IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎エナジーシステム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-空調パネル 図1
  • 特開-空調パネル 図2
  • 特開-空調パネル 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170136
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】空調パネル
(51)【国際特許分類】
   F25B 27/00 20060101AFI20221102BHJP
   F25B 15/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
F25B27/00 L
F25B27/00 H
F25B15/00 301B
F25B15/00 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076053
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓樹
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093BB25
3L093LL03
(57)【要約】
【課題】面積の取り合いによる問題の解消を図ると共に、より充分な性能を発揮することが可能な空調パネルを提供する。
【解決手段】空調パネル1は、蒸気冷媒を吸収する吸収液又は蒸気冷媒を吸着する吸着剤を有し、太陽光による加熱によって吸収又は吸着した蒸気冷媒を放出する再生吸収器10と、再生吸収器10において放出された蒸気冷媒を液化して液冷媒とする凝縮器20と、凝縮器20からの液冷媒を蒸発させる蒸発器30とを備え、再生吸収器10と凝縮器20とは、太陽光に晒される側となるパネル一面側に形成され、蒸発器30は、パネル一面とは反対面となるパネル他面側に形成され、再生吸収器10に対応するパネル一面側の第1部位P1には、日射吸収率80%以上であって、遠赤外線放射率が80%以上となる処理が施され、凝縮器20に対応するパネル一面側の第2部位P2には、日射反射率80%以上となる処理が施されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル状に形成され空調効果を得る空調パネルであって、
蒸気冷媒を吸収する吸収液又は蒸気冷媒を吸着する吸着剤を有し、太陽光による加熱によって吸収又は吸着した蒸気冷媒を放出する再生吸収器と、
前記再生吸収器において放出された蒸気冷媒を液化して液冷媒とする凝縮器と、
前記凝縮器からの液冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備え、
前記再生吸収器と前記凝縮器とは、太陽光に晒される側となるパネル一面側に形成され、
前記蒸発器は、前記パネル一面とは反対面となるパネル他面側に形成され、
前記再生吸収器に対応するパネル一面側の第1部位には、日射吸収率80%以上であって、遠赤外線放射率が80%以上となる処理が施され、
前記凝縮器に対応するパネル一面側の第2部位には、日射反射率80%以上となる処理が施されている
ことを特徴とする空調パネル。
【請求項2】
前記第1部位には、黒色ホーローが形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の空調パネル。
【請求項3】
前記第2部位には、白色ホーローが形成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の空調パネル。
【請求項4】
前記凝縮器において液化した液冷媒を前記蒸発器に送り込むための液冷媒流路と、
前記液冷媒流路に設けられ、前記蒸発器から前記凝縮器に向かう蒸気冷媒の逆流を防止する第1蒸気冷媒逆止弁と、
をさらに備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空調パネル。
【請求項5】
前記蒸発器において蒸発した蒸気冷媒を前記再生吸収器に送り込むための蒸気冷媒流路と、
前記蒸気冷媒流路に設けられ、前記再生吸収器から前記蒸発器に向かう蒸気冷媒の逆流を防止する第2蒸気冷媒逆止弁と、
