20の出力を減少させて速度の上昇を抑制する。
また、エンジン20の出力を最小にしても航空機10の速度を保てないほど航空機10の機首が下を向いた場合、飛行制御部54は、スポイラー1402(減速部材)を制御することで航空機10を減速させる。すなわち、飛行制御部54は、スポイラー1402を主翼14の表面に対して垂直方向に立ち上げることで抗力を増加させ、この抗力により航空機10を減速させる。
【0044】
また、飛行制御部54は、動作判断部52により次の飛行動作が航空機10の旋回と判断された場合、方向舵1802を制御することで航空機10の機首1202を一対の把持部3102の回転方向である旋回方向に向け、昇降舵1602を制御することで航空機10の機首1202を上に向け、エンジン20の出力を予め定めた所定の割合、例えば10%増加させる。そして、飛行制御部54は、航空機10が旋回を始めた場合、水平飛行時の速度に戻るようエンジン20の出力を調整する。
航空機10を旋回させるときは、機体12を傾けるだけではなく、機首1202の方向を旋回方向に向ける必要がある。したがって、例えば、水平飛行中に操縦士により操縦輪31Aの一対の把持部3102を左回転することで航空機10を左に旋回させる場合、飛行制御部54は、方向舵1802を左に傾かせることで機首1202を左方向に変位させる。一方、航空機10を右に旋回させる場合、飛行制御部54は、方向舵1802を右に傾かせることで機首1202を右方向に変位させる。
また、水平飛行中の航空機10を旋回させるために機体12を傾けると、揚力も傾くため揚力の上向き成分は重力より小さくなる。そこで、飛行高度を保つには揚力の上向き成分と重力とを釣り合わせる必要があるため、水平飛行時よりも揚力を増加させる。したがって、飛行制御部54は、昇降舵1602の前方側を下げて航空機10の機首1202を上げて迎え角を大きくすることで、揚力を増加させる。
さらに、迎え角を大きくすると抗力も増加し、航空機10の速度が低下するため、飛行制御部54は、エンジン20の出力を増加させる。
【0045】
また、飛行制御部54は、航空機10の機体の傾きが所定の角度、例えば45度を超えた場合、方向舵1802を制御することで航空機10の機首1202を旋回方向と反対方向に向ける。
航空機10の旋回時に機体12の傾きが所定の角度を超えると、機軸と飛行方向とが一致しにくく横滑りを起こしてしまうことがあるため、補助翼1406と方向舵1802とのバランスがとるために、飛行制御部54は、航空機10の機首1202を旋回方向と反対方向に向ける。例えば、航空機10を左に旋回させている場合、飛行制御部54は、方向舵1802を右に傾かせることで機首1202を右方向に戻すよう変位させる。
【0046】
報知部56は、航空機10が上昇し、エンジン20の出力を最大にしても航空機10の速度を保てないほど航空機10の機首1202が上を向いた場合、その旨を報知する。
また、報知部56は、航空機10が降下し、エンジン20の出力を最小にしても航空機10の速度を保てないほど航空機10の機首1202が下を向いた場合、その旨を報知する。
また、報知部56は、航空機10が旋回し、エンジン20の出力を最大にしても航空機10の速度を保てないほど航空機10の機体12が傾いた場合、その旨を報知する。さらに、報知部56は、航空機10の機体12の傾きが所定の角度(例えば45度)を超えた場合、その旨を報知する。
【0047】
報知部56による報知は、例えば、コントロールパネル302に設けられた表示装置302Aに赤い文字を表示させたり、スピーカ(不図示)から音声を出力することで操縦士に上述のような状況を知らせる。これにより操縦士は必要な操縦を行うことで不安定な飛行状態を改善するような対応を行うことができる。
具体的には、例えば、速度を保てないほど航空機10の機首1202が上を向いている場合、操縦士は操縦輪31Aを前側に傾けて昇降舵1602の後方側を下げ、機首1202を下げる。
また、速度を保てないほど航空機10の機首1202が下を向いている場合、操縦士は操縦輪31Aを後ろ側に傾けて昇降舵1602の前方側を下げ、機首1202を上げる。
また、速度を保てないほど航空機10の機体12が傾いた場合、および機体12の傾きが所定の角度(例えば45度)を超えた場合、操縦士は操縦輪31Aの一対の把持部3102を右または左に回転させることで、機体12の傾きを修正して水平方向に近づく方向に戻す。
【0048】
次に、航空機の飛行制御装置による上昇動作処理および降下動作処理について説明する。図8は、航空機の飛行制御装置による上昇動作処理および降下動作処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
