(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170145
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076064
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】北原 裕士
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA02
5D107BB08
5D107CC09
5D107DD01
5D107DD03
(57)【要約】
【課題】大きな加速度で可動体を動かして力覚を体感させることが可能なアクチュエータを提供する。
【解決手段】アクチュエータ1は、可動体5と、可動体5を収容するケース2およびコイルホルダ11を備える支持体3と、可動体5および支持体3に接続される接続体4と、コイル10およびコイル10にZ方向で対向する磁石21、22を備え、可動体5を支持体3に対してX方向に振動させる磁気駆動回路8を有する。接続体4は、可動体5と支持体3とがZ方向(第1方向)に対向する位置に配置される第1接続体6と、可動体5と支持体3とがX方向(第2方向)で対向する位置に配置される第2接続体9を備える。第1接続体6および第2接続体9は、粘弾性体である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
可動体と、
前記可動体および前記支持体に接続される接続体と、
コイルおよび前記コイルに第1方向で対向する磁石を備え、前記可動体を前記支持体に対して前記第1方向に交差する第2方向に振動させる磁気駆動回路と、を有し、
前記接続体は、
前記可動体と前記支持体とが前記第1方向に対向する位置、もしくは、前記可動体と前記支持体とが前記第1方向と交差し且つ前記第2方向と交差する第3方向で対向する位置に配置される第1接続体と、
前記可動体と前記支持体とが前記第2方向で対向する位置に配置される第2接続体と、を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記第1接続体および前記第2接続体は、粘弾性体であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記第1接続体が圧縮方向に変形するときのばね定数と、前記第2接続体が圧縮方向に変形するときのばね定数とが異なることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記第2接続体が圧縮方向に変形するときのばね定数は、前記第1接続体が圧縮方向に変形するときのばね定数よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記磁気駆動回路を駆動するときの駆動波形は、矩形波であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記支持体は、前記可動体および前記磁気駆動回路を収容するケースと、前記コイルを保持するコイルホルダと、を備え、前記コイルホルダは、コイル配置穴が設けられた板部を備え、
前記可動体は、前記磁石を保持するヨークを備え、
前記ヨークは、前記板部に対して前記第1方向の一方側から対向する第1平板部、前記板部に対して前記第1方向の他方側から対向する第2平板部、および、前記板部の前記第2方向の両側に配置される一対の接続板部を備え、
前記ケースは、前記ヨークの前記第2方向の両側に配置される一対の側板部を備え、
前記第2接続体は、前記一対の接続板部の一方と前記一対の側板部の一方との間、および、前記一対の接続板部の他方と前記一対の側板部の他方との間に配置されることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記支持体は、前記板部および前記コイルを前記第1方向の一方側から覆う第1プレート、および、前記板部および前記コイルを前記第1方向の他方側から覆う第2プレートを備え、
前記磁石は、前記第1平板部に固定され前記第1プレートを介して前記コイルに前記第1方向の一方側から対向する第1磁石、および、前記第2平板部に固定され前記第2プレートを介して前記コイルに前記第1方向の他方側から対向する第2磁石を備え、
