IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サンキョー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-アクチュエータ 図1
  • 特開-アクチュエータ 図2
  • 特開-アクチュエータ 図3
  • 特開-アクチュエータ 図4
  • 特開-アクチュエータ 図5
  • 特開-アクチュエータ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170144
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076063
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】羽多野 慎司
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA02
5D107BB08
5D107CC09
5D107DD01
5D107DD03
(57)【要約】
【課題】撃力を体感させることが可能なアクチュエータを提供する。
【解決手段】アクチュエータ1は、可動体5と、可動体5を収容するケース2およびコイルホルダ11を備える支持体3と、可動体5および支持体3に接続される接続体6、7と、コイル10およびコイル10にZ方向で対向する磁石21、22を備え、可動体5を支持体3に対してX方向に振動させる磁気駆動回路8と、ケース2に固定され、可動体5とX方向に対向する緩衝材9と、を有する。磁気駆動回路8を第1電圧で駆動すると、可動体5は緩衝材9に衝突せずに振動する。磁気駆動回路8を第1電圧よりも大きい第2電圧で駆動すると、可動体は緩衝材9を介してケース2に衝突し、撃力が発生する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動体と、
前記可動体を収容するケースを備える支持体と、
前記可動体および前記支持体に接続される接続体と、
コイルおよび前記コイルに第1方向で対向する磁石を備え、前記可動体を前記支持体に対して前記第1方向に交差する第2方向に振動させる磁気駆動回路と、
前記ケースおよび前記可動体の一方に固定され、前記ケースおよび前記可動体の他方と前記第2方向に対向する緩衝材と、を有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記ケースは、金属からなることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記磁気駆動回路の駆動電圧が、連続駆動可能な第1電圧である場合には、前記可動体の前記第2方向の振幅は、第1振幅であり、
前記磁気駆動回路の駆動電圧が、連続駆動すると前記コイルが焼損する第2電圧である場合には、前記可動体の前記第2方向の振幅は、第2振幅であり、
前記可動体と前記緩衝材との隙間は、前記第1振幅よりも大きく、且つ、前記第2振幅よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記支持体は、前記コイルを保持するコイルホルダを備え、前記コイルホルダは、コイル配置穴が設けられた板部を備え、
前記可動体は、前記磁石を保持するヨークを備え、
前記ヨークは、前記板部に対して前記第1方向の一方側から対向する第1平板部、前記板部に対して前記第1方向の他方側から対向する第2平板部、および、前記板部の前記第2方向の両側に配置される一対の接続板部を備え、
前記ケースは、前記ヨークの前記第2方向の両側に配置される一対の側板部を備え、
前記緩衝材は、前記一対の側板部のそれぞれに固定されることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記コイルホルダは、樹脂からなり、