をさらに備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空調パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収式冷凍機をパネル状に構成した吸収式冷凍パネルが提案されている(例えば特許文献1,2参照)。この吸収式冷凍パネルは、パネルの一方の面側に吸収器及び凝縮器が形成されており、他方の面側に蒸発器が形成されている。このような吸着式冷凍パネルは、パネル状に構成されていることから壁や天井等の建築材等として用いることが可能となり、空調機能を有する建築材等とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6552425号公報
【特許文献2】特許第6683861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような吸着式冷凍パネルにおいて太陽熱をエネルギー源とする場合に、集熱再生器についてもパネル面に設けることが考えられる。この場合、太陽光に晒される必要がある集熱再生器はパネルの一方又は他方の面の表面付近に形成されることが好ましい。また、空調効果を得るための蒸発器や凝縮熱を破棄する必要がある凝縮器についてもパネルの表面付近に設けることが好ましい。加えて、吸収器も設ける必要があることから、これらによる面積の取り合いとなって構成が複雑化したり充分な性能が得られなかったりする。
【0005】
特に、吸着式冷凍パネルを建築材として用いる場合、集熱再生器は太陽光に晒される一面側に配置され、蒸発器は室内に向いた他面側に配置される。この場合において、凝縮器は加熱されないことが好ましいことから、蒸発器と同様に他面側に設けるとすると、凝縮熱が室内に破棄されると共に蒸発器の面積を減じてしまい充分な空調効果を得難く、充分な性能が発揮されるとは言い難い。一方で、凝縮器を集熱再生器側に設けるとすると、凝縮器についても太陽光に晒されることとなって凝縮効率の低下を招くことから、充分な性能が発揮されるとは言い難い。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、面積の取り合いによる問題の解消を図ると共に、より充分な性能を発揮することが可能な空調パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空調パネルは、パネル状に形成され空調効果を得る空調パネルであって、蒸気冷媒を吸収する吸収液又は蒸気冷媒を吸着する吸着剤を有し、太陽光による加熱によって吸収又は吸着した蒸気冷媒を放出する再生吸収器と、前記再生吸収器において放出された蒸気冷媒を液化して液冷媒とする凝縮器と、前記凝縮器からの液冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備え、前記再生吸収器と前記凝縮器とは、太陽光に晒される側となるパネル一面側に形成され、前記蒸発器は、前記パネル一面とは反対面となるパネル他面側に形成され、前記再生吸収器に対応するパネル一面側の第1部位には、日射吸収率80%以上であって、遠赤外線放射率が80%以上となる処理が施され、前記凝縮器に対応するパネル一面側の第2部位には、日射反射率80%以上となる処理が施されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、面積の取り合いによる問題の解消を図ると共に、より充分な性能を発揮することが可能な空調パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る空調パネルを示す斜視図であり、(a)は一面側の斜視状態を示し、(b)は他面側の斜視状態を示している。
図2図1に示した第1逆止弁の詳細を示す構成図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は側面図を示している。
図3図1に示した第1温度制御弁の詳細を示す構成図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る空調パネルを示す斜視図であり、(a)は一面側の斜視状態を示し、(b)は他面側の斜視状態を示している。なお、図1においては空調パネルが垂直面に用いられる例を図示するが、傾斜面や水平面に用いられてもよい。
【0012】
図1に示す例に係る空調パネル1は、板材を折曲げ及び溶接等して形成されて外観が概略パネル状とされたものであって、再生吸収器10と、凝縮器20と、蒸発器30と、潜熱蓄熱材40と、断熱カバー50と、各種流路R1~R3と、各種弁V1~V3,HV1,HV2とを備えて構成されている。
【0013】
再生吸収器10は、太陽光に晒されるパネル一面側に設けられており、蒸気冷媒(例えば水蒸気)を吸収する吸収液(例えば臭化リチウム)又は蒸気冷媒を吸着する吸着剤(例えばシリカゲル)の少なくとも一方を備えている。再生吸収器10は、吸収液又は吸着剤を備えることで、蒸気冷媒を吸収・吸着する吸収器として機能することとなる。