前記第1接続体は、前記第1平板部と前記第1プレートとを接続する一方側接続体、および、前記第2平板部と前記第2プレートとを接続する他方側接続体を備えることを特徴とする請求項6に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を振動させるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁石とコイルの一方を備えた可動体と、磁石とコイルの他方を備えた支持体とを備え、コイルに駆動電流を流すことにより、可動体を支持体に対して振動させるアクチュエータが開示される。この種のアクチュエータは、支持体と可動体とを接続する接続体として弾性体や粘弾性体を用いる。可動体を振動させると、接続体を介して可動体の振動に対応する反力が支持体に加わる。その結果、支持体に触れたユーザは振動を体感することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可動体を振動させるアクチュエータでは、可動体の加速度を大きくすることによってユーザに大きな力(力覚)を体感させることができる。しかしながら、加速度を大きくするように磁気駆動回路の駆動波形および駆動電圧を制御すると、可動体が大きく動いて固定体に衝突してしまう。従って、可動体の可動範囲を広く確保できない小型のアクチュエータでは、大きな加速度で可動体を動かして力覚をユーザに体感させることが難しい。
【0005】
本発明の課題は、以上の問題点に鑑みて、可動範囲が狭くても大きな加速度で可動体を動かしながら振動させることが可能なアクチュエータを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のアクチュエータは、支持体と、可動体と、前記可動体および前記支持体に接続される接続体と、コイルおよび前記コイルに第1方向で対向する磁石を備え、前記可動体を前記支持体に対して前記第1方向に交差する第2方向に振動させる磁気駆動回路と、を有し、前記接続体は、前記可動体と前記支持体とが前記第1方向に対向する位置、もしくは、前記可動体と前記支持体とが前記第1方向と交差し且つ前記第2方向と交差する第3方向で対向する位置に配置される第1接続体と、前記可動体と前記支持体とが前記第2方向で対向する位置に配置される第2接続体と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、可動体と支持体とが可動体の振動方向と交差する方向(第1方向もしくは第3方向)で対向する位置に第1接続体が配置されるとともに、可動体と支持体とが可動体の振動方向(第2方向)で対向する位置に第2接続体が配置される。このようにすると、可動体が振動するときは、第1接続体がせん断変形するとともに第2接続体が伸縮変形し、第2接続体によって可動体の可動範囲が規制される。従って、第1接続体の変形特性だけでなく第2接続体の変形特性を利用できるので、可動体の可動範囲が狭い場合でも、可動体に加わる駆動力を大きくすることができ、大きな加速度で可動体を動かしながら振動させることができる。よって、小型のアクチュエータでありながら、大きな加速度で可動体が動くことによる力覚をユーザに体感させることができる。
【0008】
本発明において、前記第1接続体および前記第2接続体は、粘弾性体であることが好ま
しい。粘弾性体を用いれば、第1接続体はせん断変形するときに線形の成分が多い変形特性で変形する一方、第2接続体は圧縮変形するときに非線形の成分が多い変形特性で変形し、第2接続体は圧縮量が増大するにしたがってばね定数が増大する。このような粘弾性体の変形特性を利用することにより、可動体の可動範囲が狭い場合でも、可動体に加わる駆動力を大きくすることができ、大きな加速度で可動体を動かしながら振動させることができる。
【0009】
本発明において、前記第1接続体が圧縮方向に変形するときのばね定数と、前記第2接続体が圧縮方向に変形するときのばね定数とが異なる構成を採用することができる。例えば、前記第2接続体が圧縮方向に変形するときのばね定数は、前記第1接続体が圧縮方向に変形するときのばね定数よりも大きいことが好ましい。このように、可動体によって圧縮変形させられる位置に配置される第2接続体のばね定数を大きくすることで、より大きな加速度で可動体を動かしたときでも第2接続体の圧縮変形量を抑えることができる。従って、可動体の可動範囲が狭い場合でも、より大きな加速度で可動体を動かすことができ、より大きな力覚をユーザに体感させることができる。
【0010】
本発明において、前記磁気駆動回路を駆動するときの駆動波形は、矩形波であることが好ましい。このようにすると、瞬間的に大きな駆動力を可動体に加えることができるので、可動体の加速度を急激に増大させることができる。従って、可動体の可動範囲が狭い場合でも、大きな加速度で可動体を動かすことができる。よって、大きな力覚をユーザに体感させることができる。
【0011】