前記コイルホルダと前記ヨークとの前記第2方向の隙間は、前記側板部と前記接続板部との前記第2方向の隙間よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記緩衝材は、ゴムまたは発泡体からなることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を振動させるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁石とコイルの一方を備えた可動体と、磁石とコイルの他方を備えた支持体とを備え、コイルに駆動電流を流すことにより、可動体を支持体に対して振動させるアクチュエータが開示される。この種のアクチュエータは、支持体と可動体とを接続する接続体として弾性体や粘弾性体を用いる。可動体を振動させると、接続体を介して可動体の振動に対応する反力が支持体に加わる。その結果、支持体に触れたユーザは振動を体感することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-102901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、可動体を振動させるアクチュエータは、可動体が振動するとき、可動体が支持体に対して衝突しないように構成されている。このような構成では、物が当たるような感触(以下、撃力という)をユーザに体感させることが難しい。
【0005】
本発明の課題は、以上の問題点に鑑みて、撃力を体感させることが可能なアクチュエータを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のアクチュエータは、可動体と、前記可動体を収容するケースを備える支持体と、前記可動体および前記支持体に接続される接続体と、コイルおよび前記コイルに第1方向で対向する磁石を備え、前記可動体を前記支持体に対して前記第1方向に交差する第2方向に振動させる磁気駆動回路と、前記ケースおよび前記可動体の一方に固定され、前記ケースおよび前記可動体の他方と前記第2方向に対向する緩衝材と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、可動体と支持体とが可動体の振動方向である第2方向で対向する位置に緩衝材が配置される。このような構成では、磁気駆動回路を大きな電圧で駆動すると、可動体が急激に大きく動き、大きな加速度で緩衝材に衝突する。従って、緩衝材を介して支持体に衝撃が加わるので、ユーザに撃力(物体が当たった感触)を体感させることができる。また、可動体は支持体に直接衝突しないので、撃力を発生させることによる支持体の変形や損傷を抑制できる。
【0008】
本発明において、前記ケースは、金属からなることが好ましい。このようにすると、ケースの強度が高いため、撃力を発生させることによるケースの変形や破損を抑制できる。
【0009】
本発明において、前記磁気駆動回路の駆動電圧が、連続駆動可能な第1電圧である場合には、前記可動体の前記第2方向の振幅は、第1振幅であり、前記磁気駆動回路の駆動電圧が、連続駆動すると前記コイルが焼損する第2電圧である場合には、前記可動体の前記第2方向の振幅は、第2振幅であり、前記可動体と前記緩衝材との隙間は、前記第1振幅よりも大きく、且つ、前記第2振幅よりも小さいことが好ましい。このようにすると、可
動体を緩衝材に衝突させずに連続して振動させること、および、可動体を瞬間的に駆動して撃力を発生させることの2種類の動作を行うことができる。
【0010】
本発明において、前記支持体は、前記コイルを保持するコイルホルダを備え、前記コイルホルダは、コイル配置穴が設けられた板部を備え、前記可動体は、前記磁石を保持するヨークを備え、前記ヨークは、前記板部に対して前記第1方向の一方側から対向する第1平板部、前記板部に対して前記第1方向の他方側から対向する第2平板部、および、前記板部の前記第2方向の両側に配置される一対の接続板部を備え、前記ケースは、前記ヨークの前記第2方向の両側に配置される一対の側板部を備え、前記緩衝材は、前記一対の側板部のそれぞれに固定されることが好ましい。このようにすると、可動体が第2方向の一方側および他方側のいずれの方向に動くときも、可動体が緩衝材を介して支持体に衝突する。従って、撃力を発生させることができる。
【0011】
本発明において、前記コイルホルダは、樹脂からなり、前記コイルホルダと前記ヨークとの前記第2方向の隙間は、前記側板部と前記接続板部との前記第2方向の隙間よりも大きい。このようにすると、可動体を第2方向に大きく移動させたときに、可動体は、コイルホルダに衝突するよりも先に緩衝材を介して側板部に衝突する。従って、樹脂で形成したコイルホルダが可動体との衝突によって変形あるいは破損することを防止できる。
【0012】