【0014】
また、再生吸収器10は、日中にパネル一面側が太陽光に晒されることによって例えば100℃付近又はそれ以上に加熱され、吸収又は吸着した蒸気冷媒を放出する。このため、再生吸収器10は、パネル一面側が太陽光に晒されることで蒸気冷媒を放出する再生器として機能することとなる。
【0015】
ここで、本実施形態において再生吸収器10に対応するパネル一面側の第1部位P1には、日射吸収率80%以上となる処理が施されている。このような処理により、再生吸収器10は、日中において太陽光に晒されて100℃付近又はそれ以上に加熱される。さらに、第1部位P1には、遠赤外線放射率80%以上となる処理が施されている。このような処理により、再生吸収器10は、夜間において吸収熱を破棄可能とされている。日射吸収率80%以上と遠赤外線放射率80%以上を両立する処理については例えば黒色ホーロー加工処理が挙げられ、本実施形態において第1部位P1には黒色ホーロー加工が施されることとなる。
【0016】
第1蒸気冷媒流路R1は、再生吸収器10と凝縮器20とを接続する流路である。図1に示す例において、第1蒸気冷媒流路R1はパネル状の本体部1aから外部にむき出しとなるようにして設けられているが、これに限らず、本体部1aの内部に収納されて設けられてもよい。
【0017】
第1逆止弁V1は、第1蒸気冷媒流路R1に設けられ、凝縮器20から再生吸収器10への液冷媒(例えば水)や蒸気冷媒(例えば水蒸気)の逆流を防止するものである。図2は、図1に示した第1逆止弁V1の詳細を示す構成図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は側面図を示している。なお、図2(b)においては図示の関係上、図2(a)よりも板材を厚くして図示するものとする。
【0018】
図2に示すように、第1逆止弁V1は、例えば第1蒸気冷媒流路R1の終端部E(下流端)を開閉可能に設けられたものであって、2枚のベース材B1,B2と、動作板MPとを備えている。
【0019】
2枚のベース材B1,B2は、角度θを有して回転離間状態とされた板材である。このうち、第1ベース材B1は、第1蒸気冷媒流路R1の径相当の大きさの開口部O1が形成され、開口部O1が第1蒸気冷媒流路R1の終端部Eに接続された状態となっている。第2ベース材B2は、開口を有しない板材である。なお、第2ベース材B2は開口等を有していてもよい。
【0020】
動作板MPは、基本状態において第1ベース材B1に接触して第1ベース材B1の開口部O1を塞いだ状態となる板材である。日中において再生吸収器10が加熱されると、蒸気冷媒の放出によって再生吸収器10における圧力が高まって凝縮器20との圧力差が生じる。このとき、動作板MPは、その圧力差によって第1ベース材B1から離れ、第2ベース材B2側へ回動する(接触する)。結果として、第1逆止弁V1は、日中において開放状態となる。一方、夜間では再生吸収器10が加熱されず上記圧力差が生じなくなる。このため、第1逆止弁V1は閉塞状態となる。すなわち、第1逆止弁V1は、夕方、夜間において凝縮器20の液冷媒が再生吸収器10に戻ってしまうことや、気化して戻って吸収液や吸着剤に再吸収・再吸着されてしまうことを防止するものとして機能する。
【0021】
凝縮器20は、再生吸収器10からの蒸気冷媒を導入し、蒸気冷媒を液化して液冷媒とするものである。この凝縮器20は、太陽光に晒されるパネル一面側に設けられている。ここで、本実施形態において凝縮器20に対応するパネル一面側の第2部位P2には、日射反射率80%以上となる処理が施され、より好ましくは日射反射率80%以上かつ遠赤外線放射率80%以上となる処理が施されている(図1(a)参照)。このような処理により、凝縮器20は、日中において例えば40℃~50℃付近の温度帯に維持され、蒸気冷媒を凝縮可能とされている。日射反射率80%以上かつ遠赤外線放射率80%以上とする処理については白色ホーロー加工処理が挙げられ、本実施形態において第2部位P2には白色ホーロー加工が施されることとなる。
【0022】
特に、本実施形態において本体部1aの同一面となる一面側に黒色ホーローと白色ホーローとが施されることとなる。よって、一面側には、黒色と白色とのホーロー釉薬を塗布した後に同時焼成を行うことで、双方の処理を施すことができる。
【0023】
液冷媒流路R2は、凝縮器20と蒸発器30とを接続する流路である。図1に示す例において液冷媒流路R2はパネル状の本体部1aから外部にむき出しとなるようにして設けられているが、これに限らず、本体部1aの内部に収納されて設けられてもよい。