本発明において、前記支持体は、前記可動体および前記磁気駆動回路を収容するケースと、前記コイルを保持するコイルホルダと、を備え、前記コイルホルダは、コイル配置穴が設けられた板部を備え、前記可動体は、前記磁石を保持するヨークを備え、前記ヨークは、前記板部に対して前記第1方向の一方側から対向する第1平板部、前記板部に対して前記第1方向の他方側から対向する第2平板部、および、前記板部の前記第2方向の両側に配置される一対の接続板部を備え、前記ケースは、前記ヨークの前記第2方向の両側に配置される一対の側板部を備え、前記第2接続体は、前記一対の接続板部の一方と前記一対の側板部の一方との間、および、前記一対の接続板部の他方と前記一対の側板部の他方との間に配置されることが好ましい。このようにすると、可動体が第2方向の一方側および他方側のいずれの方向に動くときも、第2接続体が圧縮変形する。従って、第2接続体が圧縮変形するときにばね定数が増大することを利用して、大きな加速度で可動体を駆動することができる。
【0012】
本発明において、前記支持体は、前記板部および前記コイルを前記第1方向の一方側から覆う第1プレート、および、前記板部および前記コイルを前記第1方向の他方側から覆う第2プレートを備え、前記磁石は、前記第1平板部に固定され前記第1プレートを介して前記コイルに前記第1方向の一方側から対向する第1磁石、および、前記第2平板部に固定され前記第2プレートを介して前記コイルに前記第1方向の他方側から対向する第2磁石を備え、前記第1接続体は、前記第1平板部と前記第1プレートとを接続する一方側接続体、および、前記第2平板部と前記第2プレートとを接続する他方側接続体を備えることが好ましい。このように、ヨークとコイルホルダとの第1方向の隙間を接続体の配置スペースとして利用すれば、ケースとヨークとの間に接続体の配置スペースを確保する必要がない。従って、アクチュエータの第1方向の寸法(高さ)を小さくして小型化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可動体と支持体とが可動体の振動方向と交差する方向(第1方向もしくは第3方向)で対向する位置に第1接続体が配置されるとともに、可動体と支持体とが
可動体の振動方向(第2方向)で対向する位置に第2接続体が配置される。このようにすると、可動体が振動するときは、第1接続体がせん断変形するとともに第2接続体が伸縮変形し、第2接続体によって可動体の可動範囲が規制される。従って、第1接続体の変形特性だけでなく第2接続体の変形特性を利用できるので、可動体の可動範囲が狭い場合でも、可動体に加わる駆動力を大きくすることができ、大きな加速度で可動体を動かしながら振動させることができる。よって、小型のアクチュエータでありながら、大きな加速度で可動体が動くことによる力覚をユーザに体感させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を適用したアクチュエータの斜視図である。
【
図2】アクチュエータを長手方向に切断した場合の断面図である。
【
図3】アクチュエータを長手方向と交差する方向に切断した場合の断面図である。
【
図5】ケースを取り外したアクチュエータの分解斜視図である。
【
図6】ケースを取り外した支持体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したアクチュエータの実施の形態を説明する。
【0016】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したアクチュエータ1の斜視図である。
図2は、アクチュエータ1を長手方向に切断した場合の断面図である。
図3は、アクチュエータ1を長手方向と交差する方向に切断した場合の断面図である。
図4は、アクチュエータ1の分解斜視図である。
図5は、ケース2を取り外したアクチュエータ1の分解斜視図である。
図6は、ケース2を取り外した支持体3の分解斜視図である。
【0017】
アクチュエータ1は、振動によって情報を伝達する触覚デバイスとして用いられる。
図1に示すように、アクチュエータ1は、直方体形状の外観を備える。アクチュエータ1は、その外観の短手方向に振動を発生させる。以下の説明では、振動が発生する短手方向をX方向(第2方向)、アクチュエータ1の長手方向であってX方向と直交する方向をY方向(第3方向)とする。また、以下の説明では、アクチュエータ1の厚み方向であって、X方向およびY方向と直交する方向をZ方向(第1方向)とする。X方向、Y方向、およびZ方向は互いに直交する。また、X方向の一方をX1方向、他方をX2方向とする。Y方向の一方をY1方向、他方をY2方向とする。Z方向の一方をZ1方向、他方とZ2方向とする。
【0018】
図2、
図3に示すように、アクチュエータ1は、外形を規定するケース2を備える支持体3と、ケース2の内部に収容される可動体5と、を有する。また、アクチュエータ1は、支持体3と可動体5とを接続する接続体4と、可動体5を支持体3に対してX方向に相対移動させる磁気駆動回路8と、を備える。接続体4は、支持体3と可動体5とがZ方向(第1方向)で対向する位置に配置される第1接続体6(