まず、航空機10が水平飛行中に、操縦士により操縦輪31Aが把持されて操作されることで第1検出部41により圧力が検出された場合、動作判断部52は、前側の圧力が後ろ側の圧力より高いか否かを判断する(ステップS100)。
前側の圧力が後ろ側の圧力より高くなった場合(ステップS100:YES)、動作判断部52は、次の飛行動作が航空機10の上昇であると判断する。
飛行制御部54は、航空機10の上昇と判断された場合、エンジン20の出力を予め定めた所定の割合で増加させる(ステップS102)。
【0050】
次に、飛行制御部54は、航空機10が上昇し、航空機10の機首1202が上を向いたか否かを判断し(ステップS104)、機首1202が上を向いていない場合(ステップS104:NO)、ステップS102に戻って処理を繰り返す。
一方、機首1202が上を向いた場合(ステップS104:YES)、飛行制御部54は、水平飛行時の速度に戻るようエンジン20の出力を調整する(ステップS106)。
【0051】
次に、飛行制御部54は、航空機10が上昇し、エンジン20の出力を最大にしても航空機10の速度を保てないほど航空機10の機首1202が上を向いているか否かを判断し(ステップS108)、速度を保てないほど航空機10の機首1202が上を向いた場合(ステップS108:YES)、報知部56は、その旨を文字で表示したり音声を出力することで報知し(ステップS110)、処理を終了する。
これにより操縦士は、必要な操縦、すなわち操縦輪31Aを前側に傾けて昇降舵1602の後方側を下げ、機首1202を下げるなどの対応を行う。
一方、ステップS108において、速度を保てないほど航空機10の機首1202が上を向いていない場合(ステップS108:NO)は、操縦士による対応が不要であるため、ステップS106に戻って処理を繰り返すことによりエンジン20の出力が調整され水平飛行時の速度に戻る。
【0052】
また、ステップS100において、前側の圧力が後ろ側の圧力より高くなっていない場合(ステップS100:NO)、動作判断部52は、後ろ側の圧力が前側の圧力より高いか否かを判断する(ステップS112)。
後ろ側の圧力が前側の圧力より高くなっていない場合(ステップS112:NO)、後ろ側の圧力と前側の圧力とがほぼ等しい状態であるため、動作判断部52は、水平飛行を維持していると判断して処理を終了する。
【0053】
一方、後ろ側の圧力が前側の圧力より高くなった場合(ステップS112:YES)、動作判断部52は、次の飛行動作が航空機10の降下であると判断する。
飛行制御部54は、航空機10の降下と判断された場合、エンジン20の出力を予め定めた所定の割合で減少させる(ステップS114)。
【0054】
次に、飛行制御部54は、航空機10が降下し、航空機10の機首1202が下を向いたか否かを判断し(ステップS116)、機首1202が下を向いていない場合(ステップS116:NO)、ステップS114に戻って処理を繰り返す。
一方、機首1202が下を向いた場合(ステップS116:YES)、飛行制御部54は、水平飛行時の速度に戻るようエンジン20の出力を調整する(ステップS118)。
【0055】
次に、飛行制御部54は、航空機10が降下し、エンジン20の出力を最小にしても航空機10の速度を保てないほど航空機10の機首1202が下を向いているか否かを判断し(ステップS120)、速度を保てないほど航空機10の機首1202が下を向いた場合(ステップS120:YES)、報知部56は、その旨を文字で表示したり音声を出力することで報知する(ステップS122)。
これにより操縦士は、必要な操縦、すなわち操縦輪31Aを後ろ側に傾けて昇降舵1602の前方側を下げ、機首1202を上げるなどの対応を行う。
そして、飛行制御部54は、スポイラー1402を制御して、主翼14の表面に対して垂直方向に立ち上げることで抗力を増加させ、この抗力により航空機10を減速させ(ステップS124)、処理を終了する。
一方、ステップS120において、速度を保てないほど航空機10の機首1202が下を向いていない場合(ステップS120:NO)は、操縦士による対応が不要であるため、ステップS118に戻って処理を繰り返すことによりエンジン20の出力が調整され水平飛行時の速度に戻る。
【0056】
次に、航空機の飛行制御装置による旋回動作処理について説明する。図9は、航空機の飛行制御装置による旋回動作処理の流れを示すフローチャートである。図9では、航空機10が左旋回する場合の処理について説明するが、右旋回する場合の処理も同様である。
【0057】
まず、航空機10が水平飛行中に、操縦士により操縦輪31Aが把持されて操作されることで第2検出部42により一対の把持部3102が左に回転したことが検出されると(ステップS140)、動作判断部52は、次の飛行動作が航空機10の左旋回であると判断する。