本発明において、前記緩衝材は、ゴムまたは発泡体からなることが好ましい。可動体が衝突する面にゴムや発泡体などの弾性体を配置することにより、衝突箇所の破損や変形を抑制できる。また、弾性体の弾性復帰力により、可動体の加速度を減衰させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可動体と支持体とが可動体の振動方向である第2方向で対向する位置に緩衝材が配置されるため、磁気駆動回路を大きな電圧で駆動すると、可動体が急激に大きく動き、大きな加速度で緩衝材に衝突する。従って、緩衝材を介して支持体に衝撃が加わるので、ユーザに撃力(物体が当たった感触)を体感させることができる。また、可動体は支持体に直接衝突しないので、撃力を発生させることによる支持体の変形や損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用したアクチュエータの斜視図である。
図2】アクチュエータを長手方向に切断した場合の断面図である。
図3】アクチュエータを長手方向と交差する方向に切断した場合の断面図である。
図4】アクチュエータの分解斜視図である。
図5】ケースを取り外したアクチュエータの分解斜視図である。
図6】ケースを取り外した支持体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したアクチュエータの実施の形態を説明する。
【0016】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したアクチュエータ1の斜視図である。図2は、アクチュエータ1を長手方向に切断した場合の断面図である。図3は、アクチュエータ1を長手方向と交差する方向に切断した場合の断面図である。図4は、アクチュエータ1の分解斜視図である。図5は、ケース2を取り外したアクチュエータ1の分解斜視図である。図6は、ケース2を取り外した支持体3の分解斜視図である。
【0017】
アクチュエータ1は、振動によって情報を伝達する触覚デバイスとして用いられる。図1に示すように、アクチュエータ1は、直方体形状の外観を備える。アクチュエータ1は、その外観の短手方向に振動を発生させる。以下の説明では、振動が発生する短手方向をX方向(第2方向)、アクチュエータ1の長手方向であってX方向と直交する方向をY方向とする。また、以下の説明では、アクチュエータ1の厚み方向であって、X方向およびY方向と直交する方向をZ方向(第1方向)とする。X方向、Y方向、およびZ方向は互いに直交する。また、X方向の一方をX1方向、他方をX2方向とする。Y方向の一方をY1方向、他方をY2方向とする。Z方向の一方をZ1方向、他方とZ2方向とする。
【0018】
図2図3に示すように、アクチュエータ1は、外形を規定するケース2を備える支持体3と、ケース2の内部に収容される可動体5と、を有する。また、アクチュエータ1は、支持体3と可動体5とを接続する接続体6および接続体7と、可動体5を支持体3に対してX方向に相対移動させる磁気駆動回路8と、を備える。
【0019】
支持体3は、コイル10と、コイル10を保持する樹脂製のコイルホルダ11と、コイルホルダ11のZ1方向に重ねられた第1プレート12と、コイルホルダ11のZ2方向に重ねられた第2プレート13と、を備える。コイル10は、コイル線を長円状に巻回した巻回部55、並びに、巻回部55の外周側からY1方向に引き出された第1引き出し部56および第2引き出し部57を有する。コイル10は、その厚み方向をZ方向に向けている。図2図3に示すように、コイル10の巻回部55は、ケース2のZ方向の中央に位置する。
【0020】
また、支持体3は、図1図2図5に示すように、コイルホルダ11のY1方向の端面に保持された給電基板14を備える。コイル10の第1引き出し部56および第2引き出し部57は、給電基板14の表面に設けられた配線パターン15の第1ランド15aおよび第2ランド15bに接続される。コイル10には、給電基板14を介して、電力が供給される。
【0021】
可動体5は、磁石16およびヨーク17を備える。磁石16は、コイル10の巻回部55とZ方向で対向する。コイル10と磁石16とは、磁気駆動回路8を構成する。図2図4に示すように、接続体6および接続体7は、それぞれ直方体形状の部材である。接続体6および接続体7は、それぞれ、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備える。
【0022】
(可動体)
図2図3図5に示すように、可動体5は、磁石16として、第1磁石21および第2磁石22を備える。第1磁石21は、コイル10のZ1方向に位置する。第2磁石22は、コイル10のZ2方向に位置する。第1磁石21および第2磁石22は、X方向で2つに分極されている。