図2参照)と、支持体3と可動体5とがX方向(第2方向)で対向する位置に配置される第2接続体9(
図3参照)を備える。
【0019】
支持体3は、コイル10と、コイル10を保持する樹脂製のコイルホルダ11と、コイルホルダ11のZ1方向に重ねられた第1プレート12と、コイルホルダ11のZ2方向に重ねられた第2プレート13と、を備える。コイル10は、コイル線を長円状に巻回した巻回部55、並びに、巻回部55の外周側からY1方向に引き出された第1引き出し部56および第2引き出し部57を有する。コイル10は、その厚み方向をZ方向に向けている。
図2、
図3に示すように、コイル10の巻回部55は、ケース2のZ方向の中央に
位置する。
【0020】
また、支持体3は、
図1、
図2、
図5に示すように、コイルホルダ11のY1方向の端面に保持された給電基板14を備える。コイル10の第1引き出し部56および第2引き出し部57は、給電基板14の表面に設けられた配線パターン15の第1ランド15aおよび第2ランド15bに接続される。コイル10には、給電基板14を介して、電力が供給される。
【0021】
可動体5は、磁石16およびヨーク17を備える。磁石16は、コイル10の巻回部55とZ方向で対向する。コイル10と磁石16とは、磁気駆動回路8を構成する。
図2、
図4に示すように、第1接続体6および第2接続体9は、それぞれ直方体形状の部材である。第1接続体6および第2接続体9は、それぞれ、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備える。
【0022】
(可動体)
図2、
図3、
図5に示すように、可動体5は、磁石16として、第1磁石21および第2磁石22を備える。第1磁石21は、コイル10のZ1方向に位置する。第2磁石22は、コイル10のZ2方向に位置する。第1磁石21および第2磁石22は、X方向で2つに分極されている。
【0023】
ヨーク17は磁性材料からなる。
図3、
図4に示すように、ヨーク17は、第1ヨーク23および第2ヨーク24の2部材を組み立てて構成される。
図5に示すように、第1ヨーク23は、Y方向に長い第1平板部25と、第1平板部25のY方向の両端縁において、Y方向の中央部分からX方向の外側に向かってZ2方向に湾曲して、Z2方向に延びる一対の接続板部26と、を備える。第1磁石21は、第1平板部25のZ2方向の面に保持される。第2ヨーク24は、第1平板部25とZ方向で対向する第2平板部27と、第2平板部27のY方向の中間部分からX1方向および他方側X2へ張り出した一対の張り出し部28を備える。第2磁石22は、第2平板部27のZ1方向の面に保持される。第2ヨーク24の一対の張り出し部28には、一対の接続板部26のZ2方向の先端部分が溶接等の方法で接合される。これにより、第1ヨーク23と第2ヨーク24とは一体とされて、ヨーク17を構成する。
【0024】
(支持体)
図1、
図3、
図4に示すように、ケース2は、Z方向に重ねられた第1ケース部材31および第2ケース部材32を備える。第1ケース部材31は、Z1方向からコイルホルダ11に取り付けられている。第2ケース部材32は、Z2方向からコイルホルダ11に取り付けられている。
図4に示すように、第1ケース部材31は、長方形形状の第1板部33と、第1板部33のY1方向の端部分のX方向の両端縁、および第1板部33のY2方向の端部分のX方向の両端縁からZ1方向に延びる4つの側板部34と、を備える。4つの側板部34は、コイルホルダ11のX方向の両側に位置する。
【0025】
第2ケース部材32は、長方形形状の第2板部35と、第2板部35のX方向の両端縁からZ2方向に延びる一対の側板部36と、を備える。一対の側板部36は、コイルホルダ11のX方向の両側に位置する。一対の側板部36は、コイルホルダ11のX方向の両側の側面に形成される係止凸部11aが嵌まる係止孔37を備える。
【0026】
図6に示すように、コイルホルダ11は、Y方向に延びる板部40を備える。板部40の中央にはコイル配置穴41が設けられている。コイル配置穴41は、Y方向に長い長円状の貫通穴である。コイル配置穴41には、コイル10の巻回部55が収容される。また、コイルホルダ11は、板部40のX方向の両側の端縁におけるY方向の中央部分を内側
へ切り欠いた切欠き部42、43を備える。
【0027】
また、コイルホルダ11は、切欠き部42、43のY1方向において、板部40のX1方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部44と、板部40のX2方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部45と、を備える。さらに、コイルホルダ11は、板部40のY1方向の端部分に設けられた基板支持部50を備える。