航空機10の左旋回と判断された場合、飛行制御部54は、方向舵1802を制御することで航空機10の機首1202を左方向に向け(ステップS142)、昇降舵1602を制御することで航空機10の機首1202を上に向け(ステップS144)、エンジン20の出力を予め定めた所定の割合で増加させる(ステップS146)。
【0058】
次に、飛行制御部54は、航空機10が左旋回を始めたか否かを判断し(ステップS148)、航空機10が左旋回を始めていない場合(ステップS148:NO)、ステップS142に戻って処理を繰り返す。
一方、航空機10が左旋回を始めた場合(ステップS148:YES)、飛行制御部54は、水平飛行時の速度に戻るようエンジン20の出力を調整する(ステップS150)。
【0059】
次に、飛行制御部54は、航空機10が左旋回し、エンジン20の出力を最大にしても航空機10の速度を保てないほど航空機10の機体12が左に傾いているか否かを判断し(ステップS152)、速度を保てないほど航空機10の機体12左に傾いていない場合(ステップS152:NO)、ステップS150に戻って処理を繰り返す。
一方、速度を保てないほど航空機10の機体12が左に傾いた場合(ステップS152:YES)、報知部56は、その旨を文字で表示したり音声を出力することで報知する(ステップS154)。
これにより操縦士は、必要な操縦、すなわち操縦輪31Aの一対の把持部3102を右に回転させることで、機体12の傾きを水平方向に近づくよう戻すなどの対応を行う。
【0060】
さらに、飛行制御部54は、航空機10の機体12の傾きが45°を超えたか否かを判断し(ステップS156)、機体12の傾きが45°を超えていない場合(ステップS156:NO)、ステップS150に戻って処理を繰り返す。
一方、機体12の傾きが45°を超えた場合(ステップS156:YES)、飛行制御部54は、方向舵1802を制御することで航空機10の機首1202を右方向に向ける(ステップS158)。そして、報知部56は、その旨を文字で表示したり音声を出力することで報知し(ステップS160)、処理を終了する。
【0061】
このように、本実施の形態の航空機の飛行制御装置によれば、操縦士による操縦輪31Aに対する操作を検出し、検出された操作に基づいて水平飛行中の航空機10の次の飛行動作を判断し、飛行部材を制御することで、航空機10に判断された次の飛行動作を実行させる。このため、水平飛行中の航空機10に次の飛行動作を実行させる際、操縦士の技量不足や不注意などによって次の飛行動作のために必要な操縦部材31~35の操作が適切に行なわれない場合でも、操縦士による操縦輪31Aに対する操作に追随して次の飛行動作のために必要な操作を支援することで、操縦士による操作の負担を軽減するとともに次の飛行動作を円滑に行う上で有利となる。
具体的には、例えば、水平飛行中の航空機10に次の飛行動作を実行させる際、操縦部材31~35の操作タイミングが早すぎた、もしくは遅すぎた場合、操縦部材31~35の操作量が過剰であった、もしくは過小であった場合、操縦部材31~35の操作に誤りがあった場合でも、次の飛行動作のために必要な操作を支援して、操縦士による操縦部材31~35の誤操作を防止することで、航空機10の安全性を向上させることができる。
【0062】
例えば、操縦士により操縦輪31Aの一対の把持部3102を把持された際の圧力を検出し、検出された圧力のうち、航空機10の前後方向における前側の圧力が後ろ側の圧力より高くなった場合、次の飛行動作が航空機10の上昇であると判断し、エンジン20の出力を予め定めた所定の割合で増加させる。これにより、航空機10を上昇させるための必要な操作を支援することで、操縦士による操作の負担を軽減するとともに、航空機10の上昇を円滑に行う上で有利となる。
また、航空機10が上昇し、航空機10の機首1202が上を向いた後、水平飛行時の速度に戻るようエンジン20の出力を調整することで、水平飛行時に近い速度を維持しながら航空機10を上昇させることができる。
また、航空機10が上昇し、エンジン20の出力を最大にしても航空機10の速度を保てないほど航空機10の機首1202が上を向いた場合、その旨を報知することで、操縦士に不安定な飛行状態を改善するよう促して注意喚起を行うことができ、航空機10の上昇を円滑に行う上で有利となる。
【0063】
また、例えば、操縦士により操縦輪31Aの一対の把持部3102を把持された際の圧力を検出し、検出された圧力のうち、航空機10の前後方向における後ろ側の圧力が前側の圧力より高くなった場合、次の飛行動作が航空機10の降下であると判断し、エンジン20の出力を予め定めた所定の割合で減少させる。これにより、航空機10を降下させるための必要な操作を支援することで、操縦士による操作の負担を軽減するとともに、航空機10の降下を円滑に行う上で有利となる。