【0023】
ヨーク17は磁性材料からなる。図3図4に示すように、ヨーク17は、第1ヨーク23および第2ヨーク24の2部材を組み立てて構成される。図5に示すように、第1ヨーク23は、Y方向に長い第1平板部25と、第1平板部25のY方向の両端縁において、Y方向の中央部分からX方向の外側に向かってZ2方向に湾曲して、Z2方向に延びる一対の接続板部26と、を備える。第1磁石21は、第1平板部25のZ2方向の面に保持される。第2ヨーク24は、第1平板部25とZ方向で対向する第2平板部27と、第2平板部27のY方向の中間部分からX1方向および他方側X2へ張り出した一対の張り出し部28を備える。第2磁石22は、第2平板部27のZ1方向の面に保持される。第2ヨーク24の一対の張り出し部28には、一対の接続板部26のZ2方向の先端部分が溶接等の方法で接合される。これにより、第1ヨーク23と第2ヨーク24とは一体とされて、ヨーク17を構成する。
【0024】
(支持体)
図1図3図4に示すように、ケース2は、Z方向に重ねられた第1ケース部材31および第2ケース部材32を備える。第1ケース部材31は、Z1方向からコイルホルダ11に取り付けられている。第2ケース部材32は、Z2方向からコイルホルダ11に取り付けられている。図4に示すように、第1ケース部材31は、長方形形状の第1板部33と、第1板部33のY1方向の端部分のX方向の両端縁、および第1板部33のY2方向の端部分のX方向の両端縁からZ1方向に延びる4つの側板部34と、を備える。4つの側板部34は、コイルホルダ11のX方向の両側に位置する。
【0025】
第2ケース部材32は、長方形形状の第2板部35と、第2板部35のX方向の両端縁からZ2方向に延びる一対の側板部36と、を備える。一対の側板部36は、コイルホルダ11のX方向の両側に位置する。一対の側板部36は、コイルホルダ11のX方向の両側の側面に形成される係止凸部11aが嵌まる係止孔37を備える。
【0026】
図6に示すように、コイルホルダ11は、Y方向に延びる板部40を備える。板部40の中央にはコイル配置穴41が設けられている。コイル配置穴41は、Y方向に長い長円状の貫通穴である。コイル配置穴41には、コイル10の巻回部55が収容される。また、コイルホルダ11は、板部40のX方向の両側の端縁におけるY方向の中央部分を内側へ切り欠いた切欠き部42、43を備える。
【0027】
また、コイルホルダ11は、切欠き部42、43のY1方向において、板部40のX1方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部44と、板部40のX2方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部45と、を備える。さらに、コイルホルダ11は、板部40のY1方向の端部分に設けられた基板支持部50を備える。
【0028】
さらに、コイルホルダ11は、切欠き部42、43のY2方向において、板部40のX1方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部47と、板部40のX2方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部48と、板部40のY2方向の端縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部49を備える。側板部49は、側板部47のY2方向の端と、側板部48のY2方向の端とを接続する。
【0029】
図6に示すように、給電基板14は、Y方向から見た場合にX方向に長い長方形形状の配線接続部70と、配線接続部70におけるX方向の両端部分からZ1方向に突出する一対の脚部71と、を備える。配線接続部70には、第1ランド15aおよび第2ランド15bを備える配線パターン15が形成される。図5に示すように、給電基板14は、第1ランド15aおよび第2ランド15bが形成された面をY1方向に向けた姿勢で基板支持部50に支持される。
【0030】
図6に示すように、基板支持部50は、X方向で対向する一対のスリット51、52を備える。また、基板支持部50は、板部40のY1方向の端部分のX方向の中央部分に設けられた突部81と、突部81のX方向の両側に設けられた一対の切欠き凹部80と、各切欠き凹部80のZ1方向の内壁面に設けられた基板挿入孔83と、を備える。