【0024】
第1温度制御弁HV1は、周囲温度に応じて開閉する弁であって、液冷媒流路R2に対して設けられている。図3は、図1に示した第1温度制御弁HV1の詳細を示す構成図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は側面図を示している。なお、図3(b)においては図示の関係上、図3(a)よりも板材を厚くして図示するものとする。
【0025】
図3(a)及び図3(b)に示すように、第1温度制御弁HV1は、例えば液冷媒流路R2の始端部S(上流端)を開閉可能に設けられたものであって、2枚のベース材HB1,HB2と、温度磁石TMと、動作板HMPとを備えている。
【0026】
2枚のベース材HB1,HB2は、角度θを有して回転離間状態とされた板材である。このうち、第1ベース材HB1は、液冷媒流路R2の径相当の大きさの開口部O2が形成され、開口部O2が液冷媒流路R2の始端部Sに接続された状態となっている。第2ベース材HB2は、開口を有しない板材である。なお、第2ベース材HB2は開口等を有していてもよい。
【0027】
温度磁石TMは、第2ベース材HB2上に設けられており、永久磁石TM1と、感温性フェライトTM2と、軟鉄ヨークTM3とを備えて構成されている。感温性フェライトTM2は、キュリー温度(特定温度(例えば40℃))以上で非磁性体となり、キュリー温度未満で磁性体となるものである。この感温性フェライトTM2は、永久磁石TM1と軟鉄ヨークTM3との間に介在している。このため、温度磁石TMは、特定温度未満となると周囲に磁力を作用させ、特定温度以上となると周囲に磁力を作用させないこととなる。
【0028】
動作板HMPは、基本状態において第1ベース材B1に接触して液冷媒流路R2の始端部Sを塞いだ状態となる磁性体の板材である。ここで、日中では凝縮器20内の温度が40℃以上に維持されることから、温度磁石TMは磁力を作用させない。このため、動作板HMPは第1ベース材HB1に接触して液冷媒流路R2を閉塞状態とする。一方、夜間では凝縮器20内の温度が40℃未満に低下することから、温度磁石TMは磁力を周囲に作用させる。このため、磁性体よりなる動作板HMPは第1ベース材HB1から離間して液冷媒流路R2を開放状態とする。
【0029】
第2逆止弁(第1蒸気冷媒逆止弁)V2は、液冷媒流路R2に設けられ、蒸発器30から凝縮器20への蒸気冷媒の逆流を防止するものである(図1(b)参照)。この第2逆止弁V2は、第1逆止弁V1と同様であって、液冷媒流路R2の終端部を開閉可能に設けられており、2枚のベース材と動作板とを有し、圧力差によって開閉を行う構成とされている。
【0030】
蒸発器30は、太陽光に晒されない側(室内側)となる他面側に設けられ、凝縮器20からの液冷媒を蒸発させることで、パネル他面側から蒸発熱を奪って冷却効果を作用させるものである。この蒸発器30内は、例えば真空状態とされており、液冷媒が常温であっても蒸発可能とされている。このため、凝縮器20からの液冷媒は蒸発器30において蒸発することとなり、他面側を冷却することとなる。
【0031】
第2蒸気冷媒流路(蒸気冷媒流路)R3は、蒸発器30と再生吸収器10とを接続する流路である。図1に示す例において第2蒸気冷媒流路R3はパネル状の本体部1aから外部にむき出しとなるようにして設けられているが、これに限らず、本体部1aの内部に収納されて設けられてもよい。
【0032】
第2温度制御弁HV2は、周囲温度に応じて開閉する弁であって、第2蒸気冷媒流路R3に設けられている。第2温度制御弁HV2は、第1温度制御弁HV1と同様であって、例えば第2蒸気冷媒流路R3の始端部を開閉可能に設けられ、2枚のベース材と、温度磁石と、動作板とを備えている。2枚のベース材、温度磁石、及び動作板についても第1温度制御弁HV1と同様であるが、感温性フェライトのキュリー温度と永久磁石、感温性フェライト、軟鉄ヨークの組み合わせ方が異なっている。すなわち、第2温度制御弁HV2において感温性フェライトのキュリー温度は23℃(規定温度)程度とされており、第2温度制御弁HV2は、周囲温度が23℃以上で第2蒸気冷媒流路R3を開放状態とし、周囲温度が23℃未満で第2蒸気冷媒流路R3を閉塞状態とする。
【0033】
第3逆止弁(第2蒸気冷媒逆止弁)V3は、第2蒸気冷媒流路R3に設けられ、再生吸収器10から蒸発器30への蒸気冷媒の逆流を防止するものである。この第3逆止弁V3は、第1逆止弁V1と同様であって、第2蒸気冷媒流路R3の終端部を開閉可能に設けられており、2枚のベース材と動作板とを有し、圧力差によって開閉を行う構成とされている。