【0028】
さらに、コイルホルダ11は、切欠き部42、43のY2方向において、板部40のX1方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部47と、板部40のX2方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部48と、板部40のY2方向の端縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部49を備える。側板部49は、側板部47のY2方向の端と、側板部48のY2方向の端とを接続する。
【0029】
図6に示すように、給電基板14は、Y方向から見た場合にX方向に長い長方形形状の配線接続部70と、配線接続部70におけるX方向の両端部分からZ1方向に突出する一対の脚部71と、を備える。配線接続部70には、第1ランド15aおよび第2ランド15bを備える配線パターン15が形成される。
図5に示すように、給電基板14は、第1ランド15aおよび第2ランド15bが形成された面をY1方向に向けた姿勢で基板支持部50に支持される。
【0030】
図6に示すように、基板支持部50は、X方向で対向する一対のスリット51、52を備える。また、基板支持部50は、板部40のY1方向の端部分のX方向の中央部分に設けられた突部81と、突部81のX方向の両側に設けられた一対の切欠き凹部80と、各切欠き凹部80のZ1方向の内壁面に設けられた基板挿入孔83と、を備える。
【0031】
図5に示すように、給電基板14は、X方向の両端縁がスリット51、52にZ2方向から挿入されて、基板支持部50に支持される。このとき、板部40において一対の切欠き凹部80の間に設けられた突部81は、給電基板14の一対の脚部71の間に圧入されるとともに、一対の基板挿入孔83に、給電基板14の各脚部71の先端部分が挿入される。
【0032】
また、コイルホルダ11は、板部40のZ2方向の面に、コイル配置穴41から基板支持部50に向かって延びる案内溝53を備える。
図6に示すように、案内溝53は、コイル配置穴41に連通する共通溝部分93と、共通溝部分93のX方向の両端からY1方向に延びる溝部分91、92を備える。コイル10の巻回部55からY1方向に引き出された第1引き出し部56および第2引き出し部57は、案内溝53を引き回されて、給電基板14に接続される。
図4に示すように、第1引き出し部56および第2引き出し部57は、共通溝部分93において傾斜した方向に引き出され、案内溝53の溝部分91、92に設けられた凹部85a、85bにおいてZ2方向へ曲げられた後、給電基板14の表面に沿ってZ2方向へ延びて、第1ランド15aおよび第2ランド15bに接続される。
【0033】
第1プレート12および第2プレート13は、非磁性材料からなる。
図6に示すように、第1プレート12は、板部40をZ1方向から覆う長方形の第1平面部61と、第1平面部61のX方向の両側からX方向の外側に向かってZ1方向に斜めに突出した複数の第1爪部62と、を有する。第1プレート12がコイルホルダ11の板部40にZ1方向から接触したときに、第1爪部62は、側板部44、側板部45、側板部47、側板部48に弾性をもって当接した状態となる。
【0034】
第2プレート13は、板部40をZ2方向から覆う長方形形状に第2平面部63と、第2平面部63のX方向の両側からX方向の外側に向かってZ2方向に斜めに突出した複数
の第2爪部64を有する。第2プレート13がコイルホルダ11の板部40にZ2方向から接触したときに、第2爪部64は、側板部44、側板部45、側板部47、側板部48に弾性をもって当接した状態となる。
【0035】
コイルホルダ11にコイル10を固定する際には、コイルホルダ11の板部40に第1プレート12をZ1方向から重ねる。これにより、第1プレート12は、コイル配置穴41をZ1方向から塞いだ状態で、コイルホルダ11に支持される。次に、コイル10の巻回部55をコイル配置穴41に配置し、巻回部55の中心穴10aに接着剤を充填する。その後、コイルホルダ11の板部40に第2プレート13をZ2方向から重ねて、コイルホルダ11に支持させる。第1プレート12および第2プレート13は、接着剤が硬化した接着剤層59により、コイルホルダ11の板部40に固定される。また、接着剤は、コイル配置穴41の内壁面と巻回部55との間に流入して硬化する。これにより、巻回部55がコイル配置穴41の内壁面に固定される。
【0036】
図6に示すように、第1プレート12は、第1平面部61のX方向の両側の端縁におけるY方向の中央部分を内側へ切り欠いた一対の切欠き部65を備えており、各切欠き部65のY方向の両側にそれぞれ第1爪部62が設けられている。また、第1プレート12は、一対の切欠き部65のX方向の内周縁からZ2方向へ屈曲した一対の屈曲板部66を備える。