【0031】
図5に示すように、給電基板14は、X方向の両端縁のそれぞれが各スリット51、52にZ2方向から挿入されて基板支持部50に支持される。このとき、板部40において一対の切欠き凹部80の間に設けられた突部81は、給電基板14の一対の脚部71の間に圧入されるとともに、一対の基板挿入孔83に、給電基板14の各脚部71の先端部分が挿入される。
【0032】
また、コイルホルダ11は、板部40のZ2方向の面に、コイル配置穴41から基板支持部50に向かって延びる案内溝53を備える。図6に示すように、案内溝53は、コイル配置穴41に連通する共通溝部分93と、共通溝部分93のX方向の両端からY1方向に延びる溝部分91、92を備える。コイル10の巻回部55からY1方向に引き出された第1引き出し部56および第2引き出し部57は、案内溝53を引き回されて、給電基板14に接続される。図4に示すように、第1引き出し部56および第2引き出し部57は、共通溝部分93において傾斜した方向に引き出され、案内溝53の溝部分91、92に設けられた凹部85a、85bにおいてZ2方向へ曲げられた後、給電基板14の表面に沿ってZ2方向へ延びて、第1ランド15aおよび第2ランド15bに接続される。
【0033】
第1プレート12および第2プレート13は、非磁性材料からなる。図6に示すように、第1プレート12は、板部40をZ1方向から覆う長方形の第1平面部61と、第1平面部61のX方向の両側からX方向の外側に向かってZ1方向に斜めに突出した複数の第1爪部62と、を有する。第1プレート12がコイルホルダ11の板部40にZ1方向から接触したときに、第1爪部62は、側板部44、側板部45、側板部47、側板部48に弾性をもって当接した状態となる。
【0034】
第2プレート13は、板部40をZ2方向から覆う長方形形状に第2平面部63と、第2平面部63のX方向の両側からX方向の外側に向かってZ2方向に斜めに突出した複数の第2爪部64を有する。第2プレート13がコイルホルダ11の板部40にZ2方向から接触したときに、第2爪部64は、側板部44、側板部45、側板部47、側板部48に弾性をもって当接した状態となる。
【0035】
コイルホルダ11にコイル10を固定する際には、コイルホルダ11の板部40に第1プレート12をZ1方向から重ねる。これにより、第1プレート12は、コイル配置穴41をZ1方向から塞いだ状態で、コイルホルダ11に支持される。次に、コイル10の巻回部55をコイル配置穴41に配置し、巻回部55の中心穴10aに接着剤を充填する。その後、コイルホルダ11の板部40に第2プレート13をZ2方向から重ねて、コイルホルダ11に支持させる。第1プレート12および第2プレート13は、接着剤が硬化した接着剤層59により、コイルホルダ11の板部40に固定される。また、接着剤は、コイル配置穴41の内壁面と巻回部55との間に流入して硬化する。これにより、巻回部55がコイル配置穴41の内壁面に固定される。
【0036】
図6に示すように、第1プレート12は、第1平面部61のX方向の両側の端縁におけるY方向の中央部分を内側へ切り欠いた一対の切欠き部65を備えており、各切欠き部65のY方向の両側にそれぞれ第1爪部62が設けられている。また、第1プレート12は、一対の切欠き部65のX方向の内周縁からZ2方向へ屈曲した一対の屈曲板部66を備える。図3に示すように、一対の屈曲板部66は、コイルホルダ11の板部40のX方向の両側の端面を覆う。
【0037】
同様に、第2プレート13は、第2平面部63のX方向の両側の端縁におけるY方向の中央部分を内側へ切り欠いた一対の切欠き部67を備えており、各切欠き部67のY方向の両側にそれぞれ第2爪部64が設けられている。また、第2プレート13は、一対の切欠き部67のX方向の内周縁からZ2方向へ屈曲した一対の屈曲板部68を備える。図3に示すように、一対の屈曲板部68は、コイルホルダ11の板部40のX方向の両側の端面を覆う。
【0038】
(接続体)
図2に示すように、接続体6は、第1ヨーク23と第1プレート12との間に配置される。より詳細には、接続体6は、同一形状の2部材からなり、第1ヨーク23のY1方向
の端部分と第1プレート12とのY1方向の端部分との間、および、第1ヨーク23のY2方向の端部分と第1プレート12のY2方向の端部分との間の2か所に挟まれている。本形態では、接続体6は、X方向に長く延びる直方体形状であり、図5に示す接続体7と同一形状である。