また、航空機10が降下し、航空機10の機首1202が下を向いた後、水平飛行時の速度に戻るようエンジン20の出力を調整することで、水平飛行時に近い速度を維持しながら航空機10を降下させることができる。
また、航空機10が降下し、エンジン20の出力を最小にしても航空機10の速度を保てないほど航空機10の機首1202が下を向いた場合、その旨を報知し、さらにスポイラー1402を制御することで航空機10を減速させることで、操縦士に不安定な飛行状態を改善するよう促して注意喚起を行うとともに航空機10を減速させることができ、航空機10の降下を円滑に行う上で有利となる。
【0064】
また、例えば、操縦士により操縦輪31Aを操作された際の一対の把持部3102の回転が検出された場合、次の飛行動作が航空機10の旋回であると判断し、方向舵1802を制御することで航空機10の機首1202を旋回方向に向け、昇降舵1602を制御することで航空機10の機首1202を上に向け、エンジン20の出力を予め定めた所定の割合で増加させる。これにより、航空機10を旋回させるための必要な操作を支援することで、操縦士による操作の負担を軽減するとともに、航空機10の旋回を円滑に行う上で有利となる。
また、航空機10が旋回を始めた場合、水平飛行時の速度に戻るようエンジン20の出力を調整することで、水平飛行時に近い速度を維持しながら航空機10を旋回させることができる。
また、航空機10の機体の傾きが所定の角度(例えば45°)を超えた場合、方向舵1802を制御することで航空機10の機首1202を旋回方向と反対方向に向け、その旨を報知することで、航空機10の傾きを修正するとともに操縦士に不安定な飛行状態を改善するよう促して注意喚起を行うことができ、航空機10の旋回を円滑に行う上で有利となる。
【0065】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、一対の把持部3102が回転する操縦輪31Aが設けられていたのに対して、第2の実施の形態では、前後左右に傾倒される操縦桿31Bが設けられている点が異なっている。
なお、以下の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同様な個所、部材に同一の符号を付してその説明を省略し、第1の実施の形態と異なった個所について重点的に説明する。
【0066】
本実施の形態の航空機の飛行制御装置では、第1の実施の形態の操縦輪31Aに替えて、図10図11に示すような操縦桿31Bが設けられている。
操縦桿31Bは、航空機10の補助翼1406および昇降舵1602の姿勢を調整するための機構であって、第1の実施の形態と同様、航空機10の飛行動作を行うために操縦士により把持されながら操縦される操作部材として設けられている。
図10および図11は、操縦桿の構成を示す図であり、図10は操縦席に着席した操縦士から見た正面図、図11は左側面図である。
【0067】
操縦桿31Bは、床面Fから立設する揺動軸3100と、揺動軸3100の先端に設けられた把持部3112とを備える。
把持部3112は、揺動軸3100の延在方向と同方向に延在する棒状の取っ手である。
【0068】
操縦士が航空機10の操縦を行う際には、把持部3112を把持して操作を行う。
本実施の形態では、把持部3112に、図3に示す第1検出部41として圧力を検出する圧力センサが設けられている。第1検出部41(圧力センサ)は、把持部3112が操縦士により把持された際の圧力を検出し、航空機制御部50に出力する。
また、図10図11に示すように、操縦桿31Bの揺動軸3100は、床面Fから機体12の前後方向および左右方向に揺動可能である。
本実施の形態では、揺動軸3100に、図3に示す第3検出部43として揺動を検出する揺動センサが設けられている。したがって、第3検出部43(揺動センサ)は、操縦士により把持部3112が把持され揺動された際の揺動状態を検出し、航空機制御部50に出力する。
なお、本実施の形態では、第1の実施の形態で設けられていた第2検出部42(回転センサ)は設けられていない。
【0069】
把持部3112を右方向に移動させて揺動軸3100を右側に傾けると、航空機制御部50は、航空機10の右側の主翼14の補助翼1406を上げるとともに、航空機10の左側の主翼14の補助翼1406を下げる。これにより、機体12は重心を中心として右側に傾き、航空機10は右旋回する。
また、把持部3112を左方向に移動させて揺動軸3100を左側に傾けると、航空機制御部50は、航空機10の左側の主翼14の補助翼1406を上げるとともに、航空機10の右側の主翼14の補助翼1406を下げる。これにより、機体12は重心を中心として左側に傾き、航空機10は左旋回する。