図3に示すように、一対の屈曲板部66は、コイルホルダ11の板部40のX方向の両側の端面を覆う。
【0037】
同様に、第2プレート13は、第2平面部63のX方向の両側の端縁におけるY方向の中央部分を内側へ切り欠いた一対の切欠き部67を備えており、各切欠き部67のY方向の両側にそれぞれ第2爪部64が設けられている。また、第2プレート13は、一対の切欠き部67のX方向の内周縁からZ2方向へ屈曲した一対の屈曲板部68を備える。
図3に示すように、一対の屈曲板部68は、コイルホルダ11の板部40のX方向の両側の端面を覆う。
【0038】
(接続体)
図2に示すように、第1接続体6は、第1ヨーク23と第1プレート12との間に配置される一方側接続体6Aと、第2ヨーク24と第2プレート13との間に配置される他方側接続体6Bを備える。
図2に示すように、一方側接続体6Aと他方側接続体6Bは、板部40のZ方向の中央を基準として、Z方向に対称に配置される。
【0039】
より詳細には、一方側接続体6Aは、同一形状の2部材からなり、第1ヨーク23のY1方向の端部分と第1プレート12とのY1方向の端部分との間、および、第1ヨーク23のY2方向の端部分と第1プレート12のY2方向の端部分との間の2か所に挟まれている。2つの一方側接続体6Aは、第1磁石21のY方向の両側に配置される。本形態では、一方側接続体6Aは、X方向に長く延びる直方体形状であり、
図5に示す他方側接続体6Bと同一形状である。
【0040】
他方側接続体6Bは、第2ヨーク24と第2プレート13との間に配置される。より詳細には、他方側接続体6Bは、同一形状の2部材からなり、第2ヨーク24のY1方向の端部分と第2プレート13とのY1方向の端部分との間、および、第2ヨーク24のY2方向の端部分と第2プレート13とのY2方向の端部分との間の2か所に挟まれている。2つの他方側接続体6Bは、第2磁石22のY方向の両側に配置される。一方側接続体6Aおよび他方側接続体6Bは、支持体3と可動体5との間でZ方向に圧縮されている。
【0041】
図3、
図4に示すように、第2接続体9は、ヨーク17のX方向の側面を構成する一対の接続板部26と、ヨーク17のX方向の両側に配置される一対の側板部36とがX方向
に対向する位置に配置される。より詳細には、第2接続体9は、同一形状の2部材からなり、一対の接続板部26の一方と一対の側板部の一方との間、および、一対の接続板部26の他方と一対の側板部の他方との間に挟まれている。第2接続体9は、接続板部26と側板部36との間でX方向に圧縮されている。
【0042】
第1接続体6および第2接続体9は、シリコーンゲルからなるゲル状部材である。シリコーンゲルは、伸縮方向に変形する際のばね定数が、せん断方向に変形する際のばね定数の3倍程度になる粘弾性体である。粘弾性体は、厚さ方向と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分よりも線形の成分が大きい変形特性を備える。また、厚さ方向に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分よりも非線形の成分が大きい伸縮特性を備える一方、厚さ方向に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分よりも線形の成分が大きい伸縮特性を備える。
【0043】
あるいは、第1接続体6および第2接続体9として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いてもよい。
【0044】
第1接続体6と第2接続体9は、いずれもシリコーンゲルであるが、圧縮変形するときのばね定数が異なる。より詳細には、第1接続体6が圧縮変形するときのばね定数よりも、第2接続体9が圧縮変形するときのばね定数の方が大きい。例えば、シリコーンゲルを製造する際に配合する原料の配合比を変えることにより、シリコーンゲルの硬さを調整することができるので、せん断変形するときのばね定数、および圧縮変形するときのばね定数を調整することができる。従って、第2接続体9として、圧縮変形するときのばね定数が第1接続体6よりも大きいものを用いることができる。
【0045】
(アクチュエータの動作)
可動体5が、接続体4(第1接続体6および第2接続体9)を介して支持体3に支持された状態では、コイルホルダ11の板部40に保持されるコイル10の巻回部55は、
図3に示すように、Z1方向で第1プレート12を介して第1磁石21に対向し、Z2方向で第2プレート13を介して第2磁石22に対向する。これにより、磁気駆動回路8が構成される。
【0046】