【0039】
接続体7は、第2ヨーク24と第2プレート13との間に配置される。より詳細には、接続体7は、同一形状の2部材からなり、第2ヨーク24のY1方向の端部分と第2プレート13とのY1方向の端部分との間、および、第2ヨーク24のY2方向の端部分と第2プレート13とのY2方向の端部分との間の2か所に挟まれている。接続体6、接続体7は、支持体3と可動体5との間でZ方向に圧縮されている。
【0040】
接続体6、7は、シリコーンゲルからなるゲル状部材である。シリコーンゲルは、伸縮方向に変形する際のばね定数が、せん断方向に変形する際のばね定数の3倍程度になる粘弾性体である。粘弾性体は、厚さ方向と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分よりも線形の成分が大きい変形特性を備える。また、厚さ方向に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分よりも非線形の成分が大きい伸縮特性を備える一方、厚さ方向に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分よりも線形の成分が大きい伸縮特性を備える。
【0041】
あるいは、接続体6、7として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いてもよい。
【0042】
(緩衝材)
図3に示すように、可動体5が、接続体6、7を介して支持体3に支持された状態では、ヨーク17の一対の接続板部26が、コイルホルダ11の切欠き部42、43(図6参照)の内側に位置する。図3図4に示すように、一対の接続板部26は、可動体5のX方向の側面を構成する。ここで、支持体3において、第2ケース部材32は、ヨーク17のX方向の両側に配置される一対の側板部36を備えており、一対の側板部36のそれぞれは、ヨーク17のX方向の側面を構成する接続板部26とX方向に対向する。
【0043】
図3図4に示すように、一対の側板部36のそれぞれには、緩衝材9が固定される。図3に示すように、X1方向の側板部36に固定される緩衝材9は、ヨーク17のX1方向の側面を構成する接続板部26とX方向(第2方向)に対向する。また、X2方向の側板部36に固定される緩衝材9は、ヨーク17のX2方向の側面を構成する接続板部26とX方向(第2方向)に対向する。緩衝材9は長方形であり、X方向の厚さが一定である。
【0044】
緩衝材9はゴムなどの弾性材あるいは粘弾性材からなる。あるいは、緩衝材9として発泡ウレタンフォーム、スポンジ等の発泡体からなる弾性材を用いてもよい。例えば、緩衝材9としてポロン(登録商標)を用いることができる。
【0045】
(アクチュエータの動作)
可動体5が、接続体6、7を介して支持体3に支持された状態では、コイルホルダ11の板部40に保持されるコイル10の巻回部55は、図3に示すように、Z1方向で第1プレート12を介して第1磁石21に対向し、Z2方向で第2プレート13を介して第2磁石22に対向する。これにより、磁気駆動回路8が構成される。
【0046】
給電基板14を介してコイル10に所定方向の電流が供給されると、支持体3に支持された可動体5は、磁気駆動回路8の駆動力により、支持体3に対してX方向の一方に相対移動する。その後、電流の向きが反転すると、可動体5は、支持体3に対してX方向の他方に相対移動する。コイル10に供給される電流の向きの反転が繰り返されることにより、可動体5は振動する。
【0047】
磁気駆動回路8の駆動電圧は、図示しない制御装置によって制御される。制御装置は、第1駆動モードと、第2駆動モードの2種類の駆動モードで磁気駆動回路8を駆動する。第1駆動モードでは、コイル10に流れる電流の向きを所定の周期で交互に反転させる駆動波形でコイル10に通電する。第1駆動モードの駆動電圧は、連続通電した場合でもコイル10が焼損しない第1電圧である。第1駆動モードにおける可動体5の振幅を第1振幅W1とすると、第1振幅W1は、ケース2の側板部36に固定される緩衝材9とヨーク17の接続板部26とのX方向の隙間S1(図3参照)よりも小さい。従って、可動体5は、緩衝材9に衝突せずに連続して振動する。
【0048】