【0034】
なお、上記では管状の流路R1~R3を想定して説明したが、流路R1~R3のいずれか1つ以上は管状でなくともよく、単に蒸気冷媒や液冷媒の通り道を確保したものであってもよい。
【0035】
潜熱蓄熱材40は、特定温度範囲(例えば23℃付近)に相変化温度(融点及び凝固点)を有するものである。本実施形態において潜熱蓄熱材40は、蒸発器30よりもパネル他面側に設けられている。このため、例えば空調パネル1が建築材として用いられる場合、室内温度が特定温度範囲以上であれば、室内は潜熱蓄熱材40によって冷却されることとなり、蒸発器30は潜熱蓄熱材40の熱を奪って固化させるものとして機能することとなる。
【0036】
断熱カバー50は、第1部位P1を覆う光透過性の膜材であって、例えばETFE(Ethylene Tetra Fluoro Ethylene)膜が該当する。この断熱カバー50が設けられることによって、第1部位P1は高熱状態を維持し易くなり、再生吸収器10による再生を効率良く行うことができることとなる。
【0037】
次に、本実施形態に係る空調パネル1の日中から夕方の動作を説明する。
【0038】
まず、日中において空調パネル1のパネル一面側が太陽光に晒されているものとする。本実施形態において再生吸収器10に対応する第1部位P1には黒色ホーローが施され、日射吸収率が80%以上とされている。加えて、第1部位P1には、断熱カバー50が設けられていることから、再生吸収器10は例えば100℃以上に加熱され、再生吸収器10内の吸収液や吸着剤は蒸気冷媒を放出する。蒸気冷媒の放出により再生吸収器10内の圧力が高まり、再生吸収器10と凝縮器20との間に圧力差が発生する。圧力差が発生すると、第1蒸気冷媒流路R1に設けられた第1逆止弁V1が開放状態となり、蒸気冷媒は第1蒸気冷媒流路R1を通過して凝縮器20に至る。
【0039】
凝縮器20は、日中において空調パネル1のパネル一面側が太陽光に晒されていていたとしても、第2部位P2には白色ホーローが施されて日射反射率が80%以上かつ遠赤外線放射率80%以上とされている。このため、凝縮器20内は40℃~50℃程度に維持される。よって、再生吸収器10からの蒸気冷媒は凝縮器20において液化して液冷媒とされる。
【0040】
ここで、日中においては凝縮器20内が40℃未満とならないことから、第1温度制御弁HV1は閉塞状態を維持する。このため、液冷媒は蒸発器30には向かうことなく凝縮器20内に溜まっていくこととなる。また、日中においては、再生吸収器10において再生が行われていることから、再生吸収器10内の圧力が高く第3逆止弁V3は閉じており、蒸発器30は機能しない状態となる。
【0041】
以上のように、日中においては再生吸収器10において再生が行われ、凝縮器20内に液冷媒が溜まっていくこととなる。なお、日中において室温が23℃以上になっているとすると、潜熱蓄熱材40によって室内が冷却されていくこととなる。
【0042】
また、夕方になり、太陽光が差さなくなると吸収再生器10での再生が止まり、高温の蒸気冷媒が凝縮器20に流入しなくなる。これにより、凝縮器20の温度が下がる。凝縮器20の温度が40℃まで下がると液冷媒流路R2の第1温度制御弁HV1が開く。また、この時点においては、蒸発器30の温度の方が低いので圧力も低い。よって第2逆止弁V2も開き、液冷媒が蒸発器30に移動する。
【0043】
次に、本実施形態に係る空調パネル1の夜間の動作を説明する。
【0044】
まず、蒸発器30内は真空状態とされている。このため、夜間においては蒸発器30内の液冷媒が蒸発する。ここで、夜間において潜熱蓄熱材40が溶解状態となっているとすると、第2温度制御弁HV2は開放状態となる。また、夜間においてはパネル一面側が太陽光に晒されないことから、再生吸収器10における蒸発がなく、再生吸収器10よりも蒸発器30の方が圧力が高い状態にある。よって、第3逆止弁V3も開放状態となり、蒸発器30にて発生した蒸気冷媒は再生吸収器10に至る。
【0045】
再生吸収器10に至った蒸気冷媒は、再生吸収器10内の吸収液又は吸着剤に吸収・吸着される。ここで、第1部位P1には黒色ホーローが施され、遠赤外線放射率が80%以上とされている。このため、吸収・吸着熱は、好適に放出されることとなる。
【0046】
特に夜間においては蒸発器30における蒸発によって潜熱蓄熱材40が冷却されることとなる。このため、潜熱蓄熱材40は日中に溶解状態となっていたとしても再度凝固状態に至り、室内側への冷却効果を回復することとなる。
【0047】