給電基板14を介してコイル10に所定方向の電流が供給されると、支持体3に支持された可動体5は、磁気駆動回路8の駆動力により、支持体3に対してX方向の一方に相対移動する。その後、電流の向きが反転すると、可動体5は、支持体3に対してX方向の他方に相対移動する。コイル10に供給される電流の向きの反転が繰り返されることにより、可動体5は振動する。
【0047】
可動体5がX方向に振動する際、アクチュエータ1は、第1接続体6がせん断方向に変形し、且つ、第2接続体が伸縮方向に変形する。従って、接続体4全体としてのばね定数は、第1接続体6のせん断方向のばね定数と、第2接続体9の伸縮方向のばね定数とを合成した合成値となる。
【0048】
磁気駆動回路8の駆動電圧および駆動波形は、図示しない制御装置によって制御される。本形態では、磁気駆動回路8を駆動するときの駆動波形は、周期的に変化するパルス波形であり、各パルスは矩形波である。従って、可動体5がX1方向およびX2方向のいずれの方向に移動するときも、瞬時に駆動電流がピーク値まで上昇するので、瞬時に大きな
駆動力が可動体5に加わり、可動体5が大きな加速度で移動しながら振動する。よって、ユーザに力覚を体感させることができる。
【0049】
ヨーク17は、第1平板部25のY1側の端部、および、第2平板部27のY1側の端部が、コイルホルダ11の側板部44と側板部45との間に配置される。また、第1平板部25のY2側の端部、および、第2平板部27のY2側の端部が、コイルホルダ11の側板部47と側板部48との間に配置される。従って、側板部44、45、47、48は、可動体5がX方向に移動する際の可動範囲を規定する度当たり部として機能する。
【0050】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態のアクチュエータ1は、支持体3および可動体5と、可動体5および支持体3に接続される接続体4と、コイル10およびコイル10にZ方向(第1方向)で対向する磁石16を備え、可動体5を支持体3に対してX方向(第2方向)に振動させる磁気駆動回路8を有する。接続体4は、可動体5と支持体3とがZ方向(第1方向)に対向する位置に配置される第1接続体6と、可動体5と支持体3とがX方向(第2方向)で対向する位置に配置される第2接続体9を備える。
【0051】
本形態によれば、可動体5と支持体3とが可動体5の振動方向と交差するZ方向(第1方向)で対向する位置に第1接続体6が配置されるとともに、可動体5と支持体3とが可動体5の振動方向であるX方向(第2方向)で対向する位置に第2接続体9が配置される。このような構成では、可動体5が振動するときは、第1接続体6がせん断変形するとともに第2接続体9が伸縮し、第2接続体9によって可動体5の可動範囲が規制される。従って、第1接続体6のせん断方向の変形特性だけでなく、第2接続体9の伸縮方向の変形特性を利用して可動体5の振動特性を規定できるので、可動体5の可動範囲が狭い場合でも、可動体5に加わる駆動力を大きくすることができ、大きな加速度で可動体5を動かしながら振動させることができる。よって、小型のアクチュエータ1でありながら、大きな加速度で可動体5が動くことによる力覚をユーザに体感させることができる。
【0052】
本形態では、第1接続体6および第2接続体9は、粘弾性体である。このようにすると、第1接続体6はせん断変形するときに線形の成分が多い変形特性で変形する一方、第2接続体9は圧縮変形するときに非線形の成分が多い変形特性で変形し、圧縮量が増大するにしたがってばね定数が増大する。このような粘弾性体の変形特性を利用することにより、可動体5の可動範囲が狭い場合でも、可動体5に加わる駆動力を大きくすることができ、大きな加速度で可動体5を動かしながら振動させることができる。
【0053】
本形態では、第1接続体6が圧縮方向に変形するときのばね定数と、第2接続体9が圧縮方向に変形するときのばね定数とが異なっており、第2接続体9が圧縮方向に変形するときのばね定数は、第1接続体6が圧縮方向に変形するときのばね定数よりも大きい。このように、可動体5によって圧縮変形させられる位置に配置した接続体4のばね定数を大きくすれば、より大きな加速度で可動体5を動かしたときでも圧縮変形量を抑えることができる。従って、より大きな加速度で可動体5を動かすことができ、より大きな力覚をユーザに体感させることができる。
【0054】
本形態では、磁気駆動回路8を駆動するときの駆動波形が矩形波である。従って、瞬間的に大きな駆動力を可動体5に加えることができるので、可動体5の加速度を急激に増大させることができる。従って、可動体5の可動範囲が狭い場合でも、大きな加速度で可動体5を動かすことができる。よって、大きな力覚をユーザに体感させることができる。
【0055】
本形態では、支持体3は、可動体5および磁気駆動回路8を収容するケース2と、コイル10を保持するコイルホルダ11と、を備え、コイルホルダ11は、コイル配置穴41