一方、第2駆動モードでは、単発の駆動波形を用いて、第1電圧よりも高い第2電圧でコイル10に短時間通電する。第2電圧は、長時間通電を続けるとコイル10が加熱して焼損する電圧である。第2駆動モードの駆動波形でコイル10に通電したときの可動体5のX方向の移動量(振幅)を第2振幅W2とすると、第2振幅W2は、第1振幅W1よりも大きく、且つ、側板部36と接続板部26とのX方向の隙間S2(図3参照)よりも大きい。このため、第2駆動モードでは、緩衝材9に可動体5が衝突して緩衝材9が圧縮変形し、緩衝材9を介して側板部36に可動体5が衝突する。これにより、ユーザに撃力(物体が当たった感触)を体感させることができる。
【0049】
ここで、第2振幅W2は、緩衝材9と接続板部26との隙間S1よりも大きく、且つ、側板部36と接続板部26との隙間S2よりも小さい寸法であってもよい。このような振幅でも、緩衝材9を介して所定の衝撃が側板部36に加わる。従って、ユーザに撃力(物体が当たった感触)を体感させることができる。
【0050】
本形態では、ヨーク17は、樹脂製のコイルホルダ11とX方向に対向しており、ヨーク17とコイルホルダ11とのX方向の隙間は、側板部36と接続板部26とのX方向の隙間S2よりも大きい。従って、上記のように、アクチュエータ1を第2駆動モードで駆動したとき、ヨーク17がコイルホルダ11に衝突するよりも先に、接続板部26が緩衝材9を介して側板部36に衝突して撃力を発生させる。
【0051】
すなわち、ヨーク17は、第1平板部25のY1側の端部、および、第1平板部25のY1側の端部が、コイルホルダ11の側板部44と側板部45との間に配置される。また、第1平板部25のY2側の端部、および、第2平板部27のY2側の端部が、コイルホルダ11の側板部47と側板部48との間に配置される。従って、コイルホルダ11の側板部44、45、47、48は、第1平板部25および第2平板部27とX方向に対向しているが、これらの対向箇所の隙間は、いずれも側板部36と接続板部26とのX方向の隙間S2よりも大きい。
【0052】
また、図3に示すように、一対の接続板部26のX方向の内側にはコイルホルダ11の板部40が配置されているが、板部40と接続板部26とのX方向の隙間は、側板部36と接続板部26とのX方向の隙間S2よりも大きい。さらに、本形態では、板部40のX方向の両側の端面は、第1プレート12の屈曲板部66および第2プレート13の屈曲板部68によって覆われているが、屈曲板部66、68と接続板部26とのX方向の隙間は、側板部36と接続板部26とのX方向の隙間S2よりも大きい。従って、屈曲板部66、68に接続板部26が衝突するよりも先に、接続板部26が緩衝材9を介して側板部3
6に衝突する。
【0053】
なお、第2振幅W2が側板部36と接続板部26との隙間S2よりも小さい場合には、ヨーク17とコイルホルダ11とのX方向の隙間は、第2振幅W2よりも小さい寸法であればよい。ヨーク17とコイルホルダ11とのX方向の隙間が第2振幅W2よりも小さければ、ヨーク17とコイルホルダ11とが衝突することはない。
【0054】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態のアクチュエータ1は、可動体5と、可動体5を収容するケース2を備える支持体3と、可動体5および支持体3に接続される接続体6、7と、コイル10およびコイル10にZ方向(第1方向)で対向する第1磁石21および第2磁石22を備えるとともに可動体5を支持体3に対してZ方向(第1方向)に交差するX方向(第2方向)に振動させる磁気駆動回路8と、ケース2に固定され、可動体5とX方向(第2方向)に対向する緩衝材9と、を有する。
【0055】
本形態によれば、可動体5と支持体3とが可動体5の振動方向であるX方向(第2方向)で対向する位置に緩衝材9が配置される。従って、磁気駆動回路8を大きな電圧で駆動し、可動体5を急激に大きく動かして大きな加速度で緩衝材9に衝突させ、緩衝材9を介して支持体3に衝撃を加えることができる。従って、ユーザに撃力(物体が当たった感触)を体感させることができる。また、可動体5は支持体3に直接衝突せず、緩衝材9を介して衝突するので、支持体3の変形や損傷を抑制できる。
【0056】
なお、本形態では、ケース2に緩衝材9を固定しているが、可動体5に緩衝材9を固定する構成を採用してもよい。すなわち、本形態では、ケース2の側板部36に緩衝材9を固定しているので、側板部36に緩衝材9を固定する代わりに、側板部36と対向する接続板部26に緩衝材9を固定する構成を採用してもよい。
【0057】