すなわち、操縦桿31Bは、左右方向に揺動させることで、航空機10のロール方向の姿勢を調整する操縦部材として機能する。
なお、操縦桿31Bを前後方向に移動させることで、航空機10のピッチ方向の姿勢を調整する操縦部材として機能させる場合については第1の実施の形態と同様である。
【0070】
本実施の形態の動作判断部52は、操縦桿31Bの把持部3112に設けられた第1検出部41(圧力センサ)により検出された操作に基づいて、水平飛行中の航空機10の次の飛行動作を判断する。
次の飛行動作の判断において、航空機10の上昇および降下は、第1の実施の形態と同様に第1検出部41により検出された前後方向の圧力によって判断するが、航空機10の旋回は検出された左右方向の圧力によって判断する。
【0071】
操縦士により操縦桿31Bが把持されて操作されることで、第1検出部41により圧力が検出された場合、動作判断部52は、検出された航空機10の左右方向における左側の圧力および右側の圧力のうち、一方の圧力が他方の圧力より高くなった場合、次の飛行動作が航空機10の旋回であると判断する。
すなわち、動作判断部52は、検出された圧力のうち、右側の圧力が左側の圧力より高くなった場合、次の飛行動作が航空機10の左旋回であると判断する。一方、動作判断部52は、検出された圧力のうち、左側の圧力が右側の圧力より高くなった場合、次の飛行動作が航空機10の右旋回であると判断する。
【0072】
飛行制御部54は、次の飛行動作が航空機10の旋回と判断された場合、方向舵1802を制御することで航空機10の機首1202を圧力が低い側の方向である旋回方向に向け、昇降舵1602を制御することで航空機10の機首1202を上に向け、エンジン20の出力を予め定めた所定の割合、例えば10%増加させる。
すなわち、左旋回の場合、方向舵1802を制御することで航空機10の機首1202を左方向に向け、昇降舵1602を制御することで航空機10の機首1202を上に向け、エンジン20の出力を予め定めた所定の割合で増加させる。一方、右旋回の場合、方向舵1802を制御することで航空機10の機首1202を右方向に向け、昇降舵1602を制御することで航空機10の機首1202を上に向け、エンジン20の出力を予め定めた所定の割合で増加させる。
【0073】
航空機の飛行制御装置による上昇動作処理および降下動作処理、旋回動作処理の流れについては、第1の実施の形態と同様である。
【0074】
このように、本実施の形態の航空機の飛行制御装置によれば、操縦士により操作される操縦桿31Bの操作(圧力)を検出し、検出された操作に基づいて水平飛行中の航空機10の次の飛行動作を判断し、飛行部材を制御することで、航空機10に判断された次の飛行動作を実行させる。このため、水平飛行中の航空機10に次の飛行動作を実行させる際、操縦士の技量不足や不注意などによって次の飛行動作のために必要な操縦部材の操作が適切に行なわれない場合でも、操縦士による操作に追随して次の飛行動作のために必要な操作を支援することで、操縦士による操作の負担を軽減するとともに次の飛行動作を円滑に行う上で有利となる。
【0075】
例えば、操縦士により操縦桿31Bを操作された際の把持部3112の圧力を検出し、検出された左側の圧力および右側の圧力のうち、一方の圧力が他方の圧力より高くなった場合、次の飛行動作が航空機10の旋回であると判断し、方向舵1802を制御することで航空機10の機首1202を旋回方向に向け、昇降舵1602を制御することで航空機10の機首1202を上に向け、エンジン20の出力を予め定めた所定の割合で増加させる。これにより、航空機10を旋回させるための必要な操作を支援することで、操縦士による操作の負担を軽減するとともに、航空機10の旋回を円滑に行う上で有利となる。
また、第1の実施の形態と同様の部材および構成については、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0076】
10 航空機
12 機体
1202 機首
14 主翼
1402 スポイラー
1404 フラップ
1406 補助翼(エルロン)
16 水平尾翼
1602 昇降舵(エレベータ)
18 垂直尾翼
1802 方向舵(ラダー)
20 エンジン
22 プロペラ
30 コックピット
31~35 操縦部材
31A 操縦輪(操作部材)
31B 操縦桿(操作部材)
3102 一対の把持部
3112 把持部
32 ラダーペダル
32(32A、32B) ラダーペダル
33(33A、33B) スラストレバー
34 スピードブレーキレバー
35 フラップレバー
41~47 検出部
50 航空機制御部
52 動作判断部
54 飛行制御部
56 報知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11