が設けられた板部40を備える。可動体5は、磁石16を保持するヨーク17を備え、ヨーク17は、板部40に対してZ1方向(第1方向の一方側)から対向する第1平板部25、板部40に対してZ2方向(第1方向の他方側)から対向する第2平板部27、および、板部40のX方向(第2方向)の両側に配置される一対の接続板部26を備える。ケース2は、ヨーク17のX方向(第2方向)の両側に配置される一対の側板部36を備える。第2接続体9は、一対の接続板部26の一方と一対の側板部36の一方との間、および、一対の接続板部26の他方と一対の側板部36の他方との間に配置される。従って、可動体5のX方向の両側においてケース2とヨーク17との間に第2接続体9が挟まれているので、可動体5がX方向(第2方向)の一方側および他方側のいずれの方向に動くときも、第2接続体9が圧縮変形する。よって、第2接続体9が圧縮変形するときにばね定数が増大することを利用して、大きな加速度で可動体5を駆動することができる。
【0056】
本形態では、支持体3は、板部40およびコイル10をZ1方向(第1方向の一方側)から覆う第1プレート12、および、板部40およびコイル10をZ2方向(第1方向の他方側)から覆う第2プレート13を備える。磁石16は、第1平板部25に固定され第1プレート12を介してコイル10にZ1方向(第1方向の一方側)から対向する第1磁石21、および、第2平板部27に固定され第2プレート13を介してコイル10にZ2方向(第1方向の他方側)から対向する第2磁石22を備える。第1接続体6は、第1平板部25と第1プレート12とを接続する一方側接続体6A、および、第2平板部27と第2プレート13とを接続する他方側接続体6Bを備える。従って、ヨーク17とコイルホルダ11とのZ方向(第1方向)の隙間を第1接続体6の配置スペースとして利用しているので、ケース2とヨーク17との間に第1接続体6の配置スペースを確保する必要がない。従って、アクチュエータ1のZ方向(第1方向)の高さを小さくして小型化することができる。
【0057】
(変形例)
(1)上記形態は、可動体5と支持体3とがZ方向(第1方向)で対向する位置に第1接続体6を配置するものであったが、第1接続体6の位置は、可動体5と支持体3とがY方向(第3方向)で対向する位置であってもよい。例えば、コイル配置穴41のY方向の両側に板部40をZ方向に貫通する貫通部を設けるとともに、この貫通部には、ヨーク17の第1平板部25と第2平板部27のY方向の両側の端部を接続する接続板部を配置し、接続板部と板部40とがY方向に対向する位置に粘弾性体からなる第1接続体6が挟まれる構成を採用してもよい。このような構成でも、可動体5がX方向に振動するときは、第1接続体6がせん断方向に変形するとともに、第2接続体9が伸縮方向に変形する。従って、上記形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
(2)上記形態は、接続体4が全て粘弾性体であるが、接続体4の一部が弾性体であってもよい。例えば、第1接続体6を弾性体とし、第2接続体9を粘弾性体としてもよい。また、第1接続体6および第2接続体9の一方もしくは両方が、弾性体と粘弾性体を備える複合部材であってもよい。例えば、金属製のばねをシリコーンゲルで覆った複合部材であってもよい。
【0059】
(3)上記形態では、第1接続体6と第2接続体9は材質が異なる粘弾性体であり、ばね定数が異なる粘弾性体であるが、ばね定数が同一の粘弾性体であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…アクチュエータ、2…ケース、3…支持体、4…接続体、5…可動体、6…第1接続体、6A…一方側接続体、6B…他方側接続体、8…磁気駆動回路、9…第2接続体、10…コイル、10a…中心穴、11…コイルホルダ、11a…係止凸部、12…第1プレート、13…第2プレート、14…給電基板、15…配線パターン、15a…第1ランド
、15b…第2ランド、16…磁石、17…ヨーク、21…第1磁石、22…第2磁石、23…第1ヨーク、24…第2ヨーク、25…第1平板部、26…接続板部、27…第2平板部、28…張り出し部、31…第1ケース部材、32…第2ケース部材、33…第1板部、34…側板部、35…第2板部、36…側板部、37…係止孔、40…板部、41…コイル配置穴、42、43…切欠き部、44、45、47、48、49…側板部、50…基板支持部、51、52…スリット、53…案内溝、55…巻回部、56…第1引き出し部、57…第2引き出し部、59…接着剤層、61…第1平面部、62…爪部、63…第2平面部、64…爪部、65…切欠き部、66…屈曲板部、67…切欠き部、68…屈曲板部、70…配線接続部、71…脚部、80…切欠き凹部、81…突部、83…基板挿入孔、85a、85b…凹部、91、92…溝部分、93…共通溝部分