なお、夜間においては蒸発器30による蒸発によって蒸発器30の圧力が凝縮器20よりも高い状態にある。このため、第2逆止弁V2は閉塞状態となっており、蒸発器30から凝縮器20への蒸気冷媒の逆流が防止されることとなる。
【0048】
特に、潜熱蓄熱材40から液体である液冷媒への熱伝導は、室内空気から潜熱蓄熱材40への熱伝導に比べると非常に速い。このため、室内を数日冷却可能な量の潜熱蓄熱材40が空調パネル1に搭載されていたとしても、夜間に数時間だけ蒸発器30における蒸発が行われれば、潜熱蓄熱材40は略全てが固体に戻ることとなる。
【0049】
このようにして、本実施形態に係る空調パネル1によれば、蒸気冷媒を吸収・吸着する吸収液又は吸着剤を有し、太陽光に晒されることで蒸気冷媒を放出する再生吸収器10を備えるため、太陽光に晒されることで再生を行うと共に、太陽光に晒されていないときには吸収・吸着を行うことができ、再生器と吸収器とを別々に設けることなく、限られた面積を有効活用することができる。また、再生吸収器10と凝縮器20とは太陽光に晒される側となるパネル一面側に形成され、蒸発器30はパネル一面とは反対面となるパネル他面側に形成されるため、蒸発器30の面積が凝縮器20の存在によって小さくなってしまうこと、及び、凝縮熱の破棄による空調効果の低減を防止することができる。また、再生吸収器10と凝縮器20とが太陽光に晒される側となるパネル一面側に形成されるものの、再生吸収器10に対応する第1部位P1には日射吸収率80%以上であって遠赤外線放射率が80%以上となる処理が施され、凝縮器20に対応する第2部位P2には日射反射率80%以上となる処理が施されていることから、再生吸収器10における再生及び吸収を行うと共に、凝縮器20における凝縮効率の低下を抑えた構成とすることができる。従って、面積の取り合いによる問題の解消を図ると共に、より充分な性能を発揮することができる。
【0050】
また、第1部位P1には、黒色ホーローが形成されているため、日射吸収率80%以上と遠赤外線放射率が80%以上とをホーロー加工によって実現することができる。
【0051】
また、第2部位P2には、白色ホーローが形成されているため、日射反射率80%以上をホーロー加工によって実現することができる。
【0052】
特に、第1部位P1と第2部位P2の双方に対して黒色と白色とのホーロー釉薬を塗布した後、同時焼成によって双方を形成することができ、製造工程の簡略化にも寄与することができる。
【0053】
また、蒸発器30から凝縮器20に向かう蒸気冷媒の逆流を防止する第2逆止弁V2を備えるため、夜間において蒸発器30にて生じた蒸気冷媒が凝縮器20に戻ってしまうことを防止して再生吸収器10に適切に蒸気冷媒を送りこむことができる。従って、適切な空調動作を行うことに寄与することができる。
【0054】
また、再生吸収器10から蒸発器30に向かう蒸気冷媒の逆流を防止する第3逆止弁V3を備えるため、昼間の日光に晒される時間帯において再生吸収器10にて生じた蒸気冷媒が蒸発器30に向かうことを防止して凝縮器20に適切に蒸気冷媒を送りこむことができる。従って、適切な空調動作を行うことに寄与することができる。
【0055】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0056】
例えば、上記実施形態においては潜熱蓄熱材40を備えているが、特にこれに限らず、夜間のみに冷房効果を得たい場合には潜熱蓄熱材40を備えていなくともよい。
【0057】
また、本実施形態においては温度磁石TMを利用した第1及び第2温度制御弁HV1,HV2を備えているが、これに限らず、温度センサと制御部とをさらに備え、第1及び第2温度制御弁HV1,HV2は、温度センサにより検出された温度に応じて制御部によって開閉されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 :空調パネル
1a :本体部
10 :再生吸収器
20 :凝縮器
30 :蒸発器
40 :潜熱蓄熱材
50 :断熱カバー
B1 :第1ベース材
O1 :開口部
B2 :第2ベース材
MP :動作板
HB1 :第1ベース材
O2 :開口部
HB2 :第2ベース材
HMP :動作板
HV1 :第1温度制御弁
HV2 :第2温度制御弁
P1 :第1部位
P2 :第2部位
R1 :第1蒸気冷媒流路
R2 :液冷媒流路
R3 :第2蒸気冷媒流路(蒸気冷媒流路)
S :始端部
E :終端部
TM :温度磁石
TM1 :永久磁石
TM2 :感温性フェライト
TM3 :軟鉄ヨーク
V1 :第1逆止弁
V2 :第2逆止弁(第1蒸気冷媒逆止弁)
V3 :第3逆止弁(第2蒸気冷媒逆止弁)
図1
図2
図3