本形態では、ケース2は、金属からなる。従って、ケース2の強度が高いため、撃力を発生させたことによるケース2の変形や破損を抑制できる。
【0058】
本形態では、磁気駆動回路8の駆動電圧が、連続駆動可能な第1電圧である場合(第1駆動モード)は、可動体5のX方向(第2方向)の振幅は、第1振幅W1であり、磁気駆動回路8の駆動電圧が、連続駆動するとコイル10が焼損する第2電圧である場合(第2駆動モード)は、可動体5のX方向(第2方向)の振幅は、第2振幅W2である。そして、可動体5と緩衝材9との隙間S1は、第1振幅W1よりも大きく、且つ、第2振幅W2よりも小さくなるように、各電圧が設定されている。従って、第1駆動モードでは、可動体5を支持体3に衝突させずに連続して振動させることができる。また、第2駆動モードでは、可動体5を瞬間的に大きな加速度で駆動して撃力を発生させることができる。
【0059】
本形態では、支持体3は、コイル10を保持するコイルホルダ11を備え、コイルホルダ11は、コイル配置穴41が設けられた板部40を備える。また、可動体5は、第1磁石21および第2磁石22を保持するヨーク17を備え、ヨーク17は、板部40に対してZ1方向(第1方向の一方側)から対向する第1平板部25、板部40に対してZ2方向(第1方向の他方側)から対向する第2平板部27、および、板部40のX方向(第2方向)の両側に配置される一対の接続板部26を備える。そして、ケース2は、ヨーク17のX方向(第2方向)の両側に配置される一対の側板部36を備え、緩衝材9は、一対の側板部36のそれぞれに固定される。従って、可動体5がX方向(第2方向)の一方側および他方側のいずれの方向に動くときも、ヨーク17が緩衝材9を介して側板部36に衝突するので、撃力を発生させることができる。
【0060】
本形態では、コイルホルダ11は、樹脂からなり、コイルホルダ11とヨーク17とのX方向(第2方向)の隙間は、側板部36と接続板部26とのX方向(第2方向)の隙間S2よりも大きい。すなわち、上記のように、側板部44、45、47、47と第1平板部25との隙間、および、側板部44、45、47、47と第2平板部27との隙間は、いずれも側板部36と接続板部26との隙間S2よりも大きい。また、コイルホルダ11の板部40と接続板部26との隙間、および、板部40の端面を覆う屈曲板部66、68と接続板部26との隙間は、いずれも側板部36と接続板部26との隙間S2よりも大きい。従って、可動体5をX方向(第2方向)に大きく移動させたときに、可動体5は、コイルホルダ11に衝突するよりも先に緩衝材9に衝突する。よって、樹脂で形成したコイルホルダ11に可動体5が衝突することを回避できるので、コイルホルダ11の変形や破損を抑制できる。
【0061】
本形態では、緩衝材9は、ゴムまたは発泡体からなる。可動体5が衝突する面にゴムや発泡体などの弾性体を配置することにより、衝突箇所の破損や変形を抑制できる。また、弾性体の弾性復帰力により、可動体5の加速度を減衰させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1…アクチュエータ、2…ケース、3…支持体、5…可動体、6、7…接続体、8…磁気駆動回路、9…緩衝材、10…コイル、10a…中心穴、11…コイルホルダ、11a…係止凸部、12…第1プレート、13…第2プレート、14…給電基板、15…配線パターン、15a…第1ランド、15b…第2ランド、16…磁石、17…ヨーク、21…第1磁石、22…第2磁石、23…第1ヨーク、24…第2ヨーク、25…第1平板部、26…接続板部、27…第2平板部、28…張り出し部、31…第1ケース部材、32…第2ケース部材、33…第1板部、34…側板部、35…第2板部、36…側板部、37…係止孔、40…板部、41…コイル配置穴、42、43…切欠き部、44、45、47、48、49…側板部、50…基板支持部、51、52…スリット、53…案内溝、55…巻回部、56…第1引き出し部、57…第2引き出し部、59…接着剤層、61…第1平面部、62…爪部、63…第2平面部、64…爪部、65…切欠き部、66…屈曲板部、67…切欠き部、68…屈曲板部、70…配線接続部、71…脚部、80…切欠き凹部、81…突部、83…基板挿入孔、85a、85b…凹部、91、92…溝部分、93…共通溝部分、S1…隙間、S2…変形量、W1…第1振幅、W2…第2振幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6